宝塚花組大劇場公演「太王四神記」を観てまいりました。



綺麗で華やかで、とても楽しかったです(はぁと)。

ドラマは観ていなくて、NHKの特集本をパラパラ読んだくらいでしたが、さすがは“潤色の天才”小池修一郎の面目躍如♪♪ 「宝塚歌劇」として実にうまくまとめてあって、原作ドラマの存在なしでも、十分アジアもののコスチュームプレイとして成立して、普通に人気作になったんじゃないかと思いました。



まとぶん(真飛聖)のタムドクは、いかにも「宝塚」の主役らしくかっこよく、コスチュームの着こなしはさすが星組仕込み。うっとりするほど美しいです。
まだ始まったばかりのせいか、ちょっと物足りないくらいの“好青年”っぷりでしたが、これから色々な感情が出て来たら面白くなりそう!



桜乃彩音ちゃんのキハは、今までに観た彩音ちゃんの中で1番ステキ。後半のしっとりと落ち着いたたたずまいと、大長老(壮ちゃん)に操られているときの奇しい目つきが素晴らしいです。衣装もよく似合ってて、舞もキレイ(はぁと)。歌もよく頑張ってました!o(^-^)o



大空祐飛さんのヨン・ホゲは、前半の明朗快活な好青年から、運命に裏切られ、天に抗しようと神器を探して北国遠征し、民を虐殺してしまう将軍まで、芝居としては「血と砂」のプルミタスみたいな美味しい美味しい役でした(*^ ^*)。
ああいう役は久しぶりでしたが、 これだけのものを見せられる役者になっていたんだなあ、と感慨深く、身震いするほど恰好良かったです。



壮一帆さんの大長老プルキルは、ものすごくおいしい悪役。実に愉しそうに演じていらして、ホント新境地だ!と感心しました。今年は久しぶりのバウ主演も控えて、充実した一年になりそうですね♪



他のメンバーもそれぞれに遣り甲斐のある役を割り振られて、楽しそうでした!
特に、88期あたりまで満遍なく役がついていたのが嬉しかったです。やっぱり座付きはこうでなくっちゃねっ(^ ^)(←「マリポーサの花」も大好きですけど何か?)




ミュージカル仕立てで若手まで役が多く、92期の真瀬(はるか)くんまでソロがあったり、アーサー(煌雅あさひ)が武道大会の進行役で良い声聞かせてくれたり、ホゲ様についた騎馬隊長の(祐澄)しゅん様がめちゃめちゃおいしかったり、(夕霧)らいらいが美中年だったり、なんかいろんな意味でおいしい公演でした!(はぁと)

長くなるので、娘役については遠征から帰ってから書きますf^_^;



3日に観たときは、91期の輝良まさとくんが休演していたらしく、フィナーレの青龍に真瀬くんが入ったりしていましたが、4日には無事復帰されて、元気そうに踊っていたことにホッとしました。
風邪がまた流行りはじめているようですが、みなさまどうぞ、体調を整えて千秋楽まで突っ走ってくださいね!!






そして。
私事ですが、本日(1月4日)は、私が月組1000days劇場公演「黒い瞳」でプガチョフの代役に必死で取り組んでいた祐飛さんに(何度目かに)落ちた日から、ちょうど10年目の記念日でした。

……あれから10年。
今、ああして本役でプガチョフにも匹敵する敵役に(苦しみつつ)取り組む祐飛さんに出会うことのできた自分の幸運を、心から嬉しく思っています。

まとぶんと一緒に回る全国ツアーで「黒い瞳」を!という夢は破れましたが、今、花組でこの作品に出会えた幸運を噛み締めつつ、次回の観劇に向けて頭を整理したいと思います(^ ^)。


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早く終わらせたいので、さくさく行きます。
花組ドラマシティ/青年館公演「銀ちゃんの恋」について。




とりあえず、どこかで書こうと思っていたんですが、この作品の時間の流れについてここでまとめておきたいと思います(最後まで書けるかわからないので)。


まず。
ヤスのアパートに小夏を連れてきたとき、小夏は『4ヶ月』でした。
で、前にもどこかで書きましたが(いっぱいありすぎて探せない…)、このとき季節は6月か7月頃。雷雨があったってことはたぶん梅雨の終わりがけ、7月頭くらいだったんじゃないかと思います。

4ヶ月ってことは16週。単純計算して、年末くらいが予定日になるのかな?


このあと、ヤスが仕事を探して…それなりに稼いだりアレコレしているうちに1ヶ月くらいは軽く過ぎるでしょう。
で、8月頭くらいにプールサイドテラスの対決があって、その日に帰ってきてプロポーズ。
お盆には人吉に帰る、と。
はるばる九州まで行くんだから、安定期の5ヶ月か6ヶ月くらい。7月頭に4ヶ月だったとしたらだいたい妥当なセンですね。で、そこで挨拶したときはまだお腹はちいさかった訳で。

ところで、
…人吉の盆は旧盆でいいですよね?

#昔住んでいた九州の某地域では、七夕は旧暦(8月7日)にやるけど盆は新暦(7月)だったんですよねー。あれは結構不思議でした。




一幕ラストに撮影所で会ったときは、えらく腹がでかいんですけど、まだ結婚式前。
カレンダーも翌年のミュージカルの計画もだいたい決まって、でもまだ外部への発表前、な感じ。……ってことは、8月末か9月頃?と思ったのですが。衣装的にはあまり残暑厳しい頃っぽくないし、小夏の腹も随分育っているので、10月に入ってすぐくらいかな?と。(適当ですが)
初産であの大きさってことは、8ヶ月くらい…?とか思ってしまいましたが、せいぜい7ヶ月ちょいってとこか。個人差なのかな。


……そういえば、このとき小夏は撮影所に何しに来たんでしょうかねぇ?監督たちに挨拶でもしにきたのか?



腹帯を貰ったのは結婚式の後なんですよね。「結婚式の御礼にご馳走を」みたいなこと言ってたし。
ってことは、結婚式が10月の大安吉日。その翌週か翌々週くらいに挨拶兼ねて差し入れに、って感じ?となると10月後半か11月頭。そのとき小夏は、8ヶ月を過ぎたくらい。
帯祝いは普通5ヶ月目だと思っていたのですが、9ヶ月目って地域もあるみたいだし、いろいろなんでしょうか。小夏はたしか群馬の出身だから……(←わかりません)

同じ頃、ヤスは「階段落ちやります」と言って銀ちゃんと気まずくなってる。

ただし、それを言った時点で、すでにヤスは
「最近、立ち回りの時も全然本気で斬りかかってくれないし」
と拗ねているので、銀ちゃんの態度が変わったのは一幕ラストの小夏とのやり取りから、なのでしょうね。
あの会話で、銀ちゃんは「ヤスに預けておいた」だけのつもりだった小夏が、もう戻ってこないことを知り、そうしてヤスが自分の腕の中から飛び立とうとしていることに気づいてしまった…。
もう、気安く殴ったり蹴ったりしてはいけないのかもしれない、と。ほんのちょびっとだけ、そう思っている。その遠慮(?)を、ヤスは見逃さない。ヤスにはヤスのわだかまりがあって、ある意味銀ちゃんに殴られないと、そのわだかまりが綻びない。ヤスにとっては、銀ちゃんに殴られない=殴られる距離にいられなくなった、ということだから。

そんな微妙なバランスの、細い細いライン上を歩く二人。まるでフィギュアスケートのコンパルソリのように、決められたラインを一ミリでも外れたら失格になると思っているかのように。



そんな、銀ちゃんとヤスの間がこじれて、すれ違っている時間が、1ヵ月半くらい。
ここは、場面的にはまったくの空白です。焼肉屋の時期は、明示されていないけども階段落ち前夜と考えて問題はなさそうだし。

で、階段落ち前夜。コタツも出ているし、あからさまに真冬。テーブルの上の可愛いラスカル(←嫌味ですかソレは)とか、もしかしてクリスマスの翌日とかですか?と思ったりしました。
ヤスが「銀ちゃんに似てるからつい買っちまったんだよ…」とか言って小夏にプレゼントしたのよきっと♪(←無いから)


で、この時はもう「今にも生まれそう」な感じ。
ほぼ予定日っぽいので、小夏がヤスのアパートに連れていかれてから、約5ヵ月半(24週)が過ぎていると思っていて間違いなさそう。
とりあえず、気忙しい年の瀬、なんですよね、多分。

二人が一緒に暮らし始めて、半年弱。

小夏が選んだのは、五年を共に過ごした「スタァ」ではなく、「傍に居てくれる人」だったはずなのに、
ヤスも飛んでいってしまうのだ、と、

……男とは、決していつまでも傍に居てはくれない“いきもの”なのだ、と……。







ってなところで、舞台に戻ります。

第十四場D 生命保険

上下から塀のセットが出てきて、立ち竦むスターを隠す。
と、袖から登場する小夏と、銀ちゃん組の大部屋3人、そして、保険屋(紫陽レネ)。

紫陽さんのお芝居、ドラマシティの最初の頃は空回りしていたりしたところもありましたが、後半から青年館にかけて本当によくなっていったのが印象的でした。
橘のマネージャー、「ししとう」のバーテン、保険屋、池田屋……どれも一人の人が演じているとは思えない多彩な役作りはさすが!!石田さんの信頼篤い名役者、って感じでしたよね♪
特にこの保険屋は、身体能力の高さもしっかりアピールしてくれて(笑)、毎回“今回は何回転するのかなっ!?”と楽しみにしておりました。

マメちゃん・さあやと同期では色んな意味で役を勝ち取るのが大変そうですが、楽しみな役者さんで嬉しかったです。太王四神記では、どんな役どころにいらっしゃるのかなあ~(^ ^)
最後の引っ込みでの「ハンコくだささいぃぃぃ~」という声というか言い方がめちゃめちゃ好きでした☆

もちろん、容赦なく突っ込みまくって足をひっつかんで無碍に引っ張っていくマコトの男らしさも大好きです(^ ^)一期下とは思えない遠慮のなさが、とってもステキ☆





第十五場 回想

「俺と銀ちゃんが出会ったのは、もう10年も前のことだ…」

塀の陰から姿を現したヤスが、野球帽を被りながら語りだす。
帽子を被ると10年前、脱ぐと今、という(一応)設定らしいのですが……うーん、もう少し芝居(声とか仕草とか)で10年前になってほしかったなーと思ったりはしました。
あまり大きな動きがない場面なので、難しいんだろうなと思いますが。

もう“いっぱしのスタァ”だった銀ちゃんと、そのファンの会話、なのかな、あれは。
それとも、ヤス自身何かスタッフとして撮影所の中に入ってたとかなのでしょうか?

「へぇー、おめぇ大学出て舞台やってんのか」
「はい!新劇です。チェーホフとか、赤毛ものを」
「そぉか!だからおめぇ、華がねぇんだよ!」


………(無言)。…ま、わからんでもないですが。

銀ちゃんの言いたいことは、多分「良い映画にはスタァが必要である」ってことなんでしょうね。
映画は映像ですから(もちろん)、観方が限定されます。フレームの中におさまったものしか伝えられないわけですし、もともと2次元で完成された映画は、その製作者が意図した見え方しか、基本的にはできないものです。

だから、“華”のある役者が一人居れば、それだけで画面がキまるわけで。
まずはそれがないと、どんなに脚本がよくても芝居が良くても、「映像」が良くなければ価値がないわけです。だって、その映像しか存在しないんだから。

でも、舞台はそもそもが3次元だから、映像と違い、見え方を製作者(演出家)が完全にコントロールすることは不可能なわけで。逆にいえば、「映像」としての完成度というのは全く要求されないわけです。
しかも、映像の片隅でいくら小芝居しても、フレームを外してしまえば観客に見せないでおく(あるいは撮り直すとか)ことができますが、舞台の片隅の小芝居は、ナマだから止めることもできないし、やりすぎれば舞台全体を壊してしまうことも可能。


でも。
舞台に狎れてしまえば、“映像向き”の華やかさ、目を惹く力といったものが薄れてしまうのは確かなのかもしれません。舞台の空気を動かすことと、映像で目を惹く華は、同じように見えて全く違うものですから。

両方を兼ね備えた稀有なスタァは、確かに存在しますけれども。
それは決して、多数派ではあり得ない。



それに気づいたとき、ヤスは銀ちゃんの歩く道を追いかけてみたい、と思う。
どんな道を往くのか、純粋な好奇心、で。

自分自身の運命の岐路の、一方を選んでしまったのだと、この時は気づかずに。

そして、10年後たっても尚、その選択を悔やむことはなかった……。



ここで。
「大学出のインテリ役者」だったヤスと、すでに「“若手スター”の一人」だった銀ちゃんが、ほぼ同い年なのは、大事なことではないんでしょうね、きっと。

精神的には、どっちも子供だったんですから。




ヤスは、終始この作品の事実上の主役(の片割れ)として舞台に立ちます。
物語は常に小夏とヤスの視点で語られ、結果として銀ちゃんという一つの容を描き出す。
銀ちゃんという「理不尽で酷いモノ」、人外の暴力的な存在を描き出すことで、その“嵐”に依存せずにはいられない弱い人間を描き出す物語だから。

だから。

ヤスという平凡な男、普通に大学を出て、趣味の芝居を楽しみつつサラリーマンをするはずだった男から“平凡な幸せ”を奪い、狂わせたのは、銀ちゃんという悪魔だった、と。
銀ちゃんと出会ったことで、ヤスの人生は“平凡”ではなくなった。
彼の無意味だった人生が、そこではじめて意味を持つのかもしれない。



倉丘銀四郎はナチュラルに悪魔だから、悪意はない。
そう。悪魔に悪意はないのです。
彼はただ、ヤスの幸せを祈っているだけ。
小夏に幸せになってほしいだけ。

それが、二人にとって迷惑以外のなにものでもなかったとしても、
そこにあるのは常に「愛」であり、「祈り」でもあった。
だからこそ銀ちゃんとヤスは、離れられない。

俺のものは銀ちゃんのもの。
両手いっぱいに宝を抱えたままで、天国の門をくぐることはできないから。
その全ての“価値あるもの”を、銀ちゃんに捧げたい。
その、依存。
銀ちゃんに渡したから、もう大丈夫、という依存。執着。

そして。
ヤスのものは俺のもの。
ヤスの全てを捧げられて、その全てを受け取らなくてはならないプレッシャー。
それでも、ヤスが捧げてくれるから自分でいられる、という依存。
ヤスがいなくては、自分の存在を確認できない、執着。


それでもヤスは、一歩を踏み出そうとする。
10年間守られてきた腕を振り払い、新しい一歩を踏み出そうとする。
好奇心に負けた10年前から、一歩も成長しなかった、成長することを拒否していた男が、
久しぶりに一歩を踏み出そうとする。


小夏のため、ではなくて、


……ただ、銀ちゃんのため、
銀ちゃんのためだけ、に……





今年のお正月は、我ながらびっくりするほどの寝正月です(笑)。
元旦の一日、たぶん3時間くらいしか起きてなかった気がする。寝る前に初詣に行って、寝て、起きて餅焼いて喰って、寝て、起きて雑煮作って喰って、寝て、起きたらもう二日でした(^ ^;ゞ。

寝る子は育つ。
…でも、もう私、これ以上育たなくっていいんだけどな……。
(普段から朝食抜きなのに、朝バナナダイエットを始めて太ってしまった)(←当たり前)






というわけで(←だから何が!?)
花組ドラマシティ&青年館公演「銀ちゃんの恋」より

第十四場C すれ違う心

…今頃知ったのですが、「第十四場」って長いんですね。小夏のソロから生命保険までで一場なのか…。
塀の前⇒上手側に座敷(大部屋)のセット⇒下手側に店のセット⇒平場⇒また塀の前、と、セットもコロコロ変わるのに。

銀ちゃんとヤスのラヴシーン(←ラヴ言うな)の印象が強すぎて、そこだけ独立した場だとばかり思っていたのすが、場面の中のワンカットに過ぎなかったのか……愕。





差し入れを持ってきた小夏を置いて、席を立つヤス。
ヤスの背後で、お祝いの腹帯を贈る大部屋の仲間たち。やさしいまなざしで小夏の腹のあたりを見つめるトメさん、ちょっと気恥ずかしげに上目遣いで美しい“元女優”を見るマコト、そして、身体全体から憧れの気持ちダダ漏れでキラキラしているジミー。

幸せな、幸せな、…“擬似家族”の団欒風景。


その全てに背を向けて、ヤスは歩き出す。
流れるBGMが、小夏の幸せのソロのメロディから、なめらかにヤスの「映画の夢」へとつながっていくのが泣けました。

♪そんな夢を今も視るよ
♪幼いあの日の思い出のカケラを

彼の心にこだまする声は、ひとつだけ。
『せめて階段落ちがありゃあ…』

♪破れかけた町のポスターに
♪胸ふくらませた あの頃

ヤスにとっての、“すべて”だった銀ちゃん。
自分の人生を彩るポスターの中で、唯一のフルカラーの存在だった、銀ちゃん。

ヤスのすべては銀ちゃんのもの。
“銀ちゃんのためなら、俺は……”

それは決して犠牲心ではなくて。
犠牲だとは想っていないから、譲れない。絶対に。
銀ちゃんを守るのは、俺だ。その役だけは、絶対に誰にも譲らない。
…譲れ、ない。



小夏はヤスを選んだのに。
泣いて、喚いて、それでもヤスを選んだのに。

なのに、ヤスは小夏を選ばない。


ヤスの銀ちゃんへの“憧れ”、ひたすらに純粋な憧憬だったはずの想いが執着に変わったのは、たぶん、一幕ラストの銀ちゃんと小夏の会話を聞いてしまったとき、だったんだろうな。

憧れの小夏と一緒に暮らせることに有頂天になって。
必死で仕事を探して、傷だらけになってもがんばって。
小夏を愛している。心の底から。

たぶん、全てを懸けてもいいほどに。

なのに、
……銀ちゃんへの想いだけは譲れなかった……。




みつるくんが、花組版「銀ちゃんの恋」のヤスをどういう解釈で演じていらっしゃるのか、真実のところはわかりませんが。
なんとなーく、10年間ずーっと大部屋のつもりだったのかもなぁ、と思いました。主演経験がある、スターだった過去がある、っていう感じがしなかったので(←ごめんねみつる)

彼は、自分が美形でもスターでもないことを、負い目には思っていないような気がしたから。

「お客さん、こんな顔、見たがります?」
という自己突っ込みは、若い頃には色々あったのかもしれませんが、今はもう、それほどこだわっていないんじゃないかな、と。
もちろん、自己の全てを肯定するわけではないんですけれども、それよりも、みつるのヤスが持つ狂気は「銀ちゃんと俺は同じモノを見ているんだ」という確信だったような気がするのです。

“大人”の人間関係を結ぶことを、ハナから放棄していた二人。
思いの丈をぶつけて、殴り、殴られることでお互いの気持ちを確認しあっていた、ふたり。

そこに言葉はいらなかった。
言葉なんてなくても、俺たちは同じ思いを持って、それぞれの立場で戦っているはずだった。


大部屋とスタァ、当たる光の量は違っても、抱く夢が同じなら。
同じだから大丈夫、そう、信じてた-----。





物思いにふけって立ち止まっていたヤスが歩き出すと、
下手側の建物のセットから、監督と助監督が出てくる。

この二人の小芝居、大好きでした(はぁと)。観るたびに違ってて、
監督が助監督を叱りつけながら歩いてきたり、
セットを料亭か何かに見立てたらしく、鈴木が監督に奢ってもらった(多分)お礼を言いながら出てきたり、
監督が手真似で新しい作品のイメージ(多分)を語っていたり…

仲良さそうなお二人が、息ぴったりで楽しそうだったんですよね。
ちあき(白鳥かすが)がホントに楽しそうで、ああいう役が最後にやれて幸せだったろうなと思いました。
今頃ちあきはどうしているのでしょうか…。
近況をご存知の方がいらっしゃいましたら、是非教えてくださいませm(_ _)m。






立ち話している監督と助監督に、近づいていくヤス。

「俺に、階段落ちやらせてください!」

この映画、絶対ヒットさせたいんです!という必死の訴えに驚いて、しばらく固まっている監督。おろおろと二人を見比べる鈴木(助監督)。

「調子に乗るなこの莫迦!ホンモノのスタントマンでもないくせにっ!」

大道寺の罵声が、空間を満たす。

「お前死ぬんだよ!?よくて、半身不随になるんだよっ!!」

なんなら、俺、一筆書きますから、というヤスに、一番驚いたのは、多分鈴木だったと思います。

「本気なんだな!?」
「そんなぁ、監督ぅっ!」

止めようとする鈴木。でも止まらない。
映画に命を懸けているのは、ヤスだけじゃない。大道寺だって、それに多分、鈴木だって、同じ穴の狢だ。だから、止められるハズが、ない。

「よしわかった。撮影当日は、お前が主役だ。橘でも、銀ちゃんでもありゃしねぇ」

殺し文句を吐く監督を、おろおろと、でも諦めの入った眼で鈴木が視る。
人一人殺すのは、この人じゃない。他人事じゃないーーー俺も、殺すんだ、と、
その覚悟が未だ定まらない、気弱な瞳。




舞台に走る緊張を解す、橘一党の登場。
監督と助監督とヤスの、今の会話を聞いていたらしい。

「階段落ちなんて猿芝居で主役を獲られていいのか!?」

坂本竜馬なのに、どーして大部屋に負けるんだ!?という衝撃。スターらしくてかっこいいなあ、めおちゃん。喉を痛めた人の多いなか、めおちゃんの台詞の聞きやすさは快感でもありました(^ ^)。

「天井落ちでも、楽屋落ちでも、駆け落ちでも、なんでもいい!階段落ちより派手な手を考えろ~~!!」

と怒りまくる橘。スターってのはどこも我侭で感情的なものなんだなあ……(汗)

「この際、5人言わんと10人ほどまとめて殺したったらどうです?」

という輝良くんの突っ込みが結構好きでした。で、間髪いれずに応じる橘の

「馬鹿野郎!おめえらが全員死んじまったらいったい俺の面倒は誰が見るんだ~っ!!」

という悲鳴のような訴えと、「もう、ホント莫迦ばっか!!」とぷんぷんしながら袖に消えていく姿に、惚れまくりです(*^ ^*)。

橘を見送って、ちょっと呆然とする一党。嶺乃一真くんの

「殺すって…」

に対して、可愛らしく小首をかしげて応じる初輝よしやくんの

「ワテらのことかいな」

という一言が、とってもとっても好きでした(はぁと)。可愛い声ですよね。かなりのアニメ声だけど、この台詞のトボけた味は、ぴったりでした(^ ^)。
あーあ、ちあきもよしやくんも、もう居ないんだなあ……(しみじみ)








橘一党がハケると、セットの無い平場に銀ちゃんが登場。
追いかけるように、「銀ちゃ~ん!」と叫びながらヤスが登場。

この場面、初演のビデオを観たときはあまり印象に残らなかったのですが、
…再演花組版では、この場面が一番印象的だったかも(滝汗)。


「なんで引き受けた」「…俺のためにか」

地を這うような、銀ちゃんの極低音。
“鳩が豆鉄砲くらったような”ぽかんとした顔で長身の銀ちゃんを見上げるヤスが、無茶苦茶可愛い(はぁと)

「どうしたんです?銀ちゃん、喜んでくれないんですか?」

本気で、“銀ちゃんは喜んでくれる”と思い込んでいる、子供っぽい笑顔。

「…俺を、人殺しにするのか?」

搾り出すような銀ちゃんの声。
喉を痛めてかすれた祐飛さんの声が、このときばかりは“銀ちゃん”の哀しさを溢れさせる。

「お前から救いの手差し伸べられて、この映画がヒットして、」

紡ぐ言葉が、銀ちゃん自身を傷つける。
自傷に奔る銀ちゃんを、留められない、留めるすべを持たないヤスの、切ない瞳。

「…俺のプライドはどうなる?」

この台詞だけは、言いたくなかった。
この台詞だけは、言わせたくなかった。
驚いたように目を見開いて銀ちゃんを見上げて、そして、思わず目を逸らす、ヤス。

「俺が死んだら、銀ちゃんは小夏さんとよりを戻して」
「ばっかやろう!」

視線を合わせないヤスに焦れて、襲い掛かるようにヤスの胸倉を掴み挙げる銀ちゃん。
BGMに流れ出す、「蒲田行進曲」。

「どうしたんです?銀ちゃん。喜んでくれないんですか?」

宥めるような、ヤスの声。
ギリギリと歯を食いしばって、ヤスを絞り上げる腕に力を篭める、銀ちゃん。

「俺はおめぇから憐れみを受けるほど落ちぶれちゃいねぇんだよ!」

一息に吐き出して、拳をあげる。
ヤスの鼻先ギリギリで腕を止めて、やっと自分に戻ってきたヤスの視線の強さに、微かにたじろぐ。

「銀ちゃん。…どうして殴ってくれないんですか。どうしていつものようにぶっ叩いてくれないんですか。どうして…」

壊れたレコードのように「どうして」を繰り返すヤスを、投げ捨てるように手を離して、今度は銀ちゃんが目を逸らす。

「最近、立ち回りの時も全然本気で斬りかかってくれないしっ!?」

捨てられた女のように銀ちゃんをなじる、ヤス。

「ねぇ銀ちゃんっ!!」

責めるように掴みかかってくるヤスを、難なく捕えて身体ごと抱きとめる銀四郎。
ぎゅっ、と、まるで、もう二度と離すまいとするかのように、強く。
抱きとめられたヤスも、さっきまでの興奮が嘘のように、おとなしくその腕の中に囚われて。

凄まじい緊張を秘めたまま、メドゥーサに睨まれた恋人たちの彫像のように、動きを止めた二人。

「おめぇが死んだら」

ふ、と、ヤスの耳元に唇をよせて囁く低い声。
まるで、ハネムーンの甘い睦言のように。

「おめぇが死んだら、俺はいったい、誰をいじめりゃいんだよ…」

殺し文句というのは、人によってイロイロなんだな、と思いました。
こういう台詞が“殺し文句”になる倉丘銀四郎というスター、というか。
こういう台詞を“究極のキメ台詞”として口にできる大空祐飛という役者、というか。
あるいは、こういう台詞でコマされてしまうヤス、というか……

この場面にいたっても、まだ何一つ本音を吐かずに嘘ばかりの銀四郎と、嘘だと知っていてもその嘘に身を委ねてしまうヤスの、
その「本音」と「嘘」のバランスが秀逸すぎて。

祐飛さんなのか銀ちゃんなのか、ヤスなのかみつるくんなのか、わからなくなるほどの、緊迫感。




それにしても。
ドラマシティの最初に観たときは、そんな場面じゃなかったはずなのに、知らないうちに随分解釈が変わっていて、後半に遠征したときには完全に“ラヴシーン”としか言いようの無い場面になっていたことに驚きました(^ ^;ゞ
ナニかあったんですかあの二人。正視に堪えないほど切ない場面(←何か日本語の選択を間違えているような気がします)になっていたんですけど。




作劇上、この二人が本気で言葉を交わすのはココだけなんですよね。
ヤスのアパート(小夏を連れて来たとき)や焼肉屋では、銀ちゃんが一方的にヤスを責めるばかりだし。一幕ラストは会ってないし、回想シーンの銀ちゃんは思いっきりフィルターかかってるし。

銀ちゃんの語る言葉はここでも嘘ばかりなんだけど、あのヤスを抱きしめる腕の強さは嘘じゃない。このまま絡めとって自分の傍においておきたい、と、多分本気で思っている。

「どうして俺の気持ちがわからねぇんだ」
「俺とお前の関係は、そんなんじゃねぇんだよ…」

ほとんど泣き声にしか聴こえないのに、睦言は続く。
ヤスの心をとろかして、自分のところに戻らせようという、甘い罠。
ヤスのものは俺のもの。ヤスが差し出してくれるものなんか、いらない。ヤスが差し出さないものこそが、ほしい。
ヤス自身、自分が持っていることを知らないもの、が。

子供のような独占欲と、上に立つ“スター”としての見識。
ヤスが成長して、どこかへ行ってしまうことが怖い。

ただただ、今の今まで自分の腕の中にあったものを喪うことが怖いだけ。

言葉にすることはなくても、ヤスと同じ夢を追ってきた銀ちゃん。
いつの頃からか、ヤスの夢が自分の夢になっていた。
ヤスの語る自分でいなくてはならない、ヤスの夢見る自分であらねばならないという、重たいプレッシャー。
もちろん、そんなものに負けるつもりは、ない。自分は自分なのだから。

それでも。
ヤスの夢と、自分の夢。
区別がつかない程度には、お互いに依存していた、ふたり。



…そっと、銀ちゃんの暖かな腕から逃れ出るヤス。

「俺、もう後にはひけねぇっす」

俺だって役者ですから、と。
たった一度、観衆の前に立った快感が忘れられない、と。


必死で言い募る。
銀ちゃんが言った。「女も、役も、自分で獲ってこい!」と。
だから。


小夏が銀ちゃんを選ぶなら(←勘違い。小夏はヤスを選んでる)、
銀ちゃんが小夏を選ぶなら(←これは?)。

ならば俺は、銀ちゃんが望む自分になろう。
なってみせる。必ず。

「その日は、銀ちゃんじゃなくて、俺が、主役…です」

その言葉の重みに、銀ちゃんが目を伏せる。

「てめぇ。俺の許可なく、勝手に成長しやがって…」

すれ違う、二人の心。

「消えろ」

触れ合わない心。

「蒲田行進曲」の音楽が止まる。
無音の舞台に、ただひとり立つ、スター。



「おめぇも去っていくのか。ヤス…」



とてつもなく素晴らしい、大馬鹿野郎が、と。



涙も見せず、
泣きもせずに立ち竦む、



彼こそが。
子供で、大人で、たったひとりのスターなのだ、と。


たったひとりで歩かなくてはならない、孤独なスターなのだ、と……





今年も残すところあと一日。
本当に早いですねー!年を取ると時間が早く過ぎる、っていうのは本当なんだなあ。
「君を愛してる/ミロワール」&「ホフマン」を観に遠征したのも、ついこの間のような気がするのに。


宝塚作品のベストはこないだ一通りあげたので、年末LASTにはそれ以外で心に残ったものを……と思っていたのですが。
あれこれ思い返してみても、去年の「Confidant -絆-」みたいな、圧倒的にこれ!という作品が思いつかないなあ……。観たかったけど観られなかった作品も多いし。

とりあえず、初演ものでは「ウェディングシンガー」と「きみがいた時間 ぼくのいく時間」…かな?「Duet」も楽しかったけど、あれは作品というよりキャスティングが嬉しかったのが比重高いし。

コンサート形式の作品では、やはり梅田の「ウィーンミュージカルコンサート」と玉野さんの「CLUB SEVEN」。……石井一孝さんのコンサート(ゲスト・樹里)も最高だったし、「SHOWTUNE」も楽しかったけど。でも、やっぱり「ウィーン」と「CLUB SEVEN」は別格です☆

再演ものでは、まずTSの「タン・ビエットの唄」「AKURO」の二作品。後者は自分的には初演ですが、練り直したからこその完成度もあったようなので、あえてこちらに。
あとは「RENT」ですね。今年は忙しくて東宝ミュージカルはほとんど観なかったのですが、これだけは当日券いれて3回観ました。作品の力が素晴らしいのは当然としても、スタッフワークが良かったのが嬉しいです。正直、東宝上演ということであまり期待をしていなかったのですが、自分の思い込みに呆れています。ごめんなさい。



2008年最後の観劇は、銀河劇場の「GIFT」でした。
宝塚オリジナル作品「君を愛してる」&「ホフマン」で始まった2008年。日本のオリジナルミュージカルの佳品で締めくくれて、幸せな一年でした☆










さて。
宝塚の誇る名作「銀ちゃんの恋」花組再演版、まだまだ終わらないのですが(滝汗)。
これだけはなんとか最後まで書きたいなーと思っているので、もう少し(←いや少しじゃねーだろ)おつきあいくださいませ。



二幕冒頭 結婚式
結婚行進曲が高らかに鳴り響く中、ヤスと小夏の結婚式が始まる。

「小階段」を降りてくるヤスと小夏。この作品中、唯一の“格好良い服”、白いタキシードに身を包んだヤス。おずおずとウェディングドレスの小夏の手を握り、ドキドキしながら降りてくるその風情がたまりません。
平場で二人を迎えるのは、ほぼ関係者全員。さすがに朋子さんとか橘とかはいないけど、撮影所のメンバーも人吉の関係者もみんな揃っているので、なかなか華やかです。男泣きに涙をぬぐっているトメさん(日向燦)が素晴らしい。涙をぬぐう合間に振りをこなしてましたね(笑)。そんなトメさんをそっと見守っているっぽかったマコト(夕霧らい)の優しい笑顔が好きです。ヤスを見て、ちょっとハンカチで目元を押さえている専務(眉月凰)もダンディでステキ。そして、若い男を次から次と手玉に取っていた(ように見えた)秘書(初姫さあや)が、もう本当に最高でした。

しかーし。
そんなおままごとのような結婚式も、「誓いのキスを」のあたりで闖入者が登場。
小階段を堂々と降りてくる、銀ちゃん。

音楽が「卒業」のそれに変わるあたりは、石田さん細かいなーと思うのですが。
…でも、場面的にヤスが主役なのに「卒業」なんだ……という違和感もあったりする(^ ^;ゞ

まぁそんなことはどうでもよくて、とにかく、“銀ちゃん”の巨きさと格の違いをものすごく見せ付けた場面でしたね。体格の違いもあるんですけど、それだけじゃない。最初はヤスに助けを求めていた小夏が、あっさり堕ちるのも当然、という迫力。
この“立っているだけで”「周りの小物とは違うんだ」と思わせる迫力がないと、「銀ちゃん」としては失格なんだなーと思うんですよね。
そして、大空祐飛の銀ちゃんは、この作品全体を通じて、一回も周りに同化したことがなかった。
もちろん、衣装のぶっ飛び具合とか、照明とか、そういう演出面のフォローも大きかったですけど(ありがとう石田さん)、大空祐飛自身の醸し出した空気であり、そして、それを受けた野々すみ花&華形ひかるの役者ぶりのバランスが素晴らしかったと思うのです。


そして、ヤス。

この場面は、ヤスの妄想です。途中までは実際の結婚式でもいいのですが、銀ちゃんが降りてくるところからは、全部妄想。
銀ちゃんが降りてきて、招待客たちがハケる。小夏を口説いて連れ去ろうとする銀ちゃん。
最初は抵抗してヤスに助けを求めていたのに、最後には銀ちゃんの口づけを受け入れ、肩を抱かれて去っていく小夏。
小夏にしがみついて引き止めようとしながら、留められないヤスが哀れでした。


「真っ白なウェディングドレスに身を包んだあたしと」

「パリッとタキシードを着た、
                        ……俺が、いるんだ」


それでも。
真実の(今回のすみ花ちゃんの)小夏は、一幕ラストで、ちゃんとヤスを選んだのに、
泣きながら、引き裂かれる痛みを感じながら、それでも確かに、ヤスを選んだのに、

なのに、それを全く信じていない、ヤス。


ドラマシティではまだ迷いがあった小夏も、青年館になると一幕ラストできっぱりとヤスを選ぶようになっていたので。ホント、この場面を観るたび、小夏モードで「なんでわかんないのよヤス!?」と胸倉つかんで揺さぶりたい気持ちになってしまいましたわ私。

「蒲田」的には、それで本当に良かったのかどうか、それはよくわかりませんが。
今回の“再演版”「銀ちゃんの恋」は、根本的にそういう解釈で作品として矛盾なく組みあがっていたので、私的にはなんら疑問はございません(^ ^)。

……ヤスを選んだ(選ばざるをえなかった)小夏の真情を思うと、痛さに涙が出るのですが。






銀ちゃんが登場して、いったんハケた列席者たちは、銀ちゃんと小夏が肩を組んでハケた前後に仮面を被って再登場してきます。
石田作品は、いつもこういうコロスのイメージダンスを巧く使った場面がありますよね。「黎明」の群青とか、「殉情」の夜叉とか、「猛き黄金の国」の三菱ダンサーズとか。私はどれも印象的で好きなのですが、この「銀ちゃん」の結婚式の仮面ダンスもすごく好きです。
(ちなみに、初演では今回みたいな仮面ではなく、ヤスと小夏のお面をつけていたハズ…)

ヤスの“苦悩”のダンスがイロっぽくて好き。そして、ヤスの前をあっさりと通り過ぎる邦さんの“別世界感”がさすがでした。

上手ですごくキレイに踊っていたのは、輝良くんでしょうか?違うかな?
仮面を被っていてもすぐわかる、玉美(月野姫花)の髪型が可愛い(笑)。
なんと言っても笑ったのは、仮面の上から眼鏡をかけていた二人(マコト&秘書)!!ラストのキメで仮面が集まってキメるとき、眼鏡の仮面が二人いたのがめっちゃおかしかったです。はい。




すーっ、と、足音もなくヤスの視界を横切る母親。
反射的に母を追うヤス。
でも、動けない。

足元に絡みつく、「しがらみ」という名のナニカ。
仮面のダンスにあおられるように、十三段階段を登りはじめる。
よろよろと、
…いいえ、フラフラと。




十三段階段の一番上で、ヤスを待つロープ。

首吊りの、輪。




階段の下で、退路をふさぐようにより集まって止まる、仮面たち。
振り返ったヤスの、絶望に満ちた、瞳。

「ぎんちゃん…」と、声にはならないままに唇だけが動いて。








第十四場 塀の前~大部屋の座敷

場面がキまってライトが落ちると、舞台前面にいつもの「撮影所の塀」が出てきて場面転換。
そういえば。この塀に張ってあるポスターや広告が、ひとつづつ取り上げて話題にしたいほど面白かったのですが、その話書きましたっけ…?(←完全に記憶に無い)
一番笑ったのは「ギンチョール」だったんですけど、この場面には貼ってあったっけかなー。



上手の袖から小夏が登場。
大きなお腹を抱えて辛そうに歩きながら、「し・あ・わ・せ~~♪」と歌う、本当に幸せそうな小夏。

とにかく可愛くて、自分の幸せに不安の欠片も無い、小夏。
無理はしてない。心のままに、
「あのひとはかっこよくなーい、ハンサムじゃなーいけーど♪」
と、心の底からの笑顔で歌ってのける、その、幸せのオーラ。

「臨月近い妊婦」としての歩き方、という基本的な技術面の巧さもさすがなのですが、それ以上に、妊婦さんが“辛そうに、だけど幸せそうに”歩き、段を上がり、座る…という一連の動作を、ホンモノにしか見えないくらい雰囲気を出して演じていたのが凄いです。
そう。妊婦さんは、一つ一つの動作が何もかも“大変そう”なのに、その“大変”さがイコール“幸せ”で、花吹雪のように「幸せオーラ」を振り撒くんですよね。
それを舞台の上で再現してみせたすみ花ちゃんは、やっぱり天才なのかなーと思ったりします。



前にも書いたような気がしますが、すみ花ちゃんの小夏の可愛らしさは、まさに“ガラス箱にいれて台の上に飾っておきたいような可愛らしさ”でした♪
現実に存在するとは思えない、ファンタジックな可愛らしさ。

普通の女としての幸せに浸りきった、「元スター」の輝きが見事でした。




ヤスの妄想の中で行われた結婚式の花嫁と違い、この場面で歌っている小夏は、すごくリアルです。

リアルなのに、ファンタジック。
ファンタジーの中にだけ存在し得る、リアル。
これこそが『宝塚のリアル』の真骨頂なんじゃないか、と。
そんなことを大上段に考えてしまったくらい、この場面の小夏は印象的でした。






塀が切れて、撮影所の中に入ろうとするところで、スタッフの徳子(梅咲衣舞)と島子(瞳ゆゆ)に遭遇。
「水原小夏ともあろう女優が、ヤスさんみたいな大部屋と…」
「あんた変わったなあ」
と言われて、幸せそうに微笑む小夏。

本当に変わったよね、1時間前に比べて(^ ^)……と素直に思ってしまいます。


今は大きなお腹を抱えて差し入れを持って来ているけど、
あと3年くらい経ったら、よちよち歩きの子供の手をひいて、また差し入れを持ってくるんだよね、と、
そんな情景が容易に目に浮かぶ。

一幕があいてすぐの場面で、きわどい衣装でお弁当を持って現れる不自然さも見事だったけど、あれはむしろあの衣装が違和感があっただけで、すみ花ちゃんの小夏の中身は、かいがいしくお弁当を作る姿がいかにも似合いそう。


風花舞嬢の小夏は、どこか(私の気のせいかもしれませんが)「このお弁当を作るために徹夜したの。この手弁当で、絶対銀ちゃんの心を取り戻してみせる!」とか言い出しそうな迫力というか、思いつめた感じがありました。
あのショー用の派手な衣装が当たり前で、持っているお弁当の方に違和感があったんですよね。
また、そういう執念じみたものから逃げ出したい久世さんの銀ちゃんが、いかにもいかにも、で…。


すみ花ちゃんの小夏は、お弁当を作るのは習慣で、「今日も作っちゃった……」という諦めにも似た思いがあって。でも作っちゃったから持ってきた、みたいな空気を感じたのですが。
お掃除も洗濯も完璧にこなして、手の込んだ手料理の飾りとして“タコさんウインナ”とか“うさぎさんリンゴ”を笑顔で作って、それ自体が楽しい、タコさんウインナを見て喜ぶであろう銀ちゃんの笑顔を想像するだけで幸せ、という、そんな感じ。
そして、いかにもそういうものを喜びそうな子供っぽい大空銀ちゃん、という組み合わせが秀逸でした。


組み合わせの妙、という言葉は、この作品のためにあるんじゃないか、と思う今日この頃。






撮影所の大部屋で、小夏の持ってくる差し入れを待つヤス一党。

口では「遅かったな」とか、偉そうに亭主関白っぽく“いばりんぼ”しようとしていながら、全身で「大丈夫か?小夏」と叫んでるみたいなヤスがめっちゃ可愛いです。上がり框の段をのぼる小夏から慌てて荷物を受け取り、手を出して手伝ってやり、ほとんど抱えあげて座布団に座らせる(しかも細心の注意を払って)。それも、自分のちょっと後ろに、仲間たちからちょっと隠すような風情で。

銀ちゃんが大事にしまいこんでいた小夏。
大部屋連中には合わせず、世話もさせず。
朋子とは全く違う扱いだった、小夏。

その小夏を見せびらかすように、でも自分の後ろにそっと隠すヤスの微妙な男心が、本当に可愛いです。
それを判っていながら、ヤスの喜びそうなことを言ってあげるトメさんたち一党の、優しさも。

ここで色々暴言を吐くヤスは、「銀ちゃんの居ないところでは銀ちゃんのように振舞う」という本来のキャラが出ているんですよね。元々主演経験もあるくらい、大部屋の中では比較的立場も上ですし、キャリアも長いから、そういう態度も通ってしまう。

銀ちゃんに憧れて、銀ちゃんのようになりたいヤスの、必死で突っ張って銀ちゃんのように振舞おうとする背中の小ささが、とても寂しいです。ヤスの小物感、卑小さ。




小夏の差し入れをひととおり自慢して、“傍若無人”に振舞うことに疲れたヤスは、ふと立ち上がって部屋を出て行く。
「すぐ戻るから、先に喰ってろ」

空気の変わったヤスを、何も言わずに見送る小夏。

幸せそうに。





“あのひとはかっこよくない、ハンサムじゃないけど”

でも、傍に居てくれるひとなの、と、



そう、思ってた……。





宙組さんの千秋楽パレード(←トップさんの退団ではないから、パレードとは言わないのかな?)に行ってきました。



…寒かった…(^ ^;



でも、最後の大階段を無事に降りられたみなさんの、輝くような笑顔に出会えて、その間は寒いのも忘れていました。
その中でもとくに、私にとって長いこと宙組さんを観にいくお目当てであり続けてくれたたっちんときみちゃん。
いままでどうもありがとう!!
そして、これからもよろしくお願いしまーす!(←卒業しても舞台に立ち続けて、あの声を聴かせてくれると信じてます ^ ^)







そして、「銀ちゃんの恋」のつづき。



……もう年末で、次の公演の初日も目の前なので、さくさく進めなくてはならないことは判っているのですが。
ちょっとだけ、関係のない本の話を先にさせていただきます。
浅田次郎の「月のしずく」(←あらためてココに書くと、すごいタイトルだな…)。

不器用な男と突っ張った女の情の流れを丁寧に描いた掌編7編の短編集ですが。
タイトルになった「月のしずく」の主人公が、なんだかものすごーーーくヤスにかぶりました。

まぁ、この作品の主人公は、何十年も埋立地のコンビナートで積み込み作業をやってきたブルーカラーなのであって、夢を抱いて映画界へ飛び込んでいった大学出のインテリ役者とは全然違うのですが。
その不器用な誠実さ。打っても響かない、鈍重なまでの純粋さ。美しい“都会の”女に手も出さない純情さ。なにもかもがヤスにかぶる(汗)。
みつるくんのヤスは美形でかっこいいので、小夏とそこまで距離があるように見えなかったけど、本来はこのくらい距離感がある二人なんだろうなー、と、あらためて思いました。



もう何年も前に読んだ本なのに、今回たまたま読み返すまで、そんなこと全然思いませんでした。この短編集自体は、直木賞を獲った「鉄道員(ぽっぽや)」と同じ時期に書かれた短編を集めたもので、「鉄道員」と良く似た世界観の作品集なのですが、正直、そんなには印象に残っていなかったみたい(^ ^;
なんだか、どれもこれも似たような、出来過ぎなご都合主義パターンだと思っていたんでしょうね。

でも、数年ぶりに読み返してみて、一作ごとに泣いてしまった(汗)。

以前読んだときは、たぶん、女性の側に感情移入して読んでいたんだと思います。まだ若かったんだな私。
でも、今回は完全に、冴えない不器用な中年男の側に立って読んでいたみたいです。なんだかそういう、祈りにも似た純粋な想いは叶ってほしい、と思ったんですよね、心から。
で、最後に叶ってしまって、泣いてしまう、と。

そこで素直に泣ける自分が、ちょっと可愛いな、と思ったりする(←え?)
……つまり、年齢を重ねてオヤジ化したってことなんですけどね……?(T T)。






もとい。
ちょっと気を取り直して。

「銀ちゃんの恋」第11場 人吉の盆踊り

舞台下手の檀の上で、ソロを歌うのは初姫さあや。
この場面だけは、“秘書・中山”ではなく村娘の一人として、明るいチークを丸くいれ、眉も(多分)描き直してして、実に可愛らしい。一幕はもう出番ないもんね♪
本当に可愛いです、さあや。ソロが聴けて嬉しい!!

そして、上手の奥で大きな和太鼓に撥をふるうイナセな男役、輝良まさとくん。
いやー、マジでかっこいいっす。元宙組の暁郷くんが空けてった穴を、ちょっと埋めてくれそうなかっこよさ(笑)。他の場面では“ユミコ(彩吹真央)さんに似てるー”と思っていたのに、ここだけGOくんを思い出しました。ちょうどGOくんの卒業公演で着物姿を観たばかりだったからかな?

手前の平場では、他のメンバーが普通に浴衣着て盆踊りを踊っているわけですが……
ふみか(紫峰七海)、その色気は無駄だから!これ歌垣じゃなくて盆踊りだから!!何か間違ってるよ、その流し目っっっ(逃)

マメ(日向燦)ちゃんは、パンチパーマを隠すためか?豆絞りでしっかり鉢巻していて可愛かったです。ちょっと特徴のある腰の入り方なので目立つ目立つ(^ ^)。だいもん(望海風斗)も鉢巻してたっけか…?ごめんなさい、時間がたったのでだいぶ忘れてますね。いつも(初輝)よしやくんとアーサー(煌雅あさひ)の笑顔に癒されたあたりで終わるんだよね……。結構長いようで短い場面でした。
娘役さんとのカップリングも一通りチェックしていたのになあ……海馬よ戻ってこーい。




全員が前を向いてポーズをきめると、音楽が止まる。
壇上で、一歩下がって軽くお辞儀をして、くるっと振り向いてぱたぱたと降りる、という動作をごくごく自然にやってのけるさあやは、ほんとうに可愛いなあと毎回デレデレしてました(笑)。

太鼓の輝良くんも下手にハケて、次に出てくるときはさあやと手をつないでいます
……ありがとう石田さん。




ヤスの兄嫁、玉美(月野姫花)と、母(邦なつき)が登場。
玉美さんは、ずっと故郷に帰ってもこなかった次男が突然嫁を連れて帰ってきたことに動揺している田舎娘。それでも、“田舎でもミス○○になったとよ!”といばるだけの美貌があって、どちらかといえば素朴でかわいい、そして、小夏に対抗しようと背伸びして買ってきた派手なドレスやバッグが似合わない……というキャラ付けがあればいい役なのですが……
この役だけは、石田さんもうまく演出できなかったんだなーと思ってしまいました。
いくら頬が真っ赤なおてもやんメイクをしても、ドレスが普通に似合ったらつまんないからっっ!!“玉美”=おてもやんに奇抜なドレス、というのは単に初演での脚本解釈の結果なわけで、今回の公演はそこにこだわる必要なかったし。もっと役割を考えてほしかったなあ。
さあやがやるならあれでいいんだけど。姫花ちゃんがやるなら、もっと違うアプローチがあったはず。

姫花ちゃんは、断然「ししとう」のマダムが可愛かったです♪♪大人っぽい役もできそうだし、台詞もだいぶうまくなったし、次の新公が楽しみ~♪♪





壇上に、団長(白鳥かすが)とヤス(華形ひかる)と小夏(野々すみ花)が登場。
ちいさな顔にでっかいモミアゲをつけて、顔半分隠していたちあきも、この後出てくる自治会長(悠真倫)も、私は最初に観たとき、しばらく誰だかわかりませんでした(滝汗)。
いやホントに。

監督と助監督、ホント役者だよこの二人…。




久しぶりに「大勢のファン」の前に立った、“落ち目の女優”小夏。
生まれて初めて「ファン」の前に立った“大部屋”のヤス。
スーツをすっきりと着こなしたハンサムなみつるくんは、ほんのちょっと“ヤスとしてどうなの?”と突っ込みたくなったりもしましたが(^ ^;、小夏と並んだ立ち姿が、本当におままごとか立雛みたいなのがツボでした。もう、これはヤスと小夏をまとめるしかないよねぇ、というか。

“普通に結婚に憧れる、ただの女だったのね…”という小夏の述懐が、表向きじゃない本当の本心だった、というのは「蒲田行進曲」的にはかなり冒険な解釈ですけれども。
これは宝塚的には「当然」の解釈なので、あまり違和感はなかったです(^ ^)。


いやー、二人の挨拶が終わって、ハケていく村人たちのカップリングも楽しかったのに、本当にすっかり忘れてしまったわ……。
とりあえず、さあやと輝良くんはずーっと手をつないでいたのは間違いないけど(はぁと)




小夏と邦さんの場を経て、寝室へ向かう小夏。
姑にも頭を下げた小夏の気持ちは、たぶん、ヤスのプロポーズを受けたときから変わっていない。
ただただ「すまない」と思う気持ち。
このお腹の子は、あなたの孫ではないのに、と。

でも。
それでも諦めることはできないから。
この子は私の子、だから。



姑との手打ちを終えて、夫の許へ向かう小夏。
布団が二つ並べられた客間で、寝たフリをしたヤスが待つ。
小夏が来る前に、むっくりと起き上がって、離れたもう一つの布団を近寄せようとするヤスが可愛かった♪あの布団、公演が日を重ねる毎に離れていくように見えたのは気のせいでしょうか?
装置さんの愛の鞭かと思っていたのですが(^ ^)。

あと、この芝居全体を通して「部屋」のセットは一つしかないので、『ヤスの部屋』に貼ってあった「二十四の瞳」のポスターを暗闇の中ではがしている装置さんが毎回ツボでした(吊りものに貼ってあるので、降りてこないと外せない)。1回か2回、巧く外せなくて焦っていたことがあったので☆



戻ってきた小夏を、狸寝入りで迎えるヤス。
そんなヤスに気づいていて、きちんと正座して床入りのご挨拶をする小夏。

「小夏!」と、初めて呼び捨てに呼ばれる喜び。
それが、小夏の選択。




抱き合う二人を最後にライトが落ちて、暗闇の中で会話が流れる。

「銀ちゃんって、どんな顔してたっけ…?」

ミニスクリーンにフラッシュバックする、回想シーンの映像。
銀ちゃんの、貌。


小夏の中には、まだヤスとの思い出はなにもない。
空っぽな自分。

ひとつひとつ、埋めていこう、と。
そう思いながら、それでもやっぱり、捨てなくてはいけないポートレートにひっそりと涙を流す。

「もう、忘れちゃった……」



その甘い睦言を、あんなにも純真な声で語れる野々すみ花は、やはり天性の女優なのだと思いました。





そして、闇の中を音楽が流れて、
客席にピンスポット。

紫乃シャツにシルバーの柄ベスト、黒の柄々ジャケット、紅いパンツ。
倉丘銀四郎の登場。



ちょっと猫背な後姿。
一人でいるときの銀ちゃんは、それまでの、ヤスや朋子が“視た”銀ちゃんとは違って、ひどく頼りなく、不安げにみえます。
たぶん、それが本当の「倉丘銀四郎」、小夏の前でだけはチラッと見せるかもしれないけれども、橘や、大部屋連中がいるところでは絶対に表に出ることのない、本当の。
人前では「俺が二枚目、俺が看板!」と思っていなければ立っていることもできない、それほどのプレッシャーの中を生きているはずの“スター”が、
このときだけはただ一人、不安に押しつぶされそうになりながら、呟くように歌う。



なにもかもうまくいかない、と。
足元に缶ジュースの空き缶あたり転がってきたら、おもいっきり蹴っ飛ばしそうな風情で。




それでも、なにも諦めたわけじゃない。
また一歩一歩、進んでいけばいいだけだ…と。

気を取り直して、ダンベルを掴もうとする銀ちゃん。

そんな銀ちゃんに、後ろから声をかける小夏。






小夏を見つけて、ふわっと微笑む銀ちゃんが、もう可愛くて可愛くて、
…その時点で、すでに泣きそうでした、私。



朋子の愚痴をこぼして、
撮影中止になった階段落ちの場面をぼやいて、


落ち込んでいる銀ちゃんを慰めようと、話題を変えるために自分の結婚式を持ち出す小夏。
それに乗って、とことん落とす銀ちゃん。
それでも、ささいなからかいに小夏は動じない。もう決めたことだから大丈夫。銀ちゃんが何をいっても、今更、あたしは気にしない。


そんな二人の、あやういけれども楽しげな会話。
ふと通りがかったヤスも、別に何かを邪推したわけでもなんでもなく、“ちょっと話が盛り上がってるみたいだから、一段落ついたら出て行こう”くらいの軽い気持ちで立ち止まる。

なのに。

最初のうちは、何も考えず、二人の会話の面白さにふつーに笑っていたヤスが、
ふ、と表情を硬くする。

「ほんとは、こうなるはずだったのに、ね……」


気負っていた小夏のキレイな唇から、ふ、と零れたひとこと。

それはただの軽口で、すみ花ちゃんの小夏にとっては、“終わったこと”なのに、
それでも、ヤスの口許は引き結ばれ、視線は足元に投げられたままで。




「真っ白なウェディングドレスに身を包んだあたしと」

「パリッとタキシードを着た、

                        ……俺が、いるんだ」




一瞬の、間。


その台詞を物陰で聞いているヤスの、
半瞬、その情景に納得して宙を視る、その不自然なほどの自然さ。





銀ちゃんが、いかにわがままで、自分勝手で、ジコチューで、どうしようもない男であるかを明快にあらわしながら、
だけど、愛さずにいられない存在であることも、如実にわかる、あの一瞬。



「銀ちゃん…あんたあたしに何をしたか、わかってんの!?」

銀ちゃんをなじる小夏。

「俺にはもう、お前しかいないんだ!お前、俺の背中に浮かぶ孤独が見えねぇのかっ!?」

小夏をなじる銀ちゃん。


……物陰で聞いている、ヤス。





3人の姿が同時に視られない自分の眼の構造が、うらめしや(T T)。






ヤスの澄んだ瞳に映る、銀ちゃん。
ヤスの、真っ直ぐな視線を受け止めることができる、銀ちゃん。
そんな、みつるくんの描きだす“銀ちゃん”という夢に、祐飛さんの銀ちゃんが、ぴったりと嵌ってくれたことが嬉しかった。




小夏の名台詞、「だって銀ちゃん!」を、「女は傍に居てくれる人がいいの」を、完全に子供の泣き顔で、泣き声で言ってのけたすみ花ちゃん。

子供がえりした「女優」の泣き顔が、崇高なくらい可愛くて。
もう元には戻れない二人が、ただただ子供のように泣きながらお互いを探しているさまが。
何も見えない闇の中で。
将来も、子供も、未来も、何ひとつ見えない暗闇の中で、ただお互いの手を求めて彷徨っている魂、が。



「莫迦野郎~っ!」

と、高校生の捨て台詞のような台詞を吐いて逃げ出す銀ちゃんが、本当に可哀想でした。

完全に小夏の目線で銀ちゃんを見送っていた自分。追いかけてって抱きしめてあげたい、と、どれほどそう望んでも、それだけはどうしてもできない小夏。
銀ちゃんが可哀想で、でも追いかけられないのは、それが銀ちゃんのためにならないから、で。

銀ちゃんが精神的にあれほど子供でなければ、もう少し違う関係を結べたはずの、二人。
逃げるしかできない銀ちゃんが憐れで、追いかけられない小夏が惨めで。



初演のビデオを観たときは、物陰で見ている幸ちゃんのヤスが切なくてどうしようもないほどだったのに、今回はある意味、観客として『小夏がヤスを選んでいる』ことを知っているから、みつるくんに対しては「そんなに思いつめなくても本当は大丈夫だよ?」とか言いたくなってしまったんですよね(汗)。
そんな単純なものじゃないことは、重々わかってはいるのですが。




「ヤスのものは俺のもの」だと思ってい、銀ちゃん。
「俺のものは全て銀ちゃんのもの」だと思ってい、ヤス。




「……俺、階段落ち、やるよ……」

ぼそりとそう呟くまでの、ヤスの葛藤が。
小夏と銀ちゃんを秤にかけて銀ちゃんを選んだ、ヤスの葛藤が。

……結局は一番、痛々しくて、哀れでした…(T T)。






花組大劇場公演「太王四神記」新人公演キャストが発表されました。



遅いなー遅いなーと思いながら待っていたのですが、もしかして小池さんはいつも遅いんでしょうか?小池作品で、主演以外の新公キャストが粗通しの時にやっと発表になって、それから稽古初日までにナンバーを覚えるのが大変だった、という話を聞いたことがあるのですが。

そういえば今日は梅田のスペシャルですね。お稽古はおやすみなのでしょうか?
下級生はみんな、今日明日でいろいろ覚えるのかしらん。




で。

れみちゃん、スジニ役おめでとう!!

猫の予想(11月25日の日記)はすべて外れてしまいました……。
本役がみわっち(愛音羽麗)だから、“いかにも娘役”らしいタイプのれみちゃんは無いだろうと思っていたのになー(^ ^;ゞ それとも、逆にみわっちが“いかにも娘役”な役に挑戦!するんでしょうか(^ ^)。



上級生の大御所は、ほぼ88期が占める(締める?)んですね。
91期の花峰千春さん(眉月さん)と、90期の芽吹幸奈ちゃん(絵莉さん)くらいじゃないですか。
花野じゅりあちゃんの役がきらりん(華耀きらり)だし、(初姫)さあやの役も、二つとも88期だし…
そう思うと、まぁ(朝夏まなと)くんも大御所チームってことになる……のかな?

花組88期は実力者が多いので、いい舞台になりそうですね。新公演出誰かなあ。ああ、本当に楽しみ!




ドラマを観ていないので、他の役がどんな役かわからないのですが……
卒業が発表されている望月理世ちゃんの“カクダン”が天宮菜生ちゃんってことは……やっぱり理世ちゃんの最後の役は男装してるけど女役は女役ってこと…?うーん、似合うでしょうし私は嬉しいけど、ファンの方は切ないでしょうねぇ。
せめてショーがあればいいのに。よりによってこの公演か……罪な人だ、理世ちゃん。



(桜)一花ちゃんの役が華月由舞ちゃんなのはめっちゃ嬉しいです。ぜーんぜんまーーーーったくキャラが違う一花ちゃんの役、由舞ちゃんがんばれ~!
銀ちゃんチームでは、瞳ゆゆちゃんと月野姫花ちゃんが野々すみ花ちゃんの二役をわけあい、梅咲衣舞ちゃんが“少年ホゲ”(白華れみ)。衣舞ちゃんと姫花ちゃんがタムドクとホゲの子供時代をやるのか~!可愛いなぁ~(*^ ^*)。



芝居上手でお気に入りの真瀬はるかさんは、まっつ(未涼亜希)の四神の一人“ヒョンゴ”。
同じく天真みちるさんが、銀ちゃんチームで一気に注目の的に(猫的に)なった紫陽レネさんの役なのも楽しみです。
しかし、前回真瀬くんと対の役だった日高大地くんは………がんばれ!!(^ ^;ゞ
スタイルとダンスという大きな武器があるんだから、今は焦らないで、お芝居を楽しむことを考えてみてくださいませ☆

銀ちゃんでさあやに遊ばれていた嶺乃一真くんは、みつる(華形ひかる)くんの“サリャン”。結構美味しい役っぽいし、「銀ちゃん」で結構お芝居の面白さを感じてくれたんじゃないかと思うので、がんばってほしいです。

そして!!煌雅あさひ&輝良まさとコンビ(←コンビ扱いしているのは猫だけですか?)は、アーサーがとみぃ(扇めぐむ)、輝良くんがマメ(日向燦)。……もしかして、ものすごーーーく楽しいのではないかしら?どんな役なんだろう……。
わくわくわくわく。


だいもん(望海風斗)の“ヒョンミョン”は、93期の大河凜さん。実は結構お気に入りなので嬉しいです。どんな役かな~♪
まぁ、だいもんは今回初主演だから、本役は軽い役かもしれませんけどね☆


まぁ、作品を観ていないので細かいところはおいといて。
初日まであと10日!本番直前の、お稽古も佳境にはいったところでのスペシャルイベントがあったりして大変でしょうけれども、体調を整えてがんばってほしいです。
上級生も下級生も(^ ^)、花組っ子がんばれ~~~!!


.
先週から、同じタイトルで似たような内容の文章を5000文字くらいずつ3回は書いていたのですが。
……そのたびに、いろんなことが起きて消えてしまって終了しておりました。

他のタイトルのはちゃんと書き込めたのにっっっ!!

何か呪いにでもかかったような気分です。



……でも諦めないもん。




だーいーぶー昔ですが、「銀ちゃんの嘘」Part8はこちらです♪
http://80646.diarynote.jp/200810270313082313/

小夏と朋子のプールサイドテラス対決、までで終わっておりましたので、続きを(^ ^)。


仲良く袖にハケていく銀ちゃんと朋子の後姿を見送って、ちいさく溜息をついた小夏。
「銀ちゃん、さ よ な ら …」

かすかに宙を彷徨って思い出を辿る小夏の瞳が、切ない。





初見(ドラマシティの初日があけてすぐ)の時、すみ花ちゃんは、ここでひどく悲しそうな瞳をしていたような気がしました。
“若い女の子”とイチャイチャしながら去っていく銀ちゃんの後姿を、追いかけて行きたそうに見えたのだと思います。



でも。
ドラマシティの後半に観た時、そして、青年館に来たときには、はっきりと違っていた。

銀ちゃんと朋子を見送って、軽く肩をすくめる小夏。
瞳が宙を泳ぐのは同じなのですが、なんとなく、「さよなら」を言うために銀ちゃんの面影を探しているような、そんな印象がありました。


この場面でのたった一言と、その次のヤスのアパートでの

「料理ながら俺が」
「いいのよ。……あたし、やりたいんだから」

というやりとりの優しさと。


たったこれだけのこと(いや、他にも細々いろいろ違っていたのですが)で、「ヤスを選ぶことに決めた小夏」が描き出されたことに驚いたのです。





歌劇誌だったか何だったかで、「最終的に小夏は、撮影所に戻る」という作者のコメントがありました。
たしかに、「蒲田行進曲」の小夏は、当然のように『銀ちゃんもヤスも捨てて、撮影所を選ぶ』女優です。ヤスのことはなんとも思っていない(いい人だとは思っている)し、銀ちゃんのことさえ、最終的には「これは愛ではないのではないか?」と気づく、そういう関係。

「銀ちゃんの恋」初演の風花舞嬢の小夏は、『銀ちゃんを選んで共に撮影所へ戻る』女だった、と思います。もちろん、ストーリーとしてそこまでは描かれてはいませんし、私はとにかくビデオでしか観ていないので舞台とは印象が違うかもしれませんが、とにかく「ヤスを選ぼうとして、そうすれば小さな幸せを得られるとわかっていたのに、諦められなかった女」に見えたのです。


だけど。


すみ花ちゃんの小夏は、ヤスを選ぶ小夏だった!!


今にして思えば、ドラマシティの初日頃は、まだ迷いがあったのでしょうね。
すみ花ちゃんにも、そして、作者である石田さん自身にも。
原作とも初演とも違うキャラクターで許されるのか、十分な説得力をもって演じ切れるのか、演出に矛盾は無いか、拾いきれていない伏線はないか、と、あれこれ迷い道を辿っている途中だったのではないか。


でも、ドラマシティの後半あたりには、勝負がついていましたね。
もちろん、すみ花ちゃんの勝ち、で。

すみ花ちゃん(と石田さん)が造形した小夏の、あの一分の隙もない説得力。最初からそういう設定だったとしか思えなかった、小夏のキャラクター。
二幕ですみ花ちゃんが歌う「でも、幸せ♪」のソロの説得力といったら!

あの同じ歌を“自分に言い聞かせるように”歌って説得力をもたせていた優子姫の小夏ももちろん素敵だったし、
心の底から幸せいっぱい、みてよあたしのこの笑顔!!という勢いで歌いきったすみ花ちゃんも、本当に素晴らしかった。

二人の小夏を、(片方はビデオだけど)観ることが出来て、良かった。
そして、二人の小夏を演出してのけた石田さんって、意外とすごい人なんじゃない?と思ったりもするのです(^ ^)。





ヤスのアパートで。

プロポーズされた小夏が、
「“じゃあ”って、なによ…」
と突っ込みながら、そのまま手をついて
「お願いします」
と言うとき。


すみ花ちゃんの脳裏には、このとき銀ちゃんはいないんだな、と思いました。

ヤスに、「俺、小夏さんを幸せに…」って言われて、初めて銀ちゃんを思い出す。
優しい小夏。

そうしてはじめて、

「すみません」

と、言葉が形をなす。



あのひとのこと、忘れられるかどうかわからないけど。
あんたと一緒に、「銀ちゃんかっこいいー!」って、言ってても、いい……?





そして。
この純粋で優しい小夏にあまりにもよくお似合いだった、みつるくんのヤス。
ただただ純粋に、小夏という“大女優”に憧れ、その傍にいられるだけで幸せになってしまう、そんな、ヤス。


突然頭を下げるすみ花ちゃんの小夏に慌てて、
「俺、小夏さんを幸せにしますから!」
と言うみつるくんの幸せそうな、照れたような笑顔。


この場面は、ものすごく痛い場面だと思っていたのに、あまりの幸せオーラに思わず焦ってしまうほど、普通の場面になっていたことに驚きました。
それが、新しい「銀ちゃんの恋」。
それが、花組の「銀ちゃんの恋」でした。

祐飛さん、すみ花ちゃん、みつるくん。
3人とも、見事に「自分の役」にしていたな、と、それが何より嬉しかったです(*^ ^*)。






第十場 銀四郎と朋子のデート

朋子(華耀きらり)が本当に本当に本当~~~っっっ!!に可愛いっ!!
ミニスカートからのぞく脚が最高です。長くてまっすぐで細くて、バービー人形みたい。
元水泳部の立派な肩幅と首のラインの美しさ。とにかく今回露出が多い衣装ばかりだったのに、ホントにマネキンが動き出したみたいでいやらしさがないのが最高でした。どんな衣装着ていても清潔感があって可愛い♪♪
あの独特の声も、いちいち不思議感のある仕草のひとつひとつまでしっかり計算されていて、銀ちゃんが振り回されるのも当たり前、って感じだったし。

本当に良かったです。
………謎な人ではありましたが。


プールサイドテラスで小夏と対決したときには、(多分)まだプラトニックだった銀ちゃんと朋子さん。
この場面のラストに「恋はやっぱり、プラトニックの方が夢があるなあ…」と言わしめているということは、当然このデートの前に“プラトニックじゃなくなった”わけですよね?(*^ ^*;)ゞ
#ちなみに、インラインスケートの練習が終わったあとそのままホテルに行ったんだろうと確信していますが何か?(汗)

銀ちゃんは結構あからさまに態度が変わっているのに、朋子さんはなーんにも変わらない。
「女」だなあ、と思いました。
小夏という“元カノ”の登場で、二人の関係を先に進めることを決意した朋子さんは、見た目の人形じみた可愛らしさからは想像もできないほど怖いオンナで、そこまでのキャラクターをきちんと演じられていたきらりんは本当に素晴らしい♪と、きらりんファンの猫は、思っていたりします☆




……大好きなきらりんの出番が終わったところで、今日はおしまいにします。
続きはまた、近いうちに。



花組大劇場公演「太王四神記」の新人公演配役が(一部)発表されました。



タムドク/ファヌン(真飛聖) 望海風斗
キハ/カジン(桜乃彩音)   野々すみ花
ヨン・ホゲ(大空祐飛)    鳳真由
プルキル(壮一帆)      朝夏まなと



だいもん、新公初主演おめでとうございま~す!!



すみ花ちゃんのキハは当然として、ヨン・ホゲの鳳くんにはびっくり!「アラビア」新公のアル・マリク(本役みつる)はあまり印象に残らなかったんですが、「蒼いくちづけ」まぁくんチームでジョナサンを演じた方ですよね。残念ながらまぁくんチームは観られなかったのですが、どうだったのかなー。
綺麗でスタイル良くて、目立つ人ですよね。お芝居はどうなのかしらん。祐飛さん、しっかり育ててあげてくださいね。責任重大かも!?




まぁくんは、壮ちゃんの大長老。こちらも、壮ちゃん自身が新しいキャラクター(純粋な悪人)を思いっきり楽しんでくれそうなので、いい勉強になるんじゃないでしょうか。二枚目の主役は散々やってきた人なので、最後の新公でこの配役って、すごく粋なはからいだな、と思います。




すみ花ちゃんのキハは、もう純粋に嬉しい!
そして、だいもんとすみ花ちゃんの並びが楽しみすぎて、もうめっちゃワクワクしています♪♪
ああ、大劇場の新公も観たいくらいだわ……。




あと、気になるのはスジニ役ですねー。
……「アデュー・マルセイユ」のジャンヌが華月由舞ちゃんだった前例もあるし、今回は新公ラストの華耀きらりんか、転向組のはる(天宮菜生)ちゃんあたりなのでは☆と予測してみる♪
でも、(白華)れみちゃんも似合いそうだし、もちろん「アデュー」に引き続いて由舞ちゃんもアリかなあ…。

男役さんでやるとしたら誰でしょうね。ルナちゃんだとちょっとシャープすぎるような気がするし、他に女役が似合いそうな人が思いつかない……。嶺乃くんはどうなのかなあ?(←想像できない)
いや、個人的にはアーサーが案外似合うんじゃないかと思ったりもするんですが(苦笑)、駄目ですか?(←誰に)



.
宝塚花組正月公演「大王四神記」の配役が発表されました。



いちばん驚いたのは、三番手スターである壮一帆さんの「大長老」!!
えーっと、2000年生きているけど、見えた目は若々しい(魔力があるので)という設定の、典型的な悪役らしのですが……壮ちゃんの悪役かー。「アデュー!マルセイユ」の時みたいな中途半端な役じゃなくて、完璧悪役、超ワルイ!!みたいな役なら大得意なんじゃないでしょうか(*^ ^*)。
手元のムック本で見るとけっこうカッコイイみたいですし(←未だ髭萌え中)、なんだか物凄く楽しみになってきました☆




そして。
朱雀のスジニ(&神話のセオ)を、本来は男役のみわっち(愛音羽麗)ですか……。
「アデュー」といい、演出の小池さんは、みわっちの女役好きなんですねぇ。…っつか、私も好きです☆いや、これも楽しみだわ(*^ ^*)




タイトルロール(?)でもある四神転生の残り3人は、まっつ(未涼亜希)が玄武のヒョンゴ、めおちゃん(真野すがた)が青龍のチョロ、まぁくん(朝夏まなと)が白虎のチュムチ。
このあたりは、まとぶんセンターにダンスシーンの一つや二つはありそうで、期待してしまいます。




みつる(華形ひかる)のサリャンは、なんとなくおいしそうなポジションのキャラクターになりそう。娘役さんたちはさっぱり役がわかりませんが、前回公演があまりにも可哀想だったし、もう少しみんなに役がありますように…。





そして。
たのしみな情報は、なかなかそれひとつだけでは回ってこないもの。
同時に発表されたのは、86期の望月理世ちゃんのご卒業でした。
ちょっと個性的な美貌で、ショーとかではいつも見ていた理世ちゃん。全ツの兵士たちの見せ場も、下級生に囲まれてめっちゃイケイケで、素敵だたのに。
ここ1年くらいで急激に雰囲気が変わったなーと思っていたら、卒業か……(T T)。最後までしっかり見守りたいと思います。

ところで。理世ちゃん、最後の役はカクダン…って、これ男装した女の子の役なんだけどなぁ…(汗)。たしかに可愛いし、からだつきもほっそりしていて少女役とかぴったり似合いそうな人ではありますが、なにも一本立ての卒業公演で娘役しなくても(汗)。それとも小池さん、男性の役に直すのでしょうか。だったら嬉しいかも……。





なにはともあれ、お正月が楽しみです♪(←すでに行く気満々)
素敵な公演になりますように、小池さん、よろしくお願いいたしますぅぅぅぅう。
「潤色の天才」小池修一郎に、めちゃめちゃ期待しちゃっていいですか?(^ ^;ゞ




.
宝塚花組87期の誇る女優・初姫さあやちゃん、
           お誕生日おめでとうございます~~~~!!



さあやの誕生日に「銀ちゃん」の公演があったら、カラオケバー「ししとう」の場面で、嶺乃(一真)くんや初輝(よしや)くんは優しくキスしてくれたかしら、なーんて妄想してみたりして(^ ^;ゞ

祐飛さんが花組に異動してくるより前からさあやのことは気になっていましたけれども、ここまで惚れこんだかどうか……。いやぁ、「オモロー」なさあやはこの3週間で十分堪能させていただきましたので、次回公演「大王四神記」ではぜひ、「カッコイイ」系を目指していただきたい……

と、記者発表の写真を見ながら思ってしまいました(^ ^)。







「大王四神記」の制作発表について、サンケイスポーツさんの記事はこちら。
http://www.sanspo.com/geino/news/081029/gne0810291515000-n1.htm



いやあ~~、、、、、久々に、制作発表の写真で心が震えました(照)。
「スカーレットピンパーネル」も3人ともカッコよかったけど、やっぱり古代アジア系の衣装の清しい色気って格別なものですねぇ♪早く舞台で観たいです!

まとぶん、さすが“コスチュームの星組”育ち。構えがいい!!フランス衛兵隊から高句麗の広開土王へ、時代も場所も随分吹っ飛んでますけれども、いかにも武人らしいたくましい立ち姿が素敵です。
彩音ちゃん、赤い衣装がよく映えて美しい。背が高くてスタイルが良いのは、こういう時に強いですねー。イリュージョン、舞台でもやってほしいなあ。

祐飛さんは、つい一昨日まで銀ちゃんだったのに……というか、銀ちゃんが土方の映画を撮り終わって韓国モノの撮影に入ったとしか思えない(爆)。PCの前で、『やっぱり銀ちゃん、かっこいいいーーーーーっ!』と、お約束どおりなんですけどホントに叫んじゃいました(^ ^;
いやー、黒髪長髪ってすっごく久しぶりのような気がします……とか書いてから思い出した!ほんの一年前の「MAHOROBA」も黒髪長髪でしたね(汗)。前半はみずらだったけど、走水での弟橘姫入水の場面から、奥羽の「鬼」との戦いまでおろして赤い鉢巻(鉢巻いうな)でまとめて…惚れたっけなあ、あれも。

っていうか、神話時代のヤマトと4世紀の高句麗、鎧の形が似ているような気がするのがちょっと面白いですね。前者は宝塚、今回の衣装はドラマのイメージにあわせてあるのでしょうから、あまり関連はないはずなんですけど。
宝塚の衣装的な時代考証って結構信用しているんですけど、どの程度根拠があるんでしょうねぇ…。



ちょっと不安なのは、この発言でしょうか。
>会見では衣装に身を包んだ桜乃が、空中で炎を燃やす“イリュージョン”も披露したが、劇場では安全面を考慮し、スペクタルの部分は映像を駆使することになりそうだという。

小池さんは素晴らしい才能を持っていますけれども、こと映像の扱いに関しては「センスがセンスしちゃってる」からなぁ……。ちょっと心配。
うまく表現してくださることを祈りたいと思います。



「銀ちゃん」メンバーと「ベルばら」メンバーが一つになる前に、みわっちと轟さんのディナーショーがそれぞれありますが、出演者のみなさまは、いまごろ必死でお稽古中、なのでしょうか?
ご本人たちにとっても、ファンにとっても、楽しい時間になりますように。

そして、いろいろな経験をして一歩も二歩も進化した花組生たちが、ふたたび集まって素晴らしい作品に取り組むときを、楽しみに待っています♪





宝塚花組 日本青年館公演「銀ちゃんの恋」が、千秋楽を迎えました。

邦さん&花組「銀ちゃん」チームの皆様、本当にお疲れ様でしたm(_ _)m。
そして、卒業される3人の方々、ご卒業おめでとうございます!!





「花組の大空祐飛です」と名乗ることなく、楽の挨拶を終えた祐飛さん。
「Hollywood Lover」の時もそうでしたが、終始笑顔で、みんなの愛を受けて幸せそうな銀ちゃんでした。泣いている下級生も多い中、銀ちゃんだけがピカーっと光っているかのように幸せオーラ満開で。
ああ、このパワーが劇場を埋めるんだなあ、と実感しました。




公演は端正な出来。
日曜日から劇的に声が出るようになった(←あれでもだいぶマシになったんです…)祐飛さんは、今まで観た中で一番子供っぽくて、かつ一番大人びた銀ちゃんでした。
一幕の可愛らしさ、憎ったらしい悪ガキっぷり。甘えたで我侭で、小夏は自分のいうことならなんでも聞いてくれると信じて疑わない幼さと、
二幕の、ヤスを見守り、深く愛し、彼が自分の脚で立ち上がるのを待っている優しさと。





「依存と束縛」と石田さんはプログラムに書かれていらっしゃいますが。
一番お互いに依存しているのは銀ちゃんとヤスなんですよね。
銀ちゃんかヤスか、ちゃんと選んで決断した小夏と、
ヤスと小夏と、両方いなくてはまっすぐに歩けない銀ちゃん。
そして、

銀ちゃんか小夏か、心の底では答えは出ているのに、
自分の心から、強いて目を背けようとした、ヤス。






メインの3人が、ものすごい自制心でハジけてしまう寸前でたちどまり、その役として生きられる最後の時間を精一杯生きていたことに感動しました。祐飛さんは歳の功(^ ^)としても、まだ若いすみ花ちゃんも、経験としては若いみつるくんが、よく耐えたなと思います。
めおちゃんも余裕が出て、舞台全体を観ながら橘として動けるようになったなー、と。

邦さんと王子は貫禄。
まりんとふみかは余裕。

さあやはハジけすぎ。



小ネタはいろいろありましたが、大きなアドリブは……

・キャバレーセットの橘。クイズ番組ではなく「俺忙しいんだよねー。次は韓国モノが決まってるし…」

・ししとうのさあやのネクタイ(本来は嶺乃くんの)は、銀ちゃんのを借りたのか!?と思うほど派手派手な柄物でした。思わず反射的に銀ちゃんの胸元観ちゃったよ…。

・キス魔・さあや、ついに可愛い部下の唇をGET。嶺乃くんが本気でいやそうに口許をぬぐっていたのがホントにおかしかった(^ ^)。

・最後くらい、初輝くんもさあやの肩くらい抱いてやってください、と思ったのですが、そこはいつもどおりでした。

・「ヤスのスタント」場面、助監督のカチンコには「感謝」と一言。ちあき……(T T)。

・人吉の盆踊り。いつもと逆に、ちあきの団長さんが「万歳、万歳、万歳……」と言い続けて、まりんさんの自治会長に突っ込まれていました。

・焼肉屋では、肉を食べようとして銀ちゃんに邪魔されたお説教されたジミー、しばらく切なげに箸にはさんだ肉を見凝めてから、鉄板に戻してました(^ ^;ゞ。そのあと、おもむろに豆もやしの皿を取って、銀ちゃんの皿にどっさり。

・銀ちゃんは、豆もやしを結構たっぷりと取って口にいれ、「お、この豆もやし結構いけるな」と言いながらもぐもぐもぐもぐ……「グラム○円だからなっ!」とは言えないので、そのまま黙って(ちょっと取りすぎたらしく、なかなか喋れるようにならない銀ちゃんがすごく可愛かった)…………、「で、俺の肉はどーしたっ!?」と突っ込み。
慌てた3人が、ほぼ同時に肉を置きにいくのがタイミングぴったりでした。

まだ豆もやしでもぐもぐしながら肉を食べて、「お、やっぱり肉はうめぇなぁ、グラム千円だけのことはあるよなっ」といつもの台詞につなぎならも、口の中の豆もやしがなかなかなくならないらしく、キレるタイミングになかなか入れない。回りの3人が、必死で空気を読みながら食べているのがおかしくて、おかしくて…

・ヤスへのお小遣いは二千円札。

・スポンサーのカネナリさまとの記念撮影は、言葉では説明できないのでCSニュースに流れることを期待。


フィナーレは、卒業する3人が胸に白い花をつけて登場。予想はしていましたが、やっぱり泣けました。
ちあきはカチンコもちゃんと書き換えてて、芸が細かいなあ(*^ ^*)。「血と砂」の可愛い下級生、ずっと見守ってきただけに、最後がこの作品で、しかも助監督という役を出すぎず、引きすぎず、まりんさんと息もぴったりで見事に絶妙のバランスで、月組育ちらしい卒業だったような気がします。
緞帳が下りるとき、さあやとぴったり寄り添ってちょこんと正座して手を振っていたのが、涙がでるほど可愛かったです。




最後のご挨拶で、王子が「不滅の大スター、大空銀ちゃんが、どこかでまた登場してくれることを祈っています」とコメントしてくれて、まさかと思うけど再演アリですかっっっ!?と、ちょっと夢を見てしまいました(汗)。

卒業生3人へのコメントも暖かく、今までの印象やキャラクターをゆっくりと微笑みとともに語ってくれた王子。「専務」さんそのままの口調で、優しくて暖かな人柄がしのばれます。今回の組長が王子で、本当に良かった。こういう細かいところにまで、祐飛さんはいつも共演者に恵まれて幸せな舞台人生だなあ…(T T)。

「よっ!銀の字!」と呼ばれて出た祐飛さん。

「ドラマシティの初日から今日まで、銀ちゃんと一緒に、昭和の映画界に遊びに行っていたような気がします。今は銀ちゃんとしてこの仲間たちに会えなくなることが、そして、銀ちゃんとして皆様に会えなくなることが、本当に寂しいです」

と、可愛らしく笑顔で。

「銀ちゃんは、毎日『早く俺を出せっ!!』と暴れていました」

という言葉が印象に残っています。そ、そうなのか……(←わかる気がする)


音楽が入ってから幕が降りるまで、上手と下手それぞれで、卒業生を囲んでみんながぐるぐる回っていました。
さあやときらりんが下手で刀を抜いて斬りあいをはじめたのは、このときだったかな、次だったかな……。


カーテンコールは、まずは普通に全員で。終始、さあやが隣のちあきを日の丸扇子でパタパタ扇いでいたのが可愛い(^ ^)。割と早い段階で一階はスタンディングになり、拍手が止まず。
3回目だったかな、祐飛さん+卒業生3人で立っていたのですが、幕があがってもしばらく何も言えない状態でした。

初輝よしやくん、雫花ちなちゃん、ちあきの順で、3人が一言ずつ、「ありがとうございました」と感謝の言葉を言ったあと、ちあきが「宝塚の発展を祈って、万歳三唱したいと思います」と言って、大拍手。
お約束どおり、祐飛さんの「もう3回やったから!!」が入るまで万歳は続きました。

この時は、お辞儀をした後4人で他のメンバーも手振りで呼んだけど、残念ながら誰も出てこず(笑)、4人で可愛く手を振りながら幕がおりて。


もう一度あがると、今度は全員。
祐飛さんが「もう言葉もありません…ありがとうございました!」みたいな簡単な挨拶をしてたと思います。下手でラインダンスが始まったのはこのときかな…?


最後の一回は、銀ちゃん一人。
ええ、「祐飛さん」ではなく、「銀ちゃん」でした。
「最後に銀ちゃんに戻って(←“戻る”という言葉にちょっと涙)、イチ、ニの、サンで、『銀ちゃんかっこいいーっ!』って言えーーーーーっ!!
イチ、ニの、、、、、、、、(沈黙)」


って言いやがりまして。

青年館の席を埋めた千数百人が、(多分)いっせいに思ったこと。

『イチ、ニの、サンで』って言ったんだから、『サン』までちゃんと言わんかいっ!!

ぐでぐでな「……~かっこいい~……」と、そのバラバラさにがっくりと肩を落とす銀ちゃん。

ありがとう。この銀ちゃんがCSで流れるのかと思うと、それだけで愉快な思い出になりそうです。





幸せな記憶。
幸せな時間。

「本日はありがとうございやした!」

……幸せな、音。




祐飛さんがあまりにも当たり前に『銀ちゃん』すぎて、
ふと気がつくと、次の『韓国モノに出演している祐飛さん』じゃなくて、『韓国モノに出演している銀ちゃん』を想像しています。
あのコスチューム、銀ちゃんさぞ似合うだろうな、とか。

階段の上でキメポーズをする場面とかあったら、迷わず“銀ちゃんかっこいいー”ってうっとりしてしまいそうです。




この名作をこのキャストでの再演しよう!と決めた歌劇団の英断に心からの感謝を捧げつつ、

ほんのちょっとだけ、「大空さんのこと、見直してくれたかなー?(朋子に話しかける銀ちゃん口調で)」と思ってみたりしつつ、

とりあえず、次に焼肉を食べるときは塩もんから焼いて、
野菜もバランスよく食べて体力をつけるようにしたいと思います(^ ^)。




宝塚花組 日本青年館公演「銀ちゃんの恋」。

明日はいよいよ、千秋楽。

今日、友人にものすごくシミジミと「ハマってるよねぇ……」と言われてしまいましたが(笑/あなたと同じようにねっ♪)、大好きで、ずっと観たいと思っていた作品を、ご贔屓さん主演で再演していただけて、本当に幸せです。
「Hollywood Lover」狂乱の千秋楽から、わずか9ヶ月。今回は組替えが決まっているわけでもなんでもないし、ただただ、大好きな作品との永のお別れを悔いなくできるように、心して観せていただこう、と思っています。
……そのためには、まずは良く寝て、体力をつけないとイケナイんですけど、ね(^ ^;ゞ




第7場A ヤスのアパート

「風呂付のアパートにかわってやれよなぁ~!」と銀ちゃんに言われたヤスですが、まだ同じアパートみたいですね。下手に布団が敷かれ、そこに寝かされた小夏と、枕元に座る女医(聖花まい)と看護婦(雫花ちな)。現代より往診が盛んだった時代ではありますが、それにしても医者だけでなく看護婦まで来るものなんですねぇ…。いい時代ですね。

「たいしたことはありませんが、念のため今度病院にも来てくださいね」という女医、「赤ちゃんの心音も聴けるし、超音波で動きも見えるのよ!」と嬉しそうに教える看護婦。
それを聞いた小夏は、もの凄く嬉しそうに腹を撫ぜながら挨拶しています。

小夏は、第4場で「営業年齢は25歳だけど、戸籍年齢は目尻のこじわに訊いてくれ」と言われている。すみ花ちゃん本人は若いけど、役の設定としては30目前かもう超えちゃってるか、というところ(初演では「営業年齢は28歳」だったそうです。風花さんもまだ研7、若かったのにね)。

時代考証がいい加減なので謎も嘘(デス・ノートとかクイズ番組とか)も残るのですが、だいたい昭和40年代あたりの話だとすれば、30歳っていうのは出産年齢の限界に近かったわけで。
なんとしても産みたい、という気持ちはあったでしょうし、「でももう無理かもしれない…」という不安も強かったでしょうから、嬉しかったんでしょうねぇ(^ ^)。
すみ花ちゃんの笑顔には、周りを幸せにするチカラがあるなあ、と思います。はい。





聖花まいちゃんは、キャバレーのダンサーでも思いましたが、ちょっとキツめの美人さん。シャープな眼鏡に白衣が似合って、往診に来る産婦人科の医者というより、脳外科あたりの専門医みたいな雰囲気がありました。ヤスのアパートを出るために立ち上がって、さりげなく白衣のポケットに手をいれて肩を振って歩くのをみて、なんとなくですが大病院の廊下を、あんな感じツカツカと歩く姿が似合いそうだな、と思いました。「長い春の果てに」あたりに出てほしい!(^ ^)
喋り方もちょっと理知的できつめな印象。「有能な医者!」って感じです。ふつーの産婦人科医じゃなくて、トラブルがあったときに対応するための要員なんでしょうね。それだけ、倒れたときの小夏の容態は悪かったのかもしれませんね……。

雫花ちなちゃんは、ごめんなさい。今回でやっと顔を覚えたのに……という感じで寂しいのですが、声も喋り方も笑顔も可愛らしくて、なんとなく心和む人ですね。看護婦さん、それも「患者」ではなく「妊婦さん」を担当する産婦人科病棟の看護婦にはぴったり!!と思いました。
薄いピンクのナース服がミニ丈なのは、私へのサービスですか?>石田さん(^ ^)。






医者と看護婦が帰ると入れ違いにヤスが帰ってくる。
このときの、小夏の表情の変化は観ものです。「“幸せそうな”妊婦さん」の顔から、「“嫌いな男が近寄ってきた”ときの美女」の顔へ、劇的な変化を見せる小夏。浮かんでいた笑窪が消え、目つきが鋭くなって眉間に癇症の縦じわが浮かび出る。あがっていた口角が下がって頬骨が平らになり、“無表情気味の冷たい怒り顔”になる。
元々が可愛らしいすみ花ちゃんなのに、ああいう顔をするとめっちゃ怖いです。

あの顔をみたら、ヤスだって絶対怖いと思うのですが……

ヤスは、銀ちゃんの気分やっぷりで馴れているのでしょうか。あっさりと
「あぁ~、顔色、すこしよくなりましたねぇ!!」と手放しで喜んだ顔をして、枕元に座り込みます。

ふ、と顔を背ける小夏。ヤスの持ってきたプリンを投げ捨てて、「いらないって言ってるでしょ!」とぶち切れてみる。でも、その直後にかなり激しく後悔しているのが凄く伝わってきて、やっぱり小夏は本質的に可愛いなぁ、と思います(*^ ^*)。
で、ヤスはどこまでわかっているのかな?と思んですよね。なんか、あんまり気にしていなさそうなんですけどね…。小夏の“素直になれない”ところまで含めて、小夏の全部に惚れているから、という言い方でいいのか、それとも、単に解っていないのか…?とも疑問に思ったりもするのですが。


とりあえず、この場面ではまだ、突っ張る小夏、見ないようにしているヤス、という構図で話は進みます。
「じゃあ俺は、夜の仕事があるのでこれで失礼しまーす」と出ていこうとするヤスに、
「あたしの出産費用を稼ぐタメに、今日は何をしてきたの?」と尋ねる小夏。
そりゃあ、まぁ…黒い上着はあちこち破れて擦り切れだらけ、しかも派手派手しく左腕を吊った姿をみたら、何をしているのかは一目瞭然でしょうけれども。

とりあえず「落ちる」系のスタントで稼いでいることを教えるヤス。
ちょっと黙り込んで、「それっぽっち…?だってあんた、そんなの顔も映らないじゃないの?」と控えめにコメントする小夏。

それに対する、ヤスの応えは。

きっぱりと、かつハッキリと、

「俺たちは、顔映ろうなんて、最初から考えていないっすよ。…映画が良くなりゃ、それでいいんです」




その信念が、この作品のフレームになっているんですね。
人間のドロドロした汚い部分を抉り出した「つか芝居」が、「映画人の映画人による映画人のための映画賛歌」になった映画版。それを、もう一度舞台に戻した「銀ちゃんの恋」。

「映画が良くなりゃ、それでいいんです」
「映画に命かけてるんすよ」
「立ち回りだって本気で斬りかかってくれないし…そんなんじゃ、映画に迫力出ないっすよ!」

そんな数々の台詞を与えられたヤス。
4場で銀ちゃんに
「おめぇが一度でも自分で仕事を取ってきたことがあんのか!?」
「自分の力で勝ち取ってくるもんなんだよ。仕事も、女も!」
と罵られた、ヤス。

彼が初めて「自分の力で」勝ち得た仕事が、この数々のスタントの仕事。
危険で痛くてキツいけど、良い映画が撮れて、しかも小夏の出産費用もつくれるなら一石二鳥なわけで。「映画」に関わる仕事しか考えなかった「映画馬鹿」っぷりが見事です。




そうして、ヤスはほんの半歩だけ、銀ちゃんの「世界」の枠を踏み越えようとしている自分に、
まだ、気づいてはいないのです……。






2人のやりとりの間を割り込むように現れる、銀ちゃん。

「銀ちゃん!」と呼びかける小夏の、幸せそうな、とろけるような笑顔。

あんな酷い捨てられ方をして、名前くらいしか知らない男の部屋に置いていかれて、
それでも銀ちゃんを愛することをやめられない小夏。そんな自分に対して、「なんて莫迦なあたし」的な悪感情さえ抱いていない。
あまりにも純粋すぎる、恋情。

「出産祝いだ」と言いながら当たり前のようにあがってくる銀ちゃん。
場は「ヤスのアパート」であり、それは「銀ちゃんワールド」なわけです。彼はまだ、ヤスが自分の世界を踏み出そうとしていることに気づいていないのだから。

ヤスも小夏も、自分のものだと思っている。
両方とも自分のモノだから、ちょっとよそへ行く間、宝石箱(=ヤスのアパート)にまとめてしまっておこうと思った。
小夏はちょっと我侭だし、今は一人の身体じゃないから一人で置いておくのは心配だけど、ここにしまっておけば、自分がまた戻ってくるまでヤスが面倒を見るだろう、くらいの気持ち。

残酷な子供と、
素直でピュアな子供と、
愛に溢れた“女”。

そんな、トライアングル。




ヤスの部屋で、銀ちゃんはいつもどおり愚痴をこぼしはじめる。
朋子の、愚痴を。

デートは重ねるけれども、
電話はするけれども、
どうも思うように進展しない、朋子との仲。

「『この恋がどうなるのか、怖い』って言って、電話を切っちまうんだよ~(泣)」
“いつもどおりに”ここまで愚痴って、ふ、と小夏の存在に気づく。

長いこと付き合ってきて、
自分のことを知り尽くして、子供まで為した女のこと、を。

「お前、朋子と会って話をしてやってんねぇか?」

「なんであたしがそんなことしなくちゃならないのよっ!?(怒)」

「ばぁ~か。おめぇが俺のこと、一番よく知ってるからじゃねぇか!」


誰よりも、何よりも、残酷で我侭な、考えなしの子供。

ヤスまでが銀ちゃんに同調するのを見て、小夏がキレる。
「あんたに関係ないでしょっ!!」

「関係ありますよ!銀ちゃんが落ち込んじゃって、今度の撮影失敗したらどうするんです?
俺たちは、映画に命、賭けてるんスよ!


そのまま、ヤス一人立ち上がって(ご丁寧に靴まで履いて)「映画人生」のソロ。
この歌、私は「銀ちゃんの恋」に主題歌だと思い込んでいたくらいの名曲ですが。


♪そんな夢をいまもみるよ
♪幼いあの日の憧れのカケラを


汐風幸ちゃんが、何かあるたびに歌っていた歌。
純粋な憧憬があまりにも眩しくて、「いつか叶う」ことを信じて疑わない祈りの強さに涙が出ます。


♪破れかけた街のポスターに 胸ふくらませた あの頃


実際に、古い映画のポスターが貼られた「塀」のセットを前に歌われると、また格段にイメージが膨らむ歌ですね。
何度聴いても、泣けて泣けて。


夢のために「スベテ」を捧げる覚悟のある人だけに、この歌は歌われるべきなのでしょう。
夢だけがほしい、他のものはなにもいらない、そんな人、に。

そして、「夢」と「銀ちゃん」がイコールで結ばれてしまっているヤスにとって、
「映画に命を懸ける」ことと、「銀ちゃんにスベテを捧げる」ことは疑問の余地無くイコールで結ばれていて。
「銀ちゃんの“後顧の憂い”を絶つために、小夏さんを幸せにしてあげたい」という気持ちは、「スベテを捧げる」ことと矛盾してはいなかったんですよね……

……この時点、では。







第8場 プールサイドテラス

夏の日盛りのプールサイドテラス。小夏と朋子が話をしている。

「銀ちゃんはね、子供がそのまんま大きくなったような人なの」

あまりに説明が明快すぎます、小夏姐さん。



小夏のすみ花ちゃんが91期、朋子のきらりんが88期。
3年も下なのに、歴然と「ちょっと年増なイイオンナ」にちゃんと見えるすみ花ちゃんが天才なのか、
3年も上なのに、完璧すぎるほど完璧に「若くてピチピチで育ちはいいけど頭の中身は…」なオンナノコになり切れるきらりんが素晴らしいのか、、、

…たぶん、両方でしょうね。



そして。
きらりんの朋子は、実は物凄く怖い女なのだと思います。
「女の闘い」に負ける気がしないタイプ。

話を聴きながら爪を磨く仕草が、まず、怖すぎます。
そして、「銀ちゃんはね…」と、噛んで含めるように銀ちゃんの喜ぶことを教えようとするウザい元カノの話をぶった切るように、「銀四郎様、今は私の言うままなのよ♪」と、巨大な優越感と共に語り始める。

「ねぇ、小夏お姉さま♪」
ハートマークがついていそうなところが余計に怖い…

「銀四郎さま、最近○○てきたと思わないこと?」

…伏字の中身は、ご覧になって確認してください。書きたくない。

ちなみに、この伏字は初演でも同じネタだったそうで、祐飛さんに対する宛書というわけではないのだそうです(「ばぁーか、顔で踊るんだよ!」とは違うってことですね)。
まるで、12年後に大空祐飛さんで再演することになるのがわかってて書いたかのような名台詞ですよね!

でも……逆に、これは変えてほしかった、かも……(しょぼん)





話が切れたところで、インラインスケートを履いた銀ちゃんが登場。

「お話、はずんでる~?小夏くん、ボクのこといろいろ話してくれたかな?」

いったい、朋子には小夏を何て言って紹介したんですか?

「小夏お姉さまにいろいろ教えていただいて、なんだかちょっと、銀四郎様を誤解していたみたい~~♪」

そう笑顔で答える朋子が、普通に怖かった…。

そして。

「朋子さんが、インラインスケートやりたい!って言ってたから、道具一式そろえたんですよ!あちらへ行って練習しましょう♪」

という銀ちゃんに、

「では、小夏お姉さまもご一緒に!」

という朋子は、もっと怖かった……一瞬後じさった小夏が可愛いです。

「いいのいいのこの人は」

って、それ話がつながってませんよ!>銀ちゃん



この場で、朋子に席を外させ、小夏に

「ありがとよ!俺の部屋のおめぇの荷物、宅急便でヤスの部屋に送っといたからよ!……あ、そうだ。合鍵、返してくれ」

と囁きかける銀ちゃんは、根っからの子供で悪魔なんだな、と思う次第です。



小夏の登場に焦れて、「プラトニック」を卒業しようとする朋子と、子供のまんまな銀ちゃんは、実はいいカップルになれたはずだと思うのですが。

それを本当の意味で邪魔をするのが、ヤスとの関係であるところが、この話の一番痛いところのような気がします……。







宝塚花組 日本青年館公演「銀ちゃんの恋」。
【10/26 色々間違いを見つけたので、だいぶ加筆修正しました】




今日は、初代ヤスの汐風幸(現・片岡サチ)さんがご観劇されていらっしゃいました。
……かーわーいーいーーーーーーっ!!
カーテンコールで祐飛さんがご紹介された後、立ち上がって大きく拍手してくださって。
祐飛さんも、みつるくんも、他のメンバーも、めちゃくちゃアピールしまくってました(笑)。

元はといえば花組配属の幸ちゃん。その頃花組にいたメンバーはこの公演には誰も出演されていないけど、月組時代に可愛がっていただいた祐飛さん、「ノバ・ボサ・ノバ」初舞台の85期(真野すがた、華形ひかる)、、、、めおちゃんとちあき(白鳥かすが)は月組で数作一緒にやっているし、幸ちゃんのサヨナラだった「花の宝塚風土記/シニョール・ドンファン」初舞台の89期(望海風斗、嶺乃一真、初輝よしや)もいるし。案外同じ舞台に立った人は多いんですね。あ、もちろん邦さんのことはよーーーくご存知でしょうし。


祐飛さんが幸ちゃんラヴ(はぁと)なのは有名な話(?)ですが、みつるくんも初舞台の雪組「ノバ・ボサ・ノバ」で、ルーア神父だった幸ちゃんのお手伝いをしていたくらいファンなんだそうですね!!(*^ ^*)。それで今、幸ちゃんの代表作の一つであるヤスを演じているなんて、すごい運命だなー……。
祐飛さんも、憧れのノンさんの銀ちゃんが回ってくるなんてすごい強運の持ち主だと思っていましたが、みつるくんも凄いなあ。
今の花組に、今のメンバーで「銀ちゃんの恋」再演、という大仕事が回ってきたのは、間違いなく正真正銘の奇跡であり、かつ運命でもあったのだ、と、すごく納得してしまったりしました(笑)。


相変わらずおっとりした笑顔で、大きな拍手を送ってくれた幸ちゃん。夏前に観た「道元の冒険」の片岡サチさんは、なんといっても坊主頭でしたから(^ ^;、美しいウェーブのかかった黒髪を軽くまとめて降ろした美女っぷりにうっとりしてしまいました。

祐飛さんもみつるくんも、他のメンバーも、嬉しかったでしょうねぇ~♪♪




さあ!あとは小夏(風花舞)と橘(樹里咲穂)あたりのご来場をお待ちしているのですが………
……忙しいみたいだから、無理かしらん(T T)。









と、いうわけで。
二幕全20場の、やっと4場まで終了した私のレポート。
………公演は、余す所あと2日4公演………


第五場A 専務と橘

専務(眉月凰)、橘(真野すがた)、秘書・中山(初姫さあや)、3人の幕前。
一言で説明するなら、橘が専務に「銀の字がレコードも出てミュージカルも主演って、こりゃちょっとおかしいんじゃないスかぁ?」とクレームをつけて、専務と秘書になだめられつつ、専務の愚痴を聞かされる場面、なのですが。



専務の穏やかな大人っぷり、
橘のさりげないスターっぷりもさることながら、

なんといっても、秘書・さあやのオモシロっぷり!!がはじけまくる場面、でございます。

専務の指示には絶対服従しつつ、橘に対しては言い方はキツいわ、ボードで殴るわ、やりたい放題。
子供の「気になる子ほど苛めたい」ではありませんが、ここはやはり、橘さんと中山秘書の間には『ナニカ』ある、と思いたくなるのも仕方ないです。絶対この二人、デキてるからっ!!
ああ、この二人の場面をもっと観てみたいわ~!


橘さんは、モノクロの柄シャツに白っぽい縦ストライプのシンプルなスーツ。めおちゃんの長身・細身のスタイルに良く似合う、シャープな衣装。
直前まで銀ちゃんの“センスがセンスしちゃってる”ぎんぎらぎんにさりげなくない衣装を散々見せ付けられていたので、橘さんがものすごく格好良くスマートに見えます(^ ^;
かっこいーーーー♪


で。ちょっと考えたこと。
この時、季節はいつなんでしょうね?
専務と秘書は着たきりすずめなので季節がわかりにくいのですが、橘さんの服と「カレンダーの詳細はまだ本決まりではない」という専務の発言から察するに、6月か7月くらい…ってことになるのでしょうか?

そうなると、この前場の「ヤスのアパート」も、同時期かちょっと前くらい。銀ちゃんもヤスも案外厚着なので、まだ5月くらいなのかもしれませんね。(昨日の日記には「暑い夏の夜」とか書いちゃってますけど私/汗)





それから、この場面でのさあやの重大発言。
「専務は、倉丘銀四郎も、橘さん、あなたも東洋映画・同期のサクラのニューフェースとして、どちらも大切に考えていらっしゃるのです」


えーっと。
2幕に出てきますが、銀ちゃんは「いっぱしの(若手)スター」として認識されてから、このときまでに10年以上経っているのですよね(ヤスと出会ってから10年だから)
ちなみに、原作では33歳。ヤスとは同い年か一つ違いくらい、っていう印象。


…デビューして、ある程度名前が売れてから10年以上たつ人を、「ニューフェース」って………
映画界では、初主演=「ニューフェース」ってことになるんでしょうか……?
【注記 夜野愉美さまよりコメントをいただきました。「ニューフェース」は、いわゆる「新人俳優」というのとは意味が違って、映画業界では、普通の会社で『今年度入社』とかというのと同じ意味なんだそうです。役者としてのデビュー年じゃなくて、その映画会社に入った年ってこと…なんでしょうね。ポンっ!】



っていうか。
それ以前の問題として。

銀ちゃんをカレンダーの表紙にし、レコードも出してミュージカルにも主演させようということを決めた『東京本社』で決定権を持つ人は、いったいどういう根拠で銀ちゃんを選んだのでしょうか。
目が高いんだか、低いんだか。(←失礼な。目が高いに決まってんじゃん)

東洋映画が斜陽になってるのは、テレビの隆盛とか関係ないような気がしてきちゃう私は、銀ちゃんの大ファンですけど、なにか?(^ ^;ゞ









第五場B 任侠一代

小夏の“女優として”の絶頂期、銀ちゃんと付き合い始めたばかりの頃の、任侠ものの撮影風景。

第4場(ヤスのアパート)のラストに、「銀ちゃん、あの頃に戻りたいよ…」と呟いて倒れる小夏。それを受けての、これは回想シーンということになるのですが。
…残念ながら、セット準備と着替えの都合で専務と橘と秘書の場面が間に入るので、ちょっとわかりにくかったですね。第一場と同じメンバーが同じ役で出ていたりするし。

もう少しフォローがないと、話が見えなくなる危険があるかも、と心配になったのですが…どうなんでしょうか。普通に初見でわかるものなのでしょうか…?





三味線の音が流れて紗幕があがると、舞台中央に13段階段。(←あれ?この頃からあるのか?美術部さんが「新撰組」のために作ってくれたんじゃなかったの?)


階段上でスポットを浴びる小夏。黒(?)っぽい地に銀文様の着物にピンクの帯、髪もすっきりまとめて粋な美しさです。
でも、「姐さん」に見えるかというと……びみょー。町娘に見えないことも、ない。

紅い唐傘をひろげて、階段を降りはじめる姐さん。両脇を守る「舎弟(煌雅あさひ、輝良まさと)」は、着物の裾を腿までからげた勇ましい姿。むき出しの白い脚が、下級生にしてはしっかりと男役でかっこいいです。(とくに輝良くん)



それを阻むように、平場にわらわらと登場する「刺客(トメ=日向燦、マコト=夕霧らい、嶺乃一真、初輝よしや)」たち。
マコトはまだこの世界に入ったばかりで、これが初舞台というエピソードをCSで話していましたね。初台詞の「姐さん、おいのちを!」という台詞がひっくり返ってしまい、喉元をおさえて首を傾げている仕草が可愛いです(←本番中ですけど……)。

トメさんはもうだいぶベテラン、という設定のようで、「ヨシマサ」という名前もついていて、刺客たちのリーダー格で殺陣も中心になるし、台詞もある。…となると、「ヤスのアパート」で銀ちゃんが「台詞もねぇ役ばっかりで、申し訳ないと思ってるよ…」と言ってたのが気になりませんか?ベテランのトメさんだけでなく、初舞台のマコトにまで台詞あんじゃん!って。

単純に、この程度じゃ台詞アリに数えられない、って話なのか、あるいは、この頃までは銀ちゃんにももう少しチカラがあって、台詞のある役を子分のためにもらってくる(作らせる)ことくらい容易な話だったのか……、

謎だらけ。



嶺乃&初輝は、この頃にはもう橘一党に入っているのかしら…?
橘は最初テレビデビューだったはずなので、まだ誰の下にもついていなかった頃なのかもしれませんね。残念ながら台詞はありませんが、結構良い動きをしていて、将来の斬られ役として有望そう☆

ちなみに、撮影スタッフは、カメラマンが「新撰組」と同じふみか(紫峰七海)。でも、服が違うからもしかしたら別人かも?
下手でカメラのコードを持って動きやすいようフォローしているスタッフの徳子(梅咲衣舞)さんは、本来はヘアメイク(床山?)さんのはず。
今日はじめて気がついたのですが、この場面のカメラマンと徳子さんは恋仲、という裏設定があるらしい(^ ^)。銀ちゃんの“クサくてながーーーーい”芝居の間に、カメラを固定して(←銀ちゃんが動かないから)イチャイチャしているのを目撃してしまいました(*^ ^*)。
ふみか、役得やなあ~!!

撮影が終わった後、小夏に「こなっちゃ~ん!良かったよ~~!!」とわざわざダッシュで言いに来る衣舞ちゃんが可愛い☆と、ほほえましく思っていたのですが。
……芝居なんて観てないじゃん>徳子さん。もしかして、あれはただの褒め殺しだったの?





「姐さん、渡世の義理だ。勘弁しておくんなせぇ」という刺客たちに対して、

「賭場育ちの女を、舐めたらいかんばい!」と啖呵を切る小夏姐さんが、めっちゃカッコイイ!!です。



そこに、大向こう(客席)から声がかかる。


「待てぇい!」



客席の上手通路に、スポット。
銀ちゃんの登場。




数日前の日記で、「流れる動画は、リアルタイムを装っているけど実は録画なんじゃないか」なんぞという疑惑を述べたりもしましたが、青年館で再度観て、確認しました。間違いなくリアルタイムです。
疑ってすみませんm(_ _)m。




目の眩むようなスポットを浴びながら、「スター」銀四郎が舞台に向かう。


「銀次!銀次じゃなかか…?お前、いつ娑婆に?」

銀ちゃん、プログラムには「銀四郎」で載っているだけなので漢字は間違っているかもしれませんが、とりあえず小夏姐さんは「ぎんじ」と呼びかけます。ちょっととまどったような目の動きが色っぽい。

「義兄弟の盃を戴いた先代の法要にも間に合わず、姐さんには渡世の義理を欠いたままで…面目ねぇ」


と一礼して、助太刀を申し出る銀ちゃん。
かっこいい!……とにかくカッコイイです。着流しがあんなに似合う人、めったにいないんじゃ、と思うほどカッコイイ。
この場面、もっと長くてもいいのに…といつも思います(笑)。



で、着流しで剣を振るう銀ちゃんの格好良さは素晴らしいんですが、この殺陣の一番のみどころは、トメさん!
銀ちゃんと対峙したとき、銀ちゃんのアップを邪魔するかたちになったトメ。銀ちゃんに指摘され(邪魔だ、どけ!という手振りまでかっこいい/苦笑)、カメラを振り返って物凄い顔をして避けていく


本当の撮影現場では、あーゆーことがあったら撮り直しなんだろうか。それとも、あのくらいなら編集でどうにかなるものなんでしょうか………?




刺客どもを撃退して、おもむろに“姐さん”を口説き始める銀ちゃん。
…“姐さん”ってことは、“義兄弟の盃を交わした先代”の女、ってことですよね……?
そういう存在に、あんなに露骨に言い寄っていいもんなのか、と思わないでもないのですが。
…まぁ、カッコイイから全て許すけど(笑)。



口説きながら、まっすぐにカメラに向かう銀ちゃんの迷いの無さがとっても素敵。台詞の間も、怪我を手当てされているときも、常にカメラの位置を意識し、カメラ目線で動く銀ちゃん。
すげーーーー、プロだなあ……。

そして、無視される格好になる小夏の、笑いをこらえた笑顔がめっちゃキュートです。



演歌調の歌を一曲歌い、小夏と並んだポーズで決めたところで、撮影終了の声がかかる。
さっき逃げてったトメさんが慌てて戻ってきて、ペコペコと平謝り。
本当に、トメさんの顔芸は、ししとうでもここでも、見逃せません!



スタッフたちもはけて、舞台上に銀ちゃんと子夏だけが残る。

銀ちゃん、ちょっと息を吸って、さりげなーいふうを装いつつ、実は結構緊張した面持ちで、

「小夏ぅ、荷物まとめて、俺のマンションに来い」
「銀ちゃん…?」
「一緒に住まねぇかって言ってるんだよ!」
「銀ちゃん!嬉しい!」


愛を確かめ合い、手をつないではけていく、幸せな二人。
……5年前の、幻…







第6場 ヤスのスタント

小夏の出産費用を稼ぐため、危険なスタントに挑むヤス。
この場面のチェックポイントは、3つ。

・ヤスのダミーを勤める真瀬はるかさんの、ヤスの声(たぶん録音)にあわせた動作の面白さと間の巧さ。
・助監督・ちあきが持つガチンコの文字(作品タイトルを書いているつもりらしいのですが、日替わりで違うので要チェック!)
・ヤスの付き人をしているジミーの、おろおろと心配そうな様子。めっちゃ可愛いです。


飛び降りた(←真瀬くんが)後、助監督とジミーに運ばれてくるヤス@よれよれバージョンの爆発頭が、すごく可愛い(←え?)です。あと、白い粉を大量に吹くのですが、一階席のかーなーり隅々まで漂う龍角散の匂いで咳き込む人多数なのでご注意くださいませ。




取り急ぎはこのあたりで。これでやっと、1幕の半分くらいまで来たでしょうか…?ううう、まだ先はながーーーーいのね(T T)。





宝塚花組日本青年館公演「銀ちゃんの恋」

第三場B 銀四郎のソロ
…っていう場面タイトルだということを、たった今知りました(笑)。




前場ラストで、「やっぱり俺…主役じゃなかったんだな…」という、しょんぼりと肩を落とした銀ちゃんが、そのままの体勢で(ちょっと後ろ向きな感じで)歌いだす。


♪スターになるほど一人ぼっちだと
♪思い知らされて酒を呑む


…その、声が。
かすれきって限界が近い喉が、切なさを煽ってくれるんです……。それは計算なんですか!?と訊きたくなるくらい、色っぽい。


♪夢を売るため嘘をもつくさ


最初の幕が上がって以来、嘘しか喋っていない銀ちゃんに、そんなことを言われても。
…と突っ込んだあたりで、曲想がガラッと変わる。


♪それがスターの生きる道さ


アップテンポのノリのいいメロディラインを、あの切ないかすれ声で聴くのはちょっと辛いです。
声、使い分けるつもりで役作りしていたんだろうに、残念でなりません。…いつか、ディナーショーか何かの機会に思いっきり歌ってほしいです。あの衣装で!!
(←あ。誤解されている方多いと思うんですけど、祐飛さんって音程や滑舌はあやしいけど、声はちゃんと計算して創ってるんですよ!…たぶん)

そして、声が出ないから余計に聞き取りにくくなる歌詞。これが大事なのに!


♪俺が二枚目、俺が看板
♪俺より二枚目出さないでくれ


祐飛さんの銀ちゃんより二枚目な人なんて、どこにもいないから大丈夫だよ!
そう、真顔で声をかけたくなってしまう可愛らしさ。


♪俺が二枚目、俺が看板
♪脇役助演者遠慮してくれ


……本気でこんなことを思っているような役者には、口が裂けても言えない台詞だわカッコイイ、と思うのは、私がファンだから?(*^ ^*)。

実在する大空祐飛が、こういうキャラではないことは、「ししとう」でのさあやとか、この後の幕前でのさあやとか、階段落ち前のさあやとか、、、、じゃなくてっ!!ヤスとか、小夏とか、橘とか、トメさんとか、とにかく出演者全員が楽しそうに、やりたいように、やったもんがちで思いっきりガツガツと芝居を楽しんでいる姿を観ればわかることで。

たぶん銀ちゃんは、じゃない祐飛さんは、「お前らが何をしても、俺がいれば大丈夫なんだからな!」って言ってあげているんだろうな、と、勝手に思っています。
下級生たちがどんなことをやらかしても、祐飛さんには、それを銀ちゃんとして受けられる自信があるんだろうな、と。
気持ちいいくらいキッパリと、「おめーら好きなようにやっていいぞ!」と言ってあげているに違いない!と。
ただし、カメラの前は横切るな、と(^ ^)。


たとえそれが、空元気であったとしても。
たとえそれが、強がりであったとしても。
痩せ我慢であったとしても。


銀ちゃんのそれは、明らかに空元気で、強がりで、痩せ我慢なんですよね。
っていうか、ツッパリきれなくて泣き言言っちゃうし、強がりきれなくて甘えちゃうし、痩せ我慢なんてできなくて皆に八つ当たっちゃうはた迷惑っぷりなんですけど。



でも、大空祐飛さんのそれは、本気っぽいところがすごいなあ、と。
邦さんと眉月さん、まりんさん以外は学年差(=経験値の差)が大きいから余裕が違うのもあるでしょうけれども、そういう格の違いは随所で感じるわけで。
タイトルロール、という尊称には、それだけの意味があるんだなあ、と思うわけです。

そして。
タイトルロールとして、こういう歌を歌って客席を盛り上げつつ、ちゃんとその中で
「うっそーん☆そんなこと考えてねぇよ!だって、俺より二枚目なんてこの世にいねぇし、脇役助演者が遠慮しなくたってどうせ俺しか見えねぇんだろうテメエら?」
という落ちを用意しているところが………


…石田さん。
「銀ちゃんの恋」って、再演なのにどうしてこうも宛書なんですか?
それとも、ノン(久世星佳)さんご自身が、あんなふうに自信過剰のどSだったとでも……?









第4場 ヤスのアパート

ヤスが、みどりいろのジャージに腹巻して、赤い靴下を履いて、自分の部屋にいる。
ヤスの部屋は、たしかどっかで4畳半って言ってた気がするんですが、ドラマシティは広いので8畳くらいある気がします。(4畳半って、成人が三人も入ったら3歩以上歩くの無理だから!)


頭に鍋(?)を被ったヤスが、なんか殺陣の練習っぽいことをしている。
そこに響き渡る銃声。ヤスは丁寧にその音を拾って撃たれた芝居をする。イメージとしては、カチコミに遭ったヤクザ者、って感じ。いきなり撃たれて、腹をおさえて…手についた紅い血をみて「なんじゃこりゃぁ~!」と叫びながら息絶える、という、ありがちな場面。



ヤスが倒れると、下手側の上がり框で、銀ちゃんが小道具の短銃(←まだ持ってたのか!?早く返さんかい!)にふっと息をかける。
もういまさら衣装についてはコメントしませんが、グラサンが渋くてかっこいいです。はい。


ちなみに。
このものすごい衣装は「コシノヒロコ、ジュンコ、ミチコのデザイナー三姉妹で全身固めてみたんだ」そうです。

が。

……せめて一人にしてください>銀ちゃん。

というか、いいんでしょうかこういう実名の使い方って……。長女のコシノヒロコさんは、「シニョールドンファン」で宝塚と組んだこともある方ですし、事前に了解は取っているんでしょうけれどども…。
いや、あの、その、個人的に「ミチコ」と言われると宙組の某スターさんを思い出して笑ってしまうんですけど…。みっちゃんのデザインかと思うと素直に納得できてしまう私を許してください。





あと、突っ込みどころとしては、ポスターにも登場していたハエタタキ。
ここが唯一の彼(?)の出番なんですよね。ハエタタキの使い方自体は初演と同じなんですけど、ポスターに出た分、インパクトが増したような気がするのは気のせいでしょうか。一回、銀ちゃんが布団を窓から棄てるときに一緒に棄ててしまった回があって(汗)。銀ちゃんは、最初から何もなかったかのように自然に芝居をしていましたが、やっぱりハエタタキがないと物凄く物足りなかったんです(T T)。やっぱポスターに登場するだけのことはあるな、ハエタタキ。






ヤスのアパートに、小夏を連れてきた銀ちゃん。
4畳半のアパートに、真っ赤なドレスにサングラスをかけた小夏がいる、というシュールさ。

赤い座布団を差し出そうとして、つい裏返して、たたいて、ちょっと首をかしげて、一瞬周りを見回してから諦めて差し出すヤスが可愛くて可愛くてなりません。
畳に座る気はねぇよ、とばかりに、ゴミ箱をひっくり返してその上に座る銀ちゃんも。




銀ちゃん自身の衣装自慢の後、ヤスに昔あげた衣装を「着てみんかい」と無理やり着せるくだりは、初演がどうだったかは覚えていないのですが、舞台「蒲田行進曲」では、結構痛い場面だった記憶があります。
銀ちゃんが明らかにヤスを「笑いものにしよう」としていたし、ヤスも明らさまに「あんな変な衣装着たくねぇ…でも、スタァさんの言うことに逆らっちゃいけねぇ」という卑屈な気持ちで着こんでくるんですよね。「冬物ですけど」という台詞も、もっと不満で嫌そうだった記憶があります。



でも。

花組版「銀ちゃんの恋」が「タカラヅカだなあ」と思うのはこういうところなんですが。
なんか、祐飛さんとみつるくんだと、すごくほのぼのと可愛らしいんですよね。

銀ちゃんが心の底から悪戯っ子になりきって(←苛めっ子じゃなくて“悪戯っ子”ね)、「着てみろよ!(わくわく)」という、かっこの中が聞こえてくるくらい悪意なく楽しそうで。
で、ヤスはヤスで、あの服に(ブーツにも)疑問を抱いていないのが凄く可愛い。
銀ちゃんの衣装自慢も、本気で「カッコイイ~!俺もああいう服が着れるようになりたいなぁ…」くらい思っているんじゃないかと不安になるんですが……どうなんでしょうかそのあたりは。

「でもあれ、冬物ですけど」という台詞も、単純に疑問に思ったことを口にしただけで、『着るのが嫌だ』という印象があまりないし。



もともと銀ちゃんは、小夏を笑わせるために(思いつめているのを宥めるために)そんなことを言い出したわけで、ヤスを笑いものにしようという意図に変わりはないはずなんですけれども。
…あの嫌味のなさはいったいなんなんでしょうね。


そして、みつるくんのヤスの、『銀ちゃんと同じ価値観を持った俺』に対するリスペクト。銀ちゃんが言うなら、黒いカラスも白く見える、そんなヤスの、精神のありよう。
この場面のヤスがピュアであればあるほど、この後の悲惨な展開が“タカラヅカ”に近づいていく。




「蒲田行進曲」では、この時点でヤスは微かながらも『自分を抑えて』銀ちゃんに従っていることを自覚していた。
ある意味、銀ちゃんに従う自分に酔っていたといってもいい。

でも、みつるのヤスには、花組版「銀ちゃんの恋」のヤスには、それがない。

ピュアで、素直で、可愛いヤス。彼が銀ちゃんを慕うというのは、この時点ではまだ執着でも依存でもないんですね、今公演では。その思いは、まだ歪んでいない。優しいヤスが、思いやり深くて素直な心根のまま、銀ちゃんという子供みたいにわがままで悪魔だけど一途で可愛いスターに惚れてしまった、ただそれだけのこと、で。


だから。

この瞬間。
小夏、という存在が二人の間に押し込まれてくるこの瞬間まで、銀ちゃんとヤスの間は何の波風もなかったわけです。
ヤスは、十年間、自分を抑えて、何かを我慢して銀ちゃんに従っていたわけじゃない。
銀ちゃんが大好きで、映画が大好きで、『良い映画を創るために精一杯がんばっていたら、10年が過ぎてしまった』といのが、まぎれもない事実。





ちょっと話がずれるんですけれども。
「銀ちゃんの恋」には出てこないエピソードですが、ヤスには確か、主演経験もあったはず(その事実を銀ちゃんが虐めのネタに使ってた記憶があるんですけど)。それなりに実力派のスターだったことがあるわけです。
でも、そういう過去をもった男としてヤスを演じると、銀ちゃんの嫌味の一つ一つが本気で胸に刺さるんですよね。そ、そんなこと真顔で言っちゃうのか、という辛さ。

…人間の汚いところを曝け出して、初めて表現できるモノというのは、確かにあります。
「つかこうへい」という作家の紡ぐ物語は、わりとカウンセリング的な部分があって。
登場人物が、自分の汚いところ、嫌なところを全て観客の前に曝け出して、泣いて喚いてヤツアタリして……そして最後に、もう一度「裸の自分」と向かい合い、嫌っていた自分の嫌な部分ごと、全ての運命を受け止める、という展開が多い(←だから、痛いけど観終わった後はすっきりして、“明日からがんばるぞ!”と思える)のですが。

「蒲田行進曲」という舞台作品の痛さというのは、そういう痛さなんですよね。

そしてたぶん、石田さんが「タカラヅカ」に対するスパイスとして「つか作品」に求めたものも、そういうものなんだろうな、と思うのですが。



でも。
「タカラヅカ」は夢を現実に見せるところだから、どうしても「つか」流の大団円へ行き着くまでの過程に無理があるんですよね。
人間の汚い処から目を背けて生きていきたい人が観るものだから。

だから、「蒲田行進曲」ではなく、「銀ちゃんの恋」なんだと思う。
タイトルのワーディングにはあまり意味はないと思うんですけど(←どうせ石田さんだし)、群像劇(3人が主役)の「蒲田行進曲」から、タイトルロールと彼の物語を語る2人(事実上の主役)という構成の「銀ちゃんの恋」へ、という改変。

「蒲田行進曲」の、あけすけなまでに本音を吐きまくった舞台もホンモノだったし、
それをピュアな光で包んだ「銀ちゃんの恋」も、ホンモノだった。
どちらも、人を癒す力のあるものがたりだった。


祐飛さんが演じる銀ちゃんの、子供っぽい純粋さと、弱みを見せた相手への容赦のなさ。

みつるの演じるヤスのピュアさ、優しさ、素直さ、そして、弱さ。

そして、すみ花ちゃんの演じる小夏の、硬質な純粋さと、芯の強さ。


三人三様に、純粋で一途でまっすぐなんですよね。
それが凄く美しくて、眩しい。
三人三様に狂気を抱えてはいるんですけれども、それ以上にまっすぐなものがある。

だから、三人三様に、運命と闘って、受け入れて、そうして一歩を踏み出していく。







…ともあれ。
まだ話は始まったばかり。

銀ちゃんは、“妊娠4ヶ月の”小夏を、ヤスのアパートに置いて去る。
とある、夏の日。






小夏とヤスの間で、微妙なバランスを保っていた銀ちゃんが、
自分自身を壊しかねない一石を、三人の真ん中に投げた、
……暑い、夜。









宝塚花組日本青年館公演「銀ちゃんの恋」


第二場 キャバレーセット。


羽織っていた楽屋着と、捨てられていた手弁当を付き人(梅咲衣舞)に渡して、小夏が立ち位置に立つ。

ライト。

と同時に、満面の笑みを浮かべて踊りだす小夏。
紗幕があがり、女性ダンサーたちのセクシーなダンスが始まる。バックダンサーは聖花まい、雫花ちな、瞳ゆゆ、鞠花ゆめ。
4人とも、いえ、小夏いれて5人とも超可愛いです。はい。リリアンダルマ…とはいわないのかな、ひらひらした幅広のリボンが足元にゆれる、セクシーなダルマ姿なのに、まっっったく退廃感がないのはすみ花ちゃんの個性なんでしょうか。後ろの4人のほうが、それぞれにコケティッシュな小悪魔感をだそうとがんばってました。
すみ花ちゃん、立場的に必要とされる技術的なものには文句無いんですけど、こういう場面をやらせると、ただ若いだけじゃなくて本当にピュアすぎてしまうんですよね……うーん、ショー場面の一つとしては華やかでいいんですけど、ちょっと“場末のキャバレー”って感じはしなかったかも。
芝居としては十分“落ち目の元スタァ”になれているので、あとはショーでも七変化できるように女を磨いてくだされば、大劇場でも十分真ん中が務まると思うし、めちゃくちゃ楽しみにしています♪♪




音楽が変わって、男性ダンサーが登場。噂の(私の回りだけかも?)お2人です。煌雅あさひ&輝良まさと。この2人って90期と91期だったのか…。若いなあ。私が花組エンカレでアーサーに惚れたとき、研いくつだったんだ?
スパニッシュ系の紅い衣装に身を包んだ2人。まずはアーサーが小夏に絡む。色っぽい振付です…たぶん。うーん、すみ花可愛い………(*^ ^*)輝良くんと絡んでるときよりは、アーサーとの方が少しは色っぽいかな。さすが一学年とはいえ先輩は違いますね。


誘うように下手奥のテーブルへ向かい、そこでまたひとしきり2人に絡む小夏。ここ、初演と振り付け同じなんでしょうか…。なんだか、「あはは、うふふ」っていう声が聞こえてきそうな、なんだか幸せそうな3人に見えるのは気のせいでしょうか(←気のせいです)。ちょっと絡んで、ふいっと離れる間際に見せる微笑が、本当に可愛くって、たまんないんですけど。
アーサーも輝良くんも、真剣に「誘惑されてます僕」的な顔をしているから、楽しそうで幸せそうな小夏との対比で、面白い場面になってました。いっそ、“場末のキャバレー”っていう無理のある場面コンセプトをあっさり捨てて、「仲良し三人組のピクニックダンス」くらいの改変をしてしまえばいいのに!(←落ち目の女優はピクニックにはいかねぇだろ…)




音楽が変り、また女の子たちが戻ってきたあたりで、スターダンサー・光子(小夏)のヒモ(橘)が乱入してくる。
短銃を手に。

光子を銃で脅し、「お前は俺なしじゃ生きていけねぇんだよ(だから戻って来い、と続くのでしょう)…」と言ったあたりで、小夏が具合を悪くして倒れてしまう。

小夏が倒れたとき、とっさにびっくりして腕の中の小夏を支えるめおちゃんの腕の優しさが結構好きです。なのに、言葉ではいじめっ子なところがそそる。

「銀の字にせよ、水原にせよ、京都での仕事はろくなことがねぇなぁ」
という、その独特のリズムに乗った喋り方にかなりはまってます(笑)。





さて。
ちょっと考えてみたこと。場面の場所と、時間経過。

オープニングの「会議」は、まぁなかったことにして。
第一場の「オープンセット」は、太秦の東映映画村(旧撮影所)をイメージしているんでしょうか?あそこって京都駅から案外遠いので、顔も着替えもそのままでタクシーに飛び乗らないと40分後の新幹線は厳しいと思うんだけど…。あのとき、橘の顔はキスマークでいっぱいだったよな……いや、まぁ、そんなことはどうだっていいんですけど。

で、「御開帳」の場面があって、そこに小夏がお弁当を持って現れる。そして、そのままの衣装で撮影に臨む。その中に橘が出演していて、しかも「京都での撮影は…」と言ってるってことは、このドラマの撮影も京都で行われているってこと。

橘が、化粧を替えて、衣装を替えて、坂本竜馬からヒモになって、40分後の新幹線に乗ることは、物理的に不可能。
ってことは、「新撰組」の撮影から「ねぇ監督、この映画の主役は俺なんですかい?」の間に、1日や二日の隙間があるってことなんでしょうかねぇ…?



ちなみに、小夏がこのとき撮っているのはテレビの映像(「ブラウン管の前の視聴者には…」)です。たぶん、ドラマの一場面なんでしょう。
橘には都会的でシャープなイメージがあるので、それなりにテレビでも売れてるんだけど、銀ちゃんはちょっと古臭いタイプのスターで、映画にしか出てない…だから、あんまり一般的な知名度がない、っていうイメージで、合っているんでしょうか…。
銀ちゃんたちは、「映画スター」の最後の世代、ってことになるんでしょうね、多分。それ以降は、渥美清みたいな例外をのぞいて、「テレビに出ない、映画だけのスター」は存在しえなくなっていったはずだから。



…ま、石田作品なので、あんまり厳密な時代考証を考えても意味がないんですけどね。現代ネタもたくさん出てくるし。衣装もかなりてきとー(っていうか強烈)だし。



小夏が倒れて、撮り直しになったところで「俺はもう当分無理だよ~」と、また不思議なリズムに乗って言う橘さん。
橘「東京でクイズ番組のレギュラー回答者に選ばれたんだ~ピンポンピンポ~ン」
身振り手振りつきで。いやー、素敵だわめおちゃん。

スタッフの真瀬はるかさんが、本当にいい声で「撮影放棄でファイナルアンサー?(アドリブあり)」と訊くのにいつもうっとりします。何度でも書きますが、本当に巧いです、この人。
立ち去る橘に「ちょっと待って~~!!」と追いかける様が面白い。




机に突っ伏していた小夏が、ふと顔をあげて、待機している女の子たちに言う。
「ごめんなさいね」
4人はニコニコ笑顔で「いいのよお~」「お大事にね♪」と言いながら。
くるりと背を向けた瞬間に
「水原小夏!どうしちゃったんだろうねぇ」
「噂じゃ男に捨てられて酒びたりらしいわよ」
「一世を風靡した女優も、」
「今じゃ事務所のお・に・も・つ!」
噂、噂、噂…。

ぱちん、と弾けるように笑う女の子たちの残酷さが、「スター」という看板を背負う人の影なんだろうな、と思わせる場面。最後にトドメをさす鞠花ゆめちゃん(?)の、小悪魔的な可愛らしさと鮮やかな台詞回しが印象的です。



女の子たちの陰口を、ひそかに聞いていた小夏。
橘がおいていった小道具の短銃を頭にあてて……




暗転。

そして、銃声。





第三場A カラオケスナック「ししとう」

ここは……えーっと。

まず一つ忠告。初めての観劇の時は、下手奥はなるべく見ないようにして、舞台前面の銀ちゃん一党の芝居に集中してください。
うっかり下手奥を観てしまったら、もうそこしか見えなくて、話がさっぱり見えなくなりますから(T T)

下手奥の謎に挑戦したい方は、2回以上ご観劇くださいね♪





というわけで、下手奥のさあやと嶺乃くんについては、今回は触れません。
ぜひ、その目でじっくりと(二回目以降に)ご覧ください。




舞台前面。
前場からの続きのように、小夏の構えとそっくりそのまま、銀ちゃんが短銃を頭にあてている。
毎回見事な転換だなあ、と感心します。


後ろから短銃を取り上げて、「駄目じゃないですか!小道具からこんなもの持ち出して!」と叱るヤス。

完全に酔っ払いの絡み酒で、「俺、死にてぇよ…」と泣き喚く、銀ちゃん。

そこにかかる、名曲「みちのく一人旅」。『ここで一緒に死ねたらいいと』ってアレです。
「死にてぇよ」と「ここで一緒に死ねたらいい」と。あまりのタイミングの良さに、一瞬呆然とする銀ちゃん一党。でも、ヤスが咄嗟に手拍子をはじめて、盛り上げようとする。

そんな彼らの気持ちもお構いなく、銀ちゃんは嘆く。

「売れてねぇんだよ、俺…売れてねぇんだよ。だってさぁ、さっきからこの店、小一時間もいるのに、だぁ~れもサイン頼みにこないもんねぇ~~↓↓↓」


銀ちゃんのそんな嘆きに、右往左往する子分どもが超可愛いです。
細かくは覚えていないのですが(というか、毎回違うような)、カウンターの方に行ってカウンターの客かママ(月野姫花)に頭下げて頼んでたのはマコト(夕霧らい)かな?ジミー(望海風斗)は、銀ちゃんについていたような…。とりあえず、店の中をみて肩を落とすトメさん(日向燦)がとても好きです。

ちなみに、サインを貰いに来そうにない客は、全部で5人。カウンターにいるのが桜帆ゆかりちゃん、真ん中奥のカップルが初輝よしやくんと菜那くららちゃん、そして下手奥のカラオケ組が、さあやと嶺乃一真くん。
…あ、下手奥を視ちゃった。いけないいけない、舞台中央に戻りましょう。






銀ちゃんが、テーブルのボトルを掴んでラッパ飲みし始めると、いったん解散していたメンバーがよってたかって取り上げる。子分どもは、マコト以外はみんな小さいので、基本的に銀ちゃんが何かしても敵わない(手が届かない/笑)というネタになっているんですが、マコトもあえてここは小さく膝を屈めて、負けてあげているんですよね。可愛いなあみんな。


「てめぇら大部屋に、俺の気持ちがわかってたまるか!」と暴れた銀ちゃん、後ろに回って、下手奥のカラオケ組からマイクを奪い取る。

さあやから解放されてちょっと安心した感じの嶺乃くん(^ ^)。喉元を緩めた、ちょいセクシーな姿。
完全に傍若無人な酔っ払いと化して部下(?)にセクハラしまくりの秘書・さあや(←衣装がそのままだから、秘書のままと思っていいんですよね?)は、トメさんに羽交い絞めにされたまま、暴れまくり。せっかくのタイトスカートが……デキる美女が、台無しですよ中山さん。
ちなみに、さあやが頭に巻いている赤いチェックのネクタイは、本来嶺乃くんがしているはずのネクタイなんですよね…?(さあやがネクタイを持っている理由が無い)その背広にそのネクタイ?銀ちゃんじゃなるまいし、ちょっとセンスを疑うわ>嶺乃くん(←いや、嶺乃くん本人が決めたんじゃないから…)。




って、あぁいかん、だからそこは観ちゃいけないんだってば。
銀ちゃんに戻りましょう、銀ちゃんに。



マイクを奪いとった銀ちゃん、ママに難癖をつけ、真ん中奥のカップルテーブルからボトルを取り上げて撒き散らし……暴れまわった末に、ジミーとヤスに取り押さえられる。
それでも、そんな枷はものともせずに暴れ回り、トメさんを蹴り、ヤスを蹴り、、、興奮しきって、

ぽろっ、と、鼻の血管が切れてしまう…。



トメさん「銀ちゃんの鼻血はいりまーす!」
マコト「はい、よろこんでー!」
というやり取りは、ドラマシティの最初はちょっと外し気味だったのですが、後半嵌ってきてからどっかんと笑いが出るようになりました。ホントおかしいです。抜群の間。

「銀ちゃん、水でも呑んで少しおちついて…」
というマコトに、頭ごなしに
「おめぇ、俺に命令すんのか!?」
と難癖をつける銀ちゃん。

止まらない罵詈雑言の嵐に焦れたヤスが、いきなりカウンターに走る。
ナイフを掴んで、テーブルに突き刺して、場をとめて。

「銀ちゃん、いったい何が気に入らないんですかっ!」

キレた眼、というには、みつるくんのヤスは全体の雰囲気が可愛らしすぎるのですが。
でも、テーブルから抜いたナイフを見る眼つきは、結構イッちゃってて怖さがあったと思います。

「俺、銀ちゃんのためだったら……」

その思いに凝り固まって、他のものは何もいらない、と、思いつめた瞳。


ナイフを振り回すヤスを、心配そうに追いかけるメンバーたち。特に、奥のテーブル席のカップルを守ろうと、必死で手を広げて眼をつぶるジミーがめちゃめちゃ可愛いです。

そこに聴こえてくる音。銀ちゃんの高鼾。
一気に空気が弛緩する。

っていうかさ、ヤスもみんなも、酔っ払いの戯言に真面目に対応しすぎなんではないでしょうか…。





愛くるしいキュートな若いチーママが、「あんたたちの映画のことが出てるよ!」と新聞を渡す。
そこに載っているのは、監督の談話。
「滅びゆく新撰組の、集団のエネルギーを表現したい」、と。





ヤスに庇われて、安心して寝ていたはずの銀ちゃんなのに、なぜかそういう嫌な話は耳に入る。

「俺のアップ撮ってる振りして、群集撮ってやがったのか…やっぱり俺、主役じゃなかったんだ
な…」

切ない呟き。


今の、声がかすれまくっている祐飛さんの「切ない呟き」は、なんというか、最終兵器って感じに色っぽいです。思わず駆け寄って、抱きしめてあげたいって感じ。「大丈夫よ、ちゃんとあなたが主役よ」って、言ってあげたい気がするんです。
…たとえ、それが嘘だとわかっていても、そう言ってしまうのが女だと思う…。







さて。
公演をご覧になったみなさま。

この「ししとう」の場面、わずかに5分弱だって知ってましたか!?

この間にも、さあやと嶺乃くんが汽車ポッポをしていたり、カップルの片割れだったハズの菜那くららちゃんが、さあやの紹介で嶺乃くんといい雰囲気になって、肩を抱かれて出て行ったり、くららちゃんの代わりに初輝くんの隣にちゃっかり座り込んださあやが、今度は初輝くんにセクハラしようとしていたり、上手のカウンターの方はあまりちゃんと見る暇がないほど忙しい、密度の濃い5分間。


いやー、何度も書きますが、とにかく下手を観るのは、二回目以降まで待ってくださいね。
銀ちゃんチームもがんばってますので、一回くらい観てあげてください…。





ってなとこで。
次回は、銀ちゃんの『最高の』テーマソングからの予定☆




宝塚花組 日本青年館公演「銀ちゃんの恋」。早いもので、もう3日が過ぎました。



ドラマシティ公演と比べて変わったなーと思うのは、銀ちゃんとヤスの関係でしょうか。
どこかどう、と説明するのは難しいのですが、ドラマシティの時以上に、濃~いものが流れ始めたような気がします。ドラマシティの最初の週末あたりでは、お互いに一方通行で完全には伝わっていない感じだったのに、2週目にはそのあたりが解決したなーと思って……
で、青年館では、ちょっとイッちゃった感じに濃ゆいものが漂ってます(汗)。


祐飛さんも、みつるくんも、普段からあまり「女性」らしさを感じさせない人たちなので、なんか凄くナチュラルに「男同士の濃い友情」を表現しちゃってて、こわいくらいです。この二人、次の作品でちゃんと“男役”に戻れるのかしら(^ ^;ゞ

で。
お二人の喉は、一進一退、って感じですね…。
ある意味、長いことあの喉とつきあってきて、付き合い方がわかってきたんじゃないかと思う場面もありましたが。特にヤスは、かすれ声が色っぽくていい味になってますし。
ただ、銀ちゃんの一幕のソロが苦しそうなのがかわいそうで……ホント、万全な状態で公演させてあげたかったなあ……(←何者だよ)

そして、橘さんがちょっとヤバくなってきた感じ。小夏もそろそろ限界かも。
演出の根幹が怒鳴り芝居なので(つか作品はどれもそうですが)、キツいんでしょうねぇ…
なんとか最後までもたせてくれることを祈るばかりです。




まだ、全20場の第一場さえ終わっていない私のレポート。
今日は少し進めるつもりなのですが、その前に一つ、青年館で初めて気づいた下級生の小芝居チェックを。

第一場Bのオープンセット。銀ちゃん土方の出番が終わり、橘の坂本竜馬がジミーの沖田総司に迫りまくる場面。

その後ろで、並んで新撰組しているアーサー(煌雅あさひ)と輝良まさと。
「キッスさせろ!」と竜馬が騒ぎだしたあたりで、輝良くんがアーサーに投げキスしてるっ!?しかも、アーサーは笑顔で受けて、ちょっと照れてるっ!?

……私もそこを注目したのは初めてだったのですが、ドラマシティでもやっていたのでしょうか…?それなりに観ていたつもりっだったんだけどなぁ。
いやー、びっくりしました。そんなところをお見逃しないように、是非是非、2回3回とご覧になることをお勧めいたします(^ ^)。

ちなみにこの後、銀ちゃんの子分連中が橘に襲い掛かって動きをとめる場面でも、初輝くんや嶺乃くんは必死で橘を助けようとしてトメやヤスに蹴られているんですけど、アーサーと輝良くんの二人は、ほけっと様子を眺めているんですよね。やる気ねー感じで可愛いです。その癖、橘が解放されると慌てて寄ってって太刀を受け取ったりするのが素敵(^ ^)。
名前もない役ではありますけど、一人ひとり、キャラ立ってるなーと思う場面ではあります。




あと、小ネタとは違うんですけど、青年館公演の印象をひとつ。
とにかく、笑いが大きくて公演が盛り上がりますね。ネタの一つ一つが丁寧に拾われて、ちゃんと“爆笑”になるんですよ。
なんでだろう?よく「東京と関西では笑いのツボが違う」と言われますけど、つか芝居は東京の笑いなんでしょうかねぇ?ドラマシティでもそれなりに受けてたけど、青年館みたいに、なんかやるたびに爆笑の渦、って感じではなかったので…
それだけ、芝居がこなれて間が良くなったってことでしょうかねぇ。間が良くなったことは間違いないし、そう思っていいんなら安心なんですけど。

この作品は「笑って泣いて」が基本なので、笑うときは遠慮なく笑い、泣くときも遠慮なく泣いていいんだと思います。大丈夫!舞台を楽しんでくださいね♪






さて。
それでは、こないだの続きを。


「銀四郎さまぁ~♪」

黄色い声とともに、ミニスカートの『若い娘』が駆け込んでくる。
もう、その完璧なまでの『若い娘』っぷりときたら!!!

つい一瞬前まで子分どもを殴り倒していた銀ちゃんが、その声を聞いた瞬間に、人が変わる。

「と・も・こ・さぁ~~~ん(はぁと)」
満面の笑顔で、軽やかにステップを踏んで、朋子(華耀きらり)のところへ跳んでいく、銀ちゃん。その変わり身の早さに、客席は大爆笑。
子分たちはちょっとホッとしたような生ぬる~い笑顔で、そんな銀ちゃんを見守っている。

終始“黄色い声”で喋り続ける朋子。
頭は空っぽっぽいけど、上流階級のお嬢さんらしく品のある美形。っていうかもう、とにかくきらりんの朋子は最高に最高すぎて、コメントのしようがありません。立ち姿も衣装も髪型も化粧も声も喋りかたも脚も手も、なにもかもが完璧な朋子。完璧すぎて、一幕後半でちょっと違和感があるんですけど、でも、そんな違和感も何もかも吹っ飛ばして素敵なお嬢さん。
この後出てくる小夏との対比が見事でした。よくぞこんなキャラクターを考えてくれました。
ありがとう石田さん。




銀ちゃんの、子分たちへの
「てめぇら、いつまで朋子さんを待たせておくんだ。喫茶室でコーヒーでもお世話せんかい!」
という台詞と、朋子さんへの
「僕、メークを落としたらすぐ行きますから、喫茶室、こいつらと先に行っててくださーい♪」
という台詞の、声色から口調から、なにもかも違う役者っぷりが凄いなあ、と。別人格のように見えて、きっちりとコレも銀ちゃんの一面、とわかるところが凄い。久世さんの変わり身もすごいと思いましたが、祐飛さんもどうしてどうしてなかなかです。




朋子さんの細っこい後姿が上手袖に消えると、銀ちゃんは「こりゃ脈アリだ!!」と喜んで、スキップして舞台奥へはけていく
祐飛さんのスキップ、スキップと呼ぶには歩幅が大きすぎて、3歩くらいで奥についてしまうのがすごいです……。





一人舞台上に残るヤス。階段をためつすがめつチェックしながら上まであがって、振り返っておびえたりしています。いちおう、この時からヤスの頭には「銀ちゃんのために階段落ちを…」っていうのは、のどにひっかかった小骨のようにあったんでしょうね。言い出すきっかけが見つからなかっただけで。






そこに、下手から小夏が登場。華やかなステージ衣装に、楽屋着がわりのガウンを羽織って。

「小夏さん…?」
「…あんた、銀ちゃんについてる人ね」

ひくい、落ち着いた声。野々すみ花という女優が高く評価されるのは、この声のバリエーションだと思います。耳に優しい、幅のある声。エリスのような細く頼りない声でも喋れれば、こんな「落ち目の女優」の声も出せる、その見事さ。
ドラマシティでは、すみ花ちゃんのもつ純粋で一途な透明感と、“小夏”という濁りのある女優役の間で戦っていた感もありましたが、青年館ではすっかり落ち着いて、ひとりの「小夏」がいるという印象になっていたのはさすがだなあと思いました。


それにしても、この台詞。
「あんた、銀ちゃんについてる人ね」
…ってことは、小夏はヤスのことをほとんど知らないんですね。あんなにも、銀ちゃんの近くにいる二人なのに。名前も知らない。正式に紹介されたことがあるかどうか、ってくらいなんでしょう。
まぁ、朋子さんも銀ちゃんの子分たちを一人ひとり見分けているかどうかは疑問なので、あんな感じで「たくさんいる子分の一人」くらいに思っている可能性もあるかもしれませんが。

でも。

「……売れなくなった女優に付きまとわれて困ってるって、銀ちゃんから聞いてるでしょ」

こういう台詞が出るってことは、小夏自身は、ヤスたちは自分を知らない(ただ、スター女優としての“小夏”を知っているだけ)と思っているんですよね?


あんなにも、銀ちゃんの魂の近くにいる二人のはず、なのに。


しかもこのとき、小夏と銀ちゃんは5年(?)越しで同棲していたはず。つまり、ヤスは銀ちゃんの家に行ったこともないってことですよね?
銀ちゃんにとって、「映画界」という世界の中では、相方はヤスだった。小夏は「映画に命懸けてる」という銀ちゃんとヤスの共通の思いさえわかっていない。「映画」という世界の中で、銀ちゃんとヤスはいつも一緒で、同じ方向を見て、「良い映画」の為に全てを賭ける覚悟もあって。
なんていうか、精神的には、同棲しているようなものだったはずなんですけれども。

でも。
「現実」の世界では、銀ちゃんにとってヤスは部外者だった。「現実」の恋人は小夏で、家にあげて私生活の面倒を見させるのは小夏だけ。
ヤスの4畳半に行くことはあっても、ヤスが銀ちゃんの家に踏み込むことはない。そういう、一方的な関係だった二人。


魂を分け合って、でも現実には距離をおいて生きている二人の男の間に、割り込んできた一人の女。
彼女自身が割り込もうとしたわけではないけれども、結果的には彼女の存在が二人の関係をゆがめることになった。

彼女の希みとは、無関係なところで。








小夏は、好きな男に手弁当を作った自分を嘲いながら、ヤスに弁当包みを渡す。
もう、男の心が離れているのは気づいている。でも、どうしようもない。
手弁当を作ったからって、どうなるというものでも、ない。
でも、作ってしまった。
あたしって、莫迦……。




そんな気持ちを、受け取るつもりも、その器もない男。
ヤスから渡された「小夏の弁当」を、「モテる男は辛いねぇ」かなんか言いながらアッサリ受け取って、でも、朋子に見咎められるとためらいもなく棄てる、そんな、最低の男。

「銀ちゃん…女って、馬鹿ないきものよね…」

小夏の呟きが耳に沁みる。


上手から登場して、傷ついた小夏を慰める専務が、とても素敵です。役得。
渋くて優しい、素敵なオジサマ。とても、あの銀ちゃんと同期とは思えな…あ、いえ(汗)。

「私も女優です。キャメラの前では、涙は見せません」

そう宣言して、その言葉通り、ライトが入った瞬間に笑顔を浮かべる小夏………。






や、やっと第一場が終わった……
スピードアップするつもりだったのになあ(涙)。





宝塚花組 日本青年館公演「銀ちゃんの恋」、初日おめでとうございます!



銀ちゃん(祐飛さん)もヤス(みつるくん)も、なんとか声は出たようで、なによりでございます。声が出ないと始まらない台詞劇ですからねぇ(^ ^;ゞ
重畳重畳。

でも、小夏(すみ花ちゃん)と橘(めおちゃん)がちょっとヤバそうな感じだったのは少し心配。特に小夏は泣きの芝居が重要なので、気をつけてコントロールしてほしいなーと思います。
泣いたり笑ったりの1週間、最後までどうぞよろしくお願いいたします!




初代銀ちゃんの久世星佳さんもいらしてくださったそうで、さぞ祐飛さんも嬉しかったことでしょうね(*^ ^*)。久世さんも、可愛い愛弟子が自分の当たり役を再演してくれて、感慨深いだろうなぁ……。
初演とはずいぶん雰囲気の違う、花組版の「銀ちゃん」ですが、楽しんでくださったなら幸せです♪
風花舞さんとか汐風幸ちゃんとかはいついらしてくださるのかな☆(←来るものと思い込んでる)







さて。それでは、こないだの続きを少し。


橘が去った後(そして助監督の鈴木が追いかけていった後)、残った監督に、銀ちゃんが抗議をします。

「この映画は、この倉丘銀四郎が主役なんですか?それとも橘なんですかぃ?」

銀ちゃんは、要するに『土方歳三が主役なら、土方の見せ場である池田屋が最高のクライマックスであるべきである。そのためには、演出として一番盛り上がる(話題になる?)“階段落ち”は欠かせない』
ということが言いたいらしい。

ヤスたち銀ちゃん一家の子分たちも、ヤンヤヤンヤと囃し立てる。
「階段落ちのねぇ新撰組なんて、なぁ!」

…初演の頃なら「クリープを入れないコーヒーみたいだ」とゆー感じなんでしょうかねぇ(^ ^)。





で、ちょっと重たい音楽が入って、紗幕があがる。

第一場D 『御開帳』

プログラム読んで、このシーンタイトルには物凄くウケました(笑)。そっかー、「御開帳」なのか!!

ちなみに、ここでお披露目されるのは、階段です。
…13段の、木組みの階段。



ま、大劇場の26段(でしたっけ?)の大階段を見慣れている宝塚ファンにしてみれば、まぁ可愛らしい中階段(♪)って気がどうしてもしてしまうんですけど(滝汗)、そこはホラ、ココロのキレイなヒトにしか見えない、巨大な階段があるんですよたぶん(^ ^;ゞ





「東京から呼んだスタントマンが、この階段見て、ビビッてけぇっちまったんだよ」
大道寺監督(悠真倫)が、吐き捨てるように言う。

大道寺監督は、いい大学を出て東洋映画に就職し、スター監督として名を馳せている人なわけですが。
ある意味、銀ちゃんやヤスにも負けないほどの、ものすごい映画馬鹿なんですよね。ずいぶん無茶なこともやってきた。そのたびに、助監督の鈴木くん(白鳥かすが)みたいな人が苦労してフォローして、今までやってきたんでしょうね。

「俺だってやりてぇんだよ…」

無念をこめてそう呟いて、

「誰が死んでくれるワケ!?」

…で、大部屋連中にヤツアタリ。


さっきまで「階段落ちのない新撰組なんて!」と囃していた大部屋俳優たちが、階段の下でお互いに押し付けあいのおしくらまんじゅう。一番弱いジミーが最初にドツかれ、次にトメが蹴り飛ばされ、ヤスが投げ捨てられて

「美術部さんがせっかく作ってくれた階段だけど!!1/3にぶった切ってセコい階段落ちでもやりますか!?」

マコト(夕霧らい)の刀を奪い取って振り回す監督が、コワいです…。




けっ、と思いっきり吐き棄てて下手へ立ち去る監督。いやー、ドツき方も堂に入ったもんです。
…斬られ役、ってのはあるけど、ドツかれ役ってのもあるんでしょうかねぇ、技術として。銀ちゃんが乱暴をはたらくときの受け身の巧さは、上級生になるほど巧いなあと思うんですよね。やはり経験がものをいうのかな、こういうのも。

いや、それにしても、ヤスの受けの巧さは絶品です!身体柔らかいんですねぇ~(*^ ^*)。
猫は、長年祐飛さんのヤスを観てみたい!と切望していたんですけど、あらためて舞台で観てしまうと無理があるなー、と。身体の硬い祐飛さんがあんな役をやったら、初日の翌日から代役が立つんじゃないでしょうか。身体中あざだらけで、打ち身捻挫で朝起きたら動けなくなってそう……。
やはり銀ちゃんで正解だったのかも(ちょっと寂)。




監督が去った後、ちょっと俯いていた銀ちゃんが、顔をあげておもいっきりキレる。

「このぉ、根性なしがああああああ~~~っ!!」

子分たちを一人ひとり殴りつける銀ちゃん。
さすが銀ちゃん、監督のドツきとは格が違います。……やっぱり祐飛さん、宛書だよなぁ……。





殴りつける効果音にかぶさるように軽やかな音楽が入り、

「ぎんしろうさまぁ~~♪」という黄色い声が入ってからのことは、また、後日。




花組公演「銀ちゃんの恋」第一場B オープンセット/時代劇



軽快な音楽(ちゃんかちゃんか、って感じの/笑)に合わせて、立ち回りの撮影風景。
センターに土方歳三役の銀ちゃん(大空祐飛)、その後ろに沖田総司役のジミー(望海風斗)、マコト(夕霧らい)、煌雅あさひ、輝良まさと。
舞台前面には、こちらに背を向けて新撰組に対峙する、浪人役のヤス(華形ひかる)、トメ(日向燦)、嶺乃一真、初輝よしや。

見得をきって敵を睨みすえる銀ちゃん土方の、“上段の構え”を越えて頭の真上に剣を構える構えって…ああいうものなのでしょうか?土方の構えは。あれじゃあ力が入らないし、大振りになるだけだと思うんだけどなぁ。まぁ、土方の剣の腕はたいしたことない(“壬生の狼”と恐れられていたのは土方じゃない)っていう説もあるみたいなので、どうでもいいことかもしれませんが。

殺陣の斬られ役っていうのは、経験がものを言うので、下級生ばかりの今回の殺陣はちょっと厳しかったような気がします。殺陣師も映画界の殺陣師さんなので、普段の宝塚らしい殺陣とはちょっと違いましたしね。
花組さんって、殺陣のあるような江戸ものは…轟さんが特出した「野風の笛」以来?……いや、さすがにそんなことないだろう、きっと。月組も大劇場こそ覚えがないけど、中小劇場ではちょこちょこやっているし。苦しいなりに、みんな工夫してがんばってましたね。「キン、キン、ズサッ」ってう刃の音にちゃんと合わせていたところとか、みんなすごいなーと思いました。






下手にスタッフ陣登場。大道寺監督(悠真倫)、助監督の鈴木(白鳥かすが)、カメラマン(紫峰七海)。
ちょっと派手目な銀ちゃんの立ち回りを、追いかけるカメラ。フィルムが見るからに紙製なのがちょっと笑えますが、意外とカメラ本体のつくりは本格的です。
監督はゆったりとディレクターズチェアに座り(10ヶ月前には祐飛さんが座っていたアレですね)、回りをちあきがぱたぱたと飛び回る。きっと本当にあんな感じなんだろうなあ、監督と助監督の関係って。




銀ちゃんが何回目かのポーズを(カメラに向かって)キメたところで、その前をすーーーっと横切るヤス。同時に銃声が何発か響き、上手から派手な着物で芸者(菜那くらら、桜帆ゆかり)を両脇に抱えた坂本竜馬の橘(真野すがた)が上手から登場。




「ばっかやろう!てめえ今、キャメラの前を横切りやがったな!今のは俺のアップだぞ!」
ヤスの胸倉を掴み挙げて怒鳴りつける銀ちゃんは、そのまま下手の花道、いえ花道ではないんですけど、下手の舞台へりへ。
椅子に座らせ、鬢のあたりを直し、化粧も軽く直してかいがいしく世話するトメさん。
必死にうちわでパタパタ扇いでいるマコト。
一番下手で(…あれ?何をしてるんだ?何か世話をしてたと思うんだけど。銀ちゃんの刀の手入れかな?)しゃがんでいる、ヤス。


……まだ撮影は続いていて、新撰組はみんな出てるのに、マコト、あんただけそこに居ていいんかい?と思うんですが…




舞台中央では、短銃を構えた坂本竜馬が、刀を構えた沖田総司に気づく。
ぽいっ、という感じで芸者二人を投げ捨てて(←酷い)、

「会いたかったぜよ総司!」
「あんまりつれなくするもんじゃないぜよ。わっしの心は、でりけーとにできとるんじゃき!」

…ようするに幕末純情伝ネタなんですね、はいはい。
ここで、坂本に口説かれておろおろしているだいもんの総司が、死ぬほど可愛いです。あんなに可愛く嫌がったら、逆に燃え上がるにきまってるだろう。…確信犯としか思えん…。
それにしても、土方歳三主演の新撰組もので、大部屋役者が沖田総司を演じるなんてあり得ないと思うんですが。どうなんでしょうか。やらせてみたい気持ちはわかりますが。




長い長い、坂本竜馬と沖田総司のキスシーンの間に、本舞台は暗転。下手花道にライト。

「なぁヤス、橘のカット、これで何カット目だ?」

えーっと、と指折り数えて答えるヤス。15カットだそうです(Culさまご教示ありがとうございます)。そして、このときちょっとあらぬ方に視線を泳がせるトメさんは、とても芸が細かいと思いました。そして、な~んにも気づいてないらしいマコトが可愛い。

「…んで、俺は」

「3カット」

即答。だって、……数える必要、ないもんねー。

間髪いれずに、マコトを蹴り上げる銀ちゃん。涙目なマコト。
思わず目を背け、腰がひけてるトメさん。

「この映画は俺の主演映画だよっ!?」

嘆きながら向き直ってヤスを蹴り上げ、後ろのトメにエルボーを食らわす。

「今だってさぁ、俺の台詞なんてどんどんカットされて、橘と俺と、どっちが主役かわかんねぇよお~~~っっっ」

いいながら、椅子の上で身悶える銀ちゃん。…それがあまりに激しくて、椅子ごとどんどん進んでしまうのがメチャメチャおかしいです。ノンさんも同じようにやっていたと思っていたんですが、“椅子ごと進む”のはなかったらしい。……祐飛さんの駄々が最強ってことか?

「そりゃあもちろん、銀ちゃん主役っすよ!」

殴られても蹴られても、ヤスはそう答えるしかない。だって、ヤスの世界には銀ちゃんしかいないんだから。
今は、まだ。

何事か思いついた銀ちゃんは、手下どもを集めて何事か耳打ち。渋る彼らを団扇でペシペシはたきながら、撮影に戻る。




本舞台にライトが入って。
対峙する土方と竜馬。

橘「おんし、誰じゃい!」
銀「わーぁーーーたーぁーーーしーぃーーーはーーーぁー………」




くぅっ、と、椅子の上でずっこける監督。
思いっきり助監督をドつきながら、二人で腕をぐるぐる回す(←巻いて巻いて!の合図)。

もちろん、銀ちゃんは見やしない。
無視して、カメラに向かってたーーーーっぷりと百面相、いや、キメ顔を撮らせている。





今回の、演出的ハイライト、切り札を早速使う石田さん。
暗転中だったか、光が戻ったときだったかに、天からミニのスクリーンが降りてくるんですが。
そこに、この銀ちゃんの百面相、違う「キメ顔連写」をしっかり映してくれるんですよ。
これは、「Hollywood Lover」のオープニングに引き続き、舞台における映像の使い方としてベストなやり方だったと思います。


で。
何回か回を重ねてみるうちに、ふみかちゃん撮り方うまくなったなーーーーっ(^ ^)とか勝手に思っていたのですが。

……もしかして、録画なのかな、あれは?
カメラも本格的だし、袖まで続く尻尾(コード)をひきずってるし、しかも、私が観た回で一回、動画が出なくて静止画で誤魔化した回があったので、絶対ナマだ!とずーっと思っていたのですが……どうなんでしょうか。ナマであんなに見事に毎回構図ばっちりの絶妙なアングルで撮れるんだったら、ふみかはプロになった方がいいんじゃない?(んで、宝塚作品のビデオ撮りを全部任せたい!)って感じだしなー。

どうしたって映像より舞台のナマの役者を見るのがメインだから、映像はちらちらっとしか見て
いなかったのですが。
一度、じっくり観てみたいと思います。っつーか、DVDの特典映像に入れてほしい!お願いします!>TCA様






坂本竜馬と斬りあっていても、お互いカメラに映ろうと必死で、あるいは相手のアップを邪魔するのに必死で、まるでダンスでも踊っているかのような銀ちゃんと橘。
このときの橘さんの必死さがすごく好きです。銀ちゃんが必死なのは当たり前だけど、橘も負けないくらい必死なの。めおちゃんって割とクールというか冷めたキャラクターが多かったけど、こういうアツさも持っているんだなーと思いましたね。
しつこく銀ちゃんとカメラの間に割り込もうときょろきょろしているのが、すごく素敵。


そんな二人の争いの中で。
『銀ちゃんはいつも言ってた。スターは、芝居の呼吸とか、そんなこと考えちゃいけねぇんだ、って。主役はふんぞりかえってりゃあ、芝居は回りの芸達者がしてくれるもんだ、って!』
ヤスのモノローグ(録音)。内容はどうかと思うけど、一面の真実なんですよね。お能なんていうのはその最たるもので、「シテ」と「ワキ」は、そもそも家系が違うわけです。ワキにはワキの大事な仕事があって、シテの片手間にはやれない。専門職なんですね。
しかーし、あえて大空祐飛がやっている役についてそうコメントされると……ちょっとフクザツ。祐飛さんは決して「ふんぞりかえってる」主役型の役者ではないので。かといって「周りの芸達者」になれる人でもないしなぁ………(^ ^;ゞゞゞ



で。
そんな小難しいことはどうでもいいくらい、上手で腕を組んで(←だから殺陣の最中だっての)(←どうせ銀ちゃんと橘のアップだから大部屋は映らないもーん)、うんうんうなずいているヤスが、滅茶苦茶可愛いです。はい。







「銀のアップ、撮ってやれ。そしたら台詞言うから」

すっかり悟りきってカメラマンに指示する監督(←その間にも、助監督に八つ当たりしまくり)




そして、


…橘の隙を探している、銀ちゃんの手下たち。





そうそう。
このあたりは舞台と映像を観るのに必死で、あんまり両脇を見ている余裕がないのですが。この辺で、橘のマネージャー(紫陽レネ)が上手に登場してますよね?確か、芸者さんたち二人と上手の花道もどきのところに固まっていて、彼の持っている音の出るおもちゃ(京都土産か何かか?)の音が出てしまって大慌て、という一幕があるんですが。
…紫陽さんのファンの方、あそこで何が起こっているのか教えてください……(お願い)



たしか、銀ちゃんが完全にカメラを独り占めして百面相やっているのに焦れた橘が短銃の引き金を引くんだけど、弾がねい!ねぇ~!」叫ぶ、という場面の前後だったと思うんですが<マネージャー






…そのあたりできっかけを掴んだ銀ちゃんの部下たちが、思いっきり橘を取り押さえてしまい、思う存分銀ちゃんに場面を与えます。
橘を助けようと襲い掛かってくる“橘の部下”たち。新撰組同士で取っ組み合っているのがめちゃめちゃおかしい(笑)

で、張り切った銀ちゃんが「わたくしがぁ、ぁひぃ~じぃ~かぁ~たぁ~」ってやりはじめたあたりで、



フィルム切れで撮影終了。


監督は、鈴木にトドメをさしてましたね…。




橘さんは(銀ちゃんと違って)売れっ子なので、この後すぐに別の撮影があるから「すぐに京都行きに乗らなくちゃ」いけなくて、「もう無理だよ~♪」と言い置いて去っていきます。このときの、めおちゃん独特のリズムに乗った喋り方が最高に楽しい。
撮り直しが決まって、慌てて橘を追いかける鈴木。あの情けない走りっぷりが、ちあきの可愛いところです。




あらためてプログラムをみると、作曲・編曲は高橋城/甲斐正人なんですねぇ…。初演が久世星佳、風花舞、汐風幸。再演が大空祐飛、野々すみ花、華形ひかる。なんというか、腕の揮い甲斐があるような(いかにボロを出させないかが腕のみせどころ、って意味で)ないようなキャストだったんですねぇ。……いや、そもそもテーマ曲が既存の名曲「蒲田行進曲」なんだもんな。やぱり腕の揮い甲斐は無いほうかな。
でも、BGMの音楽はどれも最高なんですよ。場面に見事に色がつく。リズムが楽しくて、BGMになりきらない、主張のあるBGMなんですよね。ああいうのを存分に生かせるところは、石田演出のいいところなのかもしれません。






この後は、「階段落ち」の中止に異を唱える銀ちゃん一家(←土方歳三の名場面だもんね)と監督の言い争いがあって、「階段」のご開帳、となりますが。



この調子で書いていったら楽が終わっても終わらないことに気がついたので、次からは少しスピードアップしたいと思います。がんばります。………無理かもしれませんが。





花組全国ツアー公演のみなさま、千秋楽おめでとうございます!
最後も盛り上がったみたいですね♪CSニュースの放送は週明けかな?楽しみ♪




さて。
「銀ちゃんの恋」青年館が始まったら、たぶんあっという間に終わってしまうだろうと思われるので、今から少しづつ書き始めたいと思います。
間違いや見落としなどありましたら、都度ご指摘くださいませ。







まずは、一ベル(開演五分前)が鳴ってから少しして流れ出す、客いれの音楽。花組生のコーラスによる「蒲田行進曲」を、お聞き逃しなく!

途中で、銀ちゃんのアナウンスが入ります。「本日はようこそおいでくださいやした!倉丘銀四郎です」だったかな。アクセントの微妙なべらんめえ調の響きが銀ちゃんらしくて、かっこいいです。っていうか、こういう喋り方をすると絶妙に汐風幸ちゃんに似てる……ような気がする。もともとの声質が似てるのでしょうか。それとも、アクセントを似せているのかな?






プロローグ(企画会議)

白い垂れ幕の幕前で、専務(眉月凰)と秘書・中山(初姫さあや)が会議中。
ちなみに、初演ではもっと人数も多くちゃんと会議らしい感じで、大空さんも重役の一人だったみたいですね。すいません、ビデオ一回観たっきりのねこは何も覚えてないらしい……。


さあや「そのノートに名前を書かれると、その人は必ず…」
専務「死ぬ、だろう?DEA○H NO○Eの二番煎じかね!?」
さあや「いいえ。太ってしまいます」
専務「太るぅっ!?」
さあや「タイトルは『デブ・ノート』。他に、『萌えよ!ドラゴン』…じゃなくて『燃やせ!体脂肪』『ウェストサイズ・ストーリー』と、メタボ三部作」
専務「メタボ三本立てだとぉ~~!?」


…今ちょっと、書いていて自分に驚いてしまいました。完璧に覚えてないかおい?(違うかも)


ただ。
月組ファンとして、一つだけ突っ込みたい!
ただしくは、『ウェストサイズ・トーリー』ですからっっっっ!!>石田さん
(中村一徳さんの「プレスティージュ」ネタですね)




ここは、最初に観たときに、いずれもっとアドリブだらけになるのかしらと思ったのですが、私が観た範囲ではアドリブはなかったですね。専務の反応が、その日によってすごく激しいときと、ちょっと小馬鹿にしたような感じの時とありましたけれども。

専務は落ち着いたグレーのスーツに半白の髪。渋くて素敵なオジサマでした。
さあやは肩までのボブに臙脂色(?)のタイトなスーツ。スカートから覗く脚がきれい。サディスティックなピンヒールに細縁のめがねがキリリと似合って、かっこいいキャリアウーマン…に、一瞬、見えます。
……一瞬だけど(^ ^;ゞ。





専務のメタボ三本立てだとぉ~!?」あたりで効果音が入って、白い幕にシルエットが映る。

「ご両人!お静まりなされよ!」

幕の向こうで見得を切る、銀ちゃんのシルエット。堂々たる姿。

さあや「あ、あなたはだぁれ?」
専務「か、会議中だぞぅぉ~!」(歌舞伎の悪役が見得を切るような感じ)


銀「ふっふっふ。問われて名乗るもおこがましいが、姓は倉丘、名は銀四郎~!」

口上と同時に“どんがらがっしゃん”、と効果音が入り、眩しいフラッシュが瞬く中、白い幕が切って落とされる。
フラッシュに照らされて、コマ撮り画像のようにパタパタとひらめいて落ちていく、布。


そして、



その後ろに立ちはだかる、白黒の新撰組羽織。




デカいなあ、と思いました。
舞台での大きさ、居方の雄大さ、そういうものとは縁がないひとだと(失礼ながら)思っていたので。
ドラマシティの舞台いっぱいに、銀四郎の姿が拡がったように見えたのが、とても新鮮でした。

イブラヒム兄上の巨きさは、衣装のおかげだけではなかったんだな、と。
花組に来て、一回りも二回りも大きくなった祐飛さん。研17にもなって未だにのびしろがあるってどうよ、と思わないでもないんですけど(汗)、…しみじみと“凄い人なんだなあ”と思います(*^ ^*)。





銀「黙って聞いてりゃ好き勝手なことをほざきやがって!てめぇらみたいな野郎は、ぁこの土方歳三が、ぁ天誅をぉくだすぅ!」

なりきってキメポーズを崩さない祐飛さんが、かなりチャーミング。
そして、この前後で両袖からするするっと出てくるセットに密かに乗っている勤皇の志士たち(上手がヤス/華形ひかる、下手がトメ/日向燦)が結構ツボです。




「ちょこざいな田舎侍が!」

と、こちらもキメポーズをばっちり決める専務もとっても素敵なんですけれども。

でも、ここはなんといっても、手を挙げて合図をしながら、あごをあげて

「ものども!やっちまいな!」

と低く怒鳴り、音楽が入ったところでくるっと踵を返しがてら軽くウィンクしてハケていくさあやが、それはそれは最高に素晴らしいです。……最初、何回か観るまで「やっておしまい!(byドロンジョ様)」と言っているようにしか聞こえなくて、3回目か4回目かに「……あ、違った」と思ったことが懐かしいです。

でも、今でも「やっておしまい!」と言ってほしくてたまらない(汗)。





ここからはスムーズに、映画「新撰組」の撮影風景に入るのですが、
……長くなるのが目に見えているので、ここで切ります。

それにしても、ここまで台詞を覚えている自分に感動してしまいそう…(間違いもたくさんあるような気もするので、ご指摘をお待ちしております!)。
……この貴重な記憶力、仕事で発揮できたならどんなにか………(寂)

ねぇ、上司?(^ ^;ゞ。




宝塚花組ドラマシティ公演「銀ちゃんの恋」。

約一週間ぶりの観劇でしたが、いろんなピースがひとつづつ填まっていく様子をつぶさに観せていただいたような気がします。銀ちゃん、小夏、ヤス、橘……花組27名+邦さんの総勢28名が、一人ひとりキャラクターを成立させて、世界を作るためのピースになりつつ、なおかつ自分を輝かせていく姿、を。




中でも、小夏とヤス、という、事実上の主役コンビが、それぞれに、「野々すみ花」VS.「小夏」、「華形ひかる」VS.「ヤス」という闘いに、徐々に決着をつけつつあったのが爽快でした。

純粋で、ピュアで、「結婚に憧れるただの女」であった「元女優」と、
純粋で、ピュアで、「映画に命をかけた男」というより「決して手に入らない夢に心を奪われて」いる「ひとりの男」。
初演では、もっと生々しく毒のある『迷いを捨てられない一人の人間』として表現されていた二人が、あまりにもピュアな存在としてそこに在るので。
それゆえに、彼らによって描き出される「銀ちゃん」という存在もまた、あまりにもピュアで純粋な、「孤独な子供」としての表現形を与えられてその世界を生きることになった。

背中に「孤」の字を背負った、幼子のように。







小夏自身が朋子に語るとおり、「子供のまま(身体だけ)大きくなった」銀ちゃん。

“子供”という存在の、どんなにも純粋で、ピュアで、残酷で、他人の弱味を見逃してあげられなくて、自分に甘くて、そして嘘つきでいられるところが物凄く強く出た、タイトルロール。



祐飛さんの銀ちゃんは、あまりにも孤独で、言葉として表現する台詞はすべてが嘘で、なにひとつ本当にことを言おうとしないのに、
自分が「大人」だと思っている大人は、絶対に共感することのできない存在なのに、

なのに真っ直ぐに、世間の向かい風に正面から立ち塞がって、後からついてくる心弱い人々を守ってあげられる巨きさがあった。

子供のくせに。

「君を愛せもしない俺が、君に愛されたいと思う」

そんな本音を呟いてしまうくらい子供なくせに。


人を愛することを知らない子供が、
まだ愛されることしか知らない子供が、

「笑いあえば笑いあうほど離れていく…そんな気が、する」

微笑みあい、挨拶することでは、決して構築できない人間関係。
もっと生々しく、熱く、拳で殴りあい、刃で傷つけあって、はじめて理解できる、魂の形。
それは「子供たち」の人間関係。言葉では説明できない感情をぶつけあって、共感しあう子供たち。
『言葉』という武器を持つ大人たちには、決して理解できない人間関係。



この世で一番、タチの悪い子供のくせに、
誰よりも優しくて思いやりがあって、
誰よりも一番、世界を愛している、それが銀ちゃん。

そんな、ピュアな子供の『銀ちゃん』を描き出す、小夏とヤスの、穢れを知らない純粋さ。








先週末に観てから、一週間。今回の遠征で、総勢27人(+1)のタカラジェンヌたちが、表現者としての階段を一段上がる瞬間を目撃できたような気がします。
苦しんで、悩んで、人間の嫌な部分・黒い部分を見据えて登った一段は、技術をいくら訓練しても決して昇ることのできない一段で。外側をどれほど磨いても登りきれない一段で。時分ちょうどの作品と出会い、指導者に出会い、そして、正面から闘える共演者たちに出会って、初めて昇ることができるものなのでしょうけれども。

初演で銀ちゃんを演じた久世星佳さんが、CSの番組「華麗なる卒業生たち」で「銀ちゃんに出会って、卒業を意識した」という意のことを仰しゃっていらっしゃいましたが、やはり「銀ちゃんの恋」いえ「蒲田行進曲」という作品世界は、タカラヅカ的に異色であるばかりでなく、役者を『今まで居た場所』から一段押し上げてしまうパワーがあるのだろう、と思うのです。





ドラマシティの千秋楽まで、あと2日。
そして、来週には青年館公演が始まって、またあっという間に終わってしまう。
演じる皆様は、精神的には苦しくて辛くて、肉体的にはキツくて痛くて、大変な作品だと思いますけれども。
観ているだけでも、胸が痛くて切なくて、感情のアップダウンが激しすぎて、集中しすぎて観終わった後でぐったり疲れてしまう作品なのですけれども。


それでも。


短い時間ですけれども、この作品に出会えた幸運に感謝をして、悔いのないように楽しんでほしいと思います。
……ファンのみなさまも、ね!









ところで。
帰ってきて、録画していたCSのナウオンステージを観たのですが。


祐飛さん。あなたはドラマシティは「ブエノスアイレスの風」以来ではありませんよっ!!
……ま、ファン的には忘れたい作品の一つだし、ご本人がなかったことにしたい気持ちも、わからないでもありませんけどね……(^ ^;ゞ




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