東京芸術劇場プレイハウスにて、TSミュージカル「ちぬの誓い」を観劇いたしました。


2012年の大河ドラマ「平清盛」中盤のメインテーマとなっていた、大輪田泊(いまの神戸港)の波除島構築工事の物語。いかにも謝さんらしい、生きるための「目標」を求めた闘いが切ないほど辛く苦しいものとして描かれていて、、、その辛さが、ひどくうつくしくみえました。
平氏の世の中=武士の時代=新しい時代、という夢 の美しさと厳しさに、目眩がしました。


ドラマでは清盛自ら大輪田に居座って実際の工事の指揮を執っていましたが、謝さんは同じ工事をテーマにしながら、清盛を全く登場させず、すべてを清盛の代弁者としての「陰陽師」(今拓哉)を通さないと上にあがらない(そもそも経が島造営自体が彼の上申)、という設定にしていました。この設定による「清盛」と「現場」の距離感と、「陰陽師」の設定が、工事にあたる実務担当者たちの焦りと不安を助長させ、遣る瀬なさを倍増させていたのが、とてもリアルで。。。辛かったなあ。

ドラマとしては、清盛を登場させて彼らと直接話をさせ、同じ夢に向かってがんばるぞ!!とやらせたほうがが、観客は気持ち良く感動できると思うんですよね。

でも、謝さんはあえてそうしなかった。描きたかったのは、見捨てられたのかもしれないという不安の中で、それでも夢を見捨てない、清盛の夢ではなく自分たちの夢を実現するために全力を尽くす男たちだから。清盛との間に確かにあったはずの絆や共感が時間の中で風化してしまっても、清盛の夢は、すでに彼ら自身の夢になっていたはずだから。

武士の世、それは、誰もが生まれに関わらず能力が評価される世の中。
すでに鎌倉時代以降を知っている現代人にとっては、平氏の時代はあくまでも平安時代=貴族の時代の末期であって、武士の時代ではありません。でも、当時を生きている人々にとっては、それは「武士の時代」の黎明期であったのだ、と……その実感が、ぞくぞくするほどリアルに伝わってきました。

美しい物語とはいえない、泥臭い経が島造営工事。TSらしい華やかな殺陣も少なくて、重たい会話がずっとつづく作品でしたが、、、彼らの生き様はとても美しくて、鮮烈で、目が離せませんでした。
たぶんそれは、新撰組のメンバーが視た「武士になるんだ!」という夢に近いものだったのではないかと思う。滅ぶ側に与したことも含めて、彼らには共通点が多そうな気がします。
謝さんがそんなつもりで創っていないことはわかるので、あまり突っ込まないことにしますが(^ ^)。



それでは、出演者について簡単に。

■東山義久
実務責任者の不動丸。リーダーはいつどこで観てもリーダーだなあ。。。とちょっと感慨にふけりつつ。
アンジョルラスを演じたときは歌はまだまだ、と思いましたが、少なくともこのメンバーでこの劇場でやっている分には十分な声量と美声、そして感情を伝える技術。ダンスはもともとすごいのに、歌まですごいって。。。。すごいなー(語彙少ないな)
「ニジンスキー」の再演もすごく楽しみ!チケットないけど、絶対観るぞ!


■相葉裕樹
なんというか、独特の存在感と空気感のある人なので、「有らざるものが視える」能力を持つ貴族の御曹司・松王丸にはぴったりだったと思います。他のメンバーと明らかに生きている世界が違う(^ ^)。
飄々とした中に熱いものが隠されているところが、すごくいいなと思うんですよね。彼の不安と苦しみ、そし最後の決断に至る流れが自然で、説得力のある芝居をする人だなあ、と思いました。


■藤岡正明
不動丸に次ぐナンバー2の五郎丸。音楽のもつ力を一番感じさせてくれたのは彼でした。世界を動かす音楽。共感力のある


■良知真次
見捨てられた孤児で、盗賊団に育てられた過去をもつ達若。もう、あの美貌だけで全てが許せる時代は終わったはずなのに、やっぱり良知くんが苦しんでいるとトキメいてしまう(滝汗)
あの抜群のビジュアル+存在感+被虐的な雰囲気、、、つい物語のキーパーソンに設定したくなる気持ちは良く判るのですが、、、あれでお芝居がもう少しうまければねええ(溜息)


■渡辺大輔
達若の盗賊団時代の仲間で、武士に恨みをもつ常世丸。ありがちなキャラクターですが、ドラマを動かすには必要なんですよね、こういう存在が。
ちゃんと認識したのは多分今回が初めてだと思いますが、そつなくこなしてて巧いなーと思いました。


■上原理生
歌の深みと存在感はさすが。アンジョルラスのイメージが強かったので、髪はぼさぼさで黒く汚した化粧に、しばらく誰だかわかりませんでしたが、歌いだしたらわかりました(^ ^)。
ドラマを動かすというより、「そこに太く在る」という存在感がすごくあって、アンジョルラスとは全く違うけれども、とても良かったです。


■戸井勝海
渡来人の末裔、秦東儀。久しぶりに戸井さんの芝居と美声に酔いました。イロイロどうかと思うご都合主義的な無理矢理設定でしたが(苦笑)、戸井さんの芝居はすごく的確だったと思う。的確すぎて若干いけすかない感じになってたけど、それも含めてすごく良かった(*^ ^*)


■今拓哉
現場の責任者として、清盛と現場との間をつなぐ「陰陽師」。
謝さんは、彼を妖しげな人物に設定することで現場の苛立ちを強調してみせましたが、その役割をきっちり果たした今さんの存在感は、さすがの一言でした。いやー、この人本当にすごい。。。




印象に残ったのはそのあたりでしょうか。

ここしばらいく忙しくてTSも観られない公演が増えつつあったのですが。。。やっぱり観つづけたいカンパニーですよね。……いや、あの、秋の公演は、思いもよらない方が主演されるので、観にいかなくてはならないわけですが。。。。
http://www.tsmusical.com/

………謝さんとは、「黒い瞳」「MAHOROBA」以来でしょうか? ショーの振付のみとかだったら他にもあるかな。
いずれにしても、歌とダンスのレベルは誰よりも謝さんがご存知だと思いますので、今の女優・大空祐飛の芝居をどう使うのか、楽しみに期待してお待ちしています!


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銀河劇場にて、笹本玲奈コンサート「MAGNIFIQUE」を観劇いたしました。


デビュー15周年記念コンサート。あの「ピーターパン」のチラシをみて可愛い子だなと思ってから、もう15年もたつのかー、と非常に感慨深かったです。

13歳で「ピーターパン」でデビュー、19歳で「レ・ミゼラブル」のエポニーヌ役を勝ち取り、、、今や押しも押されもせぬミュージカル界のトップスターの一人である玲奈ちゃん。可愛い可愛いと思っていましたが、「ウーマン・イン・ホワイト」のマリアあたりからぐっと大人っぽくなって、「ジキル&ハイド」のエマの包容力には本気で感心しました。
普段から、玲奈ちゃんが出る舞台はなるべく観るようにしていますが、、、残念ながらコンサートには縁がなく、今回が初参加でした。

素晴らしかった!!

一幕だけでも、「ロック・オブ・エイジズ」から「ミス・サイゴン」まで、10曲。
名作の大役、大曲だらけの1時間。柔らかなソプラノから力強い「ON My OWN」「命をあげよう」まで、どの曲も想いが籠められて、一曲ごとに世界が完成されて、本当に素晴らしかった。

どの曲も良かったですが、JAZZアレンジの「もし私がベルなら」と、シェーンベルクの2曲が特に印象に残りました。
「ピーターパン」から「もし私がベルなら」「ランベス・ウォーク」の3曲は、トークを挟みながら“大人っぽく”をテーマにJAZZアレンジで歌ってくれたのですが、適度な色気と元気が良い感じにミックスされて、とても印象的でした。

「28歳、アラサーですー」「笹本玲奈、大人になりました!」と何度も繰り返していたトークはボケボケで、とても面白かったです。「ずっと『玲奈ちゃん』だったのに、最近『玲奈さん』とか『笹本さん』とか呼ばれちゃうことがあって、すごく抵抗がある」「若い出演者が敬語で話しかけてきたら罰金って言ってるんです」と大真面目に語っていたのが面白かったです。……ミュージカル界の女王が何を言ってるんだか。。。いやもう、本当に可愛かったなあ~(*^ ^*)。


「ピーターパンでデビューしてからの15年間、半分以上を一緒に歩いてきたエポニーヌ」と幸せそうに語ってから歌ってくれた「ON MY OWN」。デビュー当時にも観ましたが、一直線で元気で、頭が良すぎて切ない、そんなエポニーヌだなあと思ったことを思い出しました。あの時はあまり意識していなかったけど、こうやってあらためて観ると、長身でしっかり肉のついたきれいなスタイルは、それまでエポニーヌを演じていた島田歌穂・本多美奈子とは全然違ってたんだなあ。。。
いまさら言うまでもないような気もしますが、本当に素晴らしかった。切なくて寂しくて、いろいろこみ上げてくるものがありました。


面白トークを散々聞かせてくれた後に、一幕最後の「命をあげよう」は、力強く。
初めて演じたときは何もわかっていなかったけれども、その後可愛い甥っ子が生まれて、“子供”という存在の意味とか、姉が息子に向ける表情とかをみて、世界が替わった……と語ってから歌ってくれたのですが、これはもう、本当に素晴らしかった!!
今夏のミス・サイゴン、何が何でも観にいかなくては!!と思いました。



2幕は、ラフマニノフとピアソラを歌った後、同い年のミュージカル俳優・山崎育三郎氏をゲストに迎えて、トーク&ライブ。
この二人が同い歳(同学年)だとは知らなかったので、ちょっと驚きました。玲奈ちゃんがピーターパンでデビューした1998年に、山崎くんはアルゴミュージカル「フラワー」で主演デビューしたそうですが、その時にアートスフィアで公演があったそうで、、、玲奈ちゃんの15周年コンサートで久しぶりに銀河劇場に立てたことが、とても嬉しそうでした(^ ^)。

そんな話を聞きながら、、、アルゴ時代の玲奈ちゃんを知っているってことは、もしかして山崎くんって天寿さん(加賀千尋)とも知り合いだったりするのかしら……?なんて妄想してしまいました(^ ^)。天寿さんは「フラワー」には出てないはずだから、共演はしていないのかもしれないけど。。。縁だなあ(感動)。

なんてイロイロ感慨に耽りつつ聞いていたトークは……ぐだぐだでした。「New Wave ~月~」のトークなんざ目じゃないくらいのとんでもないぐだぐだぶり(^ ^)。お互い話をよく聞いていないし、ぜんぜん接続詞がつながってないし、、、いやでも、気の置けない「幼馴染」感がすごく温かくて、楽しいトークでしたけどね! よっ、喧嘩するほど仲が良いってホントだね!!!


歌は、「世界が終わる夜のように」(デュエット)と、「This Is The Moment」(山崎くんのソロ)。
サイゴンは、まあ、、、持ち歌なので素敵で当たり前、と思いますが、、、「This Is The Moment」は意外でした。でも、良かったです!全曲聞いてみたいな、と思いました。



ゲストコーナーの後は、中島みゆきの「糸」、「Sea Of Dream」、「The Girl In 14G」、「Someone To Watch Over Me」、「私だけに」。トークをはさみながら、一曲ずつ、丁寧に聴かせてくれました。
一番印象に残ったのは、「The Girl In 14G」かなあ。「ウィキッド」のオリジナルグリンダ、チェノウェシュのCDで聴いた曲で、大好きだったのです(*^ ^*)。歌唱力というか、声と音域のヴァリエーションの限界に挑戦するような曲で、本当に面白かった。ハートと技術が伴うと、こんなにキュートで魅力的なナンバーが歌いこなせるんだなあ、と。
今回のコンサートは「15周年」ということで、今までに演じてきた役のナンバーが多かったのですが、またいつか、“歌う機会のない唄”を中心にしたコンサートをやってみてほしいな、と思いました。「ウィキッド」「アイーダ」などのディズニーミュージカル、「オペラ座の怪人」や「ウェストサイド物語」など、素晴らしい作品だけど玲奈ちゃんが歌う機会は当分なさそうな作品は沢山あるので、、、(^ ^)。


コンサートと名のつくものに参加するのも久しぶりでしたが、とても充実した、素晴らしい時間でした♪

最後に、客席にいらっしゃった大空祐飛さんが、とても綺麗で普通に女性で、マスクもサングラスもなにもしていなくて、、、幕間休憩でふつーにロビーでお話されていたのですが、まさかそんなところでお逢いできるとは思わずとても吃驚したことを付け加えて、終わりたいと思います(^ ^)
そういえば祐飛さん、年末の「月雲の皇子」も観にいらしてたなあ。。。銀河劇場がお好きなのかしら(^ ^;ゞ。



ミュージカル「レ・ミゼラブル」凱旋公演、千秋楽おめでとうございます!


千秋楽のカーテンコールで、2015年の再演が発表されたそうですね!30周年となる2017年も上演するでしょうから、しばらくは2年に一回ペースで上演していくのでしょうか。
演出は変われども、作品が元々持っている力はしっかり継承されて、、、むしろ、短縮版で消えてしまったものがほんのりと戻ってきたような気がして、十数年ぶりに感動できた公演でした。

2015年が楽しみです♪♪
願わくば、「心は愛に溢れて」リプライズがフルバージョンに戻っていますように(祈)



大した回数を観たわけではないのですが、印象に残ったキャストについては簡単に書かせていただきます。
全キャストを観たわけではないので、お気にさわる点がありましてもご容赦くださいませ。


まずは、なんといってもファンティーヌのたっちん(和音美桜)。
これはもう、宝塚ファンの贔屓目抜きで、、、というか、十周年時代からの「レ・ミゼラブル」のファンとして、歴代でも3本の指にはいるハイクオリティなファンティーヌだったと言いたいです。
ただ、一点残念だったのは、、、鬘はもう少しどうにかならなかったのかな、と。新演出になって、ファンティーヌが髪を切る場面で袖に引っ込むようになったので、鬘替えもしやすくなったと思うのですが、、、むしろ、過去の公演より頭が大きく見える鬘になったのは何故なのでしょう。前回の公演(旧演出というか短縮版)でのたっちんファンテは、見た目もとても可愛かったのに~!!


バルジャンとジャベールは、吉原光夫さんと鎌田誠樹原さんの、コンビが好きでした。力強さと優しさ(丸さ)のある吉原バルジャン、切ないほど一途で生真面目な鎌田ジャベール。どちらもとても好きです。芝居の相性がいいんだな、と思いました。


マリウスとコゼットは、山崎育三郎くんと若井久美子さんのコンビがイチオシでしょうか(*^ ^*)。歌も安定していて、しかも声質が合っているというか、ピッチがあっていて、デュエットがとても素敵。見た目にもとてもお似合いで、とくに二幕で髪をアップにして大人っぽくなった若井コゼットの美しさは衝撃的でした。芝居もすごく好きだった……凱旋公演ではどうしても予定が合わなくて若井さんのコゼットが観れなかったのですが、最後にもう一回観てみたかった!!2015年にも出演してくださることを祈ります。


個人的にKENTAROさんのテナルディエがツボでした。二枚目系のテナルディエ、好きなんです。
テナルディエ夫人は、今回出演された3人(森公美子、浦嶋りんこ、谷口ゆうな)とも似たようなタイプで、森さんの後継者を探しているのかなーという気がしました。似たような雰囲気に似たような役づくりだったし……夏木マリさんや大浦みずきさんが演じていたようなタイプのテナルディエ夫人は、もう出てこないのでしょうか。。。


あとは、なんといっても今回のヒットは、菊地まさはるさんのグランテールです!
もともと、グランテール好きなので気にしてはいたのですが、今回は本当に良かった(はぁと)。優しくて温かくて不器用で、子供が大好きで無力な、一人の青年。「恵みの雨」の跡や「共に呑もう」での芝居が観るたびに違っていて、どれも好きでした。演出の変更も良い方向に作用していたような気がします。
とにかく、大好き!でした(^ ^)。



新演出になって、学生たちや女たちの服装も立ち位置もだいぶ変わってしまったので、数回観た程度ではなかなか見わけられないのですが、、、だいぶ覚えてきたので、次の公演ではしっかりチェックしたいと思います♪
2015年のキャスト発表、楽しみにしています!


帝国劇場にて、「レ・ミゼラブル」を観劇いたしました。


初めての“25周年版”。
1994年の帝劇で「レ・ミゼラブル」に嵌り、1997年から始まった“10周年版”に通いまくった猫ですが。ここの日記にも何度か書かせていただいたとおり、2003年以降の“短縮版”にはどうしても納得できず、ここ数年は公演ごとに一回観るか観ないか、という状況でした。


なので。ここは声を大にして、喜ばしいご報告を!

ナンバーが、ほとんど2001年以前に戻っていました!!

仮出獄のバルジャンに冷たくあたる宿屋と農場、ファンティーヌを責めるバマタボアのナンバー、「心は愛に溢れて」、、、一幕はほどんど元に戻っていたと思います(はぁと)。
2幕も、バリケードの最初のアンサンブルの歌い継ぎが戻ってました!!
残念ながら、ジャベールを捕える場面のコンブフェールの見せ場(←わかる人が何人いるんだろう?)と「共に呑もう」のリプライズはカットされたまま(T T)、「心は愛に溢れて」リプライズも、コゼットのソロなしで最初からバルジャンが入る短縮版の構成のままで……一番戻ってほしかった3場面のうち、2つは戻らなかったわけですが(涙)、でも、バリケードの歌い継ぎが戻っただけでも嬉しいです!!(感涙)。

上演時間は、25分の休憩をいれて3時間10分。10周年版以前は3時間25分だか30分だかかかっていて、アメリカ(かどこか?)の俳優協会だかオーケストラだかの規定に触れたために短縮版を創ったと言われていたので、25周年版もその制限内におさめなくてはならなかったはずなんですよね。
短縮版のために削ったナンバーを戻した分はどこで稼いだかというと、ナンバーとナンバーの間の間奏をこまかく削ってました。

で、これを可能にしたのが、盆を使わないセット転換だというのが、今回の演出の最大のツボだったのだと思います。



元々、1985年当時は衝撃的であったろう盆回りを多用した演出は、長大な物語を3時間半に押し込んだ脚本が要求したスピーディーな場面転換のために必要だったわけですが。
でも、逆に、盆が回ってくるのを待つ時間、というのは、意外に長いものだったんだな、と、今回の演出を観て、初めて気がついたのでした。
25年間の照明や舞台転換技術の進歩によって、盆より早い舞台転換が可能になったということなのでしょう、きっと。



ナンバーを削るのではなく、ナンバーとナンバーの間を削って、舞台や人の動きの工夫で間が詰まったことを感じさせない。
素晴らしい手腕だったと思います。

……もう少しだけがんばって、「共に呑もう」リプライズと、「心は愛に溢れて」リプライズのフルコーラスを実現してくれたら。。。。と贅沢なことを祈りつつ。



音楽的には、編成も以前とはだいぶ変わったせいか、全体的に落ち着いた印象でした。短縮版は音色も軽すぎていまいちだったのですが、こちらも技術の進歩があったのでしょうか。
場面転換の音楽が摘まれただけでなく、編曲もかなり変わっていましたが、特別に違和感を感じるようなことはなかったような気がします。ただ、ここしばらく、東宝レミゼで金管楽器がかますことはあまり無かったのですが。。。何度かすっぽ抜けていたので、やっぱり編曲が変わって練習不足なんですかね(- -;ゞ



演出としては、盆を封じた替わりにセットが動いたり人が動いたりするようになっただけ(?)で、場面のコンセプトが変わったところはあまりなかったと思います。一幕ラストの「ワンデイモア」はどうなるのかな?と、(ある意味)ワクワクしていたら、バルジャンやテナルディエ夫妻の立ち位置が変わったくらいで、アンジョルラスの登場の仕方も、最後に行列した背後に赤旗が翻るところも、、、そういうキーになる演出がどれも変わってなくて、逆に驚きました(^ ^)。



変化として一番大きかったのは、バリケードの向こう側を見せなくなったこと、です。
レミゼにとって、盆は、回すなら回しっぱなし、回さないなら全く使わない、そのどっちかなんですかね(^ ^;ゞ。

ガブローシュが弾を取りにいくところは、ガブローシュが飛び降りた後は「ちび犬」の歌だけが聴こえてきて、バリケードの中でやきもきしているメンバーをずっと観ている感じ。
最後にガブローシュがバリケードに戻ってきたところで撃たれてしまい、アンジョルラスに抱きとめられるのが切なかったです(T T)。

バリケードが陥ちた後も、バルジャンがマリウスを連れて地下道に逃げた後、すぐにバリケード自体が学生たちを載せたまま二つに分かれてハケてしまい、死体を検分するジャベールたちが残る、という感じでした。
でも、どうしてもアンジョルラスの見せ場は残したかったらしく(^ ^;ゞ、死体を運ぶ荷車に赤旗を敷いて、その上に例のポーズのアンジョルラスが積まれているという荒技で処理されていました(@ @)(←私もアンジョルラスファンだったので、気持ちは判るよ!!)


……要するに。
“25周年版”として、全く今までとは違うバージョンを創ろうとしたというよりは、「初演版(または10周年版)のファンが、盆のない劇場のために新たに演出した」っぽい印象の公演でした(^ ^)。
盆を使わなくてもいいところは以前の演出を踏襲し、盆を使わなくてはならないところは何らかの形でフォローする。そのアイディアがどれも秀逸で、なかなかセンスよくまとまっていたと思います。



あとは。。。冒頭の囚人が、ガレー船の漕ぎ手っぽい演出になっていたのと、工場の場面が女工たちメインになってたのが演出の変更点としては大きかった、かな。
映画と舞台と、どちらが先に動いていたのかわかりませんが、どちらかといえば映画が新演出を踏襲した感じなのでしょうか?

バリケードでふさがれた道のイメージや地下道など、背景として映し出される画像の雰囲気も映画のイメージに近いものがあって、映画を視て興味をもった観客にとっても、違和感なく入れる演出になっているんじゃないかな、と思いました。



変更点で印象深かったのは、「カルーセル」から「空のテーブル、空の椅子」への流れでしょうか。
「カルーセル」で女たちが弔いの蝋燭を持って登場し、歌いながら舞台上に置いて立ち去ると、舞台の奥からマリウスが登場し、蝋燭に囲まれて歌いだす(当然テーブルも椅子もないけど……)。
歌いだして少しすると、両袖から学生たちが登場して、、、マリウスを見守りながら少しづつ動いて蝋燭の前に並び、歌に合わせて、全員が床に置いてある蝋燭を拾い上げてふっ、と消す……(T T)すごく幻想的で、綺麗な、、、美しい場面でした。



そして。
演出の違いではないのですが、舞台の「レ・ミゼラブル」ファンにとっては重要なことが一つ。
出演者が、子役いれて36人でした!
今まで、「レ・ミゼラブル」の出演者は、大人30人+子役3人の合計33人だったんです(←特別公演除く)。それが、司教様(とレーグル)、工場長(とコンブフェール)、バマタボア(とグランテール)が別キャストになって、36人だったの!

これによって何が可能になったかというと、パリの街の一番最初、「誰が導くか?」に学生が大勢で出てきた!(←今までは、学生も全員乞食やヒモなどの役で出ていたので、学生はマリウスとアンジョルラス二人だけでした)


ちなみに、プリンシパルも役での出番以外はアンサンブルに交じっていろんな役をやっているのはそのままで、マリウスも囚人から農夫、宿屋の客、教会のやじうま、警官、裁判官という香盤は変わってませんでした。男性が3人増えたせいもあって、立ち位置とかはだいぶ変わっていたし、アンサンブルの香盤はだいぶ変わっていましたが、、、
あ、ファンティーヌは、バリケードでは少年じゃなくて普通の女性として参加してました(^ ^)。探す方は要注意。



歌詞は、あちこち変わっていたので全部は覚えきれませんでしたが……一番派手に変わったのは、ガブローシュの「ちび犬」ですかね。全然違うことを言っているので、最初聴きとれなくて焦りました(^ ^;ゞ

あと、印象的だったのは、アンジョルラスの「クールフェラック、見張りだ。朝まで来るまい」の後が、「誰も寝るな」から「助けは来る」に変っていたことでしょうか。これは結構、アンジョルラスのキャラクターに関わる歌詞変更だな、と思いました。
それぞれの役のキャラについては、役者による違いも大きいので、一回観ただけで書くのは怖いのですが……、アンジョルラスとコゼットは、今までのイメージとだいぶ違うキャラになっていたような気がしました。

アンジョルラスについては、私自身が、大好きだった岡幸二郎アンジョルラスの呪縛からやっと解放されただけのことかもしれませんが(汗)、歌詞のそこかしこで「市民は来る」と“信じようとしている”ような印象の残るアンジョルラスで、今まで観てきたような、確信に満ちた指導者、“若者たちの声”が聴こえているカリスマ、というイメージとは少し違うような気がしました。
グランテールとの関係性もかなり違っていて、そのあたりも含めて、映画版のイメージに近くなっていたような気がします。


コゼットは、今回がデビューとなる若井久美子さんだったのですが、早見優ちゃんのコゼット(←古い話ですみません)を思い出させる、覇気があって元気な、前向きで積極的なコゼットで、とても可愛かったです(^ ^)。他の二人を観ていないので、演出の違いなのか役者の違いなのかはっきりしませんが、服装のイメージも今までの清楚な紺のワンピに白レース、みたいなのではなくなってたし、2幕は髪も綺麗に結いあげて大人っぽくて……映画のアマンダ・サイフリッドも、とっても前向きでキュートなコゼットだったので、そちらの方に寄っていくのかな?という気がしました。
そして。コゼットのキャラがその方向になるのなら、「心は愛に溢れて」のリプライズは、やっぱりフルコーラス(コゼットのソロ→マリウスとデュエット→バルジャンと3人)に戻してほしいなあ……!!(祈)

ちなみに、早見優はソプラノが全然ダメだったけど、それ以外はすごく可愛くて包容力があって、大好きだったんですよね。。。まあ、コゼットでソプラノが出ないとか致命的なので仕方ないんですが。
あ、若井さんはソプラノへのチェンジも滑らかで、、、ハイCだけちょっと固かったのが残念ですが、十分及第点だったと思います(^ ^)可愛かった!




ここに書いている以外にも、変更点は山盛りありました。
とにかく、セットと人の出し入れが全然違うし、たとえばバルジャンが仮出獄証を破り捨てたところで、今までなら「1823年 モントルイユ・シュール・メール」と表示されたところにはシンプルに「Les Miserables」と書かれていたり、「10年後 パリ」という表記は無かったり、、、いらないっちゃいらないけど、今回初めてご覧になった方は、なくてもわかるのかな?と思ってしまうところも色々。
まあ、なければ無いで、なんとなくわかるんでしょうね、多分。うん。



あれだけの名作で、特に演出が秀逸だとして有名な作品の演出を大きくいじるのはとても勇気のいることだったと思いますが、「レ・ミゼラブル」という作品の世界観を大切にした変更で、とても良かったと思います。
オリジナルの、盆がぐるぐると回り続ける演出もとても好きなので、フルバージョンで出来るならたまには上演してほしような気がしますが、、、短縮版を観るくらいなら、今回の演出の方がずっと良い、と思いました(^ ^)。



演出だけで長くなってしまったので、キャストについては、後日あらためて。



日生劇場にて、ミュージカル「MY FARE LADY」を観劇いたしました。



G2さんの新演出版。なんというか、以前帝劇で観た時よりも、コンパクトにまとまった、観やすい舞台になっていたような気がします。そんなに覚えているわけではないので、どう違うとか言えないのですが、、、大きなセットで舞台面をつぶして、小さなエリアでの「芝居」に集中したのが良かったのかもしれません。
その分、華やかなダンスシーンがちょっと弱いのですが、そこは個人の魅力で魅せた、かな。

ただ、2幕の展開が緩いのは変えようがないんですけどね。。。一幕の怒涛の展開に比べて、2幕はイライザとヒギンズの「その後」の意地の張り合いがメインになるので、なかなか感情移入できないというか。演出的にも出演者的にも難しい作品だな、と思います。
1幕の展開をもう少し緩やかにして、クライマックスを2幕の頭にもってくるぐらいでもいいのに、と、これは以前観た時も思ったことです(^ ^)。

あと、一つ気になったものといえば、、、イライザのコックニー訛りの表現でしょうか。
原作だと、「ハヒフヘホ」が「アイウエオ」になるんですよね、たしか。だから、ヘンリーがランプを改造した不思議な装置を創る(「H」の発音ができていれば火が揺れて、できていなければ揺れない)ことになる。
でも、今回の舞台では、江戸っ子じゃないけど「サシスセソ」と「ハヒフヘホ」が区別がつかないというように描かれているんですよね。そうなると、「ハヒフヘホ」で揺れる火は、当然「サシスセソ」でも揺れるんですよっ!?その機械、おかしいんじゃ。。。

あと、歌も基本的に全部変っているようなのですが、有名な「スペインの雨は主に平地に降る」が……なんだっけ、「ひなたにひまわり」、みたいな、「ひ」を主体にした歌詞に変えてありした。それ自体は一貫性があっていいと思うのですが、この歌詞は、競馬場の場面で当たり障りのない「お天気の話」として「スペインの雨は……」と言いだす面白さにつながっているので、そこが曖昧になってしまったのは残念だなあ、と思いました。
「ひ」と「し」をテーマにするにしても、もう少し“お天気”または“健康”にまつわる歌になっていたら、と。



そんな、細かいところでいろいろ思った新演出版でしたが、全体の雰囲気やキャストはとても良かったと思います(^ ^)。

まず!
なんたって、ヘンリー・ヒギンズ教授の寺脇康文が素晴らしかった!(真顔)二枚目で、嫌味で、懐が小さくて(^ ^;ゞ 歌も良かったし、とにかく素敵でした(*^ ^*)。

そして、ピアス夫人の寿ひずる。さりげない佇まいがとても柔らかくて、優しい感じが伝わってっきました。本当に良い味出してるなあ~。

ヘンリーの母・江波杏子も素敵だったし、ピッカリング大佐(田山涼成)もドゥーリトル(松尾貴史)も、とてもよかったです!!……今回は本当に、年配陣が実力派をそろえていて、それがすごく成功しているイメージでした。



そしてそして!!今回の私の最大のヒットは、フレディ役の平方元貴!ですう(^ ^)。
柔らかな、落ち着いた響きのあるテノールと、味のあるとぼけた芝居。穏やかで温かみのある存在感で、“良いところのお坊っちゃん”らしい無力さと、それでもイライザを護りたいという強い意志、その両面をきちんと矛盾なく抱いているひと。
あまりに素敵すぎて、どうして最後にイライザがフレディを選ばないんだろう?と思ってしまったりもしがちなので、寺脇さんの絶妙の居方もすごいなあ、と思いました。


アンサンブルでは、月組OGの美鳳あやちゃんが、幕開き早々に花売り娘として1人で踊っていたのには驚きました(@ @)か、か、かわいいじゃないかぁ~~~!!
あとは、同じく月組OGの彩橋みゆちゃんと、後藤祐香ちゃんも同様な感じです。。。


で、肝心の(!)イライザ。
私が観た時は真飛聖さんでしたが、活き活きとして元気で、エネルギーの有り余ったイライザでした。顔芸も顕在(^ ^)。歌はちょっと苦戦気味かなあ……耳障りだというほどのことは全然なかったですが。

霧矢さんのイライザもすごくたのしみです♪


春の宙組公演が発表されたときの日記で、私はこう書きました。
http://80646.diarynote.jp/?day=20121030

> あれっっ!?ワイルドホーンの「モンテ・クリスト伯」じゃないの!?



フランク・ワイルドホーン作曲の「モンテ・クリスト伯」も、日本上演の噂がもう1年以上前からあったので、てっきりそっちだとばかり思っていたら、石田さんのオリジナルだったのですが。。。

東宝で12月に石丸幹二ダンテスで上演されることが発表されました!
http://www.tohostage.com/montecristo/index.html

こちらの演出は山田和也。「ジキルとハイド」で新境地を開いた石丸さんが、どんなダンテスを演じてくれるのか、とても楽しみです(*^ ^*)。
相乗効果で、宙組も新しいお客さまがたくさん来てくれるといいなあ。。。ってか、石田さん、責任重大!!





そういえば、寝不足すぎてオンタイムに反応できてませんでしたが、宙組公演新公配役が発表されましたね。
つい先日花組「オーシャンズ11」新公の全配役が出たばかりなので、早くてびっくりしました。そして、「主な配役」の人数が多くて嬉しいなあ(*^ ^*)。

せっかくなので、一覧表を。配役<新人公演>、[東宝]の順です♪

エドモン    凰稀<愛月>、[石丸幹二]
メルセデス   実咲<花乃>、[花總まり]
モレル社長   寿<星吹>、 [林アキラ]
ダングラール  悠未<美月>、[坂元健児]
ベルツッチオ  緒月<風馬>、
フェルナン   朝夏<蒼羽>、[岡本健一]
ヴィルフォール 蓮水<桜木>、[石川禅]
エデ姫     すみれ乃<伶美>、


とりあえず、美月くんのダングラールとずんちゃんのヴィルフォールが楽しみすぎる!!
物語の深みという意味でもこの二役は鍵になる役だし、東宝も、ここはサカケンに禅ちゃんと安全牌をもってきていて期待感をあおってくれますね(^ ^)。ワイルドホーンの曲がとても良いので、こちらもとても楽しみ(^ ^)。




話は全然違いますが。

あああ、「ピアフ」が終わっちゃったーーー!!
今度こそ観たかったのになあ(号泣)。

東宝さん、もう一回(と言わず、何度でも)再演してくださいぃぃぃぃ。



シアターオーヴにて、ロックオペラ「モーツァルト」を観劇いたしました。


ちょっと今は詳しいことを書く体力がないのですが、公演期間の短い公演なので、とりあえず一言だけ。


面白かったです!!


私が観たのは、中川晃教ヴォルフ&山本耕史サリエリバージョン。中川くんは、ウィーンミュージカル「MOZART!」のヴォルフガングを彷彿とさせる出来映えで、こちらも非常に良かったのですが、とにかくサリエリが本当に素晴らしかった!!
いやー、逆バージョンも観てみたいけど……公演期間が短すぎて!諦めました。。。まあでも、耕史さんのヴォルフガングはなんとなく想像できるけど、中川くんのサリエリが本当に想像できません(^ ^;ゞ。どうなるんだろう一体。

女性陣も素晴らしかったです。いや、メンバーみんな良かった!
そして、どう考えても「ミュージカル」としか思えないこの作品が、ぴあの分類上は「演劇」に入っている不思議。ロックオペラ≒ミュージカル、なんでしょうか。謎。

詳しくはまた後日。
とりあえず、公演は2月17日(日)までです(^ ^)。
16日(土)の二回のみ山本サリエリバージョン、あとは全て中川サリエリ(山本ヴォルフ)バージョンという難しい日程……うー。


こういう良作がなかなか満席にならない今の日本(東京)。
作品は良かったので、とりあえず宣伝させていただきました(^ ^)。

詳しくはまた後日!


東京グローブ座にて、ダンスパフォーマンス「No Words, No Time ~空に落ちた涙~」を観劇いたしました。


主演は少年隊の東山紀之……かと思っていたら、KAT-TUNの田口淳之介とW主演、という設定でした。開演前にプログラムを見ていなかったので、観ていてあまりにも田口くんの扱いが大きくてドキドキしましたわ(@ @)。カーテンコールで二人同時に出てきたときは、なんだか吃驚しすぎて呆然としてしまいました(^ ^;ゞ

田口くん、単独での舞台出演は初めてだそうですが、大先輩の胸を借りつつ、役柄としての責任はちゃんと果たしていたんじゃないかと思います。
若干贔屓目入ってるかもしれませんが、がんばってましたー(^ ^)。


私は、以前も書きましたが、樹里ちゃんが初めて「SHOCK!」に出演したときから田口くんのダンスが好きで、ずっと舞台出演を待ち焦がれておりました。
映像での彼には残念ながらあまりときめかなくて、舞台映えする容姿も、伸び伸びしたダンスも、すべてにおいて映像より舞台サイズの人なんだから、早く舞台デビューしてほしかったんですよね。それも、コンサートとかだと無駄なサービス精神が前に出過ぎてしまうので、しっかりした演出家が指導するダンスパフォーマンスに出すべき人材なんだけどなあ、、、と。


そんな10年来の夢がかなって、とても贅沢で幸せな二時間でした(*^ ^*)。



演出はG2。グローブ座の決して広くない舞台上に、ぎっしりと詰め込まれたダンサーたちが踊り続ける作品でした。
メインキャストはW主演のお二人(東山・田口)と花總まり、振付も兼ねている黒田育世さんの4人。あとは陰山泰を含めてアンサンブルダンサーが8人。



パラレルワールドを行きかう、台詞のないダンス・パフォーマンス。

まずは事故で妻(花總)と子供を喪った男(東山)の日常の風景が丁寧に描かれます。悪夢にうなされて起きて、朝食を食べ、通勤電車に乗って職場へ向かい、時に女性管理職から口説かれたりしながら淡々と仕事をこなし、ふたたび満員電車に乗って空っぽの家に帰る……空虚で満たされない毎日。

張り出した舞台の周りがちょっとしたエプロンステージになっていて、袖ではなくて客席側の両脇から人やセットを出し入れしたり、舞台の下からダンサーが登場して、その場で着替えたり、、、という動きがとても面白かったです。この作品、前方席(エプロンステージがよく見える)と後方席(舞台の上だけで完結する)でだいぶ見え方が違うんじゃないかなあ、と思いました。
私はたまたま前方席だったので、ある意味すごく面白かったけど、一方で舞台上のパフォーマンスに集中できなかったような気もしました。後方席でも一回観て観たかった、かも。

最初の、「男」の自宅の場面では、アンサンブルメンバーはちょっと妖精的な衣装(肌色の全身タイツみたいな)なのですが、彼が外に出かけるまでにちゃんと着替えてスーツ姿になり、満員電車になるところが巧い演出だなーと思いました。セットもシンプルで、たくさんの180×90cmくらいの枠が窓になったり電車になったり、自由自在に使われていました。
しかも、その枠を並べたり、机を片づけたり……といった場面が、どれも見事なダンス場面になっていたのもすごいなあ、と感心したり。

男に言い寄る“女性管理職”は黒田さん自らパフォーマンス。ダンスは素晴らしかったけど、ああいうタイトなスーツでのダンスはちょっと違和感があったかも。。。後半に違う衣装で踊る場面が素晴らしくて、別人かと思いました(^ ^;ゞ



毎年めぐってくる記念日に、男は二人へのプレゼントをもって帰宅する。
妻へはちいさなハンドバッグ、息子には消防自動車のおもちゃ。

喪った家族を思い出して男泣きに泣く男の前で、消防自動車が勝手に走りだす……鏡を通り抜け、現実にはありえないパラレルワールドへ向けて。



ここまでの場面のヒガシの衣装は、黒っぽいスーツに白いシャツ。
で、途中でちょっと田口くんが出てくるんですが、彼は白っぽい銀のスーツに黒いシャツで、ちょうどネガポジ反転のようになっているんですよね。

でもって、鏡を通り抜けた先では、黒いスーツに白いシャツの青年(田口)が、黒い服のハナちゃんと二人で暮らしている。
設定としては、消防自動車が導いてくれたのは、事故の結果、「男」の妻(花總)が生きていて「男」が死んでしまった“パラレルワールド”なのだそうです。
「男」にとっての現実が裏返しになった世界。

で、その世界に突如顕れた「男」は、白っぽい銀の上着に黒いシャツになっている。いつの間にか。現実が反転した世界、という設定がビジュアルでわかるようになっていて、なるほどなーと思いました♪



このあたりのストーリーはあまり理解せずに観ていたのですが、1回しか観ないのであれば、どちらかといえば事前に予習をしておいたほうが楽しめるんじゃないかなーと思います。
プログラムを買わなくても、ロビーに「ご観劇ガイド」というグレーの紙が置いてあるので、あれを一通り読んでおかれるといいと思います。
2回以上ご覧になるなら、初回は何も読まずに観たほうが楽しいかもですが。

……いや、えっと、この日記を最後まで読んでくださった方は、「ご観劇ガイド」を読む必要ないんじゃね? ←(@ @)


というわけで、以下は若干ネタばれかも。
ラストにどうなるかは書きませんが、途中にいくつか謎のハードルがあるので、それは書いちゃいます。
気になる方はお読みにならないでくださいませ。



パラレルワールドで生きている「妻」を見つけた「男」は、「妻」と一緒に暮らしている「青年」と争いになる。
なんのことはない、彼は「男」の「息子」であることがわかって、3人は仲直りするわけですが!

黒い服に身を包んだハナちゃんと田口くんのダンスはなかなか色っぽくて、しばらくは二人が母子であることに気がつきませんでした(汗)……いや、さすがにツバメかなくらいには見えましたが。
ハナちゃん美しいよ若いよさすがだよ。

この場面の、ヒガシと田口くんのダンスは、見どころその1です(*^ ^*)



パラレルワールドで出会った親子3人。
でも、パラレルワールドに不法侵入した「男」は、不思議な人たちに追われることになる。彼らは「時空管理官」的な存在であるらしい。要するに、“世界”にとっての異物を排除する免疫機能のようなもの、なんでしょう。

彼らのダンスも凄かったけど、囚われた「男」を救いに来る「青年」のダンスは、私的見どころその2でした(*^ ^*)田口くん恰好良いよ田口くん(はぁと)。


最後の選択とラストシーンは、このあたりのストーリーをちゃんと理解していたほうが感慨深いと思うので、やっぱり予習は重要かもしれません。
(←あまり理解できていなかった人間の感想です)




最後に、これからご覧になる方へ。

休憩なしの一幕物ですので、必ず開演前にお手洗いをすませておいたほうがいいですよ!

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2012年も残すところあとわずか。

宝塚ファンとしての猫には大きな変化のあった一年。とはいえ、あまり変った気がしないのは気のせいかな……?(^ ^;ゞ
また、それとは別にプライベートでも色々あって、思うように観劇できなかった一年でもありました。12月なんて、宝塚いれても2本3回しか観劇してないよ(@ @)。
来年はもう少し生活を立て直せると良いのですが。。。もう一度異動しないかぎり無理だろうなあ(; ;)



そんな訳で、今年は外部作品については私が順位をつけるとかおこがましくて、申し訳ありません・・・という巻じなのですが。
あくまでも、私が観た中で、私が「もう一度観たい!」と思った作品を挙げさせていただいているだけなので、ご容赦くださいませ。



■ミュージカル(再演)
私は元々新作主義なので、いつも新作優先で書いているのですが、今年は演出およびキャストを変えての再演作でのヒットがあまりに多かったので、そちらを先に挙げさせていただきます。

1.「ジキル&ハイド」
これはもう!ブロードウェイで観たとき(日本初演前)から観たいと思っていた石丸さんのジキルというだけでもテンションがあがるのに、めぐみちゃんのルーシーに玲奈ちゃんのエマとか。素晴らしかった!観れて良かったです。ぜひぜひ再演してほしいです!!

2.「ルドルフ・ザ・ラスト・キス」
初演の印象がまったく残っていない(香寿さんしか覚えてない)のが不思議でたまらないくらい、今回は嵌りました。キャストというか、演出が良かったんだと思います。
そして、今になって映像でいいから初演をもう一度観たいと思っていたりして(^ ^;ゞ ああ、でも、今回のバージョンの再演も観たい!(切望)

3.「I Got Merman」「ラ・カージュ・オ・フォール」
年始早々、元気と幸せをたくさんいただきました。ありがとうございました。
この2作品は、これからもずっと、キャストを変えつつ上演を続けてほしいなと思います。

他にこの項目に入るのは、「デュエット」くらいかな。。。あとは来日版の「ロミオとジュリエットか。他に何かあったかなあ?



■ミュージカル(新作)

1.Dance&Act「ニジンスキー」
本当に嵌ったんですよね、これ。荻田さんの残酷さが際立った作品でした。
ミュージカルなのか?というのは若干謎ですが、とりあえずここにいれてみました。コンサートじゃないしねえ。

2.「サンセット大通り」
それこそ、タナボタで岡幸二郎さんが「With One Look」を歌った頃から、生で観たくて観たくてたまらなかった作品を、無事観ることができてとても幸せです。ターコさんのノーマという夢は叶わなかったけど、トウコさんのノーマも魅力的でした(*^ ^*)

3.「道化師の瞳」
予想通りの、ありきたりな展開なのに、気持ち良く泣かされました。玉野さんらしい無理矢理な構成だったけど、これはこれでありなんだなと思いました。ただ、もし再演されるなら、もう少し構成を見直したほうがいいとは思いますが(真顔)

他にこの項目に入るのは、「ボニー&クライド」「ハムレット」などいくつかありますが。まあ、どれも一長一短、という印象でした。



■ストレートプレイ

1.「モンティパイソンのスパマロット」
あのサイズの劇場でやるのは大変だったと思うけど、演出家も役者も、劇場に合わせてよく創り上げたと思います。素晴らしかった!何度も観る作品ではないけど、年始に毎年ワンパターンでいいからやってくれても良いかもね、と思ったり。

2.「マクベス」
まっすぐでエネルギッシュなマクベスがとても素敵で、シェイクスピアの戯曲の中ではあまり好きではなかった「マクベス」という作品を見なおすきっかけになりました。
うまく料理したら宝塚でやっても映えるんじゃないかしら。大劇場なら花組か雪組、中小劇場ならみりおくんとか(^ ^)。

3.「銀河英雄伝説 ~自由惑星同盟篇~」
河村ヤンの嵌りようと、脚本のまとまりに敬意を表して。

他には「エッグ」「日の浦姫物語」「中原中也」他、いくつか観ています。。。



■ショー・ライブ

1.「真瀬はるかディナーコンサート」
もう、これは圧倒的に。幸せすぎてしばらく現実に戻れませんでした。
大好きだ……!!

2.「チェス in Concert」
「アンセム」一曲しか知らなかった「チェス」。どんなストーリーかも知らなかったのですが、面白そうな作品だな、と思いました。コンサートはもういいから、やるとしたらちゃんと上演してほしいです。中川くんが楽しそうだったなあ。

3.「Dancin’ Crazy」
抜粋版の「シカゴ」がなかなか良く出来ていたし、OGが集まって踊る意味のある公演だったなと思います。


「CLUB SEVEN」と「DOWN TOWN FOLLIES」は、まあ、ああいうものなので(^ ^)。
ああ、あと「エリザベート・ガラ・コンサート」が抜けていますね。さえちゃんのトート+となみシシィというのは、私にとってはかなり理想的なキャスティングでしたが、、、まあ、あれはお祭りだしね(^ ^)。




そんなところでしょうか。
日記に書いていない作品も結構あるので、他にもあるかもしれません。思い出したらこっそり修正します(^ ^;ゞ
あ、さっそく思い出した!「藤咲えり in 蛙たち」をどこにいれよう……ライブは結局、真ん中の人のことがどれだけ好きかで決まっちゃうから、難しいなあ(^ ^;;;;





一年の最後に、この一言をもう一度心に刻んで、新しい年を迎えたいと思います。

宝塚を愛してくださるみなさまに、幸せがいっぱいありますように これからもずっと祈っています。

……やっぱり、大空祐飛さんの挨拶集は出版しようよー>歌劇団


シアタークリエにて、ミュージカル「デュエット」を観劇いたしました。


脚本は、12月に青年館で再演される「おかしな二人」のニール・サイモン。あらためて観て、しみじみと「良い脚本」による「良い芝居」というものの価値を感じました(^ ^)。



以前上演されたときの日記はこちら。
http://80646.diarynote.jp/?day=20080720

あれからもう、4年以上も経ったんですねえ……。


あのときのは、石井一孝さんのヴァーノン、保坂知寿さんのソニア、演出は鈴木勝英さん。

今回は、錦織一清の新演出。
ヴァーノンが内博貴さんでソニアが和音美桜さん(はぁと)でした。


いやー、やっぱり面白かった!
神経質でピリピリした感じがよくでていた内くんヴァーノン。
繊細さと無神経が同居した、『オリジナル』なたっちんのソニア。
石井&保坂という華も実もあるベテラン俳優とはまた違う、みずみずしい若さ(=勢い)のある芝居になっていたと思います(^ ^)
ラストの余韻も、演者が若いからこそ見えるモノがあって。「この先」の二人を視てみたいな、とも思いました。


それにしても、本当にたっちんの「捨て身の包容力」というか、「無鉄砲な無償さ」というか……あの勢いは凄いな、と思いました。
年齢の問題ではなくて、あれは個性なんだな、と。

そして、私はああいう無鉄砲さのある役者が死ぬほど好きなんだな、、、、と(^ ^;ゞ
そんな今更なことに気がついてみたりして。



舞台装置は前回の松井るみさんの装置がとても印象的だったのですが、今回の装置もさりげなく品があってよかったと思います。
でも、あの装置好きだったから使ってくれても良かったのにな。


なんか見覚えのある美人がいるなーと思ったら沢希理寿さんがコーラスで入っていて、いろいろお遊びをいれていました。楽しかったー!とにかく、文句なく楽しい公演でした♪

たっちんの、次の活躍を楽しみにしつつ。



シアターオーブにて、フランス招聘版「ロミオ&ジュリエット」を観劇いたしました。


作品として面白かったのはもちろんなのですが、観終わった後で最初に思ったことは、「小池さんは、やっぱり神だった!少なくとも、宝塚にとっては!」でした(^ ^)。
あれだけ完成度の高い名作ミュージカルを、結構根本的なところを演出的にいじって「宝塚版」にする……なかなかできないことだと思うんですよね。


今回観たものが、そのままフランスで上演された通りの形なのか、それともある程度は度舞台機構の制限や来日人数などの関係で省略された部分があるのか、実際のところはわかりません。
ついつい舞台(役者)を視てしまって、字幕を読み損ねた曲も多かったですし。

でも、とりあえず印象として大きく違ったのは、キャピュレット夫人(ステファニー・ロドリグ)が夫を求めていたことでしょうか。
夫に飽きられた、という悲しみをずっと抱えて生きてきたキャピュレット夫人。宝塚版の、夫も妻も全く別々方向をみていて、お互いに対しても娘に対しても無関心な夫婦(家庭)ではなく、夫に振り向かれない悲しみや悔しさを娘にぶつけてしまう、抑圧された母親としてのキャピュレット夫人。
女の怖さというか、有吉佐和子の「母子変容」にも通じそうな底知れなさを感じさせて、秀逸でした。

でも、こういう女性側の抑圧された闇の部分って、宝塚ではあまり正面から描かれることのない部分だと思うんですよね。ほら、「清く正しく美しく」ない部分だから。
これをさくっと削除して、逆に「甥とのただならぬ関係」という設定を追加してみせるセンスが、小池さんの「神」たるゆえんなのだと思います(^ ^)。




他に印象的だったのは……まずはヴェローナ大公(ステファヌ・メトロ)かな。
ちょっとヤクザの親分的な、あるいは、それこそ「銀河英雄伝説」のフェザーン自治領主ルビンスキーのような存在感は、本当に素晴らしかったです。
あれを観てしまうと、宝塚版の大公はおとなしいなあ、という気がしました(^ ^)。


私が観た日は、ジュリエットがジョイ・エステールではなく、代役のカンディス・パリーズでしたが、歌も演技も十分に素敵でした♪
ただ、ロミオ役のシリル・ニコライ(これがまた、城田優系のイケメンかつ美声だったんですよねー!)と並んだときの感じが東宝版の城田優&昆夏美コンビとそっっっくりで、なんだかすごくデジャ・ヴな気がしました(^ ^;ゞ


ベンヴォーリオ(ステファヌ・ネヴィル)は、びっくりするほど小顔のイケメン(^ ^)。
フランス招聘版ではジュリエットの服毒の場面が決闘のリプライズになっていなかったので、2幕の出番は少ないのですが、「どうやって伝えよう」の苦悩は聴いているこちらまで苦しくなるほどでした。

マーキューシオ(ジョン・エイゼン)は、完全に「イッちゃってる人」として紹介される、という人物象で、日本初演(星組)版の紅マーキューシオがキャラクターとしては一番近かったんじゃないかな、と、ある意味納得しました。
やっぱり、海外ミュージカルは再演・再々演と繰り返し上演されるうちに宝塚オリジナルになっていくんだと思うんですよね(といいつつ、月組が上演すると、一気に宝塚化することが多いような気もしますが ^ ^)


ティボルト(トム・ロス)は、ガタイはいいけど柔弱な優男で、マーキューシオが死んだことを知って動揺のあまりナイフを取り落とすようなタイプだったのがちょっと新鮮でした。

乳母(グラディス・フライオリ)は、一番近いのは雪組のコマちゃん(沙央)かな?温かみのある雰囲気と柔らかな声がとても良かったです。
キャピュレット卿(セバスティエン・エル・シャト)は、もうヒロさん!!だった(^ ^)。
私は月組版の「ロミオとジュリエット」が本当に好きですし、ナホちゃん(越乃)のキャピュレット卿もすごい説得力でしたけど、、、やっぱりキャピュレット卿はヒロさんなんだなあ~!(^ ^)


モンタギュー夫人(ブリジット・ヴェンディッティ)の艶やかな天鵞絨のような声は、本当に素晴らしかった!モンタギュー卿がいないので、モンタギュー家を一人で背負っていらっしゃいましたが、全く見劣りすることもなくて、本当に素晴らしい存在感でした。もっとあの声を聴いていたかった……。

ロレンス神父(フレデリック・シャルテール)もすごい声でした。オペラチックな美声で、歌いだすたびにちょっと2度見してしまう感じでしたが(^ ^)、芝居も愛に溢れて、とても良かったです。


「死」(オーレリー・バドル)は、白い衣装に身を包んだ女性。宝塚版では男役、東宝版では男性が黒衣で踊った「死」ですが、フランス招聘版では死の息をもつ精霊なんですね。
振付だけではなく、演出自体が全く違うので比べようもありませんが、しなやかな身体の動きがとても綺麗で、目が離せませんでした。



演出面では、芝居(台詞)の部分がほとんどなくて、まるでオペラ形式の作品のように 歌だけで進行していく 感じになっていました。
日本版で非常に重要な乳母とジュリエットの会話とか、ロミオと神父の会話とか、そのあたりがほとんどなくて。霊廟で目覚めたジュリエットの台詞もないし、、、
フランスでの上演はこういう演出だったのか、それとも基本的に言葉が違うから、歌だけ残して台詞(芝居)はカットしたのか、どっちなんだろう…と思いつつ。


日本で上演するときに、新たに創った役(キャラクター)は、モンタギュー卿と愛、そして、歌のある役としてのパリスの3人、かな?。……フランス招聘版には役自体がなくてびっくりしました(@ @)。
とにかく、パリスが一言も歌わずにマイムのみで退場していくのを、呆然と見送ってしまいました。小池さんってホントにすごい……。





最後に。

全然本題と関係ないうえにものすごく今更なのですが(すみません)、
先日「仁」を観て、今の雪組で「ロミオとジュリエット」を観てみたかったな、と思いました。
ジュリエットはトップ娘役の美海ちゃん固定、キムちゃんのロミオにチギちゃんのティボルト、まっつとみっちゃんのマーキューシオとベンヴォーリオ(なんだったら役替りで)!
……単に、84期歌手トリオの「世界の王」を聴きたいだけですすみません。



シアタークリエにて、「CLUB SEVEN 8th stage」を観劇いたしました。

はっはっはっ、楽しかったです!



玉野和紀さんのライフワークでもある「CLUB SEVEN」も、去年の春に「7回目」を迎え、この後はどうするのかな?と思っていたところに、思いの外早い「vol.8」の上演決定でした。
チラシをみて、今までのイメージとあまりに違う構成(←出演者が全員、海賊の扮装をしていた)に吃驚して、いったい8回目には何をやらかしてくれるんだろう?と思っていたのですが、、、

いや、実際に観てみたら、いつも通りの「CLUB SEVEN」でした(^ ^)

いつもと違っていたのは、出演者が全員男性だったことでしょうか。
とは言っても、今までも女優が出ていたって当たり前のようにみんな女装していたし、そんなに違うという実感はないんですけどね(^ ^)。

むしろ、9人の出演者中5人が初参加、という初参加メンバー比率の高さの方に違和感を感じました。
主宰の玉野さん、vol.1のClub eXバージョンから皆勤賞の西村直人さん、皆勤ではないけど初回から参加していた吉野圭吾さんに続く「CLUB SEVEN」経験者が、前回初参加だった相葉裕樹くんなんですよね。いままでは割と定番のメンバー+新人1人か2人、というのが多かったので、何をやっても「CLUB SEVEN流」的な空気があったのですが、今回はやっぱり、若手だけで踊っていたりすると若干違和感があったりして。

でもまあ、その違和感もまた楽しい、というか。
去年初参加で今回が2回目の相葉くんが、前回とは別人のようにしっかりと「CLUB SEVEN」の世界を体現してくれているのを視たりすると、とても嬉しくなったりして(^ ^)。
チラシの「海賊」ビジュアルについては、玉野さんが「7thで一段落ついて、新しい船出だから」という、判ったようなわからないよーな解説をしていらっしゃいましたが、この初参加率の高さは「新しい船出」の象徴でもあるのかな、と思いました。

初参加のメンバーは町田慎吾、中河内雅貴、田中ロウマ、上口耕平、小野田龍之介の5名。それぞれの分野で活躍中の実力派ばかりで、実際舞台で観てみても、さすが玉野さん(^ ^)というメンバーでした。
玉野さんの無茶ぶりコーナーにも臨機応変にしっかり応えていたし、50音順ヒットメドレーもがんばっていたし。
女装も似合っていたり気持ち悪かったり、良いバランスでした。女優がいないぶん、女装の割合が高くなってましたけど、みんな若いから意外に似合ってたし、しかも、似合ってたらつまらない場面はちゃんとやらかしてくれてて(^ ^)、さすがの匙加減でした。



1stからのファンとしては、久しぶりの「ホストコーナー」があったのが懐かしかったです。
Club eX時代には何度かやったネタのような気がしていたのですが、玉子ちゃん(玉野)がオーナー役の吉野さんに「9年ぶりね♪」っていう台詞があったので、、、ってことは1stぶり!?と、ちょっと衝撃でした。
あの時は下っ端ホストだった吉野さんがオーナーになるんだもんなあ……感慨深いわ(^ ^)。

このホストクラブが、実は「男塚歌劇団」という劇団の稽古場でもある、という設定はなかなか新鮮でした。こういうネタは宝塚出身者がいないほうがやりやすいと思うので、良かったのかも。
いやー、それにしても玉野監督演出家の無茶ぶりは凄かったです!私が観た回は、男女のキャストを入れ替えた上に宝塚風にという注文をつけたのですが、それを受けて女役になった相葉くんの娘役芝居がなかなか堂にいっていて、、、なんとゆーか、素晴らしかったです(*^ ^*)。
そのあと、「ルパンと不二子で」と振られた中河内さんと小野田さんもがんばってた!!あの勢いは買うしかない!(^ ^)



あと、懐かしいといえばビートルズの空耳アワーも良かったです。あれも何度かやってるはずですが、新ネタもあったりして、結局笑わされてしまいました。判っているのに笑ってしまう!なんか悔しい!(←いや、ホントは楽しいです)


新ネタでは、「家族」ネタの吉野くんの「家政婦のミタ」もさすがだったなあ……西村さんのお爺さんともども、笑いすぎて疲れるくらい笑わせていただきました。最近あまり笑ってなかったから、いいストレス発散になりましたわ。


カッコいいオープニングから、割とすぐコントに入り、そのまま1幕ずっとコントと客いじりと無茶ぶりの連続、、、という構成は、冷静に振り返ると「そんなんで良かったのかな?」と思ったりしました。
実際観てるときはとにかく楽しくて、そんな風には思わなかったんですが、今回は初参加のキャストが多かったから、観客側にも「CLUB SEVEN初体験」が多かったはずなので、、、大丈夫かなあ?と。私なんかはコント上等、女装当然、だって「CLUB SEVEN」だもん!と思っているわけですが、「カッコいい○○くん」を観に来た方も楽しんでくださっていたら良いんだけどな、と。

まあ、オープニング(とエンディング)は文句なくカッコいいはずなので、まずはそこでご満足いただいて、あとは新鮮さで……という感じでしょうか。



2幕の前半は、古代ローマの反逆者たちの物語。
ちょっと歌うところはあるけど基本的にはストレートプレイで、公演のこの位置に挟み込むにはイマイチな気がしました。どう反応すればいいのかわからない、という気がしてしまうんですよね。
何年か前にやったマネキンと魔術師の場面とか、だいぶ昔の妖怪の場面とか、、、ああいう感じの、ダンスメインのショーシーンにした方が公演の流れとしては良いと思うのですけどね。玉野さん、最近ストレートプレイがやりたくて仕方ないみたいですが……うーん、ちょっと考えなおしてほしいなあ、と思ったりもしています。

2幕後半は、もちろん50音順ヒットメドレー。
今回はちょっと短いような気がしましたが、どうなんでしょうか。一音ごとの曲数が少なくて、どんどん先に進んでいった印象。その分、一曲の時間が長めだったような気がします。あと、ちょっとジャンルが偏っていたというか、新しい曲をなるべく入れようとしてAKBの曲が何曲も入っていたりしましたね。AKBなら、若いメンバーを女装(?)させて踊らせればいいので楽だったのかな、とか邪推してしまいました。あと、宝塚系の曲が削られてジャニーズ系の曲が入っていたり、そういう出演者に合わせた選曲はさすがだなあ、と。
後半の流れはだいたい定番で、めいっぱい盛り上がれました。

あ。「れ」の項は「Let Me Cry」でした。あまりに懐かしくて、つい手が動いてしまいましたわ(^ ^)。



7thを超えて、新しい船出を迎えた「CLUB SEVEN 8th」。
9th、10th、、、と、今後もずっと進化しつつ続いていくことを祈っています。


今年になってから観たけれども、ここにまだ感想を書いていない作品を、まとめておきたいと思います。

どれも観たときはとても面白かったのですが、、、、いろんな事情で書かないでいるうちに時間が過ぎてしまって、だいぶ風化してしまいました(涙)ごめんなさい。


■ボニー&クライド
2012年1月、青山劇場にて観劇。
ワイルドホーンの音楽と、ボニー役の濱田めぐみさん目当てで観に行った作品でした。

企画・制作はホリプロ、オリジナルの演出は、日本版の演出は田尾下哲。
2009年にカリフォルニアで初演、2011年12月にブロードウェイ進出、日本版の上演も決定……しかし、ショーエンフェルド劇場は年内にクローズ、という状況での日本上演でした。


実際に観てみたら、めぐみさんは本当に素晴らしかったし、クライド役の田代くんも悪くなかったし、、、クライドの兄バック役の岡田浩暉さんとその妻ブランチ役のとなみちゃん(白羽ゆり)が素晴らしくて、バックまわりのエピソード一つ一つにうるうるしたりはしていたのですが……

でも。
ブロードウェイで当たらなかった理由は良く判らないけど、私自身も、まあ「一回観れて、めぐみさんの唄が聴けて、良かった!」という以上の印象はありませんでした(- -;ゞ

まず、音楽があまり私の期待するワイルドホーンではなかったのが残念だったんですよね(ごめんなさい)。
先入観というか、思いこみというか。舞台が舞台だからなのか、かなりゴスペルよりの澄明なコーラスの印象が強くて、私が(個人的に)ワイルドホーンに期待する色っぽさが、あまり感じられなかったのでした。


もう一つは、クライド役の設定が半端だったこと、かな。
田代くんは、私が初めて彼と出会った「マルグリット」の頃を思えば別人のように芝居をしていましたが、根本的に彼は「優等生」キャラだと思うんですよね。それが悪いというのではないのです。ただのシンプルな事実として、彼が演じるワルは、「優等生が一生懸命ワルぶっている」ようにしか見えなくて。
「ダラス」という、「こんな街に産まれたんだから仕方がない」と言われてしまうような『生まれついてのワル』にはまったく見えなかったんですよね…。
歌は本当に素晴らしかったけど、「こんな街にはいられない」という本能的な焦燥感が弱いから、物語の説得力が弱い。まあ、その分ちゃんとドラマとして「出ていく」理由を作ってあげているのはさすがなのですが。

物語は映画にほぼ忠実、だったような気がします。これを視ると、やっぱり荻田さんというフィルターを通した「凍てついた明日」は、ぜんぜん違う作品なんだなあ、と思う。……どちらも興味深い物語なのですが。私の性には、無条件に「凍てついた明日」が合うんだな、と、そんな当たり前のことを今更思ったりしました。



■モンティ・パイソンのスパマロット
2012年1月、赤坂ACTシアターにて観劇。
これはブロードウェイで上演されたときから気になっていて、日本で上演されるなら観たいなあと思っていたのと、ユースケ・サンタマリアが大好きなので観に行った作品。

いやー、楽しかった(^ ^)。

物語の内容的に、赤坂ACTであの価格、というのは辛いところだと思うのですが(本来は本多劇場とか、博品館とか、せいぜいサンシャイン劇場あたりでやりたい作品)、あの作品を赤坂ACTサイズにするためにあらゆる努力を払ったスタッフ陣が、素晴らしかった、と思います。

やっぱりあれだけのキャストを揃えなければ作品の魅力が出なかっただろうし、あのキャストを揃えてしまったら大劇場でやるしかなかった。大劇場でやるってことは、小芝居ではどうにもならないということで、細かいギャグでは伝わらないから、ネタを大きくするしかない。だけど、そういうところで作品のもつ「小さなおかしみ」という魅力を消さないように、あらゆる工夫をする。その細やかさが、最終的に作品の魅力を支えたんだな、と思いました。


大好きなユースけサンタマリアのアーサー王は文句なく情けなくて素敵で、
ランスロット卿の池田成志さんはさすがの面白さ。
そして、湖の貴婦人役のユミコさん(彩吹真央)が文句なく素晴らしく、私ってもしかしたらユミコさんファンだったのかしら?と思ってしまったくらい嵌りました(^ ^)。

いやあ、今思い出しても楽しい時間でした(^ ^)。



とりあえず、1月は以上です。
思ったより一つ一つが長くなってきたので、このあたりで。

本当は雪組バウ公演「インフィニティ」もちゃんと書いてない気がするんですが、、、それはまた、おいおい。

今年の一月はがんばったなー(遠い目)。7月なんて、宝塚以外は「ルドルフ」しか観なかったよ……情けない(T T)。


帝国劇場にて、ミュージカル「ルドルフ ~ザ・ラスト・キス~」千秋楽を観劇してまいりました。
http://80646.diarynote.jp/?day=20120714


いやー、本当に素晴らしかった!
作品に関する感想は、初見の時に書いたときからそれほど変化していたわけではないので割愛しますが、なんというか、舞台上の役者たちの「最後の一回」に懸ける熱意と、それをあまさず受け止めようとする客席の熱さが見事に組み合わさって、ものすごい一体感を感じました。

一曲一曲、ナンバーが終わるたびにショーストップの拍手。
たしかにキャストの迫力もすごくて、大拍手せずにはいられない出来ではあったのですが!(真顔)
それでも、もしあの場に初見の方がいらっしゃったら、ちょっと乗りきれなくて楽しめなかったかも……と反省せざるをえないほどの盛り上がりようでした(^ ^;ゞ
ロングランでない普通の公演でも、作品がいいと千秋楽ってこんなに盛り上がるんだなあ……(しみじみ)



最後の最後に後ろのカーテンが落ちなかったり、若干「あれ?」というところもありましたが、あの複雑な舞台装置を、よくぞ事故もなく回しきったな、と感心しきりです。
初日の開演30分前(客入れの時間)になってもテストが終わらなくて、もうこれは開演を遅らせた方がいいのでは……という話が出たくらいだったそうですが。初日が事故もなく無事に終わったときには、みんなで泣き崩れたという話も聞きましたが。
観ている分には、そんな危うさは一切感じられなかった……ですよね?(←自信ない)
ただ、苦労や危機を乗り越えてきた集団の一体感は、しっかり伝わってきましたけれども(^ ^)。

素晴らしいセット、素晴らしい演出。アンサンブルの一人ひとりに至るまで、みんな見せ場があって、とても楽しかった。何度でも観たかったです。2回しか観られなくてとても残念。再演されることを祈ります。
あ、宮本亜門版と、交互にやるのでも楽しいかも(^ ^)。



今日は千秋楽でしたので、メインキャストの挨拶がありました。
ほぼオールスタンディングの客席に向かって、芳雄くんが「今日は千秋楽をご観劇いただき、ありがとうございます。……メインキャストのみなさんから一言ずつ挨拶をさせていただきますので、特に、村井さんの話など長くなりますので、みなさまお座りください」と穏やかに挨拶。
盛り上がりまくりな客席はちょっと抵抗していましたが、徐々に座る人が増えて、最終的には全員座っておとなしく聞く体勢に。


トップバッターはシュテファニーの吉沢さん。
「素晴らしい出会いがたくさんあって、いい経験になりました」という話の合間に、「大勢の主婦のみなさまに共感していただき、応援していただいたことが力になりました」というコメントを楽しくはさみ、「これからも皆様に共感していただける役者を目指して頑張ります。主婦のみなさま、これからも応援してください!」と軽く笑いを取って締めくくってくれて、あらためて素敵な人だな、と思いました(^ ^)。

次は、フランツ皇帝の村井さん。
「今回は誰にもキスしてもらえなくて……芳雄はほとんどの女性キャストとキスしているのに!」というところから話を初めて、「私も昔はそんな役をやっていた時代もあるんですが……」としみじみとかつ長々と(^ ^)語ってくださいました。いやー、相変わらずギラギラで素敵ですね村井さん(^ ^)。これからも東宝ミュージカルをよろしくお願いします!

次はラリッシュ夫人の一路さん。
「フランツの妻だったり、ルドルフの母だったりといった役を演じたことがあるので、この作品に出るのは、なんというか、運命だな、と…」と綺麗にまとめてましたが、確か貴女はその“ルドルフの母親”を殺す役もやってましたわよね、と、客席は一斉に突っ込んでいたと思います。
「芳雄くんのデビューから(母親として)見守ってきた身としては、この作品は本当に感慨深くて…」としみじみ語っていらっしゃいましたが、、、そうですよね、芳雄くんのデビューは、ルドルフ皇太子なんですものね……。別に忘れていた訳ではないんですが、あらためてそれを思い出して、うわあああ、と思いました。
一路さんが出演するっていうのは、そういう意味もあったのかなあ、と思ったりして。いや、それを言いだしたら、宮本亜門版でラリッシュ夫人を演じたタータン(香寿たつき)は、日本初演の雪組「エリザベート」で、ルドルフを演じた方だったんだよね……ルドルフつながりってすごいなあ。

そんな感慨の合間に、村井さんの話を受けて「私も手にしかキスしていただけなくなりましたが」とか、村井さんに「いやいや、まだまだ(お若い)!」と言われて、「まだまだ未熟者だそうでございますので」とか、、、なんていうか、大人同士にしかできない機知に富んだ会話が交わされていたのがすごいなあ、と思いました。キャスティング的に、「大人」枠に入るのがお二人だけなんですよね(^ ^)。「若い人たちとは違うのよ」という一路さんの貫録と華麗さに、くらくらしました(*^ ^*)。

次はターフェの坂健。
「(役柄的に)誰にもキスして貰えないので、地球儀にキスしてみました」というコメントから始まったご挨拶は、あまりに面白くて記憶が飛びました(汗)。最後に、観客、キャスト、袖のスタッフ、オーケストラ、照明、、、、と次々に呼びかけては感謝を述べる坂健が、それだけならいつもの坂健なのに、姿がターフェなだけに、もう、耐えられなくて……。
いやはや、坂健最強。

次はマリーのたっちん(和音)。
つつつっと前に出て、「こんな面白いご挨拶の後に、何を言ったらいいのかわからないのですが……」と心もとなげに言う姿に、なんていうか、客席も舞台上も一瞬にしてクールダウンしましたよね。
しばらく詞を探して沈黙していたたっちんが、声を震わせながらスタッフをはじめとする関係者一同に感謝を伝え、この作品に出られて良かった、この役を演じられて幸せだった、デイヴィッド(ルヴォー)に出会えてラッキーだった、、、と繰り返す姿に、思いっきり貰い泣きしました。
全身全霊をかけてマリーを演じていたたっちん。2幕後半、ターフェとの対決から戻ってきてルドルフからの手紙を受け取ってから、ずっと泣きっぱなしだったたっちん。小さな幸せの一つ一つをちゃんと噛みしめる、芯の強いマリーそのもののようなたっちんが、笑顔で泣きながら綴った詞は、とても素直で、ありきたりで、そして、完璧な“真実”でした……。

そんなマリーの挨拶の後を受けて、最後はもちろん、ルドルフの芳雄くん。
芳雄くんの挨拶も、ひどくストレートで、情熱的で、とても素敵でした。
今の彼だからこそ出来た役なんだろうな、と素直に思えたし、今の彼だからこその挨拶なんだろうな、と。
座長としてしっかりと話す彼を見守る一路さんの微笑みが、聖母のようでした(^ ^)。
そして、挨拶の後も何度も続いたカーテンコールの間中、ずっと手をつないでいた芳雄くんとたっちんが、それはそれは可愛らしくて、仲良さげで、、、お二人とも声がよく合っているので、ぜひまた共演してほしいな、と思いました(^ ^)。



なにはともあれ、素晴らしい公演でした。
また再演してほしい!演出のデイヴィッド・ルヴォーが来日できる時期に、なるべく今回と同じキャストで(←それ重要)!!


帝国劇場にて、「ルドルフ ザ・ラスト・キス」を観劇いたしました。


フランク・ワイルドホーン作曲、名曲ぞろいのこのミュージカル。
すっごく良かったです!

特に、初演でいまいち……と思われた方(←私だ)、ぜひ時間をつくってご覧になってみてください!(真顔)


主なキャストは以下のとおり。()内は2008年版でのキャストです。

ルドルフ    (井上芳雄) 井上芳雄
マリー     (笹本玲奈) 和音美桜
ターフェ    (岡幸二郎) 坂元健児
シュテファニー (知念里奈) 吉沢梨絵
ラリッシュ夫人 (香寿たつき)一路真輝
皇帝フランツ  (壌晴彦)  村井国夫
ツェップス   (畠中洋)  港幸樹
ウィルヘルム  (岸祐二)  山名孝幸
エドワード皇太子(新納慎也) 照井裕隆

ファイファー  (浦井健治)-


日本初演は2008年5月。あのときは、宮本亜門さんの演出でした。
今回の演出は、ウィーン版の演出家デイヴィッド・ルヴォー。ちなみに、この作品の世界初演は2006年のハンガリー版で、この時の演出はルヴォーでも亜門さんでもないはず。ハンガリー版と日本版・ウィーン版はたしか並行して進んでいて、最初にハンガリー版、次に日本版、2009年にウィーン版が、お互い無関係に開幕した……はずです。たぶんですが。
私も観劇しましたが、音楽は良いのだけど…という感じでぴんと来ず(T T)、体調も悪かったりして、内容もあまりよく覚えていなかったりします……すみません。


それでも、今回観劇しまして、マリーやターフェのキャラクターが全然違っていたり、脚本もかなり変っていたりして、亜門版の「再演」とはいえない、まるっきりの別作品だなあと思いました。
とくに、一番印象的に違っていたのは、影の主役のようだった狂言回しのファイファー役が存在しなかったこと。
最初に上演を知ってキャストをみたときに、浦井くんの役は誰がやるんだろう……このメンツだったら坂健かな?とか漠然と考えていたのですが、、、まさか無くなるとは!確かにあの役は、物語世界全体を「お祭りの人形劇」という枠にいれるという亜門さんの演出コンセプトが先にあって、その「人形劇」をみせる人形遣いのファイファー、という存在だったから、演出コンセプトが変わった瞬間に不要になるキャラクターではあったのですが……とても印象的な役だったので、本当に驚きました(^ ^;ゞ



装置は、ウィーン初演と同じマイク・ブリットン。本来の舞台面の上に2重盆を置き、舞台の前面と奥にアイリスシャッター(っていうのかな?三方から絞ったり開いたりできる緞帳代わりの幕)を設置して、さらに内盆のサイズに回転可能な吊りカーテンが天井から降りてくる……という、シンプルだけれども豪華なセットでした。

全体のコンセプトカラーは赤。登場人物たちの衣装は、落ち着いたワントーンの組み合わせが多く、全体としては華やかながらも落ち着きがあって、19世紀末のウィーンという「あの時代」に、よく似合っていたような気がします。
デザインも生地もなかなか上品で、みなさん似合ってました。女性陣は宝塚出身者が多かったので、上手にアレンジしていたのかな?衣装の面で残念だったのは吉沢さんのシュテファニーなのですが、彼女に関しては、あの地味な感じも演出のうちかなという気もするし……。
振付のジョン・オコネルもふくめて、舞台面の美しさが印象的な舞台でした。



それでは、メインキャストについて簡単に。

ルドルフの井上芳雄くん。
いやー、懐深い役者になってきたなあ……(感慨)。
2008年のルドルフ役の造形には批判的だった私ですが、今回は素直に良かったと思います。
なんていうか、井上君は鬱々と後ろ向きなキャラクターよりも、まっすぐにエネルギーを発散する役が似合うと思うんですよね。見た目のイメージよりエネルギッシュなタイプだから、「ファンタスティックス」とか「ウエディング・シンガー」みたいな作品で魅力が出るのも当たり前、というか。

2008年のルドルフは、かkなり鬱々としたハムレットキャラだったと思うのですが、今回のルヴォー演出のルドルフは、障害の多い中で精一杯生きた若者だったから、井上くんのエネルギッシュなところがすごく生きたと思います。とくに「明日への道」の前、マリーの決意をうけて生まれ変わろうとする「私という人間」で見せたエネルギーは凄まじかった(*^ ^*)。2008年の時はあまり印象に残らなかったナンバーなのですが、今回はあの曲が一番印象的だったかもしれません。いやもう、素晴らしかったの一言でした。


マリー・ヴェッツェラのたっちん(和音美桜)。
現役時代からたっちん好きなので贔屓目かもしれませんが、なんか誉め言葉が溢れすぎちゃってでてこないくらい素晴らしかったです。
歌声が魅力のたっちんですが、私は彼女の芝居が好きなんだなあ、とあらためて思ったのでした。

1幕前半の、少女らしい無鉄砲さと、怖いものしらずな頑固さの魅力。
ルドルフと恋に落ちた後、「この人を喪うかもしれない」という怖さを知った少女の、「絶対に私が護ってみせる!」という決意と、そこから溢れてくる母性。
ピュアで頑固で可愛くて、なのに愛する男を護るために、大人になるしかなかった少女。
父親である皇帝に脅迫されてマリーとの別れを決意し、ミッツィの酒場に入り浸るルドルフを迎えに来たマリーの、「私はもう、選んだわ!」という魂の叫びが、とても綺麗でした。
そして、一番好きな場面は、ターフェとの対決場面でした。ここで、すべてを見透かしたかのように笑いながら、「皇国の未来」に汲々として策を弄する首相を嗤いながら、、ただ、愛する者を護ることしか考えていない彼女の頑なな純粋さが、眩しくて、そして危うくて、観ていることしかできない観客の自分が歯がゆくて。
2008年版の亜門さんの演出によるマリーとは全く違うキャラクター設定がとても私のツボにはまってくれて、、、今回の設定での玲奈マリーも観てみたかったな、と思いました。……いやいや、でも、たっちんのマリーに出会えてとても幸せです。ありがとうありがとうありがとう♪♪♪


ターフェ首相の坂健(坂元健児)。
いやはや。名演というか怪演というか!!素晴らしかった!!
坂健って、いままでは素直で優しい、地に足のついた「いいひと」の役が多かった印象でしたが、これからこういう役も来るだろうなあ……鮮烈なデビューでした(^ ^)。
嫌味な存在感、掴みどころのない台詞術とやわらかな歌声。特に、一幕の「明日への道」リプライズ(というか「栄光への道」)の甘い歌声は、本当に素晴らしかったです!!


皇太子妃シュテファニーの吉沢梨絵さん。
この方もとても素晴らしかったです(^ ^)。
プロローグでつけつけとルドルフに話しかけるところは、劇団四季の台詞術の癖が抜けてないなあ、、、なんて思ったりもしましたが、物語が進むにつれて、そんなこと気にならなくなってきました。
マリーとの浮気をとがめる場面のソロも素晴らしかったけど、それ以上に印象的だったのは、教会での対決と、その後の祈りの場面の表情……素直に泣けました(T T)。すごくやりがいのある、良い役ですよね。とても良かったです!


ラリッシュ夫人の一路真輝さん。
歌は一番高いところの数音がかなり苦しそうでしたが、芝居はとても良かったです。ルドルフへの秘めた恋心と高すぎるプライドのせめぎ合いが美しく、2幕のラスト前の場面、揺れる想いの表現が秀逸でした。こういう役だったのか!と、目から鱗でした。


皇帝フランツ・ヨーゼフの村井国夫さん。
いやはや、もう。
「エリザベート」のフランツはありえないけど、この作品のフランツは本当に似合うなあ。
息子をちゃんと愛していながら、さりげなく追い詰めていく「王者の冷酷」がこんなに似合う人も珍しい。大好きです。



宝塚OGでは、他に大月さゆ、舞城のどか、美鳳あや、望月理世、柳本奈都子(夏鳳しおり)、やまぐちあきこ(あゆら華央)が参加していて、月組ファン的には、とっても懐かしかったです(^ ^)。みほちゃんとみっぽーはダンスがメインで、特に1幕の舞踏会でのリフトは凄かった!!さゆちゃんの可愛らしさとコケティッシュな魅力がすごく出ていて素敵でした。
それと、ドレス姿の望月理世さんの美しさに瞠目(@ @)。いやー、絶対女優の方がいいよあなたは……。



それにしても。
ああもう、一ヶ月公演とか短いなあ……また再演してほしい!このキャストで!!



赤坂ACTシアターにて、ミュージカル「サンセット大通り」を観劇いたしました。


私がこの作品を最初に知ったのは、CDの「The Very Best of Andrew Lloyd=Webber」……だと思います。
このCDに収録されていたタイトル曲「Sunset Blvd.」をはじめとする3曲(他2曲は「With One Look」「As If We Neber Say Good-bye」)が本当に大好きで、即行でロンドンオリジナルキャストのCDも買ったくらい、私の中で「Jekyl&Hyde」なみの大ブームになった作品でした。
その昔、仕事がらみでカリフォルニアに行ったときも、サンセット大通りをふらふら歩くだけで幸せで(^ ^)。タイトル曲を口ずさみながら、「ああ~、私は今サンセット大通りにいるんだ!!」と叫びたい気持ちでいっぱいでした。

でも、残念ながら私がNYに行ったときは上演していなくて、舞台を観ることはできず(涙)。
原作の映画は、むかーし夜中にTVで流れたときに視たのですが、舞台は結局、今回のホリプロ公演が初見となりました。



上演が決まる前は、ノーマもジョーもベティも希望のキャストがあったのですが……(この日記にも何度か書いたかも)、
まあ、いまさらそんなことを言っても仕方がないので、まずは観劇しての感想を。





オープニングシーンは、ハリウッドのサンセット大通りにある邸宅の大捜索。
銃声があった、という通報で駆け付けた警官たちが、プールに浮かぶ若い青年の死体を発見する。

オリジナル演出でのこの場面は、セットの豪華さで有名でした。一部のミュージカルファンの間では、「Sunset Blvd.」が日本で上演されないのは、あのセット(屋上のプールがセリ上がると、豪華絢爛な邸宅があらわれる……というものらしい)が可能な劇場が無いからだ、と、まことしやかに語られていたくらいです。

でも、上演が決まった劇場は、そもそもセリのない赤坂ACT。いったいどうするんだろう?と思っていたら、なんと!虚仮おどしの演出はいっさいなかった!


演出は、自転車キンクリートの鈴木裕美。
「愛と青春の宝塚」「宝塚BOYS」「ザ・ミュージック・マン」……こうして並べてみると、セットや動きはシンプルに徹して、「役者」を、あるいは「役者の芝居」を見せる演出をする人だったなー、という印象があります。

「サンセット大通り」という、そもそも異様な世界観を扱った非日常の物語を綴るのに、なぜ彼女だったんだろう……?と思っていたのですが。

役の人物の心情を大切にした、シンプルな演出の力によって、物語としては映画よりもずっと共感できたような気がします。
たとえ、日本のどこかで年に一回くらいは起こっていそうな、ありきたりな“年の差カップルの恋愛のもつれ”というメロドラマが、あの名曲の数々によるドラマティックな盛り上がりについていけなかったとしても。


音楽と芝居を重視し、セットや衣装を簡素化することによって物語の共感性(=身近さ)を強める。それは一つの戦略だと思います。その代償として、元々持っていたはずの異常性・非日常性・別世界感を喪ったとしても、間口の狭いカルト作品を普遍性のある共感性の高い作品に仕上げて観客のすそ野を広げた、という言い方は出来ると思う。

そして、そういう世界観を成立させるために、安蘭けいという役者をノーマ役に抜擢したのは、誰かの炯眼だったのだと思いました。彼女の、芯の弱さを外殻の鎧で覆うことで護っているかのような独特の個性は、心弱い繊細なノーマに、想像以上に似合っていたのではないかと思います。



サイレント映画の大女優ノーマ・デズモンド。
映画のグロリア・スワンソンは、まあ、今にして思えば61歳にしては若かったかも、と思いますが、それでも、普通ならこの人は恋愛対象外だよね、という印象でした。
でも、トウコさんが演じるノーマは、普通に恋愛の対象としてアリだなあ、と思ったんですよね。もちろん、実年齢がノーマを演じるには若いというのもあるけど、もともとトウコさんって、あまり「別世界感」がない役者だと思うんです。地に足がついた……というのともちょっと違うんですが。なんというか、、、最後まで鎧を完全には外さない感じ、とでもいうのでしょうか(←伝わらない)

音域面はだいぶ苦戦していましたが、歌の表現力そのものはさすがでしたし、まだまだ若く美しく、現役復帰を望んでも、若い青年と本気の恋に陥ちても、それなりに納得できる程度のエキセントリックさと、魅力的なスターっぷり。
観る側に先入観(というか希望の配役)さえなければ、十分に満足できるノーマだったんじゃないかな、と思います。

原作のテーマであったはずの、「異様な世界」を覗き見る愉しさのようなものを、求めさえしなければ。


ところで。
誰もが名前(顔も)を知っている往年の大女優、というと、日本でいえば吉永小百合さんみたいなイメージで想像しておけば良いのでしょうか。……ちょっと違うのかなあ?





ノーマの邸にあるプールから、若い男の死体が見つかる。
彼の正体は、シナリオライターのジョー・ギリス(田代万里生)。彼は起き上がり、自分自身の死につながる道を語り始める……。

数ヶ月前。仕事がなくて貧窮のどん底にあった彼は、取り立て屋に追われているうちにサンセット大通りでエンストしてしまう。
焦ったジョーは、眼の前に顕れた、さびれた大邸宅のガレージに車を隠した。
そんな彼の耳に、命令口調の女性の声が届く。
「遅かったじゃないの!今すぐ入りなさい!」

おそるおそる扉をくぐった彼の眼に映ったのは、古臭いけれども豪華絢爛な内装と、猿の死体。
可愛がっていたペットの棺桶を持ってきた葬儀屋と勘違いされたことを知って、自分が命を賭ける羽目になった$300を猿のために使う女がいることに心底驚く。

職業を訊かれて「映画のシナリオライター」と答えた彼に、ノーマは自分で書いた「サロメ」のシナリオを共同執筆しないかと持ちかける。金銭感覚のない往年のスターから週$300という約束を取り付けたジョーは、女王の邸に留まることを肯い、彼女の夢に付き合うことになる……。


私が田代くんを最初に観たのは「マルグリット」初演。その後はちょっと間があいて、一年前の「スリル・ミー」、年始の「ボニー&クライド」くらいでしょうか、私が観ているのは(他にもあるかも?)。
見るからに生真面目な優等生としか思えない彼なのに、どうしてこういうワルっぽい役ばっかりくるのかなあ?と不思議に思っていたのですが、鈴木さん演出のジョーは、ちゃらんぽらんでいい加減な、根っからの“ワル”ではなく、偽悪主義の元優等生だったのが新鮮でした。
そっか、ジョーってこういう役なんだ……!!と思ったんですよね。ワルぶっても根は真面目な優等生だから、年上の女に惹かれるとなれば本気で惚れてしまう、という展開が、とても興味深かったです。1幕ラスト、仲間内でのクリスマスパーティーから急いで帰ってきて、手首を切ったノーマを抱きしめる場面の真摯な愛情。この作品で、そんなこと(本気の恋)がありうるのか!?という驚きと、ああ、トウコさんと田代くんならこういう展開もありなんだなあ、という納得。脚本と演出と役者って、面白い関係だなあと思いました。

単純な恋物語にならなかったのは、田代くんのジョーが、自分が恋に落ちていることを認めていなかったから。
内面は真面目な優等生、外面は突っ張ったワル……その「ワル」の部分が、そんな恋を認めない。それは嘘だと。ただ金のために老女に囲われている「もう一人の自分」を嫌悪する。その奥に恋があることには目をつぶって。
田代くんの演技力というよりは、たまたま……いや、そういうジョーを描くための彼の起用だったのかも、という気がしました。





そんなジョーの心の迷いに巻き込まれる若い女流ライター・ベティは、彩吹真央。
お芝居も歌もとても良かったけど、残念ながらノーマとの対比が弱すぎて、恋のライバルとしては成立しなかったな、と思いました。
率直にいって、トウコさんのノーマとゆみこさんのベティーでは、キャラが似すぎているんですよね(T T)。年齢的にも、声質も、役者としての持ち味も。勿論、宝塚の男役スターとしては全く違う個性だったと思いますが、外部に出たら「宝塚の元男役スター」というくくりに入ってしまうわけで、どうしたって似て見えるんですよね……。
ゆみこさんのベティーは、単独ではすごく良かったと思うので、とても残念な気がしました。





ノーマの執事・マックスは、鈴木綜馬さん。
いやもう、期待値はMAXにあげていたんですが、そんな予想さえ軽々と越えた見事さでした。
似合いすぎ、素敵すぎ、巧過ぎ、、、とにかく素敵すぎました!!声が素敵で存在感があって。彼の存在が、彼という存在の異常性が、今回演出的にあまり表に出せない「別世界」感を与える唯一の根拠になっていたと思います。いやー、2幕後半で自分の正体を明かす場面とか、ラストシーンの持って生き方とか、、、責任重大な役ですが、本当に素晴らしかったです!!




物語としてはほぼこの4人で9割が進行する作品ですが、いちおう役として名前が出ている3人について少しだけ。

デミル監督の浜畑賢吉さん。
「サロメ」の脚本を完成させたノーマが、意気揚々と撮影スタジオにデミル監督を訪ねていく。
あやうく若い門番に止められそうになったりしながらも、なんとかスタジオについた彼女に、若いスタッフが声をかける。「……もしかして、ノーマ・デズモンドさん!?」

名曲「As If We Never Say Good-bye」が流れる中で、撮影が進められていく「サムソンとデリラ」。
ノーマの喜びと葛藤、「やっぱりここが私の居場所なんだわ!」という、傍迷惑な確信。
そのすべてを理解して受け容れながら、彼女を傷つけないようにそっと真綿に包んでマックスに渡すデミル監督の優しさと、「伝説の人みたいですね!」と能天気にいうスタッフに、「私も伝説かね」と静かに問いかける、冷やかな声。
浜畑さんって本当に素敵………(しみじみ)



ジョーの脚本を却下し、ノーマの車を撮影で使わせてほしいと邸に電話をしてくるプロデューサー・シェルドレイクの戸井勝海。
こういうピンポイントで存在感を出す役が出来るようになってきたなあ、と感慨深いです。
嫌味な感じがすごく良かった。なんだかんだ言っても、やっぱり巧いんだなこの人は。



ジョーの友人でベティの婚約者・アーティの矢崎広。
これも出番は少ないけど、印象的でした。2幕でもう一回出てくると思ったのに、出てこなかったからがっかりしたよ……。でも、1幕のパーティーでのベティーとのやり取りとか、最後まで観てあらためて考えると結構細かい芝居をしていたんだなーと思います。
あああ、もう一回観たかったなあ……どーして宙組と丸かぶりするんだよ~!よりによって、この作品が(泣)。



アンサンブルにもそれなりに台詞もソロもあって、良かったと思います。出番は多くないけど。
宝塚OGも何人か出演されていて、みんなそれぞれに存在感があって、嬉しかったです。
あと、個人的に宮奈穂子ちゃんが可愛くて好きなので、久しぶりに観れて嬉しかったです(^ ^)。



渋谷の大和田さくらホールで、ミュージカル・レビュー「ダウンタウン・フォーリーズ Volume8(deluxe)」を観劇してまいりました。


構成・演出は高平哲郎、音楽監督に島健、振付に川崎悦子というスタッフ陣も、島田歌穂・玉野和紀・吉野圭吾・北村岳子のオリジナルキャストも、10年前と変らず。それに、さらに平澤智と樹里咲穂という強力なメンバーを加えてのコント付きレビュー。
これまでの8公演、全部観れているわけではありませんが、今回は集大成ということで、だいぶ懐かしい場面もありました(^ ^)。


相変わらずのコント三昧でしたが、一番笑ったのは、最初の「カウボーイとエイリアン」かな(^ ^)。
28個のりんごを7人でわける算数の問題を久しぶりに観て、あらためて笑いました(^ ^)。歌穂ちゃん凄すぎる!

シリアスシーンでは、「All That JAZZ」で始まったレイバー&ストレーラーシリーズが素敵でした。岳子さんのオトナなダンスが久しぶりに堪能できて幸せ!一緒に踊る樹里ちゃんの、溌剌とした色気の無さもまた魅力だなと思いました。

一幕ラストの「実録・南太平洋」は、懐かしかったー!歌穂ちゃんの男役は、観るたびにうまくなっていくなーと感心しました。最初に観た男役はマリウス(レ・ミゼラブル)だったなあ。。。懐かしいわ。


2幕の目玉は、なんといっても「ジキルとハイド」より、対決。
ダウンタウンフォーリーズではありませんが、「That’s Japanese Musical」で市村さんが演ったネタを、吉野くんが再演しようとは!!
まだ「ジキルとハイド」がブロードウェイで幕を開けてから何年も経っていなかったあの頃。
私があの作品に嵌ったのは、市村さんのアレだったと言っても過言ではない……かもしれない、あの名場面。市村さんの、「(テレビに)出たいくせに~~~!!」というハイドの叫びが、今も耳に残っています。
吉野さんは、まだ「対決」を演じきれるほどの声のヴァリエーションはないんだな、と思いましたが、芝居としては良かったし、いずれあの役も演じてくれる日が来ることを楽しみにしています。

ただ、当時のミュージカル界と今とではあまりにも状況が違いすぎて、、、まだ「ミュージカル」がアングラの一部だったあの頃には本当に切実だったあの一連のやり取りが、今はもう遠いなあ、、、と、一抹の寂しさと共に思ってしまいました(^ ^)。
あと、日本初演前だった「That’s Japanese…」の時は有名なブロードウェイオリジナルと同じ演出だったのに、今回は吉野くんも出ていた日本版の演出になっていたのが残念な気がしました。あの演出、パロディされすぎてちょっとアレですが、やっぱり好きなんだもん。

あと、「ジキルとハイド」とセットでネタになっていた「ボニー&クライド」。
ブロードウェイ版は2週間のプレビューのみで打ち切りとなった失敗作でCDも出ていない、というネタで落ちをつけるはずが、「実はCDが出ているらしいと昨日お客さまから聴きました…」というのが落ちになってました(^ ^;ゞ あれは元々の仕込みなのか、本当に昨日わかったのか(^ ^)。
そういえば、私も1月に観たのに感想書いてなかったなあ。あははー。


「くるみ割り人形」をパロディにした「犯罪舞踏」は、前回観た時もすごいなーと思ったけど、やっぱり印象的だったなあ。「万引きの踊り」は樹里ちゃんが華麗に踊ってくれて、さすがでした!「不法投棄夫婦の踊り」と「結婚詐欺師の踊り」は以前と同じキャストで、これはもう文句なく素敵(はぁと)結構オリジナルのバレエの振りが残っているのがまた良いんですよね♪♪


インストの「ファンタジア」を経て、歌穂ちゃんがソロで歌ったのは、ホイットニー・ヒューストンの「The Greatest Love Of All」。これはもう、文句なく素晴らしかった!!
フィナーレは定番の3曲。この3曲、特にラストの「グッバイ」を聞くと、あーダウンタウン見たわー、という気がします。……そういえば、「Producers」の日本初演を観た時も「あーダウンタウンみ……てないよ!!!」と思ったっけなあ(^ ^)。だって歌詞も一緒だしー!!


いや、楽しい3時間でした。
アラフィフな4人+アラフォーな2人。みんな汗だくで、気持ちいいくらい笑顔で。楽しいんだろうな、と思ったらすごく嬉しくなりました。
10年前からこれをやってる4人(+1)と、何の違和感もなく馴染んで見えた樹里ちゃん。いいメンバーだなー、と、幸せな気持ちで家に帰りました。来年も楽しみにしています!(^ ^)。


【7月1日まで、あと36日】
サンシャイン劇場にて、ミュージカル「薄桜鬼 ~斎藤一 篇~」を観劇いたしました。


「薄桜鬼」は、たぶん原作はゲームってことになるんですよね?
私は二宮サチさんが描いた漫画しか知りませんが、アニメにもなっているのかな。

脚本・演出・作詞は毛利亘宏、音楽は佐藤俊彦。制作の中心は30-DELUX、だそうです。
初めて作品に触れましたが、面白かったです。まあ、無理してミュージカルにせんでも……とは思いましたが、キャラクターの再現率といい、ストーリーの構成力といい、なかなかのレベルだったと思います。
特に原作ファンというわけではありませんが、新撰組という題材自体が面白いこともあって、楽しめました。なんたって、殺陣が本当に恰好良い!! 殺陣は斬られ役のレベルが重要なので、そこに巧い人が揃っている団体が主催している公演は良いんですよね。
またチャンバラものを上演してほしいです(期待)。


物語は、幕末の池田屋~会津戦争までを、「新撰組」の視点で描く本筋と、「薩長と手を組んだ鬼たち」と「人間を怪物化する薬」というエンタメでよくある設定を組み合わせた、ファンタジックなストーリー。
前半は「変若水(おちみず)」という薬をめぐる謎を追っているのに、1幕の半ばくらいでその謎はあっさり解けて、あとは「薬を飲むか飲まないか」の葛藤が人間側の中心テーマになっていくのがちょっと面白いというか、頭の切り替えが必要な感じでした。

現実の史実とは微妙に重なっているんですが、新撰組としてはマイナーな池田屋以降の活動がメインになっている上に、近藤局長や山南さん、伊東甲子太郎たちが誰も出てこないので、基本的にはオリジナルストーリーだと思って観た方がいいような気がします。
でも、戊辰戦争で敗北して事実上解散し、近藤を喪い、、、「甲陽鎮撫隊」と名前を変えても「新撰組」の精神を持ち続けた土方とその仲間たち という図がとても切なくて……物語の裏に流れる歴史を知っていて観ると、2幕後半は涙なくしては観られない感じでした。
別れてしまった仲間たちが戻ってくるラストは、大人のファンタジーなんだな、と。
そういう意味で、この物語全体が明治まで生き残った斎藤の夢として語られること自体が、衝撃的なのかも、と思いました。


それでは、キャストごとに簡単に。

■松田凌(斎藤一)
斎藤篇、ということで、彼の「変らなさ」がテーマになった構成の作品。
キャラクターの再現率、というか、芝居的にはとても良かったし、殺陣も斎藤のイメージにあっていて悪くなかったと思います。彼が「新撰組」の精神をちゃんと引き継いだからこそ、土方は笑って蝦夷地へ向かえたのだから、と。

ただ……うーん、ミュージカル作品で主演するには、歌がきつかったなあ……。
音楽的にも歌唱による表現力を必要とする作品ではなかったし、客層的にも作品的にも音響的にも、全編録音で良かったのでは、、、と思いました。すごい派手な殺陣をしながら歌っているところはどのみち録音なんだろうし(←違ってたらすみません)、普通のところも全部録音で音楽の質を高めた方が楽しめたと思うんですが。
……肉体的な面での表現力は十分ある人だと思うので、無理して歌わせなくてもいいのにな、と。
それがちょっと残念でした。


■廣瀬大介(沖田総司)
美形だなーとしみじみと。殺陣がもうちょっとシャープだと文句なかったんですが、、、キャラクターはすごく伝わってきたし、良かったと思います。
私にとって「沖田」はやんちゃ坊主なので、ああいう設定なのは嬉しかったな。
最初の登場のときから「星組の真風くんに似てるなー」と思っていたのですが、最後まで観て、真風くんの沖田が観たくなりました。秋のベニー主演のバウが新撰組ものじゃないのが、とても残念です(真顔)。


■矢崎広(土方歳三)
さすがにミュージカルの大舞台を踏んでいる人だけあって、歌い継ぎで土方さんが歌いだすとホッとする……の連続でした。
それにしても恰好良かった!!役も良かったけど、矢崎くん自身がすごく良かったです。手放しで絶賛(^ ^)。一幕の紫の着物も良かったけど、二幕の洋装は鼻血ものでしたわよ!(そこかよ)


■池田純矢(藤堂平助)
身体能力も、いろんな表現力も、なんだか凄かった。たまたま私が観た回は最後の挨拶で彼がコメントを述べてくれたんですが、その内容が本当に素晴らしくて、だいぶ惚れました。司会(?)の清水さんが「あれで19歳ですよ」と言っていたのがすごく印象的。
舞台歴は短いようですが、これからの活躍に期待いたします。

※ちなみに、途中で薬を飲んで羅刹になって大暴れする場面って、スタントですよね?あれは誰だったんだろう……。


■小野健斗(原田左之助)
長身スタイル抜群。赤毛もよく似合ってて、長槍を振りまわす原田役にぴったり!目が離せないくらい恰好良かったです。
豪放磊落な、兄貴分的な雰囲気があるのも良かったなあ。良い役でした(はぁと)。


■宮崎秋人(永倉新八)
原田といつも一緒にいる役。小柄で丸顔で可愛らしい雰囲気で、今までの永倉のイメージ(気は優しくて力持ち的な)とはだいぶ違ってましたが、長身でシャープな小野さんとの並びはとても良かったです。


■天野博一(山崎蒸)
山崎としては身軽で短刀を使った殺陣の見事さに見惚れました。監察らしい、一歩下がった雰囲気も良かったです。
30-DELUXのメンバーとして、清水さんと二人で開幕前のMCを担当されてましたが、さすがの呼吸でした。


■森大(井上源三郎)
ちょっと外した感じの存在感が凄く面白かった。元々私は源さんが大好きなのですが、この源さんも素敵だなあ、と。若いキャストがみんな生真面目にキャラクターを演じている中で、飄々と生きているおっさん(^ ^)が、とても魅力的でした。


■鈴木勝吾(風間千景)
「鬼」の首領として薩長と手を組み、「人間」たちの皆殺しを計画している……のかな?途中から目的がすり替わってる気もしましたが、いいのかな(^ ^)。
立っているだけで「空気が違う」のってすごく難しいんだな、と思いました。音楽とか照明とかでフォローしてくれているんですけどね。
でも、殺陣の動きの独特さはさすがでした。人間の動きとは違う、っていう感じがよく出てたと思います。


■清水順二(天霧九寿)
「鬼」の一員だけれども、「平穏に暮らす」ことが希望なだけで、人をどうにかしようとは思っていない。むしろ人に交じって生きて行きたいんだろうな、という感じ。そういう優しさと、でも人間とは少し思考回路が違う感じがちゃんと両立できていて、面白かったです。
殺陣はすごい!!「鬼」の(っていうか、素手の)殺陣だけじゃなくて、普通の人間としての(刀を持った)殺陣も観てみたかった(涙)。


■柏木佑介(不知火匡)
「鬼」の一員で、わがままな暴走坊や。
ありがちなキャラクターですが、なんだかすごく良かったです!身体能力の素晴らしさに唖然。歌も良かったし芝居も良かった!!……と思っていたら、結構ミュージカルにも出演経験があるみたいですね。今後の活躍が楽しみ!


■吉田仁美(雪村千鶴)
うたのおねえさんだったという経歴を見て納得の美声でした。役柄的にはもう少しシャープに動けると良かったのに、と思うのですが、、、まあ仕方ないかな。可愛かったです。小柄な斎藤ともお似合いでした(^ ^)。



【7月1日まで、あと56日】
ちょっと前ですが、シアタークリエにて、ミュージカル「道化の瞳」を観劇してまいりました。


……号泣しました(^ ^;ゞ

ちょうど仕事でいろいろあって情緒不安定になっていた時だったせいか、幕開き早々、どんな話になるのかまったく分かっていないときから涙が止まらなくて、かなり困り果てました(^ ^;
あまり客観的な評価はできていないと思います……すみません。



作・演出の玉野さんが、「CLUB SEVEN vol.3」で上演したダンス場面のネタを膨らませて、2幕もののミュージカル作品に仕立てた作品。
vol.3では、今回の公演で2幕に当たる、チャップリン時代のイギリスをイメージした場面だけだったと思うのですが(←詳しくは思いだせず……すみません)、今回の作品ではその場面を丸ごと劇中劇(主人公の少年が書いた小説)にして、「現実」の舞台は現代日本の癌病棟になっていました。

若年性白血病でずっと入院している少年(屋良朝幸)とその母親(彩吹真央)。
彼の主治医(小堺一機)をはじめとする医者(原田優一・佐々木喜英)や看護士(桐生園加・美羽あさひ・佐藤洋介)たちは、「笑えば免疫力が上がる!」という院長の考えに沿って「明るく楽しい病院」を目指している。
しかし、院長は病気で倒れ、その息子(小西遼生)と彼の信頼する腕利きの副院長(保坂知寿)によって効率的な病院経営への転換がはかられており、小堺たちと対立している。
そんな中、少年の再発(骨髄移植の失敗?)が判明し、病院は再移植派と化学療法派にわかれる……。

こうしてあらすじを書くと固い話みたいですが、作品は全面的に少年の目線で描かれていて、とてもピュアな物語でした。
やんちゃな悪戯坊主と、いつまでも子供の心を忘れない小堺医師の心の交流が目に眩しくて。
目の見えない母親のピュアな少女性、俗界の汚れに触れたことのない、透明感のある存在感が心に眩しくて。
少年が純粋な愛慕と共に母親に捧げる「守ってあげたい」という気持ちと、「守ってあげられない」という苦しさ。彼が自身の死と共に見据えたものが、自分のいなくなった後の母親のことだったという切なさ。

そして、その切なさを人形のチャーリーに託した、彼の愛。




屋良くん、ジャニーズ系の作品で何度か観たことのある実力派ですが、今回は本当に彼の魅力が大爆発していたと思います。しっかりした芝居力、台詞術、歌、そしてダンス。ダンスはストリート系なので回りのダンスからはちょっと浮いていましたが(^ ^)、センターで踊っている分には気になりませんでしたし、運動神経の良さはさすがだなと思いました。
辛い入院生活でも明るさを忘れず、人(特に母親)に心配をかけまいとする少年の芯の強さと、ふとしたときに漏れる怯えのギャップが色鮮やかで。2幕の、幻想の世界に入ってからの弾けっぷりも、さすがに魅力的でした。
……すみません、かなり絶賛してますね私(^ ^)。でも、本当に良かったです!!また舞台に出たら、ぜひ観にいきたいと思っています。


結末は最初から見えている……というか、まあこういう話なんだからこうなるよね、という王道的な泣かせ脚本な上に、不要なエピソードも多くて、観ながら「無理して2幕に膨らませたんだなあ」という気もしましたが、、、
小堺さんの圧倒的な巧さ、ちーさん(保坂)の圧倒的な存在感、小西さんの堅実さ、原田くんの優しさ。佐々木さん・佐藤さんの魅力的なダンス。宝塚OGでは、彩吹さんの透明感と歌、桐生・美羽の楽しそうな小芝居にダンス、と見どころ満載な作品でした(^ ^)。


クリエ公演は終わってしまいましたが、大阪はちょうど今上演中……なはず。ピュアに泣きたいみなさま、どうぞお見逃しなく(←客観的な評価はできていませんので、泣けなくても責任はとりませんけどね!)(逃)



【7月1日まで、あと62日】
天王州の銀河劇場にて、DANCE&ACT「ニジンスキー」を観劇してまいりました。



脚本・演出は荻田浩一。
荻田さんがいずれ「DANCE&ACT」と銘打ってヴァーツラフ・ニジンスキーを描く日がくることは、予感があったような気がします。
それにしても、今回のキャスティングはあまりにも神すぎて、、、ちょっと観ることを躊躇しておりました。いや、荻田さんオリジナルの「やりたい放題」には、何回か痛い目にあっているので(汗)。

それでも、さすがに独り立ちして何年も過ぎ、大作もいくつか手がけた一人前の演出家。
楽直前に観に行ったのですが、さすがの完成度に心が震えました。これは、もう一回観たかったな……!



ニジンスキーの妹・ブローニャ(安寿ミラ)の語りでつづられる悪夢。
「私には二人の兄がおりました。上の兄の名はスタニスラフ、下の兄の名はヴァーツラフ……」
淡々と繰り返される、空虚な言葉たち。低くて柔らかい、なのにどこか切迫感のあるヤンさんの台詞回しは、この役割にぴったりだったと思います。
悪夢をみているのはニジンスキー(東山義久)。ニジンスキーとその兄妹たちは、生まれた時から悪夢の中で生きていた。そして、彼らの悪夢は、ときおり“奇跡”という名で現実世界に忍び込む。ニジンスキーの肉体を通して。人々が彼の上にみる“夢”を通して。

「私には二人の兄がおりました。上の兄の名はスタニスラフ、下の兄の名はヴァーツラフ……」

荻田さんの「ダンスアクト」というのは、空虚な言葉(ACT)と雄弁な肉体(DANCE)の両輪で走る自転車のようなもの。喋れる役者が喋り、踊れるダンサーが踊る。両方ができる人(ニジンスキー兄妹)は両方やる。みなが自分の得意分野を持ち寄って戦っている、そんな緊張感のある舞台でした。



ヴァッツァ(ヴァーツラフ)の妻ロミシュカ(遠野あすか)。ヴァッツァのパトロンにして希代のプロデューサーであったセリョージャ・ディアギレフ(岡幸二郎)。精神を病んだヴァッツァの主治医にしてロミシュカの不倫相手となった医師フレンケル(佐野大樹)。
これにニジンスキー兄妹を加えた5人と、「悪夢」を踊る男性ダンサー4人(そのうち一人はスタニスラフ役の和田泰右)と女性ダンサー1人(舞城のどか)。計10人の舞台。

人数が多すぎては成立しないほどの、痛々しい緊張感。観ている方まで緊張を強いられる、その研ぎ澄まされた空気は怖いくらいでした。




セリョージャのキャラは、キャスティングを聞いた時から予想していたイメージ通り。
その存在感、圧迫感、そして押しつけがましい優しさは、ヴァッツァが「吐き気がするほど嫌だ」、というのもわかる見事さでした。



ほぼアイドルのおっかけファンのノリのまま、ヴァッツァと結婚したロミシュカ。
なぜ彼が彼女を選んだのか、その場面はなかったのでよく判りませんが、結局彼女は「ヴァーツラフ・ニジンスキー」の妻であることを希求し、夫が「ヴァーツラフ・ニジンスキー」であり続けることを望んでいた……のが問題であり、そこを荻田さんにつけこまれたんだな、と思いました。

なんというべきか。
ロミシュカは彼女なりに彼の踊りに魅了されていたし、彼を深く愛してもいた。
けれども、ヴァーツラフ・ニジンスキーはヒトとして生きていなかった……。

彼は神の道具で、神の見せるヴィジョンを自分の肉体を通して、あるいは他人の肉体を通して表現することしかできない。誰かを愛し、誰かを求めて踊るわけではない。
ただ、自分を取り囲む悪夢に操られて。

そんなヴァッツァに振りまわされたロミシュカに同情し、彼女を救いたいと願う生真面目な医師・フレンケル。
悪夢に囚われてしまったヴァッツァの傍では、どうしても生きていけないロミシュカ。



6歳で精神を病んだまま、31歳まで精神病院で過ごした、ニジンスキー家の長兄スタニスラフ。
ヴァッツァとブローニャの兄妹には、そんな兄と同じ血が流れている。いつか自分も、なにもかもわからなくなってしまうのではないか、、、という恐怖。自分自身への怯え。
そんな恐怖を共有するブローニャ、そんな恐怖を理解できないなりに感じてしまうロミシュカ。そんな狂気の存在さえ認めないセリョージャ。

ヴァッツァの一番の理解者は誰なのか。
いずれにしても、ヴァッツァの傍で生きていける存在は、この作品の中には存在しません。
そんな存在が、彼の視る悪夢に耐えられる人間がいれば、彼はこの地上にとどまったかもしれない……と、そんな幻想さえ抱かせながら。


フォーキンが振付した「ヴァーツラフ・ニジンスキー」という作品で本領を発揮した「圧倒的なジャンプ力」よりも、ヴァッツァ自身が振付した「新しい表現」=地を這うような、「クラシックバレエにない動き」に近い、おかしな方向に曲がる関節、見慣れぬ動きの数々(振付・平山素子/港ゆりか)を見事に体現してのけた東山リーダーは勿論、スタニスラフの幻影を踊る和田さんを中心としたダンサーたちのレベルの高さに、瞠目しっぱなしでした。
あのダンスは一見の価値がある!!
芝居と歌が中心となった幸ちゃんとあすかちゃんも良かったし、芝居も歌もダンスもなんでもござれなヤンさんはさすがだったし、、、でも、やはりなんといっても、リーダーは素晴らしかったね!!うん。ぶつぶつと手記(「ニジンスキーの手記」)を読み上げるていの台詞回しもすごく良かった。この人のチャーリー(←「アルジャーノンに花束を」)を観てみたい、と思いました。
(昔荻田さんが演出した「アルジャーノン……」は、チャーリー=浦井くんが歌いっぱなしだったけど。リーダーがやるなら、ぜひ“ダンスアクト”で!)



「ニジンスキー」というタイトルでは、昨年雪組さんで早霧さん主演で上演されたバージョンもありますが、さすが鬼才・荻田浩一!まったくレベルの違う「甘美な悪夢」をみせていただきました。
この舞台に出演された10人のみなさまと、荻田さんのますますのご活躍を祈りつつ、たまには宝塚の舞台も演出しにおいでよ!!と呟きつつ。



【7月1日まで、あと84日】

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