東京宝塚劇場宙組公演「カサブランカ」が、千秋楽を迎えました。



萬あきらさん、
安里舞生ちゃん、
ご卒業おめでとうございますm(_ _)m。


一ヶ月公演って短いなあ……(T T)。
本当に、あっという間でした。すっかり嵌っていたので、今、とても寂しいです。



昼の部は、今まで観た中で、芝居としては一番良かった、と思いました。
ちょっと体力的に無理が続いていたため、集中できるか非常に不安だったのですが、ものすごく引き込まれて、夢中になって観ているうちに、あっという間に終わってしまいました。
誰がどうこうというのではなく、宙組全体がピンっと張り詰めた綱の上を走っているかのような危うい緊迫感のようなものがあって、「カサブランカ」の世界を覆う不安の翳がすごく出ていたと思います。

それ以外の細かい部分の芝居については、なんというか……ひどくシンプルな、原点に戻った感があって。磨きぬかれた珠のような、底光りする印象、とでもいうのでしょうか。


……フィナーレはちょっとぐたぐたでしたけどね、祐飛さん(汗)。




千秋楽は。
昼に吹っ飛んでいた部分が少し落ち着いて、全体に端正な出来だったように思います。
世界全体を覆う不安の翳りが、ほんの少し前向きな意思に変換されて、明るい光の射すラストだったように思います。
「パリの思い出がある」
の言い方とか、リックがまた一際優しくなって、むしろラズロの孤高が際立つ構造になっていた……とまで言ったら、妄想かもしれませんが(汗)。リックの優しさに涙が出ました。
「俺たちの仲はパリで終わっている」
とか、も。

そして、蘭トムさんの
「あなたも、我々の仲間です」
の言い方が、少し変わったように思いました。なにが、と問われると答えられないのですが。
先日まではあんな言い方じゃなかったような……?
すべてを飲み込んで、リックの孤独を受け入れるところが、すごく好きです。







今日で宝塚を卒業するお二人は、なんだかもう、キラキラしすぎてて眩しかった。


警官役は、いつもどおりにしっかりと勤め上げた舞生ちゃん。
小さくて綺麗なお顔に髭がとても良く似合って、本当に、人形のように可愛らしいのに、誰よりも力強く走って、撃って、捕まえて、ロールペーパーを投げて(笑)と忙しくされていました。
さっつん(風羽玲亜)とのコンビネーションもばっちりで、結局私が観た時で「ボスのモットー」を失敗したことは無かったんじゃないかな?(^ ^)。


ラ・ベル・オーロールの客は、前半はいつもどおり、でも舞生ちゃん自身はいつも以上に明るい笑顔を振り撒いていたのですが。
蒼羽りくちゃんがイルザに手紙を届け、イルザがショックを受けて倒れた後。いったん倒れた女性(イルザ)を心配してそのテーブルの周りに集まった客たちが、どうやら大丈夫らしいと見極めて三々五々席に戻る時(このとき大幅な席替えがある)、さっつんがいきなり舞生ちゃんに抱きついるように見えて、すごく吃驚しました。一階席だったので、群衆の後ろであまりよく見えなかったのですが(T T)、どうなっていたのかご存知の方、ぜひ教えてくださいませ。

その後、カンカンが終わってまっぷー(松風輝)のテーブルに移った後も、とにかく通りがかる人々や、隣のテーブルでやさぐれていたえなちゃん(月映樹茉)とか、とにかく近くにいる人がみんな何かしら舞生ちゃんにちょっかいをかけていくのが、なんだかもう……
そのひとつひとつに、嬉しそうに応えていた舞生ちゃんの笑顔に、涙が止まらなくて困りました。もっとちゃんと観たいのにー。

で。最後の方で、、そんな様子を笑って眺めていたまっぷーがいきなり真顔になって、握手を求めてきた ときには、ちょっと舞生ちゃんもうるっときていたような気がします。
……その後すぐに、支配人(光海舞人)が「フランス軍がパリを撤退しました!」というニュースを言いに来てしまうので、まっぷーは(次の場面の準備のために)慌てて駆け出していってしまいましたが(^ ^;。



フィナーレのムーア人のダンスでは、白っぽい花を胸につけて、弾けて踊ってました(T T)。

本当に、毎回思うので毎回書いてますけれども。
どうして、卒業する人ってああも輝くのでしょうね。
舞生ちゃんは、元々綺麗な人だし、ダンスは得意なんでしょうけれども、それにしても綺麗で、キラキラしていました。


パレードはラ・ベル・オーロールの黒燕尾に花をつけて、笑顔で。一緒に降りてくる天輝トニカちゃんとか、上手花道にそろう92期が結構のきなみ涙目な感じだったのに、舞生ちゃん一人「超・笑顔♪」だったのが面白かったです。

いったん花道に並んで、スターさんたちが銀橋に並ぶときにハケるんだろうと思っていたのに、階段を降りて、そのまま袖に引っ込んでしまったことに驚きました(涙)。花道をガン見しようと思っていたのに~~(T T)。



組長さんの挨拶での、『今までで印象に残った作品・役』。
・「維新回天竜馬伝」新人公演  竜馬の影
・「殉情」  八兵衛
・「パラダイス・プリンス」  新人公演 スチュワートの子供時代と、Jr.
・「ダンシング・フォー・ユー」全体(たくさん踊らせてもらったから)
・「逆転裁判2」  手下
・「カサブランカ」  警官
・「カサブランカ」新人公演  エミール

エミールについては、「初めての通し役。信じられない気持ちと嬉しさで胸がいっぱいだった」というコメントもあって、エミールが来たからには、次もあっただろうに、もうちょっと続けてほしかったよ…………と、とっても今更で身勝手なことを改めて思ったりしました(泣)。



組長さんの「まうちゃ~ん」という呼びかけに、「はぁーーーいっ!」と元気に応えて、上手の袖から、トップさんの大きな羽の後ろを通って登場した舞生ちゃん。
研4っていうのは、まだ大階段も降りられない学年なんですね。……ああ、せめてもう一作(悔)


組からの花は、蘭トムさんから。同期からのお花は、代表して百千糸ちゃんから。両方あわせるとト音記号になる、ピンク系の可愛いお花でした(はぁと)

「宝塚。私にとって、夢のような場所」

高くて細いけれどもキリリと澄んだ、よく通る声。エミール役でしか声を聞いたことがない(; ;)ので、素の声がすごく新鮮。

「一緒に笑い合える下級生の皆と出会い、いつも優しく包み込んでくださる上級生のみなさまと出会い、どんなときも手を取り合って乗り越えてきた同期の皆と出会い、そして、いつも温かい拍手で応援し、見守りつづけてくださったくれたファンの皆様と出会い……」

一生懸命喋ってる。可愛いなあ(T T)。

「こんなに広い世界で、出会えたことは奇跡です。
皆様に出会えたからこそ、私も輝けました。出会えたすべての皆様へ、会えて本当に良かった。いまとっても幸せです。本当に、ありがとうございました。」

家族への感謝の言葉もはさみながら、しっかりと笑顔で締めくくって。

想像していたより落ち着いていて、頭が良くて表現力のある人なんだな、と思いました。
ご卒業されて、これからどんな道を歩まれるご予定なのかわかりませんが、これからも舞生ちゃんらしく歩いて、たくさんの素敵と出会われますように。
舞生ちゃんの笑顔があれば、怖いものはないような気がします。どうぞ、がんばってくださいね。





萬さんの、サム。

11時の部の最初のカフェの場面で、ドアマン(風馬翔)がドアをあけて、盆が回って、萬さんサムの歌が聞こえてきた瞬間から大きな拍手が(涙)。
#一瞬、ドアをあけて出てきた翔くんに拍手が入ったのかと思って驚きましたが(笑)


千秋楽の萬さんが、パレードでは化粧替えして黒燕尾で降りておいでになる、というのは、話には聞いていましたし、ニュース映像でも視ていたはずなのですが。
それでも、あらためて実際にこの眼で観ると、ものすごい感動!!で。
ピシっとキメた黒燕尾の似合うこと。40年間磨きぬいてきた美しさを、宙組っ子もしっかりと受け止めて、継いでいってほしいな、と思いました。


組長さんの掛け声にあわせて、組子全員で「ケイさ~ん!」と呼びかけると、緑の袴で降りてこられた萬さんが、ゆっくりと大階段の真ん中で一礼する。

組からの花は祐飛さん、専科からの花は磯野さん、同期からの花は、OGの東千晃さん。カサブランカの大枝を三本、さりげなく抱えて、笑顔で。

「夢に出会い、夢に生き、、、そして、本当に夢が醒める時が来ました。最高に幸せです」

清しい笑顔、優しい声。

「大空祐飛、野々すみ花のトップお披露目、新生宙組のメンバーとの出会い、『カサブランカ』という作品や、サムという役との出会い、、、、すべてが幸せです。この幸せを与えてくださったみなさま全員、本当に感謝しています。本当にありがとうございました」

大拍手。
……で終わるかと思いきや。さらに続く、名調子。

「退団するこのときになって、こんなにも宝塚を愛している自分に驚きました。これからは皆様と一緒に、宝塚を応援したいと思います」

「みんな、素晴らしい資質を持った子ばかり。これからもこの仲間たちが伸びやかに舞台を勤められますよう、温かく、そして時には厳しく、見守ってあげてください」

宙組ファンとしても、すごくありがたい、嬉しいご挨拶でした。
こちらこそ、いつも素敵な『男役』を見せてくださったケイさんには、感謝の言葉もありません(T T)。

しっかし……ケイさんから観ても、宙組っ子は「奇跡的にピュア」なのね(^ ^)。





最後に、祐飛さんからのご挨拶。

「東京のこの場所で、この大きな劇場で、この作品をたくさんの方々の前で上演でき、思い切り表現できる喜びを、毎日噛み締めていました」

関係者すべてへの感謝の言葉をはさみつつ。

「ケイさんに教えていただいた男役の素晴らしさ、宝塚の魅力を大切に受け止めて、これからも歩んでいきます」

ケイさんへの感謝を述べる祐飛さん。

「卒業生の幸せそうな笑顔を見ていて、宝塚の魅力って何だろう?と考えました。宝塚しか知らない私には、本当の意味では宝塚の良さってわからないのですが、でも、私にとって宝塚は夢の世界で、その夢のためであれば、全てを懸けても悔いはありません。
この宝塚の魅力を、独りでも多くの方にお伝えできるよう、これからも精進してまいります!」

本日はありがとうございました、と締めくくりながら、祐飛さんの瞳も随分うるんでいるな、と思いました。



カーテンコールの途中から一階はスタンディング。
何回目かに、祐飛さんと卒業生二人の3人でのご挨拶で、祐飛さんが頬のマイクを差し出して卒業生二人に何か喋らせようとしたとき。

舞生ちゃんは、よく通る大きな声で「私は幸せ者です!」

ケイさんは、一度やりかけてちょっと笑っちゃったのですが、仕切りなおして

「誰がhappy?」

と、男役のセクシーボイスで囁いてくださいました。

祐飛さんが、珍しく撃沈してた……(^ ^)





その次は、祐飛さん一人で。
「皆さんの瞳に乾杯!」と、笑顔で乾杯の仕草をしてから、仲間たちを呼んで、ご挨拶してくれました。





素晴らしい作品で、楽しい公演でした。
祐飛さんではありませんが、この作品に関わってくださった皆様全員に、お礼を言ってまわりたい気分です。

ありがとう。幸せを、本当にありがとう。


今週はさっそく、たまちゃん(天羽珠起)のイゾラベッラ・コンサートがありますね。
さすがに行けませんが、がんばってください&楽しいコンサートになりますように(はぁと)。

.
年明け以来、すっかり耽溺していた宙組公演「カサブランカ」も、いよいよ明日で千秋楽。

大劇場ではいろいろあったこの公演も、なんとか東宝は休演無しで乗り切れそうで、ホッとしています。
萬さん、(安里)舞生さん、どうぞ最後の舞台を愉しんで、素敵な思い出をたくさんつくってくださいね。私も集中して、幕が降りる最後の一瞬まで見守りたいと思っています。



あれだけ観ているのに、今日観てもまだ新しい発見がある作品。
何度も書いていますが、小池さんには感謝の言葉しかありません。ありがとう。本当にありがとう。
舞台はナマモノなんだな、というのをこんなに強く思ったのは久しぶりです。誰一人段取りのひとがいない。みんなが1941年のカサブランカで好き勝手に生きていて、その人間模様が面白くて面白くて……。
たとえば、バザールの買い物風景。あれは日替わりの小芝居とか言うものではないんですよね。みんな、本当に勝手に動いているんだもん(^ ^)。それなりに秩序をもってちゃんと芝居が流れているのが不思議なくらい、勝手なことをしているひとたち。しかも、皆毎日すごい買物量なんですけど、どんだけ金持ちなのよ…?





今日の新しい発見は……たくさんあったんですけど(^ ^)、すっごい今更な発見を一つ語ってもいいですか?
なんだか、一部の方にとってはめちゃくちゃ当たり前で何を今更、な感じなのかも……しれませんが(ドキドキ)

2幕 第14場 リックの店(深夜)。
巴里の思い出をよみがえらせて、心を通じ合わせた二人。

「だが、彼は君を喪う」

呟きながら、イルザに背をむけてブランディグラスを手に取るリック。

「もう私、あなたから逃げられない……」

悄然と呟いて、力なく椅子に座り込むイルザ。

酒をグラスに注いで、ふりかえるリック。

寂しげに俯いたイルザを見て、ふと足がとまり、表情が変わる………。


あ、このときにリックは決心したんだな、と。
そう思いました。

イルザは間違いなく自分を愛していて、だからこそ今こんなに苦しんでいるんだ、という真実に気づいて。
だったら、彼女を救えるのは自分だけなのかもしれない、と、



……そういう貌をしていました。祐飛さんは。
ホントに、立ち止まったほんの一瞬の、刹那のことですけれども。



永遠のような一瞬が過ぎて、すぐに平静な貌に戻ったリックは、数歩進んでイルザにグラスを渡す。

「さあ……、俺は君を、見凝めているんだよ…?」




リックの傷は、この瞬間に癒えたのかもしれない、と、

そんなことも。




すみません…………
実は今まで、この場面はずっとイルザしか観てなかったことに、今日気づきました。

……誰のファンだよお前(←宝塚のファンです)






明日は二回公演。
えっと。
なるべく視界を広く持ちつつ、リックさんから眼をそらさずに、「彼を見凝めて」いたいなあ、と思っています。


……千秋楽にもなって、新しい発見がてんこ盛りだったりしたらどうしよう(滝汗)。


.
東京宝塚劇場宙組公演「カサブランカ」。




■第16場 リックの店(最後の夜) ~1941年12月3日 夜~

歌いながら銀橋を渡って、リックが本舞台に戻るのと同時に音楽が変わります。

「ボンソワ~ル♪」
ルノーさん(北翔海莉)の、妙にのーてんきな響きが可愛いです♪
「通行証を見せてくれ」
「疑り深い奴だ」
というやりとりの後、階段の陰に隠れるルノー。


店のドアを開けて、イルザが駆け込んでくる。

「リチャード!」

その、甘い響き。

イルザが彼を「リチャード」と呼ぶのは、ここと、前の晩に「お願いよ、パリの貴方に戻って!」というところと、空港の三回だけ。どれも、なんというか「上から目線」というか、「クレーム」っぽい台詞なのが面白いなあ、と思ったりします。

「彼は、私が一緒に行くと思っているわ。私が残ると彼に伝えていないの?」


この場面。
イルザは、リックが自分の願いを容れて、ラズロを脱出させるつもりだと思っているんですよね。
そして、自分はリックの傍に残るべきだと思っている。

でも、リックは、二人を脱出させるつもりでいる。

そしてラズロは、、、、私は最初、彼はリックがイルザを連れて出て行ってくれると思っているんだよね?と思っていたのですが、、、やっぱり、イルザと自分と二人で脱出するつもりでいるのでしょうか…?金を渡そうとするところとか、リスボンに連絡が取れたって話のあたりとか。



リックが差し出す通行証を、逡巡なく受け取るラズロ。
その瞬間をみはからって、階段の陰からルノーが登場する。

「ヴィクター・ラズロ!逮捕する。ドイツ特使殺害容疑だ」

手をあげてルノーを凝視するラズロとイルザ。

「私の親友・リッキーはな、人助けより愛を選んだのだ。……な?」

そんな自慢げな男の台詞の間に、ゆっくりと懐から銃を取り出す、元レジスタンス。

「いつから親友になったんだ?」

いやあん、カッコいい~(はぁと)★



舞台上手の椅子にルノーを座らせ、電話を渡すリック。

「空港に電話して、指示をするんだ」

忌々しげに受話器を取って、電話をかける。……それに合わせて、上手の花道セリでせりあがってくる長身の人物は、シュトラッサー少佐(悠未ひろ)。
ルノーの一方的な指示を聞いて、周りにハテナを飛ばしながら、別の番号を回す。
「大至急、私の車を。それと、警官一分隊をただちに飛行場へ!可及的速やかにだ!」

……この台詞、「かきゅうてきすみやかに」が無事言い切れた日は、つい拍手したくなるんですが……(^ ^;ゞ





■第17場 空港 ~1941年12月3日 夜~

シュトラッサーが花道で電話している間に本舞台は暗転し、下手から建物のセットが出てくる。
受話器を持って、管制塔へ視界や霧の様子を報告しているえなちゃん(月映樹茉)が、超可愛いんです♪♪

「管制塔へ。10分後にリスボン行きが離陸いたします」

そんなところに、ルノーたちの一行が登場。
ルノーは制服、リックとイルザはトレンチコートを着込んで、なのに、ラズロだけはなぜか背広のまま。そんな格好で、寒くないの?ヴィクター……

先頭を歩くルノーの後ろで、帽子の下に隠した銃を話さないリック。
ラズロに荷物の積み込みを任せて、イルザに向かい合う。

「出国者の名前は……ヴィクター・ラズロ夫妻だ」

この瞬間まで、ラズロ一人を行かせるつもりだったイルザ。
この瞬間まで本音を隠して、時間切れを狙ったリック。

「何故なのリチャード!?」

昨夜、全てを話し合ったはずのあたし達なのに!

「君がヴィクターとあの飛行機に乗る、それがベストだ」

そして、君と別れたあとに俺は彼とも話したんだよ。

「私も一晩中考えて、あなたと生きる決心をしたのに」

……考えて決心するようなものじゃない。頭で考えて選ぶものではないんだから、愛は。
ただ、流されるだけで。

頭で考えて選んだ結論なんざ、クソクラエ。
俺は君を幸せにする。ラズロには出来ないやり方で。後悔は、させない。

「ヴィクター・ラズロを支えているのは、君だ。君自身、そのことを誇りに思い、生きる証になっている」

「どちらを選んでいいかわからないときは、自分がやるべきほうを選んでおくんだ。そういうときは、どっちを選んでも必ずあとで後悔する。同じ後悔するなら、すこしでも軽いほうが良いだろう?
やるべきことを選んでおけば、やるべきことを放棄しなかったぶんだけ、後悔はかるくてすむだろうから」(by「月の影 影の海」)


……だから。
たとえ、その“誇り”が君にとってどんなに重荷になっていたとしても、君は、一度背負ってしまったその荷物を投げ捨てるべきではないんだよ。


「あなたは…?」

俺?俺はもう、大丈夫さ。だって俺には、

「……巴里の思い出が、あるさ」

名台詞と同時に流れ出す、「As Time Goes By」のしらべ。
あの輝かしい日々。笑顔に溢れた、花の都・巴里。

音楽を聴くだけで血を流していたリックの傷が、むず痒さを残して癒えた瞬間。

「ずっと封印していた想いを、昨夜、二人で蘇らせたのだから………」

リックが傷ついていたのは、イルザに振られたことそのものではなく、イルザが本当に自分を愛していたのかどうかに確信が持てなかったからなのだ、と思います。
それが、前夜の様子で、イルザもちゃんと本気だったと確信できた。
ラズロに向ける思慕とは違うものだけれども、自分のことを愛していたことは、紛れもない真実。

そこに真実があるのなら、それでいい。
たぶん、リックはそう思ったのでしょう。
ならば、いい。今はとにかく、ラズロと一緒に行けばいい。
それが一番良いんだ。だって、
ラズロには君が近くに居ることが必要だけれども、俺は、遠く離れていても大丈夫。

「君は決して離れない。俺の心の中から」

俺は必ず、超えてみせる。あのスーパーヒーローを。
君がいなくても、俺は闘える。狂った世界に立ち向かい、人々に笑顔を取り戻して……そして、もう一度君に会いに行くよ。

「さあ、顔をあげて。俺は君を、見つめているんだよ」

世界の果てで、また、会う日まで、

「……君の瞳に、乾杯」

手の中にグラスは無くても、前夜の乾杯の音が蘇る。
高まる音楽と共に。




音楽が落ち着いたあたりで、戻ってくるラズロ。

グラフ(2月号)の対談によると、ここのラズロさんは『空気を読んで』戻ってきているらしいんですが。……そうだったのか(@ @)大劇場で観たとき、あまりにも堂々と戻ってくるラズロさんが格好よくてちょっと惚れ惚れしてたんですが、、、(^ ^)空気を読んでたとは知らなかったな(汗)。


「君に一つ、聞いてほしいことがある」

お互いに、真実と嘘が交ざりあっていることを知りながら、それでも、言わなくてはならない言い訳が、ある。

「昨夜、彼女が店に来ていたんだ。通行証を渡してくれと頼みに」

これは、真実。

「彼女はまだ俺を愛している振りをし、俺も調子を合わせた」

これは、嘘?

「でも、俺達の仲は巴里で終わっている……」

これは、真実?

話しているリックにも、聴いているラズロにも、どこまでが嘘でどれが真実なのか、本当のところはよく判らなくなっている。
ただ、真実は。

リックとラズロはイルザを愛し、イルザはリックとラズロを愛している、ということ………。

通行証を受け取って、右手を差し出すラズロ。

「あなたも我々の仲間です」

あなたが自分の信念から逃げることを辞めるのならば、私達はいつでも歓迎しますよ、と。

右手に握った銃を左手に持ち替えて、握手に応えるリック。

あんたみたいに正面からやったって、力づくでつぶされるだけだ。
俺には俺の、やり方がある。

………女連れでやるには、あまりに危険なやり方が、な。



イルザの腰を抱いて、飛行機へ向かうラズロ。
見送るリック、そして、ルノー。


飛行機が二人を飲み込んで、ゆっくりと回頭を始めたとき、一台の車が滑り込んでくる。
ナチスの軍服を着込んだシュトラッサー。車を降りてルノーに詰め寄る彼は、たぶん、本当に“雲突くような大男”なんでしょうね、ルノーにとっては。


リックと言い争いになって、ついに撃ち殺されるシュトラッサー。
現役の将校が、現場を離れて二年半も経ってる元ゲリラに負けてどーするんだ、と思ったりもしますが(^ ^;ゞ、斃れてもやっぱりともちんは格好良いです(はぁと)


そこへ、次々に到着する警官隊。さっきシュトラッサーが呼んだ連中が、やっと来たか、という感じですが。
ルノーの「シュトラッサー少佐が撃たれた。犯人を探し出せ」という指示で、思わず眼を剥くリックが可愛い、です。
でちょっと眼を逸らして警官隊を見送ってから、ふとリックの方を振り返ってニコっと笑うみっちゃんが、すっごい可愛い日があるんです(^ ^)。
そこでルノーさんが可愛いくなってしまうと困ることもあるんですが、まぁ、どうなっても祐飛さんは受けられるだろうし、心配ないかな、と思っています。

しかし。
いずれシュトラッサーの後任が来ます……よねえ?あるいは、ハインツはちゃんと居るわけで。
彼にはどういうふうに言い訳するんでしょうね。ラズロは逃亡、リックも逃亡、そして、通行証のサインはホンモノ……、そんな状況を(謎)。






「君は、またファシストとの戦いに戻ったんだな」

ちょっと感慨深げに、リックに声をかけるルノー。

「そうだ、君に通行証をやろう。カサブランカを出て、北アフリカのレジスタンスの基地にいけるよう、手配してやるよ」

おや?君にも、そんな伝手があったんかい?




お芝居の一番ラストの台詞は、ルノーの

「これからの、(俺達の)友情の、な」

なんですが。
この台詞って、たしか映画ではリックがルノーに言うんですよね…?

たしかに、みっちゃんのルノーのキャラは、そういうことを言いそうな軽さがあるし、
祐飛さんのリックは、そういうことを言いそうに無い感じはしますけど。
でも、なぜあえて逆にしたのか、小池さんの意図をちょっと聞いてみたい気がします。





♪頬にしみる冷たい風は
♪夜霧に溶けて道を濡らす
♪俺の心も霧に溶けて 傷みを忘れる

プロローグで、カサブランカに入る直前に歌った歌が、ここでリフレインするのが凄く好きです。
あのときは、「温くて乾いた風」だった。
今は逆に、「冷たく」て「濡れた」風。


恋は消え去っても、それが真実であったなら、熱い想いは消えはしない。


イルザにとっては、彼女自身の脚で立って歩きだすために、乗った飛行機。

愛した記憶。
愛された記憶。
自分が守りたい、護らなくてはならない男を選んだ女は、たぶん、誰よりも強いのだから。

護られなくてはいけないほど、弱くはない生き物なのだから。



明日からの人生も、誰かの付属物としてではなく、ただ独り、前を向いて歩いていく。
愛の面影を、抱きしめて。



.
東京宝塚劇場宙組公演「カサブランカ」。




■第14場 リックの店(深夜) ~1941年12月3日 早朝(?)~


店の奥で乾杯したリックとイルザ。
そこに、店の表からバタバタと駆け込んでくる音がする。

イルザを二階に隠れさせて、様子を見に出るリック。
店の表には、侵入者が二人。……カール(寿つかさ)とラズロ(蘭寿とむ)。

ボスがまだ起きていることに気づいて驚くカールを二階に上がらせ、「2階のゴミを棄ててきてくれ」というリック。カールとイルザを片付けて、ラズロと対決するために。

しかーし。カールがサラッと「何人か捕まっちまって…」と言ってますけど、店のスタッフは皆無事なんでしょうか………?(心配)



カールを見送って、ふとかえりみるリック。
ラズロは、手の傷に巻いた包帯を直している(←その包帯はいったいどこから?)

「……あんた、本当に不死身だな……」
感心したように呟くリック。
「ナチスが滅びるまで、死ぬわけにはいかない」
案外と、軽い口調で返すラズロ。

「降りてしまいたくならないか?」
「いいえ、まったく」
という会話が、実はものすごく好きだったりします。
特に、この後の
「でも、ひとつ降りてもいいゲームがある。……イルザのことです」
というラズロの台詞のさりげなさが、すごく好き。




こんな公共の場に書いていい話題なのかどうかわからない……というか、書き方が非常に難しい話題なのですが。

実は。

私、大劇場で初めて観たときから、ラズロとイルザの間には、俗に言う“夫婦生活”がないんじゃないか、と思っております。と、小さな字で書いてみる(汗)。


すごく、宗教的なものを感じたんですよね、あの二人の関係に。
特に、銀橋でのラズロの抱擁が、あまりにもなんというか、痛々しくて。
蘭トムさんのラズロには、肉欲を感じないんです。



私の中で、蘭トムさんっていうのは、正真正銘の『アメリカン・ヒーロー』なんですよ……。

一番最初に印象に残った役は「月の燈影」の、犬っころみたいにまっすぐに幸蔵(彩吹真央)を慕う岡っ引きだったんですが、その後は、何と言っても「Never Sleep」と「逆転裁判」(『スカウト』は観てないんですすみません)なんです。
どちらも、アメリカのTVドラマにぴったりのヒーロー像だと思うんです。それこそ、大好きだったドラマの「アメリカン・ヒーロー」を宝塚化する日が来るなら(←来ないけど!)、ラルフは蘭トムさんしかいない!!と思っていたりします(^ ^)。
ドジで憎めなくて、一生懸命で可愛い“いい奴”というキャラが、あんなに嫌味なく嵌る人って他にあまり思いつかないんですよね。

二番手に回ってきがちな黒い役とかは結構苦戦しているケースも多いような印象もあるんですが、私は徳川慶喜もすごく好きだったし、とにかく、芝居としては「ヒーロー」が一番嵌るタイプの役者なのだと思っています。

「真ん中にしかいられない」という意味では宙組の前任トップであったタニちゃん(大和悠河)という人ががいますが、彼女はあくまでも「キラキラな王子さま」でしたよね。蘭トムさんは、決して『王子さま』ではなく、あくまでも『アメリカン・ヒーロー』なんです。私の中では(^ ^;ゞ



で。
アメリカのTVドラマって、恋バナは必ずあるけれども、濡れ場はない、という印象があるんですよ。アメリカという国のお茶の間事情があるんだと思っているんですが…っていうか、何か根拠があって書いているわけではなく、なんとなくのイメージに過ぎないのかもしれませんが。
蘭トムさんにはそういうイメージがあって、、、恋はするけれども、肉欲を感じない男、なんですね。

イルザのことを愛している。
だから、たとえようもなく優しい、甘い声で、
「僕はいつでも、君を愛しているよ…」
と囁く。
でも、それ以上は何もしない。そういう、『紳士』に見えるんです。

使命を果たしたなら、ナチスが滅んだなら、その時こそは必ず、と。まるで、そんな約束を交してでもいるかのような。




対するイルザのすみ花ちゃんと、リックの祐飛さん。
この二人はもう、やるべきことはとっととやってるだろう、としか思えません……(- -;ゞ
そしてイルザには、ラズロとの距離感に、物足りなさがあったんじゃないのかな、と。
『女』として、本当に愛されているのか、不安になるときがあったのではないか、と。
ラズロがあまりにも完璧な『世界を救うヒーロー』でありすぎて、『自分の男』だという確信が持てなかったのではないか、と。

だからこそ、リックとの『本能的』=『肉体的』な愛に抗いきれず、ラズロとの『理性的』=『精神的』な愛を裏切る結果になってしまうのではないか、と……



念のため、補足。
蘭トムさんに色気がない、っていう話では全くないんです。だって彼は、ショーでは誰よりも色っぽいんですから。
でも芝居では、不思議なほど禁欲的な役が似合うんですよね。
彼は常にヒーローだから。痩せ我慢こそがヒーローの美学、だから。

でも、祐飛さんは、そういうモノを抑えたことは一度も無い……ような気がする。「哀しみのコルドバ」のお髭のオジサマ・ロメロさんでさえ、何一つ抑えてはいなかったし、『痩せ我慢の美学』とは最も遠いところにいる役者だと思う。そういうものを抑えなくてはいけない役が回ってこない、というのは、宛書を身上とする宝塚においては正式な評価であり、制作部の総意なんだろうな、と思うワケですが。
そして、そういう評価が、小池さんの「キスシーンが巧い」につながっているんだと思っているワケですが。



…長々と書いてきましたが、以上のようなことは、漠然と大劇場で観たときから思っていました。
ただ、なんというか。このへんのことは、心の奥にしまっておこうと思っていたんですよね。

しかし。
新人公演を見て、やはり書かねば!と思ったのでした……。

新人公演のラズロとイルザは、普通に夫婦なんだな、と思ったので。

本公演のような、愛の形としてはいびつなものではなく、普通に愛し合って夫婦になっていた、イルザとラズロ。
新人公演はパリの場面が無かったので、芝居におけるラズロの比重がものすごく高くなっていた のですが、かいちゃん(七海ひろき)の芝居はものすごく愛に溢れていて……もう、イルザのことが心配で不安で、最初のカフェの場面でも、ワケありげな二人をみながらちょっと不愉快そうだったり、すっごく人間的だったんですよ。

出番のすべてにおいて、常に『ヒーロー』だった蘭トムさんに対して、かいちゃんのラズロは、対イルザの場面のみ、完全に『ただの男』だったのがすごく新鮮でした。

だからこそ。女としての自信を喪うこともなかった(藤咲)えりちゃんのイルザは、びっくりするほど精神的に強靭で頑固で、……なのに、思い出に溺れてしまってからは可愛かった★んですが(*^ ^*)。

ただ、どちらのラズロにしても、やはりイルザの不安は拭えないんですよね。
彼女の不安は、彼の『愛』は、果たして自分と同じものなのかどうか?という不安であり、また、自分は本当に彼にふさわしい女なのか?という不安でもある。つまり、自分自身に対する不安です。
リックはそういう不安を掻き立てる存在ではなかった。
ただ一緒に居るだけで幸せで、精神的にも肉体的にも満たされていた。
……短い時間だったけれども。



ラズロは、死の淵から生還した自分を出迎えてくれたイルザに、何かがあったことに気づいたのでしょうか?

「マルセイユで私のヴィザが発行されなかったとき、どうして先に行かなかったの?」
「……それは、君を愛していたから……」

という会話の裏に、

「あそこで君を置いて先に脱出していたら、君は本当に、追いかけてきてくれたんだろうか…?」

という不安が見え隠れしている…と思うのは、故ない妄想なのでしょうか……?








「それほどまでにイルザが好きか?」
と問うリックの、激情を抑えて平静を装った貌。
「ええ、好きです。……自分の命に代えても!」
と応えるラズロの、確信に満ちたようにも、自分に言い聞かせているようにも見える、貌。

何かを言おうとするリックを遮るように、ドアが蹴破られて警官隊がなだれ込んでくる。

「ムッシュ・ラズロ?あなたを逮捕します!」

……さっつん(風羽玲亜)の声は本当に素敵だ♪(*^ ^*)
フランス兵(天風いぶき)に手錠をかけられるときに、傷に触られて「痛っ!」という顔をするラズロさんが結構ツボです。

「どうやら、運命の悪戯はまだ続くようだな…」

リックの言葉に、振り向くラズロ。

「また、会おう」

必ず、今の会話の続きを。
そう眼で語るリックに、軽くうなずくラズロ。




■第15場 本当のリック ~1941年12月3日 早朝~昼間?~

リックの頭の中で、さっきまでのラズロの台詞がぐるぐる回っている。

「あの通行証で、イルザを連れて二人でカサブランカを脱出していただきたい。どこか、安全なところへ!」

イルザを連れて、二人で。
あの男は確かにそう言った。
『イルザをカサブランカにおいておくのは危険だし、自分自身、女連れでは身動きがとれない。彼女に野宿させるわけにはいかないし、万が一彼女が囚われたら、自分にはもう選択の余地がない。』
たとえ世界と引き換えにしてでも、彼女を救いたいと思ってしまうだろうから。

それが、本当のヴィクター。
ならば、俺は?


♪金がほしくて始めたはずの 武器の横流し

椅子に掛けていたジャケットを取って、吐き出すように歌いだす。

♪だが人が死ぬのを見るのは怖い
♪人の笑顔を見ていたい

だからカフェを始めたのか!誰もが笑顔でいられる場所を作りたくて!!(ポン)

結果的には、あのカフェはレジスタンスの溜り場であり、ファシズムとの闘いの前線にもなったわけで、ある意味、すごく理想どおりなのかもしれませんね。……死人は出ちゃった(ウガーテ)んですけどね。

♪本当の俺はどこにいる
♪本当の俺はどう生きる?

銀橋下手にルノー(北翔海莉)が登場。
さっきまでの真剣な顔を拭い去って、こ狡い中年男の仮面を被ったリック。

「ラズロを釈放しないか?もっと大きな罪を着せて現行犯逮捕してやれば、お前も出世するだろう」
「どんな罪だ?」
「ドイツの通行証の窃盗」

口先八寸でルノーを騙しにかかる。

この場面、以前映画で観たときは、私は全然リックの本意に気がつかなくて、最後のどんでん返しですごく驚いた記憶があります。

でも、小池版では「本当の俺はどう生きる?」と歌いながらの挿入場面なので、観客が騙される余地がないんですよね。……まあ、わかりやすくていいのかな、と思いますが。

「ラズロ釈放のときは、尾行は外してくれよ?」
万が一シュトラッサーにバレたら、計画はおじゃんだ、と言いながら。

♪本当の俺はどこにいる

ちょっと苦しげに、囁くように、

♪本当の俺はどう生きる?


次は、フェラーリとの商談。
「店を譲ってくれるとは嬉しいが、急だな」
「営業停止になって思い立ったんだ。従業員たちの契約を今までどおりで守ってやってくれるなら、な」
「保証しよう」
「ならば、手打ちだな」

銀橋の真ん中で、ハイタッチをする祐飛さんと磯野さん、なんていう図が観られるとはねぇ……(しみじみ)



♪人のために危ない橋は渡らない、と誓ってきた
♪人のために涙は流さない
♪どんな女も愛さない

ラズロに限りませんが、「世界を救う」ことを希む人というのは、だいたい自分自身が本当に不幸になったわけではないことが多いんですよね。
両親を殺されたとか、妻を惨殺されたとか、そういう人は活動員として重要ですけれども、リーダーではないことが多い。リーダーは、それこそ「他人のために涙を流し」「他人のために危ない橋を渡ることを厭わない」人。つまり、「すべての人を愛している」人が多い。

だからこそ、ラズロの身近にいる人たちは大変だと思うのです。
イエスを愛したマグダラのマリア(ジーザス・クライスト・スーパースター)のように。
あるいは、イエスを愛したユダ、の、ように……(T T)。

でも、リックはそんな風には生きられなかった。
人の死に耐えることができないほどに、他人を愛してしまっていた、から……。



♪心に楔を打ち込んで あの日から生きてきた
♪本当の俺はどこにいる
♪本当の俺はどう生きる?


ルノーを呼びつけ、店を処分して。……リックがこのとき、考えていることは?

ラストにシャウトして、心の澱をすべて吐き出したリック。
もう、迷わない。
どこにいようと、どこへ行こうと、必ずめぐり合えるのだから。

世界の果ての、その先で。


.
東京宝塚劇場宙組公演「カサブランカ」について。



本題の前に一つ。
本日観劇してまいりまして、やっと、トークスペシャルでカイちゃん(七海ひろき)が話していたパリ南駅での(藤咲)えりちゃんとカイちゃん夫婦を発見しました!
いったん改札を通ったメンバーが袖から再度出てくるターンで、まずはえりちゃんが上手の袖から駆け込んできて、群衆の一番後ろにつきます。舞台奥の壁沿いに立っているんですが、次々に皆が駆け込んでくるので、1階席だと見つけ難いかも。

で、えりちゃんは全然カイちゃんを探してなかった(@ @)。明らかに汽車に乗る気満々で、列の後ろに並んで前に行こうと一生懸命アピールしてる(^ ^)。

カイちゃんは、最初のターンで汽車に乗るのが遅い(銀橋では真ん中近くにいるので、本舞台に戻るのが遅れるため)せいか、なかなか出てこず……今日は、サムとリックが駅員を乗り越えて行った後になって、やっと上手袖から出てきたような気がします。
カイちゃんは、舞台に出た瞬間からキョロキョロと人を探している様子で、「どうしようもない 逃げるしかない…♪」とコーラスが響く中、ちゃんと妻(えりちゃん)を見つけて、二人で固く抱き合いながら歌う……というドラマティックな芝居で場面を締めてました(^ ^)。可愛いなあ、二人とも。
でも、えりちゃんはカイちゃんが思っているほど夫を愛してはいない……ような気がしました(^ ^)。

ちなみに、カイちゃんと同時かちょっと前後する感じでみーちゃん(春風弥里)たちも出てきます。みーちゃん、たしかに「サラリーマン」だと言われれば「そうかもね」という感じに見えました(^ ^)。






小ネタは以上、です。

【12】まで書いて、ちょっと放置していた本公演。
とりあえず、あとちょっとなので続きを書かせていただきたいと思います。
ちなみに、【12】はこちら⇒ http://80646.diarynote.jp/201001210514577824/



■第13場 地下水道での集会② ~1941年12月2日 夜~

暗転の中、銀橋の上手側にラズロが登場。本舞台の上手半分と花道にもメンバーが勢ぞろいして、ラズロの演説に聞き入っている。

「今日、リックのカフェが閉鎖された。ナチスの締め付けはますます厳しくなるだろう」

深く哀しんでいるリックの店の従業員たち。さりげなく彼らを慰める ヘルム 雅桜歌ちゃんが結構ツボです。雅さん、ついさっきまでドイツ兵だったくせにー(^ ^;。

他のメンバーは、国歌対決での盛り上がった気持ちをそのまま持ってきた感じで、すごく熱いです。手を握り合ったり、拳を高々と掲げたり。……国歌対決ではドイツ兵だったお二人(雅&春瀬)もちゃんと付いてってるのは、素直に凄いかも。
邪魔が入るまでのごく短いシーンですが、二幕頭の集会とか、国歌対決での熱気がちゃんとつながっている感じで、よく出来ていたと思います。

……でも、もうちょっと長くてもいいと思うんだけど(T T)。


「いたぞ!」「地下道を包囲しろ!」
下手からバタバタと駆け込んでくる警官たち。
「逃げろ!!」
蜘蛛の子を散らすように逃げ出すレジスタンスたち。

銀橋を走り出す蘭トムさんの足の速さに、一度前方席で観たときにちょっと感動しました(*^ ^*)。銀橋を本気で走る人ってあまりいないので。……あ。「太王四神記」でホゲさんが駆け抜けてたな。あれも早かったっけ(^ ^)。

上手花道を走ってくる警官たち。鋭い発砲音。
「検挙者は?」
「十数名ほど」
「ラズロは?」
「取り逃しました」
「馬鹿者!!」
この会話のテンポが結構好きです。ポンポンと進むのが。
……あっきー(澄輝さやと)、せっかく二枚目なんだから、台詞もがんばって……。


ラスト、財布から札を出すルノー(北翔海莉)と、それを受け取るジャン(珠洲春希)の台詞のないやり取りが結構好きです。狐と狸の化かし合い、って感じ♪




■第14場 リックの店(深夜) ~1941年12月2日 深夜(3日早朝?)~

紗幕があがって、リックの店に戻る。
第12場の後、どれだけの時間が流れたのかは不明。ただ、ある程度の時間が流れて、二人の間にも『何か』があったことはわかります。だって、リックとイルザの表情が、10分前とは全く違う。

♪たとえ世界が夜の闇に沈んでも 俺は見つけ出すだろう
♪君の輝きだけは

リックがひどく優しい声で歌う。
それに応えて歌うイルザを、ピアノにもたれて、ひどく遠い眼をして見凝めるリック。
手を触れようともせず、ピアノの周りをぐるぐる回りながら歌う、二人。

♪世界の果てまでもこの愛を持っていこう
♪砂漠の彼方 海も越えて
♪昼も夜もかかわらず

#……日本語としては、「関わらず」じゃなくて「関係なく」だと思うんだが……。
 歌詞としてのバランスでいうなら、「どんなときも」とかそんな感じ?

♪どこにいようと どこへ行こうと
♪必ず廻り逢う 愛は燃え続ける
♪世界の果てまでも……

再び廻り逢い、口づけを交わす二人。
うっとりと、全てを投げ出してリックに預けてしまったイルザが、とても切ないです。先刻まで、彼女は自分の足で独り立って、ラズロのために銃を掲げていたのに、今カフェでリックに抱かれている彼女は、ただの少女に戻ってしまっている。



えりちゃんだったかすみ花ちゃんだったか、どちらかが何かのトークで「ラズロへの愛は理性的な愛で、リックへの愛は本能的な愛」だ、というようなお話をされていましたが。

「理性」というか、「理由」あるいは「理屈」のある感情なんですよね、イルザからラズロに向かう想い、というのは。

たとえば、ラズロがマルセイユで
「もうこんなことは辞めよう、イルザ。このままアルプスの山奥に隠れて、畑でも耕しながら戦争が終わるのをまとう。こんなこと、長く続くわけがないんだから」
……とかなんとか言い出したとしたら、イルザはついていかなかったんじゃないかと思うんですよね。
なんていうのかな。イルザがラズロについてきたのは、ラズロがそんなことを言うわけがない男だから、なのではないか、と。実際ラズロはそんなことを言わない男だし、考えもしない男として描かれているのですが、それ以前に、イルザがラズロに惹かれたのは、そういう男だったからだ、と。

でも、リックに向かう想いは、違う。イルザは最初、リックのことを何も知らなかったことは間違いない。もちろん、彼が安易に権力に迎合するような男じゃないことは付き合っていれば判るでしょうし、彼女なりに組織の一員として何らかの情報に触れる機会があったとしても、それが彼を愛した理由ではない(←そもそも愛に理由など無い) はず。

「過去は聞かないという言葉に溺れてしまったのね、私…」


もしかしたら、彼女自身が『ラズロ』というスーパーヒーローの傍にいることが辛くなり始めていたのかもしれません。
チェコが併合されて、組織に対する眼は厳しくなっていたはず。年単位で彼の身を案じて、案じて、案じて……逮捕されてからもひたすらに心配して、あげくに死亡通知を受け取って。まだ若い彼女は、そういう生活に疲れていたのかもしれない。

そんな彼女にとって、『過去の無い女』でいられる時間というのは、とても幸せなものだったはず。優しくて、ハンサムで、気紛れで、金持ちで、人生経験豊富で、そして権力には迎合しない男であったリックは、本能的に恋に落ちても不思議はない。

愛と、恋。
ラズロに向かう思慕はむしろ恋に近い、不安に満ちたものであり、リックに向かう気持ちは、安心して傍にいられる、居てくれる、幸せなものだった。故郷のオスロを出て以来、彼女が無条件に幸せだったのは、もしかしたらこの短い数ヶ月だけだったのかもしれない。

それでも彼女は、ラズロの生存を知ったとき、嘆きながらも、迷うことなく不安を選んだ。
ラズロは世界のものだったけれども、リックは自分のものだったから。
リックはイルザのものだったから、だから彼女は、いくらでもわがままになれた。「世界で最後のキス」を求めておいて、そのまま棄てる、そんな残酷なことさえも。
そして、そのまますっかり忘れて、懐かしい思い出の一頁にしてしまうことさえも。

リックがどれほど苦しんだか、彼女は知らなかった。彼女自身が、「自分は使命を選んだのだ」と思っていたのだから…。



それでも、変わり果てたリックを視て、自分が今でも彼を愛していることに気がついたとき。
イルザの心は、あの幸せな数ヶ月を求めてしまう。
リックに対する罪悪感が、使命感を削ぐ。そうして余計な感情を消し込めば、後に残るのは、本能的な愛だけ。

「あたしはもう、あなたから逃げられない……」

蘇ってしまったパリの思い出が、イルザを縛る。
もはや、使命感だけでは感情をコントロールできない。それがどれほど、自身の人生を否定することであっても、あふれ出してしまった記憶の奔流は止まらない。

「でも彼は、君を喪う」

それが、彼にとってどれほど致命的なことであるか。
その言葉を口にしたリックよりも、言われたイルザの方が、その痛みは大きい。

椅子に座り込んで肩を震わせるイルザに背をむけて、ブランデーをグラスに注ぐリック。
イルザにグラスを差し出して、

「……俺はずっと、君を見凝めているんだよ……?」

君がパリで俺から去ったときも。この店に突然舞い降りたときも。……そして、今も。

そっと受け取って、うるんだ瞳で縋るようにリックを視るイルザ。

「……君の瞳に、乾杯」


チン、という柔らかい音がとても綺麗で、名台詞の効果を高めてくれる気がします。あれって効果音ではないですよね?マイクにもちゃんと入っているのが凄いなーといつも思っているんですけど、入ってますよね…?なんか、私の幻聴だったらどうしよう(汗)。




そんなところに、バタバタと走りこんでくる無粋な足音。……から先は、また後日。


.
今日の日記で、「宙組」カテゴリが件数で単独3位に上がるはずです♪
祐飛さんが組替えになった時点では、2位の花組の半分以下、「呟き・ご挨拶・ほか」と同じくらいだったはずなのに、博多座以来6ヵ月、よく頑張ったなあ私(自画自賛)。
まあ、博多座、「逆転裁判」、「カサブランカ」と、語り甲斐のある作品が続いたおかげではありますが。

さて。この調子で、一位の月組を追い越す日は来るのでしょうか…?(^ ^)




現時点で積み残しているのは、外部作品で「ウーマン・イン・ホワイト」と「キャバレー」、「蜘蛛女のキス」。宙組関連では本公演の感想【13】以降。あと、花組関連がだいぶ溜まっていて、「相棒」と「BUND NEON 上海」の詳細、そして、「フィフティ・フィフティ」の二幕をどうしよう?……ってところかな(^ ^;ゞ。

ちなみに。一部の方からご質問をいただきましたが、残念ながら猫は、「花組マグノリア・コンサート」には行ってません(T T)。物凄く行きたかったし、ニュースで聴いて「何故行かなかったんだ~~っ!!?」と滅茶苦茶後悔しましたけど、さすがに無理でしたわ……↓↓
CSでの放送が待ち遠しい♪ …結構有名なミュージカル曲がたくさんあったらしいですけど、まさかカットとか無いですよね?(^ ^;;




さて。
そういうわけで(←どういうワケですか)今日は、「カサブランカ」の小ネタ拾いをしたいと思います。



■パリ南駅
先日のトークスペシャルで明かされた真実(^ ^)を確認するべく、目を皿のようにして観てまいりました。
みーちゃん(春風弥里)&ちーちゃん(蓮水ゆうや)の兄弟設定はチェック済みなので、まずはかいちゃん(七海ひろき)と雅桜歌ちゃんを。たしかに、雅くんがお兄さんに見える(@ @)。
間に入っている娘役さん(あれっ?誰だっけ?観ているときは判ってたのに↓)と三人で兄弟、という感じでした。
次は下手。れーれ(すみれ乃麗)とまっぷー(松風輝)と百千糸ちゃんは、たしかにかなり深刻そうに小芝居してます!もちろん声が聞こえるわけではないので詳しいことは判りませんが、心の中でアテレコしながら見入ってしまいました。

ここはいつも、銀橋上手の付け根付近でぎゅ~っと抱き合っている安里舞生ちゃんと瀬音リサちゃんを観てしまっていたので、久々に違う視点で面白かったです。


しかーし!いったん汽車に乗り込むべく奥にはけたあと、再び出てくる人の群れは判別しきれず(涙)。みーちゃんはわかったけど、残念ながらカイちゃんとエリちゃんの夫婦は見つけられませんでした(T T)。楽までに見つけられるかなあ……(凹)



■トレンチコート
パリ南駅の場面、6月だとゆーのに、なぜ皆トレンチコートなの??という私の素朴な疑問に、hanihaniさまが以下のようなコメントをくださいました。

> これってさ、前に「アンネの日記」の映画を観たときに持てるだけの荷物を持って
> 出国するわけだから、帽子とコートも気温云々には関係なく身につけられるから
> 身につけていくんじゃないのかな?

なるほど~~!!とすごく目から鱗だったので、転載させていただきました。
本当に、初見のときから謎だったんです(^ ^)v ありがとうございました!


さて。
リックさんは、3回、トレンチコートを着ます。プロローグの銀橋、パリ南駅、そして、ラストの空港。
このうち、プロローグだけが袷がシングルで、上衿が立っていないシンプルな形のもので、あと二回はダブルの厚手のコートなんですよね。胸のところに切り替えがあって、上衿が立っているやつで、たぶん二回とも同じものだと思うのですが。
パリを出るときとモロッコに入るときのコートが違うのがとても不思議だと思ったのですが、「全部持っていく」と考えれば、あの厚手のコートは着ちゃったほうが荷物が少なくてすむ、ってことかしら、と納得しました。


そして。
最初と最後のスーツがそっくりに見えることには、何か意味があるのでしょうか?
帽子が黒(最初)とカーキ(最後)で色が違うのと、ピンホールピンがある(最初)と無い(最後)のしか違いがわからない。あまり間近で観たことがないのですが、遠くから観ると、ライトの反射が良く似ていて素材も同じものに見えるんだけど……違いますかねえ?

モロッコに入るときと出るときに同じスーツ。……意味がわからん。



■貨幣価値
「カサブランカ」はハリウッド映画なので、お金の単位はドルだったように思うのですが、この舞台ではすべて「フラン」を使っています。
で。ちょっと金額が入った台詞を抜き出してみました。

・マリアのダイヤの指輪が2千4百フラン(値崩れしている)。
・密航の費用が1万5千(フラン?)
・ヘルムがサインしてった飲み代が100フラン
・リックとルノーの賭け。ラズロの脱出に1万フラン。
・闇ヴィザ二枚に、2万フランでは足りない。
・ちゃちいレースが「千フラン→700」「200で十分だ」「もう100でいいよ」
・外交官特権のある通行証に「10万出しましょう」「100万でも売らない」


ざっくり、1フラン=20円くらいかな?と思ったのですが、それで換算してみるとこんな感じです。
・ダイヤの指輪が4万8千万円
・密航の費用が30万円
・ヘルムの小切手が2千円
・リックとルノーの賭けが20万円
・闇ヴィザ二枚40万円では足りない。ってことは、一枚25万か30万くらい?
・レースが、言い値1万4千円、リックの提示が4千円
・通行証の価格「200万円出しましょう」「2千万でも売らない」


……ヘルムの飲み代がちょっとセコいな(汗)。


あと、通行証の価格は、命の価格だと思うとちょっと安い、ですよね。
イメージで言うなら、ポンと
「1千万出しましょう」
「一億でも売らない」
くらいの会話をして欲しいんですが、そうなると……

・ダイヤの指輪が24万円。
・密航の費用が150万円。
・ヘルムの小切手が1万円。
・リックとルノーの賭けが100万円。
・闇ヴィザ二枚で、200万円では足りない。→一枚につき100万円以上する。
・ちゃちいレースが「10万円→7万円」「2万円で十分だ」

バザールで2万円(言い値7万)のレースはありえない!とか、
リックとルノーの賭けも「経費だな」とゆーわけには行かない金額だよね、とか、
……いろいろ突っ込みは入るんですが。


それに、「一千万」「二千万」って話になると、ラズロの資金源は何?っていうのが気になってきます。トラックを手配するしか能のない(←失礼な)レジスタンスにそんな資金があるとも思えないし。
ラズロのモデルとなった人は貴族なんですけど、長男でもない彼が自由に使えるお金ってどのくらいあったんだろうか…?ましてや、この時代に。

まあ、間をとって1フラン=50円換算くらいがちょうどいいのかな(^ ^)。



■人生を変えた3日間

1941年11月30日(?)
 ドイツ領事(?)が殺され、通行証が奪われる


1941年12月1日 
 昼間:カーティス夫妻とシュトラッサー夫妻がカサブランカに到着。
 たぶん、ラズロとイルザが着いたのもこの日だろう。

 夜:皆がリックの店に集まる。ウガーテ逮捕。
 ラズロとイルザが来店。リックとの再会。いろんな人と話をして、退店。
 おそらく、この時点ではまだ日付は変わっていないと思います。

 夜中:店を閉めて、呑んだくれているリック。慰めようとするサム。

 夜明け前:イルザが店に訪ねてくる。
 同じ頃、ラズロは地下集会でもりあげている。※
 その場には愛月くんもいるので、彼はイルザをホテルへ送った後合流したらしい。

※夜明け近くまで、ラズロとバーガーは何をしていたんでしょうね。
 単に、集会というのは夜中いっぱいかかるのが当たり前なものなのでしょうか?


1941年12月2日
 朝7時から並んだのにルノーに遭えないヤンとアニーナ。
 朝10時(半)に出頭するラズロとイルザ。
 二人を帰して、アニーナだけを入れるルノー。

 午前中:ブルー・パレットにフェラーリを訪ねてくるヤン、リック、ラズロ。

 午後?:捜査令状を持ってリックの店に現れるカッセルたち。
 
 夜:リックに相談するアニーナ、ヤンに勝たせるリック。
 「内密の話」をしにくるラズロ。サムのピアノを聴きながら待っているイルザ
 ドイツ国歌を歌いだすドイツ兵たち。

 尾行をまいて、地下集会へ出かけるラズロ。
 夫と別れて、リックの店に向かうイルザ。
 
 夜明け近く:リックの店に逃げ込んでくるラズロとカール。※
 隠れるイルザ。
 ラズロの逮捕。

※「おとといの夜、気づいていました。私たちは同じ女性に恋をしている、と…」
 と言っているから、この時点ではもう日付が変わってて3日なんでしょうね。


1941年12月3日
 昼間:ルノーとの交渉、フェラーリとの交渉。

 夕方:ラズロ釈放

 「リスボンへの夜間便が飛ぶ30分前」の夜:
 ルノー来店、ラズロとイルザも来店。
 

1日の様子から見て、リスボンへの夜間便は日付が変わる前に飛ぶんだと思います。
従って、この物語は、12月1日~12月3日までの3日間の出来事、ということになるんですね。


リックの、ラズロの、イルザの人生を変えた3日間。
運命の、永遠にも等しい3日間。

長い人生も、わずか3日でまるっきり姿を変えてしまうことがある。
これは、そういう物語なんですね。
ドラマティックな事件が起こったわけではなく、ただ、極限状況のど真ん中で気持ちをぶつけ合った結果、今までとはまったく違う風景が見えるようになった、3人の男女。
悲恋ではない、愛の物語。


大空祐飛という、タカラヅカのスターらしくないスターだからこそ完成出来た、「格好悪い」ヒーロー像。

こんな素敵な作品で、お披露目できた幸運を、天に感謝しています!(真顔)

.
日経ホールにて、「トークスペシャル in 東京」宙組に参加してまいりました。



みーちゃん(春風弥里)は、白とベージュの太いストライプのシャツに、黒のジャケット、薄いグレーのパンツ。
「リック’s カフェ・アメリカン 日比谷店から参りました」と最初のご挨拶。

かいちゃん(七海ひろき)は、濃グレーのかっちりしたスーツ。
「2010年1月27日午後19時、皆様にお会いできて嬉しいです」
と、ラズロさんっぽい感じでご挨拶。司会の竹下さんに
「七海さんはヤクルトホールの方には出ていただいたのですが、新しいホールは初めて?」
と振られて、
「はい、新しいホールなので、汚さないように気をつけます」

れーれ(すみれ乃麗)は、オフホワイトのシフォンワンピ。挨拶はごく普通でした。
トークショーは初めてなので、緊張しすぎて朝からお腹が痛くなったそうです。「早いね」と突っ込まれてたのが可愛かった♪

服装は三人とも、とくにモノトーンで揃えたというワケでもなく、結果的には皆モノトーンでしたが、あまり関係ない感じ(←どんな感じだ)、でした(^ ^)。




まずは「カサブランカ」の作品について。
結構面白い話がいろいろあったのですが……さて、どこまで覚えているかな?

一番キャラクターが明解なのはサッシャなので、簡単にキャラクターを説明してました。
『ロシア人だから、すぐ女の子を口説いちゃうようなタイプ』と小池さんに指示されたらしいんですが、、、小池さん、その認識はどっから出てきたんですか(汗)。
情に篤いスラヴ人だから、寂しげにしている子を慰めているうちに本気になる、みたいな話ならわかるんですけど。またみーちゃんが素直に受け止めて、「ファティマ可愛いよ」とか、アプローチしまくりの軟派野郎みたいに言うのが気になるー(汗)。
髪型は、小池さんからの指定は特に無く、自由にやらせてもらった。くせっ毛っぽい感じにしたくて、でも舞台で整髪料をつけると半端なパーマは伸びてしまうので、普段はキツめになってます、とのこと。誰かにトイプードルみたいと言われたらしい。いい得て妙………(感心)。

かいちゃんは、
「特に設定は言われなかったんですが、検索してみたらビゴーというのはフランス系の名前みたいなので、フランス人のつもりでやっています」
ちなみに、映画ではビゴーに当たる人が「エミール」と呼ばれているみたいですね。
ただ、この映画での彼の役名は「ウェイター」だそうなのですが、かいちゃんは自分の役を「マネージャー」だと主張していました(^ ^;)。
『マネージャーなので、お金に厳しいという設定を(勝手に?)考えて』、きっちりめのリーゼントにキメているんだそうです。で、最近のこだわりはピシっと一本落ちているシケだそうで。シケといえば大くんの専売特許かと思っていたんですが……
ちなみに、かいちゃん『シケ』って言葉が出てこなくて、適当に流してました(^ ^)。

あ、あと。ビゴーは、本人曰く「店一番の働き者」だそうです。


れーれは、
「可愛い花売りなんですけど、実はレジスタンスの一員で……」
とあくまでも可愛らしく。人が集まるリックの店で情報を集めて、活動に生かしているんだそうです♪
台詞であまり語れないので、バーガー(鳳翔大)さんとしょっちゅうアイコンタクトを取っている……というところで、みーちゃんが
「バーカウンターにいるバーガー宛のウインクを、間違えて受け取って返したりしてる」
とコメント。……だから君たち……。

髪型については、
「ファティマはベールをずっと被っているので、顔が隠れないよう、影が落ちないよう、被り方に気をつけています」
とのこと。ベールを止めてる肩口のブローチがムーア娘のお洒落のポイントで、カフェのお客様たちはキラキラした石がついていたりするけど、ファティマは働いているので、あまり派手にせず、地味目のにしているらしい。で、「これは紅珊瑚なの♪」とこっそり自慢しているらしい(^ ^)kawaii!!

ちなみに、あのベールの下は鬘を被っておらず、ただのお団子なのでつるんとしているらしい(@ @)。「ベールが取れないように命かけてます」というれーれが、本当に可愛かった!!




駅の場面についての、それぞれの裏設定。
・ちーちゃん(蓮水ゆうや)とみーちゃんは、兄弟(みーちゃんが弟)。逃げる途中ではぐれたお母さんを探している。みーちゃんが持っている鞄には、お母さんの持病の薬が入っていて、一緒に逃げないとお母さんが死んでしまう!と必死になっている。
・かいちゃんと雅桜歌ちゃんも、兄弟(かいちゃんが弟)
・れーれとまっぷー(松風輝)は黒人の夫婦。百千糸ちゃんが案内人(?)で、れーれが「財布をホテルに置いてきてしまった!取りに行かなきゃ!」というと、百千さんが「もう無理です!」となだめて汽車に乗せる、という芝居をしている。

いったん駅に入って、その後もう一度袖から出てきたときの設定。
・みーちゃんは、仕事をしていて、騒ぎを聞いて慌てて出てきた人。
・かいちゃんは、妻(藤咲えり)とはぐれて、探して、やっと出会えて抱き合って喜ぶけど、汽車には乗れないというドラマを演じているらしい。さすがに観てなかった(T T)……今度チェックします。
・れーれは、兄(月映樹茉)を探して、駅員(星吹彩翔)に掴みかかるという芝居をしています、だそうです。



あと、カゲコーラスの話もありました。
みーちゃんと84期の二人が女役の声でカゲコーラスをやっているそうなのですが、みっちゃんが肉布団を着ていて非常に幅が大きいので、マイクに届かなくて大変、という話をしていました。また、ソルーナさんとすっしーさんも同じパートを歌うのですが、こちらもお二人揃って相当に場所を取るので、狭いところで大変そう、だそうです。

竹下さんに「それにしても宙組のコーラスは凄いですね!」と言われて、すごく自慢げなみーちゃんがツボでした。
名場面となった国歌対決のお稽古でも、「自分の思いを全部出してやってみろ」と言われてやってみたという話があって……
みーちゃんは「椅子を壊しそうになった」、かいちゃんは「凄い泣きました」、れーれは「隣で七海さんが泣いているので、慰めていたら感極まってしまった」だそうです。

こういう話を聞くたびに、本当に宙組っ子は『奇跡的にピュア』なんだなあ、と感心します(*^ ^*)っつか、備品壊すなよ>みーちゃん(汗)




あとは……
カラー版の映画『カサブランカ』は、異国情緒があってとても良いそうです。
で、竹下さんの「今回は映像も素晴らしくて…」みたいな話を受けて、
「『カサブランカ』を客席から観たい」
と言うかいちゃんに、みーちゃんが
「あの店で真面目なのはビゴーだけなのに、いなくなったら困る」
とか一生懸命引き止めていたのが面白かったな~。

そんな話からの流れで、「ボスはどうですか?」みたいな話になりまして。
みーちゃんとかいちゃんが、口を揃えて
「階段から降りてくるリックを見て、ああ、この店で働いていて良かった、と思う」
というような意味のことを言っていたのが印象的でした。
竹下さんも、
「来たばかりのトップさんとは思えない?」
と結構突っ込んだことを訊いてくれたんですが、
「(3人とも逆転裁判チームなので)今回が初めてなんですが、そんな風にはとても思えない」
とか
「話を聞いてくれるし、笑ってくれるし、すごく温かくて」
「われらが誇るべきボス!って感じ♪」
などと、ちょっとリップサービス入ってるかもしれないけど、でも結構本音っぽく見えました(^ ^)。
上手く遣れているみたいで、良かった良かった……。


で。
カジノでの「ロシア式のお祝いでーす!」の後、かいちゃんは「サッシャだけずるい…」と突っかかって、エミールのちーちゃんに慰められている、とゆー話が出ていました。
ちなみに、ボーイの千鈴まゆちゃんは、「おらにもしてくれ」と言っているらしい。可愛い~~~!!(壊)







新公について。
ラズロのかいちゃんは「まゆさんのような包容力を見せたいと思ってがんばった」そうです。
「集会のナンバーは、皆の目が訴えてくるようで、ついうるうるしました。とにかく、最後の新公が『カサブランカ』で良かった」、と。

アニーナのれーれは、「しっかりしてて、大人で……と考えすぎて、行き詰ってしまって…」と迷いを見せながら、「本番は気持ちを切り替えてやれたと思います」と。

新公を卒業したみーちゃんが、本番やお稽古での二人の様子を、すごく丁寧に話してくれたのが嬉しかったです♪




■「カサブランカ」の登場人物で、好みのタイプは?

・みー 恋をするならリック、一生を共にするならラズロ(割と標準的な答えかな?)
・かい ラズロは自分が演じたので、まったくそういう対象としては考えられない……
    シュトラッサーなんてどうでしょう。あれで、意外と家庭的な優しいパパかも
・れーれ ファティマは、実はビゴーに片思いしているので、ビゴーさんです。

そして。
このファティマの告白を聞いたサッシャとビゴーの反応がめっちゃ面白かった!(*^ ^*)。
くるっと振り向きざま、声まで男役声に切り替えて話しかけたかいちゃん。
「サッシャは、ルノーがファティマを狙おうとするのから護ったりしてるのに、それでもダメですか?」と拗ねるみーちゃん。
君たち、本音が出すぎてますよ…?



■やってみたい役は?

・みー 黒い役。「スカーレット・ピンパーネル」のショーヴラン。是非歌ってください!!
・かい 友達や恋人のために死ぬ役。それも、誰かの腕の中で死にたい。
    これ、帰り道で友人たちとどんな役があるか考えたのですが、案外と見つからず…。
    ちょっと意味は違いますが、「銀ちゃんの恋」のヤスとか どうでしょうか?
・れーれ ストレートプレイや日本物やコスチュームプレイ。
     最後のは、たぶんわっかのドレスが着たいだけだと自分で言ってました(^ ^)。



■得意技(?)は?

・みー 宴会芸(公演のパロディとかやるらしい。観たい………)
・かい グラフの連載の話からなので、「絵も描ける」とかいうあたりでしょうか。
・れーれ いろんなものにラインストーンをつけて飾ることに嵌っています。

で。れーれが「(東宝公演中に誕生日を迎えた)ビゴーさんのために、ペットボトルのキャップをデコレートしたものをつくったのに、ずーっと忘れてきてばかりで……」と恥ずかしそうに告白してました。なんだか、高校生の恋模様を視ているみたいで、なんか照れる(汗)。
すっげー嬉しそうに鼻の下を伸ばしたかいちゃんが超ツボでした。
そして、「そうやって私をおいていく……いいわねビゴー」とめっちゃ棒読みで呟いたみーちゃんが死ぬほど可愛かった……。
この話のきっかけをつくったれーれが「来年のサッシャさんのお誕生日には、イヤホンをデコしたものをプレゼントします!」と言って、やっとおさまりました。しかし、……来年、なのか?>れーれ……。



あと、話の流れは忘れましたが、娘役さんは鬘とかアクセサリーとか自分で作って凄いよね、という話の流れから、男役ならではの苦労、という話になって。
「娘役さんは、地毛は一度まとめてしまえば後はあまり触らないからいいけど、男役は整髪料でガチガチに固めた髪を途中でなおしたりするから、髪が痛む痛む…」みたいな話になりました。
カミノモトが後援しているみっちゃんがいる宙組ならではの話題だなあ、と思いつつ(^ ^)。

で、「キッチリ目のリーゼント」のコツは?と訊かれて、即答で「横髪の角度」と応えたみーちゃん、「あと、前髪の高さ……かな?」と言ったかいちゃん。
どちらも、人によって似合う角度や高さがあるので、それを見つけるのが難しい、という話をしていたと思います。



最後に、竹下さんから「名古屋でお仕事があるそうですが」と振られたみーちゃんとれーれ。
来月中旬のトークショーの話をして、「みそカツ食べようね(はぁと)」と盛り上がる二人。
真ん中に挟まれて、キョロキョロしていたかいちゃんが、一言。
「そっか、私も行けば良いんだ」
……みなさま、かいちゃんは朝の7:30から並ぶらしいですよ(^ ^)v


あとは、二人がバウの話をさらっとして、かいちゃんがドラマシティの話をしてくれました。
公式に出ているあらすじ以上の情報はどちらも無かったのですが、
「近未来もので、アニメっぽいらしい、と聞いて、(アニメ好きの自分としては)キラキラ~~~っ♪♪という感じです♪」とハイテンションだったかいちゃんが素敵でした。

かいちゃん、「逆転裁判2」のナウオンでも、「ゲームが大好きで、凄く出たかったので嬉しい!!」と興奮気味に話していたときの盛り上がりようが凄かったっけ。私も元アニヲタなので、ヲタ同士、なんとなく気持ちが通じるような気が……するのは気のせいですが(^ ^;ゞ、とりあえず、楽しみが増えたような気がします。
「近未来」というだけで盛り上がれたカイちゃんを見習って、私も盛り上がらなくては(^ ^)



多少抜けがあると思いますが、だいたいそんなところだったと思います。
特別に暴走している人も、おとなしくて引っ込み思案な人もいなくて、ごく普通に、ナチュラルに会話している仲良しの3人、という印象でした。そして、3人とも想像していたより真面目な人たちだった(^ ^)ような気がします。みんな本当に可愛いわ(^ ^)
『奇跡的にピュア』な宙組っ子たちに、乾杯。

.
東京宝塚劇場 宙組新人公演「カサブランカ」より。


久しぶりに、本公演を観てまいりました。
……中日を過ぎて、新公も終わって、、、、また随分と演出が変わったような気がします。
「キャバレー」が一段落ついて小池さんがあいたのか、新公を観てみなさんの意識が多少変わったのか?いろいろ面白かったです。特に変わっていたのは、すみ花ちゃんのイルザでしょうか?いろいろ記憶と違っていて、あれ?と思いながらの観劇になりました。



さて。では、昨日の続きを。


・安里舞生(エミール/蓮水ゆうや)
どの組を見ても、芸達者ぞろいの92期。宙組も例外ではなく、サムで私の心を掴んだえなちゃん(月映樹茉)をはじめ、多士済々いるとゆーのに、声を聞いたこともない舞生ちゃんがどうしてこんなに気になるのやら……。
どう考えても168cmもあるとは思えない小柄な男役さんですが、スタイルが良いので一人で立っていると大きく見えるときもあります(^ ^)。……よりによって宙組に配属されたのに、それでも男役を選んだのは……よっぽど男役をやりたかったんでしょうねぇ(T T)。たしかに、あのサイズでも舞台の上では全く女の子っぽく見えないのは評価してあげたいなぁ、とは思います。
……せっかく美人なのになー。


と、前置きはそのくらいにして、新公エミール役について。

裁判所前広場が丸ごとカットされていたので、レジスタンスのアルバイトは無し。ついでに、シュトラッサー少佐は空港から街まで歩いて行かれるらしく、運転手のアルバイトもなし(^ ^)。
第4場のリックの店のカジノで、初登場です。

小さな頭が、髪をオールバックにすると余計に小さい(^ ^;ゞ。本役のちーちゃん(蓮水ゆうや)より相当に小柄なので、ルーレット台がずいぶん大きく見えました。っていうか、私は割と前方席だったので、周りのお客さんたちの陰に隠れて、すぐ見えなくなってしまうのが切なかった…(T T)。
客の一人一人に声をかけつつ、ごくなめらかにルーレットを回し、チップを集める。場をコントロールするための目配りとか、ひとつひとつの仕草に注目するのはさすがに無理でしたが、動きに無駄がなくて良かったと思います。やるべきことの多い役ですし、ここでバタバタしてしまうと、プロっぽく見えないので……。

カフェの外で話しているリックとルノーのところに、2万フランを貰いに来る場面。
ちーちゃんはプロとしての自尊心に傷がついて落ち込んでいる感じでしたが、舞生ちゃんはちょっとだけ、「ちくしょう負けるもんか!」みたいな負けん気があったような気がしました。
リックの“肩に手をやってぽんぽん”が、落ち込んでいるエミールを引揚げるだけではなく、逸るエミールを抑えるような空気もあったのが面白かったです。

まともに舞生ちゃんの台詞を聞いたのはこれが初めてだと思うのですが、とくに違和感なく、すっと入ってくる声でした。姿のイメージからもっと可愛らしい声を想像していたのですが、思ったより男役向きの声だったと思います。

ウガーテ逮捕の一幕は、さりげなく近くの女客をかばったりして、ちょっと男前でした。野次馬よろしくカフェの方まで出てきて、お客さんたちに責められているエミール。ちーちゃんもナウオンで「大変」と話していましたが、舞生ちゃんが責められていると、本気で可哀相になってきます(汗)。


地下水道での集会は、腕を一杯に伸ばして一生懸命踊っていて、ちょっと涙が出そうになりました。ダンスの技術の良し悪しはわかりませんが、伸び伸びと嬉しそうに踊る人だな、とフィナーレのダンスシーンでいつも思っていたので、また違うダンスを観ることができて嬉しかったです。
と言いながら。実は私、エミールさんがその場面に出ているのはもちろん知っているのですが(っていうか、いつもちーちゃんばっかり観てる)、なんとなく舞生ちゃんに思いが到らず(汗)、前に出てきたときに、ついつい「あれっ」と思ってしまいました……ごめんなさいっ。


「ボスのモットー」のナンバーがカットされていたので、舞生ちゃんのソロ歌を聴く機会は無しで終了いたしました……しょぼん。小柳さんのいじわるー。


カジノの場面は、リックとのアイコンタクトはもう少しさりげない方が……と思ったくらい、ちょっとがっつりヤリスギていたような気がしますが、良い感じに負けん気があって、「絶対に22を出す!!」という気合を感じました。
無事、二回連続で「22」を出したあとのさりげない笑顔と、他の客たちに「どうぞ」という様子でルーレットを確認させているときの「ふふん♪」という顔が、とても可愛かったです(^ ^)。



最後のご挨拶は、上手側の真ん中らへんにいたのかな?あれ?上下はどっちだったかな。……とにかく、清々しい笑顔でした。
ちょっとぼーっとして見えたのは、感無量だったのでしょうか…?

この新公の出来が今後につながるわけではないひとなので、舞生ちゃん自身が自分なりに納得できたのなら、それだけで十分だと思います。
私?私は、最後の新公に間に合って、舞生ちゃんの最後の新公を観ることができて、幸せでした。



彼女の人生は彼女のもの。それは、よく判っているのですが。……研4で卒業は、寂しいです……(T T)。

千秋楽まであと二週間弱。どうぞ最後まで、悔いのないようにがんばってください。(←こんな処に書いてないで、お手紙でも出せばいーのに……)



■94期(研2)
94期と95期は、役がついていてわかる方方のみ、とさせていただきます。すみません。

・美月悠(カッセル中尉/澄輝さやと)
声が良くて、下級生とは思えない台詞回しの達者な人。博多座でも感心しましたが、カッセルも非常に感心しました。
軍服の着こなしもよくがんばっていて、綺麗に出られていたと思います。もう少し表情に、「無表情」とか「普通の顔」とかいうバリエーションが増えると役柄が広がると思います。今はちょっと、癖が強すぎるような気がするので、勿体無いような。
あ、本公演ロケットの笑顔は、輝きすぎてますが、大好きです★


・風馬翔(ジャン/珠洲春希)
同じく博多座組のかけるくん。ジャンは文句なく良かったです。髭が超お似合い!!
カジノやカフェでの、周りの客たちとは一線を画した空気、「こいつは違う」という空気感があったのがさすがでした。本役の珠洲さんとは、体格も経験も何もかも違いましたが、一癖も二癖もある男役になりそうで、将来が楽しみです。
ただ、スリの腕はまだまだ訓練が必要、かな……?(^ ^)


・星月梨旺(トネリ大尉/月映樹茉)
カフェの場面で、ついついトネリの白い軍服を追いかける癖がついていることに、新公で気がつきました。ふと気がつくと目が追っている(汗)ファンなんだなあ、私(最近自覚しました)。

細かい動きや仕草まで、えなちゃんの芝居を良くトレースしていたような気がします。空港でシュトラッサーとカッセルの間に割って入るところのタイミングとか、コリーナに突っ込んで行って軽く躱されるところとか。独特の歩き方から、腕の振り方まで。……がんばったね、お疲れさまでした(^ ^)。


・春瀬央季(アンリ/愛月ひかる)
台詞はそんなに無いけど、意外とやることが多い役。本公演ではドイツ兵さんなので、切り替えが難しいんじゃないか、などと余計な心配をしていたのですが、全然問題なかったです。(←それを言うなら、アンリの本役は新公ではシュトラッサーーだよ/汗)
下級生なのにスーツの着こなしも綺麗で、ビジュアルばっちり!でした。
「アンリ」って言うからには、この人はフランス系なんですよね…?さりげなくお洒落な感じがしたのも良かった、かも(^ ^)。





■95期(研1)
・桜木みなと(ヤン/凪七瑠海)
カチャよりも、ちょっと気が強いというか、直情的な青年につくっていたような気がします。興奮すると周りが見えなくなる、っていう性格付けをしているのかな?と。
二幕のカジノで負けが込んできたとき、止めようとするアニーナをかなり思いっきり突き飛ばしていたのが怖かった。本公演は可愛いばかりなので意外でした。

ただ、最初のカフェの場面で、宝石商(七瀬)に腕輪を差し出したとき、あえなく断られて泣き崩れるアニーナを慰めるところではちゃんと包容力を見せたり、本性は優しいんだろうな、という雰囲気もちゃんと出ていたし、そのあたり(の普段のヤンとの落差)が、状況の切迫感を盛り上げていたと思います。
ご本人がそこまで考えてそういう風に役を作ったのか、小柳さんの指導なのか、興味は尽きませんが(^ ^)。


・実羚淳(カジノの客/光海舞人)
たった一言の台詞なんですが、カジノにパンしてきて最初の台詞だし、案外難しいと思うんですよね。でも、実羚さんはなかなかさりげなく、違和感なく返していて。その後の、カジノでの居方もすごく自然で、良かったと思います。次はもっとちゃんとキャラクターのある役が来るといいですね!


・七生眞希(ドアマン/風馬翔)
一番最初に、「リックの店」のドアが見えてきたときに、ドアをあけて欠伸をする青年。
本役のかけるくんも非常に笑顔がかわいい人ですが、七生さんも非常に可愛らしいですね♪
黒塗りでせっかくの美貌がちょっと隠れ気味でしたが、動きも違和感無く、がんばっていたと思います。


・朝央れん(空港の兵士/月映樹茉)
滑舌もよく、声もしっかりしていて、とても研1とは思えない出来でした。
長身ぞろいの宙組の中でも、かなり大きなほうの朝央さん。あのスタイルで、ちゃんと喋れるのは強みですね♪




最後の方はちょっと駆け足でしたが、以上です。
本公演が作品としての完成度が高すぎて、「新人公演という別の芝居」と言えるほどの出来ではありませんでしたが、本公演でがんがん使われて伸び盛りの下級生が皆、持てる力を出し切っていて、幸せな舞台になっていました。
あと二週間、「カサブランカ」でいろんな経験をして、次のバウ/ドラマシティに、そして更に次の「トラファルガー」に生かしてほしいな、と思います。

宙組下級生たちの、更なる成長を祈りつつ。



.
東京宝塚劇場 宙組公演「カサブランカ」新人公演。



本公演・新人公演それぞれのリック・ラズロ・イルザの三角形の形の違いについては、別稿で述べたいと思います(^ ^)。
まずは、新公ひとりひとりについて、学年順に。


■91期(研5)
・野々すみ花
気をつけていたつもりだったのですが、やはり一回しか観られない新公でメインを観ないではいられないので、なかなかチェックが難しくて……。カフェの「ムーア人の女」はほとんど全滅しました(T T)。
集会の女は、浅黒い肌でのびのびと踊っていて、とても素敵だった(*^ ^*)。
バザールの「ムーア人の男」は、最初わからなくて焦りましたが、なんとか捕獲♪ 意外と髭が似合ってて可愛かったです♪

すみ花ちゃんと藤咲えりちゃん、それぞれ全く違うイルザ像(←リックもラズロも全然違ったしね……)をしっかり創りこんできたヒロイン二人。
同期で成績もワンツーのお二人。これからも切磋琢磨して、良い舞台を見せてくださいますように!!


・花里まな(亡命者/美月遥)
この公演、短いながらもソロを歌う人が大量にいる(しかも皆ものすごい下級生)ので、いったいどうするのかなー?と思っていたのですが。カフェでの宝石商や亡命者たちを全部娘役にしたのは英断でしたね。しかも、皆上手くてびっくり!本役が皆下級生なので、男役にしては少し高めの音域ではあるのですが、それにしても上手かった。
芝居も、たった一回の本番にかける熱意が、毎日の公演での経験を上回った……かな?と思いました。切羽詰り感がよく出ていて、迫力があったと思います♪


・天玲美音(行商人男/天羽珠紀)
行商人のソロはさすがでした!!貫禄!
ちなみに、天玲さんはカフェのソロ(星吹彩翔)もやってましたよね?すごく良かったけど、あれは、さすがモンチは本役だな、と感心しました。歌唱力自体は多分天玲さんの方が上だと思うのですが、思わず観ていて息を呑むほどの苦しさというか、切なさがモンチの芝居からは伝わってくるんですよね……。まあ、本公演はカフェの前に裁判所前広場の場面があるので、「リスボンまで乗せてくれー!」という絶叫から、気持ちを作っていきやすい、というのはあると思いますが。


・綾瀬あきな(カフェの客、亡命者)
あんまり見つけられませんでした(T T)。本公演は、髭つけててもすぐ判るのに、なんでだろう。ごめんなさい、もう少し精進します。


・舞花くるみ(密航業者/天玲美音)
こちらも娘役さんに代わっていたソロですが、怖さというか、非情な感じというのは本役の天玲さんの方が上だったと思います。くるみちゃんは、やはり見た目が可愛らしいぶん、歌を聴いていてもあまりシャープさを感じなくて(汗)。ただ、実際に観てみると、それまでの印象とは随分違っていて、迫力のある歌が歌える人なんだな、と思いました。
博多座では、カゲソロも人材がすごく偏っていたので、くるみちゃんが歌えるって知りませんでした………(^ ^;ゞ。また、歌のある役が回って来ますように★


・笹良える(ムーア人の女、集会)
最近、やっと本公演でも見つけられるようになったばかりの笹良さん。集会で思いっきり踊っているのは見つけたけど、黒塗りしちゃうとわからないよ~(T T)。
……もう少し精進します……。





・澄輝さやと(サッシャ/春風弥里)
本役がカッセルなので、あんまりド金髪にするわけにもいかず……でも、しっかり癖っ毛にはしてましたね。あれはどうやってセットしたのか知りたいです(^ ^)。
スタイルが良いのでバーテンの衣装が良く似合っていたし、動きの綺麗な人なので、カクテルを作るところとかもバタバタせず、動きが滑らかでとても良かったです。芝居(というか台詞)も、いろんな壁にぶち当たりつつ、随分良くなったなあと感心しました。まあ、サッシャは比較的等身大の役なので、やりやすかったのかな?(^ ^)。お手本も良かったし

本役のみーちゃんに比べると、誉めて言うなら「自然で良かった」し、ちょっと厳しめに言うなら「存在感が薄い」……という印象が残りました。ソツなくやっているんですけど、せっかく弾けた役なのに、おとなしくて物足りない、って感じ。もっとやっちゃえば良いのに、と。
なんていうのかな、みーちゃんの「過剰さ」や「ヤリスギ感」は、みーちゃんの役者としての個性であると同時に、「カサブランカ」という作品にとって必要不可欠なスパイスにもなっているんですよね。もちろん、スパイスなのはサッシャだけじゃないんですけど、サッシャは特に、ある程度の過剰さが必要な役なんじゃないか、と。

……いや、このあたりは、演出の小柳さんがコントロールするべき問題で、あっきーには責任は無いんですけどね(汗)。すみません。

あっきーが演じると、サッシャが二枚目役になるという事実に、ちょっとびっくり(←どういう意味だ)。なのに、それでもやっぱり返事は「合点!」なのね、と、そんなところに滅茶苦茶ウケてしまいました(汗)。





■92期(研4)
・百千糸(ボーイ/千鈴まゆ)
本役のまゆちゃんほどに自由自在な存在ではありませんでしたが、可愛くて元気一杯で、良かったと思います。歌える人ですが、本公演で散々歌っているから新公は良いのかな(^ ^;。


・すみれ乃麗(アニーナ/花影アリス)
夫(ヤン)への愛情も感じられるし、芝居そのものは決して下手では無いと思うのですが、声というか喋り方が子供っぽすぎて、「私、マダムですの」な役には向いていなかったような気がしました。
個人的にはイヴォンヌが観てみたかったので、残念。単に、アニーナをせーこちゃん(純矢)で観たかっただけかも(^ ^;ゞ

ただ、れーれには何かしら「ソソる」ものがあるみたいで、彼女が悄然とルノーのオフィスに入ってきたとき、思わずやに下がったルノ(鳳樹)の気持ちがわかったような気はしました(^ ^)。そういう意味では、本役のアリスちゃんは全く色気のないタイプなので、れーれの方が役にはあっていたのかもしれません。あとは技術面がどうにか誤魔化せる程度になればなあ……。


・天輝トニカ(ヘルム/雅桜歌)
サッシャのバーの「8人目の客」、ヘルム役。丸顔で可愛らしい天輝さんですが、声なども工夫して、一生懸命シャープさを出していらっしゃいました。ちょっとだけ月組のふぁーびー(綾月せり)を思い出させる人なんですが、「逆転裁判」でも良い芝居を見せてくれたので、今後も楽しみにしています♪


・松風輝(ハインツ/風莉じん)
手堅い芝居でした。ハインツって、飄々としているようで意外と小芝居の多い人なんですが、どれもよくやっていたと思います。見せ場の一つである国歌対決の前の小競り合いがカットになっていたのですが、他の場面でも十分にあの“怖さ”を見せていたので、さすがだなーと思いました。


・月映樹茉(サム/萬あきら)
絶品。いやー、本当に素敵でした!!当日の日記にも書きましたが、猫は本当にサムに思いいれてしまって、「As Time Goes By」で泣けたんですよね……。すごいなあ、えなちゃん(*^ ^*)。


・夢莉みこ(ムーア人の男、集会)
笹良さん同様、最近やっと本公演でも見つけられるようになったばかりの夢莉さん。黒塗りに髭までつけたらサッパリわからないってば(T T)。


・千紗れいな(生地屋の女/千鈴まゆ)
バザールの個性溢れる商人たちの一人。千紗さんも台詞は達者で、上手だったと思います。ただ、まゆちゃんの衝撃には全く届きませんでしたが……。
可愛らしいひとですが、そろそろダイエットを意識してほしいかも。今のままでは、宝塚の娘役でいるのは難しいのでは?(T T)


・安里舞生(エミール/蓮水ゆうや)
すみません。ファンなので、別項で存分に語らせてくださいm(_ _)m
あああ、あんなに可愛いのに、あんなに素敵なのに、なんで卒業しちゃうんだ舞生ちゃん~!!(T T)





■93期(研3)
・蒼羽りく(バーガー/鳳翔大)
やっぱり、りくちゃんの芝居は良いなあ~、と改めて思いました。今回は歌もほんのワンフレーズなので(しかも本役が大ちゃん)全然問題なかったし、すごく良かったです。
芝居の方向性は、本公演で演じている『後先を考えない反独派の若者』と同じでしたが、地下に潜むレジスタンスとしての微妙な翳りというか、裏を感じさせる部分がちゃんとあって、本役の「ひたすら真直ぐで直情的な若者」とは一線を画していたのがさすがでした。


・星吹彩翔(アブドゥル/鳳樹いち)
本公演の役とはまったく立ち位置が違う役でしたが、さりげない存在感がすごく良かったです。
黒塗りが似合ってて可愛い♪


・瀬音リサ(行商人女)
スカイフェアリーズのリサちゃん、歌えることを全然知らなかったのでかなり吃驚しました(@ @)良い声でした!
他の場面は、「ムーア人の男」なんですね(^ ^;ゞ全然気がつかなかったよー(T T)。


・愛月ひかる(シュトラッサー/悠未ひろ)
長身に軍服が映えて、実に格好良かったです。若いのに髭がよく似合っていて、まずはビジュアルで大成功、という感じ。
声がまだまだ出来上がっていないので凄みが足りず、特に歌は残念至極でしたが、あの難しい役をこの学年でよく頑張ったな、と思いました。もう少し経験を積んでから観てみたかったです。

……それにしても、ともちんの役って毎回新公で苦戦しているような気がします。それだけ、毎回難しい役をやってるってことなんでしょうか……。ぜひ次回は、ともちんの役をさっつん(風羽玲亜)か、えなちゃんあたりに振ってみてほしい(^ ^)。


・七瀬りりこ(宝石商/天輝トニカ)
本公演のエトワールで美声を堪能させていただいているりりこちゃん。ソプラノの見事さだけでなく、胸声の中音域も実に素晴らしいことがわかって、これからの活躍が本格的に楽しみになってきました。
オペラのプリマドンナ体型なのはあの声を維持するために必要なのでしょうか……?娘役としてはかなり無理があるけど、女役でならゴージャスな美人になれそうなので、あらためて将来を楽しみにさせていただきます♪


・結乃かなり(ムーア人の女)
本公演では、カンカン以外はムーア人の「男」を演じている結ちゃん。ムーア人の女は普通に可愛かったです。「大江山花伝」ではなかなか良い芝居をしていたので、ドラマシティが楽しみ♪


・愛白もあ(行商人女)
もあちゃんも歌えるんですねー(@ @)。良い声だったんで吃驚しました。天玲さん・リサちゃんともよく合う声で、とても良かったです。


・夢涼りあん(ファティマ/すみれ乃麗)
・風海恵斗(ビゴー/七海ひろき)
すみません。ここはお二人とも似たような感想だったので、まとめて書かせてください。

お二人とも段取りの多い役なのですが、たった一回の新公だと、その段取りが体に入っていないのが判ってしまうんですよね……。あれやって、これやって、あれやって、、、、あ!感情を入れるのを忘れてた!!みたいな(←いや、それは言いすぎ?)ところがあって、ちょっとばかり人形っぽい動きになっていたような気がします。
それと、どちらも役自体が大きな役なのでは無く、役者本人の華というかオーラで目を惹いて、大役に見せていたんだな、と思いました。夢涼さんも風海さんも、綺麗だし芝居も上手な方だと思うので、どうすれば観客の目を惹きつけられるかをもっと意識されると良いのかもしれません。


・雪乃心美(カフェの客、集会)
本公演ではムーア人なので黒塗りの雪乃さん。ちょっとおとなしい感じですが、可愛くて目だってました。……うーん、カフェのお客さんたち(ムーア人含む)については小芝居までチェックしきれてなくて残念です(T T)。





あと少しなのですが、、、、長くなってしまったので、94期・95期はまた後日にさせてください。
…というか、あらためてこの作品、役が多いなーーーーーっ。研1でも大半の子に役名がついているなんて(感心)。

.
東京宝塚劇場宙組公演「カサブランカ」新人公演。




…の、前に。
青山劇場の「ウーマン・イン・ホワイト」と、日生劇場の「キャバレー」を観てまいりました。


どちらもすごく良かったのですが、特に、東宝劇場のお隣の日生劇場で上演中の「キャバレー」を、「カサブランカ」に嵌っている方に、ぜひお勧めしたい…です。

潤色の天才・小池修一郎が、隣り合った東宝と日生でこの二作品を演出したのは、偶然ではなかったのかもしれない、と思いました。
1929年から30年にかけてのベルリンと、1941年末のモロッコ。29年にベルリンを覆いつつあった時代の翳りが、10年を経て世界を覆いつくそうとしていた……という時代感覚。
両方に共通した、「世界が崩壊しようとしている」という台詞。


そして、「キャバレー」という作品ファンにとっては解釈に両論ありそうなラストシーンの解釈。
阿部力演じるクリフォードが、『もう一人のリック』でありえた、というラストの衝撃。
10年前のリックは、こういう男であったのかもしれないのか……と思いながら、劇場を後にしました。
ナイーヴで、優しくて、そして、自分の思う「正義」に頑固な青年。
恋人に裏切られ、失意のうちに列車に乗って、一時の棲家だった街を離れていく……。



キャスティングの全てに100%の拍手はできませんが、藤原紀香さんも諸星克己さんも予想よりずっと良かったし、とにかフロイライン・シュナイダーの杜けあきさんと、ヘル・シュルツの木場勝巳さんがあまりにも素晴らしくて、すごく幸せでした(*^ ^*)。









余談はそのくらいにして、「カサブランカ」新人公演。
(余談の詳細については、また後日書かせていただきます♪)

とりあえず、『ただいま宙組下級生勉強中』なので、学年ごとにまとめてみたいと思います(*^ ^*)



■89期
カチャ(凪七瑠海)とかいちゃん(七海ひろき)は書いたので、残ったのはほとんど娘役ですね。可愛い子ばっかりで凄い期だなあ。
ただ、今回の新公のコンセプトとして、役がついている人はあまりアルバイトしない、というのがあるらしく。せーこちゃんはコリーナ以外の出番はほとんど無かったと思うし、89期は全体に出番は少なかった印象でした。バザールの「ムーア人の男」とかになっているのかなあ?と思ったのに、そのへんももっと下級生が占めていたしなー。


・純矢 ちとせ(コリーナ・ムラ/鈴奈沙也)
黒塗りの美女。煌びやかなピンクの衣装が美貌によく映えて、歌も凄く良かったし、自分のファン(トネリ大尉)のあしらい方も堂にいったもので、すごく良かったです。ただ、それ以外はほとんど出番が無かったのが寂しい……(←見逃した?)


・妃宮さくら(カーティス妻/美風舞良)
元気で可愛くてやりたい放題で、めっちゃ可愛かったです(*^ ^*)。本役の美風さんも相当やりたい放題やってらっしゃいますが、その比じゃなかった(^ ^)。同期で夫婦ってやりやすいのでしょうか。
「垢抜けてる」っていうか、「ぶっ飛んでる」っていうか……それでいて、夫とはメチャクチャLOVE LOVEなのが、観ててホントに気持ち良い。可愛い(*^ ^*)。


・舞姫あゆみ(ピア/愛花ちさき)高慢ちきなカフェの客ですが、濃いピンクの衣装が華やかな美人顔に映えて、迫力美女でした。


・愛花ちさき(イヴォンヌ/純矢ちとせ)
芝居はせーこちゃんを踏襲しようとしてキャラに合わず失敗してしまった印象。ヒロイン経験が二度もあるベテランなので、もっと他のアプローチは無かったのかな?と残念な気がしました。


・雅桜歌(カーティス夫/十輝いりす)
いやー、可愛いのなんの!!
なんというか、さくらちゃんと二人並ぶと、そこだけ空気の色が違いすぎて、笑いたくなりました(^ ^)。カフェに入ってきたその瞬間から、全然違う(^ ^)。
裁判所前広場の場面がまるっとカットされているので、彼らが「エジプトに行く途中で、何も知らない」ということが全く描かれていないし、出番として非常に唐突な役なのですが、その不利を補って余りある「ぽややん」ぶりでした♪



■90期
こうやって、あらためて名前を並べてみると、めちゃめちゃ芸達者が多い期なんですね。
本公演でも皆やりたい放題で小芝居やってますが、新公は逆に、このあたりの人たちはほとんどアンサンブルが無かったので、自分の役の芝居に集中していた感じでした。


・鳳樹いち(ルノー/北翔海莉)
この人を語りだすと、めちゃめちゃ長くなりそうなんですが……

いやぁ格好良かったです。髭も似合うし、肉布団もキレイに補正してて自然な感じでした。でっぷり太った人の仕草を、凄く研究したんだろうな、と思います。
芝居も、あまり無駄な動きをせずに貫禄を見せて、よくがんばっていたと思います。本役のみっちゃんもそうですが、声の良い人は得ですね(^ ^)。良い感じに、年を経た古狸っぽさが出ていて、とても良かったと思います。
オフィスで、ラズロを見送ったシュトラッサーが出て行った後、ふと息をついてネクタイを緩める仕草がめちゃめちゃ気障で、ちょっと惚れそうでした。アニーナを迎え入れてからの、何というか、あまり明らさまに欲望を出さず、ちょっと抑えた好々爺にみせかけながら、目元に微かに色気を残した絶妙のバランスがとても良かったです♪

ただ……多分、いちくん自身も「ルノーの見せ場」と認識していろいろ組み立てていたであろう、リックとの銀橋(「本当の俺」)が、ハプニングで完全に吹っ飛んでしまったのは……お気の毒、でした(^ ^)。パニックを起こしたリックに無理矢理振られても、ルノーの立場でフォローするわけにもいかないし、困り果ててましたね。彼の周りだけ時間が止まってたよ(↓)。
でも、無事リカバリした後では、「早く言ってよ…」とぼやいたところでちゃんと笑いを取っていたり、さすがだだなあと思いました(*^ ^*)。


・美影凜(マヤ/妃宮さくら)
グリーンの衣装を綺麗に着こなして、金髪の鬘も本役のさくらちゃんと同じような長さだったかな?CSで役作りについて詳しく語っていらっしゃいましたが、いろいろ考えているのがわかる芝居でした。清楚な美人さんですよね♪


・花音舞(マリア/花露すみか)
花露さんの迫力というか、切実さはちょっと弱かったけど、歌はさすがでした。指輪を2400フランといわれて「そんなっ!?」とかえす驚きの表情が、なんか可愛かったです。
見せ場の「銀色の翼」がカットされていたのは残念ですが、宝石商の七瀬りりこちゃんとの丁々発止のやりとりにも緊張感があって、ちゃんと見せ場になってました。


・琴羽桜子(ベリーダンサー/舞姫あゆみ)
滅茶苦茶可愛かった!!桜子ちゃん、やっぱり可愛いなあ(*^ ^*)。
舞姫さんの色っぽいダイナマイトバディに比べると、少々細すぎて色気の足りないカラダですが、そこは煽情的な眼の芝居と、ダンステクニックでフォローしてました。
いわゆる「ベリーダンス」(腰を激しく振って…とか)では無いのですが、桜子ちゃんが踊ると、ちゃんとベリーダンスに見える(^ ^)。ダンスが挑発的だから、なのでしょうか…?(^ ^)。


・千鈴まゆ(客の女/)
本公演のバザールの「生地売りの女」で度肝を抜いてくれた役者っぷりのまゆちゃんですが、今回は終始白人の女性役のアンサンブルトップ、という感じでしたね。台詞は無いけど、カフェでも集会でもバザールでも、後ろの目立つところで小芝居していて、すごく良かったです。
ボーイさんとはまた違う目線で入ってみたカフェ。また何かを掴んで、お芝居に生かしてくれることを楽しみにしています。


・風羽玲亜(フェラーリ/磯野千尋)
この人も本当に達者な人ですよねえ!!(惚れ惚れ)。
手堅い芝居がすごく良かったです。ルノーのいちくんもそうですが、とにかく声に深みがあるので、軽い相槌にも人生経験の深さを感じさせてくれました♪♪ あああ、ステキすぎる♪♪
普段はそんなでもないのに(←すみません)、髭をつけるとものすごい美青年になってしまう…という、ちょっと困った美貌の持ち主なんですが(^ ^;ゞ、案の定、老けメークにはだいぶ苦戦していましたね。まあ、新公なので見た目はかわいらしくても構わないのですが、あの貌からあの声が出てくるのがなんとなく不思議です。


・光海舞人(カール/寿つかさ)
台詞の言い方など、ものすごくすっしーさんの役作りを参考に創りあげた印象はありましたが、こうまいのカールには、こうまいらしい温かみがあって、とても良かったです。
パリの場面が無い分、カフェの場面の比重が上がっていて。黒服の長であるカールのさりげない物腰や目配りが、店の格を上げているんだなあ、ということを思いました。
集会でのダンスは………がんばれーーーー(^ ^;ゞ。


・天風いぶき(ウガーテ/天羽珠紀)
ちょっと怯えたようにキョトキョトと動く目が印象的でした。あれって役作りですよね?すごいなあ……。目って随意筋だったんですね(←そりゃー随意じゃないと困ると思いますが)。
声が高めなのは、本役さんに合わせたんでしょうか。以前聞いたときは、声は低かった印象があったんだけど……気のせい?

リックへの信頼、その生き方、考え方への憧れ。そういった感情をストレートに出す芝居で、まっすぐさがとても良かったです。見た目は結構なおじさん(失礼)なのに、中身は意外に若そうな役作りが、すごく本役さんとリンクしていましたが、小池さん(あるいは小柳さん)の、ウガーテに対するイメージなんでしょうか…?

この人は案外アルバイトをしていましたね。集会にも居たし、バザールの通行人もしていたはず。目立つ容姿なので、結構見つけてしまったのですが、相当な小芝居キングとみた(^ ^)。



90期はここまでですね。
いやー、あらためて、ホントに面白い人が揃った期ですねぇ~~~!!(*^ ^*)。

91期以下は、to be continue...

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東宝劇場にて、宙組新人公演「カサブランカ」を観劇してまいりました。



新公演出は小柳奈穂子。一本ものなのでどうするのかなあ?と思っていたら、パリの場面と、群衆の場面(「ヴィザを!ヴィザを!」と「リックの店の捜索」)をマルッとカットしていました。
オープニング、リックが銀橋を渡りきったら、もうそこが空港だったことに吃驚(@ @)。


下級生ファン的には見せ場が削られていてとても残念でしたけれども、物語の筋立てを考えたら、カット場面の選定は間違ってないと思います。
ただ、そのカットに合わせて台詞を変えたりといったことは全くしていなかったので、新人公演を独立した作品としてみると、だいぶ意味不明なところが多かったとは思います。
フルバージョンの本公演の流れのままに、ところどころを飛ばしている、という感じなので。

「カサブランカ」は、前の場面での会話で使った台詞をを次の場面でも引っ張っていたり、そういうお洒落な展開が多いので、本公演をある程度の回数観てから新公を観る組ファン的には全っく問題無いんですけど、本公演を1,2回で新公、という観客には不親切な演出だな、と思いました。

同じ小池さんの一本モノでも、「太王四神記」(花組版/生田大和)は、非常に細かくカットした上に、カットした場面に関係する台詞は全部手直しされていて、一つの作品としての完成度が高かったのですが。

……まあ、新人公演なので、その辺はどちらでもいいのかもしれませんが。
出演者たちは、本公演をやっているつもりでお稽古すればいいわけだし。





さっきまでいろいろ書いていたんですが、またもや全部消えてしまったので(←どうして懲りるってことを知らないんだ私)、今日のところは、簡単に。


リック(凪七瑠海)

新人公演で主演をはるだけの力も魅力もある人だと思うんですよ、本当はね。芝居だって、良い物もっているんだから。
でも、この作品はちょっと難しすぎたね……(T T)という感じです。

あれだけのガタイと経験がある祐飛さんでさえ散々苦労して、制作発表時には全然ダメだった、ダブルのスーツの着こなし。そんなん、背だけはあっても細くて薄いカチャに、なんとかしろと言っても無理でしょう。

他の組を見渡しても、新公学年でリックをやらせたいジェンヌが、全く思い浮かびませんもの(T T)。

ただ、声はもう少しなんとか出来たんじゃないのかな、と残念に思います。
研2や3の抜擢組じゃないんだし、春にはバウ主演も控えているんだから、がんばってほしい!という思いをこめて、ちょっと辛口かもしれませんが。
昔から声が課題だった人ですが、シシィ役で女役の声を作り直して以来、男役としての声を見失っているような気がする。昔はもう少し出ていたと思うんだけどなあ……
とにかく、呼吸が浅い。と思うんですけよね。浅く吸って、喉で喋ってる。歌ってる。腹で支えてないから、良いところで響かせられなくて、なんだか鼻声に聞こえるんです(T T)。
カチャの方が祐飛さんより(声は悪くても)歌は巧いだろうと思っていたので、ちょっと驚きました。思っていた以上に、音域が狭かったしな……(@ @)。


そういう、演じる上で根本的なところ(ヴィジュアルと声)がダメすぎて、それ以外の部分を評価することが出来ません。ごめんなさい。
でもね、良いんですよ。これは新公なんですから。失敗を恐れて小さくまとまるより、がつんとコケた方が今後のためです。この失敗をうけて何をするか、どう挽回するか。カチャの場合は、そのチャンスがバウという形で既に与えられているわけですし、どうかどうか、がんばってほしいなと思います。必ず観にいきますので(^ ^)。






イルザ(藤咲えり)

可愛かった!!

本役と同期なだけあって、全然違う役づくりでしっかり造りこんでいて、さすがでした。
すみ花ちゃんのイルザよりは、ちょっとだけ歳上っぽい?かな?
清楚で慎ましやかで美しくて、儚げな女性像でした。革命の闘士でもなんでもなく、ただ、ラズロの理想に憧れて、憧れて、それが自分の生き方だと信じ込んだ少女。
ゲームのキャラクターにも生かされていた(^ ^)うるうるとした大きな瞳が魅力的で、これこそまさに「君の瞳に乾杯」したくなる瞳だな、と思いました。


一番印象として違ったのは、リックのカフェに最初に行ったとき、サムが歌う「As Time Goes By」を聴きながら、何というか……殉教者かなにかのような辛そうな表情をしていたことでしょうか。
今にも泣き出しそうに唇を噛み締めて、大きな瞳をうるうるさせて聴いていました。
キレイだった……。

すみ花ちゃんのイルザは、結構ギリギリ最後の最後まで、自分がリックを愛していることに気づいてない気がするのですが、エリちゃんのイルザは、この「As Time Goes By」を聴いている時点で、自分が彼を完全には忘れていないことも、手紙一つであの状況から姿を消した自分に、リックが深く傷ついたであろうことも、ちゃんと自覚していたような気がします。
彼を傷つけた自分を罰するための「思い出」。それが「As Time Goes By」だった……。

先日CSで流れていたエスプリトークで、エリちゃんが「ラズロと一緒に居るんだから逢うわけにはいかないのに、何がどうなってもいいから逢いたい、と思う」というようなことをお話されていましたが。
……すみ花ちゃんのイルザは、あまりそういう感じはしないのですが、エリちゃんのイルザは、本当にそう思っているんだな、と納得しました。そして、何のために逢いたいのかといえば、彼女は多分、謝りたい(あるいは、赦されたい)んだろうな、……と。


エリちゃんのイルザで、他に印象的だったのは、国歌対決でしょうか。
真ん中に立って「ラ・マルセイエーズ」を歌うラズロを、終始心配そうに見凝めるすみ花イルザと違い、エリちゃんのイルザは、シュトラッサーに脅されるまではちょっと自慢げに微笑んでいたのにちょっと驚いたので。
コリーナ(純矢ちとせ)が差し出すグラスを優雅に受け取り、礼をする様子は、ごくごく普通のマダムのようで。ちょっとだけ、エリちゃんのアニーナが観てみたいな、と思いました。






ラズロ(七海ひろき)

カッコよかった!!
いやー、期待以上に素敵でした。しかも、若い!!37歳には全く見えないリックより、更に若々しい印象で、ヘタをしたらイルザより若いんじゃないか、なんて(滝汗)。
とにかく、三人とも同世代くらいに見えましたね。

……っと。
今気づいたんですが。この三人って、一年前にアンソニー・ブラックとその愛人たちをやっていた三人ですよね!?すげーーーー。全然違う……。



歌やダンスはともかくとして(とりあえず、かいちゃんも祐飛さんのファンに言われたくないだろう)、かいちゃんの芝居は、愛が見えるところがとても好きです。
一つ一つの声にも、仕草にも、すごく愛が籠められているところが。「薔薇に降る雨」でも思いましたけれども、なんというか、相手を視て反応している、というのがわかるんですよね。うん。良い役者だなあと思います。
一番好きなのは、やっぱり深夜のカフェかなあ。
リックに
「それほどまでにイルザが好きか?」
と問われて、即答で「YES」と言うかいちゃんが、凄く好き。
で、そう応えた自分にちょっと吃驚して、でも、あらためて確信を持ってもう一度繰り返す。
「好きです。自分の命に代えても!」
……ちょっと照れたように言うんだよね、この台詞を。胸キュンですわ、まさに(*^ ^*)。

本役さんの、どこか非現実的なヒーロー像とはかなり違う、地に足のついた活動家っぷりで、とても良かったです。
愛があるから、世界を救いたいと思うんだな、と。そこはすごく素直に納得しました(^ ^)。






サム(月映樹茉)

リック、イルザ、ラズロ、ときて、次はサムです。すみません。
えなちゃんのサムが、あまりにも天使のように可愛くて、私はすっかり落ちてしまいました(^ ^;ゞ

ピアノを弾く姿が実に実に楽しそうで。
歌う姿はもっと楽しそうで。
踊る姿も、ものすごく幸せそうで。

あの学年で、ベテラン中のベテランが魂を籠めて造っている役をもらったのに、萬さんの真似をしようとは一切考えずに全く独自の道を歩こうとするそのキャラクターが、心の底から愛おしいです。
実は私、カフェでイルザに「As Time Goes By」を聴かせる彼を観ながら、泣いてしまったんですよね。
黒人の扮装がよく似合ってて、大きな瞳が硝子玉みたいにきれいで。
あのキレイな硝子の瞳には、今まで何を映してきたんだろうか、と。そんなことを考えているうちに。

彼は、リックの傷が開くことを懼れているんですよね。
リックが苦しむ姿を、もう視たくない、と。リックが苦しめば、自分も辛いから。そんな、エンパシーが強すぎるタイプなのかな、と思いました。
リックにとって、イルザが「嘆きの天使」なら、サムは「喜びの天使」なんでしょうね。いつでも自分の傍にいてくれて、見守っていてくれて、必要なときにはいつだって笑顔をくれる、年齢不詳の天使。

新人公演においてパリ時代が丸ごとカットされるのは、もう、仕方のないことなのですが。
新公メンバーで、あのパリのホテルの場面を観てみたい!です。えなちゃん、どんな芝居をしてくれただろうか。あの場面があったなら。





新公にハプニングはツキモノですが、今日の最大のハプニングは、カチャの台詞飛びでしょうか。
「本当の俺」の途中、ルノー(鳳樹いち)と話しているところで台詞が飛んでしまって、しばらくリカバリできなかったんですが。それでも、言葉を止めずにずーっと喋りつづけて、ルノーにも振って、、、流石の舞台度胸だな、と感心しました(^ ^)。よく頑張った!!しばらくしてから、お客さんからフォローが入って無事リカバリできたのですが……あれは、本人も辛かったでしょうけれども、一番辛かったのはルノーと、あと、客席にいた上級生たちでしょうねえ(T T)。
そういえば、途中で上級生たちが固まっているあたりから何か声が飛んでましたけれども、、、(^ ^)。
……私がもっと良い席だったら、すぐに教えてあげたのになあ(涙)。あの場面なら、全部台詞入ってる のにっ!(いばりんぼ)

まあ、台詞は飛ばないに超したことはないのですが、こういうことがあったときの対応とその後の場面の出来で役者のポテンシャルが見えるなあ、と改めて思いました。
崩れなかったカチャ。そんなことがあっても、ちゃんと最後までリックを遣りとおしたカチャは、やっぱり、舞台度胸のある、いいものを持っている人なんですよね。役者としての、大きな可能性を持っている人だと思う。

……ただ、今のままでは、その可能性も生かせるかどうか?と、それが、観ていて切ないです。


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宝塚歌劇団宙組公演「カサブランカ」。



宝塚Graph 2月号の、宙組トップ3のトークを読んで、……そっかー、と思いました。
舞台を観て感じていたことは、そんなに間違って(かけ離れて)はいなかったんだな、というか、
この後、書こうと思っていたことを、本人に言われちゃった(; ;)というか。


……良い作品になるためには、良い役者たちが揃わないと駄目なんだな、なんてことを思ったりしました(^ ^)。




■第10場 シュトラッサーの屈辱 ~1941年12月2日(夜)~

この場面だけ、場面タイトルが場所の名前じゃないんですね。
ここまでは全部「空港」だの「カジノ」だの、場所の名前だったのに。
……あ、「集会」ってのがあったか。

そんなことはともかく。

この場面のともちん(悠未ひろ)は、本当に格好良いです。
以前にも書きましたが、彼らが守ろうとするのは「我らがドイツ」なんです。
気候が厳しく生産力の低い北方に生まれた彼らが、どれほどに豊かな農業国フランスを羨んだことでしょう。
彼ら(ナチス)がやったことが「正義」だとは全く思いませんが、少なくとも、その構成員一人一人は、それが自分の「正義」だと思ってやっていたんだと思うんですよね。
そういう、曇りない信念の強さがあるから、あの場面がすごく好きなんです。

シュトラッサーは、国歌対決で敗北するその瞬間まで、完全な紳士でした。
それが、ここで敗北して初めて、リックのカフェの閉鎖を命じます。「(理由は)自分で考えろ!」という無茶なやり方で。
ただ、それでも彼は、ヴィクター・ラズロを「その場で逮捕」はしなかった。そこまでするには、プライドが許さなかったんでしょうね。
ラズロを捕えるなら、公明正大に捕えなくてはいけないと思っていたから。

それでも、敗北による苛々は募る。だから、その高揚を天にぶつけて、落ち着こうとする。
♪私は守る 守り抜く ああ
♪我が栄光のドイツ帝国

彼らは、負ければ後がないんですよ。元々が貧しい国なんだから。
貧しい人々が、持てるすべてを投げ出して闘いに打って出たのですから。
彼らを守るために、軍人たちは絶対に負けるわけにはいかない。誰に聞かせて脅すつもりもない、そういう、自分自身の決意の歌なんだと思って聴いています(^ ^)。


役を離れて歌そのものについて書きますと、大劇場では声も朗々と劇場中に響いて、本当に素晴らしかったです!(*^ ^*)
東宝では、喉の調子が良くないのか、音響が馴染まないのか、どこか探り探りやっている気がしてもどかしかったんですが、先週くらいからぐっと良くなってきましたね。本調子になってきたのかな?



■第11場 街路 ~1941年12月2日(夜)~

本舞台のシュトラッサー&ドイツ兵がはけると、下手から銀橋にラズロとイルザが登場。
リックの店を出て、ぐるぐる歩いて尾行を撒いたところ。

『カサブランカでは、人の命は大変安く取引されているらしい……』
リックの店からの去り際に聞かされたシュトラッサーの脅迫が、どうしても耳から離れないイルザが、縋るように言う。
「お願いよ、今日は集会には行かないで!」

わかっているのに。無駄だということは。
夫の性格を知っている彼女には、イヤというほど。

「シュトラッサーの脅迫が怖いの…」

怯えた仔兎のような妻を視て、ふとヴィクターの顔が綻ぶ。

「……じゃあ、ホテルの部屋でジッとしていようか……?」

そんな男がいいの?君の愛する男は、そんな男なの?
そう揶揄するように、なのに、他のどの時よりも甘い口調で。甘い微笑みを浮かべて。
ある意味酷い男だなあ、と思います。女が諦めざるを得ないポイントをちゃんと解っていて、そこを正確に突いて来る。お見事(はぁと)

「……あなたにできるはずが、ない……」

諦めをにじませて微笑むイルザが、すごく儚げでキレイ。一瞬だけで、すぐ立ち直るんですけどね。その一瞬の表情の深さに、さすがすみ花ちゃん、と毎回思うのです(*^ ^*)。
このときにイルザが考えているのは、ラズロを助けなければ、ということなんですよね、たぶん。この後の展開を考えると。


「……それで、リックはなんて言ったの?」

顔をあげて問いかける彼女の貌は、もう、レジスタンスの闘士のそれで。

「持っていることは否定しなかった。だが、……売らないそうだ」

穏やかに応えるラズロ。

「君に聞け、と言われたよ」

そう言われたときの複雑な胸の裡を見せることなく、ひどく柔らかな声で語り続けるラズロ。



彼は、いつ「イルザがリックに惹かれた理由」に気づいたんでしょうね。
二人が(自分の居ない)パリで付き合っていたことは、最初の夜に気がついたのでしょうけれども、付き合い始めたのが自分が死んだというニュースを聞いた後だという確信はどこから来たのかなあ。
……単純に、イルザのことを信じているからそれ以外の可能性が浮かばなかった、とか?(^ ^)

「何も言わなくていい。僕は、いつも君を愛しているよ」

『僕』なんですよねえ、イルザに対するときだけは。
リックとか、他の人に対しては『私』なのに。

「私もよ、ヴィクター」

美しい貌を伏せて肯いて。
それから、決心して貌をあげる。

「私がこれから何をしたとしても、あなたを愛していることに変わりないわ」

あたしが貴方を守る。必ず。
貴方をこんな地の果てで死なせたりしない。絶対に。


その決意の瞳を、しばし見凝めるラズロ。
長い間。
それから、ゆっくりと長い腕をあげて、大切なものを包み込むように、イルザを抱きしめる。

棒のように固くなったまま抱き寄せられながら、ふ、と力が抜けるイルザ。

大劇場で最初に観た頃は、単に段取りでやっているようにも見えてしまった抱擁シーンですが。
大劇場の後半から、恐る恐る手を延ばす蘭トムさんの、敬虔なといいたいほどの表情にやられてしまいました。
大切なもの……宝物とかのレベルではなく、ラズロにとってのイルザが宗教的な象徴でさえあるかのように見えたんですよね。喪いえないもの。喪ったら自分も壊れてしまうような。
いわゆる「愛」とはどこか違うもの。……畏れさえ含んだ、手に取ることも憚られるような「神聖な」存在。
自分が支えていなければ脆く崩れてしまいそうなあやうさもあるのに、手の届かないところで輝いている星のような存在でもある。ラズロにとっての、護るべき『うつくしきもの』。

生身の人間であることを棄てて、禁欲的な「ヒーロー」で在ろうとしてきたラズロという存在にとって、愛するものもまた、人間であることを超越した存在であってほしいんだろうな、と。
そんなラズロの『理想』であることが、イルザにとっての喜びであり、また同時に、苦しみでもあったのだろう、と。

それが『苦しみ』であることに、イルザ自身は気づいていなかったとしても。




『私が何をしたとしても』

この台詞を発したとき、すでにイルザは、この後どこへ行くか決めているんですよね。
どこへ行って、何をするのか。

『あなたを愛していることに、変わりないわ』

すべてはあなたへの愛ゆえ。
そう、自分自身に言い訳をして。

『あなたを愛している』

ラズロが自分に向ける想いと、同じモノなのかどうかは、解らないけれど……。



ラズロはこのとき、どこまで気づいているのかな?と思うんですが。
それについては、Graphでも何も言ってませんよね。

『私が何をしたとしても』とまで言われて、スルーできるほど鈍い男じゃないと思うんですよ。
普通に「何するつもりだお前」って思うよね?
空港では全て気がついていたわけだし(by Graph)。

でも、イルザを置いて集会へ向かう。

リックが「君の奥方に聞いてみろ」なんて言ったのは、その言葉をラズロからイルザに伝えさせたかった(そう言えば直談判しに来るだろうと思った)からでしょうし、
その意図は十分ラズロにも伝わっていると思うんですよね。
なのにそれを、あっさりとイルザに伝えて、しかも街路に置いていく。

『行ってきてくれ。頼む』
と言っているのも同然じゃないですか?


……“いっそのこと、よりを戻して二人で行ってくれ”と思っているのも掛け値なしの真情なんでしょうから、全体としては矛盾はないんですけどね。イルザを喪っても、自分が行かせたのだと思えば慰められるでしょうし。
あるいは、世界平和を取り戻したら迎えに行こう、くらいのことは考えている…のかもしれない。

ただ、この場面の前にはあまりラズロの気持ちが見える場面が無いので、ラズロが何を考えてこういう行動を取ったのかがわかりにくいな……とは思います。二番手役の不利なところなのかもしれません。



■第12場 リックの店(閉店後) ~1941年12月2日(夜)~

カール(寿つかさ)と、営業停止中の給与の配分について相談しているリック。
二人とも、店に出るときの制服(白いダブルのスーツ)は脱いで、着替えています。

そういえば。ここでリックが着ているグレイのスーツ、幕開きの銀橋で、トレンチの下に着ているスーツに凄くよく似ていると思うのですが、違うものなのでしょうか……?
(有村さん拘りのピンホールピン、とやらは、幕開きしかつけてないようですが)

「実は今夜、大切な集会がありまして。そろそろ失礼をさせていただきたいのですが」

この先の見通しを確認しあって話が切れたところで、カールが切り出す。
この「集会」は、前夜と同じく、レジスタンスの地下集会なわけですが。
リックは彼らのやっていることについて、どこまで知っているんですかねぇ。解っているけど眼を瞑っている(だから「俺には言うな」と)のは解るんですけど。それにしても、花売りのファティマとか、アクセサリー売りのバーガーとか、表に立って活動している人たちが入り浸っているわ、スタッフ全員が集会に参加しているわ(しかも結構センターで踊ってる)(←いや、それは関係ないから)、こんな状況であることを把握できているのかなあ……?


カールを見送ったリックが、軽く溜息をついて二階への階段を昇り始めたところで、境に降りているカーテンをかき分けて、イルザが姿を現す。


留まる、時間。


「……どこから入ったんだ?」

驚きを隠して、平静な声で。
いや、ラズロにああいう伝言を預けた以上、予想をしていなかったはずは無いのですが。

「通用口が開いていたわ。どうしてもあなたにお願いしたいことがあって」
「まさか、例の通行証には関係ないんだろうな?」
あれのおかげで、俺はとんだ人気者だ、と揶揄する口調で言いながら、階段を降りて店の奥(下手)へ向かうリック。追うイルザ。

「言い値で買うわ。お願いだから、私に譲って」

冷静に、冷静に。自分自身にそう言い聞かせるイルザの心の声が、聞こえてくるようです。

「あの人が背負う使命を、理解してほしいの」

あたしが守ってみせる。あの英雄を、必ず。
だから今、あたしは目の前のこの男に勝たなくてはいけない。
かつて愛した、この男に。

「他人の使命なんて、俺には関係ない」

逃げるリック。
追うイルザ。

「あなただって、ファシズムと闘ったんでしょう?……お願いよリチャード、パリのあなたに戻って!」

……イルザは、パリ時代のリックについて何を知っているんでしょうか。
回想のパリ時代を思うと、イルザの知っている『パリのリック』は、既に戦場でのトラウマを抱えた平和主義者になりきった後だと思うのですが。
彼がかつてファシズムと闘った英雄だった、という事実は、バーガーたちの口を通じてラズロに伝わっているわけだから、そこからさらにイルザにも伝わっていても不思議は無いんですけれども。
なんだか、その話を聞いたイルザが、自分が付き合っていた頃のリックのことだと思い込んで、『だから私は彼を愛してしまったんだわ!』などと短絡的に納得してしまった、とか……などと考えていたら、ちょっと哀しくなってきました……
やっぱり、深読みしすぎは良くないですね(^ ^;ゞ



「……俺はもう、自分のため以外には闘わないことにしたんだ」

そう、呟くように教えながら、肩を丸める仕草が、酷く切ないです。
リックの言葉は、イルザには届かない。

リックはただ、イルザの気持ちを確かめたいだけなのに。

「あなたが助けてくれなければ、ヴィクター・ラズロはカサブランカで死んでしまう!」

激昂するイルザに、ゆっくりと間をとって、リックは呟く。

「俺もカサブランカで死ぬだろう」

なぜラズロだけが特別なんだ。
お前が愛したのは、あいつ一人じゃないはずなのに。

「……死ぬには良いところだ」

何かを諦めたように、イルザに背を向けて煙草を出すリック。

……そういう一つ一つの仕草が、本当に格好良いなあ、と観るたびに感心します。っていうか、すみません、痛いファンで……。下級生たちがわらわら居るときはあまり真ん中に集中できないので、こういうところでは頑張って観ています(^ ^)。



震える手で、クラッチバッグから小振りの銃を取り出すイルザ。

ゆっくりと銃口を向けて、引き金に指をかけるときには、震えもおさまって。

振り向いたリックの、眉をひそめた表情。

「……さあ。通行証を頂戴」

感情を押し殺した、低い声。

「……嫌だね」

こちらはむしろ、平静な声で。

「もう一度言うわ。通行証を頂戴!!」

感情を昂ぶらせて叫ぶイルザに、落ち着き払った様子でリックが教える。
この店で再会してから初めて、自分自身の本心を。

「……君はラズロのためだったらなんだってするんだろう?」

公演の回数を重ねるごとに、このあたりの会話の間が、どんどん長くなっているような気がします。
お互いに逡巡しあい、「こんなことを言っていいのか?」と思いながら本音をぶつけあう二人。

「それならば、俺を撃て」

ラズロのために何でもするというのなら、撃つがいい。

「その方が、俺も楽になる。……さぁ、撃て、」

諦められる。すべてを。

「…撃つんだ!」

ここまでのリックの口調からは想像もできないほどの、勁い声。
イルザの瞳から眼を離さずに、胸をそらせて腕を広げたリックが、物凄く大きく見える。

たぶん。
戦場を駆けていた頃のリックは、こういう声で話していたんだろうな、と、そんなことを思います。戦場の悲惨さの中で、掲げていた理想を見失ったときに、彼は、こういう声をも喪失してしまった。

戦場を逃げ出して、一年間のパリ生活、そして、半年の逃避行、また一年間のカサブランカでの生活。
長いリハビリに少しづつ癒されていた、彼の心を取り戻すきっかけになったのは、イルザとの再会でした。彼が一番『落ちて』いたときにであったファム・ファタル。

イルザとの再会で、留まっていた時計が動き出す。サラサラ、サラサラ、と音を立てて。
イルザとの再会、ラズロとの出会い。


これを運命と呼ぶのなら、神様はとても残酷で、でも、乗り越えられない試練は与えない方なのだ、と。


「あなたを忘れようと努力したわ……!!」

姿勢を保ちきれずに、泣き崩れるイルザ。
腕を広げたまま、無言で見下ろすリック。

「でも、出来なかった。あなたがパリを去ったあと、どんな思いをしたか」




「あなたを愛してた、……そして、今でも!」

自分の口から出た言葉に、驚くイルザ。

焼けぼっくいに火が点いた瞬間、というものを、現実で見ることがあるとは想いませんでした。
……そのくらいリアルに、「思い出した」瞬間を見せ付けてくれた野々すみ花の天才。


イルザは本当に忘れていたんだと想うのです。
パリでの恋は、あの時点では真実だったのだ、と。
いみじくも、別れ際に自分自身が言ったとおりに。

リックは、信じたかったんだと思う。
あのときのイルザは、嘘じゃなかった、と。
あのときは、それが真実だった、と。
リックにとっては、それがすべて。そこに真実があったなら、それでいい。

あの時間が嘘でないなら、彼はもう一度、闘うことができる。
ラズロと対等な男であるために。



泣き崩れたイルザをひたむきに見凝めながら、リックは一歩踏み出す。
重たい一歩。そして、もう一歩。煙草は指に挟んだままに。

そして。
そして、ふいに滑らかに動き出す。

二歩、三歩、あっという間に間合いを詰めて、銃を手放したイルザの右ひじを掴み、煙草を持ったままの右手をすっと背中に回す。
抱き寄せて。抱きしめて。骨も折れんばかりに。





『私が何をしたとしても、あなたを愛していることに変わりないわ』

そんなリフレインが耳の奥で鳴っている。
それでも。

「過去」に引き戻されたイルザの耳には、もう、その言葉は届かない……。








あああ、やっぱり終わらなかった……。
新公までに、ラストの空港まで書いておきたかったんですが。

明日は新公なので、しばらく新公の話になると思います。すみません。
カチャ、エリちゃん、かいちゃん、がんばれーーーーーーっ!!

.
宙組と雪組の、次回(雪は次々回か)大劇場公演作品が、やっと発表されました!



宙組は、齋藤さんのグラン・ステージ『TRAFALGAR(トラファルガー)-ネルソン、その愛と奇跡-』と、石田さんのグランド・ショー『ファンキー・サンシャイン』。


齋藤さんで「トラファルガー」とゆーんで、てっきり「エル・アルコン」と同じ青池保子さんの漫画「トラファルガー」だと思いこんでいたのですが……違うんですね。主役はネルソン提督かあ~。
青池さんがOKを出さなかったんで発表が遅れた、とか、、、、ないか(^ ^)。

ネルソン提督は、典型的な「戦莫迦」で、ただひたすらに闘いを、勝利を求め、片目も片腕も喪って、それでも戦いをやめることができなかった男。齋藤さんがどんな解釈で彼を描くつもりなのかわかりませんが、久しぶりに齋藤さんとタッグを組む祐飛さん、めちゃめちゃ楽しみです~!
いや、遅かれ早かれ齋藤さんは来てくれると確信してはいましたが、予想外に早かったね(@ @)。まあ、そうそう何作も出来る訳ではないので、絶対に組みたい場合は早いほうがいいのかなあ(^ ^;ゞ。



石田さんの洋物のショーって、何があったっけ…?「風の錦絵」は好きだったんですが、洋物はあまり記憶に無いなあ……。うーん、石田さんには、本当は祐飛さんとすみ花ちゃんに宛書のオリジナルを書いて欲しかったので、、ショーになっちゃったのはちょっとだけ残念です。でもまあ、石田さんなら、祐飛さんやすみ花ちゃんとはもちろん、宙組っ子とは縁があるから、みんなの良いところを思いっきり引き出してくれることを期待しています!

石田&齋藤。……すみません、少数派かもしれませんが、今めっちゃ幸せです(*^ ^*)。




雪組は、正塚さんのミュージカル『ロジェ(仮題)』と、三木さんのショー『ロック・オン!』

正塚さん……。「マリポーサの花」で力尽きたように見えたのは気のせいですよね?水さんのラスト、というプレッシャーは相当なものだと思いますが、どうぞ新鮮な気持ちで作品を磨いてあげてください。……小さくてもいいから真那春人くんに役がつくといいなあ(^ ^)。

三木さんのショーは、普通に楽しみです。ただ、あまりにも特定のダンサーに出番が集中しすぎるきらいがあるので、もう少し『人海戦術』という宝塚特有の武器を活用してほしいなあ、と思いますが。……水さんは、そういえばトップになってから初の三木さんですか?麻子さんはひたすら三木さんだった印象がある(←「ME AND MY GIRL」も三木さんだし)し、案外、演出家って偏るものなのかもしれませんね。




なにはともあれ。
2010年の宝塚も、だいぶ盛り上がってまいりましたね(^ ^)。
充実した、素敵な一年間になりますように。





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宝塚歌劇団宙組公演「カサブランカ」。



■第5~9場 リックのカフェ ~1941年12月2日(夜)~

ピアノを運んできたサム(萬あきら)が、縛り上げられているスタッフ一同を解いたところで、暗転。
盆が回って、カフェの外に立って身だしなみを調えるルノー(北翔海莉)にスポット。
そんなルノーに気づかぬていで、店のドアを出たとたんに溜息をついて煙草を出すリックが格好良いです(*^ ^*)。

少しルノーと話をするリック。それにしてもルノー、というか小池さん、捜索を「壊滅的に」やる、っていうのは、日本語として正しいんでしょうか…?



そこにやってくるイヴォンヌ(純矢ちとせ)。
ドイツ領事ハインツ(風莉じん)と共に現れた彼女は、リックを見てふぃっと肩をそびやかし、「Guten Abend!」と声をかける。
ちょっと低めのせーこちゃんの声が、色っぽくて良いです。『権力者におもねっている』ように見える彼女の行動を軽く揶揄するリック。

「いや、彼女は自己流でドイツと渡り合っているのさ」
自分のようにね、と、軽くウィンクしながらフォローして、ルノーは店内に戻っていく。
それを見送るでもなく見送って、煙草を消して、リックは下手からカジノの方へ戻っていく。



賑やかにざわめくカジノの空気。
その中心で、さりげなく場をコントロールするエミール(蓮水ゆうや)。

ルーレット台の反対側には、真剣な顔でルーレット台を睨みつける、青いスーツの若い男(凪七瑠海)。その背に漂う、絶望の影。
彼の傍に立っていた女性(花影アリス)が、リックに気づいてそっと近づいてくる。

チェス台の乗ったテーブルに座って、リックに相談を持ちかけるアニーナ。

「ルノー大尉は、信用できる方ですか…?」
「何故俺に?」
「大尉ご自身が、あなたに訊いてみるように、と」
「あいつ…」

苦虫を噛み潰しながら、リックはアニーナに視線を送る。
平静を装って喋るアリスちゃんの、怯えた小動物みたいな、落ち着かない視線。ひっきりなしに動く指。

「ヴィザを二枚お願いしたんです。……でも、お金が全然足りなくて」

祖国ブルガリアがナチスに降るまえに、国を出たヤンとアニーナ。ブルガリアは、早い段階でナチスに与したことで後々国際社会で苦労することになりますが、この時点では、攻撃を受けたわけでもなく、一般民衆が慌てて逃げるような事態ではなかったはず、と思っていたのですが……もしかして、どっちかがユダヤ系だったりするのでしょうか…?(T T)


「もしここに、あなたを真剣に愛する女性がいたとして」

何かを振り切るように、言葉を紡ぐアニーナ。

「あなたの幸せを願って、そのために罪を犯してしまったら、あなたはその人を赦せますか…?」


ルノーが信用できるかどうか訊ねるだけのつもりだったのに、何故そんなことを言い出したのか、彼女自身にもわからないのかもしれません。
少なくとも、目の前のリックがルノーと同じことを言い出す可能性だけはなさそうだ、と、そこは信用したんでしょうけれども。


「でも、彼がそれを知らず、女の方も黙ってさえいれば」

彼が知ることさえなければ。そして、私が黙りとおすことさえできれば。

「……大丈夫ですよね?」


この問いかけに、「俺をそこまで愛してくれたひとは、いない」と応えるリックは、やっぱり相当ひどく傷ついていたんだなあ、と思います。

それでも。
「あなたが彼の勝ちを必死に祈れば、問題は解決するかもしれませんよ?」

軽い口調でそう告げたところで、ビゴーがオーナーを呼びに来る。
「失礼」と一言で終わらせて立ち上がるリック、縋るような瞳で手をのばすアニーナ、妻が他の男と話しているのにも気づかぬていで、ルーレットにのめりこんでいくヤン……。





カフェ側への扉をくぐると、ちょうどイヴォンヌが啖呵を切ったところ。

「誰と呑もうとあたしの勝手だろう!?」

だいぶ荒れた、やさぐれた口調。フランス人(蒼羽りく)につけつけと言い返す様子は相当な迫力で、本質的に「少女」の役者であるせーこちゃんがこういう役をすると、案外と似合うのでとまどってしまいます………「スケバン刑事」とか似合いそうだなあ(*^ ^*)、とか、そういう妄想が走ってしまいます(^ ^;ゞ

……ちなみに、あのイヴォンヌの服は、本来はお腹が見えてる……感じなのでしょうか。それとも、見えているとおり肌色のインナーを着ているのかしら?



りくちゃんは、今回も本当に良いお芝居をしています♪
「こんなドイツ野郎と……!!」
この台詞の切実さ、籠められた怒りの大きさに感動しちゃうんですよね。
そして、そんな挑発に乗って、掴みかかってくるハインツ。

「このカサブランカがドイツ領になるのは時間の問題だ!」

それまでは飄々としていたのに、このときばかりは……という感じ。



「俺の店は中立だ!政治の話なら、外でやってくれ!」

宣言したリックは、いきり立つ客たちを宥めながらカジノに戻る。
なんというか、素敵ですよね、このひと(*^ ^*)。なんか、サラッとそんなことを言ってしまうあたりとか。

ちなみに。
この場面の見所は、ハインツに殴りかかろうとするりくちゃんを押し止めるフランス兵二人(澄輝さやと、風羽玲亜)。とっても格好良いんですよ♪♪ ひと段落ついて、席に戻った後、りくちゃんを手荒に歓迎している様子が面白いです。なんていうのかな、「男の友情」って感じです。

あと、喧嘩を見て怯えるボーイ二人(千鈴まゆ・綾瀬あきな)も超ツボ(^ ^ かーわーいーいいーーー!!
ついでに、リックを怒らせたことに落ち込んでいる(?)イヴォンヌを、大事そうに抱えてバーに連れて行くサッシャ(春風弥里)も、なかなかいい味を出しています(*^ ^*)。後ろからイヴォンヌを抱きしめるサッシャを、振り払おうとして、でも振り払いきれないイヴォンヌが可愛い♪



上手端のテーブルに固まっていたドイツ兵たち。ジョッキを持って、リーダー格(?)の雅桜歌さん中心に、苛々しているシュトラッサーに挨拶しに近づいてくる。
「少佐、我々と乾杯していただけますか!?」

「……Prost!」

すみません。田中芳樹さんの「銀河英雄伝説」ファンの猫にとって、何に驚いたかって独逸語の「乾杯」が「プロージット!」じゃなかったことですわ(滝汗)。
Prost!とProsit!、辞書を見るとどちらも使うようですが。意味とかは何か違うのでしょうか…?




再び盆が回り、舞台正面はカジノへ。

ルーレット台にさっきと同じ姿勢で座り、残り僅かになったコインを握り締めるヤン。
その傍らでじっと唇を噛むアニーナ。

「マダム エ ムシュー、どうぞ」
穏やかなエミールの声。僅かなコインを握り締めて、逡巡していいるヤンに、
「どうなさいます?」
「……止めておくよ」

何かを振り切るように、立ち上がって台を離れようとするヤン。
つ、とその傍に寄り添って、囁きかけるリック。
「今夜、22を試してみましたか?」
エミールに軽く合図をしながら、22を奨めて。逡巡しながらも、持っているコインを22に置くヤン。

「締め切りました……さぁ、」
……このカジノは、賭け終わってからルーレットを回す方式(胴元側に有利)なんですね(^ ^;。

「22!黒、偶数、後半、22です」

無表情なのに、口許だけ微かに綻ばせたちーちゃんが、クールで素敵です。
でも、結構大量に賭けられているのにレイク(熊手みたいなやつ)を使わないで手でコインを回収しているのはなんで?(^ ^)

信じられないことを聞いたかのように呆然とするカチャとアリスが、すごくリアル。
おたおたして、「ど、どうしよう……」という声が聞こえてきそうなカチャの肩をそっと押さえて、「そのまま、動かさないで」というリックが、物凄く大人で、格好良い!(*^ ^*)

もう一度ルーレットを回して、エミールが宣言する。

「22!黒、偶数、後半、22です。……おめでとうございます」

最後の一言は、にっこりとヤンに微笑みかけながら。

あの場面のやり取り、全部好きです。遠くからリックの動向を見逃すまいと、チラチラとリックとアイコンタクトしているちーちゃんも素敵だし、「どうしようどうしよう - -;;;」とおたおたしている若夫婦もメッチャ可愛い。いい場面だなあ……。

さりげなく様子を視ていて、タイミング良くリックに小切手を渡すかいちゃん。
小切手にサインをして、喜んでいるヤンにすっと差し出すリック。
「すぐに現金に換えるんだ。…二度と来るんじゃない」


大喜びの若夫婦と、穏やかに微笑むオーナーを、ワクワクしながら見守っているスタッフたちがめっちゃ可愛い!
話を聞いて、カフェとの間をつなぐドアから飛び込んでくる連中。どこからどう話が回ったのか、玄関をほっぽって来たドアマンのかけるくん(風馬翔)とか、キャッシャーを閉めてまで外に出てきた天風いぶきさんとか、良いのか君たちそれで。短時間とはいえ、スタッフが全員カジノに集まったってことは、カフェは今、無法地帯ってことですよね。皆、リックのファンにもほどがある(涙)。



サッシャの音頭で歌いだすメンバー。

♪われらが誇るべきボス リック!

大好きなリックが、珍しく“イイコト”をしたんだから、そりゃー皆も嬉しいですよねえ(*^ ^*)。思いっきり“ロシア式のお祝い”で祝福するサッシャ。咄嗟に後ろからチェス台を押さえるエミールのタイミングは、結構いつも微妙な気がする。っていうか、東宝に来てからサッシャの強引さが増しているような気がします。熱烈すぎ(^ ^)。



サッシャの“祝福”をやっと振り払ったリックは、ちょうどカジノに入ってきたラズロと眼が合う。口許をぬぐいながら、なんとか間をおくリック。
「盛り上がってますね」
蘭トムさんの静かな口調が、笑いのツボを直撃してくれます(^ ^)。
「……従業員の慰安だ」
咄嗟に誤魔化してスタッフたちを散らせ、2階のオフィスへ客人を連れて行く。


ルーレット台の周りで大人しくエミールを待っている客たちが、なんとなく微笑ましいです。
カーティス夫妻はかーなーり怪しんでますね。まさこちゃんの「あやしい…」が超ツボ。
キャッシャーのボックス(檻?)は非常に軽い素材で出来ていて、天風さんが出入りするときにかなり動きます(^ ^)。こないだ観たときは、壁にぴったりくっついてしまって入れなくて、天風さんが片手で(!)キャッシャーを前に出して、中に入ってから、自分で少し押して箱ごと移動していました(^ ^;;;。金が入っている設定なんだろうに、あのボックスはいったい……。





フェラーリに教えられたとおり、リックから通行証を買い取ろうとするラズロ。
地下組織の連中から教えられた、リックの過去。反ファシズムの闘士であった彼の、正義感に賭けて。
「あなたには、私がアメリカに亡命して活動することの重要性がおわかりのはずだ!」
「……なんて綺麗事なんだろうな。昔の俺だったら、感動しただろうに」

この場面での、リックのヤル気のなさ、醒めた空気がとても好きです。
「いい商売だが乗らないねぇ」
という口調が、すごく厭らしくていい。そして、そんな嫌味な言い方をされても全くこたえていないラズロも、いい。

自分とイルザが事実上夫婦であることを、確信をもって知っているリック。
誰から聞いたのか?……イルザしか、いない。どこで?いつのまに?そんな疑問をきっと抱いただろうに、いっさい表には出さないラズロが、格好いいなあと思うのです。

ただ。小池さん、
「君の妻に聞いてみろ、と」
って……せめて「君の奥方に」とか、何か言い方あるでしょうに。なぜ「妻」なんだココで。





カフェから大きな物音が聞こえてくる。
話を切って、降りていく二人。



ドイツ人たちが「ラインの守り」を歌い上げている。
店の中を傍若無人に歩き回り、気炎をあげる彼らを、嫌そうに睨みつける、ドイツ人以外のひとたち。
さっきの喧嘩の昂奮がおさまっていないりくちゃんを必死で押し留める、さっつんとあっきー。



階段を降りてきたラズロが、ピアノに座って手持ち無沙汰にしていたサムに言う。
「ラ・マルセイエーズを!」

昂然と弾き始めるサム、よく通る高い声で朗々と歌いだすヴィクター・ラズロ。
一瞬びくりとして、そして、力強く唱和しはじめる、反独抵抗者たち。

ラズロはチェコ人だし、バーガーはノルウェー人だし、リックの店のスタッフたちも殆どはフランス人ではありません。客たちも、多分。でもこの当時、「ラ・マルセイエーズ」は汎ヨーロッパ的に反ナチ歌だったんですよね……。その歌を歌うフランス人、そしてフランス以外の出身の人たちの気持ちを思うと、なんだか涙が出てきます。

この場面で、何も歌っていないのは、リック、イルザ、ルノー、そしてカーティス夫妻。
それ以外は全員どちらかの陣営に与している、と思います。たぶん。
リックは二階との境の階段の上で煙草の煙に本心を隠して、
ルノーは伏し目がちに、酒のグラスに本心を隠して、
カーティス夫妻は、好奇心に溢れたキラキラした様子で両陣営を見比べて、
……そしてイルザは、ただひたすら心配そうに、明朗なオーラで店内の客たちの心を掴んだカリスマを凝視している。

「ラ・マルセイエーズ」が「ラインの守り」を最初に凌駕したとき、ドイツ人たちは慌てて一箇所に集まって態勢を整え、もう一度主導権を取り戻します。けれども、小さくまとまったことで彼らは、なんというか、「ラ・マルセイエーズ」チームとの陣取り合戦に敗れたかたちになった。
店の敷地のほとんどを「ラ・マルセイエーズ」が占めて、残りのほんの僅かなところに固まっている自分たち。その図は、まさにヨーロッパの北方に閉じ込められた自分たちと、温暖で豊かな平地を持つ豊かな国々との縮図に見えたのではないでしょうか。

音楽のラストに、
「フランス万歳!」
というせーこちゃんの迫力が、観るたびに増していくのに感心します。
どこまで行くんだろう、この人は、と。

そして、効果音で入るシャンパンの栓を飛ばす音。タイミングよく出してくるサッシャの空気の読みようも凄いですよね。みーちゃん本人もあのくらい……むにゃむにゃむにゃ
だれかれ構わずシャンパンを注いで回るサッシャ。あれはリックの許可が出てるんだろうか…などと素朴に疑問に想いつつ。

そして、その効果音の数々を背にうけて、嫣然と笑むラズロが素晴らしい。絶賛(^ ^)。
どうしよう。ラズロさんが凄く素敵だ……。光を浴びて、光を発して、皆からの乾杯を受けて。
この小さな店は、たった今ラズロの牙城になった……そんな空気。
リックはただ、無表情に店の中を視ている。興奮して口々に乾杯を叫ぶ客たち。一緒になって盛り上がっている従業員たち。
……そして、大きな瞳をみひらいて、ただ夫の姿を追う、小さなイルザ。



怒りに我を忘れたシュトラッサーが、ルノーにカフェの閉鎖を命じる。
「しかし、理由がありません」
「自分で見つけろ!」
……無茶苦茶な(- -;

それでも、命令が降った以上は従わねばならないのが軍人です。
ルノーはサッシャからもう一杯シャンパンを貰って一気飲みし、呼ぶ子を取り出す。

ざわめきに水をさす、鋭い音。
客たちと一緒に盛り上がっていた警官たちが、慌てて整列する。

「全員、ただちに退出せよ!おって通達があるまで、このカフェは閉鎖する!」




これだけ胡散臭い店だから、何かあったときには強権発動できるよう準備されていてもおかしくないですからね。まあ、ある程度の腹積もりはあったと思ったほうが正解でしょう。
よく訓練された警官たちは、理不尽な命令にも素直に従って、客たちを追い出しにかかります。さすがに、抵抗らしい抵抗はせずに出て行く客たち。
………あの人たち、店の支払いはいつするんだろう……?(今ひとつ店のシステムが解っていないらしい)



店の隅で不安な予感を押し殺しているイルザに、脅しをかけてから出て行くシュトラッサー。
巨大なともちんが小さなすみ花ちゃんに話しかけている時点で怖いですから(T T)。
警官たちの指示を受けたラズロが、イルザを迎えに来る。
とにかく、店の外へ。今のラズロの立場では、退去命令の出たカフェに居座っているだけで逮捕されかねないから。

シュトラッサーの言葉に怯えて、この街が紛れも無く敵地である事実を、あらためて噛み締めるイルザ。

早く。
早くこの人を、この街から出さなくては。
なるべく早く、いいえ、今すぐにでも、アメリカへ。

この人は、世界にとって必要な人だから。
偽名を使うつもりも、変装する気も無いこの人を、あたしが守ってみせる。
世界のために。
未来のために。
そして、、、、


誰のために、というところを自分自身に誤魔化しながら、オスロの少女は、一つの決心をするーーーーー。


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宝塚歌劇団宙組公演「カサブランカ」。



まずは。初見の時から突っ込んでいたのに、書くのを忘れていた突込みを。
どうしてパリ市民は、全員トレンチコートにマフラーをつけ、帽子まで被って汽車を待つのでしょうか?
6月のパリって、そんなに寒くないですよね……?
(いや、着替える時間がないから、という理由は判っているのですが(^ ^;ゞ



■第3場 バザール(ブルー・パレット) ~1941年12月2日(昼前)~

人々で溢れかえるバザールの裏には、フェラーリ(磯野千尋)の店「ブルー・パレット」がある。
なんちゃってイスラム風(?)の内装に、ちょっと豪華めなソファ。いかにも胡散臭げな感じがいいです。リックのカフェが「アメリカン」なら、こちらは「ムスリム」な感じ、でしょうか(^ ^)。


ルノーのオフィスで「7時から並んでいた」のにヴィザを出してもらえなかったヤン(凪七瑠海)が、フェラーリのところに闇ヴィザの交渉に来ている。
「2万フランじゃ二人分は難しい」
それなりに同情の貌は見せつつも、あっさりと断るフェラーリ。彼はルノーの性癖を知っていて、「奥さんが交渉しているなら、なんとかなるかもしれない」と呟く。含み笑いで。
頭のてっぺんから「ハテナ?」を飛ばしながら、不安げに去っていくカチャが、なんかすごく可愛いときがあります。



フェラーリとヤンの話が終わるのを待っているリック。
時間的にはラズロたちがルノーのオフィスを出る頃でしょうから、11時頃、かな??

「一杯どうだ?」
「いや、午前中は飲まない」(←だって二日酔いなんだもん(by お披露目トークライヴ))
「中身はバーボンだ」(←意味不明。…と思ったら)
「俺の店には、ホンモノのバーボンを入れてくれよ?」(←バーボンにも色々あるのね)
「大丈夫、荷抜きなんかしてない」
「最近は、な」

ここの会話が結構好きなんですよね。なんていうか、間が良いと思う。(時々すっ飛ぶけど)
しかし、フェラーリはバーボンの瓶に何を詰めて売っているんでしょうかね……?

「昨夜、ウガーテが拘置所で死んだ」
「今朝聞いたよ」

話題を核心にもってくるフェラーリ。それにしても、リックは「今朝」、誰に聞いたんでしょうか。ルノーのオフィスになんて行ってないだろうし(←二日酔いだから)、店員は皆レジスタンスだからそんなところには近づかないだろうし。
あ、フランス兵のアルバイトをしているキャッシャーの天風いぶきさんがいたか!…というのは冗談ですが、まあ、風羽玲亜さんあたりが伝えに来た可能性はあるのかな…?

「あの通行証の持ち主に提案したいんだ。俺に捌かせろ、と」
「誰に?」
「お前に」
「……俺?」

何もかもわかっていながら、何もわからないフリをする、ベテラン二人。磯野さんも決して台詞術に長けた人ではないのですが、キャラになりきっているのがすごいなあと思います。

「(あんたがそう思うってことは)…ルノーもそう勘繰っているんだろうな。店が手入れにあうのは時間の問題か」
「だから、その前に話を付けたくて、朝っぱらから頼んでいるわけだ」

もう昼近いはずだけど、「朝っぱら」なんですね……(^ ^)。さすがモロッコ。

軽く手を振って、立ち上がるリック。お前に渡すツモリはないゾ、と言外に匂わせながら、飄々と下手へ向かう。

そこに、ファティマに案内されてきたヴィクターが鉢合わせする。苦笑いで挨拶を交わす二人。
嬉しそうにラズロを迎えるフェラーリ、表情を隠して上手袖へはけていくリック。





ふたたび盆が回り、バザールへ。
ウガーテの通行証の話を散々した末に、当のウガーテ(天羽珠紀)が元気にたのしそうに髭面で歌っているのを視るのは、とっても愉しいです(^ ^)

♪迷路の奥では何でも手に入る

ヴィザでも、女でも、何だって思いのままだ。
引き換えるものさえあれば。


ベリーダンサーの舞姫あゆみちゃんが、バザールの片隅で色っぽく踊る。
煽情的な褐色の肌が美しい。元花組の舞城のどかちゃん系の美女なんですよね。素敵だなあ(*^ ^*)。
その手をさりげなく取るジャン(珠洲春希)、のほほんと受けるカーティス(十輝いりす)。
鼻の下をぎゅーーーんと延ばして美人と踊る旦那をじぃっと睨みながら、その周りをぐるぐる回るカーティス妻(美風舞良)が素晴らしいです♪ 可愛いよ~~っ!!精力的に店を見て回り、ああだこうだと手に取ったりしている彼女と、そのエネルギーについていけなくてボーッと立っていたところに、ダンサーが来てくれたのでラッキー♪ とか思っていそうな旦那さん。
あれで案外、惚れあっている感じなのが愛おしい★

♪ただ一つ見つからない
♪愛だけは売ってない

“ムーア人の男”に唯一のホンモノの男役(風馬翔)がいることに、つい最近気がつきました。
てっきり、全員娘役さんだと思っていたのよー(汗)。ごめんね、かけるくん。
ああ、ポンファ通り(←太王四神記)といい、このバザールといい、忙しいったら……

あまりにも皆がいろんなことをしているので、詳細は「観てください」ってことで、省略(^ ^)。





ラズロを待ちがてら、露天をひやかしているイルザが、生地屋の女(千鈴まゆ)にレースを売りつけられている。

「千フランを、700でいいよ!」

……あ。まゆちゃん、ここは女役なんですね。もしかして、フィナーレ以外で唯一の女役ですか?(←他は全部、男の子役)それにしても、お芝居巧いなあ~!ちょっと真ん丸いけど可愛いんだし、この調子で役がついていくと良いのですが(^ ^)。

「200で十分だ」

イルザを見つけたリックが近づいてきて、さりげなく女を追い払う。
ちょっとだけ悔しそうなまゆちゃんが可愛い。でも、またすぐに次の客を捕まえて同じようなことを言っているような気がする……。

「昨夜は呑みすぎて、ひどい状態だった。……すまない」

率直に謝るリック。
ちょっと戸惑うイルザ。

「……もう、いいわ」

もう、すべては終わったコトなのだから。
イルザにとっては。

「昔のあなたになら、話が通じたと思う。でも、昨夜のあの男には何を話しても無駄ね……」

イルザは、何も知らない自分に、まだ気づいていない。
昔のリックがどんな男だったのか。今のリックがどんな男なのか。そんなことさえ、なにひとつ。

「あんな憎悪のまなざしで、私を視るなんて」

そう言いながら、『憎悪のまなざしで』リックを視るイルザ。

「昨夜会わなかったことにすれば、パリの思い出を傷つけずにとっておけるわ」

思い出は、古傷に沁みるものだから。
傷みを感じることもないほど遠くなっていた『思い出』が、リックの視線の強さに血を流し始める。だから、必死で眼を逸らして。パリは思い出。もう戻らない日々。戻らないからこそ美しく見えるのよ、それだけのことよ……

「もう二度と会うことはないわ。じきにここを発つから」

離れてしまえば、この傷ももう一度癒せるわ、きっと。
ラズロの傍で、まぁるくなって。そうすれば、すぐに。

「君はいつか、階段を昇って訪ねてくるだろう。俺はそれを待っているんだ」
「ありえないわ。……リック、昨夜私が言いたかったことはね、ラズロが私の夫だということよ…」

胸の奥に凝っていた秘密を打ち明けて、かえって重たいものを抱えてしまったような貌をするイルザ。
衝撃のあまり、凍りつくリック。

「過去は聞かない、という言葉に溺れてしまったのね、私……」

正直に全て話すべきだった、ごめんなさい、という言葉を残して走り去るイルザ。
追いかけることも出来ずに、天を仰ぐリック。

♪それなのに何故、
♪世界中にたった一つしか街が無いかのようにやって来たのか……


何故、と問いかける。
何故?と。


他にどこに行けばいいというのか。
ここはカサブランカ。地の果ての白い街。国を喪くした者の吹き溜まり。

自由の国アメリカへ逃げるための、『たった一つの』中継地なのに……。






リックの前から逃げ出したイルザは、ブルー・パレットでラズロと合流する。
イルザの分のヴィザなら用意できるが、さすがにラズロの分は難しい、と告げるフェラーリ。


一つ、素朴な疑問なのですが。
ラズロはどうして、偽名を使うということを考えないのでしょうか?
闇ヴィザと偽造ヴィザの違いも今ひとつよく判らないのですが(汗)、リックのカフェの予約にしてもそうなんですけど、偽名を使うとか、変装するとか、そういう発想はないのかなあ…?

……『世界が注目する男』だから、そんなことしても無駄なのでしょうか……?



いつ、ドイツが態度を豹変させて、カサブランカを「占領」扱いにしないとも限らない。
シュトラッサーに居場所も目的も知られている以上、カサブランカはラズロにとって非常に危険な土地になってしまっている。

だから、ラズロはイルザを先に脱出させておきたいんですよね。ラズロ一人なら、伝手もあるし、体力もあるから、どうにでもなる。
でも、イルザはそうはいきません。妻だと公表もできないイルザのために、どれだけの協力が得られるかもわからないし。
あるいは、女連れでは使えないルート、というものもあるかもしれないですし、ね。

しかも、イルザがずっとカサブランカに居た場合、万が一シュトラッサーが痺れを切らしてイルザを抑える挙に出たら、もうどうしようもなくなる。
なんとかイルザを先に行かせたい。それはラズロの本音であり、本気だと思うんですよね。

でも、イルザは頷かない。
リックと再会して不安なイルザは、ラズロと離れることに本能的に不安を感じるのでしょうか。

「マルセイユで私のヴィザが発行されなかったとき、待っていてくれたのは何故?」
「それは、君を愛しているから」
「……ならば、私も先には行けない」

イルザが先に行かないのと、ラズロがイルザを待っているのとでは意味が違うとは思うのですが。
それでもラズロは、妻の固い気持ちに折れてあげることにする。

「決めました。ヴィザが二枚手に入るまで、探し続けますよ」
「ならば、一つ情報を提供しましょうか」

ファシズムに賛成できない自由主義者は、『世界をあっと言わせた男』に教える。
クロード・ウガーテが盗み出してあなたに売るはずだった通行証は、今はリックが持っているかもしれない、と。

このときの、フェラーリのリック評が面白いな、と思います。
『予測のつかない男なんですよ。とてつもないことをしでかすような、それでいて何もしないような』

なんだか……祐飛さんご本人の評価を聞いているみたい、と思ったのは私だけでしょうか(^ ^)


フェラーリは、リックの過去を知っているのかなあ?
地下組織の連中が知っているくらいだから、その筋では有名な話なのかもしれませんね。ワクワク。





■第4場 リックのカフェ(開店前) ~1941年12月2日(午後)~

店の前に整列した警官たち。カッセル中尉の
「これより、リックのカフェの家宅捜索を開始する!」
という指示で、突入(?)する警官たち。

開店準備で忙しいスタッフたちが、びっくりして顔をあげる。

サッシャ(春風弥里)の

♪いったい何をしに来たんだ?

から、全員の

♪他人の事情に巻き込まれるな
♪この世はすべて情け無用

まで、一列に並んで、一言づつ歌っては列の後ろにつくスタッフたちの動きが面白すぎです♪

「問答無用!捜索開始!」

カッセル中尉の号令で、動き出す警官たち。応戦するスタッフたち。
テーブルクロスを、闘牛士の使うカポーテみたいに使ったり、ディズニーミュージカル「美女と野獣」の戦闘シーンみたいな演出がすごく楽しいです。照明もストロボっぽくして、まるでスラップスティック系のコメディ映画みたい。

最終的には、警官たちがトイレットペーパー(←プログラムにはそう書いてあります。観ていたときは、ロールタオルかな?と思っていたのですが)でスタッフを一つに括り上げて捜索を続行する。
しかし、いくら探しても何も見つからず、手ぶらで引揚げていく。

そこへ。

「おっはようございま~す♪」
と明るい声で挨拶しながら、黄色く塗られたアップライトピアノを押しながら現れるサム(萬あきら)。

……そりゃー、見つからんわ。
通行証をピアノの中に隠したリックは、この事態を予測していたのか?(違うと思うけど)





……ちなみに、天風いぶきさんは、キャッシャーとしてもフランス兵としてもこの場面には居ません。次の場面には居るのになあ(^ ^;


.
雪組トップスターの水夏希さんが、次々回大劇場公演(9/12千秋楽)で卒業されることが発表されました。


漠然とした予感が、全く無かったとは言いません。
トップスターになれば、いやならなくたって、タカラジェンヌはすべて、いつかは去っていくのだから。

でも、少なくとも今発表されるとは全く考えていなかったよ……(呆然)。

1月に発表で、9月に卒業。8ヶ月か~。最近は5~6ヶ月前に発表、というのが多かったので、すごく早く感じます。
昔、マミさん(真琴つばさ)が9月に発表して7月卒業だったので、それよりは少し短いんですけどね。

でもね。少なくとも、私がファンになってからは「演目未定」での退団発表は初めてだと思うんです。いったい、何が起こっているんだ劇団では。


水さん。
花組時代・宙組時代は、それほど興味のあるスターさんではなかったんですが。(嫌いではなかった)(ちなみに月組時代は猫が宝塚ファンになりたての頃で、トップ以外は個別認識できてませんでした)

最初に「おっ?」と思ったのは、たぶん、雪組に来てからの全国ツアー「銀の狼」のレイだった、と思います。優しくて愛のある芝居が素敵だなあ、と。
そして。中日でのプレお披露目「星影の人」以来、今夏まで、長いこと水さんは、私にとって「五組中で一番好きなトップさん」でした(*^ ^*)。


「マリポーサの花」のネロ。「カラマーゾフの兄弟」の長男。
ハードボイルドな男の中の男でありながら、ぬくもりを感じさせる優しい芝居。人を愛し、世界を愛し、生きることを愛し、そして、相手役を愛することができるひと。
ナウオンステージで、その場にいない下級生や上級生を語る口調のやわらかさ。卒業していく組子たちに向けた、不器用だけれども真摯な「送る言葉」。
役者としては勿論、組の真ん中に立つ存在としても、すごく尊敬できる人なんだろうな、と、ずっと思っていました。

期限は切られてしまったけれども、しかも、そのうちの半分は植田(紳)作品ですけれども(泣)
その次の(最後の)作品がいいものでありますように(切祈)。
大好きなトップさんなんだから、しっかりお見送りしたいんだよ誰だって!!頼むよ劇団……。



次回宙組大劇場公演と雪組大劇場公演、そして星組の梅田と博多。この辺りの作品が、とっとと発表されますことを(そして、どれも良い作品であることを)、心から祈っています。













と、いうわけで、「カサブランカ」の続きです♪


■第2幕 第2場B 警視総監のオフィス(中) ~1941年12月2日朝~(つづき)

朝10時半。
ラズロとイルザが現れるのを、ルノー(北翔海莉)のオフィスでジリジリと待つシュトラッサー(悠未ひろ)。

「ラズロは本当に来ると思うか?」
「先ほどホテルを出たと監視から報告が」

ルノーの返事に、尊大な感じで「よろしい!」というともちんが、子供みたいで凄く好きです。
しかも、唐突に
「私は、ウガーテは通行証をリチャード・ブレインに預けたと推理する」
とか言い出すあたりも、なんとなく好き。なんでだか、ともちんのシュトラッサーが凄く好きです。不思議なくらいに。
……何故なのでしょうねぇ。



ラズロとイルザが登場。

「おお、定刻どおりに!」
というルノーの台詞は、嫌味なのかな?と思っていたのですが。さくら貝さまから違う解釈をご提示いただきましたので、よろしければ昨日の記事のコメントをご覧くださいませ♪



単刀直入に、ラズロを脅すシュトラッサー。
「私の任務は、君をカサブランカに拘留することだ」

尊大なドイツ将校に、軽く笑んでラズロがかわす。
「……カサブランカの暮らしに、慣れなくてはいけませんね」

この台詞が、ものすごく好きだったりします。なんの気負いもなさげな、軽い口調の嫌味っぷりが嗜虐心をそそる(^ ^;

「だが、明日リスボンに発つことも可能だ」

そんな夢物語に、つい身を乗り出すラズロ。ウガーテを喪って、よほど追い詰められているんでしょうか。シュトラッサーが、受け容れられる条件をだす筈がないのに。

「君は地下組織の指導者たちと親しいはずだ。…彼らの居所を教えれば、ヴィザを出そう」
「収容所に一年以上も居て、どんな拷問にも耐え抜いた私が、口を割ると思いますか?」

恬淡とした口調の凄みが、さすがです(*^ ^*)。





さて。
ここでまた一つ、突っ込みを。

一幕で、初めて“憧れの”ラズロに出会ったバーガー(鳳翔大)が口走ります。
「あなたが逮捕されたというニュースを、5回も読んだ」と。
ちなみに、映画では「あなたの死亡記事」になっているそうですが。(言われてみると、うっすら記憶がある)

まあ、それはどちらでもいいのですが。
なので私は漠然と、ラズロは5回も逮捕されたんだと思って、納得していました。

しかーし。
プログラムによると、どうやらそれは誤解だったらしい……。

ラズロはどうやら一回しか逮捕されていないようなので。

・「『一度は』ナチスによって収容所に収監されたものの」(プログラム第2幕第1場)
・「収容所から脱出したときの傷に比べれば……」(byラズロ)(収容所からの脱出劇を複数回やっているようには聞こえない)
・「世界をあっ!と言わせた男だ」(byリック)(「あっ!」を言わせるには、一度で十分)

……ってことは、4回は虚報だったのか?
それとも。バーガーは、一つの記事を5回読み返したって言いたかっただけなんでしょうか……???

……だれか、宙88期の首に鈴をつけてあげ(黙)


この部分の突っ込みは、ジュンタ様の記事に心の底から同意して書いておりますので、勝手ながらリンクをさせていただきます。
http://juntan.diarynote.jp/201001070208356426/
(こちらの記事を拝見するまで、その可能性には全く気がつきませんでした……。新鮮な解釈、ありがとうございます! トラックバックの仕方がわからないので、リンクだけさせていただきます)




これだけではなんなので、ラズロの収容所収監期間について。

ラズロ自身は、「収容所に一年以上居て」と語り、
シュトラッサーは、ラズロについて「プラハからパリに逃れ、地下新聞を出し続けた」と評しており、
1940年の春には、セザールが「プラハの地下組織は、リーダーのラズロが捕まって焦っているんだ」という発言をしています。


イルザの「プラハで捕まり…」という台詞もあるので、年表の形でまとめるとこんな感じでしょうか。

・1938年のナチスによるプラハ占領~1939年5月以前のいつか
 ラズロがプラハで逮捕され、プラハの収容所に収監される
・1940年春
 ラズロ脱走。国境を突破してパリを目指す。
・1940年6月
 やっとパリ近郊まで辿りついて、イルザにメッセージを送る。
 その後、イルザと合流して身体を治しつつ、亡命の準備が整うまでパリ(近郊?)に滞在
 地下新聞を出し続ける。
・1941年
 アメリカ亡命のため、マルセイユ経由でカサブランカへ。



イルザだけは、占領前にパリへ逃がした、という感じなのでしょうか。それとも、ラズロの逮捕後に自力で逃げたのかしら?意外にメッセージはきちんと届いているので、プラハの抵抗組織自体は機能しているんですよね(パリの組織とも、多少は連携できているようだし)。




この作品(映画も、舞台も)が最終的なところで理解し難くなっているのは、イルザは『活動』の中で何をしているのか?が解らないから なのではないか、と思ったりもします。
ラズロの公的生活におけるイルザの価値がわからないから、ラストシーンのリックの「ヴィクター・ラズロを支えているのは君だ」という台詞が納得し難くなってしまうのが残念だと思うのです。
表面的には、彼女は何も知らないし、何もしないんですよね。
ラズロが死を偽って脱走したことも知らないし、そもそも、捕えられたラズロの救出のために動いていた気配さえ、ない。

イングリッド・バーグマンくらい美人だったら、「ああいう美人が傍にいるだけで、さぞラズロは力づけられただろうね」という方向で納得できるかもしれませんが、すみ花ちゃんは可愛いけどそこまでの存在じゃないので。
せっかく回想シーンを創作するなら、ただうっとりと恋に溺れる女の子じゃなくて、反ファシズムの闘士としてのイルザを描いて欲しかった。


すみ花ちゃんなら、可愛いばかりじゃない、アグレッシヴな活動家にだってなれたと思うんですけどね。
……あんまり遣りすぎて、ラズロより偉大な存在になってしまったりしたら「カサブランカ」じゃなくなってしまうので、そこはバランスが大事、ではあるのですが……。





突っ込みが無駄に長くなりました。すみません。
シュトラッサーの提案をあっさり蹴ったラズロは、最後まで隙を見せることなく、ルノーのオフィスを後にする。


後には、ウガーテの死亡調書を作成するルノーと、苦虫を噛んだままのシュトラッサー。

ウガーテの死を教えられて、
「拷問による死亡?」
と指摘したラズロに、ニヤニヤと嗤いながら
「その前に死んでしまいましたよ」
と嫌味っぽく教えるルノーが、イヤラシクて素敵です(はぁと)。単刀直入で紳士的なシュトラッサー、ちょっと回りくどくて嫌味なルノー。ドイツ人とフランス人の違い、ってことになるのでしょうか?なんだか、京の都に乗り込んでいった東国武士団の勇者たち(義仲とか義経とか)を思い出すなあ…。




ラズロたちが去り、シュトラッサーも去ったオフィス。
やれやれと溜息をついて、肩の関節を回すおっさんなルノー。
カッセル(澄輝さやと)が入ってきて報告。
「例のブルガリア人が」
「……女の方だけ、通せ」

ニヤリと片頬で嗤って、どっしりと席に座るルノー。キョロキョロしながら入ってきて、所在投げに客用椅子に座り込むアニーナ(花影アリス)。
……恰幅のいい肉布団のルノーと、元から細すぎるアリスちゃんの対比。ヤン(凪七瑠海)と一緒の時は姉さん女房なアリスちゃんが、ここでは怯えた子ネズミみたいで可愛いです。



■第3場 バザール(ブルー・パレット) ~1941年12月2日~

ルノーのオフィスを出たラズロを待っていた、花売りのファティマ(すみれ乃麗)。
「闇取引なら、フェラーリに頼むしかないよ」
と、バザールの奥のフェラーリの店への案内を申しでる。


おりしも日は中天。バザールは活気に溢れている。

下手から登場するターバンの男(天羽珠紀)と女二人(花音舞、百千糸)の歌が、怪しげでとてもいいです。ウガーテとしての台詞の声は軽めにつくっているたまちゃんですが、ここはずいぶん重たい声での歌唱で、すごく嬉しい★花音さん、ももちの歌も、女のいやらしさがあって良い声だなあ(^ ^)。



そこらへんで、いろんなものを売っているひとたち。
とりあえず、えっちゃん(大海亜呼)とえびちゃん(綾瀬あきな)がセットで動いているのがかわいい~♪大きなえっちゃんと小さなえびちゃん、どっちも「ムーア人の男」くくりですけど、ちょっと真ん中で目立つダンス(?)があったりして、案外おいしいです。

いつか、ムーア人の女性たちが見分けられるようになれるかしら……ちょっと無理そう(涙)。


いろんなところでいろんなものを、見たり買ったりしているひとたち。
皆さん、前夜のカフェの場面から、誰一人着替えてないんですけど。
ファン的には、一人一人見分けやすくて助かるんですけどね(汗)。でも、それってどうなの(^ ^;ゞ

皆もう、あらゆる意味で、楽しそうにもほどがあります(^ ^;ゞ



とりあえず。西欧人のカップルで、わかったのは以下のとおり。

・美月遥&藤咲えり   あれっ?えりちゃん、(蒼羽)りくちゃんはどうしたの…?
・蒼羽りく&愛花ちさき りくったら、こんな処でお金持ちの奥様とご一緒でしたか。
・天玲美音と妃宮さくら 密航業者と我侭でお金持ちのお姉さま。
・星吹彩翔&琴羽桜子  前夜のカフェと同じカップルなのは、この二人だけだったような気がします。

そもそも。細かいツッコミをするなら、美月くんは天玲くんに「明日午前1時に、現金1万5千フラン持って港に来い」と言われていたんですが。……こんなところで人妻相手に油売ってていいのか……?


.
東宝宝塚劇場にて、宙組公演「カサブランカ」を観てまいりました。



なんだろう。
前回(週末だよ)観てから、そんなに時間は経っていないはずなのですが。
……いろんなことが、ぜんぜん違っていたような気がしました!(@ @)。



一番、違うと感じたのは、一幕ラストのカフェ。リックとイルザの、最初の対決。
うーん、何が違ったんだろう?家に帰るまでずーっと考えていたのですが、どうも言葉にまとまらない。

とりあえず、イルザに「あなたに聞いていただきたいことがあるの」と言われてから「まあ、一杯飲めよ」までの間が、すごく長かった……ような気がするんですよね。本当に、真顔で『くいいるように』イルザを凝視するリックが、すごく怖かった。
それと、イルザが過去を語る話を途中で遮るときの「もういい!」が、すごく強かった。と思うのです(←あまり確信ないらしい)。で、その声に自分自身がびっくりしたように「……もう、いい」と呟くのが、ものすごく切なくて。


東宝に来てから、少し抑え気味だった感情の露出が、また激しくなってきたような気がします。
イルザをはじめ、他のメンバーがどんどん前に前に出してきているので、新しいバランスを探り始めているのかな、という感じ。
また面白くなってきたなあ~~(*^ ^*)ああ、観れば観るほど、本当に面白い作品で、素直に嬉しいです♪


音響のバランスもずいぶん良くなってました。もしかして、昨日の休演日は一日音響調整してたのか?>スタッフの皆様 という感じ。久しぶりのB席だったせいもあるかもしれませんが、音質がクリアになって、芝居の細かいニュアンスが二階席の天辺までちゃんと届くようになったな、と思いました。

早いもので、東宝公演ももうすぐ1/3が過ぎます。こんな調子で、あっという間に中日をすぎ、新公を過ぎ、千秋楽になってしまうんでしょうねえ……。
がんばれがんばれ、宙組! ここまで一人の休演者も出ていないことが素直に嬉しいです。最後までこの調子で行ってくれ~!!(祈)





さて。
二幕の話を始めるまえに、リックのカフェでの突っ込みポイントをいくつか。


・花露すみかちゃんが宝石商(天輝トニカ)にダイヤを買い叩かれた後、ヤン(凪七瑠海)とアニーナ(花影アリス)がやってきて、大切そうに腕輪を出すんですね。思いっきり買い叩かれたみたいでしたけど(T T)。
腕輪を握りしめて溜息をつくアニーナの、細い肩が切ない。

それにしても、リックのカフェのごった煮なこと。
ファティマ(すみれ乃麗)も従業員じゃなくて、勝手に商売(花売り)をしてるっぽいし。
バーガー(鳳翔大)のペンダント売り(実はレジスタンスの勧誘?)も黙認だし。
あ。もしかして、こういう人たちに場所を提供して、ショバ代を取っていたりするのかな……?


・ジャン(珠洲春希)がスリだったりスパイだったりすることは、他の皆は知らない……ことになっているんでしょうか?


・レジスタンスの二人(鳳翔大・愛月ひかる)は、「人手が揃ったら」何を実行するつもりなのでしょうか? トラックではジブラルタル海峡は渡れないんだけど、大丈夫かなあ(心配)
とりあえず、ウガーテ(天羽珠紀)が逮捕されたことを知って落ち込むラズロ(蘭寿とむ)に
「あなたには我々がついています!」
とか自信満々に言っちゃう根拠が知りたい(^ ^)


・ヤン、初心者のくせにいきなりルーレットで一目賭けするのはやめた方が…(- -;
というか、あのカジノ、一目賭けの人が多すぎると思うんですけど、カジノってああいうものなの? 家でゲームとして遊んだときは、1/2で当たるもの(赤/黒とか、前半/後半とか、奇数/偶数とか)ばっかり賭けてたんだけどなあ。
エミール(蓮水ゆうや)の持っていき方(?)が巧いのでしょうか。


・トネリ(月映樹茉)は、憧れのコリーナ・ムラ(鈴奈沙也)が控え室に引っ込んだ後、今度はボーイ(千鈴まゆ)を口説いているように見えたんですが……。いったい何をしているんだ君は。


・天玲美音くんに密航の相談をしていた亡命者(美月遥)と、「待って待って待ち続けて」とソロを歌うモンチ(星吹彩翔)、そして、最初にフランス兵に肩を抱かれてカフェに現れる女性(琴羽桜子)が、カフェの場面の後半から三人でいつも一緒にいるのが、なんとなく不可思議(^ ^)。どういう関係なんだろう、あの三人。


・ボーイ二人(千鈴まゆ、綾瀬あきな)は、あまり働いている気配がないんですけど、あれは良いんでしょうか。あれこれ持ってフロアを歩いているのは、カール(寿つかさ)とビゴー(七海かい)だけに見えるんですが……



他にもいろいろあるけど、とりあえずそんな感じでしょうか。
とりあえず、先に進みます。




■第2幕 第1場 地下水道での集会① ~1941年12月1日深夜(2日早朝?)~

閉店間際のリックのカフェを出て、集会へ向かうバーガーとラズロ。

「夜間外出禁止時間」のカサブランカでは、サーチライトで監視されていたのでしょうか。
……今ひとつ意味不明な演出でしたが、それ以上に、あのサーチライトを避けることに命を賭けている(by ナウオンステージ)らしい大ちゃんが、大変可愛いと思うんですけどどうでしょう。
小池さん、宙組88期を、どうぞよろしくお願いいたします!(今更)



下手から上手へ走りぬける二人を、上手の銀橋付け根あたりでファティマが迎えて、集会場へ。
ファティマはそのまま、見張りに立つらしく引っ込んで、上手からも下手からも、わらわらと懐中電灯の光が集まってくる。

ラズロの顔に、まっすぐ懐中電灯の光をあてて「やあ!」と元気に挨拶するサッシャ(春風弥里)。……だから誰か、宙組88期を……。

「ナチスの収容所から奇跡の生還を果たした、ヴィクター・ラズロ氏です」
皆に紹介するバーガー。



リックの店の従業員が勢ぞろいしているのが凄く不思議。良いんでしょうかアレは。
たった一人参加していない、キャッシャーの天風いぶきさんは、後ほどフランス兵として登場するし(^ ^;。

そして。(千鈴)まゆちゃんとえびちゃん(綾瀬あきな)は、リックの店の「ボーイ」として参加しているんでしょうか。違うんでしょうか。(プログラムには「集会男の子」とあるのみ)


「何故あなたがここに?」シリーズ。
ここで目立つのは、元ヘルム(&ドイツ兵)の雅桜歌さん、元トネリのえなちゃん(月映)、元ドイツ兵の春瀬央季さん、かな。
それでもえなちゃんや春瀬さんは、軍服を脱ぐと結構感じが変わるので、そんなには目立たない…のですが(多分)。ヘルムさんは服装も髪型もそんなに大きくは変わらないので、目立ちまくりです(^ ^;ゞ。一幕オープニングの裁判所前広場に続き、本当に目立つなあこの人は。(←単に、ファンだとゆーだけではないのでしょうか)

トネリ大尉があまりにも面白かったえなちゃんは、ここでは普通の好青年です。仕草や歩き方も、軍服と普通のスーツでは必然的に違うものなのかもしれませんが、彼女は意識して変えているんじゃないかな?と思わせるものがありますね。
とりあえず、面白いばかりじゃない普通の人も出来るらしい、というのは、役者としての幅になるので、嬉しいことです。


ヨーロッパ各地でファシズムと闘っている同志たちに黙祷することから、演説を始めるラズロ。

♪我々は生きている
♪決して屈しない
♪命ある限り 闘い続ける

この作品一番の名曲は、この曲だと思いますね。
集会参加者たちのフォーメーションが美しくて、この場面だけは二階席がいいなあと思いました。

一幕はちょっと出番少な目のラズロさん。
待ちに待ったこの場面に、集中的にぶつけてくるエネルギーが凄いです。すごくテンションがあがる。
一幕のオープニングが「ヴィザを!ヴィザを!」で、
二幕のオープニングが「我々は生きている」。……小池マジックだなあ、と思います。最初にテンションをMAXまで上げさせて、そのまま最後まで引っ張る構成が、すごい。


盛り上がりが佳境に入ったあたりで、下手奥の階段を駆け下りてくるファティマ。
「手入れだ!」

…すみません(先に謝る)。この台詞が、何度聞いても「デイリだ!」と聞こえてしまうのは、私だけでしょうか。最近は「てやんでえ!」とも聞こえるようになってきて、余計に困っているのですが(真顔)
ファティマの一生懸命さがツボです。可愛いー。


一瞬のうちにバラけて逃亡するレジスタンスたち。(「蜘蛛の子を散らすように」とは、まさに…な表現です)

警官たちのリーダーとして、密告者のジャンに文句をつけるさっつん(風羽玲亜)がすごく素敵です。
その隣で、大人しく控えている天風いぶきさんが、なんとなく微笑ましい(^ ^)。

「ハズレか……賞金がふいだな」
やさぐれて呟くジャンの物語を、考えてみたくなりました……。



■第2場A 警視総監のオフィス(外) ~1941年12月2日朝~

朝早くから並んで、ヴィザ申請の順番を待っている亡命者たち。
だいぶ、女の子たちの区別もつくようになってきたので、もうちょっと頑張りたいと思います。

カッセル中尉(澄輝さやと)の
「残念ながら、ルノー大尉はご来客中でして」
という台詞が、大劇場の後半からぐっと良くなってきていたのですが、東宝ではまた少し自然になったなーと思いました。
あともう一息だ!がんばれ!(^ ^)。

「何とか予約を入れさせてください!」
食い下がるアニーナを、面倒そうに腕を振って建物の中に入っていくあっきー。ヘタレでも格好良いんですよね、本当に(*^ ^*)。あああ、台詞術さえなんとかなればなあ、、、




■第2場B 警視総監のオフィス(中) ~1941年12月2日朝~

窓脇のテーブルの時計は、10時半(?)を指しています。
ラズロが昨夜、ルノーに約束したのは「朝10時」。……集会のあとの鬼ごっこで時間をとられ、ホテルに帰ったのは夜明けだった………なので、ちょっと寝坊しちゃった、とか、そーゆー解釈でいいのかな?なんて考えたりするのですが、どうなんでしょうね。
ラズロが現れたとき、ルノーは「定刻どおりに」と言っているので、あの時計を私が見間違えた可能性の方が高いのかな……?


ちなみに。ラズロがホテルの部屋に戻ってきたとき、イルザは普通に部屋に戻って眠っていたはず、ですよね。イルザにはイルザで、活動に関係する“やるべきこと”があった……ってことは無い、よね?

ということは。
イルザは、ラズロがいつ戻ってくるかとドキドキしながらリックの店に行ったんですね。……長居をする気は無かったにせよ、「私がせっかく危険をおかして話をしに来たのに、どうして聞かないんだ貴様ぁ!!」って、リックの首根っこを掴んで、がしがし責めてやりたい気持ち……が、あったのかもしれませんね……。

なんだか切ないなあ、二人とも。



あと三回くらいで終わるかなあ。
……無理かしら(T T)。


.
本題に入るまえに、本日発表されたニュースについて、ちょこっと。



月組の次回大劇場公演「スカーレット・ピンパーネル」での、役替りが発表されました。

初演の星組で、柚希礼音(当時研究科10年)が演じたショーヴラン、和涼華(当時研9)が演じたアルマンの二役を、上演時点で研10になったばかりのまさお(龍真咲)と研8のみりお(明日海りお)の二人で役替り。それも、「エリザベート」なみの日替わりスケジュール。
二人とも、体力的にもプレッシャーも相当なものでしょうけれども、なんとか踏ん張って、がんばってほしいです!!
若手の中では歌える方だし、ここ2年くらいでの進境著しいみりおは勿論、ちょっと伸び悩んでいたまさおも「ラストプレイ」で良い芝居をしていたので、ショーヴランもアルマンも、どちらもとっても楽しみです(*^ ^*)絶対両方観たいです!(チケットがあれば)

元々歌は巧いけど、声質が軽いせいかルキーニは苦戦していたまさお。
まさおよりは太いけれども、もともと声が甘くて柔らかいみりお。
ショーヴランのナンバーは『強靭な声』が要求されるので、二人とも大変だろうなあ……。ボイトレをがんばって、二人とも結果を出してほしい、と心から祈っています。


それにしても。
星組に続いて、月組でも研10以下の若手がショーヴランを演じるんですねぇ……。
小池さん的解釈では、ショーヴランは若手の役なんでしょうか? 初演を観たときの印象では、したたかで百戦錬磨のベテラン・パーシーと、若さにまかせて突き進んだ挙句に、あちこちで躓いてる若いもん、とゆー感じで、ショーヴランが敵役としてはちょっと小者過ぎるのでは?と思ったのですが。
彼は運命にもてあそばれた革命の闘士であって、生真面目すぎる生き方が滑稽ではあっても、決して愚者では無いはずなんだけどなあ(T T)。月組版では、そのあたりの解釈は変わらないんでしょうか(- -;








さて。
「スカーレットピンパーネル」の話はこのあたりにして、宙組「カサブランカ」の続きを。
こちらも、「スカーレットピンパーネル」に勝るとも劣らない、小池さんの名作です(*^ ^*)。



■第17場 リックのカフェ ~1941年12月1日深夜(2日早朝?)~

「ボス。……夜が明けちまいますぜ」
いたわってくれるサムの、優しい声。
聞こえているのかいないのか、起きる気配も無いリック。


カチャリ、と音がして、店の玄関扉が開く。
音が聞こえたのか。流れ込んできた夜の匂いを嗅いだのか。つぶれていた筈のリックがふと頭をあげて、焦点の定まらない瞳をドアに向ける。

身体の線に沿ったシングルのコート、水色の大判ストールからのぞく、柔らかなプラチナブロンド。すぐ傍にランプがあるかのように、そこだけがぽっかりと明るい。(←いや、普通にスポットが当たってますから)

「あなたに、聞いていただきたいことがあって」

やっと焦点のあったリックの眼が、射抜くようにイルザを凝視する。
たじろくイルザ。

「……一杯、飲めよ」
ふぃっと視線をずらして、どうでもいいかのようにグラスを差し出すリック。

「今夜は駄目よ」
軽く息を吐いて、たしなめるように言うイルザ。

「何故カサブランカに来たんだ?」
「あなたがいると判っていれば、来なかったわ」

でも、イルザはいずれにしても来たことでしょう。リックが居ようと居るまいと。
ヴィクターには、このルートしか無かったのだから。

それでも、もしかしたら。
リックがこんなにも傷ついていると知っていたら、イルザは来なかったのかもしれません。

彼女は知らなかった。こんなにも自分が愛されていたことを。

唇を噛んで、リックの瞳の強さに負けるまいと顎をそらす。

あなたは私より、ずっと大人だったから。だからもう、私のことなんて忘れたと思っていた。
……私は、忘れられなかったわ。だから、思い出にしたの。パリのすべてを、夢のような出来事だった、と。

「君の声、変わらないな……『私たち、世界が崩壊するかもしれないのに、恋に落ちるなんて』」

そうよ。恋に落ちたの。夢の中で。夢のパリで。
でも、夢は醒めたわ。あのパリはもう、どこにもない。

「……崩壊したのは、俺たちの仲、だ」
「やめて」

すべては終わってしまった。確かめ合ったはずの恋も、確かだと思っていた愛さえも。

「俺たちが何日一緒にいたか知ってるか?…俺は数えた。一日残らず」

『春』から『6月』まで、わずか2~3ヶ月。デートの回数を数えるのは容易なことだったでしょうね。もしかしたら、ほんの数回なのかもしれないし。
それでも、イルザは『数えたこと、ないわ』と応える(T T)。

……まあ、イメージとしては、一回一回デートのたびに「○○回目のデートだ(はぁと)」などと数えているリック、というのも想像しにくいので(^ ^)、パリからマルセイユへ向かう汽車の中で思い出を反芻し、何故振られたのかを思い悩んだりしながら数えたのかな、とか、勝手に考えているのですけれども(可哀相に)。
イルザは、パリを離れてからは怒涛の忙しさで、とてもそんな時間は無かったでしょうし、ね。

ちなみに、映画では二人の出会いのシーンが描かれていないので、何ヶ月(あるいは何年)付き合ったのかは判らないようですね。
うーん、そろそろ映画を観ないと、公演が終わっちゃうなあ…(T T)。



リックの、というか、祐飛さんの酔っ払い芝居は、経験豊富なだけあって本当に巧いな、と思います。散々やっているもんね(^ ^)たぶん、宝塚ひろしといえども、これだけいろんなパターンでの酔っ払いを演じたことがある役者はいないんじゃないか、と(惚)

で。
この場面を観るたびに、酔っ払いにはなりたくないなあ、と思います(^ ^)。
人の話を全然聞いてないし、思ったことを脊髄反射で口に出してしまうし。ああはなりたくない、理性は飛ばしちゃいかん!!と思うんですよ(^ ^)

しかも。リックはお酒に強いので、このときも表向きはいつもとあまり違わないのに、実は、理性が完全にぶっ飛んでいる(!)そーゆーのが一番怖いからっ!


11月末の「お披露目トークライブ」でもその話が出ましたが、確かに祐飛さんのリックは、翌朝本気で後悔していそうなんですよね。
「なんであんなこと言っちゃったんだろう、せっかく来てくれたのになぁーっ!!」
って。
特に、東宝に来てからはその印象が顕著ですね(^ ^)。祐飛さん、いったいどこまで行ってしまうんだろう……。



普段のクールで人を寄せ付けない仮面を突き破って、繊細で皮肉屋な内面がむき出しになったリック。

「俺を棄てたのはラズロのためか?」

あまりにも率直で、ストレートな問いかけ。もちろん、イルザは応えられない。

「それとも、まだ他に誰かいたのか」
「……リック!」

「それだけは言いたくない、か?」

自分の話を聞こうとしない、勝手に結論を出そうとするリックにキレて、店を出て行くイルザ。
玄関扉に相対する椅子に座って、頭を抱え込むリック。

♪夜霧の窓に君を想い
♪夜明けの窓に 想いを消した


この場面。
たぶん、東宝劇場にいる2500人余で私一人だと思うんですが。
私はこの場面を観るたびに、「レ・ミゼラブル」の「空のテーブル、空の椅子」を思い出します。特に、
 ♪窓に映る影 床にも姿が♪
のあたりを。

名曲ぞろいの「レ・ミゼラブル」の中でも、コンサートなどで歌われることの多い名曲ですが、この「カサブランカの夜霧に」という歌も、素晴らしい名曲だと思います(*^ ^*)
ま、歌いながら帰るにはちょっとメロディラインが凝ってますけど。



♪サヨナラも言わずに二人は別れた
♪愛し合っていると信じ込んでいた

呟きながら、少しふらつく足取りで本舞台を横切り、下手から銀橋に入る。

♪6月のあの日あの口づけが最後

ゆっくりと銀橋を進むリック。溶暗していた本舞台に少しづつ光が戻り、リックの店の従業員たちがテーブルのセッティングに動く。

すごーくどうでもいいことですが。このときまで、イルザが出入りするとき動きやすいよう、玄関前までの通路をあけてあるんです。それを、場面ラストに降りてくる幕の邪魔にならないよう、さりげなく片付ける店員たちが可愛いんですよ(はぁと)


♪それなのに何故 世界中にたった一つしか街がないかのように
♪やって来たんだ このカサブランカに


玄関扉が開いて、客たちが流れ込む。
亡命者たち、ムーア人たち、商売人たち、レジスタンスたち、軍人たち、、、、

そして、ラズロとイルザ。


♪燃え上がるこの想い 消してしまいたい
♪カサブランカの夜霧に


切れ切れのストップモーション、そして、幕。




この幕切れの演出、素直にすごい、と思いました。
本舞台メンバーのストップモーションも止まり方がさりげなくて巧いし、なんといっても、音楽と場面の有機的なかかわり方がいい(@ @)。派手な演出ではないのですが、ここで一通り過去を回想した後でイルザとの最初の対決場面を置き、再会の場面をリフレインする、という流れがすごく自然で、リックの気持ちがすごく伝わってきます。

思いもよらぬ再会で、燃え上がったこの想い。痛み。でも、燃え上がった俺だけで、彼女の心には、もう火が点かない。……ならば、もう、俺のこの心ごと、何もかも凍らせてしまいたい……そんな、絶望。

♪これからの日々をどう生きていくのか
♪蘇るこの愛の行く先は見えない

何もかも嘘だったのか。
何もかも全部、最初から。


リックの動揺と絶望、そして、ほんの微かな“再会の喜び”……そんなもので満たされた劇場の客席に光が入る。



……やっと一幕が終わったか……(^ ^;;;)



.
宝塚歌劇団宙組公演「カサブランカ」。



■第13場 ラ・ベル・オーロール ~1940年6月13日~

カンカン・ガールたちがポーズを極めてはけていくと、音楽が甘いメロディに変わって、店の雰囲気ががらっと変わる。
テーブルの客たちもだいぶ入れ替わっていて、舞台奥は下手端から雅桜歌&七瀬りりこちゃん、妃宮さくら&松風輝くん、天風いぶき&月映樹茉ちゃん、(階段)、天輝トニカさん一人、花露すみか&澄輝さやと。舞台手前は、風羽玲亜&安里舞生ちゃん、天玲美音&千沙れいなさん、珠洲春希&桜音れいちゃん。皆さん思い思いに談笑したり、踊ったり。



紅いイヴニングに着替えたイルザと、細いストライプのスーツに着替えたリックがセンターに登場。

♪月夜のラヴ・ソング 酔いしれて

アンニュイなサムの歌声。寄り添って踊る二人。しっとりとした空気。

『As Time Goes By』の流れる中、言葉を交わすリックとイルザ。
「嘆きの天使は、いったい宇宙のどこから現れたんだい?」
軽い調子で問いかけるリック。
「…私に恋人がいたか、聞きたい?」
「……」
「いました。一人だけ。……でも、もう死んでしまった…」
「すまない。過去は聞かないと約束したのに」

♪君について知りたいことは限りなくある
♪でも君が望まないなら 俺は訊かない

イルザに優しく微笑みかけるリック。眉間の皺ものびて、なんだか凄く幸せそう。
この作品の中で、ほとんど唯一と言っていい幸せな場面なので、甘く甘く……という感じですね(*^ ^*)。

♪君と生きる 今 この時だけが
♪愛の証を刻んでいく
♪失くした時は取り戻せない
♪だから後ろは振り返らない

二人で手をつないで銀橋に出る。
まっすぐにリックを見凝めるイルザの、頼り切った瞳が美しいです。「君の瞳に乾杯」と、何度でも言いたくなっちゃいます。

♪過去は訊かない 訊く意味がない

銀橋の真ん中で、抱き合って口づけを交わす二人。
しっとりと湿った、やわらかな空気。出会ってから僅か三ヶ月とは思えないような、深い信頼と甘え。イルザの頼り切った表情が甘やかで美しい。



本舞台には、さんざめく客たち。
下手手前で踊っているのは風羽玲亜&妃宮さくらちゃん、真ん中奥に雅桜歌&花露すみかちゃん、上手手前に珠洲春希&美風舞良さん……だったかな?ちょっと暗いので、全員はわからないのですが(汗)。たしか、下級生は天玲美音&七瀬りりこさん、天風いぶき&千紗れいなさん、澄輝さやと&桜音れいちゃんという組み合わせで踊っていたはず。

下手端のピアノでは、サムとマドレーヌ(大海亜呼)がこちらもしっぽりと話をしています。このお二人の空気もいい感じ。いい場面だなあ、と思うんですよね。




そんな穏やかな空気を切り裂く、鋭い声。

「皆さん、大変なことになりました!」
店内の階段に立って、支配人(光海舞人)が叫ぶ。

「フランス軍が撤退し、パリはドイツ軍の侵攻を待つばかりとなりました!!」

騒然とする店内。サムの手を引いて、舞台中央に向かって数歩駆け寄るマドレーヌ。彼女は店の中でも世話役らしく、すぐにサムの手を離して、怯えている女性たちを宥めはじめる。
カンカンガールから早替りした女性たちが左右から登場して、気がつくとものすごい人数が舞台上に。そんな中、ピアノの傍で呆然としていたサムが、慌てて戻ってくるリックたちに声をかける。
「リック、どうする?」
「とにかく、ホテルに帰りましょう!」
下手袖にはけていく三人。
本舞台では、紗幕が降りて、舞台前面でパリ市民たちのコーラスが始まる。

♪残るべきか 逃げ出すべきか
♪どこに行けばいいのか 行く先はあるのか?

怯え、惑う、市民たち。

♪パリにナチスがやってくる!




■第14場 パリの街角 ~1940年6月(悪夢)~

この場面は、最初から幻想だと思って観ていたのですが。
プログラムでは「パリの街角」となっているので、小池さんの当初の発想としては、ホテルに向かう途中、待っていたセザールに呼び止められたリックが、二人を先に行かせてセザールと対決するという場面だったのかな?と思いました。

まだこの段階ではドイツ軍は入ってきていないので、パリの街そのものはそこまで混乱してないはず。ホテルに着くなり寝込んでしまうほど疲れるような道中ではないだろうし、この緊迫した状況でうたた寝もないだろうし。その辺が、夢オチで片付けてしまうとどうにも理解しがたい、という気はします。

【追記★この場面について、ご指摘をいただきました。リックが目覚めるホテルの場面でイルザがガウンに着替えているので、ラ・ベル・オーロールを出てからホテルで目覚めるまでに一晩が過ぎている可能性が高いだろう、と。……なるほど。となると、うたたねして悪夢を見ても不思議はないし、「サムが来てくれたわ」という台詞も、昨夜いったん別れて自分のホテルに戻っていたサムが、今後のことを相談しに(?)翌日あらためてホテルに来てくれた、ってことになるんですね……】【一歩踏み込んで、この日初めて二人は結ばれた、という可能性も無いことは無い、のかも?】




しかーし。

フランス人のレジスタンスならともかく、エチオピア兵とスペイン兵が「銃を我らに!」と叫ぶ、というのは、この時点では幻想でしかあり得ないので、やっぱり、場面としては悪夢の夢オチのつもりで造られているんですよね。
ううむ。この場面、場面自体は好きなんですが、理屈をつけようとすると迷路に入る場面ではあります。

しかも、この場面にエチオピア兵がいるのも不思議。
エチオピア戦争には、リックは直接関わってはいないですよね。武器を流しただけで、直接参戦はしていない。なのになぜ、エチオピア兵の叫ぶこの言葉が、そんなにリックに響くのか。
それとも、あのクーフィーヤ(頭布)にイカール(紐)を巻いたメンバーは、エチオピア兵じゃなくスペイン南部のイスラム兵だとでも言うんでしょうか……??(←いや、プログラムにはっきり「エチオピア兵」と書いてあるから!)




ま、そんな屁理屈は置いといて(毎回コレ書いているような気がする…)。

スペイン兵のすっしーさん(寿つかさ)とこっしー(珠洲春希)が死ぬほど格好良いです!
特に、すっしーさんは、この場面とフィナーレ以外はずーーーーーっと肉布団着用でロマンスグレイの髭に眼鏡なので、すべての色気をこの場面にぶつけている気がする。本当に目が吸い寄せられてしまって、なかなか祐飛さんを持ち上げている88期とか、キラキラ踊っているエチオピア兵の下級生とか、ゆっくり観ている余裕がありません(涙)。

「カサブランカ」本編は、カフェやバザールの芝居がほとんどで、激しいダンスシーンは最初の裁判所前広場とカンカンとココと、あとは地下水道の集会くらいしかないのですが、一幕はどれも桜木涼介さんの振付。彼の振付はシンプルでフォーメーション重視なので、宙組のきっちりしたダンスが映えるな、と思いました。

それにしても祐飛さん、リフトされまくり。ほとんど地に足がついてないよ……。
「時代に押し流された」感を出したツモリなのでしょうか(^ ^)。
まあ、振付家としては、どっかに浮かしておきたい素材かもしれませんが。



武器を求める兵士たち。
武器を得るすべを知っていながら、与えてくれないリックを責める。
「だが、皆観たはずだろう?悲惨な戦場を!」
リックが叫んでも、闘いに酔った彼らの耳には届かない。

♪だから早まるな
♪開けるな、パンドラの匣

舞台中央に残された階段の上に、ヴィクター・ラズロが登場する。
高みに立って手を拡げるラズロ。光を背負ったその姿に、炎に惹かれる蛾のように集まっていく兵士たち。
この場面、祐飛さんがナウオンで「洗脳」という言葉を使っていますが、たしかにそんな感じです。ラズロの弁舌は、兵士たちを歓喜させる何かに溢れていたんでしょうね、きっと。



それでも。その高揚よりも悲惨の回避を希むリックは、武器の詰まった匣を開けさせるまいと、『パンドラの匣』に見立てたセットの上に立つ。
そんな彼を、力づくで引き摺り下ろすセザール。兵士たちの間を、風に舞い散らされる木の葉のように翻弄されるリック。

歓喜して銃を受け取る兵士たち。
壇上から降りて、先頭に立って踊りだすラズロ。……だから、ラズロは平和主義だとさっきリックが(黙)

いや、もう。
ラズロさん、格好良い~~~っ!!(*^ ^*)です。ええ。



リックをどけて、やっと武器を手にする兵士たちの歓喜。
「セザール……!!」
仲間を呼ぶリックの切ない叫びは、もう彼には届かない。

ラズロを中心にした戦場のダンス。闘いの高揚。血に酔った兵士たち。
そんな彼らに襲い掛かる、ハーゲンクロイツの群れ。映像による、ナチスの大軍団。


……エチオピア戦争での“敵”はイタリアだし、スペイン内戦での“敵”はフランコ率いる反乱軍であって、どっちもナチスじゃないんだけどなあ……(; ;)
すみません、せっかくの名シーンにケチをつけたりしてm(_ _)m。いやぁ、この場面はやっぱり中途半端に「戦場の記憶」と「現在(1940年6月)の状況」をリンクさせるんじゃなくて、もっと具体的にどちらかに集中した方がよかったんじゃないか、と思うんですよね。
今の構成は、全く「戦場の記憶」じゃないので。「戦場の記憶」と題するならスペイン内戦の戦場の悲惨さ(セザールの負傷)に絞るべきだし、今の内容なら、出てくるメンバーを全員フランス人レジスタンスにして、ただの「幻想」というタイトルでいいと思うのです。
どちらにしても夢オチの不自然さは残るけど、まだそのほうがいいような。

リックのトラウマは二つあって、一つはパリ時代の最後の手酷い失恋、そしてもう一つが戦場の記憶。映画でも比較的丁寧に回想場面が入っていたイルザとの恋と別れはしっかり実在感があるのに、もう一つの重大なトラウマである戦場の記憶がすごく適当なのが、すごく残念です。
……小池さん、オリジナルの部分もがんばってください……(^ ^;ゞ




■第15場 イルザのホテル ~1940年6月13日~

映像のナチス軍に包囲され、ばたばたと斃れていく仲間たち。
その悲惨さから目を背けて、逃げようとして……うなされて、イルザの腕の中で目を醒ますリック。

一息つく暇もなく、窓の外にドイツ軍の街宣車があらわれる。
「パリ市民に告ぐ。我らはまもなく、パリに到着する……」
この街宣車の声はさっつんだと思うんですが、違いますでしょうか…?
なんだか最近、さっつんの声が好きすぎて、何を聞いてもさっつんの声に聴こえるんですが……(汗)
【追記★2月号の歌劇誌に回答が載っていました。この声は、風莉じんさんだそうです。そう思って聴くと、風莉さんの声に聞こえてくるのが不思議……。風莉さんにもさっつんにも、大変失礼いたしましたm(_ _)m 】【っつか、カゲ台詞もカゲソロも、ちゃんとプログラムに書いといてください!>劇団】



「パリを出よう」
ふと思いついたように、逃げることを提案するリック。
「三人で一緒に。マルセイユへ。そして、結婚しよう……イルザ」
こんな緊迫した場面とは思えないほど暢気に、そして幸せそうに提案してみせる。
嬉しそうに微笑むイルザ。
「でも私たち、春に出会ったばかりよ…」

春に夫を亡くしたばかりなのに、私ったら…という言葉は呑みこんで、何も知らない新しい恋人に微笑みかける。
自分と同じ目線でものを見て、同じ高さに居てくれる人。一緒に居て安心できて、温かい気持ちになれる。優しくて、明るくて、好奇心旺盛の子供みたいな人。
前の人とは全く違う、(彼よりは随分)若い、ひと。

「信じられない。私たち、世界が崩壊するかもしれないのに、恋に落ちるなんて」

この人になら、過去を話せるようになるかもしれない。
今はまだ駄目だけど、でも、いつかきっと。
とても素敵なひとだったのよ。……あなたには負けるかしらね、と、そう、微笑んで。

ファシズムが滅んで、世界が平和になったら、たぶん。



イルザの心の裡になど、全く気がついていないリック。

「ああ。だが、そのことを悔いてはいない…」

彼は彼で、自分が武器商人であったことを彼女に話そうと思っていたのではないでしょうか。
あるいは過去の恋物語も。
マルセイユに着いたら、きっと。



そんな、お互いに何も気づかないままに甘やかな幻想に浸っていた恋人たちを引き裂く、一通のメッセージ。
ボーイ(桜木みなと)が持ってきたカードを読んで、小さく悲鳴をあげるイルザ。
喪ったと思ったものが戻ってきた。……もう遅いのに。遅すぎるのに。
時は流れてしまったのに。さらさらと音を立てて、指の間をすり抜けてしまったのに。



有頂天のまま出て行こうとするリックを、咄嗟に、何を告げるあてもなく呼び止めるイルザ。

「こんな狂った時代にも、たった一つの真実がある。それは、私が本当にあなたを愛しているってことよ」

そう、それは真実。今、この瞬間だけは。
次の瞬間には裏切ることが判っていても、この一瞬に言わずにいられない、女心。

あなたを愛してる。それは真実。
でもそれは、あなたと一緒に行くことと同義じゃない……。


掴んでいた上着をソファに戻し、熱の篭った瞳でイルザを見凝めるリック。
「もう一つ、真実がある。…俺も本当に、君を愛している」

リックは本当に気づいていないのでしょうか。メッセージを受け取る前と後の、イルザの変化に。
……気づいていないのかもしれません。イルザは、この瞬間にはまだリックを愛しているから。
リックがホテルを出て行くまでは。

「キスして。この世で最後のキスみたいに」

リアルにしているとしか思えない、熱烈なキスに、ドキドキ。小池さんが祐飛さんのラヴシーンを絶賛する気持ち、わかるわ……。




リックを見送って、ディヴァンに崩れ落ちるイルザ。
溜めていたものがあふれ出すように、顔も覆わずに。

まだ若い(おそらくは20代半ば?)の彼女が、ただの少女として泣けるのは、今だけだから。
このホテルを出るときには、ヴィクター・ラズロの妻として出なくてはならない。それが判っていてもなお、子供のように泣き続ける彼女が、愛おしくてなりません。リックにも、あの泣き顔を見せてあげたくなります……(T T)。




■第16場 パリ南駅 ~1940年6月13日~

すっしーさん筆頭に、ほぼ組子全員が銀橋に勢ぞろい。基本的に香盤順?なのかな?みんな微妙に色や形の違うトレンチコートにソフト帽で、「パリにナチスが」と迫力で歌う。
それぞれ一人一人にドラマがあるのは判るんですが、丁寧に見るほど余裕がなくて残念(T T)。
とりあえず、歌劇誌に書いてあった「春風&蓮水の兄弟設定」はしっかりチェックしたいと思います♪

駅員さんたちは、びっくりするほどステレオタイプの制服。彼らの筆頭としてほとんど一人で喋っているモンチ(星吹彩翔)が可愛いです(壊)。彼の「申し訳ございません、もうこれ以上は…」という言い方が、切なくてとても好き(*^ ^*)。



人で溢れかえる駅の大時計の下で、イルザを探すリック。
少し遅れてサムが登場。
「すまない、アパートを出る直前に、イルザさんから手紙が届いたんだ」
「イルザから…?」
いぶかしげに手紙を開いたリックの、時が止まる。
その手から零れ落ちる手紙。

「……事情ができて、一緒に行けなくなりました……!?」

慌てて読んだサムが、蒼褪めたリックの顔を振り仰ぐ。
動けないリック。

「とにかく行こう。列車が出ちまう!」
その手を無理矢理引っ張って、人ごみを掻き分け、ホームへ潜り込むサム。

♪どうしようもない
♪逃げるしかない

引っ張られるままに、人形のように連れて行かれるリック。
最終列車に乗り切れず、駅から溢れる市民たち。

♪急げ!マルセイユへ
♪パリにナチスがやってくる……!!




■第17場 リックのカフェ ~1941年12月1日深夜~

列車に乗れなかった人々が、歌いながら舞台前面に戻って焦りを歌い上げる中、暗転。
回転木馬が逆方向に一回りして、“現在”に戻ってくる。

さっきの姿勢のまま、酔いつぶれているリック。
壊れたレコードのように繰り返し、その時間だけを生きていたい、と希いながら。
この硬いテーブルに突っ伏して、何も見ないで、繰り返し、繰り返し。

そんなリックを見守るサムの、優しい瞳に毎回癒されます(*^ ^*)
ありがとう、萬さん♪♪


.
宝塚歌劇団宙組公演「カサブランカ」。



■第12場 ラ・ベル・オーロール ~1940年4月~


回転木馬ならぬ盆が一回りして、カフェのセットが紗幕の向こうに消え失せて、紅いグランドピアノ出てくる。

リックの後姿がバックスクリーンの映像の中に消えると、舞台全面にピンクの羽扇を持ったダンサーたちが登場し、音楽も変わって華やかなショーナンバー「ラ・ベル・オーロール」に。
メインダンサーのマドレーヌ(大海亜呼)が、黒い肌に白のダルマ姿で登場。第一声の「ラ・ベル・オーロール!」でいきなり持って行かれます(^ ^)。えっちゃんったら、素敵★
レトロで正統派の、華やかなショータイム。

派手派手な縦縞の衣装を着こんだサム(萬あきら)の“ショーピアニスト”っぷりが半端なく格好良い!ピアノに向かっているときの派手なパフォーマンス、ピアノの前を離れてえっちゃんと並んで踊る場面の強烈なスターオーラ。宙組の超絶スタイルな下級生たちの間に入っても見劣りしない、いぶし銀の輝きはさすがです。


ショーの途中からまた盆が回り始めて、ラ・ベル・オーロールのセットが登場。
リックのカフェとの違いは、テーブルクロスが紅くなっただけ……ように見えるんですけど、気のせい?(^ ^)

下手端奥のテーブルには、雅桜歌&安里舞生。
舞台前面下手のテーブルには、さっつん(風羽玲亜)&妃宮さくら。
その隣は、最初えなちゃん(月映樹茉)が一人で座っているけど、ショーが終わった後、ちょっと一杯飲んですぐに出て行ったはず。
その上手隣(センター)は空席になっていて、次は天玲美音さんが一人で座り、隣に珠洲春希&花露すみか。で、上手端(奥)のテーブルには、蒼羽りくちゃんが一人で座っていました。
舞台奥は、上手から順に蒼羽、天輝トニカ&桜音れい、階段を挟んで天風いぶき、松風輝&七瀬りりこ、で、下手端が雅&安里でした。


下手花道にリックが登場。
黒い細身のタキシードに柄もののベスト。白いYシャツと黒の蝶ネクタイ、ズボンは『現在』のカフェでの服と同じに見えるけど、どうなんでしょう。髪はちょっと緩めてあるのかな?わずか一年前とは思えないほど、若々しくて軽やかなイメージになっていて、別人ぶりにちょっとだけ驚きます。


花道近くのピアノから、サムが声をかける。
「よう旦那、そろそろ彼女は出来たかい?」
「パリにきてそろそろ一年だが、まだ駄目だね」
軽く挨拶をして、楽しそうにテーブルを探しているところで、黒づくめの隻眼の男に出会う。

「リック。久しぶりだな」
「………セザール!?」

亡霊でも見たかのように立ち竦むリック。
なんですかその驚きようは。昔のオトコでもあるまいに。

よれよれの革の上衣に、黒い眼帯。荒くれた雰囲気を漂わせるセザール(十輝いりす)は、確かに華やかなパリのミュージックホールには場違いな感じがします。まさこちゃん、あまりカミソリのような“鋭く張り詰めた”雰囲気のあるタイプではなく、どちらかというと無骨な、戦車のようなタイプなんですが。……それにしても、暢気なアメリカ人観光客とはえらい違いだわ(*^ ^*)。

二人で、空席になっていたセンター手前のテーブルに座って話を始める。

「仕事の話だ」
「俺は武器商人からは足を洗った。知っているだろう?」
「ああ。…だが、今こそお前の力が必要なんだ」

だが、リックはもう戦場に戻るつもりはない。
「スペインを出るときに誓ったんだ。たとえファシズムを倒すためでも、二度と武器は扱わない、と」

戦いが嫌いな、平和主義者の武器商人。
この一連の場面は回想シーンなんですが、難しいのは、リックの過去はさらに二重・三重に過去があるところだと思うのです。映画では、この辺はばっさりカットして、時折挟む短い回想場面の積み重ねと実際の台詞でなんとなく過去を想像させるだけでしたが、今回の小池さんの潤色では、このパリ時代を結構踏み込んで描いているので……
だからこそ、難しい。
もともと小池さんは潤色の天才なのであって、オリジナルはあまり天才的ではないので(←ごめんなさい)、冷静に考えると突っ込みどころがたくさんあって、楽しいです(←あれっ?)。

というか。
ここまで詳しくパリ時代を描いてしまうと、本編と整合性が取れないんですよね。あちこちに小さな矛盾があって。
でもまあ、とりあえず、その矛盾については、矛盾が出てきたところで語ることにして。



とりあえずは、ここでちょっと年表の復習を。

1934年 エチオピア戦争勃発
1935年 リック、エチオピアに武器を密輸(ルノーの台詞より)
1936年 スペイン内戦勃発。リック参戦。
1939年 スペイン内戦終結。
    リックは「二度と武器は扱わない」と決心してスペインを離れ、パリに入ってサムと知り合う。

アメリカ再入国禁止をくらったのは、どのタイミングなんでしょうね?なんとなく、エチオピア戦争まではアメリカを拠点にして武器を扱っていたんじゃないのかな、と思うのですが。
軍の武器の横流しに手を出して、とっ捕まった、とか、、、そういうことなのかなあ?と(想像)

どちらにしても、スペイン内戦はリックが語るようなお綺麗な反ファシスト戦争ではなく、勃発当時は与党側だった人民政府側の急進派が、野党である右派勢力の勢力を削ごうと暗殺事件を起こしたのがきっかけだし、泥沼化してからは、人民政府側の主力はソ連に近づいていき、後半は事実上の共産党軍となりつつあったはず。
ただ、国際的に「反ファシスト」という動きが活発になるのはこの時代で、それは主に、スペイン内戦を取材したアーネスト・ヘミングウェイを含む従軍記者・作家たちの文筆活動によるものであったことは事実。
だから、リックの「この戦争に勝てば、スペインを救った勇敢なアメリカ人として世界のヒーローになれる」という台詞も、あながち間違いではなかったのでしょうね。最初のきっかけや実態がどうであれ、「これは尊い反ファシズムの戦いである」と喧伝されれば、そういう思想に共感する人が集まってくるものだから。


セザール(英語読みでシーザー)は、名前からしてフランス人だと思うんですが、当時フランスは不干渉策をとっていたはずなので、この戦争には個人として参加していたはず。スペイン内戦には、「反ファシズム」の旗印のもと、他国からの参戦者も多かったようなので、そのうちの一人だったのでしょう。
おそらくはリックも同様に。
泥沼化していく戦争の中で、理想を抱いて戦場に飛び込んだ彼らは、さぞ苦しんだのだろうと思います。人の死は理想では説明できない。それは現実ですから。

セザールはその悲惨さに目を瞑ることを覚えて一人前の戦士となり、リックは悲惨さから目を離すことができず、動けない。
逃げ出したリックは、パリの明るい灯に救われる。石造りの街。上流階級のあつまる、明るいミュージックホール。人の心を浮き立たせるショーピアニスト、そして、笑顔でさんざめく人々。

その明るさにあっという間に馴染んだリックに、違和感を感じるセザールが、凄く良いです。
ただ、言うことをきかないリックに苛立っているだけじゃなくて、すごく違和感を感じているのがわかる。「こいつは、本当に俺の知っている男なのか…?」といぶかしんでいるんですよね、たぶん。
その直感力が、彼の力なんだと思います。あれこれ考えすぎてしまいがちなリックには無い、力。リックは彼のそんなところに惹かれて共に戦い、彼のそんなところに反発を覚えて道を違える。「俺はもう、戦わない」……と。




セザールが立ち去った後、軽く溜息をついてボーイに注文するところの憂いが好きです。
自ら切り捨てた過去なのに、切られたような気がしたのか。
困っていた友人を手助けできなかったことに、自己嫌悪しているのか。
自分でもわからない落ち込みに、なんとなくイラつきながら。



そんなリックのテーブルの隣に、垢抜けない服装のイルザが案内されてくるのは、セザールが立ち去るちょっと前、ですよね。イルザを見つけて立ち上がる蒼羽りくちゃんが、上手へ向かうセザールとぶつかりそうになる演出があるので。
セザールもりくくんも、どちらも行き先(セザールは出口、りくはイルザ)だけを見ていて近くを見ていないのがよく判る、さりげない演出だなあと毎回思います。

イルザのテーブルにたどり着いたりくくん、懐から手紙を出して、さりげなくイルザのテーブルに置く……つもりだと思うんですけど、あんまりさりげなくない(T T)。それでも、客たちもボーイたちも話に夢中で全然気がつかないけどさー、りくのその怪しげな動きでは、本来はバレバレだと思うぞ(汗)。


手紙を手に取って、衝撃のあまり失神するイルザ。
咄嗟に抱きとめるリック。
すばやく、しかも相変わらずさりげある感じで、床に落ちた手紙を拾い上げて懐にしまい、とっとと出て行くりくくん。


すぐに気がついたイルザに、優しく問いかけるリック。
「大丈夫か?」
客たちの視線に気づいたイルザ、慌てたように
「…なんでもありませんわ。……お酒を」

安心したように、三々五々散っていく客たち。
このタイミングでだいぶ席替えをします。さっつん&舞生ちゃん、松風&さくらちゃんとか。
りくが座っていたテーブルに、あっきーと桜音れいちゃんが座ったり。


リックがイルザの為に頼んだナポレオンが届く。おおぶりのグラスをそっと持つイルザ。
「何があったのか知らないが、俺は自分の過去は話さないし、君の過去も聞かないよ。安心して。……さ、乾杯しよう」
「……(T T)」
「……君の涙に?」
「……ごめんなさい」
「君の健康に?」
目を伏せるイルザ。

あの手紙に書いてあったことを考えれば、その言葉だけは聴きたくなかっただろうに。


「おい。俺はずっと君を見つめているんだぜ、お嬢ちゃん?」
かの、ハンフリーボガートが口にした名台詞。

やっと自分の方を振り向いたイルザの、潤んだ瞳をじっと見凝めて。

「君の瞳に、乾杯」

……字幕にしか存在しなかったはずの、名台詞。

こうして台詞として音で聞くと、本当に気障な台詞だなあ、と思うんです。
でも、実際に舞台で、すみ花ちゃんの大きな瞳がうるうるしているのを見ると……

本当に乾杯したくなる気持ち、すごくよくわかります。

B席で観ても、オペラグラスを使えばちゃんとそこは伝わってくるんだな、と、感心しましたし。この場面のすみ花ちゃんの瞳のパワーは、本当に凄いです♪




そこに、良いタイミングで入る支配人(光海舞人)の声。
「マダム エ ムシュー、さあ、カンカンが始まります!」

飛び込んでくるカンカンガールたち。ショータイムのはじまり。
一瞬の暗転を見逃さずに、舞台からはけるリックとイルザ。
立ち上がって拍手をする客たち。何度見ても、舞生ちゃんの喜びようが可愛くてたまりません(*^ ^*)。




■第13場 ラ・ベル・オーロール ~1940年6月13日~

カンカンガールたちのショーが終わって、そのまま次の場面へ。
客たちはそのまま出ているし、着替えたのもリックとイルザだけなので、あまり変わった気がしませんが、その間にも時は流れ、今はもう6月。
客たちの人間関係もだいぶ変わってきた……かな?(^ ^)。




ああ、パリは一回では終わらなかったか……。
これでも、だいぶ端折ったつもりだったのになあ(汗)。


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