かもめ

2014年5月24日 宝塚(星)
宝塚バウホールにて、星組公演「かもめ」を観劇いたしました。


素晴らしかった!


チェーホフの「かもめ」を、どう「タカラヅカ」にするんだろうか、と思いながら観に行ったのですが、思いの外、戯曲どおりの展開で最期まですすんでいき、戯曲どおりに終わったことに驚きました。

台詞を加えたりはそんなにしていないと思うのですが(←たぶん)、いままで観たことがある「かもめ」の中でも、演出的に一番明解で、実にわかりやすくなっていたと思います。
「かもめ」ってこんなに判りやすい話だったのか!?と、ある意味驚きました。

おそらく、小柳さんの解釈が明解で、その解釈をきちんと伝える演出(演技指導)になっているんだろうな、と思います。
逆にいえば、あそこまで明解に演出されてしまうと小柳さんの解釈で観るしかないので、「かもめ」の戯曲が本来持っている、どうにでも解釈できるという観客側の自由は制限されているのかな、とも思うのですが……いやでも、とても面白いので良いのだと思います。



いやー、それにしても、星組の芝居ができる人を全員連れてきましたね、という座組でした。小柳さん、さすがヒットメーカーは強いなあ。
そして、いままでに一度も「芝居が巧い」と評価されたことのないどいちゃん(鶴美)に、落ち着きのあるリアルな男性を魅力的に演じさせ、歌は得意ではないはずのはるこちゃん(音波)に綺麗にハモらせ……どういう魔法を使ったのか、ぜひ教えていただきたいところです(*^ ^*)。


91期の紫月さんを筆頭に、役のついていない10人ほどの出演者のファンの方は辛いだろうなあ、と思いますが、、、宝塚なので、そのあたりは難しいですね。作品としては素晴らしいのですが、本来、11人+αで上演する作品ですからね。。。。専科の美城さんいれて20人という人数は、普通よりは少なめではあるのですが。



礼くんの「ママ」という発音が、とても好きです。マザコンで引きこもりな礼くん、万歳。坂木司の「引きこもり探偵」シリーズ、礼くん主演で観てみたい。

城妃さんのニーナは純粋で可愛くて真っ直ぐで、欲望に忠実で、若くて愚かで、そして、捨て身。2幕後半の城妃さん(と、それを聞く礼くん)の芝居には、本当に引きこまれました。
歌えるし、本当に良い芝居をする娘役さん。。。お化粧、がんばれ!(真顔)

天寿さんのトリゴーリンは、大人なんだけど、本質は子供のまま成長が止まってしまった人。
寂しいと死んでしまう兎のように、常にだれかと一緒にいないとダメなタイプ。女の敵だけど、悪意は無い。クリエーターとしての自分の才能とその限界を知っていて、なんとかそれを越えようとあがきつつ、眼の前のリアルな恋人の動向には無関心で。
名を成した文豪たちを越えたいのなら、まずは眼の前の「現実」をちゃんと視なくちゃ、と思うのですが、彼はそうは思っていないんだろうなあ。思考停止しているというか。
「僕には自分の意志がないんだ」「今までにあったためしがない」という台詞が、こんなにすんなり納得できるトリゴーリンに出会ったのは初めてだったのですが、、、贔屓目でしょうかね…?



いやー、それにしても、文句なく興味深くて面白い公演でした!
「かもめ」ってこういう作品だったのか!?と、眼から鱗。

「何度でも観に来てください」、と、礼くんが最後の挨拶で言っていましたが、、、、こっちだって何度でも観たいよ!! だからチケットくれ!!と心の底から思いました。。。



太陽王

2014年5月21日 宝塚(星)
シアターオーブにて、星組公演「ル・ロワ・ソレイユ(太陽王)」を観劇いたしました。


いくつかの曲は聞いたことがあって、どれもすごく好きだったのですが、作品全体としてどういう話なのかはまったく知らずに観劇しました。

……音楽は素敵だし、展開も面白かったのですが……いかんせん 星組の歌える人は、ほとんど全員「かもめ」に持っていかれていた のでしたね、そういえば(T T)。
みんな頑張っていましたが、そもそも音域の広い難曲ぞろいの作品をこのメンバーで、というのはさすがに無謀だったのでは……?と思ったりしてしまいました。

ただ、通しでのヒロインがいない作品なので、宝塚の他の組とか他のメンバーで、というよりは、外部で、歌唱力重視のキャストで観てみたい公演だなと思いました。
具体的にキャストのイメージがあるわけではありませんが、、、まあ、普通に井上くんとかで観たい、かな。。。


とはいえ、作品自体はとても楽しかったです(*^ ^*)


ルイ14世といえば……元・月組ファン的には「薔薇の封印」の霧矢さんのルイ14世が印象的ですが、今回の作品はフロンドの乱から始まるせいか、昔読んだ浅田次郎の「王妃の館」をすごく思いだしました。
王者の孤独と幸福。5人の女性との関係を軸にして、一人の男を描く筆致はなかなか興味深く、面白かったと思います。

ただ、物語として大きなストーリーが流れているというよりは、場面場面がばらばらで、あっちに飛びこっちに飛ぶので……なんというか、お芝居仕立てのショーっぽい感じだなあ、と。あっちであの人の心情を描いたかと思えば、こっちで違う人が違うことしてて、、みたいな展開が、初めて観たときはちょっとわかりにくいかな、と。
オリジナルとはキャラクター配置も歌の位置も違うようなので、オリジナルはどういう話なんだろう?というのはすごく思いました。ボーフォール(真風)とイザベル(夢妃)のエピソードとか、本来はどういう展開だったんでしょうね……?


衣裳とセットは、さすが木村さんという感じの凝り方で、特に宮廷人の衣裳には驚かされました! そして、その衣裳に負けない、星組らしい凝った鬘の数々がまたすごい(^ ^)。
あのカラフルな衣装と髪を、素敵!と思うか、派手すぎてうるさい!と思うかはそれぞれの感性かなと思いますが、ルイ14世の宮廷には、ああいう「煌びやかさ」と「底の浅さ」みたいなものがあったんじゃないかなあ、という納得感がありました。




ルイ14世をめぐる女たち。

■マリー(綺咲)
ルイ14世の、若いころの恋人。
歌も、そこそこきちんと歌えていたし、台詞も普通に言えていて、「天使のはしご」の頃を思えば別人のように成長したなあ、と感心しました。
そして、本当に可愛かった!!台詞の声が微妙に低めで落ち着いた感じなのが、役にもあっていて良かったです。あのくらいの声のほうが、変に娘役らしく高い声で喋ろうとするより良いのかもしれませんね。
あの美貌で、ダンスは文句ないし、歌と芝居がこのくらいできれば十分かなあと思いました。
あとは、歌う時の表情が汚くなりがちだったのでもう少し気をつければ鬼に金棒、かな。


■アンヌ王妃(万里)
ルイ14世の母親。誰よりも美しく、いつまでも現役な母親役がこんなに似合う人が、他にいるだろうか。。。と思ったくらいの嵌り役でした。さすがでございました。


■モンテスパン夫人(壱城)
しーらんの女役はやっぱり美しい!!(感動)美しいは正義!
ただ、最後の黒ミサ場面の衣装はいただけなかったなあ。。。大人の女性なのだから、ひざ丈のアイドル衣装はやめてほしかった。。。しーらんには実によく似合ってましたけど(真顔)、役には合ってなかったです(T T)。


■マリー=テレーズ(優香)
ルイ14世の最初の王妃。
おとなしいけれども芯の強い、高貴な女性。
「コインブラ物語」のコンスタンサ姫の頃は、正直、姫には見えないなあと思ったりこちゃんですが、今回は良かったと思います。芯の強さと優しさと弱さがとても印象的。
フランソワーズと歌う曲がとても素晴らしくて、大好きでした。オリジナルには登場しない役だと聞いたのですが、あの曲はいったいどういう場面で使われる曲なんでしょうか?


■フランソワーズ(妃海)
モンテスパン夫人の子供たちの養育係として世に出て、マリー・テレーズ王妃の侍女になり、最終的にはルイ14世の妃になるフランソワーズ。
可愛かった!!髪形も似合っていたし化粧も良かったし、なにより、いつもやりすぎる表情が、(役柄のせいか?)終始落ち着いた笑みを浮かべていて、本当にずっと可愛かったです。
ふうちゃん可愛い!と思える幸せ。ああ、可愛かったなあ。。。(反芻)


また週末にもう一回観るので、男性陣はまたあらためて。


個人的には、ラ・ヴォワザンの夏樹くんに心を奪われてしまいました。。。夏樹くん素敵ーっ!(注:夏樹くん、2幕は女役です)



東宝劇場星組公演「眠れない男」、千秋楽おめでとうございます!!


生まれてはじめて大劇場の初日を観た作品も、ついに終わってしまいました。
もう二度と、柚希さんのナポレオンにもねねちゃんのジョセフィーヌにも紅さんのマルモンにも真風くんのミュラにも、、、そして、英真さんの老マルモンにも天寿さんのナポレオン2世にも、他の誰にも会うことはできないんだなあと思うと、とても寂しいです。
大雪のバレンタインデーから約一ヶ月半。長い東宝公演でしたが、観ている間にもどんどん深化して、面白い舞台になっていったと思います。出演者のみなさま、そして眠らずに頑張ってくださったスタッフのみなさま、本当に本当に、ありがとうございました。



最終日の昼公演と午後公演を観劇したのですが、、、11時公演は、エジプト遠征前後でねねちゃんのマイクが入らなくなってしまい、銀橋に出てくるところもソロがほとんど聴こえない(←2階席でしたが、小さいながらも一応は聴こえたので、ねねちゃんも良くがんばったと思います)、という音響事故がありましたが、全体の出来はとても良かったです。みんなよく集中して、物語世界の中で生きているな、と実感しました。
千秋楽はお祭りなので(^ ^)なんというか、、、、ぶっ飛んでいる人もいれば、逆に冷静にやろうとするあまり平坦になっている人もいて、全体はちょっとバラけた印象でした。もちろん、それが駄目だという話ではなくて、“話題作”の千秋楽って、どうしてもそうなっちゃうよね、という話なのですが。2階の天辺で観ていた私自身も、この3カ月のみんなの変化を反芻したりしていたので、、、物語世界に没頭していたとは言い難かったですし……、ね。



千秋楽のアドリブは、刀狩りの後、ジョセフィーヌを口説いたナポレオンに、マルモンやブリエンヌ(壱城)が盛大に突っ込んでいたのと、シェイエスの退場と、マリー・テレーズとの結婚前のナポレオンとミュラの会話、、、くらいでしょうか。
ミュラによるダンスレッスンは、11時からそれはもうぐだぐだで(^ ^)、ミュラが一回だけ見せるお手本を皇帝が覚えられなくて(←無駄に複雑な振りだった)、、、下手側でナポレオン2世が素で笑ってて、次の芝居は大丈夫かなー?と心配になったくらいでした(^ ^)。
千秋楽は、なかなか終わらないレッスンと、ミュラの決め台詞(いつもは「まぁ、いいでしょう」)が「素晴らしいです、まるでルイ14世のようです」と次公演に引っかけたコメントに変えてきたのが大受けで、客席が湧いてしまい……次の、グランマルモンの「身だしなみについて教えを云々」という台詞が、きっかけを掴めなくて変な間になってしまいました。。。本放映のときにどういう編集になるのか、乞うご期待★


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東京宝塚劇場にて、星組公演「眠らない男」を観劇いたしました!


まず、大劇場公演との変更点。いや、ちょっとした歌詞とか、掛け合いのタイミングとか、小さな変更は山ほどあったような気がするのですが、大劇場公演の間にも日々変わっていたようなので、そのあたりはちょっと置いといて、大きな変更点だけ。

戴冠式で、ナポレオンが銀橋に出るようになりました!

大劇場では、下手花道から登場してそのまま本舞台の上手奥、ローマ法王(瀬稀)が待つ壇にあがり、そこで「私に冠を授けるのは、法王ではなく民衆だ」という歌を歌って自分で戴冠し、ローマ法王が「神をも恐れぬ…」と歌い、、、あれこれあって、そのままジョゼフィーヌと共に上手花道からはけていってたのですが。

東宝では、まず上手花道からナポレオンだけが登場して銀橋に出て、銀橋中央で、観客に向かって「私に冠を授けるのは、法王ではなく民衆だ」と歌うようになりました。
大劇場で観た時も、せっかくの超豪華衣装(←本当に凄い!)なのに銀橋に出てこないなんて勿体無いなと思っていたし、実際銀橋に出てくると、自分自身が彼を皇帝に選んだ「民衆」の一人になったような気がして、すごく世界に入りやすくなったので、良い演出変更だと思います。

ただ、音楽の流れは変わらないため、法王の「神をも恐れぬ…」の歌が戴冠の前になってしまうんですよね。あと、ナポレオンのそのソロから、本舞台に戻って奥の壇まで行って戴冠式の画を作るまでにだいぶ間があくので、そのあたりは、大劇場での流れを知らないと「ん?」って感じかもなー、と思ったりしました。
うーん、小池さんもここは迷ったところなのかもしれませんね。。。




変更点はそんな感じかな。


そして、大劇場公演の初日を観劇したときの日記はこちらです。
http://80646.diarynote.jp/?day=20140101

あらためて読み返すと、ああ、そうだったなあ、と思いだしますね……(^ ^)。いや、いまはもう、段取りを考えているっぽく見える人はいないと思います。いまはもう、というか、、、大劇場公演の後半に観た時に、既にそう思ったのですが。
ただ、今日の時点では、大劇場とは違う音響にちょっととまどい気味かな?という気がしました。っていうか、東宝の1階席ってすごく音響が悪いから、それだけのことだったのかもしれませんが。2階席のほうが音響良いんですよね、東宝は。特に、コーラスの厚みにはだいぶ差があるなといつも思うので、この公演は、1階席だとちょっと不利かも(^ ^)。




「今後に期待」と書いたマルモン(紅)は、期待以上の進化をしていると思います。まだ途上だとは思いますが、初日のどうしようもなさを思えば、別人のよう(^ ^)。老マルモン(英真)の諦念や包容力にはまだ直接つながってはいませんが……でも、「大勢を守るためです!」と、言い訳ではなく、ちゃんと前を視て、ナポレオンを視て言えた彼が、銀橋を歩くナポレオンを見送った後、どんな人生を送ってじゅんこさんになったのか……それを想像したくなるマルモンにはなっていたなと思います。(←じゅんこさんになるわけではなく、グランマルモンになるんですが!でも!!あれはじゅんこさんだもん!)

ただ。演出的に、戴冠式の場面からマルモンのソロにつながるところが完全な暗転になってしまったのが、“戴冠式の中で疎外感を感じているマルモン”がわかりにくくなってしまって、勿体無いなーと思いました。あそこは演出的に暗転しないといけない場面ではない(マルモンにピンスポを当てつつ暗幕を下ろす大劇場と同じでいい)と思うのですが……なんで暗転になっちゃったのかな。。。




ブリュメール18日のクーデター後の行動(ナポレオン憲法の発布)や、そのあたりの歌を聴いていると、要するに小池さんの考える「ナポレオン」は、「革命の理想」という正義をスピーディーに実現するために独裁を選んだ……というイメージなのでしょうか。
「理想」というのは厄介なもので、ひとりひとり、それぞれの人生に応じて違う「理想」を持っているもの。それをすり合わせて共通項を見出して行くことが本来の「民主主義」の手続きなわけですが、その「すり合わせ」にかける時間が、彼には勿体無かったんだろうか、と。

そんなことを考えながらこの作品を観ていると、もしかして、小池さんは「銀河英雄伝説」のラインハルトからナポレオンを創ったんじゃないか、とさえ思ってしまいます。もちろん、ナポレオンは田中芳樹の描いたラインハルトのモデルの一人ではあったでしょうし、その連想に違和感はないのですが……ただ、ちょっと単純すぎるような気もします。


それと、ちょっと思ったのは……「即断即行が彼のモットー」だ、というのが、台詞でしか説明されていないんですよね。恋愛に関しての即断即行ぶりは芝居として提示されているけれども、それ以外の部分は、単なる我侭にしか見えなくなっている……このあたり、礼音くんだからこそこのキャラクターに説得力があるけれども、演じる人が変わったときにちゃんと伝わるのかな?というのが気になりました。
とりあえず、新人公演で違う人が演じるナポレオンを観るわけですが……不器用でぶっきらぼうで即断即行で人の意見を聞かない、という、ある意味素の「柚希礼音」そのものにしか見えないあのキャラクターを、礼くんがどう見せるのか……月末の新人公演が、とても楽しみです!




2014年、新年明けましておめでとうございます!

いよいよ宝塚も百周年。その、100年に一度のおめでたい元旦初日に、はるばる遠征してまいりました!
ミレニアムの時は全国的にいろんなイベントがあって盛り上がってましたが、今回は宝塚だけで、世間一般は普通の新年なんだよね、な~んてことを思いながらも、こうして百周年という記念すべき年に宝塚ファンとして、みなさんと一緒に祝える幸運は、ありがたいことだなあとしみじみ思いました(^ ^)。



星組公演「眠れない男~ナポレオン~」は、小池さん演出、プレスギュルヴィック氏作曲の新作。ナポレオンの士官学校時代から、ロシア遠征で失敗し、1814年に巴里を同盟軍に奪われるまでを、ジョゼフィーヌとの愛を主軸に、息もつかせぬ2時間半にまとめた作品。
正直、私は大劇場公演の初日というものを観るのが初めてで、どのあたりにハードルをおいておけばいいのかさっぱり見当もつかないままの観劇だったのですが、、、まあ壮大な舞台稽古でしたねー(真顔)。全員がものすごく集中して、段取りを考えながら演じているのが丸わかりでしたし、静かなシーンなのに、幕裏で指示を出しているスタッフさんの声がB席にまで聴こえてきたし。
人間関係にまで踏み込んだ表現ができていた人はごくわずかで、芝居としてはあまり成立していなかったかもしれないな、というのが正直な感想です。

それでも、音楽はどれも場面のイメージを膨らませてくれる素晴らしいものでしたし、小池さんらしい大胆なセットと贅沢な人の使い方が華やかで、豪華絢爛たる衣装と共に、詰め込みすぎで重厚な作品をスピーディーに魅力的に見せてくれました。
今日は舞台稽古でしたけど、これは面白い作品になるんじゃないかな、という期待感は高いです。



本筋の展開は、「よくわかる世界史」的で、「ベルサイユのばら」「スカーレット・ピンパーネル」「愛と革命の詩」「二都物語」「トラファルガー」など、、、あまたの既存作品をそこここで思い出しながら、複雑な政治の流れが、すっきりと整理されていたと思います。

一番わかりにくいのは、ナポレオンが「革命の理想」を実現するために帝政を布かなくてはならなかった矛盾でしょうか。。。それはおそらく、「銀河英雄伝説」の原作本の他にも、いたるところで語られてきた「理想的な君主の許での君主制と、腐った民主主義(共和制)では、どちらが人を幸せにできるか」という議論において、前者を選ぼうとした結果だと思うんですよね。
そして、ナポレオンが前者を選ぶことができたのは、圧倒的な民衆の支持があったから。だとしたら、彼が選んだ道は民主主義によって選択された帝政ということになる……理想的な君主の許での君主制と、腐った民主主義と。こうしてあらためて考えると、その結論は、21世紀の今になっても、真の意味では出ていないんだな、と思います。

あと、最後のタレーラン(北翔)の選択も、観ているときは疑問に思わず観ていたのですが、いま思い返すと、なぜあえて王政復古を選んだのかな、と思ったりしました。赤児のナポレオン2世をたてて傀儡政権を樹立する手もあっただろうに……。結局のところ、なぜ彼がナポレオンを裏切るのか、彼が望んだ「理想の体制」が何なのか、は語られていないんですよね。いや、それは歴史で決まっていることなんですけど(^ ^;ゞ。



キャストは皆、まだまだ段取りに追われてる感が強くて物足りない部分も多かったのですが、その中では、ジョセフィーヌ(夢咲)の色香、6歳年上の経験豊富な未亡人で愛人、という特殊な存在感は抜群でした。
猪突猛進な若い恋人に対するとまどいと、その反動としての意地の張り方がひどくリアルで、一歩間違えれば単なる「嫌な女」になるキャラクターを、歳上ゆえの悩みに昇華し、最後の離別の歌まで持っていった手腕はさすがでした。そして、ラストの痛々しい姿……。なかなかあそこまでやれるトップ娘役はいないと思うので、ひたすら感心するばかりでした。

2番手のマルモン(紅)は、今後に期待。初日はミュラ(真風)と同格っぽい扱いに見えましたが、脚本的にはミュラよりずっと書きこまれている役だと思うので、もっともっと存在感を出して、作品全体の語り部である老マルモン(英真)につながる芝居を見せてほしい、と思います。
憧れ、心酔していたナポレオンを裏切るまでの心理について、小池さんの解釈は、名馬に乗り続ける勇気のない男だった、というものなんですね。織田信長に対する明智光秀みたいなイメージなのかな。ミュラへの嫉妬をあからさまに見せたり、結構リアルな役だなと思いました。いずれにしても、紅さんの優しさと弱さに宛書きされた、良い役だと思うので、回を重ねるごとの進化を、楽しみにしています!

逆に、初日がすごく良かったので、このまま下手に色を足さず、今の芝居を保ってもらいたいのがタレーラン(北翔)。黒幕としての存在感や悪意の見せ方など、ちょうどいい感じでした。いつもやり過ぎて自爆しているみっちゃんですが、明日からも今の調子で、周りの呼吸にあわせて芝居を組み立ててほしいなと思います。



物語が語られるのは、皇帝ナポレオン1世がエルバ島へ追放されてから17年後、1831年のウィーン。
メッテルニヒ(美城)がライヒシュタット侯フランツ(ナポレオン2世/天寿)の許へ連れてくる客人は、老マルモン(英真)。老といっても、たった17年しか経過していないので、1774年生まれの彼はまだ57歳ですが(汗)、、、まあ、とにかく、かつてのマルモン元帥。
逢ったことのない偉大な父親に憧れ、資料を読みあさるフランツに、ウィーン宮廷は決して良い顔はしないけれども、止め立てする理由もない……といった冷ややかな空気の中に、放り込まれた一つの爆弾が、語り部としての老マルモン。彼もまた、ナポレオン先輩を崇拝し、ひたすら後をついていった一人の青年だった……という語りだしが秀逸でした。世代の違う二人が、「ナポレオンへの憧れ」という感情を共有し、それぞれの視点で一人の人物を再構築しようとする。ラストに、語り終えたマルモンに問いかけるフランツの叫びが痛々しくて、切なくて。「逢ったことのない英雄」を父親に持つ皇子の苦しみを、「追いつけなかった先輩」への憧憬と悔恨と諦念のままに優しく包み込むマルモン老元帥とのやり取りが、とても印象に残りました。

フランツは、観る前に懸念していたよりはずっと出番も多く、また、単なる狂言回しではなく、物語全体の大枠を支える“物語の聴き手”でした。思ったよりずっと、演じ甲斐のある役だなあ、と。
作品にとっても、この二人の芝居は非常に重要なファクターなのですが、まあ、ダンスやセットの段取りに惑わされることがないぶん、他のメンバーよりはちょっと先を歩いている印象でした。これから、本筋のメンバーがどんどん深化していくと思うので、それをうけて彼らがどういう化学反応を起こすのか、それも楽しみです。



百周年元旦のタカラヅカ。
鏡開きではじまり、轟さん+10組のトップコンビによる口上、新作初演と、盛りだくさんで充実した一日でした。
作品もこれから面白くなりそうだし、なんというか良い新年でした(^ ^)




最後に、大事なことなのでもう一度。

宝塚百周年、明けましておめでとうございました!!
今年も、どうぞよろしくお願いいたします!

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星組大劇場公演『眠らない男・ナポレオン ―愛と栄光の涯(はて)に― 』の、その他配役が発表されました。

「主な配役」が発表されたときの日記はこちら。
http://80646.diarynote.jp/?day=20131112

さすが小池さん、ほぼ全ての人物を網羅してきましたね。。。すごいなあ。


ナポレオンの家族がらみでは、弟リュシアン(如月)と妹カロリーヌ(早乙女)、ポーリーヌ(妃海)が発表されました。エリザ(夢妃)とルイ(夏樹)も弟妹でしょうか?ジロラモもそのうち発表されるのでしょうか。
彼の愛人となることを断ったレカミエ夫人(優香)は出てくるけど、愛人たちはまだ出てこないですね。この後でるのか、それともいないのか。あ、でも、後妻にしてナポレオン二世の母親、マリー・ルイーズ姫(綺咲)は発表されましたね。良かった、ママが出てくるなら、ナポレオン二世が語り手となってもおかしくない(^ ^)。

ジョゼフィーヌがらみでは、愛人のイッポリト大尉(十碧)くらい、かな?

政治家では、シェイエス(美城)とロベスピエール(輝咲)が判明。そうだよね、いないはずはないよね(^ ^)。「日のあたる方へ」で抜擢された輝咲くんのロベスピエールは楽しみです♪ しかし、彼のもう一つの役、ミシェルは何だろう。。。?
オージュロー(海)、マッセナ(汐月)、ベシェール(漣)はナポレオンの元帥。

ロシア皇帝アレクサンドルI世(麻央)はそのままですが、ローマ法王(瀬稀)……って、ピウス六世か7世か、そのあたりでしょうか。固有名詞ではなく役職名なのは何か意味があるのかもしれませんが。

マリア・テレジアの夫にしてマリー・テレーズの父フランツ一世は、一樹さんが演じるってことはナポレオン二世の庇護者として出てくるのでしょうか。ナポレオン本人とは一歳しか違わない人ですから(^ ^)。

オランプ(白妙)は、女権活動家のオランプ・ド・グーシュでしょうか。あと、ダヴィッド(大輝)はポスターにもなった例の肖像画を描いたジャック=ルイ・ダヴィッド?


最初の発表でいないなーと思った人は、だいたい出てきましたね。あと謎なのはナポレオンの愛人たちくらい?
それにしても、リュシアンはやっぱりハンケチを振ってくれるのでしょうか?(←もしもし?齋藤さんに毒されてますよ?)



眠れない男

2013年11月12日 宝塚(星)
星組大劇場公演「眠らない男」の、一部の配役が発表されました。


集合日から3日目でやっと発表され、しかも一晩明けたら人が増えて、表記の順番も変わっている……という不思議な発表でしたが、とりあえず現時点では以下の通り。初日までにはだいぶ増えると思いますが。

ナポレオン   柚希 礼音
ジョセフィーヌ 夢咲 ねね

バラス     一樹 千尋
グランマルモン 英真 なおき
レティツィア  美穂 圭子
タレーラン   北翔 海莉

スタール夫人  万里 柚美
フーシェ    美稀 千種
クレール    毬乃 ゆい
メッテルニヒ  美城 れん
ジョセフ    十輝 いりす
テレーズ    音花 ゆり
ベルティエ   鶴美 舞夕
マルモン    紅 ゆずる
ブリエンヌ   壱城 あずさ
ナポレオン2世 天寿 光希
オルタンス   音波 みのり
ミュラ     真風 涼帆
ウジェーヌ   礼 真琴


ナポレオンの家族は…レティツィアが母上でジョセフが兄(ナポリ王→スペイン王)ですよね。カロリーヌ(妹)もポーレット(妹)もいないけど、カロリーヌの夫(ナポリ王ミュラ)がいる、っていうのが良く判らない……あと、後妻のマリー・ルイーズはいないけど、彼女の息子ナポレオン2世は登場するんですね……これもだいぶ謎だなあ。
あとは、(家族じゃないけど)秘書ブリエンヌと、腹心の部下マルモンとベルティエ、、、グランマルモンは、マルモンの関係者かな?(違)


ジョゼフィーヌの関係者は……連れ子のオルタンスとウジェーヌ、親友テレーズ、、、くらいでしょうか。ああ、もちろんバラス(パトロン)がいますが(当たり前)、最初の夫も愛人シャルル大尉とかも出てこないんですね。逆に、ナポレオンの愛人ヴァレフスカとか、そのあたりもいないから、宝塚らしい純愛劇になるのかしら。。。それとも、単にキャストが発表されていないだけ?(ありうる)


政治家たちは、ブリュメールのクーデターで倒されたバラスと、倒した側のタレーラン、フーシェ。クーデターの首謀者シェイエス役は、後から発表されるのでしょうか。まあ、クーデター自体にはナポレオンはそんなに深く関わっていないので、その後も長くナポレオンと関わる二人だけでやったことにするのかもしれませんが。
それにしても、このあたりの名前を見ていると、ついつい「トラファルガー」(というか、蘭トムさんのナポレオン)を思い出して懐かしいですね……。


他は、評論家としてナポレオンと対立したスタール夫人と、オーストリアの宰相メッテルニヒ。
ロベスピエールがいないということは、物語の時代は総裁政府時代以降、って感じなのでしょうか。

クレールは……誰だろう?クララ……?




個人的に。ナポレオン2世(天寿)には驚きました。
だって、彼は1811年生まれ。ナポレオンが失脚した時には、まだたったの4歳なんですよ!?義兄ウジェーヌ(礼)が1781年生、義姉オルタンス(音羽)が1783年生、フランツ坊やとは30歳近く違うのに。礼くんより30歳下の坊やを天寿さんが……(- -;ゞ

いくら子役としてティリアンの子供時代をはじめ数々の名演がある天寿さんといえども、さすがに研9になって子役はないと思う(思いたい)ので、、、彼が大人になって(21歳で亡くなるので、それでもかなり若いけど)、自分の父親の人生を調べようとする……みたいなのを物語の発端にしてくれたらなあ、と思ったりします。それだったら、メッテルニヒがさやかさん(美城)なのも納得だし。
でも、もしそうなるとすると、彼の母親が出てこないのは明らかにおかしいから、、、やっぱり違うのかな。早乙女わかばちゃんあたりがマリー・ルイーズとか発表されればいいのですが……本当にどうするんでしょうねえ。

……どうなるにせよ、いかにも出番が少なそうな役名なので、民衆役とかのアルバイトをさせてもらえることを祈っています(切実)(「愛と革命の詩」で、鳳真由ちゃんがアルバイト無しだったので…心配…)。



ところで。
フランツといえば、以前私は、彼を主人公にしたこんな小説を読みました。
http://80646.diarynote.jp/?day=20090407

ライトノベルですが、読み物として普通に面白かったので、お勧めです(^ ^)。
今のタカラヅカだったら、あのゾフィーが似合いそうなのは、はるこちゃん(音波)かなあ?華やかで気の強い、率直で優しいお姫様(はぁと)



花組公演に嵌りすぎて、頭がすっかりテルミドール前で終わっていたのですが、、、一部とはいえ配役が発表されて、テルミドール後もかなり楽しみになってきました。
次に出るのは相関図でしょうか?待ち遠しいな~♪



星組公演「日のあたる方へ」、千秋楽おめでとうございます。


千秋楽は観られませんでしたが、ドラマシティの終盤に観たときには思わなかったイロイロなことを感じさせてくれた青年館公演でした。

木村さんらしく、細かいところを突っ込み始めたらキリがない程度に穴だらけな脚本でしたが、「日のあたる方へ~♪」と繰り返すカゲコーラスに見守られたようなラストシーンが、とても好きでした。
真風くんも、風ちゃん(妃海)も、日のあたる場所に植えられたひまわりのように、まっすぐに育っていってほしい。おひさまに向かって。……そんなふうに、素直に思えたラストシーンでした。



先日の日記では書きませんでしたが、今回の公演のMVPは、実ははるこちゃん(音波)なのではないかと思っています。今回、ヒロインの風ちゃんがああいう役だったので(←あの風ちゃんは大好きです!)、宝塚作品に必要な「華」は、はるこちゃんが一手に引き受けていたんですよね。
ジキルとの関係、父親(一樹)とのやりとり、最後のマリアとの並びと、ブルーノ(天寿)に対する態度。
「華」であることを自分に課して、それをやり遂げている「女」としての存在感に惚れ直しました。脚本的には大して重みのない役なのですけれども、はるこちゃんが力づくで主筋に絡んできた印象。


はるこちゃんのジュリアがMVPなら、さやかさん(美城)のタナカは……なんだろう。基本的にさやかさんは、私にとって星組の宝なのですが……今回の公演に限るなら、「隠し玉」ですかね。
タナカが何故マリアに目をつけたのかは謎すぎて、彼に超能力があったとしか思えず……タナカが出てこなかったらこの話も始まらないんだよね……と思ったりもしましたが、、、いやだから、そこ突っ込んじゃダメだってば>自分。
そんな突っ込みはさておいて、さやかさんの、ちょっと気持ち悪い……というか、陰のある芝居がとても素敵でした。全体に、明るくてまっすぐな人ばかりの座組の中に、こういう癖のある役者が1人いるだけで芝居が面白くなるんだな、と嬉しくなりますね(^ ^)。


ファビオ(輝咲)とペドロ(瀬稀)の92期コンビは、お二人とも大きな役がついたのも初めてに近いんじゃないかと思いますが、とても良かったです!作品の中で求められる役をきちんと果たして、それ以上に盛り上げてくれていたなと。
「ファビオの物語」をメインにしたスピンオフを観てみたい、です(←それ宝塚じゃないよ)


組長(柚美)副組長(美稀)コンビの安定感はさすが。この二人に育てられたからこそ、ジキルがあんなに真っ直ぐに育ったんだな、と納得感がありました。
……「親友」のアルトゥールがそんな形で死んだ時に、「あいつが心中なんてするわけない!」→「一緒に組んで働いていたはずのヤツが怪しい!」とか、、、思わなかったのかなあ。「親友」だったのは若い頃のことで、メビウス夫妻が鉱山探査に嵌ってからは交流が絶えていた、とか、そういう状況なのかしら。なんて、イロイロ考えたりしつつ。


ところで。
市長は、最初から「殺すつもりで」メビウス邸へ行ったんですよね?「妻と子は留守のはずだった。巻き込むつもりはなかった…」と述懐するくらいなんだから。なのに、自首しようとしたって……意味分かんない。父親の基盤を継ぐためにブラジルに戻ってきてしまうくらいなんだから、大した罪の意識は無かったとしか思えないんですよね。そういう脚本じゃないはずなんだけど!!

……いやいや、だから細かい突っ込みはやめようってば。
「傷ついた大人」の一樹さんは、色っぽくてたまらないほど素敵でした。どうしてあんなに素敵なのかしら。。。素敵すぎる(*^ ^*)
市長が、はるこちゃんのパトロンにしか見えなかったのはご愛嬌です(^ ^;ゞ



アンサンブルナンバーの合間に、1人ずつ割台詞を一単語ずつ言っていく場面が何度もありましたが(←木村さんだから)、こちらのチームの下級生は、声がいい男役が多いな、と思いました。新公での活躍が楽しみです。
逆に娘役はほとんど役がなくて残念でしたが、顔だしでの出番自体は多かったので、いろいろ勉強になったのでは。次の「ナポレオン」も、小池さんらしい下級生まで総動員の作品になるだろうから(←たぶん)、下級生もがんばってほしいなと思います♪




それにしても!
このタイミングでCSで流れる「ドン・カルロス」、つい二度見してしまいました……だって音楽おなj(黙)(←ちなみに「虞美人」やってても同じ反応)。



ドラマシティと日本青年館にて、星組公演「日のあたる方へ ~私という名の他者~」を観劇いたしました。



作・演出は木村信司。原作というか、元本にあたるのは、スティーブンソンの有名な「ジキル博士とハイド氏」。私はこの原作は読んだことがないのですがワイルドホーンのミュージカル「Jekyl & Hyde」は、ブロードウェイで幕が開いてすぐに友人から勧められてCD嵌り、日本での上演が決まる前にブロードウェイまで観に行ったくらいのファンです。
今回、「Jekyl & Hyde」とはまったくの別物だと頭ではわかっていても、ワイルドホーンのミュージカルが好きすぎて、しかも石丸ジキルに濱田ルーシー、笹本エマというMy Best Castを観てしまったいま、木村さんの創る「ジキルとハイド」かぁ……という気持ちがあったのが正直なところだったのですが。

面白かった!

私は、この日記でも何度か書いているとおり、木村さんとはあまり感性が合わないというか、相性がよくないのですが、この物語の着想はとても興味深いものでしたし、キャストの良さを生かした明るいラストに癒されました(^ ^)。

ただ、こういう、観る側の反応が予測しにくい難しい題材を扱うにあたって、木村さんの、良くいえばパワフルで、悪く言えばデリカシーがないところは、魅力と嫌悪感の両輪になるんですね。その両輪は、両方あってこその木村作品で、どちらかだけでは作品として完成できない。今回の作品も、細かいことをいえば不愉快な点はいくつかありました。
ただ、最終的には主演コンビの真っ直ぐで伸びやかな魅力に救われたので、座付き作家の仕事としてはそれで良かったのだろう、と思っています(^ ^)。

「Next To Normal」、そして、まだこちらには書いていませんが「ヴォイツェク」から続けて観たので、そこかしこの詰めの甘さが気になったことも事実ではありますが。まあ、あまりそこを追求しても仕方がないので、、、「精神医学」に関わるあれこれはスル―することにして臨みたいと思います(決意)。



真風くん演じるジキルは、バウ初主演だった「ランスロット」と同様、思ったところに真っ直ぐつき進む、猪突猛進タイプの英雄的な青年、ちなみに年齢は27歳半。素直で優しくて、愛され要素たんまりで生真面目で、、、ヘタレでこそないけど、なんだか今までの真風くんのイメージまんまで、とても素敵でした。
そんな彼の、幼少期のトラウマから形成された別人格「イデー」。イデーとジキルが交互に顕れる場面はこの作品の演出的な白眉ですが、、、照明と芝居で表現する「別人格」は、なかなかリアルで、良かったです。

ちなみに、薬を飲んで過去に戻る途中で、博士論文を仕上げた時を再現する場面の芝居(台詞)からすると、木村さんのイメージするジキルの本質は、自信過剰で尊大な天才タイプということになるのですが、、、他の場面では全然そんな感じじゃないので(友人たちにも愛されているし)、なんであんな台詞を書いたのかなーと不思議だったりはしてます。ランスロットとキャラを変えたかったのなら、他の部分が中途半端だし、あっちの方がよっぽど二重人格っぽいんだけどなあ(- -;ゞ



風ちゃん演じるマリアは、ジキルの患者にして、初恋の人。ちなみに、ジキルより年上で、29歳、なんだよね……。
声も芝居も伸びやかで、存在自体がまっすぐで明るい、本当にひまわりのような娘役さんだなあ、とあらためて感じました。「南太平洋」では、24年も先輩の轟さんにどーん!とぶつかっていましたが、今回は、4年上のはるこちゃん(音波)のお姉さんで、3年上の真風くんより2歳上の役で、、、まあ、年上に見えたかどうかはともかく(汗)、ちゃんと包容力もあったし、、、うん、とっても良かったと思います。

彼女の周りだけ陽が当たっているかのようなイマジネーションは、もちろん照明の助けもありましたけれども、彼女自身の明るさもすごく生きていたと思います。
あとね、5歳のマリアが可愛くて可愛くて、もう、、、ね!(*^ ^*)。



天寿さん演じるブルーノは、ジキルの友人で経済学者。
テレビによく出ているコメンテーターということで、人脈も幅広く、過去の事件に関わる情報を集めたり、コンピューター技士を呼んだり、、、と、木村さん的になくてはならない便利屋的な存在でしたが(- -)、天寿さん自身は、「日のあたる道を歩いてきたエリート」を嫌みなく演じていて、場を明るくする仕事もきちんとやり遂げて、とても良かったと思います。ジキルのあの「薬」を飲んでも大丈夫そうな人物像、に説得力を持たせていたのはさすがだな、と、これは若干の贔屓目もあるかもですが。

……ただ、芝居としてはあまりしどころのない役だったので……、天寿さんのお芝居を観たいファン心理としては、ファビオを観てみてみたかったなあ、と思ったりはしました。天寿さんの語る「ファビオの物語」をきいてみたかった……ええ!単純に一樹さんと天寿さんのガチ芝居を観てみたかっただけですよわかってますよ!!

ブルーノさん的に、一番好きな場面は、ラストの引っ込みでのはるこちゃんとの芝居です。いや、単純に天寿さんとはるこちゃんに絡みがあったのが嬉しくて仕方ないだけですが(←懲りない ^ ^)。



十碧くん演じるジョアンは、ジキルの友人にして同じ精神病理の同僚。ジキルは博士だけど、ジョアンはどうなのかな?そのあたりはハッキリ説明されてはいなかったな、と、、、「立場は違っても親友」という位置は、同じ部署にいたらはっきりとした順位付けがされてしまうだけに難しい関係になりがちですが、木村さんはそういうこと考えないんでしょうね。私が考えすぎなだけ?

いずれにしても、ジョアンはジキルの親友で、ジキルのためなら何でもする、正義感に溢れた熱血漢という脚本上のキャラクターは、よく現出できていたと思います。ただ、もう少し……同じ専攻なだけに、ジキルのやっていることの危険性も、患者への深すぎる思い入れが判断を狂わせていることも解ってしまう、、、というところは持っていてほしい気がしました。
親友だからジキルのやりたいことはやり遂げさせたい、でも、おそらくこれから彼がしようとすることは間違いだ……専攻の違うブルーノにはわからないことが、ジョアンには判る。なのに、ジョアンはその警告に目を瞑って、ブルーノと共に行ってしまう……その、去り際の気持ちの残し方がもう少し自然にできるようになれば、良い役になるのになあ……と。
青年館に来てだいぶ良くなっていたので、もう一息かな!?千秋楽までにはモノにできることを祈りつつ。




今回の作品、いろいろ突っ込みどころはありつつも、私としては木村作品にしては相当に高評価ではあるのですが、、、下級生にあまり役がなかったので、組ファンの皆さまには残念なところがあったかもしれません。
今回の座組の中では比較的上級生の輝咲くん瀬希くんに遣り甲斐のある役があったのは良かったけど、それ以外はちょっと寂しい……まして娘役は、出番も芝居のやりようも相当に限定的で、優香りこちゃんとか、それだけ!?って思ったし。
木村作品だから、みんなアンサンブルとして舞台に出ている時間は長かったし、台詞も、割台詞が何回かあったので、おそらくは全員が何回か喋っていると思うのですが、、、拓斗くんとかがしっかり役を貰って取り組む姿も、観てみたかった……。



翔馬寿音さま、
真月咲さま、
花愛瑞穂さま、

ご卒業k本当におめでとうございます!

幸運にも、星組公演「ロミオとジュリエット」千秋楽を観劇することができました。
客席の張りつめた空気、舞台を覆う熱いエネルギー。激しい愛と憎しみに満ちた舞台の中で、星組子も、観客も、みんなで4日間を駆け抜けたような、、、そんな気がしました。
充実期に入った星組を象徴するような作品になったのではないかと思います。

連日の酷暑でみなさまお疲れだったと思いますが、大きな事故もなく、なんとか最後まで乗りきってくれて、本当にホッとしました。
昨日観た時に、あと一日とはいえ、されど一日、どうなることか(T T)とすごく心配になったしーらん(壱城)も、声は本当に辛そうだったけど、とにかく最後まで演じ抜いてくれて、良かったぁあぁぁ(^ ^)となりました。
しっかし、こうして考えてみると、紅さんって喉丈夫なんですね。ティボルトとベンヴォーリオの役替りとか、厳しそう……。いや、マーキューシオが二人とも叫び過ぎなんですけど(^ ^;ゞ

大人たちも若者も、リアルに生きていたヴェローナ。
もうあの輪の中に入ることは出来ないんだな、とおもうと、猛然と寂しくなります。
みんな大好きでした。いえ、みんな大好きです。

走り抜けた後に残る、ぽっかりとした寂しさと満足感。
この作品に、このタイミングでふたたびめぐり会えた幸運に、感謝しています。



星組東京宝塚劇場公演「ロミオとジュリエット」も、明日で千秋楽。
15日にAパターンが再開してから、10日間。Bパターンもそうでしたけど、Aパターンも、わずか10日間でまるで別の作品に化けたような変化があって、観るたびに新鮮な驚きがありました。

柚稀さんのロミオ、ねねちゃんのジュリエット、そして専科のお二人と乳母役のさやかさんをはじめとする「大人」役のみなさまがつくった「ヴェローナ」という世界の中を、役替りの若者たちが突っ走っていて、、、それがすごく興味深かった。
良くも悪くも、今の「星組」というカンパニーのバランスの悪さと勢いの良さが前面に出た10日間だったな、と思います。Bパターンが終わってAパターンが再開した直後の、「作品」としてのトーンダウンと、そこからまた楽にむけて盛り上がっていく勢いが極端すぎて……すごく面白い(興味深い)けど、それなりのチケット代を取る大劇場の長期公演として、それでいいのか?とも思ってしまったんですよね。
その勢いが愛おしい、とも思うし、「タカラヅカ」は本来そういうところだとも思うのですが、でも。


……などと思ったりもしつつ、でも、しっかりと楽しませていただいているこの公演。
まずは、Aパターンの役替りメンバーについて。


■死(真風)
大劇場で観た時、「美しすぎる」と思った真風くんの「死」。
3年前より長くなった髪をきちんとさばいて、表現の一部としてきちんと魅せられていたのもすごいな、と。
一つ一つの振りの意味を確実に伝えながら、空気を動かし、支配する「死」。やっぱりこの人がオリジナルキャストで、本質的にこの人に宛てた役なんだな、と思いました。

今回の役替り、格でいうと紅さんと真風くんがベンヴォーリオとティボルトを分け合うのが自然なところを、あえて変則的な役替りになったのは、真風くんには「死」をやらせたい、という劇団側の判断があったんだろうな、と思っているのですが、その期待に十分以上に応えた出来だったと思います。
初演から大好きなので、もう一度逢えてとても嬉しいです(はぁと)。



■愛(鶴美)
礼くんの「愛」があまりに可愛らしくて肉感的なのに対して、どいちゃんの「愛」はすごく崇高なイメージ。大きく分類すれば、雪組の(大湖)せしるの「愛」に近い……かな?
大劇場では完全な無表情を通していたけど、これも麻央くんの「死」と同様、東京にきてだいぶ表情がやわらかくなって、温かみが増した気がします。大劇場の「無表情」は、役づくりではなかったのかな……。

愛らしさでは礼くんが圧倒的に分があるけど、仕草の一つ一つの洗練はさすが上級生の貫録だな、と思いました。いや、いくらどいちゃんがダンサーでも、スカートさばきにそんなに慣れている理由がないんだけど(苦笑)、たとえば2幕冒頭の教会(Aimer)の場面、「狂気の沙汰」がはじまる直前に「愛」が祭壇の前で片足を高く上げるポーズで、スカートが落ちないのが不思議で不思議で……(←そこ?)礼くんはいつもひざ下が丸見えだったのにー!



■ティボルト(紅)
ベニーは、単体で立つ役よりも、誰かとコンビになる役のほうが映えるタイプなのかもしれないな、と思いました。そういう意味で、ピンで立つしかないティボルト役は、不利だったのかな、と。
マーキューシオとのコンビ、あるいはロミオも加えたトリオで輝いていたベンヴォーリオのほうが、そういう意味ではベニーのキャラが生きていた気がしました。
ベニーのベンヴォーリオとしーらんのマーキューシオのコンビも観てみたかった、なあ。



■マーキューシオ(壱城)
「モンタギューのリーダー」はマーキューシオなんだなあ、と思ったAパターンでした(^ ^)。

しーらんのマーキューシオは、大劇場の時も思いましたが、クールな大人ですよね。女タラシでワルくて、「牡」の匂いをぷんぷんさせた、危険な魅力に溢れた男。
仲間たちと同じ位置で一緒にわいわい騒ぐのではなく、一段上から見下ろしながら、あるいは、「仲間の輪」の外側から、若者たちにちょっかいをだしている感じ。その距離感が、Aパターン再開直後はかなり遠くて、なんだかすごく関係が切れて見えたのですが、徐々にその距離も狭まって、「一歩」になってきたような気がします。
「一歩」=「手を伸ばせば届く距離」……なんだけど、そこであえて手を伸ばさないのがしーらんの役づくりなのかな、と。(Bパターンの天寿さんは、最初から最後まで輪の中にいた印象)

2幕の「街に噂が」は、先週観た時は悲しみよりも怒りが勝る役づくりで、大劇場で観た時の印象とそんなに大きく変わりませんでした。ただ、より「大人」になって、悲しみを背中で語っていたのが、さすが上級生!と感心はしたのですが。悲しいけど、それは表に出さずにロミオを叱る感じがすごく印象的でした。

しかし!!今日のしーらんは、こないだとはまるっきり別人で、身も世もなく悲しんでいるように見えました(@ @)
本気で泣きだす寸前というか。捨てられた子供みたいというか。1幕の彼は大人っぽいワルなので、そこでいきなり子供っぽくなるのは違和感もあるんだけど、逆にそのギャップが、彼の受けた衝撃の大きさを物語るのかもしれないな、と思ったりもしました。

あと、決闘でマーキューシオが切れるきっかけは、「お前はピエロだ」なんですね。そんなところは、クールでクレバーなペシミストであるところも含めて、美弥さんのマーキューシオにタイプとしては近いかなと思っていました。でも、なんか今日は全然違ってたんだよね………最終的にはどこにおちつくのか、楽しみです。喉がだいぶ辛そうでしたが、あと一日、なんとかがんばってほしいなと思います。

明日はいったいどうなるんでしょうね……。
元々振り幅の大きい役だと思ってはいたし、天寿さんも大概毎日別人格でしたが、ここまで設定が変わるとちょっとびっくりします。たぶん、ほどよく間をあけて観劇しているから、余計に差を感じるんでしょうけれども(^ ^;ゞ



■ベンヴォーリオ(礼)
礼くんのベンヴォーリオの、「ジュリエットは亡くなったよ」と告げる柔らかな低い声がとても好きです。
それがロミオにとってどれほどの衝撃か、よくわかっているつもりの、声。
でも、そこに篭められた慰めは受け容れて貰えない。実際には、そんな人間関係は幻想でしかなく、もっとずっと遠いところにいた二人。
嘆くロミオの名前を呼んでも応えてはもらえず、「独りにしてくれ」と言われて、その肩に触れることもできず、「ロミオはきっと大丈夫」と自分に言い聞かせてその場を立ち去る青年。

大劇場の時も思いましたが、彼の届かなさががとても切なくて、でも、マントヴァにロミオを置いて立ち去るという行動に、すごく納得感のあるベンヴォーリオでした。「伝えよう」と一大決心をして会いに来たのに、結局大事なことは何ひとつ伝えられなかったことを、気づいていながら目を逸らしている感じが。
「ロミオなら大丈夫」その盲信が、彼の犯した最大のミスだったのだ、と。



■パリス(天寿)
可愛かったです!嘘みたいに可愛い(*^ ^*)。
そして、「天使のはしご」のコリンズ牧師みたいでした!!可愛かった!!

あまりにも邪気のない、小鳥のように可愛らしくて軽やかなパリス伯爵。お金持ちのぼんぼんで、甘やかされて育って、誰かを疑ったり嫉妬したりしたことがないんだろうなあ、と納得できるキャラクターがしっかり見えました。さすが、オリジナルキャストは伊達じゃないなあ。
人には「悪い人じゃないし、お金持ちだし、愛してくれそうだし、良いんじゃないの?」と言われても、自分の夫としては想像できない……というジュリエットの気持ちもわかる気がしました。うん、納得できる。

……仮面舞踏会で顔をあわせた一瞬でそこまで見抜いたんだとしたら、ジュリエットって凄いなあ(^ ^)。




話は飛びますが。
礼くんって、「おとめ」の身長は170cmなんですね(@ @)。かなりすごい靴を履いているし、逆に礼音くんがちょっと屈んで小さくなってくれていることもあるのですが……Bパターンでは礼音くんとベニーが長身で、天寿さんが一人だけ小さかったけど、Aパターンだと、3人同じくらいのサイズ感に見えました。

でも。ロミオとベンヴォーリオ、ベンヴォーリオとマーキューシオ、マーキューシオとロミオ、それぞれの距離感は、Bパターンの方がずっと近くて、Aパターンはだいぶ遠い感じ。それは、カンパニーとしてのまとまりが云々ではなくて、マーキューシオとベンヴォーリオの役づくりの差なんだな、と思いました。

Bパターンは、まあ公演期間中の紆余曲折はありましたが(汗)、基本的にはロミオが中心で、その隣にベンヴォーリオがいて、さらにその隣にマーキューシオがいる、という感じでしたが、Aパターンは、「大人」なマーキューシオがリーダーで、「ウブ」なロミオと「生意気」なベンヴォーリオがその後をついて回る、というふうに見えるんですよね。

どちらも可能性としては有な設定だと思うし、物語はどちらでも成立するのですが、「街に噂が」の流れは違ってくるんだな、と。
友人の裏切りにあって、世界の崩壊と未来への不安に押しつぶされそうになるマーキューシオとベンヴォーリオ、というBパターン。
自分の庇護のもとにあったはずのロミオに裏切られて怒り狂うマーキューシオと、とまどいを隠せないベンヴォーリオ、というAパターン。
その両方が観れて、とても興味深く思いました。


あと一日。どうぞ全員悔いなく、ヴェローナで燃え尽きられますように。


.
星組「ロミオとジュリエット」、Bパターンの最終日を観劇してまいりました。


大劇場のBパターン初日を観た時も思いましたが、、、役替りっていうのは、予想外に広範囲で大きな影響があるものなんだな、と、あらためて思いました。
役替りメンバーと直接には関係ないはずのメンバーも含めて、舞台の上の全員に、ある意味「集大成」を見せようという気合があったような気がしたんですよね。お盆休みのど真ん中の平日昼間一回公演ですが、客席の雰囲気も凄かったし、、、やっぱり節目の公演なんだなあ、と思いました。(←私の周りだけ?)


「世界の王」や「綺麗は汚い」での、モンタギューチームメンバーがベンヴォーリオ(紅)やマーキューシオ(天寿)に向ける愛情、数えきれないほどの細々した構いようが愛おしくて、
「今日こそその日」や、決闘の最後での、キャピュレットチームメンバーがティボルト(真風)にぶつけてくる熱いエネルギーが眩しくて、、、公演の間中、ずっとアテられっぱなしでした。

「愛」(礼)と「死」(麻央)のお二人もすごく丁寧に踊っていたし、パリス(壱城)はいつも以上に隙のないイケメン二枚目だったし、、、主演コンビのキラキラ度合いも半端なくて、良い公演を観ることができてよかったです。


そうそう、「綺麗は汚い」で、乳母(美城)に「こんなカマキリみたいな男に惚れたのかしら?」と言われたベンヴォーリオさん。一拍おいてちゃんとカマキリっぽいポーズをしていて、さすがー!と思いました。髪型も、昨日はちょっと不思議な盛り髪にされていたのですが、今日はコンパクトにスタイリングされていて、とても似合ってました。

「綺麗は汚い」で、夏樹くんや汐月さんにぐりぐりされているマーキューシオも、めっちゃ可愛かったなあ~(*^ ^*)。


何はともあれ、関係者のみなさま、お疲れさまでした。
明日からAパターン!大劇場で一回しか観ていないAパターン、また集中して観てみたいと思います♪


星組東京宝塚劇場公演「ロミオとジュリエット」Bパターン 役替りメンバーについて。


■ベンヴォーリオ(紅)
礼音くんのロミオが大劇場版より幼くなった分、ベニーが引っ張らないといけない場面が増えて、少し立ち位置の難しい役になったような気がしました。
ベニーのベンヴォーリオは、ロミオの理屈を受け容れることでマーキューシオを喪い、仲間たちから孤立し、ついにはジュリエットの死を知って、もうどうしたらいいのかわからなくなってヴェローナを逃げ出す(=マントヴァへ向かう)……という、ある意味、かなりわかりやすいキャラクターで、大劇場の後半は、わりと自然に立っていたと思うのですが……。

ロミオにジュリエットの死を告げることがどういう意味をもつか(どういう可能性があるか)を全く考えずに、ただ、事実だけを告げに行く若さ。その罪に最後(霊廟)まで気がつかない愚かしさも含めて、本当に可愛い男だと思ったんですよね。
でも、東京に来て、ロミオに情報を告げることの意味に気づき始めている部分が、ちょっと消化しきれずに(←私が)残ってしまうような気がするのです。何が違う、というのはよくわからないのですが。

芝居は、回を重ねるごとにやり過ぎに陥りやすい人なのですが、今のところギリギリで踏みとどまっているかな、という印象。ただ、この土日の間にもだいぶ暴走しはじめているような気がするので、明日からのわずか3公演、何とかうまいところで立ち止まってくれることを祈っています。



■ティボルト(真風)
歌がさらに良くなった!!
いやー、すごい。このくらい歌ってくれれば、普通にミュージカルやってくれて良いです!「南太平洋」ですごく伸びたな、と思ったのですが、大劇場から東宝の間にもう一化けして、、、若いってすごいなあ。
「真実の俺じゃない」とか、歌が安定してきた分、芝居に集中できているのが良かったと思います♪♪

あと、大劇場と違うのは、ワイルドさが増したところでしょうか。
決闘の最初、いらんことを言ってくるマーキューシオに対して「うるさいっ!!」と怒鳴るところとか、「今日こそその日」の破れかぶれさとか。ワイルドな色っぽい男、という存在感が見えるようになってきたな、と思いました。



■パリス(壱城)
大劇場での、シャープで高慢ちきな、ちょっと嫌味なくらいの気取りや感を少し抑えて、どちらかといえば「普通の人」に近づけてきたような気がしました。。

それにしても!大劇場の時も思ったけど、本当にしーらんパリスはイケメンだし、生活力もありそうだし、、、乳母が「パリスさまに比べたら、ロミオなんざ雑巾です!」って言うのもわかるわー、という説得力があったような気がします。
乳母の裏切りにちゃんと理由(根拠)があることで、ジュリエットの頑なさが際立つ演出になっていたので、たぶん小池さんの意図どおりなのだと思うのですが……でも、正直にいえば、しーらんパリスにも、もう少し隙があって、「ジュリエットが嫌がるのもわからないでもないけど……」と思えたら、それはそれできっとわかりやすいんだろうなあ、と思いつつ。



■マーキューシオ(天寿)
大劇場の時も書きましたが、やっぱりマーキューシオの飼い主はロミオではなくてベンヴォーリオだと思います。それも、飼い犬じゃなくて飼い猫だよね、絶対。ベニーに首根っこを掴まれて、ひょいっと喧嘩の輪からどけられたりするのが、死ぬほど可愛いです。なんであんなに可愛いんですかあのドラ猫。
「決闘」でも「ヴェローナ」でも、ベニーに『待て』と手振りをされて、一瞬止まる天寿さんが本当に可愛い。犬じゃなくて猫(それもあまり躾られてない)だから、あんまり長くは待てない感じなのがまた可愛くて(←駄目みたい)。

……なんだかもう、今回の天寿さんのマーキューシオは、あまりにも好きすぎて全く冷静に語れません……すみません、長いので読み飛ばしてください。(←贔屓目なの知ってます、はい)

今回、Bパターンで一番好きな場面は、2幕の「街に噂が」です。
いままで、この曲についてちゃんと考えたことがなくて、漠然と“ロミオが仲間たちを説得しようとして失敗する場面”くらいに思っていたのですが……ロミオに向けて、皆で「お前は自分の未来を捨てるのか!?」みたいなことを歌う歌詞があるんですよね。ああ、そうか、“仲間たちがロミオを説得しようとするのに、ロミオが全然話を聞いてくれずに逃げてしまう” 場面ととらえることもできるんだな、と。
今までこの作品を何回観ているの?というか……視点が変わるとこうも見え方が変わるものか、というか(^ ^;ゞ。すみません、全然違う場面を観ているような気がしました。

それにしても。ロミオに裏切られた、という事実に対して、怒りよりも哀しみが先に来るマーキューシオが、とても新鮮でした。
裏切られたことが悲しくて悔しくて、そして、それ以上に友人の将来を心配しているのに、その想いがまったく伝わらない、受け取ってもらえないもどかしさ。
観ているだけで彼の辛さが伝わってきて、胸がきゅぅっと痛くなります。

天寿さんのお芝居は、毎回、わりと「痛々しい」印象が強い……のですが、マーキューシオは特に、彼が常時かぶっている「道化」の仮面が、完全に彼の「貌」になってしまっているところも切なくて(T T)、胸が痛む気がしました。
表は笑っているんだけど、その奥にあるのは、「本当の自分」をさらけだせない、怖がりで不器用な魂なんだな、と。自分の想いが伝わらない、伝えられないことに怯えている感じ。大公に対する態度とかも、「どうせ伝わりゃしない」という諦めを感じるんですよね。大公はマーキューシオを十分に可愛がっていると思うのですが。
なんというか、「ファントム」のエリックとキャリエールの前半のような距離感を感じました。銀橋場面に至る前に死んでしまうエリック。愛されているのに、それを受け取れない子供、というイマジネーション(マーキューシオはもう子供じゃないけど)。

そんな彼にも、「街に噂が」の中で、ロミオにナイフをつきつけた後、そのままフラフラとナイフを握ったままロミオの後をついていこうとしてベニーに止められる瞬間とか、ナイフをしまうときの、何かが切れたような表情とか……「道化」の仮面が外れてしまう場面が「決闘」の前にもいくつかあって、そのどれもが印象的でした。
敵と闘うためにナイフを握るティボルトと、自分を守るためにナイフを離さないマーキューシオの対比。そのナイフを人に向ける時は、自分が死ぬ時だ、と、そのくらいのことはわかっているクレバーさと、それでも抜かずにはいられない、「ティボルトぉ~~!!」という呪詛の呼びかけ。

なんかもう、いちいちツボすぎて、ツボが多すぎて何から書けばいいのかわかりません……。

そういえば。大劇場とは年齢設定がだいぶ違う(東宝の方が歳上っぽい)と感じたので、そっちを書いておきたいと思います。
大劇場では完全に、仲間たちに可愛がられている生意気な弟というイメージだったのに、、、ロミオやベンヴォーリオに対する態度が全然違ってて、対等にしてるなあ、と。
「マブの女王」を歌った後の「今夜は付き合えよ~!」も、大劇場はすっごい甘えたな口調(←すごく可愛くて大好きでした。なくなってしまって残念!)だったのに、東宝では「友人」に言う台詞になっていて、芝居って面白いなあ、と改めて思いました。
……猫は猫のままですけどね(^ ^)猫なので、犬の鳴き真似が下手糞なのもご愛嬌?



■愛(礼)
とにかく可愛い(メロメロ)。大劇場のときから完成度が高かった……というか、3年前の時点ですでに非常に良かったので、特に今回書くことがないくらい、全ての場面が大好きです。
一番好きなのは……実は、2幕冒頭の教会(「狂気の沙汰」の前)だったりします……(←聞いてない)



■死(麻央)
あらためて、麻央くんは黙っていれば本当に綺麗、と感心しました。
ただ、一つ気になったのは……大劇場ではほぼ完全な無表情で通していた「死」が、だいぶ表情豊かになってきたなと思いました。……ってことは、大劇場で無表情だったのは、役づくりでも演出でもなかったってことか!?



星組新人公演「ロミオとジュリエット」。


先日はメインキャストの印象をざっくり書きましたので、あらためて、作品(演出)について。

新人公演演出は田渕大輔。
去年「Victorian JAZZ」でデビューした新星ですが、それぞれの役者にキャラクターをきちんとはめて、一つの舞台としてしっかりまとめあげたな、と思いました。
作品として仮面舞踏会スタートになるのは、雪、月、星と全部同じなので、おそらく契約の関係なのでしょう。今回は、その前に少し神父(ひろ香)のナレーションで場面設定を説明する場面があって、そのあたりは一年前の月組新人公演での工夫を踏襲してきたのかな、という感じでした。



今回、本公演は大規模な役替り公演なわけですが、全体に、どちらかといえばAパターンがベースになっているような気がしました。
それぞれ役者の個性が違うのでだいぶ違うのですが、ベンヴォーリオが“ある確信(自信?)”をもってマントヴァへ向かうところとか、「街に噂が」のマーキューシオが、かなり本気で怒っていたこと、死が能動的で愛が受動的なところなど、私のツボが全部Aパターンよりだったんですよね。あと、「僕は怖い」リプライズのマーキューシオの踊りだしもAパターンだったし。

ただ、「死」(十碧)については、存在感として、Aパターンの「死」(真風)より、むしろ月組新人公演の「死」(鳳月)に近いものを感じました。
特殊メイクも復活していたし、存在の仕方がなんとなく似ていたような気がしたんですよね。ただ、ちなつちゃんは、振りと振りの間の動きがすごく独特で、動きのすべてが本公演とは全く違っていたのですが、十碧くんはそこまでではなく、動き自体は基本通り美しく踊っていたと思いますが……。


「ロミオとジュリエット」という作品も、宝塚だけでもう4演め。役替りや新人公演も含めると相当なヴァリエーションがありますが、こと「ロミオ」と「死」の組み合わせ、という観点でいうと、今まで上演されたものは、大きく4つのパターンに分類できると思うんですよね。

「生命力に溢れたロミオ」と「能動的に彼の運命を操ろうとする死」という組み合わせは、初演星組、雪組と月組の新人公演、再演星組Aパターンがそうですね。
とっつきやすくてわかりやすく、盛り上げやすい(盛り上がりやすい)バージョンだと思います。新規獲得用、という感じかな。

逆に、「最初から死に魅入られているロミオ」と、「彼が墜ちてくるのを待っている死」という組み合わせは、雪組版と、月組の明日海ロミオ版がそうだったと思います。
主人公が後ろ向きなため、舞台作品としては重くなりやすく「華やかな宝塚」というイメージとのバランスが難しいのですが、、、でも、成功すればポテンシャルは高いパターン。リピーター獲得用、とでもいう感じでしょうか。イメージですけど。

「死を拒否するロミオ」と彼が墜ちてくるのを待っている死」という組み合わせは、月組の龍ロミオ版がそうだったかな、と。……まあ、“死を拒否する”というより、“すぐ近くにいる死に気がつかない”という感じではありましたが(^ ^)
この組み合わせで物語を進めるには、最終的な「死」に向かう強力な牽引車が必要なのですが、月組版の場合は、これがジュリエット(愛希)だったと思います。ジュリエットが「家」を拒否して死に向かうから、ロミオも引き摺られてしまう。それだけの強さと愛のあるちゃぴジュリエット、大好きだったなあ……(しみじみ)

今回の星組新人公演は、「死を拒否するロミオ」と「能動的に彼の運命を操ろうとする死」という組み合わせ。特に礼ロミオの、真っ向勝負な「死ぬのが怖い!」という叫びが新鮮でした。
単なる「生命力に溢れすぎて死も手が出せない」という感じではなく、絶えず「死」が身近にいることを知っていて、小さなころからそれを拒否して生きてきた少年、という印象。
だからこそ、物語全体のフレームに、“ロミオと死の対決”というモチーフがうまく嵌っていたような気がします。もともと新人公演は、一幕の「世界の王~僕は怖い」の流れがカットされているので、どうしても「ロミオ」と「死」が近しい関係にあるところが表現しにくく、つい「対立」に持っていきたくなるのだろうな~、とも思うのですが……(←たまたま?)

いずれにしても、十碧くんの「死」は、氷のような冷たさと美しさがあって、とても良かったと思います(*^ ^*)。



東京宝塚劇場にて、星組新人公演「ロミオとジュリエット」を観劇いたしました!


礼くん、城妃さん、新人公演初主演おめでとうございます!


実力には定評のあるお二人ですが、予想以上に可愛くてお似合いの、お人形のようなコンビでした(^ ^)。
ちょっと固いかなと思ったところも、緊張しているんだなと思ったところもありましたが、若さにまかせた勢い勝負ではない、きちんと感情の裏付けのある良い芝居をしていて、二人とも若いのにすごいなあ、と思いました。
他のメンバーも、ダンサーたちは若く弾けて、大人たちは学年を感じさせない落ち着きがあって、実力者ぞろいで、実に興味深い新人公演でした(*^ ^*)。



ロミオの礼くんに関しては、舞台度胸も歌の実力も何もかも本公演その他で実証済みなだけに、もっとやれるんじゃないかという勝手な期待があったんだけどなー、という肩透かし感がありました。いや、どんだけ期待していたんだ?って話なのですけどね。でも、そういうのってきっとご本人にも伝わっていて、無駄なプレッシャーになっていたんだろうな、と思うと反省。。。。
とりあえず、「礼真琴」を知った3年前の夏から今まで、一度も観たことがなかった「緊張している礼真琴」に逢えたような気がして、ある意味親近感が湧いていたりします(^ ^)。

歌はさすがの一言……なのですが、とはいえ、ものすごくレベルの高いところで、もう一息深いところで歌ってくれたらもっと良かったのにな、とも思いました。いつもより少し、……上擦っているというほどではないけれども、いつもより若い声だなあと思ったんですよね。
元々が若くて、見た目も可愛らしいタイプだから、むしろ大人っぽくつくりたいところだろうに、声だけ普段より高めで、音質の軽い、明るい声で前半はずっと歌っていて……ちょっと不思議な気がしました。

後半になるにつれて、落ち着いてきたのか声が深くなって、追放前の「ひばり」はすごく色っぽい良い声で、惚れなおしました(*^ ^*)。全編この音色で歌ってくれていたらなあ……(^ ^)



ジュリエットの城妃さんは、本公演の群舞やフィナーレで観るたびに晴華みどりちゃん系の美貌だなあ、と思っていたのですが……ジュリエットの髪と衣装には若干苦戦気味だった、かな。観客側がねねちゃんのバランスで見慣れているから、どうしたって不利だし……。
でも、本当に声が可愛くて、歌も台詞も素晴らしいです(*^ ^*)。まだ若いのに、相手の目をしっかり視て、芝居のキャッチボールができている感じがありました。空気感の綺麗な娘役さんで、将来がとても楽しみです!



ベンヴォーリオの夏樹くん。まだ下級生だと思っていたのですが、もう新公の長なんですね(@ @)。落ち着きのある、一本筋のとおった真面目な若者像で、ベンヴォーリオ単体では、今まで観た中で一番好きかもしれません。
歌や芝居の落ち着き感と、見た目のキラキラした若さが、違和感あるような気もしましたが、逆にその違和感がベンヴォーリオの深さになっているのかな、とも思いました。ベンヴォーリオのリーダーシップがはっきり出ていて、きれいにピラミッドができているのもすごいな、と。

印象に残ったことはいろいろあったのですが、一番興味深かったのは、マントヴァにロミオを探しにきたときの会話でしょうか。本役の礼くんとも紅さんとも全然違う、優しい語り口がすごく印象的でした。「君に、逢いに……」と告げる彼の、これから自分がどんなにひどいことを告げようとしているかを知っている大人の、労わるような優しい声。「ジュリエットは亡くなったよ……毒を飲んで、みずから命を絶ったんだ……」沁み入るようにやさしく、想いやりにみちた……ある意味、上から目線の、声。

ロミオに拒否されて、本気で吃驚しているベンヴォーリオが、とても印象的でした。あの瞬間まで、彼は本気で「それを伝えるのはこの俺しかいない」と思っていたんですよね。本当に伝えたかったこと(「まだ俺がいる」こと)を伝える前に完全に拒否され、「ロミオ」と呼びかけるのが精一杯で、触れることもできないベンヴォーリオが悲しくて、切なくて、可哀相でした。
「どうやって伝えよう」が、歌としても芝居としてもすごく良かっただけに、マントヴァでの一連の芝居がしっくりと噛み合って、ああ、こういう話だったんだろうな、とすごく納得できました。

本公演でも、どこにいてもパッと目を惹く華やかな美人ですが、一度、ど真ん中の役でも観てみたいなあ、と思いました。



キャピュレット夫人の夢妃さん、乳母の妃海さん、神父のひろ香さん。配役が発表されたときから期待値が高かった方々ですが……その、高すぎるほど高い「希代のハードル」を、3人揃って軽々と乗り越えてくれたのが、作品全体のレベルアップになっていたと思います。

若くて可愛くて活き活きとした風ちゃんの乳母。本当にキュートで歌も巧くて……「南太平洋」のネリーでも思いましたが、良くも悪くも宝塚娘役の枠に納まらない人だなあ、と思いました。(遠野)あすかちゃんとはちょっとタイプが違うけど、でも、彼女の当たり役だった「シンデレラ」や「アーネスト・イン・ラヴ」のグウエンドレンみたいな、母性のあるヒロインをまた観てみたいです。

優しくて穏やかで、冬の陽溜まりのような、ひろ香さんのロレンス神父。本当にやさしそうで、怪しげな薬の研究をするようなケレン味のある人物にはあまり見えなくて、、、若い二人の勢いに巻き込まれてしまった気の毒な人、、、というふうに見えたのは……狙い、なんでしょうかね(^ ^;ゞ。

仇っぽくて艶やかな、杏瑠ちゃんのキャピュレット夫人。「憎しみ」が無かったのがとても残念!!でしたが、予想以上に良かったです。ずいぶん期待値をあげていたつもりだったのに、こんなに軽々と越えていかれると、もうどうしたらいいのかわからない(^ ^)。

モンタギュー夫人の珠華さんも、「罪びと」の歌いだしの低音部が完璧で、素晴らしかったです!!感動しました。こちらも「憎しみ」聴いてみたかったなあ。。。





東京宝塚劇場にて、星組公演「ロミオとジュリエット」Bパターンを観劇してまいりました。


大劇場で観たものからまたさらに進化して、とても良くなっていました。
一人ひとりがすごい集中しているのがわかる。私は、この作品で一番好きなのは両家のダンサーたちの群舞なのですが、広いはずの舞台が狭く思えるくらい、みんなが必死で踊っていて、とても良かったと思います♪



■ロミオ(柚希)
大劇場のイメージ以上に、「少年(子供)」っぽさを前面に出して来たな、という印象でした。
良くも悪くも「モンタギューの一員」感は少なめで、その中でちょっと浮いた存在感が興味深かった。みそっかすな御曹司を、一族のみんなが大事に立てているような、その独特の空気感。……いや、もちろん柚希さんが「みそっかす」な訳ではないので、あくまでもイメージなのですが、良くも悪くも「同質な仲間」には見えないんですよね。でも、「大事な仲間」ではある、という感じ。

「West Side Story」のトニーは、「もうジェット団は卒業した」というのがポイントだったけど、ロミオは、「同じところに立ったことがない」感じ。まあ、身分制があるのが当たり前な時代なのでしょうから、そういうものなのかもしれません。御曹司なことは間違いないもんね。



■ジュリエット(夢咲)
麗しきファム・ファタル。
なんというか、年齢とは無関係なところで、「何も知らない」純粋な箱入り娘にちゃんと見えたところが凄いな、と思いました。
箱入りのピュアな生娘なのに、「琥珀色の雨に濡れて」のシャロン以上のファム・ファタルでありえたところが。

そして、雪組の美海ちゃん(舞羽)や月組のちゃぴ(愛希)と一番違うのは、もし神父の計画どおり二人で霊廟を脱出できたとしても、生活水準の違うところで生きていけるとは思えないところでしょうか……それも、たぶん、二人ともに。
だからこそ、ベンヴォーリオとマーキューシオはあんなにも必死になって止めるんだな、と納得したりしたのでした……。

銀橋で「約束の人に出会えますよう」と祈るジュリエットの、すごく子供っぽいんだけどすごく真剣な表情。幸せな結婚の夢をみていた美海ちゃんとも、崩壊した家庭で追い詰められていたちゃぴとも、どちらとも全然違う、ひどく生真面目そうな子供の真剣さがすごく好きでした。
あれこそが真骨頂なんだと思うし、ジュリエットはやっぱり、ねねちゃんがオリジナルなんだな、とも思いました。



■キャピュレット夫妻(一樹/音花)
今までに観てきた中で、一番お互いへの愛のあるキャピュレット夫妻だった……ような気がしました。月組版の家庭崩壊ぶりがあまりにも明らかだったので、その反動なのかもしれませんが(^ ^;ゞ

それでも、悲劇は起こる。長年連れ添った倦怠期の夫婦の、戯言に近い「夫を愛したことなどないわ」という言葉を真に受けて、「そんな風になりたくない!」と思いこむ、純粋な箱入り娘。
教訓。夫婦喧嘩は犬も喰わない。特に、娘の前ではやってはいけません!

それにしても。ジュリエットの思いこみの強さと頑固さは、確かにキャピュレット卿に似たのかもしれませんね。……娘のことをちゃんと理解しているのに、自分の考えを譲らない父親と、娘の頑固さを理解しようとしない母親。なんていうか、、、哀れだなあ。



■モンタギュー夫妻(美稀/花愛)
どちらも目立つソロ曲はないけど、すごく大事な存在である夫婦。今回、この役がお二人で良かったなあ、としみじみ思います。
初演の時から大好きだった、花愛さんのモンタギュー夫人。霊廟で、息子を見つけて駆け寄る時の必死さと、夫の慰めを受け容れずに拒否する誇り高さ、そして、罪の赦しのきっかけとなる想いの強さ。あらためて、やっぱりすごく好き!と思いました
みきちぐのモンタギュー卿も、ずいぶん喧嘩っぱやくなって、若いころはぶいぶい言わせていたんだろうな(←古い)、と改めて思ったし、なんていうのか……キャピュレット卿のちょっとお茶目というか可愛らしいところと、モンタギュー卿のちょっとお固くて体育会系なイメージと、、、「代々争ってきた」だけではなくて、この二人も本当に噛み合わなかったんだろうな……と思いました。

そして。
今日観ていて、「おお」と思ったことが一つ。
いまさらかもしれませんが、彼らにとってマーキューシオが死んだことはそれほど悲しくないんだな、と。

彼の死は、あくまでもロミオの罪につながったからこそショックなのであって……もちろん、血縁ではあるのでしょうから(大公の弟とモンタギュー卿の妹との間の子、とか、そんな感じでしょうか?)悲しくないわけではないにせよ、それよりも息子の身のうえが心配な両親。

ある意味当たり前なことだけど、なんとなくマーキューシオ目線で観ていたので「……あぁ」と思ってしまいました。
ティボルトの死については、キャピュレット夫人が深く嘆き悲しんでくれるけど、マーキューシオの死を悲しむのは、仲間たちだけなんだな、と……いや、違う。大公がかなり真顔で悲しそうでした(T T)ね。



■神父(英真)
ロレンス神父って難しい役ですよね。私もロミジュリはかなりいろんなバージョンを観ている方だと思うのですが、どの公演でも「ロレンス神父」に当たる存在はいて、そして、どれもこれも全然違っていたような気がします。
「神父」なんだからカソリックですよね。だから、一度結婚させたら離婚はできない。娘の結婚は親が決める時代に、娘の意思だけで勝手にした結婚だとはいえ、神の前に誓いをたててしまった以上、取り消しはできない。
だからこそ、ジュリエットを仮死状態にしてでもロミオに連れて行ってもらわなくてはならない。

……気持ちはすごく良く判るのですが!
でも。ロミオとジュリエットが家を出て二人で、乳母も誰もいなくて生きていけるかどうか、ちょっとは考えようよ……。



■乳母(美城)
さやかさんは星組の宝で、この作品の神です(*^ ^*)。

結婚式の直前、「さあ、準備を」と言ってジュリエットの背中を押そうとして……ためらう場面がすごく好きです。溢れる想いが、物理的な粘度と色をもって目に映る、そんな気がしました。

そして、「娘よ」の直前、ジュリエットが逃げ込んだドアの前で振り向いた瞬間に、凝っと娘を叩いた掌を見凝めるキャピュレット卿の背中を視て、何事かを決意してドアの中に入るさやかさんが、本当に好きです。
あの場面で乳母がジュリエットを裏切る理由、破滅への最後のボタンを押した理由が、ジュリエットとその父親への情だったことが、とても切ない。。。とにかく、これだけは言えます。さやかさんは神。



■大公(十輝)
恰好良い!
出番は少ないけど、貫録十分ですごくカッコいい上に、自分が守るべき「ヴェローナ」とその民たちに向ける愛情が深くて……愚かな民でごめんね、と、ついつい思ってしまいます。
マーキューシオとか、人の話は聞いてないし頭下げないし「けっ」って思ってるし……(←Bパターンに限る)、あんなに素敵な大公様が“伯父上”なのに、何の不満があるんだ!!

(たぶん、何もかも不満だらけなのだろうなと)(←真顔)



■ピーター(真月)
可愛い~~~~!!なんだか今回大好きすぎて、もうこれが最後だなんて信じたくないです……。

っていうか、初演ではさやかさんがピーターだったんだよね……時の流れって凄い!





役替りメンバーについてはまた別途書かせていただければと思います。




すごくどうでもいいことですが、ロレンス神父の項目を書いていて、一つ書きたかったことを思い出したので、メモっておきます。

宙バウ公演の夏美さんは、「神父」なんだから、妻も子もいないはず……だよね?

ロミジュリを観る前に、宙バウの続きを書くつもりだったのにー、生田さんが脚本変えたりするからすっかり予定が狂った……マジで5日に休み取って観に行きたい(涙)(チケットがないですよ)(←律速はそっちか…!)

来年の花組大劇場は、悔いのないよう考えたいと思います(^ ^)。



宝塚大劇場にて、星組公演「ロミオとジュリエット」Aパターンを観劇いたしました♪

Bパターンを観た後の日記はこちら。
http://80646.diarynote.jp/?day=20130614


これは、Bパターンの中でも初日あけてすぐのを観た時に書いた日記なのですが、、、この後もう一回Bパターンを観にいったときは、みんな、また全然違う感じに進化していたんですよね。

そして今回、やっとAパターンを観て……役替りのメンバーだけでなく、役替りしないメンバーも全然印象が違っていて、びっくりしているうちに観劇が終わってしまいました(^ ^)。
役替りのせいなのか、公演として回数を重ねたせいなのか、、、どっちもかな、という気がするのですが。



えっと、いろいろ書きたいことがたくさんあるのですが、あまり長くなってもあれなので、とりあえず、まずは役替りメンバーから(^ ^)。



みっきぃさん(天寿)のパリスが、死ぬほど可愛かった!
すみません……いや、やっぱり、一番気になっていたみたいなんですよ私。博多で観たパリスがとっても可愛くて間抜けで大好きだっただけに、今回はどうなるのかなあ、と。
今回の公演、パリスのみっきぃさんと「死」の真風くん、「愛」の礼くんの3人が3年前の初演で演じた役を半分だけ演じているわけですが、抽象的な存在である「死」と「愛」に比べると、パリスはより具体的なキャラクターがあるだけに、「3年前の自分がライヴァル」になる度合いが大きいんじゃないかな、と。まして、月組版のゆりやん(紫門)が、ある意味究極の「気取り屋の間抜け」を体現してしまった後は、やりにくいだろうなあ、と。

Bパターンのしーらんは、「気取り屋」が前面に出た役づくりで、むしろ神経質なくらいの嫌味さを見せていましたが、Aパターンのみっきぃさんは、間抜けが気取ってるのが可愛い!という感じ。絶対夫にはしたくないけど、婿にならしてもいいかな、と思うかもね、とでも言えばいいのでしょうか。とにかく可愛くて、ぱっかーんと弾けてました

一生懸命気取ってるんだけど、それがむしろ“キョドってる”ようにさえ見えて、そんなところも可愛い。。。ああ、舞台の上で隙なく可愛い、ってこのことかなあ、と。
……単なる贔屓目なんでしょうか、このトキメキは(^ ^)苦笑。

パリスは出番が少ないのでバイト無しだと厳しいなあとあらためて思いましたが、その分、赤や青のダンサーがゆっくり観れて幸せです(*^ ^*)ああ、れんた(如月)カッコいい!!



同じく3年ぶりの真風くんの「死」。
美しすぎた。
美しすぎて怖い、というのが実感としてわかる気がしました。甘美な美しさ。
Bパターンの麻央くんも決して悪くはなかったけれども、これを観てしまうと、こっちが本役だなあ…と思わせるだけの迫力がありました。すべての仕草が絵になる迫力。

誘い、いざない、背中を押す……今まで観たことがないような気がしたくらい、具体的かつ能動的な「死」でした。、しかも、全篇を通して驚くほど表情豊かで、しかも、その表情の一つ一つが美しいの!

麻央くんの「死」は完全な無表情だったし、芝居としても、かなり受動的な印象を受けました。自ら魂を獲りに来ているのではなく、運命の命に従って待っているような感じ(?)
月組本公演のたまきち(珠城)はどちらかといえば待っている感じだったけど、もっと“待ちかまえている”感じがしたんですよね。
新人公演のちなつ(鳳月)は、、、あれは、魂を狩りにきてたような気がします。うん、すごく怖かった!!



どいちゃん(鶴美)の「愛」は、こちらも真風くんの「死」に対抗できる迫力があって、さすがでした。
流れるような流麗なダンスがとても綺麗。雪組のせしる(大湖)を思い出しました。まあ、せしるはもっと攻め系だったから、芝居としてはだいぶ違いますが……。

面白いなあと思ったのは、Aパターンは「愛」が無表情で「死」が表情豊か(雄弁)なのに対して、Bパターンは逆に、「愛」がものすごく表情豊かで可愛くて攻め系で、「死」が無表情で受け身、と、組み合わせがまったく逆だったことでしょうか。
小池さん、計算してるな……と、いまさらなことを感心してしまいました(^ ^)。




礼くんのベンヴォーリオ。もうちょっと背があれば……と思ったところもありましたが(主にロミオの肩を抱くシーン。無理だよその体勢は!)、すごく良かったです! 
この役は、Bパターンのベニーがあまりにも良かったし、2年前の東宝以来、“気は優しくて力持ち”系が演じることが多くなっていたのでので、クレバーな参謀タイプの礼くんはどうなるかなあと思っていたのですが。。。いやホント、予想以上に良かったです。
リーダー格の6年生(柚希)と、頭の良い4年生の参謀役(マセガキ)みたいな感じで、ロミオとの関係性は、学年を超えてすごく出来ていたと思う。元気で頭が良くてマセているんだけど、大人ではない、その微妙な感じがちゃんと見えたし、彼の「届かなさ」に説得力がありました。
みんなを止めたいのに止められない、みそっかすなベンヴォーリオ

「どうやって伝えよう」は、大歌手・礼への期待が高すぎたのか、そんなに「歌」として凄いとは思わなかったのですが(←マーキューシオといい、ロミジュリのナンバーは本当に難しいですね)、芝居としては相当に引き込まれました。
精一杯大人ぶって生きてきた彼にとって、マーキューシオを喪い、ロミオを喪ったことは、人生最初の大きな挫折だったんだろうな、と。だから彼は、自分が立ち直るために、自分自身が運命に立ち向かうために、マントヴァへ向かう。それが、Bパターンとの大きな違いかな、と思いました。

Aパターンのベンヴォーリオは、ロミオに恋人の死を伝えたら、その結果何が起こる可能性があるか、漠然と気づいていたんじゃないかと思います。でも、彼は、彼自身の理由でロミオに逢わなくてはいけなかった……そして、自分は悲劇がおこりうることが分かっているのだから、止められるはずと思っていた………ように見えました。
でも、もちろん、止められなかった。恋人の死を伝えることはできたけれども、「僕と君と二人きりになってしまった」ことは、「まだ僕がいる」ことは伝えられなかった。伝える前に閉め出されて、もう声は届かない。一方通行の気持ちは通じず、手も触れられない。
そして、すべての結末を見せつけられる霊廟の場面でのベンヴォーリオが、とても小さくて、子供のようにひ弱に見えて……こんな子供がこんなに苦しまなくてはならない“大人の理屈”なんて、あり得ないのに……と、酷く悲しくなったのでした(T T)。



しーらん(壱城)のマーキューシオは、今まで観た中で一番クールな大人だったような気がします。ただ、大人だけど誰よりも気が短くてキレやすいけどね(^ ^)。
特に2幕は怒りが勝った印象でした。理不尽な仕打ち(=ロミオの裏切り)に対する怒りが、八つ当たり気味にティボルトに向かう感じが。彼はロミオの行動を「自分たちに対する裏切り」だと思って、それで怒り狂うんですよね。Bパターンのマーキューシオは、もっとなんていうのか……悲しそう(心配そう?)に見えたので、すごく違うなあと思いました。
どちらかといえば、こっちが本来のマーキューシオだと思うんですけどね(^ ^;ゞ



ベニー(紅)ティボルトは……なんだろう。可もなく不可もなく?という気がしました。良かったけど、特に印象に残ったことがない、というか。
ベンヴォーリオがすごく良かっただけに、役が替わってしまったのが残念な気がしました(^ ^)。しーらんマーキューシオと紅ベンヴォーリオの組み合わせも観てみたかったなあ(真顔)

役替りメンバーについては、まずはそんなところでしょうか。
この公演も、あと二日ですね。千秋楽まで怪我や病気なく、全員揃って、元気に東京へ来てくださいますように。お待ちしています!



秋の星組振り分け&追加の公演が発表になりました。



■専科バウホール公演
 バウ・コメディ『第二章』
 -CHAPTER TWO by Neil Simon-
 原作/ニール・サイモン 脚色・演出/石田昌也

石田さんによるニール・サイモン・コメディ第二弾!

「おかしな二人」の第三弾があるかな、とは思っていましたが、まさか「Chapter TWO」をやるとは!
ああでも、こちらの方が轟さんのキャラクターには合っているかもしれませんね!石田さんがんばれー!(^ ^)

出演者は、轟さん、英真さん、(夢咲)ねねちゃん、(早乙女)わかばちゃん。
このメンバーだと、正直わかばちゃんのお芝居は相当心配なのですが、、、はるこちゃん(音波)か今回新公ヒロインに抜擢された97期の城妃さんなら、安心だし楽しみなんだけど(^ ^)。。。いや、逆に、この作品とメンバーでわかばちゃんを鍛えることが目的の公演なのかもしれません。

公演期間は10月3日~14日。ちょっと微妙な時期なので行けるかどうか……でもやっぱり、「おかしな二人」が良かったので、なんとか行きたいなあ。。。

で。
こういう企画があるから、真風くんがドラマシティだったんですね。。。バウを建て替えるとか、そういう話はないのかな、結局のところ。



■星組ドラマシティ・日本青年館公演
 ミュージカル『日のあたる方(ほう)へ ―私という名の他者―』
 ~スティーヴンソン作「ジキル博士とハイド氏の奇妙な物語」より~
 脚本・演出/木村信司

振り分けが発表されて、、、真風くんより上級生の芝居巧者が全部参加、という感じですね。
木村さん、強いなあ。

みっきぃさん(天寿)とはるこちゃん(音波)が二人揃って参加するのが嬉しいです!
二人の絡みがあるといいなあ。

てっきり、今回のドラマシティは、真風くんの2番手として礼くんが来るとばかり思っていたのですが、、、新公主演経験者は十碧くんのみなんですね。これだと「ランスロット」と同じ座組(表向きは二番手不在)になる可能性が高いかな。。。「主な配役」も真風くんとふうちゃんだけだし。


ワイルドホーンのミュージカルとは設定がだいぶ違うようですが、他にはどんな役があるんでしょうね。
ふうちゃん(妃海)のマリアは、解説によるとジキルが薬を飲むきっかけになる人で、精神疾患がある設定のようですが、、、ポジティブなエネルギーに満ち溢れた「元気者」のふうちゃんと「精神疾患」が結び付かない(滝汗)。いったいどういうキャラになるんでしょうね。


男役は、ミュージカルだとアターソン(ジキルの友人)とストライド(エマに恋したジキルの恋敵)が比較的若くて目立つ役ですが、、、木村さんはどういう役をはめてくるんでしょうね。ミュージカル「ジキル&ハイド」のアターソンはとてもいい役だったので、それを天寿さんがやってくれたらとても嬉しいですが、、、まあ、作品が違うしなあ。

娘役は、ミュージカルだとルーシー(ハイド氏の愛人)が非常に大きな役ですが、これに対応するような役があるなら、ぜひはるこちゃんで観てみたいです!(^ ^)絶対似合うよね!!



■星組国際フォーラム・博多座公演
 柚希礼音スペシャル・ライブ『REON!!II』
 作・演出/藤井大介

ねねちゃんが出ない「REON!!」。
「バーレスク」はどうなるかわかりませんが、「愛と死」のデュエットダンスは、礼くんと麻央くんで実現するのかな?麻央くんの「死」は意外に良かったので、もしそうだとしたらとても楽しみです。

台湾公演のお芝居を考えても、ねねちゃんが出ない分、女役トップポジには礼くんが入りそうな気がしてなりませんが。。。それとも、城妃さん(や綺咲さん)を使うつもりなのでしょうか。
……どいちゃん(鶴美)もいるから、そのへんで分け合うのかな?

なんて、色々考えてもチケットが早々取れるとも思えないですけどね。
あああ、すっっかり博多座行くつもりだったのになあ(真顔)。



星組公演「ロミオとジュリエット」Bパターン千秋楽おめでとうございます!
また東宝で観られるのを楽しみにしつつ、明日から再開するAパターンも、がんばってください!(^ ^)


Bパターンだけでも、とってもたくさん語りたいことがあるのですが(^ ^)、、、とりあえず、早くAパターンを観たい、です。



さてさて、東宝はチケット取れるんでしょうか(涙)。


宝塚大劇場にて、星組公演「ロミオとジュリエット」を観劇いたしました。


やっぱり、何度観ても好きだなあ、と思える力のある作品。主役二人がせっかく大人の恋が演じられる二人なのに勿体無い、という気持ちはありつつも、オリジナルキャストの面目を見せつけた出来だと思いました。
私が観たのはBパターン(ベンヴォーリオ=紅、ティボルト=真風、パリス=壱城、マーキューシオ=天寿、死=麻央、愛=礼)だけですが、2年前の東宝版から月組に続いた人物設定の変更(ベンヴォーリオ=“粗忽者”とかパリス=“気取りや”とか)は、そのまま継承された印象でした。



役替りのないキャストで特筆したいのは、なんといっても乳母のさやかさん(美城)!本当に本当に本当に、素晴らしかったです~~!!(涙)
配役が発表されたときから一番楽しみだったキャストの一人。思いっきりハードルを上げていたはずの私の予想の遥か上を行く、素敵な乳母でした(はぁと)

乳母のソロで泣くのは予想の範囲内だったのですが、結婚式で、背中を丸めてしょんぼりと俯いた寂しさが……花嫁の“母”の、寂しい背中を見ていたら、胸がきゅうううっとして(T T)。あそこが一番泣けたかもしれません。

1幕が終わった時は、あんなにも愛情深い“母”が、どうやって2幕で裏切るところに持っていくんだろう?と不思議だったのですが、実際にその場面になってみると、キャピュレット卿とジュリエットの言い合いの間に挟まれておろおろしている様子がとてもリアルで、一挙手一投足のとまどいの意味がすごく伝わってきました。
キャピュレット卿に説得された、というよりは、「娘に裏切られた父親」に同情して、同情のあまり、それが娘のためだと信じることにした乳母。「お父様には絶対わかりっこない!」と言い捨てたジュリエットが去った後、キャピュレット卿の方を振り向いて、卿の背中を視て……それからジュリエットを追うまでの短い芝居が、ものすごく雄弁で。
優しくて情に篤い、愛情に溢れた乳母の「決意」の色が、とても鮮やかに見えました。

……ああもう、さやかさんは、早く専科にい行っていろんな組に出てくださるか、組長として月組に来てくれないかなあ。今回は本当に、あの方を独り占めしている星組はずるい!!と思いましたわ……。



月組の「ロミオとジュリエット」では、最初から家庭として崩壊していたキャピュレット家ですが、今回の星組版では、台詞でいうほど冷えているわけでもないように見えました。やっぱり、ヒロさん(一樹)のキャピュレット卿は、不器用だけれども優しい、浮気はしてもそれなりに夫人を大切にしているように見えましたし、コロちゃん(音花)のキャピュレット夫人も、同じく浮気はしても心の底では夫を尊敬し、愛しているように見えたんですよね。
そして、ジュリエットも、両親と乳母からの愛をいっぱいに受けて、幸せに育ってきた大人の女性に見えて、月組のちゃぴ(愛希)のような「絶対にこの家を出なくては!」という切羽詰まった感はなかったような気がします。

ただ、ジュリエットが最初に傷つくのは、母親が冗談めかして言う「夫を愛したことなどないわ」だったのが面白い解釈だな、と思いました。うちの両親は仲が良くって、と信じて生きてきた娘が、初めて「大人の理屈」に出会ってその理屈を拒絶する。元々、父親に似て頑固な娘が、さらに頑なになったら、もう「大人」は太刀打ちできないんですよね。
この作品は、基本的に、ロミオは運命に流されているだけで、能動的に事象を動かすのは全てジュリエットなんですよね。「結婚しよう」と申し込むのはロミオだけど、それ以外は全部ジュリエット。何もわからない子供ではなく、知ったからこそ、大人になること、大人の理屈を受け容れることを拒否した少女。
それを拒否した以上、彼女は生きていくことはできない。ポジティブなロミオのエネルギーも、その狂気を覆すには至らなかった。手紙の行き違いがなくても、遅かれ早かれ同じ結末に至ったであろう二人が、ラストシーンでキャッキャウフフと踊っているのを観ると、、、こうなるしかなかった二人の美しさが、切ないほどでした。



この作品で卒業される花愛さんのモンタギュー夫人は、あの豊かな美声が健在で、とても幸せでした。
みきちぐ(美稀)のモンタギュー卿は、、、そんなに髪の毛盛らなくても(汗)、と思いつつ、でも、素敵だったからいいんです。
英真さんの神父さまは、前回の月組公演の役づくりを継承している感じで、周りの大人たちが初演メンバーなのでちょっと噛み合わないところもありましたが、これから馴染んでくればしっくりくるだろうな、と思います。霊廟の歌はさすがでした♪



まさこ(十輝)の大公は、押し出しが良くてハンサムで恰好よくて素敵!!!でした。
歌も思ったよりずっと良くて一安心!(←どんだけハードル下げたの)いやー、素敵だったわあ(*^ ^*)。



ダンサー陣は、赤も青も本当にみんな恰好良かったです!はるこちゃん可愛い!!そして、(汐月)しゅうくんが、博多座と同じ金髪ロングのポニーテールでしたっっっ!!東宝でスチール撮り直してくれないかしら。あの髪型のスチールほしい!!



ベニーのベンヴォーリオは、私が今までに観たベニーの中で一番好きなベニーでした。ベンヴォーリオとしても、東宝の浦井くんの次に好きかも(*^ ^*)。私、やっぱりベンヴォーリオは“粗忽者”であってほしいんですよ。年はロミオより上でも下でもいいけど、ボケとつっこみならボケであってほしい。「気は優しくて力持ち」なタイプであってほしいんですよ。
オリジナルキャストの涼さんと、雪組版のまっつ。二人はどちらかといえばロミオよりクールでクレバーな参謀タイプで、「どうやって伝えよう」と悩み苦しんでマントヴァまで来ておきながら、ジュリエットが死んだことだけ伝えて逃げ帰るようなキャラに違和感があったんですよね。それが、東宝の浦井くんがすごく温かい、可愛いベンヴォーリオで。ああ、こういう配置もあるな、と思っていたら、次の月組は本公演がマギー、新人公演がまゆぽん。まさに“粗忽者”“気は優しくて力持ち”でした。

ベニーは、その誰とも違うけど、優しくてやんちゃで、とても可愛かったです。
ロミオの存在感は、どちらかといえば「WEST SIDE STORY」のトニーみたいな感じで、やんちゃをするほど若くないけど、仲間と逢えば同じレベルで盛り上がれる、という印象でしたが、ベニーはまさに、「みんな」と「ロミオ」の間にいる感じがありました。
役替わりの片割れはまだ若い礼くんなので、いったいどうなってしまうのか、とても楽しみです(^ ^)。



真風くんのティボルトは、見た目はオリジナルのテル(凰稀)にそっくりで、特に鬘とかは本人に借りたのかと思いました(汗)。
ヘタレで後ろ向きで他責、という三重苦を背負ったキャラクターは、完全には嵌らないけれども結構近しいものがあるなと思いましたし、ティボルトのもう一つの属性である「恋する男」というところにはぴったりでした。いままで新公含めてすべてのティボルトを観てきましたが、こんなにも「恋に悩む」ティボルトは初めてのような気がしました。
歌も思っていたよりずっと良くて、「南太平洋」で巧くなったなーと思ったのは気のせいじゃなかった!と嬉しくなりました♪
Aパターンではベニーなんですよね。ベニーはベンヴォーリオが良すぎて、ティボルトがまったく想像できない感じですが、楽しみなキャストではあります。



しーらんのパリス伯爵は、こちらも月組のゆりやん(紫門)以来の「気取りや」路線を継承していたと思います。ゆりやんは、ただひたすらにほわほわしたぼんぼん、という印象でしたが、しーらんはもう少しシャープに、嫌味なくらいの気取りや感を出していて、さすがだなあと思いました。
生活力もありそうだし、見た目もイケメンだし、ジュリエットがあんなに嫌がる理由がよくわかりませんでしたが(苦笑)。
オリジナルのみっきぃさんは、声だけ聞けば2枚目、顔と全身の動きを観ると「間抜け」という感じでしたが、今回はどういうアプローチで来るのでしょうか。。。CSニュースの短い映像では良く判らない(涙)。



その、みっきいさんのマーキューシオ。
こちらも東宝→月組と継承してきたクレバーなペシミスト、というキャラクターに沿った役づくりで、紅べんボーリオとのバランスは素晴らしかったです。“生意気でやんちゃな弟”感満載の役づくりで、すごく可愛かった(*^ ^*)。
あと、マブの女王の後でロミオに「つきあえよ~!」っていう言い方がものすごく甘えたで、、、「女タラシ」じゃなくて「男タラシ」 「人タラシ」なんじゃないかと思いました(^ ^)

面白いな、と思ったのは、「笑顔の仮面」でしょうか。
みっきぃさん自身(あるいは小池さん)の中でマーキューシオの家庭がどういう設定になっているのかわからないのですが(すみません、まだ歌劇読んでないんですが、何か書いてあるのでしょうか?)、あれだけ自然に仮面を被ってピエロを演じている以上、金には不自由しなくても愛情には飢えた家庭だったんだろうなあ、という気がしてならなかったくらい、何か大きなものが欠けた人物像を設計しているように見えました。
友達には恵まれてるのに、ねえ。。。。

月組の美弥さんは、もっと無理して仮面を被っていたというか、ピエロを演じる自分に忸怩たるものを感じているマーキューシオだと思ったのですが、新人公演の朝美さんは、生きるために必要だからピエロを演じている、という意思がはっきり見えて、それはそれでとても好きでした。
みっきぃさんは、まだ初日があいてすぐなので最終的にどう転ぶかはよくわかりませんが、少なくとも私が観た時の印象では、生きるために必要だから、意思をもって仮面を被っている役づくりだったと思います。大公の前での態度とか、「決闘」でキレるタイミングとか。。。
……こうあってほしい、という、私の個人的な思いこみ(思い入れ)かもしれませんが。



礼くんの愛は、可愛かった!!
オリジナルの時は薄い一枚布の衣装で、身体の線が丸見えだったのですが、今回は大劇場用に創られた裏地ありの綺麗な衣装。衣装にキラキラがついているせいか、顔の模様は無しでしたが、とにかく可愛くて色っぽくて、、、ああ、これがオリジナルだった!と心から納得しました。

適度に弱くて「死」に抗う姿の痛々しさと、あまり主張しすぎない包容力がとても魅力的。今回の「愛」は、それ単体で存在する超自然の存在というよりは、ジュリエットの内面そのもの、のように見えました。
二人が出会う前の「いつか」の場面で、愛がすでにロミオに恋をしているかのようで、本当に可愛かったです!



麻央くんの死は、綺麗でした(^ ^)。
歌わない、喋らない麻央くんは、素晴らしいです(きっぱり)




……実は、役替りの初日を観たんですが、、、あんな公開舞台稽古、久しぶりに観ました(汗)。(←たぶん、「血と砂」の初日以来)
同じ日の15時にいはもうだいぶ立て直していたので、ホッとしましたが。。。初回を観た時は、ホントにどうなることかと思いましたわ………(^ ^;ゞ
8日の11時公演をご覧になったみなさま、ぜひ、Bパターンの間にもう一回観てあげてくださいませ!!



Bパターンが始まって、もうすぐ1週間。この週末が終わったら、もう中日ですよね。短いなあ。
再来週にはまたAパターンに戻って、そのまま七夕まで。ただでさえ歌もダンスも多くて大変な作品なのに、役替りも多くて大変な公演ですが、どうぞ全員が悔いなく、そして故障なく千秋楽を迎えられますように。



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