100万回のおめでとう
2014年1月1日 宝塚(星)2014年、新年明けましておめでとうございます!
いよいよ宝塚も百周年。その、100年に一度のおめでたい元旦初日に、はるばる遠征してまいりました!
ミレニアムの時は全国的にいろんなイベントがあって盛り上がってましたが、今回は宝塚だけで、世間一般は普通の新年なんだよね、な~んてことを思いながらも、こうして百周年という記念すべき年に宝塚ファンとして、みなさんと一緒に祝える幸運は、ありがたいことだなあとしみじみ思いました(^ ^)。
星組公演「眠れない男~ナポレオン~」は、小池さん演出、プレスギュルヴィック氏作曲の新作。ナポレオンの士官学校時代から、ロシア遠征で失敗し、1814年に巴里を同盟軍に奪われるまでを、ジョゼフィーヌとの愛を主軸に、息もつかせぬ2時間半にまとめた作品。
正直、私は大劇場公演の初日というものを観るのが初めてで、どのあたりにハードルをおいておけばいいのかさっぱり見当もつかないままの観劇だったのですが、、、まあ壮大な舞台稽古でしたねー(真顔)。全員がものすごく集中して、段取りを考えながら演じているのが丸わかりでしたし、静かなシーンなのに、幕裏で指示を出しているスタッフさんの声がB席にまで聴こえてきたし。
人間関係にまで踏み込んだ表現ができていた人はごくわずかで、芝居としてはあまり成立していなかったかもしれないな、というのが正直な感想です。
それでも、音楽はどれも場面のイメージを膨らませてくれる素晴らしいものでしたし、小池さんらしい大胆なセットと贅沢な人の使い方が華やかで、豪華絢爛たる衣装と共に、詰め込みすぎで重厚な作品をスピーディーに魅力的に見せてくれました。
今日は舞台稽古でしたけど、これは面白い作品になるんじゃないかな、という期待感は高いです。
本筋の展開は、「よくわかる世界史」的で、「ベルサイユのばら」「スカーレット・ピンパーネル」「愛と革命の詩」「二都物語」「トラファルガー」など、、、あまたの既存作品をそこここで思い出しながら、複雑な政治の流れが、すっきりと整理されていたと思います。
一番わかりにくいのは、ナポレオンが「革命の理想」を実現するために帝政を布かなくてはならなかった矛盾でしょうか。。。それはおそらく、「銀河英雄伝説」の原作本の他にも、いたるところで語られてきた「理想的な君主の許での君主制と、腐った民主主義(共和制)では、どちらが人を幸せにできるか」という議論において、前者を選ぼうとした結果だと思うんですよね。
そして、ナポレオンが前者を選ぶことができたのは、圧倒的な民衆の支持があったから。だとしたら、彼が選んだ道は民主主義によって選択された帝政ということになる……理想的な君主の許での君主制と、腐った民主主義と。こうしてあらためて考えると、その結論は、21世紀の今になっても、真の意味では出ていないんだな、と思います。
あと、最後のタレーラン(北翔)の選択も、観ているときは疑問に思わず観ていたのですが、いま思い返すと、なぜあえて王政復古を選んだのかな、と思ったりしました。赤児のナポレオン2世をたてて傀儡政権を樹立する手もあっただろうに……。結局のところ、なぜ彼がナポレオンを裏切るのか、彼が望んだ「理想の体制」が何なのか、は語られていないんですよね。いや、それは歴史で決まっていることなんですけど(^ ^;ゞ。
キャストは皆、まだまだ段取りに追われてる感が強くて物足りない部分も多かったのですが、その中では、ジョセフィーヌ(夢咲)の色香、6歳年上の経験豊富な未亡人で愛人、という特殊な存在感は抜群でした。
猪突猛進な若い恋人に対するとまどいと、その反動としての意地の張り方がひどくリアルで、一歩間違えれば単なる「嫌な女」になるキャラクターを、歳上ゆえの悩みに昇華し、最後の離別の歌まで持っていった手腕はさすがでした。そして、ラストの痛々しい姿……。なかなかあそこまでやれるトップ娘役はいないと思うので、ひたすら感心するばかりでした。
2番手のマルモン(紅)は、今後に期待。初日はミュラ(真風)と同格っぽい扱いに見えましたが、脚本的にはミュラよりずっと書きこまれている役だと思うので、もっともっと存在感を出して、作品全体の語り部である老マルモン(英真)につながる芝居を見せてほしい、と思います。
憧れ、心酔していたナポレオンを裏切るまでの心理について、小池さんの解釈は、名馬に乗り続ける勇気のない男だった、というものなんですね。織田信長に対する明智光秀みたいなイメージなのかな。ミュラへの嫉妬をあからさまに見せたり、結構リアルな役だなと思いました。いずれにしても、紅さんの優しさと弱さに宛書きされた、良い役だと思うので、回を重ねるごとの進化を、楽しみにしています!
逆に、初日がすごく良かったので、このまま下手に色を足さず、今の芝居を保ってもらいたいのがタレーラン(北翔)。黒幕としての存在感や悪意の見せ方など、ちょうどいい感じでした。いつもやり過ぎて自爆しているみっちゃんですが、明日からも今の調子で、周りの呼吸にあわせて芝居を組み立ててほしいなと思います。
物語が語られるのは、皇帝ナポレオン1世がエルバ島へ追放されてから17年後、1831年のウィーン。
メッテルニヒ(美城)がライヒシュタット侯フランツ(ナポレオン2世/天寿)の許へ連れてくる客人は、老マルモン(英真)。老といっても、たった17年しか経過していないので、1774年生まれの彼はまだ57歳ですが(汗)、、、まあ、とにかく、かつてのマルモン元帥。
逢ったことのない偉大な父親に憧れ、資料を読みあさるフランツに、ウィーン宮廷は決して良い顔はしないけれども、止め立てする理由もない……といった冷ややかな空気の中に、放り込まれた一つの爆弾が、語り部としての老マルモン。彼もまた、ナポレオン先輩を崇拝し、ひたすら後をついていった一人の青年だった……という語りだしが秀逸でした。世代の違う二人が、「ナポレオンへの憧れ」という感情を共有し、それぞれの視点で一人の人物を再構築しようとする。ラストに、語り終えたマルモンに問いかけるフランツの叫びが痛々しくて、切なくて。「逢ったことのない英雄」を父親に持つ皇子の苦しみを、「追いつけなかった先輩」への憧憬と悔恨と諦念のままに優しく包み込むマルモン老元帥とのやり取りが、とても印象に残りました。
フランツは、観る前に懸念していたよりはずっと出番も多く、また、単なる狂言回しではなく、物語全体の大枠を支える“物語の聴き手”でした。思ったよりずっと、演じ甲斐のある役だなあ、と。
作品にとっても、この二人の芝居は非常に重要なファクターなのですが、まあ、ダンスやセットの段取りに惑わされることがないぶん、他のメンバーよりはちょっと先を歩いている印象でした。これから、本筋のメンバーがどんどん深化していくと思うので、それをうけて彼らがどういう化学反応を起こすのか、それも楽しみです。
百周年元旦のタカラヅカ。
鏡開きではじまり、轟さん+10組のトップコンビによる口上、新作初演と、盛りだくさんで充実した一日でした。
作品もこれから面白くなりそうだし、なんというか良い新年でした(^ ^)
最後に、大事なことなのでもう一度。
宝塚百周年、明けましておめでとうございました!!
今年も、どうぞよろしくお願いいたします!
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いよいよ宝塚も百周年。その、100年に一度のおめでたい元旦初日に、はるばる遠征してまいりました!
ミレニアムの時は全国的にいろんなイベントがあって盛り上がってましたが、今回は宝塚だけで、世間一般は普通の新年なんだよね、な~んてことを思いながらも、こうして百周年という記念すべき年に宝塚ファンとして、みなさんと一緒に祝える幸運は、ありがたいことだなあとしみじみ思いました(^ ^)。
星組公演「眠れない男~ナポレオン~」は、小池さん演出、プレスギュルヴィック氏作曲の新作。ナポレオンの士官学校時代から、ロシア遠征で失敗し、1814年に巴里を同盟軍に奪われるまでを、ジョゼフィーヌとの愛を主軸に、息もつかせぬ2時間半にまとめた作品。
正直、私は大劇場公演の初日というものを観るのが初めてで、どのあたりにハードルをおいておけばいいのかさっぱり見当もつかないままの観劇だったのですが、、、まあ壮大な舞台稽古でしたねー(真顔)。全員がものすごく集中して、段取りを考えながら演じているのが丸わかりでしたし、静かなシーンなのに、幕裏で指示を出しているスタッフさんの声がB席にまで聴こえてきたし。
人間関係にまで踏み込んだ表現ができていた人はごくわずかで、芝居としてはあまり成立していなかったかもしれないな、というのが正直な感想です。
それでも、音楽はどれも場面のイメージを膨らませてくれる素晴らしいものでしたし、小池さんらしい大胆なセットと贅沢な人の使い方が華やかで、豪華絢爛たる衣装と共に、詰め込みすぎで重厚な作品をスピーディーに魅力的に見せてくれました。
今日は舞台稽古でしたけど、これは面白い作品になるんじゃないかな、という期待感は高いです。
本筋の展開は、「よくわかる世界史」的で、「ベルサイユのばら」「スカーレット・ピンパーネル」「愛と革命の詩」「二都物語」「トラファルガー」など、、、あまたの既存作品をそこここで思い出しながら、複雑な政治の流れが、すっきりと整理されていたと思います。
一番わかりにくいのは、ナポレオンが「革命の理想」を実現するために帝政を布かなくてはならなかった矛盾でしょうか。。。それはおそらく、「銀河英雄伝説」の原作本の他にも、いたるところで語られてきた「理想的な君主の許での君主制と、腐った民主主義(共和制)では、どちらが人を幸せにできるか」という議論において、前者を選ぼうとした結果だと思うんですよね。
そして、ナポレオンが前者を選ぶことができたのは、圧倒的な民衆の支持があったから。だとしたら、彼が選んだ道は民主主義によって選択された帝政ということになる……理想的な君主の許での君主制と、腐った民主主義と。こうしてあらためて考えると、その結論は、21世紀の今になっても、真の意味では出ていないんだな、と思います。
あと、最後のタレーラン(北翔)の選択も、観ているときは疑問に思わず観ていたのですが、いま思い返すと、なぜあえて王政復古を選んだのかな、と思ったりしました。赤児のナポレオン2世をたてて傀儡政権を樹立する手もあっただろうに……。結局のところ、なぜ彼がナポレオンを裏切るのか、彼が望んだ「理想の体制」が何なのか、は語られていないんですよね。いや、それは歴史で決まっていることなんですけど(^ ^;ゞ。
キャストは皆、まだまだ段取りに追われてる感が強くて物足りない部分も多かったのですが、その中では、ジョセフィーヌ(夢咲)の色香、6歳年上の経験豊富な未亡人で愛人、という特殊な存在感は抜群でした。
猪突猛進な若い恋人に対するとまどいと、その反動としての意地の張り方がひどくリアルで、一歩間違えれば単なる「嫌な女」になるキャラクターを、歳上ゆえの悩みに昇華し、最後の離別の歌まで持っていった手腕はさすがでした。そして、ラストの痛々しい姿……。なかなかあそこまでやれるトップ娘役はいないと思うので、ひたすら感心するばかりでした。
2番手のマルモン(紅)は、今後に期待。初日はミュラ(真風)と同格っぽい扱いに見えましたが、脚本的にはミュラよりずっと書きこまれている役だと思うので、もっともっと存在感を出して、作品全体の語り部である老マルモン(英真)につながる芝居を見せてほしい、と思います。
憧れ、心酔していたナポレオンを裏切るまでの心理について、小池さんの解釈は、名馬に乗り続ける勇気のない男だった、というものなんですね。織田信長に対する明智光秀みたいなイメージなのかな。ミュラへの嫉妬をあからさまに見せたり、結構リアルな役だなと思いました。いずれにしても、紅さんの優しさと弱さに宛書きされた、良い役だと思うので、回を重ねるごとの進化を、楽しみにしています!
逆に、初日がすごく良かったので、このまま下手に色を足さず、今の芝居を保ってもらいたいのがタレーラン(北翔)。黒幕としての存在感や悪意の見せ方など、ちょうどいい感じでした。いつもやり過ぎて自爆しているみっちゃんですが、明日からも今の調子で、周りの呼吸にあわせて芝居を組み立ててほしいなと思います。
物語が語られるのは、皇帝ナポレオン1世がエルバ島へ追放されてから17年後、1831年のウィーン。
メッテルニヒ(美城)がライヒシュタット侯フランツ(ナポレオン2世/天寿)の許へ連れてくる客人は、老マルモン(英真)。老といっても、たった17年しか経過していないので、1774年生まれの彼はまだ57歳ですが(汗)、、、まあ、とにかく、かつてのマルモン元帥。
逢ったことのない偉大な父親に憧れ、資料を読みあさるフランツに、ウィーン宮廷は決して良い顔はしないけれども、止め立てする理由もない……といった冷ややかな空気の中に、放り込まれた一つの爆弾が、語り部としての老マルモン。彼もまた、ナポレオン先輩を崇拝し、ひたすら後をついていった一人の青年だった……という語りだしが秀逸でした。世代の違う二人が、「ナポレオンへの憧れ」という感情を共有し、それぞれの視点で一人の人物を再構築しようとする。ラストに、語り終えたマルモンに問いかけるフランツの叫びが痛々しくて、切なくて。「逢ったことのない英雄」を父親に持つ皇子の苦しみを、「追いつけなかった先輩」への憧憬と悔恨と諦念のままに優しく包み込むマルモン老元帥とのやり取りが、とても印象に残りました。
フランツは、観る前に懸念していたよりはずっと出番も多く、また、単なる狂言回しではなく、物語全体の大枠を支える“物語の聴き手”でした。思ったよりずっと、演じ甲斐のある役だなあ、と。
作品にとっても、この二人の芝居は非常に重要なファクターなのですが、まあ、ダンスやセットの段取りに惑わされることがないぶん、他のメンバーよりはちょっと先を歩いている印象でした。これから、本筋のメンバーがどんどん深化していくと思うので、それをうけて彼らがどういう化学反応を起こすのか、それも楽しみです。
百周年元旦のタカラヅカ。
鏡開きではじまり、轟さん+10組のトップコンビによる口上、新作初演と、盛りだくさんで充実した一日でした。
作品もこれから面白くなりそうだし、なんというか良い新年でした(^ ^)
最後に、大事なことなのでもう一度。
宝塚百周年、明けましておめでとうございました!!
今年も、どうぞよろしくお願いいたします!
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