大江戸鍋祭

2011年12月24日 演劇
Merry Xmas ♪

まず最初に、叫ばせてください。
藤咲えりちゃん、中日劇場公演「仮面のロマネスク」、トゥールベル夫人おめでとうございます!
そして、高橋大輔さん、優勝おめでとうございます!(^ ^)。




イルミネーション輝くクリスマスイブに、明治座にて、「大江戸鍋祭り~あんまりはしゃぎ過ぎると討たれちゃうよ~」を観劇してまいりました(^ ^)。

いやー、楽しかった!(はぁと)


『戦国鍋TV~なんとなく歴史が学べる映像~』のキャストを中心としたお祭り舞台。
今回のテーマは「忠臣蔵」(!)それも、五代将軍徳川綱吉の側用人・柳沢吉保を中心に描いたコントまじりのお芝居(音楽あり)と、戦国鍋TVの人気ユニットによるミニショー。お芝居2幕、ミニショー1幕の3幕構成で、どっちもめっちゃ楽しかったです。


テレビの方は私の家では入らないので視ていないのですが、歴女のはしくれとして(^ ^)参加させていただきました♪

ご参考までに、戦国鍋TVのサイトはこちら。
http://www.tvk-yokohama.com/sengokunabe-tv/



あんまり詳しいことを書くとネタばれになるので割愛しますが、、、いやーーーー、ありとあらゆるいろんなパロディが満載で、本当に楽しい時間でした!
私的には、「最後のダンス」と「ベルサイユのばら(アニメ版)」のパロディが一番受けたかなあ(^ ^)。あまりに笑いすぎて胸が苦しくなりました(汗)。


脚本は穴吹一朗。演出は板垣恭一。
コント混じりとはいえ、話は案外ちゃんとまとまっていたし、役者に任せる場面もあって、とても良く出来ていたと思います。ある程度の予備知識は必要ですが、番組をあまり視ていなくても問題なかったし、こういう作品にありがちな内輪受けのネタも少なくて、普通に楽しめる作品でした。
役者さんたちも、「テニスの王子さま」などなどの作品で活躍している人たちが多く、歌もダンスもそこそこできて、課題の芝居もまあまあみれる、という、「舞台役者としての基礎体力」のちゃんとした人が多く、安心して観ていられました。


とにかく、楽しかった!!
楽しいクリスマス・イヴでした(^ ^)。



青山劇場にて、劇団☆新感線の「髑髏城の七人」を観劇いたしました。


2004年の「アカドクロ」「アオドクロ」共演のときはチケットが取れず観られなかったこの作品。
なので、このタイトルの作品を観るのは初めてだったわけですが。


面白かった!
のも事実なんですが、それ以上に、痛い……とも思いました。

『神』を喪った三人の若者の、「その後」の物語。
全てを捨て、『神』を忘れて生きようとする者、偽の『神』になろうとする者、そして、生き残った罪を贖うために、新たな「護るべきもの」を造りだした者……
彼らが皆若いからこそ、『神』への憧憬と喪失の慟哭がストレートで純粋で。
その純粋さと、若いからこそ簡単に「絶望」に浸ることもできず、なんとか生きる道(理由)を探そうとあがく姿が、とても痛々しかった。

「髑髏城」という物語は、大人の物語ではなく若者の物語なんだな、と、
初めてみた「髑髏城」が“ワカドクロ”であった私には思えてなりませんでした(^ ^)。


話は相当に無茶苦茶で、特に2幕中盤あたりはかなり支離滅裂なんですが、なんていうか、理屈を吹き飛ばすようなパワーのある作品だな、と思いました。
小栗旬をはじめとする、若い役者たちの熱いエネルギー。そのパワーのほとばしりが、いろんな支離滅裂をフォローして、「まあ、そんなこともある……のかな?」という作品にしていたのはすごいなあと思います。



何度か再演されている作品ですので、ここから先はネタばれでいきます。
まあ、大したネタばれではありませんが、未見の方はご注意を。



脚本の中島かずきがプログラムに書いていますが、この作品、前回の上演までは捨之介(小栗旬)と天魔王(森山未來)が一人二役で演じられていたそうですね。
戦国乱世の「第六天魔王」を名乗っていた織田信長の影武者たちだから、同じ貌をしている、という設定だったそうで。


今回、天魔王と森蘭丸(早乙女太一)が信長の小姓、捨之介が草として人々の間で暮らす情報屋だった、という設定にしたことで、三人のキャラクターを若く(信長と同年代ではなく、青春真っ只中の若者に)設定することができて、荒唐無稽な物語に説得力を持たせることができたんだと思います。
役者も若いし、その方がいいと思う。捨之介と天魔王を裏表にすることで物語が深まる部分もあるけど、蘭丸を加えた三人が顔を合わせて会話することで、初めて見えてくるものもあるはずだから。

ただ、結構根本的な修正なので、最終的に物語が支離滅裂になったのはこの変更のせい、というのは言えるかもしれませんが。
……ラストに将監(栗根まこと)が捨之介を天魔王の身代わりとして告発する、っていうエピソードなんて、今回公演だけを観ていると意味不明だしなー。どうしてその二人の間で身代わりだなんだっていう話がでるの?って感じだった。
あと、蘭丸のキャラ設定にもだいぶ無理を感じたんですが、これは最初からあったキャラなんでしょうか…?(←すみません)「天(信長)地(捨之介)人(天魔王)」っていう言葉が象徴的に何度も出てくるんですが、これだと蘭丸の入る余地がないんですよね。なので、蘭丸は当初はいないキャラだったのかな…?と思ったりもして。

結構、これに付随する疑問点はいろいろあるので、「主人公」を二つにわける、という根本的な変更をした割には詰めが甘いなーという気はします。でもまあ、新感線だから(^ ^)細かいところは気にしない精神で観るのが正しいんだろうな、と思いつつ。




卑怯な裏切りによって「織田信長」という『神』を喪った三人の若者。

『神』と直接話す立場でもなく、草の者として、耳として、市井に混ざって暮らしていた若者は、『神』を喪ってすべてを捨てる。
浮世の義理もなにもかも全て捨て去って、「捨之介」と名乗り、諸国を流れて……そして、東の地へたどり着く。『神』の復活を望むつもりはない。ただ、『神』のいない世界はちょっとつまらない、くらいは思っている。『神』はエネルギーの源泉であり、破壊と創造、そして、進化のきっかけそのものだから。
でも、新しい『神』を欲するつもりは、ない。自分が『神』になるつもりも、ない。
自分にとっての『神』は信長公ただ一人で、誰も彼の替りにはならないのだから。

『神』に傍近く仕えてきた小姓頭(?)は喪神の事実に耐えられず、東の地で髑髏の城を築く。怨敵(浅井・朝倉)の髑髏を杯にした神にならい、神の髑髏を仮面と化して自らを神の偽姿と為し、神の骨から造った杯で酒を飲む。
我は『神』を喪ってなどおらぬ。ほれ見よ、此処に『神』は在る。この髑髏の仮面を着けた我は、信長公と同一化し、乱世を支配する破壊神、第六天魔王となるのだ……。

信長と共に本能寺にありながら、主を護れず、生き延びてしまった森蘭丸。
雑賀衆の生き残りと出会うことで新しい人生に出会った彼は、無界屋蘭兵衛と名乗り、『無界』を護ることに生きる意味を見出そうとする。そんな彼が、『神』の似姿に出会ってしまったならばどうなるか。
一幕はかなり、私的に蘭兵衛(蘭丸)主演、って感じで観てました(^ ^)。『神』を護れなかった痛手に耐えて、新しい「護るべきもの」を得た男の一時的な充足と、永遠に埋まらない空洞の相克。「護るべき者」を護るために、護れなかった『神』と闘うために、自分自身に賭ける彼の涼しげな背中がとても印象的です。
結局彼はその賭けに敗れ、二幕ではこの作品の「支離滅裂」っぷりを天魔王と二人で分け合うことになるわけですが(^ ^;ゞ、そこまでの展開に説得力があったので、まあ良いかな、という感じ。

個人的には、森山×早乙女のキスシーンは元々あったものなのか、誰かの希望で今回入ったのか、そのへんはっきりしてほしい!という気持ちでいっぱいです(←そこ?)



時代的には(パラレルワールドだけど)本能寺の変から8年後、秀吉による小田原攻めが始まる頃。

旧都鎌倉のさらに東、大きな湾の奥の荒地の片隅に、見事な城が築かれた。
天魔王を名乗る男がうちたてた、それこそが髑髏城。
南蛮渡来の鉄甲冑に身を固めた「鉄機兵」たちの集合隊「関東髑髏党」の首領として、人々に暴虐の限りをつくす天魔王。
ある日、髑髏党の面々がある村を襲う。村人は皆殺しにされ、最後に可愛い娘たちが殺されそうになったところに割って入る荒武者たち。。若さにまかせてエネルギーをぶちまけるだけの彼らが、訓練された軍隊に太刀打ちできるはずもなく、あっという間に追い詰められ、首領の兵庫(勝池涼)も殺されそうになる。

そんな場面で、颯爽と登場して良いところを全部持っていく捨之介。

小栗旬の魅力が、半端ない勢いで輝いていて、びっくりしました。
美形で動けて(殺陣がとっても格好良い!さすが!)、ちゃんと強そうに見えるところが素敵。そして、強いからこそすごく優しい、そういうところも真っ直ぐに表現されていて。
さぎり(仲里依紗)を心配する気持ちもすごく伝わってきたし、不器用な優しさには最初から最後まできゅんきゅんし通しでした(^ ^)。ホントにかっこいいなー、小栗くん。

兵庫の勝地さんも、美形で扮装が良く似合ってて、とても素敵でした。
物語的には主人公といっても良い役(本格的に髑髏城に向かうときの真ん中は彼だから)なのですが、ものすごく良かったです。
2幕の後半の立ち回りで、兄さの磯平(磯野信吾)と二人、背中あわせに鎌で闘う殺陣がめっちゃ格好良かった!!彼の部下たちの最期もとても切なくて、彼らにこれだけ慕われた兵庫は、やっぱりそういう星のもとに生きてきたんだろうな、と思いました。

一休みするために、関東一の色街・無界を訪れる一行。

無界の主人、蘭兵衛。いやー、早乙女太一くん、台詞が喋れるようになったねえ~!(感涙) 表情のあまり動かない、声にもあまり感情を出さない役なのですが、台詞が普通に聞けるようになったので、その裏の激しい感情が透けて見えるようでした。髑髏城に向かいながら笛を吹く場面の凛とした涼しげな佇まいと、髑髏城で天魔王と対決する場面の激しさ。あの美しい佇まいを観たら、思わず汚してしまいたくなる天魔王の気持ちもわかる……みたいな、なにか邪なものを呼び覚ましてしまうような存在感は、、、さすがだな、と。
そして、相変わらず流れるような美しい殺陣に見惚れました。いつまでも観ていたかった……(真顔)
後半の、薬酒に理性を奪われてしまってからの芝居はまだまだ(←でも、あれは脚本にも問題があると思うけど)でしたが、足許があやうくなって、殺陣の動きもそれまでと全然違うふうになる……のが凄いなあ、と思いました。身体で芝居するひとなんだな、やっぱり。

無界でトップを張る極楽太夫(小池栄子)。
佳い女でした! 美しくて色っぽくて強くてキツい、最高の女。
新感線には、よくこういう佳人が出てくるけど、本当に素敵でした(*^ ^*)。なんだろう。ちょっと元星組の水輝くん系の顔立ちでしたが、声も気風の良い声で。うん、本当に、気風のいい女って感じでしたね。良い役だったな~!

無界で女を買うやせ浪人、狸穴二郎衛門(千葉哲也)。いやー、渋くて裏表があってどっしりしていてとても良かったです。彼の正体は、まあそうだろうなと思って観ていたのでどちらかというと「案の定」って感じだったのですが、裏表のどっち側も良い男だなあと感心しました(*^ ^*)。



物語的な弱みは、上でも書いた「捨之介と天魔王が一人二役」という設定をやめたときの積み残しが結構あるのと、秀吉の関東攻めの話と天魔王の関東搾取の設定がごっちゃになって、捨之介にせよ、蘭兵衛にせよ、天魔王の敵ではあるけども、秀吉に味方するいわれがない……というあたりかな、と思いました。
まあ、これも一人二役をやめたことによる弊害なのかもしれませんが、わざわざ秀吉の関東侵攻寸前に、髑髏城を攻めようとすることになるのが理解に苦しむんですよね(T T)。

まあ、新感線ですから。
これぞ冒険活劇!!という明るさと、昏い闇が混在しているところがとても楽しかったです。


以前、「SAMURAI7」を観劇した時にも思いましたが……
巨匠・黒澤監督の「七人の侍」、観るべきだなあ。


そして。
殺陣がホントに見ごたえあって素晴らしかった!
というのを最後に叫んで終わりたいと思います(^ ^)。




シアターサンモールにて、Studio Life公演「ファントム」を観劇してまいりました。


この作品は、ガストン・ルルーの「オペラ座の怪人」に触発されて、イギリスの作家スーザン・ケイ(1953年生)が書いた二次創作作品「ファントム」を原作としたお芝居。

「オペラ座の怪人」は色々と謎の多い19世紀のゴシックホラーですが、これを現代人の感覚で読みほどき、僅かな記述を手がかりにエリックの少年時代~青年期~壮年期を構築しなおしたのが「ファントム」。私が初めてその存在を知ったのは、宝塚がコーピット版を上演するよりずーっと前だったのですが……実はまだ読んだことはないんですよね(ちなみに、ルルーの原作も読んでない)。

で、まあ、当時の私はロイド・ウェッバー版の「オペラ座の怪人」のファンだったので、そのファン仲間が読んでいろいろ感想をきかせてくれたわけですが……
ぶっちゃけ、ファンあがりの作家が書いたファンフィクションだと思っておりました(汗)。



今回、この作品を観てちょっと調べてみたんですが、スーザン・ケイは、1987年(?)に出版された「Legacy(エリザベスIの物語)」で賞をいくつかもらっているんですね。Amazonの著者評によると、綿密な調査研究とそれに基づいた明解なストーリーの組み立てと卓越した文章力が特徴……という感じ?(←英語なのであまり自信ない)。日本でいえば、永井路子……はケレンみが強すぎるかな。どちらかというと塩野七生みたいなイメージの作家なのでしょうか?

1990年に37歳で「ファントム」を発表。
彼女の著作で日本語に翻訳されたのはこれだけのようで、日本で「スーザン・ケイ」といえば「ファントム」なのですが、イギリスでは違うのかな。逆に、「ファントム」といえば「スーザン・ケイ」なのかも?という気もしますが。




同じ「Phantom」というタイトルでも、コーピット版の原作はあくまでもルルーの「Phantom Of The Opera」なんですよね。今回上演された芝居の原作とは、エリックの誕生にまつわる設定が全く違っています。
でも、なんというか……スーザン・ケイ版のベラドーヴァとコーピット版のベラドーヴァは、同じ人物の裏表なのだということがすんなり納得できたような気がします。

ルルーの本を読んだことがないのでなんとも言えませんが、エリックにとっての「母親」は、さぞ痛々しい存在だったのだろうな、と思うんですよね。自分の子供を愛せない母親は現実にも存在します(子供が“正常”であるかどうかとは無関係に)が、愛せないことに罪悪感を感じない母親はいないと思うんですよ。それは心の傷となり、その傷ゆえに子供をさらに傷つける。自分が母親を傷つける存在であると判らせることによって。

子供の容姿を否定して、ひたむきに無償の愛を捧げたコーピット版のベラドーヴァと、子供の見た目に惑わされて本来の姿を見失い、愛と憎悪の間を彷徨うスーザン・ケイ版のベラドーヴァ。そして、「母にも嫌いぬかれ」と哀しく歌う、ロイド・ウェッバー版のファントム。どれもそれぞれに痛々しくて、どれが一番…とか言えないなあ……。




今回のStudio Life「ファントム」は、2幕で原作の半分(7章のうち3章まで)を語り終え、最後は to be continued...で終わりました(@ @)。
たしかに本の厚みをみても長大な原作で、あれを2時間にまとめるのは無理だなあと思うのですが、、、しかしまさか、まとめる努力を放棄して「続く☆」で終わると思わなくて、とってもびっくりしました(^ ^;ゞ

ま、サトクリフの「血と砂」を途中でぶたぎって「愛と死のアラビア」にしてしまった某歌劇団の谷さんよりは良かったかな?と思いますけど(- -;



オペラ座どころか、パリに近づいたこともないであろうエリックの物語。
クリスティーヌもラウルもキャリエールも誰も出てこない、彼らに出会う前のエリックの物語。

以前、藤原竜也主演で観た「エレファント・マン」につながる世界観が新鮮でした。



長くなってきたので、作品そのものやキャストについてはまた後日。


新宿高島屋にて、「フラガール全国きずなキャラバン」のイベントに参加してまいりました。


3月11日の東日本大震災で被害を受け、現在休館中のスパリゾートハワイアンズ(旧称・常磐ハワイアンセンター)の専属ダンシングチームによる全国巡業の一環としての公演。

企画が最初にニュースになったときに書いた日記はこちらです。
http://80646.diarynote.jp/?day=20110404

今月の頭に巡業を開始して、各地の避難所を回っていた彼らが、やっと一般客の前で踊ってくれる、というので、さっそく行ってまいりました(^ ^)。


「巡業」とはいっても、ショーでお金を取るわけではなく、「震災」を前面に出したイベントでしたけれども、まずはそれでいいんだと思います。
純粋にダンスとして観ても十分鑑賞に耐えるレベルだったと思いますけれども、派手なショーを見慣れた観客にアピールしてなにがしかの入場料を取るには、いろんな意味でちょっと弱いな、というのが正直なところ。
やはり、本来は「スパリゾートハワイアン」という箱の中で演じられるショーですからね。

でも、今のこの状況の中、練習するスペースの確保も難しいだろうに、きちんと揃っていた群舞の美しさと、なによりも彼女たちの輝くような笑顔の美しさは、他の舞台では決して観ることのできないものかもしれません。
短い時間だったけれども、貴重な体験でした。
私にとっても、とても貴重な宝物になったと思います。



新宿高島屋でのイベントは終わってしまいましたが、彼らの巡業は、今後は首都圏・東北・北関東地区、さらには西日本地区ほかへの巡回公演を予定しているようです。
イベントの詳細や今後の予定はこちらで案内してくれる…はず(?)
http://blog.livedoor.jp/hawaiians/

ぜひとも時々チェックいただいて、お近くで実施される際は、ぜひぜひ!お時間の許す限り行ってあげてください。
もちろん、義捐金その他の形で支援をすることも大事なんですけど、やっぱり彼女たちは舞台に立つ人たちだから、その舞台を観てあげることが一番の応援になるんだろうと思うし。

難しいことを考えなくても、しっかり訓練された素敵なダンサーが揃ってますので♪♪
みなまさまもどうぞ、純粋にダンサーさんたちのダンスを楽しみに行くもよし、街角の募金箱にコインを入れるの同じ気持ちで行くもよし。
とにかく、一人でも多くの方が、彼女たちの「極上の笑顔」に触れて、お互いに「元気」を分け合っていただけたら、と祈っています。

思うようにならない世界に負けることなく、一生懸命踊っている彼女たちのところへ、ぜひ、足を運んであげてくださいm(_ _)m。



落ち穂ひろいの続き。これでいちおう、4月以前に観たものは網羅できたはず。
宙組「ヴァレンチノ」の続きと「記者と皇帝」詳細は、またいずれ書きたいなーと思っています。諦めたわけではありません……いちおう。



■キャラメルボックス「夏への扉」ル・テアトル銀座

この公演の真っ最中に東日本大震災があったりして、記録的な興行成績を残してしまったらしい(←私が観たのは震災前でしたが、それでもモニョモニョ……)ですが、作品としては本当に面白かった!!です。

私は元々ハインラインの原作ファンなのでとても楽しみにしていたのですが、、、非常に原作に忠実なつくりで、本当に良くできてました。原作ファンとしてもだ満足。そして、原作を読んだことのない友人もすごい褒めていたので、本当に良い舞台だったんだなーと思っています。
再演してくれたら他の人を誘って観にいくのになー。再演しないかなー。


キャラメルボックスのタイムトラベルもの、というと、「クロノス・ジョウンターの伝説」をはじめとする一連の梶尾真治作品と同じジャンルに入るわけですが。
リリカルな梶尾作品に比べると、やっぱりハインラインはアメリカ的な雄大さと大雑把さ、そして、大袈裟なほどの楽観主義があるんだなあと思いました。
ハインラインの小説を読んでいると違和感ないんですが、キャラメルボックスという同じフィルターを通すと、その違いが鮮明に見えてくるんですよね。

そして。2011年3月にこの作品を上演していたのは偶然だったんですけど、とっても有意な偶然だったな、と思います。あの作品、後半の展開があまりにも前向きかつご都合主義的すぎてすっごい唖然とするんですけど、でも、心が温まって元気がでる作品だったことは間違いないんですよね。私が観たのは震災前ですが、仕事の関係で結構落ち込んでいたのに、すごく前向きになれました。だからきっと、震災で疲弊した人も観たら元気になれたんじゃないかな、と思う。
それだけの力のある作品だったことは間違いない、とおもっています。


それでは、キャストについて簡単に。

・ダニエル・デイヴィス(畑中智行)
とっても良かった!誠実で真面目で、でも意外とプライドが高くて子供のように純粋な、愛されキャラな青年がとても良く似合ってました。冒頭の酔いどれ芝居も良かったし、未来へ行ってからの誠意のあるお芝居も好きだなあ♪


・猫のピート(筒井俊作)
ダニエルの飼い猫。「夏への扉」を探して家じゅうを歩き回る彼(雄猫なので)がいなかったら、この名作は生まれなかったわけで。原作でも重要なキャラクターですが、舞台では語り手として物語の案内役を務め、、、ほとんど主役!という活躍ぶりでした。
とにかくこの作品、基本のストーリーをきちんとおさえた上で、語り手として猫のピートを使ったところが成功の理由だと思います。さすがキャラメルボックスーーーっ!

それにしても、ダニエルの抱えたボストンバッグから飛び出てくる筒井さんには本当に度肝を抜かれました!(@ @)すげえアイディアだなあおい。しかも、このボストンバッグが小さいんだまた(^ ^)。筒井さん、よくくぐれたよなあ、あれを。いやもう、あの冒頭の驚きを最後まで持続させた筒井さんが、この作品のMVPであることは間違いないと思います♪


・リッキィ・ティッキィ・ジェントリイ(實川貴美子)
ダニエルの仕事仲間・マイルズの娘で、ダニエルと仲良しの少女。
可愛かったー!少女時代の方が登場時間が長いのですが、ちゃんとそれらしく見えて良かったと思います。うん。あどけなさと大人っぽさが同居した、魅力的な少女でした。


・マイルズ・ジェントリイ(大内厚雄)。
ダニエルの仕事仲間で弁護士………だっけ。原作では結構嫌な奴だったんですが、大内さんは真面目な男として演じていたような気がします。
しかーし、大内さん自身は、マイルズよりもトウィッチェル教授の方が印象的だったかも(^ ^)。

・ベル・ダーキン(岡田さつき)
ダニエル・マイルズの会社で秘書として働く美女。ダニエルと恋仲になるが、実は……
いやはや、お見事でした。後半の、30年後のベルに力点をおいた配役であり演技だったと思いますが、、、あまりのリアルさに息を呑みましたわ。
「現在」(原作では1970年ですが、舞台では曖昧)のベルを演じられる美女タイプの役者がいないのはキャラメルボックスの残念なポイントの一つですが、30年後に力点をおいたこういうキャスティングもありなんだなー、と思いました。


・サットン夫妻(西川浩幸、坂口理恵)
タイムマシンで「30年後」の世界から「現代」へ戻ってきたダニエルが、最初に出会う心やさしい人たち。原作ではヌーディストクラブの一員なんだけど、舞台ではそのへんはうまく誤魔化してましたね。(←どうするのかなーと思ってたらしい)
「誠実」を絵に描いたような西川さんにはホントにぴったりのハマり役で。
物語のラスト、30年後の世界でダニエルに逢いにきてくれたお二人に、思いっきり涙がでました(T T)。心が洗われる、とはこのことか……。



原作は1970年を「現在」とし、2000年を「30年後」とする、70年代SFの名作。
しかーし、今は2011年なわけで。
舞台脚本の中ではもちろん年代ははっきりとは言わないんですけど、でも、やっぱり外に出て、ハイヤードガールさえ未だに生まれていない現状を、寂しいなあ、とあらためて思いました。
……そして、ルンバのデモンストレーションを初めて見た時の衝撃を思い出してみたりする。どうしてあれのロゴマークは魔法のランプじゃないんだろう………(真顔)



■「CLUB SEVEN 7th Stage」シアタークリエ

玉野和紀のライフワークともいうべきCLUB7。ついに7th!ということで、今回は
いつものメンバー5人(玉野和紀、吉野圭吾、東山義久、西村直人、原知宏)と、
若者二人(相葉裕樹、佐々木喜英)、女性二人(遠野あすか、涼風真世)
以上9人の出演者で上演されました。

いやー、いつもながら面白かった!!
いつもの5人がサイコーなのは当たり前として、
若い二人がなかなかのキャラクターを発揮していたのが嬉しかったです。うん。クラブ7はキャラクターがないと詰まらないので、お二人がそのあたりをしっかり自覚して出演してくれたのは嬉しい限り。
歌も踊りも案外回りと遜色なくて、最近の若い子はすごいなーと感心しました(^ ^;

あすかちゃんとかなめさんは、良い感じで大活躍。

とくにかなめさんの7色の声を堪能できたことに感激した!!歌が凄いのは知っていたけど、ホントに7色の声なんだ~~!とびっくりしました。
ちょっと今までに出演したOGとは良い意味で違う扱いで、歌姫としての立ち位置がしっかりしていたのが凄いですね。そのかわり、オープニングとエンディングのいつものナンバーはちょっと隅っこでポーズ決めてましたけど(^ ^)。

あすかちゃんはキュートで可愛い♪かなめさんと歌う歌も良かったし、ダンスもがんばってました。かなめさんがちょっと別っぽい扱いの分、あすかちゃんが頑張っていた印象もありました。
……やー、ホント可愛かった!愛されてますねえ相変わらず(*^ ^*)。



いろいろあった4月ももうすぐ終わりなので、4月以前に観た作品について一言ずつ書かせていただきます♪


■Studio Life「11人いる!」

ご存知、萩尾望都の名作SF漫画の舞台化。
ちなみに私は、この作品の舞台化を観るのは二度目。前回は2年前のアクサルの作品(全く別の脚本・演出)でした。
http://80646.diarynote.jp/200901102353281883/

……観劇した直後に、アクサルの舞台と比較して結構真面目な文章を書いていたのですが……例によってデータが飛びまして(T T)。それですっかりやる気をなくして今まで放置していたわけなんですが。

えーっと、相変わらず倉田さんの脚本・演出は原作に忠実で、萩尾ファン的には入りやすかったと思います。

ただ、演出的には、アクサル版が非常に印象的だったので、ちょっと割を食ったかも。あれは本当に、宇宙船「白」での描写をワンシチュエーションに割り切っていたこと、セットを覆う布の使い方、電導ヅタの繁殖をクライマックスに持ってきたことなど、随所に工夫があって、非常におもしろい作品でしたから。

Studio Life版は、本当に原作に忠実で、回想の扱いとかもホントに漫画のコマ割りを思い出してしまうほどでした。
まあ、原作物なのでそれが魅力といえば魅力なのかも(^ ^)。


それでは、印象に残ったキャストを。

タダトス・レーン(松本慎也)=タダ
漫画の髪型や雰囲気をよく再現していたと思います。生真面目な優しさがあって、ハマり役だったと思います。やっぱりこの人の少年は良いなあ。

フロルベリチェリ・フロル(三上俊)=フロル
金髪巻き毛は似合ってましたが、ビジュアル的にはもう一工夫ほしかったなと思いました。可愛いんだけど、なぜか「少女」には見えないんだよね彼は……。
あああ、及川さんのフロルが観たかった!!

マヤ王バセスカ(曽世海司)=王様
主人公(タダ)の敵役、という面をストレートに出して、嫌味で尊大な人物を描いていたのはいいのですが、最後の和解で唐突感があったのが若干気になりました。
まだ若い王様なので、あそこまで闇を深くしなくてもいいと思うんだけど……。

ソルダム四世ドリカス(関戸博一)=フォース
可愛かった~!(←おい)
フォースの明るさ・優しさが王様の闇を緩和して、全体のバランスを調整していたような気がします。タダが比較的華やかなタイプなので、こういうフォースもいいなあ、と思いました。

グレン・グロフ(山崎康一)=石頭
いやん、もぉ、カッコいいんだからっ!!(*^ ^*)
若い受験生たちの中の唯一の(除く長老)大人、という役割を、きっちり果たしていたのはさすがです。まあ、この作品のカギは石頭ですよね、やっぱり♪

ヴィドメニール・ヌーム(林勇輔)=ヌー
全体に、アクサル版に比べて、Studio Life版は漫画のビジュアル再現性が高いなーという印象だったのですが、その中でもこのヌーは凄かったです。毎日あれだけ塗ってたら、公演期間中は大変だっただろうなあ……。
芝居のテンポも独特の間があって、面白かったです。原作では物凄くシリアスなキャラなのに、舞台化するとコメディ担当になるのが不思議なのですが……でもまあ、そういうものなのかも。

あとは、途中で「女」として出てくる及川さんが可愛くて可愛くて、ちょっとうっとりしてました。もういい年なのに(あっ言っちゃった!)、どうしてあんなに可愛いんでしょう。オンナは年齢じゃないのね。(←及川さんはオンナではありませんがなにか?)



■「ウェディングシンガー」シアタークリエ。

初演とほとんどキャストも変わらず、勢いも変わらず。役者一人ひとりの成長もみえて、すごく良かったです。
井上(芳雄)くんの弾けっぷり、やっぱり最高だ。他の感想もほぼ初演どおりなので、リンクしておきます。
http://80646.diarynote.jp/200803022335550000/

芝居は練り直されてすごく良くなっていたと思いますが、劇場が小さくなったせいか、セットはだいぶ変わっていて、とくに一幕ラストのダンスパーティーの場面がかなり狭苦しくなっていたのが唯一の残念ポイントかな。
樹里ちゃんが水をかぶるラストも、衝撃度がだいぶ落ちていたような。でもまあ、初見だったら十分「おお!」という感じだったと思うし、作品サイズはあのくらいの劇場が似合うなーと思ったので、初演の箱が大きすぎたのかも。

震災後の観劇でしたが、おかげですごく元気をもらいました。ありがとう。



■「ALIVE 2」赤坂ACTシアター

瀬奈じゅんを中心としたコンサート。
今回は舞城のどか・美鳳あや・大月さゆの3人が出演して、もちろん男性ダンサーさんも出ていて、みなさん歌も踊りも素晴らしくハイレベル(*^ ^*)踊っているひとたちを観ているだけで忙しくて、楽しいショーでした。

麻子さんについては、ファンの方がたくさんレポートされているので省略させていただくことにして……
みほちゃんもみっぽーもさゆちゃんも卒業後初めて観たと思いますが、相変わらず可愛くてスタイル良くて、素敵だった♪♪♪ みほちゃんは相変わらず格好良くて優しいお姉さん♪ みっぽーがばっさりと髪を切って物凄く可愛くなっていたのと、さゆちゃんが素晴らしくキラキラと輝いていたのが印象的。歌はどうするのかなー?と密かに心配していたのですが、三人ともそこそこ歌ってましたね。さゆちゃんは現役時代もそれなりに歌っていたし、みっぽーも二度目のエリザあたりからはそこそこ歌える方に入っていたし、、、みほちゃんも頑張ってましたよ(^ ^)。

男性ダンサーさんたちはとても格好良かったです。普段女性ダンサーばっかり観ているので、久しぶりに男性のバネを満喫した気がする(^ ^)。さすがの迫力!でした♪

麻子さんが卒業してすぐにやったコンサートのリメイク版ということで、ちょっと中途半端な(男役・瀬奈を見せたいのか、女優・瀬奈を見せたいのか、どっちつかずな)感じもありましたが、全体の構成が良く出来ていて、面白かったです。
ただ、まあ、衣装は……娘役三人はどれもすっごい可愛かったんだけどなー(- -)。



帝国劇場にて、「レ・ミゼラブル」を観劇してまいりました。


「さよならレ・ミゼラブル」という刺激的なチラシを見て吃驚していたのですが、あれはケアード演出版がラスト、という意味なんですね。
(世界初演から25年が過ぎて、次から新演出になるらしい)



新演出がどんな感じかまだわからないのでなんとも言えませんが、

……とりあえず。一人のレ・ミゼ「ヲタク」としては、

だったら、最後に本当のオリジナル演出(初演版)を上演してほしかったのに~~っ!!
 ↑ 10周年版でもいいけど、とにかく短縮版じゃないやつを!という気持ちは抑えきれません……(T T)。




2009年は観られなかったので、久しぶりの「レ・ミゼ」でしたが、2007年のを観たときと、全体の大まかな感想は、残念ながらあまり変わりませんでした(T T)。


●クァトロキャストはカンパニーとして無理があるのでは。
出演者が多すぎて、芝居としてのまとまりがなかなか構築できないんじゃないかと思うんですよね。初日からそんなに経ってないせいもあるとは思うんですが、どうもガラ・コンサートっぽい印象がぬぐえなくて。
ただ、全体に出演者のレベルが10周年の頃とは段違いなので、良い意味でのガラ・コンサートっぽさ(「おお、凄いなあ」という感じ)もあるんですけどね。


●とりあえず「共に飲もう」リプライズは復活させてほしい!!あの数分ってすごく大事だと思うんですが……。何度も書いて恐縮ですが、何度観てもその都度思うんだもん(T T)。
……できるなら、バリケードが出てきた直後のアンサンブルの歌い継ぎも。言いだすとキリが無いけど。


●「レ・ミゼラブル」の指揮を塩田さんっていうのは、彼の無駄遣いだと思うんですがどうなんでしょう。
そうでなくても短縮版になってからシンセの比重が上がって低音の迫力がなくなっているのに、軽やかな音を身上とする塩田さん……って、この話も何度も書いてますね。すみません。



……などと、いろいろ書いてはおりますが。
久しぶりのレ・ミゼラブル、なんだかんだ言ってもやはり面白かったです!


とりあえず、私が観た回のキャストを。(印象に残った順に、かな?)


◆ファンテーヌ   和音美桜
素晴らしかった!
すみません。個人的にマイベストファンテーヌになりました!
歌は文句なかったし、観た目も可愛いのに母性も感じさせて、とても素晴らしかったです。久しぶりに「I Dreamed Dream」と「ファンテーヌの死」で泣きました(^ ^;ゞ

……とにかく声が好きすぎるので、あまり冷静ではない自覚はありますが。



◆アンジョルラス  上原理生
久しぶりに、高音部が強くて、カーンと響くアンジョルラスらしい声のアンジョルラスが出てきたな、と思いました。ビジュアルも迫力あったし、ちょっと94年の幸ちゃん(岡幸二郎)を思いだしてみたりしました(- -;


◆エポニーヌ    平田愛咲
エポニーヌらしいといえばエポニーヌらしかったけど、ちょっと個性的な声ですね。丸顔の可愛らしいお嬢さんで、ちょっと雪組の彩風咲奈さんを思い出しました。


◆コゼット     稲田みづ紀
ビジュアルも可愛いし声も可愛いし、典型的なコゼットだったと思います。「溢れる愛」のラストの高音もあぶなげなく出ていて、とにかく安心して観ていられるコゼットでした。
病院のシーン(「空のテーブル、空の椅子」の後)の強さがもう少し出ると私の好きなコゼットになるんだけどな。


◆マリウス     野島直人
声は良かったし顔も二枚目だと思うんですが、スタイルがちょっと残念だったかなあ。稲田さんとの並びがもう少ししっくりくると良かったんだけど。


◆バルジャン    別所哲也
◆ジャベール    岡幸二郎
◆テナルディエ   駒田一
◆テナルディエ夫人 森公美子
ベテラン陣はさすがの安定ぶりでした。岡さんの「Stars」はノリノリだった!


◆かつら屋     絵理(=嘉月絵理)
相変わらず美人でしたが、かつら屋だとそのビジュアルがあまり生かせなくて残念でした。でも、美声が堪能できてとても幸せ(*^ ^*)。
久しぶりでしたが、やっぱり良い芝居するわー!

見せ場…というか、役名の由来である「ラブリィ・レイディ」の老婆も良かったんですが、個人的には「カルーセル」(バリケードが陥ちた翌朝、カフェ・ソングの前の女たちだけの場面)の疲れた女がとても好きです。あとパリの街(十年後)の乞食は秀逸でしたね(^ ^)。


◆グランテール   土屋研二
グランテールに思い入れがありすぎる猫としては、正直、ちょっと物足りない印象もありましたが、堅実な演技だったと思います。
私が帝劇に通い詰めていた頃は、やたらに美声のグランテールばっかりだったので、ちょっと荒れた声のグランテールが珍しかった……かも。バマタボワ(「ラヴリィ・レイディ」の後、ファンテーヌを苛める嫌な奴)のソロが短縮版になって削られてしまったので、グランテールが美声である必要はなくなったんだなあ、と納得しました(^ ^)。


◆司教/レーグル  武井基治
いい声でした(はぁと)。いつも「さあ入りなさい」で世界に入るので、司教さまが良くないとすごくつまらないんですよね。今回はとっても良かったです!


◆コンブフェール  谷口浩久
工場長が嫌らしくてとっても素敵でした!(^ ^)。なのに、ファンテーヌに対する迫り方がおとなしかったのが残念(←え?)
工場長のキャラクターと、コンブフェールの生真面目さとのギャップが面白かったですね。コンブフェールとしてのソロは落ち着いた声で聴きやすかったけど、もう少しエネルギーがあればもっといいのに、と思いました。


◆ジョリ      土倉有貴
バリケードが陥ちた後の、片足でぶらさがる演技(?)が無かったような気がするんですが、、、演出が変わったのでしょうか?私が見落としただけ?
儲け役なので、もっといろいろ遊んでほしい気もしましたが、まだ幕があいたばかりだから、これからなのかな。

短縮版になってアンサンブルの見せ場が減り、学生たちの結びつきが弱くなっていく中で、マリウスの親友ポジション、というジョリの役割も軽くなってしまったんだな……と残念に思いつつ。


◆ファクトリガール さとう未知子
上背があるので、小柄なたっちんとの喧嘩場面も怖さが見えて良かったです。歌もさすが!パリの街の娼婦マドレーヌも迫力あって良かった♪
さとうさんって「ジェーン・エア」でジェーンの親友を演じていた方ですよね?お芝居、巧いなー(感心)。


◆ジベロット    中村美貴
「ラヴリィ・レイディ」の最後の方で、ファンテーヌに囁きかける「お道具見せてやりな…」が今までに観たことの無い解釈で、非常に興味を惹かれました。
色っぽい、いい声ですね!


◆クールフェラック 杉山有大
◆フイイ      宇部洋之
◆バベ       高山光乗
◆ブリジョン    清辰之介
◆プルベール    五葉隼人
◆モンパルナス   尾崎功使
◆クラクスー    高舛裕一
◆買入れ屋     坂本幸香
◆マテロット    曲木佐和子
◆マダム      谷口ゆうな
◆少年1      北川理恵
◆少年2      山岸麻美子

それぞれの役を演じている役者たちの歌唱力は、10年前に比べたらずっと上だな、と、いろいろなところで思うのですが。
いかんせん、一つ一つの役の個性の強さと、役同士の関係性の深さは、すっかり薄まってしまったな、と観るたびに思います。

私は、どの役がどこで何をしてどのフレーズを歌っているのか、だいたい判っているヲタクではありますが、今「レ・ミゼラブル」のファンになる人は、アンサンブルを全員覚えるの、大変だろうなあ……。(←それ以前に、メインを全員観るのが困難)


◆ガブローシュ   加藤清史郎
◆リトルコゼット  飛鳥井里桜
◆リトルエポニーヌ 蒲生彩華

子役ちゃんたちはみんな良かったです。
清史郎くんは良いですねー!10周年記念公演の浅利陽介くんを思い出しました。華やかさで印象的で、子供なのに芝居がいちいち格好良い。
歌はもう一息、という感じでしたが、あの華があればもうそれで良いような気がします。

飛鳥井さんは可愛くて音程もあぶなげない。蒲生さんは、歌はわかりませんがとにかくパッと目立つ可愛らしさでした。
いやー、10年前と一番違うのは子役のレベルの高さですね!



私にとって永遠のナンバーワンミュージカル、レ・ミゼラブル。

20周年記念スペシャルキャストのチケットは一枚持っていますが、、、たっちんのファンティーヌをもう一度聴きたい!!と思ってしまう今日この頃(^ ^;ゞ


ZORRO-The Musical-

2011年2月25日 演劇
日生劇場にて、「ゾロ・ザ・ミュージカル」を観劇してまいりました。


以前雪組で上演した「ゾロー仮面のメサイア」とはかなりストーリーが違っていましたが、ゾロの扮装はほぼ同じ。っていうか、あのゾロの扮装って、1958年の映画「怪傑ゾロ」くらいから殆ど変ってないんですね(@ @)。ちょっとマントの刺繍が豪華になったくらいで、基本は同じ、という感じでした。

私が観た回のメインキャストはこちら。

ディエゴ(ゾロ)坂本昌行
ルイサ     大塚ちひろ
ラモン     石井一孝
イネス     池田有希子
ガルシア軍曹  芋洗坂係長
総督/イネス父 上條恒彦 

島田歌穂ちゃんのイネスと、我善導さんのガルシアも観たかったけど、無理でした。……残念(涙)。
でもまあ、1パターンだけでも観られて良かったです。ええ、本当に。


まずは、ディエゴ(ゾロ)役の坂本昌行。
良かったです!私の中では、今のところ彼のベストアクトですね。

以前、「パル・ジョーイ」の感想でも語りましたが、彼は、本当は生真面目な好青年みたいな役の方が良いんじゃないか、と思っていたんですよね。
http://80646.diarynote.jp/201010170311006530/

このディエゴは、好青年というよりは悪ガキで(^ ^)、愛情深い好青年だけど「ルールに縛られない(=守らない)男」という設定なんですよね。だから「好青年100%」というわけではないんですが、それでも、「屈折した大人」とか「根っからのワル」みたいなのよりはずーっと良かったです。
うん。魅力的でした♪髭も似合っていて、セクシーでした。踊っている姿にちゃんとセックスアピールを感じましたよ♪(←髭をつけていたら何でも良い、という可能性も捨てきれないが)



ダンスはフラメンコ。音楽は全面的にジプシー・キングスの音楽を使っていて、「ジョビ・ジョバ」「バンボレオ」……私でさえ良く知っている曲が何曲も出てくるし、知らない曲も耳馴染みがよくてテンションがあがる。彼らの音楽は、日本人にも不思議と合うんですよね。独特のコード進行とリズムが好き。
ダンサーたちは、本場スペインのフラメンコダンサーが半数以上で、ダンスのソロはだいたい彼らが取っていました。カッコいい!!サパテアードとタップ、そしてアイリッシュタップの違いをしみじみと感じさせられました。脚を踏みならすだけであんなにカッコいいんだもんなあ。和物の所作にも床を踏み鳴らす振りがいろいろありますが、文化の交流がなくても、ああいう動きは人間の感性に共通に訴えるんだなあ、と思いました。



それでは、ゾロ以外のキャストごとに。

イネスの池田有希子。
いやもう、今回の公演チラシを見て、「ぜっっったい行く!!」と思った池田イネス。
残念ながら衣装が思ったよりしっかりしたスカートで、あんまり脚を出してくれなかったので(←そこ!?)若干ご不満なんですが、やっぱり彼女の歌は良いわ~~~。
歌穂ちゃんのも観たかった(聴きたかった)なあ。

有希子さんは、「ジャック・ブレルは今日もパリで歌っている」の初演で歌声を聴いて以来、チラシで見かけたら万難を排して観にいっている人ですが。
いやー、満足だ。佳い女で、気風のいい姐さんで、素敵でした♪



ラモンの石井一孝
アレハンドロ総督に拾われたみなしご。ディエゴの兄として育てられた、生真面目な青年。
義父の愛を信じられず、歪んで育った。義弟の出奔から数年後、義父を幽閉して自分が実権をにぎり、カリフォルニアに恐怖政治をしく……。

だだ漏れな色気も、ワルっぽい空気も、なにもかも「さすが」でした。
「オペラ・ド・マランドロ」のタイガーを思い出しました。あれも格好良かった……!!

ただ、ラモンって、基本的なところが「生真面目すぎて壊れた」男の役だったので、、、自らが幽閉した義父アレハンドロに泣きつく場面とか、ちょっと違和感あったかなあ。色気がありすぎて(^ ^)。確かに難しい場面なんですけどね。石井さんって、役の幅はとっても広いけど、結構筋の通った役が多いので、ああいう「壊れた」人物像は案外難しいのかもしれません。むしろ、ディエゴを観たかったよーーー!!



ルイサの大塚ちひろ。
可愛いし歌えるし、健康な(若干ロリータ気味の)お色気もあって、なかなか魅力的でした。元宝塚の神月茜ちゃんにちょっと似てるような……?んーっと、ほっぺたがふくっとしているところだけかもしれません。ごめんなさい。
ルイサが魅力的でないと、ディエゴとラモンの二人に惚れられ、最後にはイネスにまで愛される(いや別にあやしい意味じゃありませんが)のが納得できないので、彼女で良かったな、と思いました。



ガルシア軍曹の芋洗坂係長。
イネスに惚れて、ディエゴの味方をする気の弱い男。
雪組で上演した谷版とは全然違う、情けないけど人間みのある良い男で、良い役でした。



アレハドロ総督/イネス父の上條恒彦。 
上條さん、喉を痛めているのかな。いつも素晴らしい声なのに、今回は、なんか声が小さくて聴きとりにくく、張り上げるところでも掠れたりしていたので心配になりました。……マイクの位置がずれていた、くらいのことなら良いのですが。
ディエゴの父親でラモンの養父で、カリフォルニアの人々に愛され、尊敬された名総督。そういう貫録がしっかりとあって、とても良かったです。イネスの父親でジプシーのリーダーという役も、愛情深くて非常に似合っていました。……ああ、残念だ!調子が万全の時に観てみたかったーーーー!!



基本的にこの作品のみどころは、何度も繰り返されるアンサンブル+α のフラメンコシーン。
ホントに格好良かった!!
何度かフラメンコ公演をみたことがあるのですが、これだけの大劇場でこれだけの人数揃えて群舞するのを観たことはほとんどないので、迫力に圧倒されました。
みんなかぁっこいい~~!!



終演後のカーテンコールが何度か繰り返された後、総立ちの客席の前で、アンサンブル中のメインメンバー(ソニア・ドラド、アントニオ・カラスコ、フェルナンド・ソラノ、マリア・ホセ・アルバレスあたり)が一人ずつ、ソロダンスやメインキャストとのデュエットを披露したりしてくれました。ショー場面としてきちんと構成されたものではなく、日替わりっぽかったから、もしかしたらメンバーも日によって違うのかも?
どちらにしても、結構長い時間やってくれて、サービスシーンとしては最高だな、と思いました(*^ ^*)客席も大盛り上がりで、千秋楽が近いせいもあると思いますが、楽しかったです♪



あとは……カーテンコールといえば、リトルルイサ、リトルディエゴ、リトルラモンの子役三人が一生懸命踊っているのが、めちゃくちゃ可愛かった(*^ ^*)。日本の、というか、東宝の子役のレベルは本当にエリザベート初演以来あがったなあ!!1997年のレミゼとか、リトルコゼットは歌えなくて当たり前、って感じだったのに、今じゃみんな、下手すれば大人キャストよりも巧かったりするもんねえ(- -;;;



宝塚歌劇団宙組の大空祐飛さんが、財団法人松尾芸能振興財団の「松尾芸能賞 優秀賞」を受賞したことが発表されました。

受賞者の発表はこちらから。
http://matsuo-e.net/business.html


……過去に同じ優秀賞をいただいた方は、加藤敬二、島田歌穂、夏木マリ、などなど。……ちょっと恣意的に選んでますが(^ ^;ゞ、それにしても錚々たるメンバーなんですよね。今回だって、香川照之さんと同じ賞なんだよ!?

宝塚歌劇団からは、近年だと柚希礼音くんとか何人かが受賞されていますが、みなさん新人賞なんですよね。なんで祐飛さんだけ優秀賞なんだろう?
……さすがに研19ともなると新人とは言っていただけない、ってことでしょうか……


それにしても。
受賞理由を読んで、思いっきり爆笑してしまいました(^ ^)。松尾芸能振興財団にも祐飛さんのファンが居たとしか思えないんですけど!
……相変わらず幅広いなー。

いや、受賞理由の中でも名前の出ている「カサブランカ」「銀ちゃんの恋」「誰がために鐘は鳴る」……トップになってから上演された名作の数々と、演じた祐飛さんの演技の幅広さと指導力が認められての受賞だと思ってはいるんですが。
いやはや、凄いなあ。


ファンとしては、やっぱり、外部でも認められたことはとても嬉しい♪
賞をいただけるかどうか、なんて最後は運であって、受賞したからと言ってどうなるわけでもないことはよーーーーっく判っているのですが。でもやっぱり、祐飛さんの芝居は良いんだ!と自信を持って言えるようになったのがとても嬉しい。

祐飛さんって、点数をつけて客観的に評価するような分野は悉くダメダメな人なので、こういう形で認められると、とても幸せな気持ちになれるんです(^ ^)。




祐飛さんは今、「ヴァレンチノ」のお稽古真っ最中。
この作品の東京公演中に授賞式がありますが、当日(3/29)は13時の一回公演なので、祐飛さんも出席できるのでしょうか?スケジュール的にはギリギリですけど、せっかくなので出てほしいな~。出席されれば、ニュースで流れるかもしれないし(^ ^)。


なにはともあれ。
祐飛さん、優秀賞受賞、おめでとうございます!!\(^ ^)/



ろくでなしの男

2011年2月5日 演劇
今日は一路真輝さんの「アンナ・カレーニナ」を観にいくつもりだったのに、風邪をひいてしまった……(T T)。
「アンナ・カレーニナ」は、昔一路さんのコンサートでさわりだけ上演してくれたことがあって、音楽が素晴らしいのですごく楽しみにしていたんですよねー。
くすん。再演してくれるかしら(涙)。



っというわけで、今日は先月観た東京芸術劇場中ホールの「ろくでなし啄木」の話を。
これで落ち穂拾いは終了、かな?

いやー、おもしろかった!!
作・演出三谷幸喜、出演は藤原竜也・中村勘太郎・吹石一恵……なんて豪華なメンバーなんだ!!とチラシを見たときから楽しみにしていたのですが、期待に違わぬ面白さでした。
芝居のできるひとが三人揃いぶみで三谷の新作に取り組む。これはもう、観なくっちゃ!という感じですよ♪
今は大阪(シアターBRAVA)で公演中。今月後半は天王洲に帰ってくるんですよね……。落ちを知っている状態でもう一度観てみたいのはやまやまだけど、、、と、スケジュール帳と睨めっこ中(^ ^)。


石川啄木。
盛岡出身のこの詩人の、とある一夜を切り取った物語。
仙台にほど近い田舎の温泉場に旅行に来た、啄木(藤原)と香具師のテツ(中村)、そして啄木の恋人トミ(吹石)。
旅先での一夜の出来事を三人のそれぞれの視点で語りなおし、それぞれにとっての「あの夜」を思い出す……というのが全体の展開なのですが。うーん、物語自体は架空のエピソードですし、ネタばれできないので説明が非常に難しいわ(^ ^;。
三角関係の恋模様と、啄木の悩みがリンクしているようでしていないところが面白かったです。

まず思ったのは、三谷にしては随分艶っぽい展開だな、と。
いきなり啄木とトミの濡れ場(という程のものでもありませんが)で始まったりとか。っていうか、竜也の舞台って、かならず濡れ場があるような気がするのは気のせいでしょうか。ファンですけど、そんなに色っぽい役者だとは思わないんだけど。……あの声だから?たしかに、ちょっとかすれた声は色っぽいな、と思うんですけどね。

一幕が基本的にトミの視点で全体像が語られて終わり、二幕でテツと、そしてハジメ(啄木)の視点が語られる。
語り手が変るたびに様相を変え、意味をたがえていくエピソードの数々が面白かったです。
小道具の扱いも、さすが。基本的にはハジメの物語で謎が解ける構造になってるんですが、トミの語る話とテツの話の矛盾をカウントしておかないとわからない部分があるので、寝ないでよーく観ててくださいね(^ ^)。


竜也のハジメは、繊細で暴力的で残酷で童顔(←ここ大事)で、とても嵌ってました。
こういう高飛車な虐めっ子タイプの役、多いなあ。クリエイターから観ると、そういうイメージなんでしょうか。
うーーーー、やっぱり竜也の中原中也を観てみたい!!啄木もいいけど、中也も絶対嵌るとおもうんですけど!!


勘太郎のテツは、、、、もう、この人がいなかったらこの作品は成立しなかっただろうな、と思います。素晴らしかった!!
ネタバレだから書けないけど、二幕の後半でハジメを叱りつけるところとか、もう、涙が止まりませんでした。竜也との息もぴったりで、すごい迫力。ほんと凄い人だ!!と思いました。
竜也と一緒にやってくれてありがとう(はぁと)


吹石さんのトミも、二人の男から愛されるだけの魅力が十分にあって、しかも、自立心のある素敵な女性で。ぴったりでした。さすが、宛書きの大家だわ、三谷。彼女の魅力を最大に引き出していたと思います♪


シリアスな愛憎劇ですが、三谷らしい遊びもあって、とても楽しかったです。
ぜひぜひ、お時間のある方はどうぞ♪



落ち穂拾い

2011年2月2日 演劇
年末年始に観た舞台で、まだ感想を書いていないものをまとめて書かせていただきます。



■SAMURAI7
 青山劇場

巨匠・黒澤明の傑作「七人の侍」からインスパイアされたアニメーションを舞台化した『SAMURAI7』。
私は「七人の侍」もアニメも全然知らないのですが、「モーツァルト!」をパスした中川晃教くんが出ていたので、タイトルもよく確認せずに観に行ったのですが、話も面白かったし、キャラクターも活き活きしていて、とっても面白かったです。
有名だけどタイトルしか知らなかった「七人の侍」を、ちゃんと見てみよう!と思いました。
(まだ見てないけど)(←だって、まだ「誰がために鐘は鳴る」も見てないじゃん)


演出は岡村俊一、脚本はつかこうへい劇団の渡辺和徳。
舞台は架空の世界。いちおう、第三次世界大戦後の地球をイメージしているみたいでした。「未来少年コナン」とか「ナウシカ」的な世界観。


長く続いた戦争が終わった。
全身を機械化した侍たちが闘うために闘う、悲惨な戦争が。

“闘い”を喪った侍たちは暴れだし、「野伏」となって、やっと田畑が蘇りはじめたカンナ村に襲い掛かる。
カンナ村の村長は、彼らに対抗するために『サムライ』を雇うことを決断する。腹いっぱいの米を報酬に。水の巫女キララは、村長の命を享けて砂漠の向こうにある都市へ向かい、7人のサムライたちと出会う……


<7人の侍>
カツシロウ 三浦翔平
キュウゾウ 西島隆弘
シチロージ 相葉弘樹
ヘイハチ  橘大五郎
ゴロベエ  高橋広樹
キクチヨ  住谷正樹
カンベエ  加藤雅也

<カンナ村>
キララ  水野絵梨奈

<天主>
ウキョウ 中川晃教


と、ゆーことで。

加藤雅也がめっちゃ格好良くて素敵でした!

……もとい。

村を護るために、命を懸ける7人のサムライたち。
彼らは彼らで、蔑まれる存在なんですよね。戦争が終わって、『闘い』の中で自己表現をしていた者たちは居場所を喪ってしまったから。存在価値を、喪ってしまったから。
だから彼らは、キララの言葉に肯う。「腹いっぱいの米」のためではなく、「護るもの」と「居場所」を得るために。

彼らはみんな、相当に悲惨な運命を背負っているんですけど、自分自身の信念に身を捧げた彼らはとても前向きで、護ると決めたものを絶対に護ってくれる、本当に格好良い人たちでした。
みんなそれぞれに個性的で、とっても素敵(はぁと)。

ウキョウ様の中川くんは、ネタばれしてしまいますが(^ ^)いわゆるラスボスって感じで。
何曲か歌ってくれたのは嬉しかったし、なかなか斬新なキャラクターで面白かったです。ご本人も楽しそうに芝居していたし、これはこれで、新境地だったかと(^ ^)。
……個人的には、やっぱりヴォルフガングをもう一回観たかったような気もしますけどね(涙)


ま、でも、面白かったです。とっても。
キララちゃんも可愛かったし(*^ ^*)。

また原作の映画を見てからもう一回観たいなーと思ったのですが、再演してくれるといいなー。



■GODSPELL
 シアター・トラム

何度か再演されているミュージカルの佳品。私は2001年の山本耕史ジーザス版と、翌年(?)のNIROジーザス版(いずれも演出は青井陽治)を観ています。

脚本はジョン・マイケル・テベラック、作詞・作曲はスティーブン・シュワーツ。
新約聖書・マタイ伝の福音書を題材に、舞台を現代のニューヨークに置き換え、イエス・キリストの最後の7日間を描いたロック・ミュージカル。音楽も良いんですけど、何より内容というか脚本が斬新で、すごく面白かったんですよね。
「神の詞」というストレートなものを題材にしていながら、布教にも宗教論にも堕すことなく「物語」の語り部としてのジーザスという人間像を描きだしたところが凄いな、と。

今回は、山本くんが初めて演出に取り組みつつ、ジーザス役も演じる、ということで話題になっていました。
出演者は、山本ジーザス、内田朝陽ユダ、原田夏希、福田転球、明星真由美、中山眞美、上口耕平、井美紀、MY A FLOW(Song Riders)、松之木天辺、飛鳥井みや、長谷川富也。あまりよく知らない方々ばかりでしたが、みなさん実力者ぞろいで、歌も芝居も良かったと思います。
10年前からの引き続きでの出演者は中山眞美(当時はMAMI)だけ、かな?相変わらずのナイスバディにあの声、そして素敵なキャラクター。大好きだわー!!

しかーし!
個人的な感想ではありますが、非常に残念なことに、今回の演出は、あまり感心しませんでした。
いや、ちょっと違うな。「演出」は良かったんですよ。セットとか、人の配置とか、間の取り方とか、そういうアレコレは。

でも。
「演出」の仕事って、それだけじゃないですよね。
キャストの世界観を統一して、同じ方向を向かせ、一つの作品としてまとめて皿に盛り付け、観劇者に差し出すところまでが仕事だと思うんですよ。

作品のパーツを磨くことはちゃんとできていたと思うんです。山本くんは今までの舞台でも結構スタッフワークに興味があっていろいろやっているという話をよく聞いていたので、ホントにそうなんだろうなーと思いました。
でも、そのパーツを一つの作品に組み上げて、盛り付ける段階で小さな取りこぼしがいくつかあって、結果的に、客席に座った私に差し出されたものは、真っ黒に焦げて苦かった(T T)。
そんな感じ。

カンパニーが仲良くないとできない作品で、題材的にも内輪で盛り上がりやすい作品だとは思うんですが、それでも、青井さんが演出していたときは、何回観ても毎回新鮮で面白かったんですよね。
でも、今回は、内輪ウケや楽屋落ちで盛り上がり過ぎて、観客を置いて行ってしまったのが気になりました。っていうか、ぶっちゃけ、途中から不愉快になりました。

あれこれのネタを披露してくれた役者が悪いんじゃないと思うんですよ。
それを良いところでコントロールして、作品を壊さないバランスに留める、その見極めは、演出家の仕事だと思うのです。

年末に観たキャラメルボックスの「サンタクロースが歌ってくれた」も、久しぶりに共演した同期のゴールデンコンビが盛り上がり過ぎて、舞台が止まってしまう瞬間があったんですよね。
でも、そっちは不思議と不快感がなかった。不思議なんですけどね。でも多分、演出の違いなんだと思うんです。
そういう場があっても許されるように最初から演出されているかどうか。あるいは、そうなってしまっても戻れるように役者が訓練されているかどうか。


密度が濃くてコメディ色の強い芝居を上演中の小人数のカンパニーでは、役者同士が仲良くなりすぎてしまって、お互いのギャグに素で笑っていたりすることが良くあるんですが、、、そういうのって、キュンとくることもあれば、萎えてしまうこともあって、難しいなあと思うんですが。
そういう舞台にこそ、プロの演出家の眼が必要なんだと思います。
シリアスな芝居では、そういう問題が起こることはめったにないので(^ ^;


「神の詞」をタイトルにした、非常に興味深い、楽しい作品。
また近いうちに、実力派のキャストを揃えて、しっかりした演出で、再演してほしいものだと願ってやみません。



■モモ
 渋谷区文化総合センター

劇団ひまわりの「モモ」。
言わずと知れたミヒャエル・エンデの名作の舞台化でしたが、、、
いろんな意味で、あのイマジネーション豊かなファンタジックな物語をよく舞台にする気になったな、と感心しました。

モモ役は野本ほたるちゃんと元ヤングナラの田上真里奈ちゃんのダブルキャスト。
私が観た日は野本ほたるちゃんでしたが、すっごくキュートで、なんとなく惹きつけられてしまうモモ役にぴったりな子だなあと思いました。
とにかく可愛かった!!

あとは、「灰色の男たち」の長みたいな役だった郷本直也さんがめっちゃ格好良くて素敵でした。
存在感があって声も良いし、一方の主役という華やかさもあって。
逆に、ジジの馬場徹さんが、ちょっと存在感が薄かったかなあ。キャストの問題というよりも、脚本的にあまり本筋に絡まなかったので。

印象に残ったのはやっぱり、モモと郷本さんと、マイスター・ホラの伊藤克さんでしたね。
マイスター・ホラは、最初の幕開けと最後の幕引きをするので、重々しい存在感が素晴らしかったです。

……でもまあ、やっぱり本を読んだほうが面白いかな、というのが正直な感想ではありましたが……。
エンデは難しいですね、やっぱり。あまりにもイマジネーション豊かなので、どうしても、広げてしまった想像の翼がたためない感じ。
まあ、そんなことは判り切っていて観に行ったわけなので、期待値以上に楽しめたことは事実ですが。

原作を知らない方がどう思ったのか聞いてみたい気がします。

いやー、ま、なにはともあれ、ほたるちゃんは可愛かったです(←そこか!)




銀河英雄伝説

2011年1月18日 演劇
青山劇場にて、舞台版「銀河英雄伝説」を観劇してまいりました。



ひとつだけ叫んでいいですか。

入場したのが遅かったため、プログラムを買えなかった私。
「公式サイトで通販しまーす」と言われたので、サイトに行ってみました。
http://gineiden.jp

そうしたら、「Special」というコーナーに、原作者の田中芳樹さんと、らいとすたっふ社長:安達裕章さんの対談が載っておりまして。
http://gineiden.jp/special02a.html

いきなり最初からこの話ですよ。

【安達氏】 「銀河英雄伝説」は、以前にも舞台化の話があったとお聞きしていますが。
【田中氏】 はい。当時の徳間書店の編集者さんが宝塚歌劇団にお話しを持って行ったことがあります。もう20年近く前の話になりますが。だ、そのときは「恋愛の要素が薄い」ということで実現しなかったと聞いております。


誰だよ、断りやがったのは。




今回、舞台版を観劇して、しみじみと思ったこと。

やっぱりこれは、宝塚でやるべきだーーーーっ!


まずね、衣装が残念でした(T T)。
主役ラインハルトの衣装はなかなかがんばっていたんですが、それ以外のメンバーの軍服がとても安っぽい。
しかも、黒銀じゃない!!(シルバーがかったグレー、って感じで、あまりイケてない)

しかもねー、たしかにみなさん美形ぞろいで、その点では大満足!だったのですが。
残念ながら、スタイルは普通なんですよね………。あああ、軍服といえば宝塚、宝塚といえば軍服っ!
……ぜえぜえ。

ああああ、宙組とか宙組とか宙組とかで観てみたい!!(←別にラインハルト主役じゃなくていいんです)
あの長身超絶スタイルぞろいのメンバーが、黒銀の軍服着て並ぶの!
あああ、諦めきれない。



あとね、そもそも役が多くて、しかもアンサンブルとして大量の人がさばける作品だというあたりも、宝塚向きだなあと思いました。

娘役の役がないので、提督たちの半分は女性になりそうですが(^ ^)。




のっけから作品にあまり関係ないことを叫んでしまいましたが、作品はとても面白かったです!
原作ファンとしてみても、よく出来てました。

あまり予備知識なくチケットをゲットしたので、ミュージカルだとばかり思い込んでいたのですが(汗)、全然違ってました(^ ^;ゞ
コロスのダンスはあるんですけど、プリンシパルもアンサンブルも歌は無しで、お芝居のみ、でした。


もう千秋楽も終わりましたので、ネタバレさせていただきます。
まず、ストーリーは原作の2巻までで終了(原作のあらすじについては、検索すれば出てくると思いますので割愛)。となれば当然ですが、主人公はラインハルト、二番手はキルヒアイス、ここまでは予想どおり。
しかし、三番手は双璧ではなく、オーベルシュタインでした(@ @)。オーベルシュタインとキルヒアイスの確執に焦点を絞ることで、非常に判りやすい物語になっていたと思います。

感心したのは、自由惑星同盟のヤン・ウェンリーを名前だけの登場にして、同盟側の話を全く出さなかったこと。
さっくりとそこを切り捨てて、ラインハルトたちと門閥貴族たちの戦いをメインに持ってきたのがお見事でした。

残念ながら双璧のエピソードも全面的に削られて、若干意味不明な人物になってはいましたが、、、まあ、仕方がないかな。
双璧については続編でフォローする、ということである程度棚にあげつつも、他の提督たちのエピソードはかなり網羅されていて、本当によく出来ていたと思います。
台詞の言い回しとかも原作どおりで、「卿(けい)」という呼びかけにちょっと悶えた(^ ^;ゞ。

ちなみに、続編については6月に「双璧編」を上演することが発表されています。(公式サイトをご参照ください)
となると、今秋か来年早々あたりに、自由惑星同名編……「イゼルローン日記」あたりをやりそうな気がします(^ ^)。
ミラクル・ヤンをいつまでも「謎の人物」にしておくわけにもいかないでしょうから、双璧編には出すのでしょうか…?


前半は暗転の多いぶつ切れの演出が気になっていたのですが、後半の展開はスピーディーで良かったです。特にヴェスターラントの演出が良かった!あれは舞台でないとできない表現だなあと感心しました。


それでは、キャストごとの一言感想を。






【ラインハルト】松坂桃李
なかなかの美貌で、声もよく、かなりよく似合っていたと思います。
こんなキャストがいたら、そりゃ上演したくもなるわー!と。しかも、衣装もラインハルトのだけは特別なんだよ(^ ^)。格好良かったー♪

【キルヒアイス】崎本大海
柔らかでちょっとはにかんだような笑顔と、理知的な表情の同居。声も良いし芝居も良いし、小柄なこと以外は、キルヒアイスというキャラクターにぴったり!でした。
あああ、、、原作ファンな自分が哀しい……。
あと、細かいことなんですが、そこまで髪を紅くするなら、眉の色も考えた方が良いと思います(- -;。……これは結構他のメンバーでも思ったな……いろんな髪の人がいたから。

【アンネローゼ】白羽ゆり
抜群の存在感と美貌、穏やかな低い声。リアル感のないファンタジックなファム・ファタルぶりが、マリー・アントワネット以上の当たり役だと思いました。「銀河英雄伝説」の妄想配役をするときに、いつも悩んでしまうアンネローゼですが、もうとなみちゃんしか考えられません(^ ^)。
とはいっても、原作のイメージとはだいぶ違うので、いまいちだった方もいらっしゃるかもしれませんが……。

【オーベルシュタイン】貴水博之
原作のイメージよりはずっと若くて、突っ張った役作り。優しすぎるキルヒアイスの対抗馬としてちょうど嵌る感じで、よかったと思います。

【ヒルダ】宇野実彩子(AAA)
物語が二巻までなので、まだラインハルトの部下に入っただけのマリーンドルフ家令嬢。ヒロインといえるような役ではありませんが、今後が楽しみだと思いました。

【ミッターマイヤー】中河内雅貴
ビジュアルは、みなさん基本的にアニメ版のビジュアルを参考にしているのでしょうか。ラインハルトもキルヒアイスもそんな感じですもんね。……うーむ。私は元々、帝国ではミッターマイヤーファンなんですが、アニメ版(OVA)のミッターマイヤーのヴィジュアル(小太りな体つき)が納得できなくて買わなかったんだよなー……。いや、中河内さんは非常にハンサムで、全然不満は無いですよ(^ ^)。むしろハンサムすぎるくらい(もうちょっと親しみやすいイメージだった)。
双璧は戦闘場面でダンスがあったりして、ロイエンタールのリーダーともども、とっても格好良かったです♪♪

【ロイエンタール】東山義久
………どうしてあえてキルヒアイスだのロイエンタールだのに、相方(ラインハルト/ミッターマイヤー)よりも小柄な人をキャスティングしたんだろう……(涙)。
東山くん単体ではカッコいいのにーーーっっ!!


【ビッテンフェルト】吉田友一
原作でも美味しい存在ですが、舞台ではますます目立ってナンボという感じで、シリアスで重たい話の中、息抜きになっていたような気がします。
オレンジ色の髪って難しいんだなー。それじゃただの金髪なのでは。(ミッターマイヤーと何度か見間違えました涙)

【メックリンガー】岡本光太郎
【ルッツ】平野勲人
【ワーレン】土屋研二
このあたりは2巻までだとたいした出番はないんですよね。でも、細かいエピソードを拾ってくれているので、やりがいはあったと思います。
いずれにしても、続編に期待(^ ^)。


【フリードリヒ四世】長谷川初範
予想外に大きな役で驚きました。そこで出てくるか!と。
長谷川さん、存在感を自在にコントロールできる方で、すごいなあと感心しました。ラインハルトの妄想のフリードリヒと、アンネローゼの前にたつ一人の男としてのフリードリヒとの違いが、ちゃんと伝わりました。
アンネローゼが原作よりも生命力があるので、フリードリヒも原作とはだいぶイメージが違いましたが(だいぶ腹黒くて、現実みがある)、舞台で映える変更だったと思います。

【ブラウンシュヴァイク公】園岡新太郎
園岡さんが出てるって全然知らなかったので、すごいびっくりしました(^ ^;。突然素晴らしい声で歌いだすおじさんがいるて、誰っ!?と思ったら園岡さんで。渋くて素敵だったー!
ヤンが出ないので敵役を一人で担当していましたが、とっても良かったです♪

【アンスバッハ】高山猛久
格好良かった!!イケメンでびっくり(@ @)。ラストに物凄く重要な役割を果たす人ですが、それだけの存在感がありました。
ブラウンシュヴァイク公とのやり取りがいちいちツボでした。侯爵家の忠臣ではなく、ブラウンシュヴァイク公爵個人の腹心、という感じがよく伝わってきました。ちょっと優男風なのもいい!(*^ ^*)。ああいうことをやらかしそうなキレた感じも良かったです。

【シュターデン】ひわだこういち
冒頭のアスターテ会戦から出てくる嫌味な士官。彼が双璧の士官学校時代の共感だったというエピソードは出てきませんが、マニュアル重視で「理屈だおれのシュターデン」なところはよく書かれていました。
いやー、こんな細かいエピソードまで拾ってちゃんと話を盛り上げた脚本の堀江慶さんは凄いなー!

【オフレッサー】中村憲刀
リップシュタット戦役の後半、レンテンベルク要塞攻略の白兵戦で立ちはだかった男。長身でがっしりした体形は、いかにも「白兵戦のスペシャリスト」という感じ。原作通り突入部隊を率いていた双璧との殺陣は、なかなか見ごたえがありました♪
いったん捕えて逃がし、貴族連合の不信を誘う、というエピソードは削られて、殺陣の最後にちゃんと殺されていました。

【メルカッツ】ジェームス小野田
いやー、渋いわ素敵だわかっこいいわ。
ブラウンシュヴァイク公(リッテンハイム公だったかも?)に「(隊の)配置は私が決めるとのお約束だったはず!」と抗議するところの重々しさはさすがでした。最後の亡命を決意するシーンでのシュナイダーとのやり取りが素敵(はぁと)

【シュナイダー】村上幸平
メルカッツの副官。上官の自殺を止めるところから亡命を提案するところまでがほぼ原作どおりだったんですが、すごく自然でいい芝居でした。なるほど、こういう場面だったのかー、と思いました(*^ ^*)いい男ですよね!こちらも続編にとっても期待♪

【ラインハルトの父】特別出演 堀川りょう
いやー、アニメ版でラインハルトの声を演じた堀川亮さんが出演されるとは(^ ^)。舞台で観るのはもちろんはじめてですが、巧いなーと思いました。ダメな中年男の遣る瀬ない寂しさが、キラキラと輝くラインハルトの中にある曇り(翳り)の意味を伝えてくれたような。


こうしてみると、後で重要な人物になるはずなのに、名前さえ出てこないのはファーレンハイトくらいかな?
ケスラー、ケンプ、ミュラーあたりは、二巻までにはあまりエピソードも無かったような気がするから良いんですけど、ファーレンハイトはこの投降劇が結構印象的だったので……。
続編に登場してくれるのかどうかが若干気になる(^ ^)。



それ以外の出演者は全員コロスという感じで、お揃いの隈取りメーク(顔色を白くして、目の回りを黒くしたメーク)。そのままでコロスとして踊ったり、警備兵になったり、舞踏会の客になったり……なかなか忙しそうでした。



ま、原作ファンなら一見の価値はあると思います♪
原作をご存じない方の意見を聞いてみたいなあ…。


サンタクロースの歌
サンシャイン劇場にて、キャラメルボックス25周年記念公演「サンタクロースが歌ってくれた」を観劇してまいりました。
写真は、西川サンタさんにいただいた「キャラメル・キャラメル」です(^ ^)。「気分爽快/感動豊富」「笑顔と涙の玉手箱」と書いてあります♪



いやーーー、今回は久々に本当にチケットがなくて、当日券にも二回ほど玉砕し、ほとんど諦めかけていたのですが、幸運にもチケットが転がり込んできて、無事観ることができました。
西川浩幸がメインで、昨年退団した上川隆也と、彼と同期の近江谷太朗がゲスト出演する、キャラメルボックスの誇る名作の13年ぶりの再演。これだけの条件がそろえば、そりゃあチケットも払底するわ……見通しが甘かった(^ ^;ゞ。
観ることができて、本当に良かった……感涙




クリスマスイヴの東京。彼氏のいないゆきみ(温井摩耶)は、池袋の映画館で友人のすずこ(前田綾))と待ち合わせ。しかし、すずこが約束の時間(7時)に来なかったため、一人で中へ。
映画のタイトルは「ハイカラ探偵物語」。芥川龍之介(西川浩幸)と平井太郎(上川隆也)が怪盗黒蜥蜴と戦う話だった。ところが、芥川が黒蜥蜴を追いつめた場面で、黒蜥蜴が消失!どうやら、映画の外に逃げたらしい。
芥川と太郎、そして警視庁の菊池警部(近江谷太朗)は、黒蜥蜴を追って映画の外に飛び出し、ゆきみに現代の東京の案内を頼む……



こうしてあらすじを書き写してみると、えらい荒唐無稽な話だな(汗)。
まあ、キャラメルボックスは元々SF的な展開が多いのですが、これはSFってわけでもないし。

でも、お芝居は理屈じゃないんだなあ、と思いました。
どんなに展開が荒唐無稽でも、多少内輪ウケのネタで芝居が止まるようなことがあっても(- -;、クリエイターとして、そこで観客に伝えたいものが確りとあるならば、それはちゃんと伝わるんだな、と。

映画の中の役である芥川だの太郎だのである彼らと、映画でその役を演じた役者である上川や三浦である彼らとのギャップ。西川さんや近江谷さんは役としての出番だけで、役者としての登場がなかったのが残念だったのですが、映画の中では吐露することのできない役者としての本心を語る上川隆也の寂しげな背中が、とても優しくて、切なくて。


ああ、この人たちが創る舞台が好きだなあ、としみじみ思いました。




上川隆也演じる「太郎」は、のちの江戸川乱歩。
夏目漱石が亡くなって数カ月。漱石の弟子として世に出た芥川が、師を喪って筆を折りかけた、大正5年。
決して親密ではなかったはずの芥川と乱歩が、もしも親友だったなら、という設定で綴られた「男同士の友情」物語。

……劇中の映画は、そういう内容だったらしいのですが。(←全編観てみたい気もします)

実際には、二人はそんな関係ではなかったわけで。
ホームズ役の芥川に対して、ワトソン役を務めることなどありえない、という役者・上川隆也の惑いは、結果的に映画全体を巻き込む事態となる。
それでも、彼を最後まで信じる人がいるから。
だから、彼はもう一度、やり直すことができる。

上川さんの、言葉に顕せないものを表現しようとしてムッと押し黙ったときの空気感が、すごく好きです。
白から黒までどんな役でもこなせる人だけど、あんまり饒舌な役よりも、すべてを呑みこんで腹に一物抱えながら生きている男が似合う人だな、と思います。



そして、西川さんの魅力、ということを考えました。
彼のパワーは、いつだって「信じる」パワーなんだな、と。
いろんな役をやっていらっしゃる方ですが、いつだって彼は「信じる」役をやっているような気がする。
信じる対象はその時々で違いますが、それでも、「信じる人」なんだな、と。



近江谷さんは、まさに飄々と軽やかに舞台を掻き回していた印象(^ ^)。
私はあまり役者が素で笑ってしまうようなアドリブは好きではないのですが、近江谷さんと上川さんのコンビのテンポはすごく良かったです。さすがゴールデンコンビ!
この作品を観る直前に、内輪ウケで芝居が止まりまくる公演を観てちょっとイラついていたので、ちょっとすっきりしたというか、「内輪で盛り上がるならここまでやらなきゃ!」みたいな、江戸の敵を大阪で討ったような気分になりました。



元気いっぱいで可愛いゆきみ、冷静で辛辣なすずこ。どちらもテンポ感のある良い芝居で話を進めてくれました。

黒蜥蜴のミツ(岡田さつき)。そっか、この話は黒蜥蜴のラブストーリーだったのか!というのが新鮮でした。後半、上川さんとずっと手をつないでいるのが、ついこないだの花組公演「コード・ヒーロー」の手錠とかぶって、ちょっと笑いがこみ上げたことは黙っておきたいと思います。

お屋敷のサヨお嬢さん(渡邊安理)。わがままで身勝手なのに何か憎めないサヨがとても魅力的。やっぱり渡邊さんは可愛いなあ~♪

その親友で、芥川の婚約者であるフミ(實川貴美子)。芥川に「(映画の世界で)待っていてくれ」と言われたのに、彼が心配で追いかけてしまう行動力に驚きましたが、芥川に「君は僕を信じていない」と責められて、落ち込んだ背中がとても可愛かったです。

メイドのハナ(坂口理恵)。いやもう、この人は居てくれるだけで嬉しいです。その突っ込みのタイミングの良さはホントにすごい。

奥方(大森実紀子)と、菊池警部の部下の巡査(三浦剛)。役の人間と役者の二役をやるのはこのお二人と上川さんだけなんですが、なかなか面白い役どころだったと思います♪

映画監督(筒井俊作)。いやはや、良い味出してました!



この物語とは直接の関係はないのですが。
江戸川乱歩は、まさに日本文壇に新しいジャンルを開拓した人なんですよね。
「推理小説」というジャンルは、日本には無かったのですから。
ということは、当然読者もいなかったということ。

星新一の伝記にも書いてありましたが、日本に「推理小説」を定着させた乱歩は、「SF小説」を日本に根付かせようという一連の動きに全面的に協力してくれるんですよね。
実際、「SF小説」は、当初はミステリの一分野みたいな扱いでした。SFとミステリーをひっくるめて「空想小説」というジャンルがあったようなものですから。
乱歩賞の受賞者に、SF作家が何人も含まれているのをみてもわかります。

日本のSFを創ったのは、もちろん星新一一人ではなく、沢山の人々の積み重ねの上にあるわけですが、
こと「推理小説」については、もしかしたら乱歩一人ががんばった…と言っても良いのかもしれませんね。


そんな乱歩が、まだ自分の道を見出せずに、悶々と芥川への憧れに身を妬かれていた、大正5年。
そんな気持ちを汲んでしまった「役者・上川隆也」と、「太郎」の葛藤は、とても辛いものだったんだろうな、と思います。
それからわずか十数年で芥川は自殺し、乱歩は71歳まで、文壇の主として戦後を生き抜いていく……そんなことは、大正5年の彼らには、何の関係も無いことなのだ、と。

役者冥利に尽きる役なのかもしれませんね、太郎は。
難しい役だな、と思いました。
「役者」として、「役」への思いいれを語る、というのは。

成井さん、周りに恵まれたせいもあるかと思いますが、あなたも十分、天才だと思いますよ。
……いや、そう思ってないとああいう話は書けないと思いますけどね。




Another CAST公演は見事に宙組公演に被っていたので観られませんでしたが、この年末に、この公演に巡り合えて、本当に良かったです。

最後に、カーテンコールで西川さんが言った言葉を。

「みなさんも頑張ってください/それぞれの場所で、それなりに。
 思い出したら、またここで逢いましょう。
 僕たちはいつでも、ここに居ます」


私が観ているのは映画ではなく舞台だから、あなたたちがいつもそこに居てくれるとは限らないけれども。
でも、また次の公演で逢えるのを、楽しみにしています。
なんたって、ハインラインの「夏への扉」は、私が初めて読んだSFですから!(^ ^)


シアターコクーンにて、「広島に原爆を落とす日」を観劇してまいりました。



作:つかこうへい、演出は岡村俊一。
出演は筧利夫、仲間リサ、リア・ディゾン、大口兼悟、馬場徹、武田義晴、山本 亨、山口紗弥加、他。

私はこの作品、初演(主演は風間杜夫)は観ていませんが、1997年の演出・いのうえひでのり版(主演は稲垣吾郎)は観ました。
友人が吾郎くんのファンだったのでチケットを取ってくれたのですが、ものすごく感情移入してしまって、挙句にすっかり吾郎くんのファンになったという(^ ^)。
ヒロインを演じていた緒川たまきも、多分このときが初めてだったと思うのですが、美人でスタイルがよくて声が良くて、吃驚した記憶があります。


あのときは、「広島に原爆を落とす」ことを決意した山崎(稲垣)が広島への想いを語る長台詞が心に嵌って、すごい勢いで泣いたものでした。
日本への、そして広島への愛ゆえに、そして、その広島で待つ愛する女のために、すべてを捨ててボタンを押そう、という、前向きな決意。戦争を終わらせ、平和を取り戻す、ただそのためだけに、愛する女のために。


……と感動した割に、記憶力の無い猫はあまり細かい設定を覚えておらず(T T)、あのとき、吾郎くんの山崎少佐はロシア人との混血だった……ような気がするのですが、違ったっけ??


今回の筧さんは韓国系日本軍人で、731部隊を率いて納豆の研究をしていたことになっていました。あれっ?食糧難から子供たちを救うための完全栄養の新型納豆の研究が、中国でやっていたことになってるぞ。たしか、何でもかんでも腐ってしまう南のジャングルの中で研究していた……ような気がするんだけど。
どうでもいいことですが、納豆菌は暑すぎると死んでしまうので、南の島では納豆にはなりにくいと思う(^ ^)いや本当にどうでもいいなそんなこと。



ヒロインの設定も、日本陸軍将校で、ベルリンで活動中というのは何となく記憶にあるけど、特殊能力によって迫害される髪一族なんていう設定、あったっけ……?
いやー、もう、本当に観たのか?何なんだこの記憶力の無さは。



細かいところは全く覚えていないのでとりあえずおいといて、
主筋にかかわる部分については。

今回、山崎の出自が韓国系になったことで、ちょっと話が縒れたような気がしました。この変更は作品にとっても非常に大きな変更だと思うのですが、つかさんご本人はどこまでかかわっていらっしゃったのでしょうか?
そもそもの展開に無理がある物語なので、韓国系日本軍人の山崎に何故アメリカからの指令が届くの?というレベルのことに疑問がわくと、素直に山崎の長広舌に感情移入できないんですよね。バタくさい顔の吾郎くんが「西洋系との混血」の役を演じて、アメリカでスパイをしていたみたいな設定があると、いろいろあってアメリカ軍からの依頼を請ける部分に説得力があるんですが、、、
うーん。

どうして山崎を韓国系にしたんでしょうね。つかこうへい追悼公演だから、つかさんご自身の出自に合わせてそうしたんじゃないの?と勘繰りたくなってしまいます。
そんなことない、何か理由があるんだ、と思いたいけど、プログラムにも何も書いていないし……うーん、わからんなあ。
【さくら貝さまからコメントをいただきました。このあたりの設定は、86年に出版された小説版の設定に合わせてあるそうです。大変失礼いたしました!】



なんだか、元々わかりにくかった物語が、枝葉(要素)が増えて複雑になったことで、余計に判りにくくなってしまったような気がしました。「現在」のストーリーって、こんなに分量ありましたっけ?もっと戦前~戦後の話に集中していたような気がするんだけどな。
特に、ラスト(山崎の決意)に至るまでのカタルシスが無くなってしまったことが気になりました。あそこでガーっとハマったんだけどなあ(T T)
とにかく、理由はわからないけれども、猫自身にとっては、前回は消耗するほど感動したことと、今回は「?」で終わってしまったことは両方とも事実なんです。

……うーん、単なる先入観や吾郎ファンの戯言である可能性もあるなあ~。、、、前回の記憶がもう少し残っていれば比較のしようもあるのですが、これじゃまるで云いがかりみたい(T T)。感想を書くのって難しいですね。



それでも。
つかさんの描きたかった感情は、覚えているような気がするので、その印象を外挿しつつ、観劇を終えました。
つか作品は今まで、「再演」と言っても脚本は大きく変わっていることが当たり前でしたが。これからはどうなるんでしょうね。つかさんご本人は、もう2度と書きなおしてくださることはないのですが、、、
そう思うと、あらためて寂しいな。

今回の私みたいなこともあるけど、きっと、前回は全然ダメだったけど今回で凄く感動した!!と仰るかたも同じくらいいらっしゃるんでしょうに。
なによりも、つか作品は今でも「なまもの」だったんですよね。
それがもう、冷凍になってしまうんだとしたら……仕方のないことですが、残念な気がします。




そして。

13年前、この作品を観劇して、私は初めて「エノラ・ゲイに乗っていた人」のことを考えました。
それまで、一度も考えたことは無かったような気がします。
原爆を落とした日、
原爆が落ちた日、
原爆を落とした男、
……原爆を落とさせた、国。



アメリカは、原子爆弾を人間の上に投下する最初の国になることを恐れました。

アドルフ・ヒトラーは、女のために自分の祖国を犠牲にすることを選び、
そして山崎は、女のために自分の愛する街を犠牲に捧げる。

山崎とヒトラー、ヒトラーと山崎。
どちらがより深く自分の故郷を愛していたのか、
どちらがより深く、同じ女を愛したのか?

40万人を焼き殺すに足る愛。
……40万人の犠牲をさえ踏み越える、強い意思。





日記のタイトルは、プログラムの表紙に書かれたこの公演の英題から。
海外公演の予定があるわけではないようなので、深い意味はないのかもしれませんが、日本語の原題とは全く意味が違うことが若干気になりました。
直訳すると「広島を爆撃した男たち」……になりますよね?Bombedって、違う意味もあるのでしょうか。【←辞書をひいたところ、Bombには「爆弾を投げる/爆撃する」という意味の他に、口語で「みじめな失敗をする/どじを踏む」という意味があるらしいですね。…深いな】

いずれにしても、「Men」なんだな、というところには引っ掛かりました。
「日」でも「男(単数)」でもなく、「Men(男たち)」なのか、と。


戦争にかかわったすべての男たちが、どこかに原爆を落とすことを望んだ。
そのすべてが、この「Men」となる。
女性たちが望んだのは、もっと違うこと。
勝利することでも戦争を終わらせることでもなく、ただ、戦わない自由を。

「彼女」の手に握られた愛は、運命のボタンを押した男に、届いたのかどうか。
ボタンを押した男の愛は、山の上で光明を待っていたはずの女に、届いたのかどうか。




どちらにしても、世界の子供たちに納豆が届く日は来なかった。

腹を減らした子供たちの、「Give Me Natto!!」という切なる叫び声 が聞こえるような気がしたのは、ただの夢だったのか?

いや、たぶん、違う。

女は肉体という名の殻を捨て、
男は正気という名の牢獄を出て、

そして、どこかでたぶん、完全栄養の納豆を創っているのだ。

誰かが視た夢の中で、
世界が終わる日のために。



黙阿弥オペラ

2010年8月18日 演劇
紀伊国屋サザンシアターにて、こまつ座&ホリプロ公演「黙阿弥オペラ」を観劇してまいりました。


当初予定していた新作「木の上の軍隊」から演目を変更しての再演。
結局東京裁判三部作を観ることができなかった私にとっては、事実上の“井上ひさし氏追悼公演”であり、かつ、ずっと観たいと思っていた作品の再演でした。



明治から大正にかけてのお江戸を舞台に、狂言作家の河竹黙阿弥を中心に庶民の生活を描いた作品。
セットは、両国橋ちかくの蕎麦屋「仁八そば」の一杯のみ。
時代は1853年から1881年までの28年間。



まず、冒頭の場面は1853年の師走。ペリーの浦賀来航から半年。「幕末」はまだ始まったばかりで、庶民の生活にはまださほどの影響は出ていない頃。

冬の夜更けに、とっくに閉めた「仁八そば」の戸口をどんどんと叩く者がいる。71歳の女主人とら(熊谷真実)はゆるゆると起きてきて、ぶつぶつ文句を言いながら引き戸をあける。
雪の中、転がり込んできたのは38歳の狂言作家・河竹新七(吉田鋼太郎)と28歳のざる売り・五郎蔵(藤原竜也)。

すぐそこの両国橋で、身投げをしようとしたら、目の前で身投げをしようとする奴がいるんでつい助けてしまった、とお互いに言い募る二人。
新七(のちの黙阿弥)は、一座の座付き作家でありながら、新作を書かせてもらえない(旧作の再演や人形浄瑠璃の潤色ばかり……って、どこかの劇団みたいだな)苛立ちが募っての自殺未遂。

そんな彼に、五郎蔵が身の上を語る。女房をなくし、ざるも売れず、幼い娘を食わせてもやれず養女に出すしかなかった、と。
養女に出した幼い娘に陰から逢いにいったら、ただ働きの奴隷同然の扱いを受けていた。憤慨して顔を見せたら、娘に「父ちゃん、もう来てはだめ。お腹がすいたならこのお煎餅をあげる」と煎餅のカケラを渡されて、ふらふらと両国橋まで行ったんだ、と。

新七は自分の甘えに気づいて新作を創ることを誓い、一年後の再会を約して別れる。

一年後。
狂言役者の高島屋(四代目市川小団次)と組んで人気沸騰中の新七。
仁八そばで再会した女将のとらは、店に置き捨てられた赤子(おせん)に困り果てていた。
いろいろ話すうちに、「おせん株」を思いつく女将。養育費用を出資してもらい、いろいろ教育をして美しく育て、玉の輿に乗せて何倍にもして返す。
手放した娘の面影を求めてなけなしの金を出す五郎蔵、豊かな懐から一両だして夢を買う新七。女将を含めて三人の「おせん株仲間」は、毎年の定例会をすることを誓う。




おせんの成長を楽しみに一年一年を過ごすうち、仁八そばのおせん株仲間も増えていった。
噺やの円八(大鷹明良)、チンピラ少年の久次(松田洋治)、浪人の及川孝之進(北村有起哉)。
新七は押しも押されもせぬ人気作家として不動の地位を築いており、
五郎蔵は養女に出した先で娘が事故死したことに抗議して暴れたため、押し込み強盗と間違えられてお縄になり、人足場へ。そこで知り合った久次を仁八そばへ送り込む。
女将のとらは、すこし老けたけれども相変わらず。



成長したおせん(内田慈)が舞台に登場するのは、一幕の終わり近く。
細かいところはもう忘れてしまったのですが、あれはたぶん明治維新(1868年)の前後だったと思うので、物語の開幕からは15年前後の時間が流れています。おせんは18か19?色街で三味線を習い、とらに煮物を習い、着々と玉の輿へ向けての準備を調えている最中(^ ^)。


二幕は、ざんぎり頭になったおせん株仲間たちの「新しい時代」を生き抜くための努力と、おせんの成長ぶりを中心に描き、明治初期という時代の空気をよみがえらせてくれました。


パリの万国博覧会に、「三味線が弾けて、踊れて、客あしらいが出来て、煮物がつくれて、蕎麦がうてる」という条件を満たす唯一の芸妓として、「JAPAN」パビリオンのコンパニオンとして招聘されたおせん。
声の良いのに目を付けたオペラ座の関係者が世話してくれて、一人パリに残ったおせん。オペラの勉強をして、日本にもオペラを広め、いつか舞台に立つことを夢に見ながら、皆より数年遅れて帰国する。
心配して待っていた株仲間の皆は、すっかり垢抜けてドレスを着こなしたおせんに吃驚する。

オペラへの情熱やみがたく、おせんは横浜の外国人居留地のオペラハウスに参加し、歌うようになっていく。そして、新七の名台詞は、オペラの節にとてもよく合うということに気づく。



そんな頃、株仲間たちは、、、
下級士族の救済策の一つとして始まった「国立銀行」制度を利用して、おせん株仲間で資金を出し合い、銚子に国立銀行を設立する。
その「東京支店」として仁八そばの店を銀行にしようとして、とらの跡を継いでいたおみつ(熊谷真実/二役)に相談する。最初は反対していたおみつだが、最終的には協力し、色街のおねえさんを目当てにした東京支店がたちあがる。

新しい文化、新しい制度が次々に導入され、その都度右往左往する“創作者”“表現者”たちと、それらを受け入れて変っていく“庶民”という存在。





そんななかで。
自分の作品の“表現者”であった高島屋を喪って落ち込んでいた新七に、「西欧風の『おぺら』を書くように」という新政府からの命令がくだる……。



……井上戯曲って、あら筋の説明がすごく難しい(涙)。
たくさんのエピソードが並行して動くし、登場人物はわずか数人なのに、全員にありとあらゆるエピソードがあるので、どれが本筋なのかよくわからなくなってくるんですよね。



とりあえず、この作品は、タイトルから言っても黙阿弥(新七)に「おぺらの脚本を書け」という命が降ったことと、それに対する黙阿弥の回答がメインテーマだと思うのですが、、、作品を観終わった後の印象としては、「おせん株仲間」とか、彼らが設立した「国立銀行」の顛末とかがすごく面白い。
でも、その辺は非常に複雑な物語なので、簡単にあらすじで説明しようとすると泥沼にはまる(^ ^;ゞ
舞台を観れば一目瞭然なので、ぜひともその目でご確認くださいませm(_ _)m。




いろいろ印象的な台詞はたくさんありましたが、やはり黙阿弥の
「食べるものさえ始末して貯めた小金を、ぎゅっと握りしめて木戸にやってきてくれた観客たちが、オペラを観て、白浪狂言を観たとき以上に幸せになって帰れるとは思えない」
というのが一番心にささりました。
成果物は、受け取り手(求める人)がいてくれて初めて存在意義があるという、ものすごく当たり前のことを、あらためて思いました。


お客さまが求めているものは何か?
西欧風のオペラをつくり、グラント将軍に見せて「日本の先進性」=「西欧化」というイメージを植え付けたい、というのは、政府都合です。
黙阿弥は反対なんだから創り手都合とは言い難いけど、プロデューサーという意味での「制作側都合」ではあると思う。

でも、それでは駄目なんですよ。
文化の成熟度を計る物差しは、舞台芸術においては常に 優れた見物客がどれだけいるか、です。一人や二人の優れた役者や作家がいるだけでは、社会全体の成熟度の物差しになんてなりません。
グラント将軍だって、そう簡単には騙されないでしょうよ。


江戸時代に結ばれた不平等条約の撤廃は、明治政府の悲願でした。
そのためには、費用を惜しまず何でもやった。意味があるんだかないんだかよくわからない対応を、ものすごくたくさん。
それらが意味があったのかどうか、今となってはよくわからない面もありますが、あの時代のなりふり構わなさというのは凄いものがあります。

それでも、芸術家としての良心に殉じようとした黙阿弥の勇気と潔さ、
そして、それを支えつつ、自分の道を歩きぬこうとしたおせんの凛々しさが、心に強く残りました。
結果的には、こういう人々が明治政府を支え、明治の日本をつくりあげたんだろうなあ、と。




それでは最後に、キャストごとに。

内田慈(おせん)
衣装の着こなしには若干の課題があったような気がしますが、愛され系のファニーフェースと個性的な声が魅力的で、役にぴったりだな、と思いました。
去年、G2演出の「静かじゃない大地」で観て、強く印象に残った彼女。これからはちょっと追いかけてみたい気がします。

オペラ歌手、という設定なので歌はもうちょっと頑張ってほしかったけど、でも、経歴を考えればそこの期待値はあまり高くなかったので(汗)、よく頑張っていたと思います。そして、歌唱力にかかわらず黙阿弥狂言の名台詞を「カルメン」のメロディに載せて歌った場面は、間違いなく名場面でした。



藤原竜也(五郎蔵)
最初の出番での、乞食のようなぼさぼさ頭に汚しメークに吃驚しましたが、悪党になり切れない中途半端さをよく演じていたと思います。
実年齢より若い役で始まって、最期はだいぶ年上までいきますが、意外と老け役も似合うな、というか、年齢を重ねたら良い俳優になるかもしれないな、と思いました。


吉田鋼太郎(河竹新七)
優しい風貌と語り口、それなりの地位にある人気作家という役を嫌味なく演じていて、説得力がありました。キャラクター的にはあの中では普通な人なのに、ちゃんと主役としてしっかり地に足のついた役柄で、とても良かった。
「観客に感動を与えるために」という、ある意味陳腐な台詞に素直に泣けたのは、吉田さんだからこそ、と思いました。


熊谷真実(とら/おみつ)
とら役での最初の出番では、誰だか全然わかりませんでした。
すごい思いきった老けメークで、最後までこのままかと思ってドキドキしたのですが、一幕のラスト以降は可愛いおみつ姐さんでした。
でも、芝居面でもとら役の方が印象的だなあ(^ ^)。
プログラムの素顔での稽古場写真を見ても、どっちの役を演じているのか表情でわかるところが凄いな、と思いました。役者魂、ここにあり!!


大鷹明良(円八)
ちょっと怪しげな噺家。語りはもちろん、風貌や仕草のさりげない巧さに感心しました。さすがだなあ♪
なかなかに興味深い、面白い役だったと思います。スーツ姿も素敵だった♪


北村有起哉(及川孝之進)
出演メンバーの中では頭一つ大きくて、「浪人者」にぴったりな感じ。
あのイケてなさが最高でした。本当に巧いなあ~~~。


松田洋治(久次)
最初に出てきたときの、どこぞの大店の番頭見習いみたいな白塗り化粧の違和感と、三下っぷりを表に出した時の落差が良かったです。面白い役者だな、と思いました。




内田さんのおせんちゃんには全く不満はありませんが、他に誰か……と思ったら、遠野あすかちゃんなら、と思いつきました。
黙阿弥にわたるさん、
五郎蔵にトウコさん、
円八にしいちゃん、
久次にすずみん、
及川に礼音くん、なんてキャスティングはどうかしら(^ ^)。
(井上戯曲と宝塚歌劇………無理だな、当たり前だけど)


天聖八剣伝

2010年7月1日 演劇
銀河劇場にて、「天聖八剣伝」を観劇いたしました。


相葉弘樹くんのファンの方に誘っていただいたのですが、案外面白かったです(^ ^)。
タイトルから、「里見八犬伝」のアナザーストーリーかと思っていたのですが、全然関係なかったですね。そもそも、男8人では「里見八犬伝」は出来ない!ということに気がつきました。静姫がいないとっ話が始まらない(^ ^;ゞ



作・演出はきだつよし。私は彼の作品を観るのは初めてでしたが、思ったより正統派の舞台づくりをされるんだな、という印象ですね。もっとテレビっぽいのかと思っていたのですが。
展開は、まあ、相当にぶっ飛んでましたけどね(^ ^)。



主役の相葉くんは、ちょっとやんちゃな義賊の役。
とにかく殺陣が格好良かった!!
一昨年の「PIPIN」が観られなかったので、生で観るのは初めてだと思うのですが、とにかく動きにキレがあってよかったです。台詞もなかなか。



対抗するアキラ役は、戸谷公人。
舞台は初めてなのかな?「樅の木は残った」に出てたんですよね(^ ^)。
プログラムの写真は、プラチナブロンド(?)の巻き毛で、正直あまり似合っていないのですが、舞台はすっきりとした細面によく映える黒髪ストレートの短髪がよく似合っていて、美形でした♪
ストーリーのすべての矛盾を一人で引き受ける人なので、大変だったでしょうねぇ……。



相葉くんの相棒(?)的なポジションに馬場良馬。
とにかく動ける人みたいで、殺陣も良かったし、ダンスも良かったです。立場によってコロコロ態度を変えるその役づくりが、案外と切なくてなかなか良かったと思います。



彼らのリーダー(?)ともいうべき剣持に、黒須洋壬。
コンボイ・ショウにずっと参加している名ダンサー。今回も期待していたのに、舞台を観てみたら陰陽師役なので衣装が大きくて全然踊ってくれず、ちょっと残念だったんですよね。
でも、私が観た日は相葉くんメインのトークショーがあって、そこにゲストとして参加してくれて、ちょこっとだけ踊ってくれました♪ラッキー♪
芝居はさすがの貫録と存在感で、文句なかったです(はぁと)。



浪人者(?)の権佐に、元RED WARRIORSのダイアモンド★ユカイ。
真面目なお医者さんの健志に西ノ園達大。
どちらおあまり積極的に本筋に絡んでくるキャラではなく、ボソッとつぶやく役なんですけど、いろんな意味で流石でした。黒須さんとこの二人が芝居を支えているんだなーと思いました。



女形の兼光に、声優の森久保祥太郎。
いやー、一人で場をさらってましたね。本筋にも結構絡む重要な役でしたが、独特のキャラクターが実に似合ってて、素晴らしかったです。あんなに“ずるずる”した衣装なのに、あれだけ動けるのも凄いなあ……。



アキラに心酔し、彼を手伝うために軍隊に入った間は、大河元気。
役のキャラクターが不器用で口下手、みたいな感じだったせいか、ちょっとぎこちない感じでしたが、和若いゆえの青さがあって、良かったと思います。
もう少し軍服の着こなしを考えてほしい……みたいなのは、宝絵じゃないんだから言っても仕方ないのかな(T T)。



話がもう少し人間の心理として整理されていたら、もっと面白くなっただろうに、と思いましたが、
演出面はなかなか迫力があって面白かったです。

アンサンブルも含めて全員が男性で、女性が一人もでていない舞台でしたが、森久保さんの存在感が大きいせいか(^ ^)、観終わった後で『あれっ?女性いなかったっけ?』って思ってしまいました(^ ^)。



罪なき罪の罪

2010年6月23日 演劇
ABCホールにて、リリパットアーミーIIの「罪と、罪なき罪」を観劇してまいりました。



まず、何に驚いたって、リリパットアーミーが25周年だってことに一番驚きました(^ ^)。
そんなになるんだー。私が観ていたころは、まだ中島らもがいて、「若い劇団」って感じだったのに。

……中島らもが辞めて、リリパットアーミーIIになるちょっと前くらいから、小劇場の芝居を観に行く回数がガタっと減って(←単に、祐飛さんに嵌ってたんですが)、リリパットも観なくなってしまって。
えらく久しぶりのリリパットでしたが、相変わらずの部分もあり、全然違うなーと思う部分もあり、面白かったです。
いやー、しかもリリパットを大阪で観るのが初めてだったので、余計に面白かったのかも。

客席との一体感、というか、そんな感じのものが新鮮でした。




物語の主題は、大津事件。
まずは、パンフレットにも何も書いていなかった史実を簡単に復習すると……

大津事件とは、明治24年(1891年)5月に滋賀県大津で起きた事件。

訪日中のロシア帝国皇太子ニコライが、警備の巡査に斬りかかられ、負傷した。
幸い命には別条なく、予定通り帰国されて大事には至らなかったけれども、当時はロシアの報復を怖れて大騒ぎになったようです。
下手人の巡査は現行犯逮捕され、裁判にかけられましたが、当時の法典には外国の皇族に対する犯罪に関する法律はなく、日本の皇族に対する大逆罪を適用すべしという行政側と、一般人に対する殺人未遂の初犯で死刑というのはありえないと主張して三権分立を主張した司法側が対立した裁判となった。
最終的に巡査は無期懲役となり、司法の独立が認められた最初の例として有名。国際的にも日本の司法権に対する信頼を高めたと言われる……らしい。


結構真剣な、命とプライドを懸けた『政府の要職』の人々をまっすぐに描いた、予想していたよりもずっと硬派な物語でした。


でも、リリパットはリリパットでした(はぁと)。
いやー、面白かった(^ ^)。


作品の中で「大津で起こった事件」という言葉が出てくるのは、物語も中盤を過ぎたころ。
それまで何をしているかというと、ひたすら登場人物の日常を淡々とやっているんですよね。
それがまた、ギャグ満載なのにリアルで面白くて。
しかも、関西の劇団なだけに、舞台は東京でも出身地による言葉の違いが非常に絶妙で、わかぎゑふさんの脚本は素晴らしいな、とあらためて思いました。


最初の場面は、牛鍋屋「いろは」。
オーナーの娘で、店長をつとめる木村士女(柊巴)。
らぎちゃん、可愛い(*^ ^*)
黒い着物をきっちりと隙なく着こなして、髪もきっちりアップにした美女が、一瞬誰だかわからなかった猫は、たぶんらぎちゃんのファンとしては失格なんだと思います(汗)。
でも、ホントに可愛かったなあ★
やわらかくて低めな、大好きな声は、マイクを通さない方が魅力的。ただ、やっぱりプロの小劇場役者の中にはいって台詞を言うには、声の通りも滑舌も、まだまだ訓練が必要だなあとは思いましたけどね。

着物での所作とか、さすがは「日本物の雪組」出身、きれいなものです。女役やったことなんてないはずだけど、着物を着なれているっていうのは大きいのかな。
それにしても本当に可愛いです★やっぱり舞台が似合う人だと思うので、これからもたまにでいいから舞台にも出てほしいなあ。



士女に案内されてきた客は、「北州社」に所属する弁護士たち。吉川宗明(上田宏)、関西出身の岸辺光太郎(や乃えいじ)、その弟・岸辺春輔(浅野彰一)。
貴族のぼんぼんである吉川が同僚の岸辺たちを誘い、弟もついてきた、みたいな感じだったかな。とにかくギャグ満載の大騒ぎで、うるさい連中でした(^ ^)。
そこに、切れ者の同僚・中上川棋左衛門(茂山宗彦)が加わり、話が盛り上がって大騒ぎになったところで、司法省の判事・溝ノ内智明(八代進一)が「うるさい!!」と怒鳴りこんでくる。

喧嘩になりかけた2グループの仲裁にはいる士女。
いやー、やっぱ可愛いです(はぁと)(←それだけかい)


このあと、裁判官の日下正太郎(野田晋一)の家に場面はうつり、女中の谷山ヨシ(谷川美佳)、河野トキ(福井千夏)らが紹介されて、ほぼ主要登場人物の紹介が終わります。




大津事件の裁判で、裁判長を務めるのが日下正太郎。
判事に溝ノ内がつき、弁護人として吉川宗明がたつ。

日本の運命を決めたのかもしれない重要な裁判の、関係者たち。
彼らには彼らの人生があり、大津事件は、その中のホンの小さな出来事にしかすぎない。
彼らには彼らの人生と、彼らの信念と、彼らの主張があって。
それは、日本という国のために犠牲になることはいとわないけれども、日本のためにあるもおのではないのだから。



彼らの日常を、前半に丁寧に描くことが、ひとつ間違えれば唐突感のある後半の盛り上がりを支えていたんだな、と、観終わってから思いました。
そして、わかぎゑふの脚本・演出に、今更ながら感銘を受けました。

細かいところですけれども、終盤に、一枚の手紙を読み上げる場面があります。
裁判にとって重大な意味のあるそれを、日下が岸辺に読みあげるように言うんですよ。
「(書いたのは関西出身の人間なので)関西弁で読んだ方が、気持ちが伝わるだろう」と。
手紙自体はほぼ標準語で書かれていて、読み上げるためのアクセントがちょっと違うくらいなんですよ。でも、あえてそう言わせて、「少しでも気持ちを伝えたい」という気持ちを伝えようとする。
その心づかいが素晴らしいな、と。



なんだか、お芝居らしい『お芝居』を観たのが久しぶりで、レポートの仕方を忘れました(^ ^)。

とても面白いお芝居でした!と、それくらいしか書くことがない(汗)。


とりあえず、今週末は新神戸オリエンタルで公演があるようです。
ぜひぜひ、ごらんくださいませ♪♪



ローマの休日

2010年5月1日 演劇
銀河劇場にて、「ローマの休日」を観劇してまいりました。


不朽の名画「ローマの休日」の幻のオリジナルという発想で、マキノノゾミ氏が脚本・演出(脚本は鈴木哲也氏と)を務めたストレートプレイ。


以前帝国劇場で観たミュージカル版があまりぴんと来なかったので、「やっぱりローマは映画だな」と思っていたし、今回もそんなに行く気満々だったわけではないのですが、たまたまチケットが手に入ったので、せっかくだから…という程度の気持ちで行ってきました。


で。

とっても良かったです(^ ^)。




役者は三人。
ジョー・ブラッドレイに吉田栄作。
アーニャ(アン王女)に朝海ひかる。
アーヴィングに小倉久寛。

あとは、アン王女ご病気のニュースをひたすら喋るラジオのナレーターとして、あるいは、ラストの記者会見での記者として、川下大洋さんが声のみ出演。そして、サンタンジェロの船上パーティでアーヴィングと踊る女、アン王女と踊る男として人形が二体登場するだけ。
実にシンプルな舞台でした。



なんといっても、発想がいい!

「あの有名な『ローマの休日』には、実はオフ・オフ・ブロードウェイの舞台というオリジナルがあった!」というマキノさんの妄想(?)から立ちあがった、という今回の作品。
いやー、本当にオフオフでやっていそうな雰囲気があったのが、すごく良かったです。


セットと言えるのはジョーのアパートのみ。一幕は完全にワンシチュエーションで、アーニャの“最初の冒険”は丸ごとカット。
いっそのこと、2幕も完全なワンシチュエーションで構成すれば良かったのに、と思ったほど、ジョーのアパートでの緊迫感のある芝居が良かったです。



特ダネにあっさり撒かれて落ち込むジョー、そこにひょっこりと帰ってくる少女。最初の冒険にワクワクして、上気した頬が美しいアーニャと、背中を丸めて少し上目づかいに少女を見る中年男。

コムさんの“少女”っぽい透明感と硬さ、そしてコケティッシュな可愛らしさが同居する魅力が、三人では広すぎる舞台全体に漲るようでした。

そして、なんといっても、アーニャに真っ向から対峙する吉田栄作さんの、ダンディな魅力。言葉を飲み込んで煙草に火を点す仕草の格好良いことといったら!!(*^ ^*)ああ、「カサブランカ」を外部舞台で上演するなら、この人のリックを観てみたいな、と、そんなことさえ思いました。

そんな二人を賑やかに見守る小倉さんの独特の存在感と明るさも、役にぴったりでとても良かったです。三人のキャスティングは、三人ともはまり役で凄い!の一言。緊密な芝居に必要な役者を集めたステージでした。



<この後は、ネタばれがあります。映画も舞台も両方ネタばれして構わないという方だけお読みください>




原作の映画は大好きで、何度か観ているのですが、……意外と覚えていないものなんだなあ、と。「あ、これ映画とそっくり同じだ!」というのはわかるんですけど、「あれ?こんな場面あったっけ?」と思ったときに、映画と違うのか、同じだけど私が忘れているのか、全然わからない(汗)。


冒頭、タクシーから降りてアパートに向かうジョーが、タクシーの運ちゃんとやりあう(この女の子をどうするんだ?/俺には関係のない娘なんだ。千リラやるからどうにかしてやってくれ/そんなこと言われても困るよ/云々)会話を聞きながら、この会話は映画のとおりのような気がするけど、何かが違う……としばらく考えていました。
終わってから思い出したんですけど、映画には、この前に大使館で女官と話をするアン王女の場面がありましたよね?医者に睡眠薬を与えられて、そのまま外に出て、あくびしながら歩いている場面。

そして、一晩をジョーのアパートで過ごしたアン王女が、「帰る」と言ってアパートを出て行ったあとの“最初の冒険”、市場をふらふらして、床屋に入って、という場面が丸ごと全部カットされて、一通り冒険をした王女が、昼過ぎに「お礼を言うために」ジョーのアパートにまた戻ってくる……という展開になっていたのですが。

ああ、ドラマとしては、これで十分なんだ、と思ったんですよね。

あらためて、この話、『幻のオリジナル』として、ジョーのアパートでのワンシチュエーションものを考えたのは正解だったのかも、と思いました。だって、大使館の場面がなくても、「最初の冒険」が、その冒険を語る王女のキラキラした瞳と上気した頬だけの表現になっても、何の違和感もなく話が進んでたんだもん。

以前観たミュージカル版では、たしか床屋役を太川陽介さんがやっていて、髪を切る場面とか、そういう細かい冒険がいちいち凄いミュージカルナンバーだったような気がするんですが……芝居としては、後からの説明ひとつで終わるエピソードだったんだな、と。


そして。
この場面を観ながら思ったのは、この舞台の主役は、王女じゃなくてジョー・ブラッドレイなんだな、ってことでした。


映画は、今思い出してみても完全にアン王女が主役。
当時は無名な新人女優だったはずのオードリー・ヘップバーンを、よくこんな役に配したなとあらためて思うのですが、終始アン王女の冒険がメインテーマであり、市場を歩く王女、髪を切る王女、すべての視点は彼女に集中していて、彼女の魅力で作品世界が成立していたのですが。

でも。
マキノノゾミ演出の舞台版「ローマの休日」の主役は、レッドパージでハリウッドを追われた脚本家ジョー・ブラッドレイ。
信念に殉じて夢を懸けた仕事を喪い、心に染まない三流ゴシップ記者の仕事で心を荒らしていた中年男。

ハリウッドを追われたのは、自分自身に対する忠節を曲げなかったから(←査問会に呼び出され、仲間内のコミュニストの名前を言うように強制されたのを拒否したために議会侮辱罪を適用された)。
だから、戻りたいと願うことさえできずにいる。
ましてや、共にローマへ流れてきた仲間の前では。


でも、心の片隅では、果たされなかった夢の欠片が泣いている。
声もあげずに、ひっそりと。




そんな男の世界に、突然飛び込んできたティンカー・ベル。
「ローマ」という街をお伽話の街にしてしまう、ファンタジーの住人。
明るくて軽やかな、ネバーランドへの案内人。


でも、そんな彼女には義務があった。
ネバーランドにはネバーランド流の、果たされなければならない義務が。



だから彼は、「学校へ戻らなくては」と言うティンカーベルに、教えてあげる。
「人は、義務と同時に、権利も持っているもんだ」
人生にたった一日だけの休暇をとる権利が、と。

たぶん。この瞬間(一幕ラスト)だけは、彼は特ダネのことも、編集長が約束してくれた5千ドルのことも、忘れていたのでしょう。

俺も休暇を取るから、と、
そう口にした、この一瞬だけ、は。



この場面での、つかみどころのないコムさんの芝居がとてもよかったです。
ジョーと会話をしているときの一挙手一投足に気持ちがあふれていて、哀しいほどにきれいでした。
ジョーが「先に行ってる」とアパートを出た後、一人残されて電話に手を伸ばすまでの逡巡、声を張って「我が国の大使館を」と言いながら、「……いいえ、いいです」と電話を切るまでの、ピンと張りつめた細い背中。
くるりと振り向いて、ドアに向かって、もう一度振り返って、ドアをあけて、立ち止まって、歩きだして……一つ一つの仕草に込められた迷いと希望、あふれんばかりの喜びと、それを抑えようとする気高い意思のせめぎあいが、ひどく切なくて。


一日だけ、と口にしたジョーの『本当の願い』が、このときの彼女にはちゃんと分かっていたのかもしれない、と思いました。
願いをかなえる妖精として、彼女は“彼のために”一日の休暇を取ることに決めたのかもしれない、と、そんなふうに。




一幕をアパートで過ごしたジョーとアンは、2幕はローマの街をあちこち歩きます。
カフェ、べスパ(スクーター)、祈りの壁、真実の口。
このあたりの展開は、ほぼ映画のとおり。だったと思います。たぶん。
ひたすら楽しくて、誰もがローマ観光に行きたくなる名場面の数々。いやー、かなり本気でローマに行きたくなりました(^ ^)。

ただひとつ、祈りの壁での会話は映画とはだいぶ違っていて、アーニャはここでアーヴィングにジョーの過去を聞くんですよね。
「俺はそのリスト(コミュニストの名簿)に入っていた。でも、奴は俺の名前を言わなかった……」
淡々とした口調に、優しさがにじむのがすごくいい。それを聞いているアーニャの、切なげな風情も凄く良かったです。その場にいない(←ジェラートを買いにいっている)ジョーについて語る二人が、なんだかひどく切なくて。


夜をすごす、サンタンジェロの船上パーティー。
明るい音楽に乗って踊るアーヴィング(と人形)。
ゆったりとした音楽にあわせて踊るジョーとアーニャ。
床屋の人形を持ってでてくる小倉さん。
……いやー、ここ、文章では説明できないんですが。めっちゃ笑わせていただきました(^ ^)。



近衛隊(だっけ?)に見つかって、テヴェレ河に飛び込んで逃げる二人。
アパートに戻って着替えるアーニャ。

「夢がかなったわ。…雨は降らなかったけど、濡れて歩くことができた」
茶目っ気を見せるアーニャを、無言で見守るジョー。

言葉すくなに別れのあいさつをする二人が、とても切ない。
このあたりは映画のとおりだった……と思うのですが。



……すみません。別れ際にジョーの手帳を見てしまったアン王女が、彼の正体(と目的)に気づいて、彼を責める場面って、映画にもありましたっけ……?

アン王女は、記者会見の場でジョーに会って初めて彼の正体を知ったのだと思っていたんですけど、私。それって、本当に映画を観たのかっ!?と言われても仕方ないような重大な問題だと思うんですが……ううう、自信ない(^ ^;ゞ




まあ、とにかく。
この場面が良かったんです、凄く(T T)。

王女の威厳を取り戻し、「独占インタビューを受けましょう」を言う王女。
決まりきった質問をするジョー。
「今回のご旅行で、印象に残ったご訪問地は?」
「どの街もそれぞれに美しく、どれか一つをあげるのは困難ですわ……」
有名な台詞を、そこで切って終わらせる。
硬く凍った、美しい人形のような無表情。硬質な声。

別れを告げてドアへ向かって歩きだす王女の背に、新聞記者の最後の質問が投げかけられる。

「祈りの壁で、何を祈られたのですか」

小さく震える背中。

「大きな願い事と、小さな願い事を」

「具体的には、どのような」

「大きな願い事は、世界の平和と国民の幸せ。小さな願い事は、……あまりに個人的なことですので」

「そこをなんとか。わが社だけに」

唇をキュッとかみしめて、王女が身体ごと振り返る。

「私の大切なお友達が、もう一度映画の世界にお戻りになれるように、と」



……いやはや。

泣かされました。コムさんと、吉田さんに。
いや違う、マキノさんに。




ラストの記者会見は、ほぼ映画のとおり。
白い衣装に身を包んだアン王女殿下は、輝くばかりに美しく、コケティッシュな笑顔で記者たちの質問に答えていました。

役者がいないので、ジョー以外の記者はただの光。声は川下さんと小倉さんがやっていらしたと思います。
最後にアン王女が一人一人と握手をするところも、コムさんのパントマイムでした。


この、握手の場面が。
世界に俺(ジョー)と彼女(アーニャ)しかいない的な演出効果があって、実に秀逸だったと思います。
下手の端で王女を待つジョーの背中が、彼女が近付くにつれてだんだん緊張感を増していくのが、すごく面白かった。
これは、役者を三人と割り切ったことの勝利だな、と思いましたね。


記者会見を終え、退出した王女殿下を見送った後。
そのままそこに残ってぼーっと待っているジョーの芝居が、また良かったです(T T)。
夢の王女が、もう一度そこからあらわれるのではないか、と、そんな虚しい夢をみながら、そんなことが二度と現実に起こることはないことを知っていて、
……それでも、そんな夢をもう一度見ることのんできた自分を心底喜んでいる、そんな芝居。

必ず、彼はもう一度映画の世界に戻るだろう、
そこでたぶん、夢の国の王女の物語を語るのだろう、と、そんな予感を残して。

そうして彼は微笑みを浮かべて退場し、物語の幕が下りる。


“夢の世界”のおしまいを告げるエンドロール。
セットはジョーのアパートだけにして、ローマの街を映像だけで描いた世界観にふさわしく、古臭いフォントで「The END」と描かれたエンドロールが印象的。




「幻のオリジナル」という設定にぴったりの舞台だったと思います。
残念ながら、あの時代にこんなに映像を駆使した舞台が作れたはずはないのですが(^ ^)、この舞台からインスパイアされて、あの映画が作られる、という設定がすごく自然。
素晴らしい!と思いました。


男役としてのコムさんにはあまり興味がなかった猫ですが、女優としてファム・ファタルを演じることができるコムさんは、素敵だなあと毎回思います、うん(*^ ^*)。
中性的な魅力、硬質で涼しげなたたずまい。なにもかも、立っているだけでアン王女でした。
可愛かった♪

そして。
吉田栄作のダンディな魅力に嵌りました(滝汗)。さすが、「抱かれたい男No.1」(←いつの話ですか)だけあります。
舞台を拝見したのは初めてなんですが、ぜひぜひこれからもいろんな舞台に出てほしいです!次はミュージカルなんてどうでしょう(真顔)。

いやー、吉田さんの格好良さを見るだけでも、チケット代の半分は元が取れますよ♪などと売り込んでみたりして♪


明治座にて、早乙女太一主演「嗚呼、田原坂/早乙女太一 舞踊ショー」を観劇してまいりました。


まずは二幕物の「嗚呼、田原坂」(作:西田大輔、演出:岡村俊一、構成:渡辺和徳)があって、その後さらに休憩をはさんで、劇団朱雀の「早乙女舞踊ショー」という構成。
こういう構成は初めてで、いわゆる三幕構成ともちょっと違う感じでした。
雰囲気的には、明治座主導のお芝居(二幕)のあとに、劇団朱雀のショーがちょこっとついている、という印象。私は劇団朱雀の公演を初めて観たのですが、いつもこういう形式で公演されていらっしゃるのでしょうか……?



「嗚呼、田原坂」

西南戦争の激戦地であった田原坂を舞台に、そこを守り抜こうとした青年剣士・結城新之助(早乙女)の物語。
飫肥(おび)藩の藩士で、天才剣士と呼ばれた新之助。この物語は、あくまでも『新之助の物語』であって、『西南戦争』がテーマではなかったのが面白かったです。


新之助と、新之助の父親(結城惣左衛門/伊吹謙太朗)の後添えに入った伊予(持田真樹。新之助の幼馴染)との、ほのかな恋とすれ違い。伊予いる飫肥を、薩摩を守ろうとする新之助の想いは、ときおり彼の決意からはみだして、彷徨い出てしまう。
伊予が愛しい。その気持ちは父への憎しみに容易にすり替わってしまう。だから、気持ちを押し殺して剣を握る。ただ、喪ってはならないものを喪わないために。


宮崎県の南端、志布志湾の上にあたるところ。当時の「飫肥藩」は、そのあたりにあったようです。土地柄などは想像するしかありませんが、今も昔も、非常に栄えた地域だとは言い難い場所でしょうね。

それでも、島津の旗のもとに轡を並べる南九州勢のひとつ。西南戦争では、当然薩摩側に立つことになります。
久留米から南下してきた政府軍と、熊本までを勢力範囲とする薩摩軍が、田原坂でぶつかり合う。地形的に要所である田原坂を奪われれば、熊本は、ひいては薩摩全土が政府軍の手に落ちる、と背水の陣の薩摩軍。何がなんでも田原坂を奪って内乱をおさめなければ、諸外国に付け込まれる、と必死の突撃を繰り返す政府軍。

ストーリーも人物配置も、意外と骨太なつくり。

……だけど。

なんといっても、見どころは、早乙女くんの素晴らしい殺陣!!でした(はぁと)。

いやー、もう、本当に(^ ^)。3年程前の「Club SEVEN」で観て以来、早乙女くんの殺陣に惚れこんでいる猫としては、今回も殺陣を観に行ったようなものだったんですが……(^ ^;ゞ、すっごい、すっごい、大満足でした★



キャスト的な目玉は、、、
まず、村田新八(薩摩軍大隊長)役の山崎銀之丞さま(*^ ^*)。
もぉ男の色気だだ漏れで♪♪♪、こちらもとっても素敵でした。銀さまと早乙女くんの本気の殺陣がなかった(味方同士だから)のが非常に残念。

そして、野津道貫(薩摩出身の新政府軍参謀長)役の山本亨さん。
こちらは新之助の剣の師でありながら、出身地である薩摩ではなく新政府のために尽くす人物ですが、なかなかに奥深い役作りで、新之助とのやりとりも刺激的でした。
こちらは早乙女くんと何度も殺陣があって嬉しかったです♪

新之助がリーダーとなる抜刀隊の中でも、メインの一人である久坂従吾役の内野謙太さん。
結構複雑な役どころでしたが、がんばっていたと思います。元気よく動いていて、なめらかにスムーズに動く早乙女くんとの対比が良かったです。

あとは、個人的に結構好きな知念里奈さん。
滅んで久しい琉球王国の巫女、という役どころでしたが、独特の存在感が、幻想的な役によく似合っていたと思います。なかなか設定的にも強烈な役で、面白い存在でした。
新之助と少しは色っぽい展開があるものと思いながら観ていたのですが、全く無くてちょっと拍子抜け(^ ^)。いや、知念さんも早乙女くん(男役)もあまり色気がないので、ちょっと無理かなーという気もしたんですが(^ ^;

アンサンブルでは、瑠菜まりちゃんくらいかな、確実に知っていたのは。知念さんに従う三人官女みたいな役に入っていて、ちょっと怖い感じだけどきれいでした。あと、姫咲ひなのさんもいらっしゃいました。可愛かったけど、あまり印象にはのこらなかったかな…。




お芝居についてはそんなところでしょうか。


第三部のショーについては、私は早乙女くんの本気の女形を観るのが初めてなのですが、たしかにこれは評判になるのもわかるわ、と思いました。
美しい、というのか、なんというのか……
現実味がないんですよね、あの姿には。
どんなにライトをあてても、影ができなそうなイメージがある。
あるいは、どんなにライトを浴びても、周囲に闇が凝っているようにみえる……とでも言えばいいのか。

表現しようのない、なにか禍々しいような神々しさがありました。
神秘と畏怖は同じものから生まれる感情なのかもしれない、と、そんなふうに。



基本的に、主演の早乙女太一くんは、色っぽい遊女や花魁の役で一人舞。
その間々を、ご両親(葵陽之介・鈴花奈々)や弟さん(早乙女友貴)がつなぐ感じでしたね。
場面としては、劇団朱雀の若手が勢ぞろいする場面(友貴さんがセンター)の場面が迫力があって面白かったです。また、踊りとしては葵さん・鈴花さんはさすがベテランの味があって、それぞれに見ごたえがありました。
短いショーでしたが、思ったよりバリエーションがあって、飽きずに最後まで楽しめました♪


かなり忙しい時期だったのですが、無理して行った甲斐がありました(^ ^)。
早乙女くんの動きは、本当にきれいですね。バレエ系のダンサーの動きとは全く違う、柔らかな、風に揺れる柳のような美しさ。
一度是非、ダンス系のパフォーマンスに参加してみてほしいな、と思います。


……発声については、これからも舞台で生きていかれるおつもりなら、死ぬ気で勉強していただきたいところではありますが……(^ ^;


トーマの心臓

2010年4月9日 演劇
紀伊国屋ホールにて、STUDIO LIFE公演「トーマの心臓」を観劇いたしました。
……先月の落穂を拾わせていただきます。



私は、STUDIO LIFEの「トーマの心臓」を、10年ほど前に観たことがあります。
細かいことは思い出せないのですが、1997年のベニサン・ピットか、または1999年のシアターサンモール公演を観た……筈! で、「トーマ」を観た翌年に「訪問者」を観た……はず。
初見でいきなりオスカー役の笠原さんに落ちて、何回かファンレターらしきものを書いたりしてましたね(*^ ^*)。一時は割と真剣に応援していたので、外部出演も結構観ていると思います。
ただ、STUDIO LIFE自体はなかなか予定が合わなくて観られないことが多く、本当に「トーマ」と「訪問者」くらいしか観ないまま10年ちかくも間があいてしまい……いつの間にか案内も来なくなって、数年前に笠原さんもシュロッターベッツを卒業してしまいました(T T)。
で、今回、笠原さんでないオスカーを初めて観たという訳ですが(*^ ^*)。



まずは、記録をかねてキャスト一覧を。
10年前のキャストも、覚えている方のみ【】で括って書いておきます。


ユーリ    青木隆敏【山本芳樹】
オスカー   岩崎大【笠原浩夫】
エーリク   松本慎也【深山洋貴】
アンテ    植田圭輔【及川健】

レドヴィ   関戸博一
バッカス   牧島進一
サイフリート 高根研一
3年生    山本芳樹・飛来正行・荒木健太郎・原田洋一郎 
同級生    緒方和也・吉田隆太・石井昭裕・神野明人・冨士亮太

ミュラー校長 船戸慎士
ブッシュ先生 藤原啓児
ユーリの母  曽世海児
ユーリの祖母 藤原啓児
トーマの父  河内喜一朗
トーマの母  石飛幸治

シド・シュヴァルツ 山崎康一



10年前はダブルキャストでユーリを演じていた山崎康一さんがシドだったりするあたり、時の流れを感じますね(苦笑)。
ま、10年前から代わらないキャストもいますけどね(^ ^;ゞ



作品的には有名な物語なので、ストーリーの説明などは省略させていただきます。

今回、10年ぶりに観て一番印象的だったのは、エーリクの松本慎也くんと、シドの山崎康一さんのお二人でした。
特に、松本くんのやんちゃっぷりというか、エーリクの嵌りようは凄い!、と。

ただ、エーリクがあまりにも嵌り役すぎて、トーマの透明感が無かったのはご愛嬌……かな(^ ^;ゞ

松本くんは、時折莫迦っぽく見えるときがあるのが気になりますが、役者としての本質はたぶん『天然』なんだと思いました。いや、それ以上に根本的な部分が『天使』なんだな、と。
「カリフォルニアス物語」のイーヴ。
「トーマの心臓」のエーリク。
吉田秋生、萩尾望都という少女漫画界のスーパースターが創り出した、二人の天使。
ただ純粋に人を愛して、運命のままに流されていく天使たちを、そのまま演じられるキャラクタ性。

「僕の翼、君にあげる。……僕はいらない」

そう言ってしまう弱さと、そう言いきれる強さのバランスが凄いな、と思いました。
自分を完璧に明け渡してしまう強さと、相手の弱さを受け入れられない弱さ。
『天使』は本質的に“弱き者”=守られるべき子供。なのにエーリクは、ユーリを守ってあげたいと思った。
初めてそう思ったときに、彼の翼は落ちてしまうんですよね。守るべき者を得たときに、ひとは天に舞い上がるすべを喪うのだから。

それでも。
翼の代わりに得た腕で、愛するものを抱きしめたい、と思うのが、大人になるということだ、と。


そんなことを、思いました。
松本くんが、あまりにも天使だったので。



そして、そんなエーリクと語り合うシドを観ていると、、、、
ああ、この人も昔は天使だったんだなあ、と思うんですよね。

昔はユーリだった、んじゃなくて、もしかして、昔はエーリクだったんじゃないか?と(←いいえ違います)
いや、違う。たぶん、ユーリも天使だった、ということなんでしょう。
長い旅路の果てに、シュロッターベッツの門をくぐったオスカーを慰めたときのユーリ、は。




で、ユーリの青木さん。
彼の特徴的な喋り方には、だいぶ慣れてきました(苦笑)。
で。その喋り方と声さえ気にならなければ、彼の芝居の方向性はかなり私の好みなんだな、と思いました。
道理で、今までも物語の前半では「………黙れ」と思ったりしたことがあっても、後半になると嵌ってくる印象があったのは、そういうことか(納得)。




オスカーの岩崎さん。
優しいオスカーだなあ、と思いました。愛があって、二枚目で、優しくて。

個人的には、やっぱり猫は笠原さんのファンなので、あれ以上のオスカーはいないと思っているんですけどね。意外と細かいことを覚えていたりするんですよ。階段脇の壁にもたれていたシルエットとか、ふとしたときの目の動きとか。
でも、普通に作品を考えた場合は、充分に素敵なオスカーでした(はぁと)。
なんたって、松本くんとの並びがほのぼのと可愛くてよかったです♪

ただ。
岩崎さんにはおっとりと優しい雰囲気があるせいか、アンテ役の植田くんとの場面に色気も切迫感も全然無かったのが寂しかった……。(ユーリに人工呼吸する場面でさえ色っぽかった笠原さんは、いったいどうしたら)
それに、ミュラー校長との駆け引きの場面にも、なんというか『ずる賢い』感じがないんですよね。そのせいか、ラスト前にユーリに告白するときの、どんでん返し感(「えっ、お前ってそんなイイ奴だったの!?」みたいな)を弱めていたような気がします。ちょっと勿体無い感じ。



そういえば。
ラスト前のミュラー校長とオスカーの場面って、10年前とは演出変わっているんでしょうか?……あの場面、透明な光に包まれて、ゆっくりと一歩づつ近づいていくオスカーと、それを、ただ黙って見守っているミュラー校長、という図が、それだけですごい号泣ポイントだったんですけど、あんなに短い場面だったんでしたっけ……?
少なくとも、左右は逆になっていたような??



メインキャスト以外では、レドヴィの関戸さんが、ごく良かったです。なんだろうな。何ともいえない、澄んだ空気感が好きでした。
個人的に、彼のユーリを観てみたい、と思いました。似合うと思うんだけどなあ。……どうでしょうか>倉田さん





この3月は、忙しすぎて「訪問者」は観に行かれませんでしたが、あらためてプログラムを観ると、高根さんのグスタフ+吉田くんのヘラ+荒木健太朗さんのオスカー、という豪華キャストなんですね。
……うみゅ~、やっぱり観ればよかったなあ……。



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