ほんの話。

2008年4月30日 読書
帝国劇場「ラ・マンチャの男」を観てきました、とか、草月ホールの石井一孝さんのライブ(ゲスト:樹里咲穂)に行ってきました、とか……の話は、どっちも非常に素晴らしくて、あまりにも素晴らしくてモノスゴ〜ク長くなりそうなので(^ ^;ゞ、今日はパスさせていただくとして。



最近、またちょっと本屋通いをしています。

先月「yomyom」を買った頃から本屋に行く頻度があがったのですが、なんだか最近行くと必ず数冊買い込んでしまって(汗)、
いつ読むんだろうこんなに、って感じなんですけどね。


とりあえず坂木司さんのまだ買ってなかった2冊(「ワーキング・ホリデー」「ホテル・ジューシー」を見つけて買ってしまったあたりから箍が外れたみたいなんですが(汗)。

坂木さんの作品は、基本的に文庫化されるのを待つつもりだった(劇場通いで貧乏だから)のに、衝動買いしてしまった(笑)。なんで我慢できなかったんだろう…。



もうひとつは、宮部みゆき。
図書館で読むつもりだったのに、たまたま私が行くといつも借り出されていて読めないことが続いていたので、つい買ってしまった「ブレイブストーリー」。
今頃かよ、って感じで申し訳ないんですが、だいぶ嵌ってます(^-^)。

私は、この人の作品はどれも好きなんですが、とりあえず一つだけあげろと言われたら、マイナーな作品ですが「蒲生邸事件」なんですよね。

他にもかなり硬派なSFを何本も書いている人ですが。
「ブレイブストーリー」みたいなファンタジーノベルもさすがに達者だなぁ…と感心しつつ、もう「蒲生邸事件」みたいな作品は書かれないのかしら?と寂しく思ったりもします。「クロスファイア」の原型となった作品が入っている「鳩笛草」とかも、非常に好きなんですよね。超能力を持つがゆえに社会からはじき出されてしまう「彼ら」の哀しみを表現するには、彼女くらい天才的な構築力と文章力が必要なのです。っていうか、彼女だからこそあれだけのリアル感のある“超能力者”が描き出せるのだと思うので。

「クロスファイア」あたりからSFの作風が派手方向に行ってしまって寂しく思っていたのですが……
……いえ、「ブレイブストーリー」も、素直に面白いです。ファンタジーノベルとして、秀逸な出来だと思っています。心から。
まだ半分しか読み終わってませんけど。

でも、たまには硬派なSFも書いてくださるといいんだけどなぁ……(T T)。



そして。宙組の「黎明の風」の影響か、つい「群青に沈め」というタイトルに惹かれて買った一冊。
作者は、「邂逅の森」で直木賞を獲った熊谷達也氏。名前くらいは存じていましたが、作品を読んだのは初めてでした。

彼を著名にした「森」シリーズとは全く違う内容の作品のようですが、予想外に面白かったです。

神風隊(飛行機)、回天隊(魚雷)、海龍隊(潜水艦)、震洋隊(ボート)……様々な特攻隊が組織された太平洋戦争終末期において、伏龍隊、と名付けられた、“もう一つの特攻隊”に放り込まれた新兵たちの物語。非常に丁寧に少年たちの心理を追った佳作でした。

特攻隊=神風隊というイメージがあったんですけど、実際にはいろいろあったんですね。いえ、それ以前に、そもそも「特攻」というのは通常句ではないんですよね……。あくまでも「特別攻撃隊」の略称であって、日本語に元々「特攻」という詞があったわけではない。そんなことも解っていないレベルの読者(自分)にとって、ものすごくリアルに『彼らの日常』を、しかも淡々と描き出してくれたこの作品は、

切なくて、痛々しくて、…だけどやっぱり、切なかった。

熊谷氏の描きだす深い森の物語を、読んでみたいと思いました。




などなどいろいろ買い込んでしまったので、GWはちょっと読書三昧しようかなー、と、

……全然片付く気配の無い部屋を見ないように眼を背けつつ思ったりして……



うちに遊びに来てくださる予定のみなさま、もうちょっと待っててね(笑)。



赤坂ACTシアター「トゥーランドット」。(思いっきりネタバレあり)


久しぶりの赤坂。いやー、想像以上に雰囲気が変わってしまっていて、しばらく戸惑いました(汗)。いろいろ新しいのが出来たのは知ってたけど、実際行ってみると(@ @;)って感じです。
“赤坂ミュージカル劇場”時代も、“赤坂ACTシアター”時代も、あれやこれやと通ったのになぁ(感慨)。あの頃のBLITZ&ACTは、なんとなく場末っぽいというか、いかにもプレハブっていうか…な印象だったのに、えらくお洒落な街になってしまって、自分が凄い場違いな感じでした(^ ^;ゞ

さて、次はなっち。

安倍なつみ。

可愛い!!


……いや、あの。

以前、宝塚宙組で上演された「鳳凰伝」(木村信司)では、彩乃かなみ嬢が演じた女奴隷・リュー。
もちろん、作品が違うんだから全然違うキャラクターなのは当然なんですけど、この役はオペラでもほぼ準主役格の役なんですね。
トゥーランドットがあまりヒロインらしくないというか、いわば立役なので、いわゆる“ヒロイン系”はリューになる。宝塚でいえば、トゥーランドットはベテランの女役トップがやる役で、リューは若い娘役トップ、というのが一番わかりやすいかな?

今回は、潤色的にトゥーランドットが比較的普通の“恋する女の子”として描かれていたので、逆にリューがしっかり者で小生意気な子供になっていたのがすごく新鮮でした。
そして、なっちのリューの最大の魅力は、その子供っぽいけなげさだったのだと思います。
見返りを求めない必死さ。
カラフ以外は何一つ眼に入らない純粋さ。

カラフを想って歌う月夜の場面で。
傷ついたミンを膝枕する優しさと、
寝入った彼をおいて、カラフの幻を追うように歩き出す心もとなさ、
そして、激情にかられたあげく、慰めようとするミンを拒絶する、激しさ。

プライドの高い子供のような、
野生の獣のような娘。

馴らされた従順な飼い猫のようなミンとは全く違う激しさと、
二人に共通する、他人の中で人に仕えて生きてきた子供特有の、目配りの広さ。

私は「鳳凰伝」という作品があまり好きではなかったせいか、どうやら完全に記憶から抹消してしまったようなのですが。
かなみちゃんのリューは、もう少し大人で、もう少し計算高く“王子への片思い”を演じて酔っている印象があります。
その分、ラストの悲劇性が高くて、さすがかなみちゃん、という存在感ではあったのですが。

…なっちのリューは、とにかく真っ直ぐで可愛かった!!

イマドキ珍しいくらい、直球ど真ん中一本で勝負して、真正面で跳ね返されて。国を追われた王子にずっと仕えていたのも、供を命じられたからではなく、多分無理やりついてきちゃったんだろうな、なんて想像をしてしまいたくなるような。

岸谷カラフは、絶対「ついてくるな。戻れ」って冷たく言ったに違いない。それをティムールあたりが「そう仰らず。この子も食事の支度くらいはできますよ」かなんか言って許してやったんですよきっと。

とにかく、けなげで必死で可愛くて、しかも生活力のあるしっかり者で、
…ここまできたら、ちゃっかり生き残っても良かったのになぁ…と思っちゃいました(汗)。すごく生命力に溢れたリューで、“カラフとトゥーランドットが結ばれたら生きていられない”という儚さもなかったし、子供の一途さで、ほとんど刷り込み状態で追いかけているだけだから、いずれ諦めもついただろうに、…って。
本当は、ミンと二人で幸せになってくれれば、それが一番良かったんですけどねぇ…。でも、ミンが生き残るのは無理だったからなぁ……(T T)。


 
小林勝也。
さすがに文学座の重鎮は貫禄が違う!ストレートの舞台役者としてのキャリアは短い人が多かったので、こういう人がメインに一人いると安心です。お稽古も心強かったろうなあ。
…只者ではない貫禄が最初から漂いまくりだったのは、あれで正解、なんですよね…?カッコよかったです(*^ ^*)。

オペラではカラフの父親という設定のティムールを、カラフの従者で、実はトゥーランドットに仕えていた学者、という設定に大きく変えたために、だいぶ訳のわからない存在になっていましたが…(T T)。
ワン将軍とともに、今回の潤色の影響を強く受けた人の一人でした。


 
北村有起哉。
素晴らしかった!!
芝居は言うまでもなくて。歌も、身のこなしも、何もかも完璧(←褒めすぎ)と言いたくなるほど素晴らしかった。

北村さんがいたから、この「物売り」っていうキャラクターを設定したんだろうな、亜門さんは。いろんな説明をぜーーんぶやってくれるありがたーーーーい役でしたが、本当に素晴らしかったです!次の舞台も観にいくぞー!





最後に、全般的に「作品」について。というか、亜門さんの潤色について。

私は、オペラ「トゥーランドット」も一回しか観ていないので、偉そうなことを書いていても、実はあまり詳細を覚えてはいないのですが。

タイトルロールのキャラクターについては、非常に勝手にある種のイメージを持っておりました。
(それがあったので、「鳳凰伝」も受け入れられなかったのですが)

えーっと、どう書けばいいのかな…(悩)

まず。
私は、「自分自身を他人に明け渡すことができない」という性格設定が、非常に好きだったりします。

恋に落ちても、それで全てを投げ出して“この世にあなただけ”になれない人が好き、なんです。
意地を張って“あんたなんて知らない!”って言っちゃうとか、“するべきことがあるからあなたと一緒には行けないわ”と静かに言ったりするようなヒロインに共感しやすい。
…そのあたりが、世間一般の宝塚ファンの平均値より石田作品が好きな理由なのかな、と思っているのですが。

それも、「一緒には行けないわ」と言うその動機が、純粋に「するべきことがあるから」ではない人の方がタイプ。

「恋人に自分の心の全てを明け渡してしまったら、自分自身を見喪ってしまいそうで怖い」
だから、意地を張って拒否してみせる、
あるいは、もっと危険なところに自ら飛び込んでいってしまう、そんな少女が、一番ハマるタイプなんです。



以前観たオペラの「トゥーランドット」のタイトルロールは、まさにそういうタイプで。
「カラフに心を預けることが怖くてたまらない」姫君だったんですよね。最初の出会いで恋に落ちているにも関わらず。

国を守るという重圧の中、自分自身を支えるだけで精一杯。
自分の肩に国が載っている以上、決して他者に屈することはできない、と、必死で“支配者の孤独”に耐えて、意地をはる。

3つの謎を解いた男、自分を超えた初めての男に心密かに恋をしながら、絶対にそれを認めない。男がそんな女の意地を読んでかけてきた謎に答えるために、どんな犠牲も払おうと決意する。

その謎に答えるということは、生まれたばかりの恋を喪うことだと知っていながら。

国を守るために、というのは言い訳で。
本当は、カラフに全てを明け渡すことが怖かったから張った意地。
男に全てを預けることが怖くて、捨ててしまおうとした、恋。

そして。
かはたれ時の薄闇の中で、カラフが口にする、謎の答え。


答えを与えられて、初めて気づく。
彼が、すでに全てを明け渡していることを。
彼自身の全てを、女王に差し出していることを。

彼にできることが、我に出来ぬはずは、ない。
そう、それはもしかしたら、喜びであるのかもしれぬ。

…今このとき、女王の心には全ての可能性がある。
打つべき手の全てが、可能性の全てが揃っている。
後は、どれを打つかを撰ぶだけ、という全能感。

そして、女王は、
…愛、を撰ぶ…



宮本亜門の演出では、かなり初期からワン将軍という「黒幕」が設定されていたようです。

そのおかげで、心理的に理解しにくいこの物語が、ものすごく簡単な話になっていたと思います。
ごく単純な、勧善懲悪もの、に。

女王の側近に“成り上がった”ワン将軍に、「トゥーランドット姫への恋慕」と「ミンへの優しさ」という同情設定を加えつつ、宮廷ににおけるすべての罪と矛盾をのっけてしまった。

トゥーランドットは側近に裏切られた悲劇の女王になり、
カラフは女王の側近くに仕える悪魔を成敗する神の使いの役割を果たして、
ワン将軍の指揮に忠実な軍隊が起こしたクーデターは、女王派の市民たちが抑えて、

そして、女王は退位し、市民主導の政府を作る……

ものすごく現代的な展開だし、
ものすごく現代的な解決方法なのに、

残念ながら、すごーく古典的なキャラクター配置になってしまったな、と(涙)。

トゥーランドット姫の心理は、いろんな解釈がなされるもので、どれが正解というモノはないのだと思うのですが。
ただ、やっぱり「トゥーランドット」というタイトルである以上、主題は“トゥーランドット”の物語であるべきだと思うのです。
トゥーランドットが正義である必要はないのですが、「トゥーランドットの物語」ではあってほしかった。
いずれにせよ、ワンという悪役を作ってしまったことで、話はわかりやすいけど、薄っぺくなったなー、というのが一番の感想です。

なのに、全編を通して語られるのが、異国の王子に恋をして、なのに国を背負う孤独に打ち震え、そして側近にだまされた…『可哀相な、愚かな女王』であったことが残念です。

そして。
ああいう展開にするのであれば、前半にもう一声、ワンとトゥーランドットの場面がほしかった。ワンに頼っているふうを見せるトゥーランドットでもいいし、トゥーランドットを脅しつけるワンでもいいので。

でも、そういう微妙な場面を作るには、アーメイさんの日本語能力が問題だったのかもしれないな、と思ってしまって……余計に残念なのですけれども。


この潤色の動機に、「新赤坂ACTシアターの杮落としだから、華やかに祝祭風に」という要望があったのだとしたら、ちょっと残念な気がします。
確かにこの設定にすることで後味は良くなったかもしれないけど、せっかくの杮落としにもっと重厚で歴史に残る脚本をやらせてあげたかった気もするし。

それになにより。「祝祭」感を出したかったなら、別にあの展開で無理やりリューを死なせなくても良かったんじゃないの?と思っちゃいますよね。…ティムールとミンは仕方ないけど、リューは元々「カラフの名を洩らさぬために」死ぬわけで。
その場面もないのに、あんな経緯で死ぬ必要はなかったのでは?
それがすごく理不尽な感じでした。


“演劇界の他流試合”は面白かったけど、作品としてはちょっと消化不良気味……というのが正直な感想です。
ごめんなさい。


あんまり関係ないこと?

ラストに、国に緑が戻った祝祭の場面で。
旅から戻ったカラフを涙を浮かべて迎えるトゥーランドットを、階段セットの上で見守るティムールとリューとミン。

まんま、バルジャンとエポニーヌとアンジョルラスに見えるんですけどっ!?(@ @;;


あんまり関係ないこと?

公演とおして「すげーーーーっ!」と思ったこと。
いくつかあったのですが、特にびっくりしたのが、ミンの拷問場面で鞭を操る拷問係の技の見事さ(*^ ^*)。長い長い鞭を、まさに“生き物のように”完璧に制御していました。音(録音かと思っていましたが、違うんだそうです。コメントありがとうございました…)とぴったりあっていたのも素晴らしい。

いやー、名場面でしたぁ(←それかなり違うから)




赤坂ACTシアターにて、音楽劇「トゥーランドット」を観てまいりました。



私の目当ては久しぶりの宮本亜門演出と、早乙女太一くんだったわけですが(汗)。
まずプログラムを見て、スタッフ欄の豪華さにびびりました。

プロデューサーの河出洋一さんは、宮本亜門と「香港ラプソディ」で始まったアジア三作以来のつきあい。この「トゥーランドット」の成功を期に、「香港ラプソディ」再演してくれないかしら。ディック・リーの音楽、もう一度聞いてみたいのですが。

音楽は久石譲、脚本は鈴木勝秀、作詞は森雪之丞…すげー憧れの人が揃っている気がするのは私がマニアだから?久石さんを引っ張り出せるのは亜門さんだけだろうし、鈴木さん森さんはここのところ立て続けにいい作品を発表していらっしゃるし。
装置はもちろん松井るみ。今回の装置、整然と舞台を埋め尽くすコの字型の総階段は実に見事でした。段が引っ込んで丈高な壁となり、段がせり出して舞台を埋め尽くし、逃げ道をふさぐ。見事な“もう一人の役者”っぷりでした。松井さんの装置、好きなんですー。
振付がダレン・リーと岡千絵、衣装はワダエミ。華やかな美しさ。質へのこだわりと絵面の壮麗さ。見事な仕事でした。

このスタッフと、そしてこのキャスト。河出さんらしい、豪華で華やかな、他流試合の勝ち抜き戦、でした。


キャストも本当に他流試合だったなー。

“氷の心を持つ姫君”トゥーランドットに、台湾の歌姫アーメイ。

彼女の心を溶かす異国の王子カラフに、地球ゴージャスの岸谷五郎。

トゥーランドットを愛する、強面のワン将軍に、中村獅童。

カラフの供で、彼に恋をしているリューに、「モーニング娘。」初代のひとり、安倍なつみ。

カラフの傅役のティムールに、文学座の小林勝也。

物語をひっかきまわすトリックスターの“物売り”に、北村有起哉。

そして、トゥーランドットに仕える宦官ミンに、劇団朱雀の2代目、早乙女太一。

ちなみに、大臣ズや女官ズには、宝塚OGのソン(秋園美緒)ちゃんやこんにゃく座の佐山陽規さん、越智則英さん、花山佳子さん、松岡美樹さんら本格的なミュージカル俳優(猫にとっては全員「レミゼ組」かも)が揃っていて、コーラスも聴き応えがありました。
久石さんって映画音楽のイメージが強くて、舞台音楽はどうかなーと思っていたのですが(←失礼)、迫力のあるコーラスが素晴らしく、ソロのアリアもとても良かったです。もう少しデュエットや小人数での曲があっても良かったかもねー、と思いつつ…。



物語は、プッチーニの「トゥーランドット」とはかなり違う展開でした。
スタッフコメントを読むと、基本的な展開はほぼ亜門さんが決めていて、脚本の鈴木さんは最後に加わっただけだったみたいですね。うーん、、、ってことは、あの展開は亜門さんの解釈だったのか…。うみゅーーーー。

まず先に、キャストについての感想を。

アーメイさん。
うーん。正直な感想を書くなら、今回彼女をキャスティングした理由があまりぴんと来なかった、です(T T)。席が前方端席で、あまり音響がよくなかったせいか、ソロもあまり迫力を感じられず。彼女の歌はとても好きなので、ナマで歌が聞けるってだけで舞い上がっていたのですが…ちょっと肩透かしでした。

しかも。私は基本的に耳で舞台を観る人なので、歌がどんなに良かったとしても、日本語が出来ない人に台詞を喋らせることには絶対反対なんですよ。歌の発音は全然問題なかったのですが、台詞はかなり無理な感じでした。
せっかく彼女を呼ぶのなら、全編歌のオペラ形式なら問題なかったのに、と思う。他のキャストをそろえることができないのなら、彼女だけ歌でも別にいいのに、と。「神の子」トゥーランドット姫は喋らないで歌うのみ、という設定でも、なんら違和感はなかったと思うのに……(悔)。

そして、彼女は笑っているべき人だと思いましたね。
二幕ラストからカーテンコールにかけての、華やかで明るい、太陽のような笑顔!!とにかく彼女は、想像していた以上に「太陽」そのものみたいでした。休憩をいれて3時間におよぶ作品の中で、9割の時間を怒っているか孤独に耐えているか、という女性の役をやらせるべきキャラじゃない。

なにはともあれ。
日本での舞台をこれっきりにするなんて寂しいことを仰らずに、また出てくださいますように。
次はぜひ、陽気で優しい、元気な女性の役で、ね!!



岸谷五郎。
「地球ゴージャス」でも、わりと良く歌が出てくるので、彼がある程度歌えることは知っていましたが。
上手いなあ、良い声だなあ(うっとり)。そして、ホントにかっこいいなあ……(^ ^)。

この作品におけるカラフは、オペラのカラフと違い、闘いに敗れて国を奪われたわけではなく、父親に疎まれて国を追われた、という設定…だったような気がします(あまりよく覚えていませんが)。
流浪の王子であることは同じでも、「亡国」と「国を追い出された」のでは決定的に意味が違う。それゆえに、カラフの性格もだいぶ違っていました。なんたって荒くれ者だし(笑)、かなり自暴自棄で、身体のどこかに怒りを溜め込んでいる男。

オペラでは、ふと垣間見たトゥーランドット姫に恋をして謎かけに挑戦するカラフですけど、今回は傅役のティムールにそそのかされて、トゥーランドット本人には大して興味ないくせに儀式の場へ出てしまいます。
自分の運を試すために。或いは、自分の運命と出会うために。
「どうせ死に場所を探しに来たのだ」と嘯きながら。

それでも、最終的には運命は同じところに転がっていくわけですけれども。

とりあえず、紅い衣装が実に良く似合って、良い男っぷりでした。殺陣もさすがだし、声もいいし。かっこいいなあ〜。



中村獅童。
ワン将軍は、オペラには無い役。
この役に、亜門さんのこだわりがすべて入っていますし、『亜門さんの』トゥーランドットを描き出すためには獅童さんでなくてはならなかったんだろうな、と、常に笑みのカタチに歪んだままの口元を見ながら思いました。

作品的な矛盾を一身に受ける役なので、役作りは苦労されたんだろうなー、と心から同情します。亜門さんも無茶をするよ…。



早乙女太一。
私は亜門さんが好きなので、元々観にいくつもりではありましたが、もし彼が出てなかったら、結構今月は忙しかったので結局観ないで終わったかもしれません。そのくらい、「太一くんが出るんだから絶対に行く!」という気持ちは強かった。

去年の「CLUB SEVEN SP」以来の早乙女太一。
結局あの後は忙しくて、彼のホームグラウンドである朱雀座は観にいけませんでしたが。
16歳の男の子って、たった半年でも育つものなんですねぇ…。肩のラインが少したくましくなって、なのに顔はまだふっくらしたまま。そのアンバランスさが異様なほどの魅力でした。

ワダエミさんの衣装を最高に生かすダレン・リーの振付で舞う姿の美しいこと。いっそサロメを観てみたい!と思ったほどです。
最初の儀式のとき、階段装置の上から、リューたちを見降ろす姿。ふ、と袖で口元を押さえる仕草。2,3段降りて、ふと立ち止まり、袖を翻して向き直る。……ちょっとした仕草一つにこんなに華がある人がいるなんて!!

そして、最大の見せ場(←違います。彼の見せ場は舞いの場面です。間違えないように)、最大の見せ場である(無視かよ)、拷問の場。
トゥーランドットの密命でカラフを逃がしたミンは、ワン将軍によって拷問にかけられる…この時の、髪を乱して鞭打たれる彼の姿。蒼い衣装によく映える白い肌、ピンクの唇。切れ長の眼を隠す髪、細いあごから喉元への、男でも女でもないライン…。
嗜虐的、って言葉を実感させる姿でした。

助け出された後の、リューとの場面も凄く良かったです。仕草に華がある、っていうのをここでも思いました。上衣を持って、カラフを思って泣くリューに後ろから着せ掛けてあげる…たったそれだけの仕草が、まるで舞を舞っているかのような美しさで。

宦官、という特殊な立場の特殊な人間を演じるのに、彼以上の人材はいないかもしれません。


ただし。

……今後も外部の舞台に立ち続けるのであれば(心の底から希望します!)、早急に台詞の発声を見直していただきたい!!と、これまた心の底から思ったことも、書いておきます。

舞台の上で“台詞”を喋る彼を観たのは初めてでしたが。

「宦官」である今回の役ならば、許される声であったとは思いますが。

声変わりは終わったのかな、まだ最中なのかな…。落ち着いたなら、すぐ訓練を始めてほしい。固まってからだと矯正に時間がかかるから。
朱雀座での活動もあるから難しいとは思いますが、今のままでは宦官(と女形)以外の芝居は出来ませんから…。

身体で語ることなら大の得意の彼ですし、それだけでも十分舞台を観にいく価値がある人ではあるのですが。
でも、台詞も語れて悪いことなどありません。ぜひ、なんとしても時間を作って外部の舞台にも出て欲しいし、そのためには、なんとしても発声の基礎を学ぶ時間を作ってほしいのです。

彼の魅力に恋をした観客の一人として、心の底からお願いします

私は彼に、いつか剣士の役をやってもらいたい。
CLUB SEVENでの流麗な殺陣が忘れられないから…。



……なんだか信じられないほど長くなってきたので、今日のところはこのあたりで。



先日、親戚から届いた新鮮なたけのこを貰って帰ったので、
たけのこご飯を炊きました。

一人用のちいさなちいさな炊飯器に、ななつぼしを三合。
ゆでたけのこに、にんじんに、あぶらあげに、鶏肉。

…あれ?炊飯器がすごーーーーくいっぱいだなぁ……

でもまぁ、いいや。
なんとかなるだろう。きっと。

味を調えて、スイッチ オン!


…1時間後、

床に湯溜りができていました(^ ^;ゞ


教訓その1:
炊き込みご飯は、おかずやらなにやらぜーんぶ入れて、炊飯器の制限を超えない量でがまんしましょう。

たとえ、ごはんより具の方が量が多くなったとしても!!
(っつうか…貰ったからって一本丸ごとたけのこご飯にしようと思ったのがそもそもの間違いです)



ま、とは言いつつもなんとか無事に芯もなく炊き上がってくれていたのでホッとしました。

床を拭いて、時ならぬお掃除タイム!が始まりつつ、
おいしいねぇ♪(はぁと)と幸せに浸って。

それが、日曜日の夜。


月曜日。

家に帰って、炊飯器をあける。

…減った気がしない。相変わらず、炊飯器をいっぱいに満たしている。
絶対にこの一食で食べきるのは、無理。

…やばい、最近昼間は暖かいから、出しっぱなしはまずい!!
と思いつつ、睡魔に勝てずダウン(Zzz)。


火曜日。

夜、家に帰って。
「さぁ食べよう」と、炊飯器のふたをあける。


…………ん?いい匂いがする………。


花のような、
甘酒のような、
すごーく甘い匂い。


おいしそうで、食欲を誘う、

…でも、絶対にご飯の匂いではない、香。


教訓その2:
薄味の炊き込みご飯は、予想以上に脚が早い。



……農家のみなさまに、心の底からお詫びいたします………

せめて、こないだ悩んだときにコンポスト買えばよかったなあ…。

合掌。


宝塚宙組新人公演「黎明の風」の続き。

白州正子の(花影)アリスちゃん。
さすがに外部でもヒロイン経験のある実力派、無難にこなしてました。ただ、全体に無難すぎたのと、たっちん(和音美桜)と一学年違いとは思えない子供っぽさだったのがちょっと残念だったかな。
声がちょっと鼻にかかった…というか、ちょっと上擦ったような発声だからでしょうか?カチャ(凪七瑠海)もそうなんですよねー。台詞声がすごーくよく似てる。二人とも、歌声は普通にキレイで巧いんだけど…。

ファントムでしたっけ?いきなり抜擢された頃は、花組の彩音ちゃんと前後してトップになるのかと思ったものですが…
声が変わらないと、本公演では妹以外の役を得るのが案外難しいかもしれませんねぇ…。

本質的に、本来ウメ(陽月華)ちゃんのキャラクターに宛てて書かれた役(最後の銀橋での「かっこいいぞ!」なんて、ウメちゃんにしかできない名場面でした…ウメちゃんで観たかった!)を、たっちんが演技力でカバーして作り上げた役。
今となっては、ウメちゃんが今更復帰しても出来ないくらい完成度の高い役になってしまって、なのに、たっちんがどんなに見事にこなしても(実際見事でした)「ウメちゃんだったら…」と思われてしまう難しい役。

アリスちゃん自身が、ウメちゃんとたっちん、二人の影に惑わされて、「花影アリスの白州正子」を見失っているんじゃないか、と、ちょっとだけ思ってしまいました。
せっかく実力のある人なのに、何か迷いがあるように見えて。

こういう時こそ、うまく「花影アリスらしい白州正子」に引っ張っていってあげるのが、演出家の仕事だと思うんですけ(以下略)

あと、アリスちゃんは微妙に和服が似合わないような気が(涙)。

彼女については、新公の芝居よりも、むしろ挨拶の流暢さとしっかりした内容に感動しました(笑)。
次は「雨に唄えば」のキャシーですね。がんばってね!



辰美英次の、カチャ(凪七瑠海)。
初舞台の「花の宝塚風土記/シニョールドンファン」のときから凄く目立つ役を与えられていた優等生。
芝居も、先日も書きましたが広島の話をされたときの反応とか、熱すぎず控えすぎず、ちょうどいいところに立つバランス感覚が素晴らしいし、ちょっと細すぎるけどスタイルも良くて、歌もダンスも○、と目立つ欠点の少ない人です。

初舞台の勢いでいったら研2,3で抜擢されるかと思っていたのに、それほど大きな役がつくこともなく、観るたびに順調に実力をつけてきているなあ、と思います。うまく育てられてますよねー♪台詞の声がすこーし鼻にかかるのが気になりますが、段々良くなってきていると思うし、これからが楽しみです♪



まりえ(美郷真也)さんの役を演じた七海ひろきさん。
あの貫禄のなさが見事でしたねぇ。
空港の場面って、冗長になりがちな難しい場面だと思うのですが、七海さんはさすがにしっかり会話ができていて、さすがでした。ただ、もう少しだけ「仕事はキッチリできる」感を醸し出しておけるともっと良かったと思います。気は弱くても、国際会議の場みたいなところに出ると気後れしちゃうけど、「仕事はミスなく出来る」ことが特徴の人なんですから。
終始おどおどと自信なさげなのは、いいのかなあ…?という感じでした。


ジーン(美羽あさひ)のすみれ乃麗ちゃん。
なんだかすごーく見覚えがある、と思ったら、月組の蘭乃はなちゃんの姉妹なんですね!すげー美人姉妹…。
可愛くて元気で弾けていた「バレンシア…」のローラから、美しく貞淑な軍人の妻への変貌ぶり。しっとりと落ち着きがあってキレイでした。蓮水くんとの相性も良かったし♪

そういえば、次も蓮水くんと組むんですね。こいさんかぁ……。
……がんばれ(こっそり)

東京ローズ(音乃いづみ)の藤咲えりさん。
美人だった!歌も芝居も良かった!!
本役(代役)の吉田和子は、なんだかすごーく無難なつくりで(苦笑)残念なところもありましたが、東京ローズはなんていうか、全力投球でしたね。
バレンシア新公のシルヴィアでも思いましたが、芝居勘のいい人ですよね。相手の呼吸が読める人は貴重です♪チャイナドレスもよく似合ってました(はぁと)。

次はお蘭かぁ。難しい役が続きますねぇ…(でも楽しみ♪)。


ブギの女(音乃いづみ)の妃宮さくらちゃん。
可愛らしいばかりの「桜娘」が、知らないうちに迫力の歌手になっていて吃驚しました(汗)。すごーいっ!!
パンチの効いた、いい声ですねぇ。歌えるってことさえ知らなかったよ…ごめんなさい。化粧も可愛かったし、とっても良かったです!


ポーラ(花影ありす)ちゃんの天咲千華さん。
「バレンシア…」では全く台詞声が作れず、大苦戦(苦笑)していた少女が、いい声で喋ってました♪♪
清純でただただ可愛らしいだけだったマルガリータから、わずか半年で「しっかり者のキャリアウーマン」らしくなり、藤咲さんとも対等に芝居できる人になってるなんて
若い人の成長振りっていうのは、目を瞠るほどのものがありますね。もう一人前の姫役者に見えましたよ♪


今頃になって、「バレンシアの熱い花」の新公感想を、みーちゃんとたっちん、きみちゃんの分しか書いていないことに気がつきました(汗)。
あの新公は、生田さんが演出。演者一人ひとりに合わせてしっかり指導してくれて、あれで成長した人も多かったと思います。

本公演も生田さんが演出してくれよ…とどれほど思ったことか。

今回はいろいろ残念なところも(主に演出面で)ありましたが、それでも、若い子たちはそんなことお構いなしに輝いてくれました♪

戦前戦後、という、日本が一番暗くて苦しかった時代。
それでも、夢も希望も自尊心も、忘れなかったひとたちの物語を。
それでも、日本を信じて見守ってくれた人の物語を。

若い人たちが、少しでも表現しようとあがいてくれたことが嬉しいです。
「殉情」も「雨に唄えば」も、観には行けないと思う(多分)けど、成功を心から祈っています。



東京宝塚劇場にて、宙組「黎明の風」新人公演を観てまいりました。



人材豊富な宙組88期が主要人物のほとんどを占めた新人公演。
作品も興味深いし、(私的には)新鮮な顔ぶれで、だいぶ前からとっても楽しみに待っていた公演。

…始まってすぐに、あれ?と思いました。

せっかく、雰囲気の若々しい鳳翔大くんが白州次郎、大人っぽい色気のある蓮水ゆうやくんがマッカーサーという絶好のキャスティングなのに、どうして本公演どおり白州次郎の方が年上設定の演出のままなの?

先日の日記でも書きましたが。
この作品(本公演)の、ほとんど唯一と言ってもいい作品的な欠点は、白州次郎とマッカーサーの年齢の逆転だと思います。
それは、史実がそうなのに違うなんて変よ!という話ではなく(いや、それもちょっとありますが)、そういう設定にすることによって、ストーリーの山場となる白州の土下座の場面が、とってつけたかのようになってしまうから、です。
他にも、少なくとも、「17年か…やっと祖国に帰れるな…」という台詞の重みが感じられなかったこととか、
マッカーサーが前途ある若い司令官に見えるために、ラストの演説も、「じゃ、帰国して少し休んだら、次はソビエトに攻め込むか!」(←いやそんなハズはない)みたいにカラッと明るく見えたこととか、

挙げ始めればキリがないのですが……。


せっかく新人公演をこのキャスティングでやるのであれば。
別段、脚本自体に「白州次郎>マッカーサー」という年齢設定を名言した台詞があるわけじゃ、ない。見た目がそう見える(ように演出もされている)というだけ。
だったら。

新人公演では、若々しい白州次郎(約25歳)&シャープな大人のマッカーサー(約32歳)くらいの、本来あるべき設定の公演を観ることが出来るに違いないわっっっ!!


なのに。


……あれ?
そのまんまじゃん………

新公の演出家って、誰だっけ?

(こっそりプログラムを見る)

………児玉明子さんか……(がっくり)。



児玉さん演出の新公、といえば、どうしても忘れることのできない「ガイズ&ドールズ」新人公演。

一本物の公演を一幕にまとめて上演するというので、どこをカットするのかと思っていたら。
一幕をほぼそのまんま上演して、
一幕のラストの場面が終わって、

…幕が開いたら、結婚式(二幕ラスト)だった!

衝撃の幕切れ。



この人は何を考えて演出家を志したんだろうか、と、心の底から疑問に思いました。

しかも。
宝塚の演出家は、ただ「やりたいものを創る」だけではすまないんです。
座付きである以上、指導者でなくてはなりません。指導者にならなくてはなりません。

彼らは、役者の成長に責任があるのです。
それは、宝塚だけじゃない。劇団所属の演出家は、皆そうです。



「ガイズ&ドールズ」で初ヒロインだった城咲あいちゃんの芝居は、それはそれは酷かった。わりと最近まで、彼女は芝居はできないんだと思い込んでいたほどに。
今、彼女があれだけの実力を持ち、「演技派」とさえ呼ばれているのを嬉しく見るたびに、あのときの酷い芝居はなんだったんだろう、と思います。

もう7年も前の、あの怒り。

指導力の無い人に、新人公演の演出をさせないであげてほしい。
指導力の無い人は、“宝塚の座付き演出家”からは外してあげてほしい。

必死でがんばっているタカラジェンヌたちが、可哀相だから。




そして、今回。
…あの時の城咲あいちゃんと同じ感想を抱いてしまった、主演の大くん。


素晴らしいスタイルと、美貌と、雰囲気の若々しさ。温かみのある落ち着いた声。
えてしてああいう美貌の持ち主は声が高過ぎたり硬かったりすることが多いのですが、大くんは良い声ですね。発声さえ一から勉強しなおせば、歌も台詞ももっと良くなると思います。
ちょっとカミカミでしたけど(苦笑)、滑舌自体は轟さんより良かったですし。

ただ、なんというか「芝居」の意味が解ってないのかな、と思ったのです。
白州次郎の「侍ジェントルマン」、「決して表に出ることのない、影の協力者」……そういう彼の「思い」を、どう表現すればいいのかさっぱりわかっていない…
そんな風に見えました。

やりたいことはある。
イメージは、ある。
でも、轟さんと同じようにはできない(←当たり前)し、する必要もない。だって持ち味が違うんだから。

じゃあ、どうしたらいいのか?

それがわからないまま、とりあえず脚本を覚えて立ち位置を覚えて振りを覚えて…それからどうしたらいいのかなあ?いいのかなあこれで?と思いながら舞台にあがってしまった人。
そんな印象。

目線の動きやちょっとした仕草が、“振り”の域を出ていなかったのが気になりました。

……だから、指導力の無い人に、新人公演の演(黙)


ああ、演出が大野さんか生田さんだったらなあ……、というのが一番の印象でした(T T)。


…。



…コホン。



軍服が似合いすぎて似合いすぎて、他の服を着ている姿が全く想像できなかったちーちゃんのマッカーサー。
落ち着いた貫禄ぶりで、物凄くカッコよかったです。

そして、
なんたって!歌が巧い!(吃驚)

「バレンシアの熱い花」の十輝くんの役も凄く良かったけど、今回はホントはまり役でした。
あの冷たい瞳の美男が、いったいぜんたいどうやって“どM”の佐吉になるつもりなのか皆目見当もつかなくて、すごーく観たくなってしまいました(^ ^)。行けるかなあ…。





そして。

ただ一人、新公のレベルを超えていた、みー(春風弥里)ちゃん。

本役の汝鳥さんが、あまりにも映像の吉田茂本人に似すぎていて驚くくらいなので、それを超えることはさすがに出来ませんでしたが。

しかし。

……貫禄!

なんて格好良いんだろう。あんな格好良い人が、戦後の日本を作ったのか。


ショーなどで笑いを取るためではなく、「老人を演じる」ために必要な杖のつきかた、歩き方、立ち方、そして“不自然な”背(腰)の反らし方。



和子役の愛花ちさきちゃんが、可愛いんだけどちょっと落ち着きすぎていて、吉田茂の娘ではなく妻に見えてしまったのはご愛嬌、として。

あの髪のロマンスグレイっぽさがまた最高に美しかった!!
まあ、結構長い時間が過ぎる物語なので、できれば3段階くらいに分けて外見も老けていったほうがよかったのかもしれませんが…。でも、あそこまで完璧な鬘を作ってしまうと途中で変えるのがもったいなくなってしまうわよね、と納得してしまうほどよく似合ってました(*^ ^*)。

しかーし。最後だけでもいいから髭つけて欲しかった!!切望!



一番好きなのは、講和条約に調印した後、夜景を見下ろす吉田の、背中の小ささ。

それまでは精一杯、虚勢のように肩を張っていた“じいさん”が、まるで別人のように、ふわんと小さく見える。
愛嬌と稚気にみちた、わがままで自分勝手な“おもろいじいさん”の、長い長い一日が漸く終わる。

最後に一本葉巻を吸おうとして、

咳き込んで、


男が泣くわけがないだろう。
これは「煙が目に沁みただけだ」と、有名な決まり文句で誤魔化して。


このときの、搾り出すような声が、また良かったです〜(*^ ^*)。



みーちゃんも歌える人なので、歌がなかったのはとても残念ですが。
吉田茂を観ることができて、幸せです。

そして、

ちーちゃんのマッカーサーを観ることができて、よかった。
本当〜!に、格好良かった!!(惚)



大くんも“ビジュアル完璧”で、これから経験を積んでいったらもしかしたら、と思わせる輝きがあったし♪

そんな、ピカピカと輝いている88期トリオを愛おしく見つめながら。

…月組の85期トリオを、切なく思い出してみたりしながら。


みんなみんな、がんばれ、と。
新人公演も、あとたったの一作。お互いにみつめあって、磨き合って、追いかけあって、
みんなみんな、幸せであってほしい、と。

そんなことを、祈りたくなった新人公演。

観ることができて、本当に良かったです♪♪



東京宝塚劇場にて、宙組公演「黎明の風/Passion」、そして、新人公演「黎明の風」を観て参りました。


「黎明の風」という作品について、
まずは、個人的な好みの話から。

えー、賛否両論あるかと思いますが、私は結構好きかも、です(^ ^;



関係ないけど、そういえば私は「猛き黄金の国」も大好きでした(笑)。「パッサージュ」との組み合わせだったこともあって、轟さんのトップ時代では一番通った公演でしたし。

他にも、わりと石田さんの作品には好きなのが多いんですよね。「銀ちゃんの恋」「殉情」は今まで観た宝塚作品の中でもかなり上位に入る作品です。……宝塚ばなれしたところも含めて、好みなんだと思います(^ ^;ゞ



で、「黎明の風」。

まだ総括がなされていない“現代史”、第二次世界大戦の直前から朝鮮戦争〜サンフランシスコ講和(安保締結)まで、という、現代政治に大きく関わるさまざまなことが始まった時代を語る物語。
関係者にはまだまだ存命な方も多く、あの時代の「総括」は当分難しい。つまり、“観客の統一見解”といったものは、この時代に関しては無いと思った方が間違いない。

にも関わらず、当代にいたっても非常に微妙な問題(憲法問題とか)について、かなり突っ込んだ意見が出てくるんですよね、この作品は。

なのに、不思議と木村作品を観たときのような不愉快な押し付けがましさを感じないのは、その思想が「自明の真理」「神の言葉」として語られるのではなく、「ある人物の思想の産物」、「ある人物の個人的な意見」として出てくる言葉だから、なのだと思います。



「戦争なんてなければよかったのに」という「この世の真理」が語られることは、この作品においては、ない。
ただ、白州次郎という男の面白さを示すために、
「戦争が起これば食料が足りなくなる。だから俺は、田舎に行って農業をやる」
という名言を吐かせただけ、の。


思想を思想として声高に主張し、観客を染め上げることを目的とする作品ではなくて。
ただの娯楽作品として、「こんな面白いことを言った人がいたんだよー!」と、軽いノリで描き出す物語。

本来ならば青筋を立てて、畏まって語らなくてはならない話題なのに、と怒りを覚える人がいるのは当然だと思う。作劇上の制約も大きいし、思想的にも、政治史、経済史としてもごくごく浅いところしか語られていないのですから。

でも、石田さんの作品は「その時代」を生きる人びとの匂いが濃く漂うところが良いと思うんですよね。
底辺に生きる“庶民”の持つエネルギー。やみくもに「上」を目指す野心とは違う、“自分にもきっと何かできることがあるに違いない!”という思い。
悪い方向悪い方向へと流れていこうとする『時代』を、なんとか押しとどめようと必死で努力する子供のような、純粋だけれども報われない努力の美しさ。

コメディの印象が強くありながら、意外と破滅的な人物をよく描いているところも、きっとそういう話がお好きなんだろうなあ〜、と思います。



この作品は、結構思想的な言葉の多い作品ですよね。それも、とっても微妙なテーマが扱われていて。
憲法に関する考えも、安保に関する思想も、それが「真理」で「正しい道」で、それ以外は「間違い」だ、というスタンスで語られたなら、それは何らかのプロパガンダ作品に堕ちるわけですが。

実際の台詞はほとんど、「吉田茂」や「白州次郎」や「ダグラス・マッカーサー」や、そのほかのさまざまな実在の人物が、実際に誰かに語ったとされている言葉たち。

そういう考えで日本を動かそうとした人がいたんですよ、という、そういう作品。



戦後の日本を束ね、経済復興への道筋をつけた吉田茂。

彼の懐刀として、裏で日本経済の、日本外交の基盤を作った白州次郎。

彼らが、時に正面から、時に搦め手から全力で対抗しようとしたGHQ総司令官マッカーサー。



形式上の主役は白州次郎ですが、作品の主題はこの3人による日本経営であり、敗戦国の自尊心、モチベーションの保ち方。
なによりも、一番に「吉田茂」なんだよなぁ、と、
汝鳥さんの名演技を観ながらしみじみと感じ入りました。

裏も表も使えるコマは全部使って、
時には姑息に、時には大胆に、
日本の国益と日本国民の幸せを、勝ち得るため、に。





で。

だいぶ話が飛んでしまいましたが。

私はこの作品、実は結構泣いたわけですが。
キャストさえ“本来の”キャスティングがなされていれば、私の中の名作カウントに入った作品かもしれないなー、と思っていたりします。

では、何が間違っていたかといえば、

なんといっても白州次郎とマッカーサーの年齢設定、なんですけどね…。


だって。
白州次郎が老練な政治家で、マッカーサーが未経験な若者では、話が成立しないんです!

マッカーサーが百戦錬磨で、17年も祖国に帰ることなく転戦し続けてきた有能な軍人であり、白州次郎が恐れを知らぬ自尊心の高い働き盛りであればこそ、土下座の意味があるのです。

ちなみに。終戦(1945年)当時の実年齢は、白州次郎43歳、マッカーサー65歳、吉田茂67歳。
宝塚作品でこのとおりの年齢でやることはできませんが、せめて白州次郎30歳、マッカーサー45歳くらいの設定で考えてもらいたかったなあ、と。


タニちゃんの白州次郎、轟さんのマッカーサー。
こうだったら、もう少し面白くなっただろうに、と思うのです。



それからもう一つ、蘭トムくんが演じる辰美英次のキャラクターが…

広島で家族を亡くした彼と、真珠湾攻撃で弟を亡くしたグルーパー中佐(悠未ひろ)の対比の面白さに、本公演では気づかなかったんですよね、私。

日本軍の、宣戦布告無き不当攻撃と、
アメリカ軍の、非戦闘員に対する無差別攻撃と。

いずれも国際法的に禁じられた戦闘行為による、二つの“家族の死”。それを表現する、二人の態度の違い。

感情豊かに激しい怒りを爆発させ、日本人を皆殺しにしたいくらいの勢いで激するアメリカ人(=グルーパー中佐)と、
黙って哀しみに耐える日本人(=辰美)、という対比に使われるはずのキャラクターだったと思うのですが。

……蘭トムくん、熱すぎます…。

この対比という点に関してだけは、新公のカチャと暁郷(この二人同期なんですねぇ…しみじみ)、お二人を観て初めて気がつきました。面白い表現だったと思います。





ほんの戯言ですが。

この作品、今の花組出上演したら面白かっただろうになぁ、と思っちゃいました。

真飛さんの白州次郎(洒落者でやんちゃな野郎系)
祐飛さんのマッカーサー(フィリピンでの場面は無しでもいい)
壮ちゃんの辰美(クソ真面目で素朴で、一生懸命な軍人)
みわっち(愛音羽麗)のグルーパー中佐
まっつ(未涼亜希)のブレストン大佐

………ぴったりのような気がするのは私だけっ!?

女性陣も、役が豊富なので面白そう。マッカーサーの出番を減らせば、吉田和子にすみ花ちゃん、ジーンにきらりん、従軍記者のポーラにれみちゃん、でぴったり♪
ブギの女と東京ローズは、一花ちゃんかさあやちゃん(どちらがどちらでも)が希望です(^ ^)。



…なーんて、あり得ないからこそ暢気なことを言っていられるんですけどね(笑)。

もし、お気を悪くなさった方がいらっしゃいましたらごめんなさい!!ほんの思いつきなんです…

今の私が本気で花組本公演で観たいと思っているのは、まずは決定済みの「血と砂」、そして「黒い瞳(もちろん謝演出)」の、2作品です(*^ ^*)。(←マジ? ・・;)




なんだかすっかり書き終わった気でいました……「CLUB SEVEN」。
そういえば一幕終わったところまででしたね(汗)。


というわけで。間があいてしまいましたが、休憩をはさんで第二幕。
関係ないけど、「CLUB SEVEN」って今までも休憩ありましたっけ?先月のキャラメルボックスでは「初めての休憩」を売りにしていたんですが……。



幕開きは、Fantastic Musical「マネキンとあやつり人形」。

玉野さん扮する、仮面をつけた“怪人(ご本人談)”が幕前に登場。カカッツーン、カカッツーン、微妙にぶれたような、不可思議な足音が響く。
舞台センターに留まって持っていた鞄を開き、中から人形を取り出し、舞台前面にゆっくりと並べていく…と同時に幕があがり、後ろに立っているマネキン人形たちにライトがあたっていく。


怪人がまたゆっくりと立ち上がり、怪しげな足音を響かせながら立ち去ると。
徐々に人形たちが動き出す。
ゆっくりと、ぎこちなく、踊りだす。

でも。舞台奥の椅子に置かれたあやつり人形(東山)だけは、動けない。


踊り子人形(樹里)が、あやつり人形を踊りに誘う。彼を縛り付ける糸に気づいた踊り子人形は、ぎこちない動作で、一本づつその糸をはずしてあげる。

身軽く踊りだすあやつり人形。しばらくソロでパフォーマンスを愉しんで、それからふ、と気づいたように踊り子人形と組む。
人形たち皆の、楽しげな微笑。さんざめき。

そして。


華やかなダンスナンバーの最中に、

……怪人が、戻ってくる。



慌ててポジションへ戻る人形たち。

糸の外れたあやつり人形を見て怒った怪人は、舞台前面に並ぶ人形たちから踊り子人形をとりあげて。

…首を捻って投げ捨てる。

ばたり、と軽い音をたてて、崩れ落ちる舞台奥のマネキン(樹里)。

他の人形たちも、一瞬悲痛な目を向けて、
それでも何事もなかったようにポーズをとって立ち続ける。


怪人が去った後。

あやつり人形は、腕を伸ばす。
床に倒れた踊り子人形に向かって、精一杯に。

ふたたび糸につながれ、動くことのできない彼の、精一杯の、愛。


彼は、力づくで糸を引きちぎる。
ぶつん、ぶつん、と、運命の弓弦が鳴り響く。


糸が切れたあやつり人形は、踊り子人形のところへいけるのか?


いいえ。
糸が切れたあやつり人形は、動けない。
椅子からは立ち上がっても、ふらりとゆらめいて、ぱたりと倒れてしまう。踊り子人形が倒れたときよりも、もっとずっと軽い音をたてて。

それでも彼は、腕を伸ばす。
腕も、肩も、指も、精一杯に伸ばせるだけ伸ばして、

あと、少し。
あと、ほんの少しで、手が届く…



糸を断ち切った後悔と、
少しでも彼女に近づきたいという熱情と。
それらを滲ませたまま、動かなくなった彼の頬に当たるライトが。

切なくて。



セリフも歌も一切無い、動きのみのパフォーマンスでしたが。
まず、玉野さんの“怪人”ぶりが素晴らしかった。
カカッツーン、カカッツーン、という、頭に響く不可思議な足音。鞄から人形を取り出すとき、あるいは戻すときの、実に怪しい雰囲気。間の取り方。特に、鞄へ戻すときの、一体づつ人形を取り上げては一瞬考えこむ、その間の取り方の怖かったこと!!

そして、東山くん。糸につながれているときの不自由さと、解き放たれたときの優雅な美しさ。
そして、糸を無理やり切るまでの表情の変化と、切れた後の力尽きよう。
すべてが美しくて、哀しかった。

パワーのある存在が、そのパワーを奪われたときの脆さ。切なさ。
美しさには、パワーと脆さ、両方が必要なんだな、と。
心から納得しながら。



で。
ちょっとぶっ飛んでいた気持ちをしっかり戻してくださる、ありがたーい(そしておもろい)トークをはさんで、いよいよお待ちかね、の50音順ヒットメドレー。



これねぇ…終了後でもいいから、曲目リストを出してほしいものだ、と毎回思うんですよね。特に今回は、「新バージョン」ということで知らない曲が凄く多かったので。かなり真剣にほしいよー。
一応アンケートには書いてみたけど、まあ無理だろうなあ。
(ネタ的な使われ方の曲も多いし)



とりあえず、宝塚ファンとしてはずせないのは「うたかたの恋」2発でしょうか。
「ぬ」で、ものすごーーーーく良く知っている前奏が流れた!と思ったら、樹里ちゃんルドルフ&優里ちゃんマリーが!! くるくる巻き毛の優里ちゃんが物凄く可愛いです。そして、アンドレみたいな樹里ちゃんはとてもステキ……なんだけど、もちろん化粧替えの時間も男役用の下着に着替える時間もある訳が無い。実に女らしいラインのまま、軍服着て気障っている姿は……ちょっとヤバイよソレ……(^ ^;ゞ
がんばれ樹里ちゃん、負けるな樹里ちゃん(笑)。

その後、もう一回同じ前奏がかかったんだよね。何のときだったかな…
そのときは、オカマな二人が扮していて、ほとんど歌わずにすぐはけちゃいましたけど。

宝塚関係は、「すみれの花咲く頃」は毎回出るんですけど、今まではあんまり他の曲は使われていなかった……ような気がするのですが。(OGは必ず出てたのに)
今回は結構多かったような気がします。

えーっとえーっとえーっと。
すいません、私の海馬は旅に出てしまったらしく、全く思い出せない。あんなに笑ったのに。二度と忘れない!と思ったのに。
バイク旅行ネタも最高に面白かったんだけど、曲はなんだっけ…☆たちのパフォーマンスも、りんごの木も、優里ちゃんの蚊も、画面は物凄くよく覚えているのに曲を覚えてないから説明できない(T T)。うう、駄目かも。

ごめんなさい。やっぱりもっと早く書かなくちゃいけなかったですね…。


「ん」は定番の「Seasons Of Love」。どこで何度聴いても名曲です、これは。結局、この「50音メドレー」は、観客を思いっきり笑わせて、愉しませて、ラストにこの曲をやるための企画だったのだ、と思います。

525600の過ぎた時。
昨日もない、明日もない、ただ今日のこの日が、
この舞台があるだけの人生、

そんな思いをこめて。



「……LOVE…」という、ラストのユニゾンが。
ライトの落ちた舞台にとけていく。



そして、

ラストの締めは、いつもどおりの「CLUB SEVEN」リプライズ。
美しい彼らの、美しいダンス。
黒一色に身をかため、シンプルな舞台いっぱいに、伸び伸びと踊る7人の仲間たち。


私が観たのは千秋楽だったのですが、なんと!アンコールに応えてもう一度「CLUB SEVEN」を踊ってくださいました♪♪
……かなり皆へろへろりんでしたが……(^ ^;ゞ。


まぁ、とにかく。

理屈を言っても仕方がない!楽しいものは楽しいんです!

絶対に映像化することのできないこの作品。この眼で観ることができたことが、腹を抱えて笑うことができたことが、とても嬉しい。

幸せな時間を、幸せな3時間を、
3時間分の血と汗と涙(←すげー濃そう…)を、

本当に本当に、ありがとうございましたっっ(はぁと)。




宝塚大劇場にて、月組「ME AND MY GIRL」を観劇してまいりました。(ネタバレあります)



いやー、すっごい楽しいショーだった!!
生粋のショースター!の麻子さんとかなみちゃん。コンビ最後の作品がショーなしの一本モノだなんて残念だなぁ、と思っていたのですが。

ずーっとコメディのお芝居(テーマは家族)だと思っていた「ME AND MY GIRL」が、いつのまにか楽しいグランド・ショーになっていた!

さすが、ショー作家・三木章雄の面目躍如、ですね♪♪グッジョブです♪
音楽が良くて、脚本がしっかりしていると、普通のミュージカルがこんなに楽しいショーになるんですねぇ。感心…。




えーっと。


私は、宝塚での「ME AND MY GIRL」を観たのは、これが初めてです。以前、帝国劇場で観たときのキャストは以下のとおり。
ビル      井上芳雄
サリー     笹本玲奈
マリア公爵夫人 涼風真世
ジョン卿    村井国夫
ジャッキー   純名りさ
ジェラルド   本間憲一

ちなみに演出=山田和也、指揮=塩田明弘。シンプルな舞台でストレートに芝居を見せるのが得意で、本来は中劇場での喜劇向きの演出家と、こういう“楽しいミュージカル・コメディ”にはぴったりのリズミカルで軽やかな音楽を本領とする指揮者が組んだ、幸せな作品。
実に実に楽しい、明るくて優しい、心温まる“お芝居”でした。

誰が良かったかって、マリア公爵夫人のかなめさんがすっごく良かったんです。感情の動きを悟らせない、冷たい“貴族”の仮面の下で、ほんの些細な考え方の変化を、2時間半のドラマの中でゆっくりと表に出していく、その描写が。




今回、月組版を観て、(良い悪いではなく)一番違うな〜、と思ったのは、やっぱりタキさんのマリア夫人でした。感情豊かで、溢れんばかりに愛情豊かで、ビルのことが愛おしくてならない夫人、だったので。
それはそれでとってもステキな“おばさま”でしたけれども、一番の問題は、それだとビルが「おばさまの愛情もわからない愚か者」に見えてしまうこと。

タキさんは、やっぱりカルロッタとか、ブラックウェル夫人とかの、感情が豊かで表現幅の派手な人が似合うんだなあ…。「ダル・レーク」のインディラおばあさまは良かったけど、今回マリア夫人はちょっと出番や歌などのアクションが大きすぎて、やりすぎてしまっているような気がします。

まぁ、仕方ないんですけどね。マリア夫人が派手に動けば動くだけ、ショーとしては面白くなるんですから(笑)。タキさん卒業公演だし、マリア主役のつもりでガツンとやってもらってもいいのかな。ショーだから華やかなもの勝ちってことで(^ ^)。

とりあえず、エトワールも含めて、タキさんの歌が思いっきり堪能できたことがとても嬉しかったです(*^ ^*)。



そう。
今回、一番「ショーだなあ!」と感銘を受けたのは、実は「ランベス・ウォーク」ではなかったんです。

「Leaning On Lamp Post」。
ランベスにサリーを探しにきたビルが、切なく歌う名場面。

あの場面で、あの歌で、あれだけ華やかなショー場面にしてしまう麻子さんって、すごいなーと思ったのでした。


ただひたすらに、軽やかで、楽しい。
ビルもサリーもそこにはいなくて、ただ、楽しそうなランベスの住人たちと、ショースターがいる。
サリーの下宿の女主人・みっぽー(美鳳あや)の見事な芝居が、いっそ無駄に見えるほどの、完璧なショーシーン。

芝居じゃないんだ、ショーなんだ!!という感銘と驚愕。

…目から鱗。



三木さんが、「ME AND MY GIRL」という作品をショーとして演出し、

麻子さんが、この作品を通し役のあるショーとしてしっかり解釈し、場面ごとに最適な盛り上げ方を追求して、どの場面も見せ場のオンパレード!にしてのけた。

三木さんと麻子さん、「ファンシーダンス」でもあてたゴールデン(?)コンビならでは、の、見事な息の合い方だったと思います。



「芝居の月組」とか「ショーの花組」とか呼ばれていたのは、何年前になるのでしょうか…。
下級生を観ていると、まだまだ「芝居の月組」という意識も「ショーの花組」という意識も強いような気がするのですが(祐飛さんがんばれ〜!)、上層部はとっくに入れ替わっているんですね。


……たった一人、芝居をしようとしては空回っていた未沙さんが、なんだか物凄くもったいないような気がしてしまったのは(伝説の弁護士をこの目で観ることができた幸運は、掛け値なしにただただ嬉しいんですけど)、否定はしません…。



まぁ、本来は些少な感情の変化を二時間半を追いかけていくお芝居なので、全体をショーとして演出しなおしたことでラストシーンが弱くなってしまうのは、これは仕方のないことなんですよね……。
あそこで「馬鹿野郎!」と叫ぶ前にタメが入るのは、芝居だから。2時間半の感情の積み重ねが、あの一言に凝縮されているからです。井上くんのビルは、それはそれは爆発的な叫びでしたとも(すっげー泣けました ^ ^;)。

……でも、今回の月組公演は、ショーだから。そこで変にタメをつけても、間が悪くなるだけ。サラっと流す麻子さんの手法が、正解なんですよね。

どうやっても、全体を通してショーアップされた盛り上がりの最大値は一幕のラスト(The Lambeth Walk)に来てしまうので(だから、休憩時間が凄く楽しく過ごせるんですけど♪)、作品のラストでのカタルシスが弱い。芝居ではないので、全ての伏線がここで結ばれた!という感動が弱いんです。
でも、そこもさすがベテランの三木さん!すぐにフィナーレのショーナンバーに入るので、そっちで感動してちゃんとお釣りがくる(^ ^)v

…銀橋に出てくるみりお(明日海りお)くん、もりえ(青樹泉)ちゃん、まさお(龍真咲)くんの3人が、可愛くて可愛くて可愛くて、一発でノックダウン、でした(幸せ)。



サリーのかなみちゃんは、前夜祭を考えれば見違えるほど芝居がよくなってました♪でも、逆にもう少し麻子さんに合わせて、ショーっぽく演じるのもありだったかも。どのみち、声や口調に特徴がありすぎて、「気風のいい下町娘」にはなれないし、ラストの上流階級言葉も、声は変えられないんだから…。

歌はさすがでした。笹本玲奈ちゃんが本当に素晴らしかったんですけど、かなみちゃんもさすがでした。ただ、音域がちょうどチェンジ領域だったのかな?いつもの伸びやかさがなかったのが残念でした。東宝に期待しています♪



ジョン卿のきりやんは、ただしく“可愛いおじさん”でした(^ ^)。
髭もよく似合うし、なんたって可愛い♪♪お持ち帰りして部屋に飾っておきたいくらいでした♪
ただ、タキさんのマリアが割と感情を大きく出すので、抑えた芝居で愛情を隠したジョンが、ちょっと控えめに見えたのが、ラストでちょっと弱さになってしまったかも。
帝劇公演で観たのが村井さんで、あまりにも嵌り役だったので…比べちゃいけないんですけどね。やっぱりこの役、(年齢の問題ではなく)貫禄のある人、せめてある程度たっぱがある人の方がやりやすいんだろうなぁ、と思いました。

あとは、前にも書きましたがもりえちゃんの髭姿に惚れたくらいかな…。本当に下級生の出番少ないんですね(泣)。まさおくんクラスでも、役らしい役がないなんて。
そんな中、プリンシパルクラスの役であるジェラルドを貰っているあひちゃん……。東宝まで1ヶ月、奮励努力されることを、そしてその努力が実ることを、心から祈っています。

あいあいジャッキーは最高でした!麻子さんとのバランスもよく、しっかり芝居している割にはショーにもきちんと溶け込んでいたし…バランス感覚の良い人だなあ。
相変わらずの美脚、ご馳走様でした☆

みりおくんのジャッキーも楽しみです!早く東宝始まらないかなあ☆そして、新公が無事観られますように!(祈)




日本青年館「赤と黒」の、つづき。


といいつつ、違う話からはじめさせていただきます。

最近面白いなーと思うこと。
宝塚のスターには、どうがんばっても「敵役」には向いてない人、っていうのがいるんですね。

私の中では、星組のしいちゃん、花組の壮(一帆)ちゃんがそういうタイプ。

「ヘイズ・コード」で大ヒットを飛ばしたしいちゃん、
「黒蜥蜴」の浪越くんがヒットだった壮ちゃん。

お二人の共通点は、笑顔が明るくて天真爛漫で太陽みたいなことと、真剣な顔をしていてもどこか口角があがってみえること。
そして、声が高めなこと、……かな?



宝塚作品における「二番手役」というのは、主役(トップスター)の敵(恋敵、親の仇、自由の侵害者、目的の妨害者、など)であるか、または友人(弟分だったりもする)であることがほとんどです。
たまに語り手(狂言回し)だったりすることもありますが、基本的には主人公と関係の深い役が二番手役になることが多い。



「赤と黒」の一幕については、敵役=レナール氏(しいちゃん)、友人=フーケ(礼音くん)、という二人の役があるわけですが。
……もしかしてこの二人、逆の方が良かったのでは…?役者のキャラクターに嵌るのは、逆パターンだと思うんですよね…。

あああ、「ヘイズ・コード」であんなに格好良くてステキだったしいちゃんが、「シークレットハンター」「エル・アルコン」「赤と黒」と、3作続けてコケているのを観るのが辛い(涙)。



…礼音くんのレナール氏……どうだろうなあ(T T)。やっぱり無理かしら?作品として面白くなりそうなのは、ホントはしいちゃんフーケ、すずみん(涼紫央)レナール氏のような気もします。
(すずみんのノルベールはとっても良かったけどね)
あるいは、専科さんにレナール氏をやっていただいて、フーケをしいちゃんがやるとか。

こうやって考えていくと、スターの数に対して役が足りないから仕方ない、ってことになるのか。本末転倒………な気が(^ ^;ゞ



そして。
フーケは本来もっと良い役だったはず、と思ったのですがどうなんでしょうか。いかにも柴田さんの好きそうな役ですよねぇ?
常識人であるフーケの存在が、ジュリアンの無謀さを引き立てるわけで。思わず「ねぇフーケ、ジュリアンのどこがいいの?」と尋きたくなってしまいます。

いくらフーケが“常識”をたてに熱心に誘っても、ジュリアンは“常識”ではあり得ないことをしようとしているわけだから、絶対にうべなうことはあり得ない。その無謀さ、彼の抱いた夢の虚しさが、フーケの常識人っぷりを強調することで浮き彫りになる。

でも、礼音くんとトウコさんに対等の友人役は難しいだろう⇒一歩下がったフーケにしとけ、みたいな展開で今に至ったのだとしたら、もったいない話だなー、と。
そう考えると、「シークレットハンター」でトウコさんのダゴベールよりもうわての役を礼音くんにフッた児玉明子さんは、キャストの本質を見抜く目はあったんだなあ、と感心します。
ダゴベールとセルジオが出来た二人なんだから、もっと対等なジュリアンとフーケ、ってのもありだったと思うんですけどねぇ…。もう少し、ジュリアンへの愛があると良かったのになぁ、礼音くん(*^ ^*)。





二幕は、とにかくジュリアンとマチルドの二人の物語なので、二番手役らしい役は、ないんですよね。むしろ萬さんのラ・モール侯(マチルドのパパ)が、らしいっちゃらしいような気がする(^ ^;。

あとは、二幕を彩る“若手貴族たち”の中でも、すずみんのノルベール伯がめっちゃステキだった!!優しそうで、でもデキる軍人、って感じで。ダンスシーンも多いのですが、ラインがすごくキレイ。すずみんも、声がもう少し低ければなあ……。

礼音くんのコラゾフ公も良い役でしたね。歌もだいぶ安定してきたなあ〜♪声が私好みではないので(ごめんなさい)大好き!とは言えないのですが、がんばってくれているのは嬉しいです。

しかし!!スカーレット・ピンパーネルのショーヴランは………素晴らしい名曲を歌いあげなくてはならない、むしろトウコさんで聴きたい役なので。これを礼音くんに、っていうのはほとんど劇団の苛めだと思うんですけど(汗)、あと3ヶ月、ありますから。がんばってほしいと思っています、真実に。

…10年前になりますが。あのダンサー・風花舞嬢でさえ、「WEST SIDE STORY」の1000days公演ではかなりの美声を披露してくれたのですから。
礼音くんも、やればできる!絶対できる!……たぶん、きっと、ね(祈)。




若手貴族たち、残る二人はクロワズノワ侯爵(和涼華)とラ・ジュマート男爵(彩海早矢)。

演出は古臭くて、カーテン前がたくさんあった「赤と黒」。
二幕のカーテン前は、ほとんどこの4人で繋いでくれるんですが……。

すずみんと礼音くんは、いいんです。

でも、
…和くんと、あかし…、

カーテン前って、難しいんでしょうねぇ(疲)



お二人とも、貴族の衣装がすっごくお似合いで、しかも品のある顔立ちも仕草もとっても優雅で、パーティーなんかで歓談している場面なんかは◎だったのですが。

カーテン前やつなぎの場面で喋っているときの間のもたなさときたら(滝汗)。

なんだか、初めてシェイクスピアの芝居に取り組むアイドル、みたいな感じでした。(←すっげーわかりにくいです)
ちょっと前まではあんまり目立たなかったけど、ここ2年くらいは本公演でもバウでも役がついて、芝居が面白くなってくる時期だと思いますので。
今日できなくても、また次の日。
明日だめでも、また次の日。

楽しみに見守りたいと思います。
……がんばってくださいませ…m(_ _)m。



あと印象に残ったのは、ナピエ大司教の紫蘭ますみさん、フリレール副司教のみきちぐ(美稀千種)。
「キーン」で印象に残ったますみさん、あらためて観ても巧い人だなあ、と感心しました
みきちぐは言うことない。悪者らしい悪者が、怖いくらいステキ。



それから、ずっと芝居ができない人だと思い込んでいたコトコト(琴まりえ)を、心の底から見直しました。今まで舐めていてごめんなさい。
そういえば、「ヘイズ・コード」や「エル・アルコン」の思い込み激しいお嬢さんも良かったし、「シークレットハンター」のたおやかな王女殿下もお見事だったのに、どうにもこうにも「花のいそぎ」時代の棒読みっぷりが頭から離れなくて…。
ホントにごめんなさい!!
今回のデルヴィール夫人は本当に目から鱗でした!
たおやかで美しく、やわらかい。こういう色を出せる役者に、いつの間にかなっていたんですねぇ……。


うん、和くんも、あかしも、まだまだチャンスはある!がんばれ!せっかく見た目は完璧なんだし、あかしはダンス、和くんは歌と武器もあるんだから、もったいないですぅ、、二人とも(涙)。




下級生では、エリザの稀鳥まりやちゃんが可愛かった!
やっぱり私、キトリちゃんはダンスだけじゃなく芝居も好きみたいです。技術面はまだまだだけど、とにかくけなげで可愛いのがGOOD♪

ジュリアンが大好き!ジュリアンは私のもの!という思い込みの強さ。古典には割とよく出てくるキャラクターですが、しっかり役に入ってましたね。
マチルドとは少しタイプが違いますけど、行動は似たようなコトをしているんですよね、この二人。遺産が入るからって、女の子のほうから結婚を申し込むっていうのも凄い(相手は神学校へ行こうって人なのに!)。
ジュリアンと同じ階級だったばっかりに相手してもらえず、逆恨みしておじさんたちに利用されてしまう憐れな少女ですが。
……本当に可愛かったです。今後のご活躍を期待しています。



そして、エリザのカレシ(物語が始まったとたんに振られちゃうけど)、サンジャンの水輝涼くん。…やっぱりカッコよかった!(←それただのファンだから)

しかし出番少ないなー。まさか二幕にほとんど出ないとは思いもよらず。
ちょこちょこっと喋ってくれて、大好きなあの声も聴けたけど、

たまには水輝くんの歌が聴きたいよーーーーーーーっ(T T)。



演出については、もう少し書きたいような気もするのですが。
とりあえず、ひとつだけ。

紗幕の向こうでジュリアンとルイーズが抱き合う場面。

2階のてっぺんの端で観ていた私には、ちょうどカウチに座ったお二人の色っぽいラヴラヴ場面が、見事に紗幕を縦に走る柱(?)に阻まれて、全く見えませんでした…(泣)。

ジーザス・クライスト・スーパースターのラストシーン(四季劇場「秋」の2階S席からは、十字架に磔になった主役ジーザスが全く観えなかった事件)じゃあるまいし、どうしても紗幕を降ろしたいなら、あんな飾りがいっぱいついた紗幕じゃなくてもっとシンプルなのを使ってください。お願い…。



日本青年館にて、宝塚星組「赤と黒」を観劇してまいりました。



脚本は、さすが柴田さん!!と思いました。
骨太な物語ですよねー。……ちょっと古いことは否めないけど(←これは演出の中村さんの責任も大きいと思う)


私は、スタンダールの「赤と黒」ってあまり好きではなくて、
鴎外の「舞姫」と『嫌いな文学作品』のトップを争う作品だったりします。
主役の性格が嫌い、
話の展開がくだらない、
ラストが情けない、の三重苦。

なんで感性豊かな思春期(当時)に、こんな作品を読んで感想文なんぞ書かなくちゃいけないんだろう、と思いつつ、それでも良い子ちゃんぶって無難にまとめた感想文を書いて自己嫌悪に陥った、思い出の2作品(^ ^;ゞ
そんな時代(高校時代)はや遠くに去りぬ……って感じですけれども。



観ている間中、「やっぱイヤな奴」と思いながら話を追っていた私ですが。
ラストのジュリアンの獄中のソロ一曲で、目から鱗。

愛の物語だったのか、これは!
彼自身でさえ「野心」だと思い込んでいたこれは、
すべてが「愛」だった、と。




一つの無駄な場面も、一言の無駄な台詞もなく、「ジュリアン・ソレル」という、当時のフランスの片田舎にはおさまりきれなかった、自尊心に満ちた青年を描き出す。

自分は何者かであるはずだ、という自尊心と、不甲斐ない自分に対する絶望と。

野心、とは、最終的に結果を得るからこそ美しいのに、彼はただ、『現状を否定すること』を野心と呼ぶ。
現状の自分を否定し、そうでないものになる。
それは結局、神職でもいいし、政治家でもいいし、ただの金持ちでも、もしかしたらキーンのような役者でも構わなかったのかもしれません。


彼はナポレオンになりたかったのではないんですよね。ただ、「彼に出来たことを成せない自分」に苛立っていただけ。
ジュリアンのナポレオンに対する気持ちは、憧れではなく信仰に近い。祈れば道がひらける、と思っているのですから。


ジュリアンの“野心”は、先月観た「WILDe Beauty」のオスカー・ワイルドを思い出させました。
なにものか、になるために、アイルランドの田舎からオクスフォードへ進み、「奇抜なファッション」「奇抜な言動」という武器を使って“雲の上の方々”の興味を惹きつけ、「上流階級」への仲間入りをするために自分自身を切り売りする天才児。

まぁ、ジュリアンは結局「上流階級への仲間入り」を果たすことは出来ず、過大な自尊心を持て余して破滅してしまうわけで、一時的にでも成功を収めたオスカーとは全然違うわけですが。



…思春期の潔癖な少女には、理解することのできなかった青年、でした。どちらも、ね。




トウコ(安蘭けい)さんのジュリアン。

ずっと「やりたい役」にあげていらっしゃっただけあって、見事な作りこみでした。
身体つきがほっそりして小柄なので、若く見えるのは得ですね♪
表の顔と裏の顔での口調の使い分けは見事でしたが、心許した人…フーケとか(?)と喋るときの口調、っていう抽斗がもうひとつあると完璧だったかなー。
あと、表の顔での口調はもう少し「真面目」「誠実」な感じにしてもよかったのでは。作り声すぎて、あれで本音に気づかないのもどうよ、と周囲の人物に疑問がわいてしまったので(^ ^;

…トウコさんは基礎の技術点の高い人なので、ついつい要求が細かくなりがちです(滝汗)。

それはともかく。
ラスト近く、獄中でのソロの激しさ、
あの熱情が、トウコさんの本領なんですよね。

歌唱力が素晴らしいのは勿論ですが、その根っこに「熱」があるから、「野心」を炙る熱量が一幕の冒頭からきちんと表現されていたから、ラストに燃え上がったときにも気持ちがつながっていく。
あそこで、いろんなことを全部吹っ飛ばして「愛」を謳いあげることが出来るから、『宝塚の「赤と黒」』になるんです。

技術点は高いにこしたことはないけれども、それだけでは芝居ができる訳じゃない。この作品だったら、「熱量」がなければラストが成立しなかった。
でも、あの「熱量」が、逆に邪魔になる作品も最近は多いです。
たとえば荻田さんの作品なんかは、アツくなったらおしまいですし、
正塚さんも植田景子さんも、あんまり「熱く」はならない作風ですよね。

そんな中で。あれだけの「熱量」を持っているスターは、どんどん数が減っているような気がします。時代の要請なんでしょうかねぇ?
トウコさんのジュリアン・ソレルは素晴らしかったけど、柴田さんの名作は今後もまた再演してほしいなあと思うんですよ。
でも、そのときに主演する人は誰が考えられるか、というと……
…水くん、かなあ。あと祐飛さんとか。

なんとなく、それ以下の世代には難しいような気がするんですよ、往年の柴田作品って。時代感が合わないんじゃないかな、と。
78〜79期あたりが最後の「柴田世代」と言っていいんじゃないかなあ……気のせいならばいいのですが……
(とか言いつつ、実はまとぶんは案外嵌るかも、と思っています。元々野郎系だし。柴田作品、花組に回ってこないかな〜♪♪)(←できれば謝演出で!!)




あすかちゃんのレナール夫人。

言うことないです。(すみませんファンです)
あすかちゃん、絶対良いだろうと思っていましたが、本当に良かった!!!絶賛!

たおやかな弱さと潜めたときめき、人妻らしい柔らかさ。
あの“暴走少女”が、本当にイイオンナになったなあ、と、感服しました。
星組で幸せそうに、満面の笑みで思いっきり手を拡げて(膝は曲げてるけど/爆)いる姿を観るたびに、しみじみと嬉しくなります。

トウコさん、あすかちゃんを可愛がってくれて、守ってくれて、本当にありがとう。心からの感謝をこめて。
……なんだかすごーく少ないけど。本当に言葉にできないほど良かったので、これだけで。



(夢咲)ねねちゃんのマチルド。

可愛い。
ほんとーに、可愛いぃ!!

ちょっとオタクな、思い込みの激しい少女。原作のイメージぴったりで、見事な仕上がりでした。月組時代から心の芝居がしっかり出来ている人なので心配はしていなかったのですが、やっぱり月組芝居と星組芝居は違うから、噛み合わなかったらどうしよう…と思っていたんですよね。

でも。ねねちゃんのマチルドは、強気でわがままな、可愛い“姫君”でした。宝塚の娘役なのに良い子ちゃんにならず、ジュリアンに負けないプライドの高さや、人を見下す“嫌な女”感をきっちりと表現してしまうねねちゃんの芝居、やっぱり好きなんですよね、私。
子供っぽい夢想(雪の上を愛する者の首をもって歩く幻想)に浸るイッちゃった感、
手紙をやりとりするときの可愛らしさ、
“ちょっと焦らしてみよう”という小悪魔の悪戯っ気、
そして、冷たくされて本心に気づくまでの不安げな顔。

観た人に「嫌な子よね!ジュリアン、あの子にお仕置きしてやんなさい!」と思わせてこそのマチルドなので。ねねちゃん、見事に星組さんでの初仕事をこなしているなー、と、非常に嬉しかったです。


あえて苦言を書くならば。
ホフマン物語の時にも書きましたが、低い声でゆっくり喋ることが出来るようになるといいなあ…。
口調のバリエーションが増えれば、役柄も拡がるし、無敵だと思うんですよ。正直なところ、縦も横(肩幅)も娘役としては破格に大きい人なので、性格としての「強い〜弱い」のレンジをもう少し「弱い」側に広げておかないと、出番が増えるにつれてどんどん苦しくなっていくと思うんですよね。

あすかも全く同じ苦労をしてきた人なので、あのまろやかな低声とか、おっとりとした口調とか、しっかり盗んでいただければ!!



それにしても!!!
あすかちゃんとねねちゃんが並ぶ星組さん。
5組合わせても脚の長さとスタイルで選んだら、絶対娘役の五指に入るであろう人が、2人。大劇場ともなれば、これにさらに蒼乃由妃ちゃんも加わるんでしょう?


ずっるーーーーい!一人、花組に頂戴!!(月組にはあいあいが居てくれるので我慢します)


………いや、そうじゃなくて。

「スカーレット・ピンパーネル」の次のショーでは、彼女たちのダルマは必須!!でお願いします >星組プロデューサー様
(←結局それ?)




宝塚大劇場にて、月組「ME & MY GIRL」を観劇してまいりました!

…という話は後日あらためてさせていただくとして。




今日は比較的(ねこにしては)早く帰れる予定だったので、録画しておいた「ノバ・ボサ・ノバ」(雪組)を観るつもりでした。

いろいろあって遅くなってしまって、今さっき家に着いたところ…なのは、まぁ、いつものことなので仕方ないんですが。




にわにわ(奏乃はると)、全国ツアー全休演なんですね(泣)。
せっかく雪組85期が全員揃うはずだったのに。

ひろみちゃんもらぎちゃんも、他のメンバーも心配だろうなあ…。


ノバの初舞台ロケット見たら、泣けてきました。
にわにわ、わかるし(笑)。

「ノバ・ボサ・ノバ」は、私が初めて観た「初舞台生公演」でした。
初々しくて、可愛くて、今にもはちきれそうに幸せそうな、初舞台生たちの笑顔。

雪組さんは一回しか観なかったけど、あの時は85周年スペシャル、って感じで、月組でも初舞台生ロケットがあったので。
口上こそなかったけれども、東京まで85期は全員来てくれたから、あり得ないくらい何度も何度もロケットを観た。

一番印象に残ったのは、ちっさくて、可愛くて、優子姫(風花舞)にそっくりで、毎日毎日元気いっぱいにトップで銀橋に出てきた桜一花ちゃんだったんだけど、
とにかく、みんなみんなあんまりにもかわいくて。



初舞台生公演を観た期、っていうのは、私の中では特別なんですよね。
最初が「ノバ・ボサ・ノバ」の85期、
次が「花の宝塚風土記」の89期、
そして「マラケシュ」の90期。



特に85期は、研10にもなろうというのによくもまぁ、と思うほど各組たーっくさん残ってくれていて。
皆宝塚がダイスキなんだろうなぁ、と思うだけでファンも幸せな気がします。堂々ポスター入りしているレオン(柚希礼音)くんを筆頭に、組の中でも重要な役割を果たすようになってきた85期。
ミーマイでも、1幕のアンサンブルでお髭をつけたもりえちゃんが滅茶苦茶カッコよかった!!(←髭萌え継続中)し、2幕で下宿のおばさんを演じたみっぽーの巧さにも感心しました。ランベスクイーンのちわわはカッコイイし、女中頭のおときちは声が通って威厳があったし、貴族の奥方に扮するほたるの美しさには脱帽!!だし。

ホント、みんながんばってくれていて、すごく嬉しい。感涙(T T)。




……だから。

にわにわ。

集合もしていないのに全休演、だなんて……衝撃は大きいですけれども。

大好きだから、
待っているから、

またあの素晴らしい歌声を、
そして、あの素晴らしい脚線美を(^ ^)、

たくさん聴かせて&魅せてくれると信じています。



どんなときも。
仲間が待っているから。
ファンが待っているから。


ゆっくり休んで、また元気な笑顔を見せてくださいm(_ _)m。




語りたい舞台がたくさんあるので、急いで話を進めたいと思います。



品川プリンスの「Club Seven」1幕のつづき。


家族3態の次は「玉子のむちゃブリっ子!」コーナー。
ま、コントですな。玉野さんが可愛くおさげの女の子に扮して、メンバーに「予告ナシに無茶苦茶なネタをフる」という、メンバーにとっては(多分)地獄の時間。

それまでは毎日日替わりで3人ずつだったようですが、千秋楽だけは6人全員強制参加、でした。
…私は楽しか観ていないので、周囲のファンが「椅子が!!」とざわめいている意味がわからなかったのですが。どうやら「昼公演までは椅子を持ってくるスタッフは1人だったのに、2人も出てきたよ!!!(椅子が6つだから)」という驚きだったらしいです。
玉野さんってホント無茶するよなぁ……。

設定は、「CLUB SEVEN」応援団6人。
お題は、「CLUB SEVENの応援歌の振付をしてくれた皆さんです!」でした。

いやーもう、ステキだよみんな!
西村さんも凄かったし、
樹里&優里ペアの『揃わない振り付け(勿論、打ち合わせする時間なんぞあったはずがない)(←終わったあとで、玉子ちゃんに「ちょっと揃ってなかったみたい…」と突っ込まれた)』も凄かったし、
原&阿部ペアなんて、最後の決めポーズでいきなり事故ってたし!!(←阿部さんがポーズを決めた原くんを飛び越そうとして、思いっきり原くんの顔にダイビングした/涙。鼻血が出たかと思った)


でも。
なんといっても一番可愛かったのは、即興のフリが不満だったらしく、席に戻ってからもしばらく拗ねていた東山くんだったなぁ…。


ラストに、玉子ちゃんが「では、応援曲に合わせて踊っていただきましょう!」と言ったときの、皆の顔!
いやはや。
どんな曲がかかるかもわからないのに即興で踊らされて、それを曲に合わせてやれといわれて、それでもなんとなくそれらしくまとめてしまう6人のメンバー。
………凄すぎる(*^ ^*)。


っていうかさ、西村さんって本当に凄いですよね…。
あの無茶ブリにあっさり耐えた彼をみながら、しみじみ感動してしまいました。
ねこにとって、西村直人=マイ・ベスト・ジョリ(レ・ミゼラブル)、なんですよね。…レ・ミゼにはダンスがないので、こんなに踊れる人だっていうのもマリアート作品を観て初めて知ったし。芝居も出来るし、歌は勿論だし、
……コントも完璧(笑)、かぁ(*^ ^*)。




メンバーが引っ込んでから、玉子ちゃんがちょっと繋いで、次は、今回の作品で一番好きなシーン。
「人生は過ぎ行く」/「雪女」。

最初の「人生は過ぎ行く」は、東山くんと樹里ちゃんの夫婦の朝。っていうか、この二人さっきも夫婦だったなそういえば(汗)。

ベッドに半裸で眠る東山くん。
ガウン姿で一生懸命彼を起こす樹里ちゃん。

た・だ・し、歌は吹き替え
甘い男声(多分美輪様ご本人)の、「好きよ、好きよ、好きよ…」と際限なく繰り返すシャンソンが流れ、それにあわせて樹里ちゃんが口パク。しかも、わざと低音を出しているっぽく、喉を膨らませて……あの顔芸がたまりませんっ!!

やっと起き上がって着替え始めた東山くんに取りすがり、「行かないで」と唄う樹里ちゃん。マジで笑えますから。っていうか東山くん、口元ぴくぴくしてるってば(^ ^;
出て行こうとする旦那(単に会社に行くだけ)をひきとめようと、やっと履きかけたズボンを無理やり降ろしちゃう樹里ちゃん。タイミングから何から、もう何もかも最高でした。

ラストに、「毎朝毎朝、この曲で起こすのやめてくれよ」「だって好きなんだもん」という、明るくのんきな若い妻とのやりとりが……めっちゃイケてる(爆)。さりげない関西弁のやり取りが自然で、なんだかほのぼのとした二人でした。



しっかし。
こういう場面があるから、CLUB SEVENの映像化は不可能なんだよなぁ………。



そうやって妻を振り切って(←大袈裟)会社へ向かう東山くんは、途中で嵐(吹雪)に遭遇。
他の男性陣も加わって、嵐に翻弄されるサラリーマンのダンスに。シンプルな振りだけど、凄くカッコよかった〜(*^ ^*)。


白いひらひらした衣装に身を包んだ優里ちゃん登場。
男性陣ひとりひとりに絡んで、翻弄して、誘って、
……そして、白い息を吹きかける。
会場内の温度がすこーしさがった気がしたくらい、冷たい笑顔。

次々に倒れ伏す背広姿の男たち。

優里ちゃんの、笑顔の残酷さがいい。うん。樹里ちゃんみたいな、幸せそうなふにゃっとした笑顔ではなくて、凜とした、あるいは“どSな”笑顔。
最高に素敵。

ラスト、吹雪にあおられてふらふらしている男たちを尻目に、ゆっくりした足取りで舞台端の階段を上っていく雪女。

セットの上で白い衣装を脱ぎ捨てると、

ブラウスに黒のタイトスカートの、シンプルなOL風美女が出現する。

黒縁の眼鏡をかけて書類挟みを持った彼女が、セットの上から舞台面を睥睨すると、
いつの間にか服装を整えたサラリーマンたちが、きちんと並んで彼女に敬礼する。

「はい、部長!」

と。



……あの部長の笑顔がまた、どSで素敵でした(壊)。
私は“星奈優里”を舐めていたのかもしれない、と、本当に心の底から思いました…。

だって、優里ちゃんって“薄倖が似合う”タイプだとばかり思っていたんだよー。あんなに“どS”が似合うタイプだなんて露ほども思ってなかった。
芝居している優里ちゃんは“薄倖”だけど、ショーの優里ちゃんは、踊っている優里ちゃんは、“どS”なんですね…。ステキすぎる(^ ^;ゞ。




次は「スケッチ 桃太郎」/「スーパーカリフラジリスティック云々」。

噺家の玉野さんに、可愛いおかっぱの息子が4人。
4人を寝かしつけようと四苦八苦する玉野さん。桃太郎の物語を一生懸命きかせようとするが、ぜんぜんおとなしくなりゃしない……
そして、話をしながらそのまま寝てしまうパパさん。
………可愛い。

子供たちも、説明のしようがないくらいクソガキで可愛くてたまりませんでした。観ていない人にはさっぱりわからないコメントで恐縮ですが、「ぎょうざ☆」は最高だった。
あのクソガキたちのネタは毎日同じだったのか、アドリブだったのか…。

そして。
パパが寝てしまった後は、4人の悪ガキの、布団を使ったタップ場面に。いやー、ここのタップが凄かった!今までだったら絶対、“タップキング”玉野さんは悪ガキに入って、噺家のパパは西村さんあたりだったろうに、今回は西村さんが悪ガキリーダーになって、東山くんと二人でひっぱりながらのグループタップ。
いやーカッコよかったし、楽しかった。観ているだけでわくわくしました。




次は、Dance Musical(タイトルは特にないらしい)。
これはある意味、王道のショー場面でした。
ちょっと「サザンクロス・レビュー」のブエノスアイレスの場面みたいな感じの、対立する2グループのタンゴでの闘い。

樹里ちゃんと優里ちゃん、玉野さんのショーシーンで始まって、
樹里ちゃんの恋人が西村さん、優里ちゃんの男が東山くん、
西村さんと東山くんは、お互いに対立するグループのリーダー同士。

最初は穏やかに樹里&西村、優里&東山のペアで華やかに踊っているのに、いつの間にか東山くんが樹里ちゃんに関心をもつ…。

よく練られた場面で、樹里ちゃんの歌も良かったし、タンゴの振りもカッコよかった!玉野さん、ストーリーのある振付本当に巧いよね。仕草のひとつひとつに意味があって、かっこよくて、しかもドラマティックに盛り上がる。

でも。
……樹里ちゃんと西村さん……だいぶ身長違うのね(T T)。ほのぼのと可愛い二人(ラストは悲劇だけど)だったけど、さすがに踊りにくそうでした。
樹里ちゃんも、女性パートのタンゴはまだまだ本業とは言えないしなー。東山&優里ペアがお見事だっただけに、同じ振付はちょっと苦しかったかも。
そうはいっても、さすがにダイナミックさでは圧勝でしたけどね(^ ^;。




1幕ラストは、男性5人で「風見鶏」。
ダンスは無しで、ワンフレーズづつの歌い継ぎでしたが、
レミゼ組三人、元四季一人。さすがに聞き応えありました。

また長くなっちゃったので、2幕はまた後日〜(←全然急いでないし)


品川プリンスホテル ステラボールにて、「CLUB SEVEN 5th Stage!」を観てまいりました。

とりあえず、エイプリルフールに書くべきネタが見つからなかったので、2日の日付で真面目に(←無理)感想を。
(そういえば、今日は一日入社式だのなんだのかんだのと行事が多くて忙しく、嘘のひとつもついている暇がなかったな………/涙)


さて。

「CLUB SEVEN」は、もとはといえば品川プリンスホテルのCLUB-eXで行われていたワンドリンクつきのパフォーマンス。
基本的に男5人、女2人の7人構成。トータルクリエート&振付は基本的に玉野さん。女性はほとんどがタカラヅカOGです。

初演(1st)は、今も続く玉野・西村・原の3人に、吉野圭吾・NIRO(新納慎也)・久城彬・楓沙樹というメンバー。

2ndは、NIROくんが東山くんに替わり、女性陣は風花舞、三咲レア(蘭香レア)。

3rdは、吉野さん・東山くんが抜けて泉見洋平さん、桜木涼介さん。女性陣はタータン(香寿たつき)と笹本玲奈ちゃん。

4thは、泉見くんの替わりに吉野さん。このときはなぜか女性陣が3人(初風緑・風花舞・蘭香レア)になって、総勢8人に。はじめてCLUB-eXからステラボールに移ったときだったので、会場が広いから…だったのかもしれません。
ただ、やっぱりフォーメーションは7人の方がすっきりするし、タイトルもタイトルなので、やっぱり7人の方がいいんじゃないかなあ〜、と、今回観て思いました。舞台もあまってはいなかったしね(笑)。

基本的には年一回のお祭りですが、去年は1月に4thをやった後、夏に「CLUB SEVEN Section LIVE」としてスペシャル版を上演。
8月末の日記にも書いていますが、あれも素晴らしい公演でした〜(幸)。


…まぁ、そんな経緯を経て、
7人に戻ったCLUB SEVEN。

「CLUB SEVEN」の顔ともいうべき玉野和紀と西村直人、
おなじみの原知宏&東山義久、
今回初参加の阿部よしつぐ、樹里咲穂、星奈優里、の、7人。
個性溢れる7人衆。

……いやぁ、楽しかったです!!

幕開きは、毎回変わらぬ「CLUB SEVEN」。
黒い衣装に身を包んだストイックなダンス。痺れるほどかっこいい、とはこのことか!と毎回思います(はぁと)。これが入ると、“うおおぉぉぉ、CLUB SEVENだぁ〜っ!!”っと気持ちが盛り上がる盛り上がる♪♪


次は「LADY MARMALADE」/「ICE DANCE」/「スケッチ Bar・ムーランルージュ」/「ドレミの歌」。
樹里ちゃん優里ちゃん、二人で派手派手なボンテージ&カラフルな鬘に身を包み、階段の上でソウルフルに歌う。
樹里ちゃんが歌手なのは今更書くまでもないですが、優里ちゃんが上手くなっていたのに驚いちゃいました(←この上なく失礼)。もしかして、卒業してから物凄く伸びたのかな…?

また、ダンスのしなやかな美しさ!(感)
Dancin’ Crazyの優里ちゃんも美しかったけど、今回の美しさはまた格別!でした。っていうか、樹里ちゃんと並ぶと、優里ちゃんのダンスのラインの美しさが際立つような気が……するのは、気のせい……?樹里ちゃん、がんばれ……(ダイスキだよ)

一曲終わると、お約束のメンバーが出てくる。
イケイケねーちゃん系の衣装を着こなして、お化粧もばっちり!の、5人のむさくるしい女の子たち。

いやはや。
…玉野さんの違和感のなさはなんなんだいったい。
西村さん・原くんのお約束どおりな気持ち悪さはいいとして、
東山くんの、無駄な美貌はいったいどうしたらいいのやら。
そして、
阿部さん……洒落になってません。樹里ちゃんより可愛くなってどうするんですかアナタ。今あなたがやっているのはネタですよ、ネタ!(T T)。笑いを取ろうよ、笑いを……(涙)。

7人で一曲踊ったら、そのままコントへ続く、
これが「CLUB SEVEN」のお約束。

「Bar ムーランルージュ」。
玉野さんが、気弱げな中年男の客。
西村さんと原くんが、お約束のホステス。

まぁね、玉野さんと西村さんが揃ってて、面白くないはずがない。
すっごいくだらないネタばっかりなんだけど、それでもなお、一挙手一投足のすべてがとにかく笑える。
そして、原くんがとぼけた味で茶々を入れつつ、暴走しがちな二人をやんわりと抑えてくれる。この絶妙なバランス。

ああ、CLUB SEVENだなあ〜、と実感する瞬間その2。

オチの付け方もさすがでした。
オチのネタとして歌う「ドレミの歌」の替え歌っぷりが最高です。ああいうのは本当に誰が考えるんだろう…玉野さんなのかなあやっぱり…。


次は「家族三態」。
怒涛の「家族」「朝食」ネタ3連発!でした。

毎回「家族の食卓」ネタって必ずあるような気がするのですが、
毎回私は超爆笑してしまいます。よくあんなに色々思いつくよなぁホントに。

「全力家族」は、妻・樹里、夫・東山、息子・阿部。
いきなりヒョウ柄の服きて駆け出してきた樹里ちゃん。
関西弁でのコントでしたが、東山くんもそういえば関西人だったね。息もぴったりで、このまま二人でよしもとに立っても驚かないぞ、という見事さでした。
阿部くん、ついていくのが精一杯………(涙目)。

とにかくなんでも全力でやる、という設定の家族。舞台上を所狭しと駆け回り、走り続け、叫び続け………
樹里ちゃんも東山くんも、喉強いよなあ、と感心しました。

とりあえず、「なんてあたしは美しいんだ!」と感動にむせび泣く樹里ちゃんと、その樹里ちゃんに「おかあちゃん今日もほんまキレイやなー!」と破顔一笑して抱きついてくる東山くんがめっちゃキュートでカッコよかったです♪♪♪

「ミュージカル家族」は、妻・星奈、夫・玉野。
それこそ「The Hills Are Alive…」ばりの勢いで朗々と唄う優里
ちゃん。いやー、ほんっとーに歌うまくなったよね(*^ ^*)。美しい朝の感動と、旦那への愛を歌い上げる、美しい妻そのもの、でした。

旦那の玉野さんも、椅子に足をかけて高らかに愛を歌い上げまくり。素晴らしかったです。はい。

玉野さんに「もういらない」といわれて、衝撃のあまり床にひれ伏す優里ちゃんの、“不幸”の背負い方が最高に見事でした。さすが、“薄倖な女性をやらせたら宝塚一”と現役時代に思っていた私の目に狂いはない!(←そんな役観たことないだろう)

それにしても、優里ちゃんのくるくる巻き毛に白いリボン、白いレースのエプロン姿がめっちゃ嵌ってました。ああ、ロリロリなたっぷりスカートから覗く細い脚……(←落ち着け)


「ヒップホップ家族」は、母・樹里、息子・西村&原。
樹里ちゃんは子持ちのバツイチらしい。
そして、息子はあり得ないほど良い子たちだった(汗)。

こういうネタを3回やるとなると、どうしても二人しかいない女性のどちらかが2回やるか、男性の誰かが女装するか(どちらかといえば、今まではこっちが多かった)になるわけですが。
今回、樹里ちゃんが2回やるっていうのは最初から決まってたんだろうな、とすんなり信じられる巧さでした。

樹里ちゃん、本当にあなたは素敵なエンターテイナー!!

そして私は、ミュージカル家族の“薄倖な妻”優里ちゃんに惚れました。
あんな素敵な嫁さんがほしい…(←おい)



とってもとっても長くなりそうなので。
まだ一幕の半分くらいしか書いてないんですけど、ここでいったん切ります。
続きはまた後日♪



ウメちゃん、
ウメちゃん、
ウメちゃん、

だいすきだから、

わすれないから、

まっているから、


ウメちゃん………(T T)。



東宝の休演は、やむをえないと思っていました。
丸々一公演を終えて、役替りをするようなもの。今の大劇場→東宝の短いお稽古期間では、多分無理なんだろうな、と(理性では)予想していたので。

でも。

でもまさか、梅田芸術劇場「雨に唄えば」まで休演とは…。



不安で心配で、いたたまれない。
いやなことばかり考えてしまう。



好きな人が楽しそうなら、しあわせ。

好きな人が辛そうなら、哀しい。

好きな人ががんばっているから、がんばれる。

ファンとはそういうもので、
私はそんな、単純なファンで。





でも。

ウメちゃんはがんばっているだろう(絶対!)から、

それが心の底から信じられるから、

だから。




がんばれ、ウメちゃん。



……待ってる、から。




日生劇場にて「ベガーズオペラ」を観劇してまいりました。



演出はジョン・ケアード。1985年にトレヴァー・ナンとの共同演出で「レ・ミゼラブル」をいう名作を生み出した彼が、1992年にロイヤル・シェイクスピア・カンパニー(RSC)で上演した「ベガーズ・オペラ」が、今回上演された作品のオリジナル。
日本では、2006年の初演に続く再演。

出演者は内野聖陽、橋本さとし、島田歌穂、笹本玲奈、森公美子、村井國夫、原田優一、入絵加奈子、近藤洋介、他。(順不同です失礼があったらすみません)



私は、初演は観たいなーと思いながらスケジュールが合わず(T T)。今回は絶対観るぞ!と思っていたのですが、3月は諸々忙しく、やっと取れたチケットは1階前列のサイドブロック真ん中。この作品は通路際が楽しいと聞いていたのでちょっと残念だった(贅沢!)のですが、そんな贅沢いうなよ、って感じでした(^ ^;;
ああ〜、でも次は舞台上の席に座ってみたいなあ〜。



メインのストーリーは、真矢みきさんの花組で上演された「SPEAK EASY」の原作であるブレヒト&クルト・ヴァイルの「三文オペラ」と同じ。劇中劇で語られる“マクヒース”(McHeath、ヒースの息子という意味だそうです。SPEAK EASYでは“マクフィス”になってたよなー確か…)と、彼をめぐる女たちの物語。

そのマクヒースの物語を「ベガーズ」が演じる、一夜限りの興行。
それが、物語の大きな枠となっています。


ベガーズは、普通“貧民”とか“乞食”と訳されますが。本来は物乞いではなく、大道芸人や曲芸師などのことだそうです。
つまり、雪組公演で高らかに歌い上げられる「サーカス魂」とは、すなわち「ベガーズソウル」なんですね!

テント小屋で芸を見せている彼らが、大きな伝統ある劇場で芝居を上演する。
緊張と不安と、そして、自信。

ドキドキしながら役を演じて、そこここでふと“ベガー”に戻る、そのオン/オフの演出が非常によくできていて、興味深い作品でした!



役者は本当に粒ぞろいでした!
ジョン・ケアードが「全員オーディションで選んだ。歌唱力はもちろんだが、台詞劇の側面も重視して、シェイクスピアの長台詞を課題に出した」とコメントしているとおり、本当に全員が、気持ち良いくらい上手かったです。
あれだけの人数の出演者全員が、きちんと台詞術を身に付けている!それ自体、日本では結構珍しいことなんですよね、哀しいことに。さすがはRSCの顔、素晴らしい仕事をしてくれたと思います。


なんといっても内野さんが素晴らしかった(*^ ^*)。「エリザベート」初演の頃を思うと、嘘みたいな素晴らしい歌声。ストレートプレイは元々本業だし、本当に素敵でした。色っぽくて、ワルくって、いい加減だけど陽気でおおらかな、愛すべき男。女が愛さずにはいられない、男も憎むことができない、エネルギーに溢れた魅力的な男。


「三文オペラ」では彼の妻は3人でしたが、「ベガーズオペラ」ではちょっと曖昧。笹本玲奈(ポリー・ピーチャム)、島田歌穂(ルーシー・ロキット)、入絵加奈子(ジェニー・ダイヴァー)がメインだけど、他の女性たちも皆恋人だった時がある感じ。

それにしてもポリーが可愛かったよぉおぉ(はぁと)。
ルーシーの歌穂ちゃんもさすがの演技力で実に実に可愛くてけなげで素敵でしたが、やっぱり笹本ポリーの天然の可愛らしさは格別!!でした。いやー、可愛い。歌も素晴らしかったし、眼福耳福。


ポリーの両親(Mr.&Mrs.ピーチャム)橋本さん&森クミさんも本当に良かった。もちろん、ルーシーの父親ロキットの村井さんも別格に上手かった!(感涙)
あと、印象に残ったのは原田優一くんのフィルチ(ピーチャムの部下?)。いかにもアンジョルラス役者らしい硬質の美声で、すごかったです。ああ、「ミス・サイゴン」のクリスが楽しみだー。



と、役者ひとりひとりや、劇中劇の“その場面”に出ていないベガーズのうろうろした動きなどの細部は非常に非常〜〜!に面白かったのですが。
一つの公演としての「ベガーズオペラ」という作品については、私は残念ながら、ちょっと世界に入りきれなくてもどかしい思いを抱えて帰宅いたしました(T T)。

うまく嵌れなかった一番の原因は、ちょっと体調を崩していて、最後まで集中できなかったことがあると思うのですが…(祐飛さんのディナーショーに行くために仮病を使ったら、罰があたったらしい/泣)、

たぶん、それだけではなく。

劇場全体に漂う「馴れ馴れしさ」というか「猥雑感」に、初見ではついていけなかったせいではないか、と。

この作品では、“劇中劇”的に出番外のベガーたちも、衣装替えがあるとき以外は殆ど袖にひっこまないで、ずーっと舞台端や客席通路あたりをうろうろしているのです。
舞台を降りた、一人の“ベガー”として。

でも。

…席が前過ぎたせいか、うろうろして喋ったり観客にちょっかいをかけたりする“ベガー”ズに気をとられて、劇中劇に集中できなかったんですよね。したがって、そこで語られる台詞も全部は頭に入らなくて。
なんというか、作品世界全体を見渡すことができなかったんですよね……。

体調が万全で、きちんと集中してみていたならば、そんなことはなかったのかもしれません。
あるいは、席がもう少し後ろ、あるいはグランドサークルあたりの見やすい席だったら、ベガーたちに惑わされることなく“舞台”に集中できたでしょうし、もっとわかりやすかったのかもしれない。

あるいは、これだけ長くて複雑な構造の作品なので、せめて2回は観ないと理解できない、ただそれだけのことなのかもしれない。


…でも。

私の周りの、明らかにリピーターらしき人たちの中に、私を含めて何人か、完全においていかれたひとたちが居たんですよね。

その、リピーターの盛り上がりようとおいていかれた人たちの遠い眼っぷりとの、温度差が。

……せっかくの前方席なのになーーーー、という感じでした。



何が悪い、ということもないのに。
脚本は興味深いし、俳優と演出は最高級の素晴らしさで、音楽も悪くはない、イマドキ珍しいほどよく出来た作品、のはずなのに、

何か物足りない、得るものがなかった気持ちで家路につきました。

……内野さんのあまりの魅力に、くらくらしながら。
(それで十分なんじゃないのか…?)



また2年後に再演があったなら、

今度こそ(!)体調を整えて観劇したい、と思いました。




なんだか、このタイトルで日記を書くのは久しぶりのような…。



■花組大劇場公演配役

最近の公演は集合日前に主要配役が出ることが多かったので、なんだか「主役も含めて全員を集合日に発表」というのが久しぶりのような気が…。

まとぶんのトマスと彩音ちゃんのアノウドは当然として、

壮ちゃんのトゥスンも、ポスター見て予想していたとおりなんですが、

…祐飛さんのイブラヒムって、誰?

トゥスンのお兄さんと同じ名前なんですけど、本当にその役?それとも、名前はたまたま一致しただけで(アラブ系ではありふれた名前っぽい)、狂言回しというか語り手みたいな扱いになるのかなぁ?「あさきゆめみし」のスダマみたいな。

…谷さん、お願いですから祐飛さんには芝居をさせてあげてください!それしかとりえが無いんで、お願いしますm(_ _)m。

セットの上でひたすら歌を歌ってる、とかそーゆーのナシで〜〜っ(T T)。


個人的には、ナイリの桜一花ちゃんがものすごく嬉しいです。
新公は誰がやるのかしらー?



そして。

■花組卒業生

舞城のどか
貴 怜良

お二人が、この公演をもってタカラヅカを卒業されます。


みほちゃんと、かりやん。84期のお二人を、本当の意味で心に刻んだ公演は、偶然ですが同じ「マラケシュ/エンター・ザ・レビュー」でした。

「マラケシュ」で金の薔薇のみほちゃんに見惚れて。
「エンター…」で、猛獣かりやんのナイスバディと、マヌカンみほちゃんの黒い肌に惚れこんで。
とにかく大好きな公演で、博多座まで行って、贔屓組でもないのにいったい何回観たのかと突っ込みたい感じだったんですよね。


あれから、………もうすぐ、3年?


花組さんのショーでは、ダンスシーンは常にみほちゃんセンターで観ていた私
最後の作品、お芝居で役名がないのがちょっと残念ですが、ショーで大活躍してくださることを心から祈っています。
っていうか、草野さんよろしくねっっっ!!

かりやん、お芝居での役名はオスマン。
「蒼いくちづけ」のゴダルミング卿がとてもダンディで素敵だったかりやん。谷さんよろしくねっっっ!!もちろん草野さんもね!


お二人の前途に幸あらむことを祈りつつ、


あんなにも賑やかな、多士済々だった花組84期が、
…まっつ一人に、なるんですね……(寂)。



■娘役転向

天宮菜生ちゃんが、今日から娘役に転向されり。

……驚愕。

蒼いくちづけ、クリスもノエルくんも良かったのになあ…。なんだかとっても勿体ない気がします。確かに美人さんだし、上級生になると今みたいな「美少年」枠の役が回ってこなくなってしまうので、転向は正解なのかもしれませんが…(涙)。

ううう、ああいう正統派美少年がやれる人って案外少ないので、貴重なキャラクターだったのにぃ〜(涙)。

まぁ、でも、ホント美人さんなのは間違いなし!なので。
ご活躍を心からお祈りしています。

しかーし。
(華月)由舞ちゃん、(白華)れみちゃん、湖々マリアちゃん…
ただでさえ89期は娘役豊富な期なのに、さらに一期上に(華耀)きらりちゃん、一期下に(野々)すみ花ちゃん、か。……戦国時代だなあ花娘…。



花組青年館劇場公演「舞姫」。

この作品の主題歌を聴くたびに。
「マイネ・リーベ(我が恋人)」と「マイヒメ」の韻の踏み方に、植田景子さんのこだわりを感じていました。


細かい伏線のひきかた、拾い方にも同じように。
1幕が終わったときは、どうしてわざわざ豊太郎を法科に替えたんだろう?と思ったのですが、「日本を西欧列強に認めさせるための第一歩として」日本国憲法を制定する、というテーマを与えることで「日本のために」という豊太郎の動機をわかりやすく強化したりとか。
さすが景子さん、と思った部分はとても多かったです。


森林太郎の経歴をみると。、
1884年(明治17年)8月、独逸へむけて出航。目的は陸軍衛星制度および衛生学の研究。
ミュンヘンで“近代衛生学の父”ペッテンコーフェルに学び、ベルリンへ移ってコッホに師事。
1888年(明治21年)9月、日本へ帰国。27歳。
1889年(明治22年)2月11日、大日本帝国憲法公布。
1890年(明治23年)11月29日、憲法施行。第一回帝国議会開催。

#舞台では出国も帰国も3月になってましたが、これは何か理由があったのでしょうか…?



ちなみに、この「1989年」は、昨年散々愉しませていただいた「第三回パリ万博」の開催された年。

つい最近観た「WILDe Beauty」のオスカー・ワイルドに関していえば、ちょうど「幸福な王子」や「ドリアン・グレイの肖像」を書いた頃。たぶん、彼の作家としての最初の絶頂期だったはず。
他にも「蒼いくちづけ」の元ネタになったブラム・ストーカーの「吸血鬼ドラキュラ」が書かれたのが1897年、など、西欧において、さまざまな「世紀末文学」が生まれた時代。

…去年も書きましたけど、19世紀末ってよっぽど面白い時代だったんでしょうねぇ…。




なーんて感慨にふけりつつ。
とりあえずは、他の登場人物について印象などを。


 
■ドクトル・ヴィーゼ:ふみか(紫峰七海)

この人は本当に声がいい!

みわっち、まっつ、みつると声の良い人が揃った公演でしたが、その中でも突出して良い声なんですよね。深みがあって、柔らかくて(*^ ^*)。
「蒼いくちづけ」のデイヴもステキでしたけど、このダンディなドクトルの素敵さは、また格別♪でした。素顔のお稽古写真とか見ると、丸顔で結構童顔だと思うのに、どうしてあんなにお髭が似合うんでしょうか!?ヒューブナーさん以来の髭萌えモードがおさまる気配もないねこには、たいそうな凶器でございました。

そして、個人的に最高だったのは「明治天皇の声」♪♪いやぁん、幕開きからいきなり美声だったのでうっとりしちゃいましたぁ(壊)♪


 
■豊太郎の母と妹:梨花ますみ、舞城のどか

みとさんはさすがの貫禄でした。厳しい母、という役はホントぴったりですね…。懐剣を掲げてあとずさる足どりがスムーズで、美しかったです。

みほちゃんの朗読も、自然でよかったです。ただ、清さんはなにもみほちゃんがやらなくても、と思ったのは事実かな…。もっと何もわからないような下級生がやったほうが自然だったと思うのですが。…若い子だとあれだけの台詞が言える子がいないのかな?

みほちゃんには、ぜひベルリンのショーで踊ってほしかった!(涙)。


あと、作品の構造的なところからみても、なぜこの妹を追加したのか理解に苦しむところではあります。
説明役が必要なら、父親の妹あたりでも良かったのでは?

原作では確か、母親が亡くなったことで“日本に帰る理由が無くな”り、エリスと暮らし始める、という展開だったはず。

だって。
…残された妹がいたら、もうちょっと真剣に帰ろうとするんじゃないのか豊太郎?兄の庇護がなければ、か弱い女の身、下手すれば悪い親戚に女郎屋に売られかねないのに(←まさかそんなことはないか?)
妹がいるにもかかわらず、国に帰るための努力をまったくしない豊太郎ってどうなの?という気がしてならなかったのですが。そのあたり、景子さんはどういう考えでこの役を設定したんでしょうか…。


 
■エリスの母:光あけみ
良い役でしたね。1幕のキツくて冷たい母親から、2幕ラストへの変化が自然で、“一人の人間”に見えたことに感心しました。
エリスの母らしいエキセントリックさ、娘の中にある狂気への恐怖…それは、自分の中にもあるものだからこそ余計怖いのだ、というところがちゃんと押さえられていたところがさすがだと思いました。
エリスの透明感を強調するために、いっそ不愉快なほど“人間”らしい芝居ができる人が必要だったのだと思います。あまり舞台に立たない方ですが、専科さんも人数へってしまったし、もっといろんな舞台に立っていただきたいです。


 
■マチルダ・フォン・ヴィーゼ:舞名里音
今さらですが。ご卒業おめでとうございますm(_ _)m。
美人さんで声も悪くないし、もうすこし台詞術が備わっていればいろんな役が出来ただろうに…ともったいない感じがしました。
でも、最後が良い役でよかったですね!

さすがにふみかちゃんの娘にはさすがに見えませんでしたけど(^ ^)、ふみかちゃんは本当に「可愛い娘」にメロメロなパパ、って感じで可愛かったなあ〜(*^ ^*)

 
 
■岩井:マメ(日向燦)
モデルは作者である森林太郎なのか、それとも同門(コッホの衛生試験所)の北里柴三郎なのか…。最終的には脚気問題で対立する東大学派(森)と北里ですが、どうなんでしょうねぇ。

ま、それはともかく。
マメちゃん、さすがでした。ちょっとやりすぎ、って思ったところもありましたが、ああいう役を中途半端にやるとかえって見苦しいし。あの自然さはさすがでしたね。
ただ、私はどちらかというと岩井くんに近い(人の意見に逆らわない)タイプなので、なんだかすごく感情移入してしまって、結構苦しかったです。…マメちゃんはああいうタイプではないのかな。実際にああいう性格だったら、あの役やるのはかなり辛かったんじゃないかと思うのですが、どうなんでしょうね。


 
■黒沢中尉:ちあき(白鳥かすが)
■丹波と大河内:夕霧らい、祐澄しゅん

大柄な二人にはさまれた小柄なちあき。あまりにも可愛らしくて、ケースに入れて飾っておきたいくらい気に入りました。
月組時代から、それこそ「血と砂」に最下で出ていたときからずーっと見守っていた人なので、花組さんであっちにぶつかりこっちで転んでいるのを見る度に涙がでるほど愛おしくなります。
がんばれちあき。

大きな二人は、揃って素晴らしい声してますねぇ(うっとり)。エンカレで美声を堪能させていただいたらいらいはもちろん、しゅんさんも巧い!台詞も明瞭だし、歌もいい。ちゃんといじわるそうな声になっていたところが素敵でした。
姿もいいし、立役としては得がたいお二人ですね♪


 
■フラウ・シュミット:愛純もえり
たいした出番があるわけではありませんが、印象的な声でした。
もっと上級生だとばかり思っていたのに、若いんですね!巧いなあ…。

 
■ホットワイン売り/青木英嗣:彩城レア
エンカレで気になった人の一人。今までも何かと使われてはいましたが、今回ひさしぶりにゆっくりソロが聞けて嬉しかったです。笑顔が可愛い♪
青木くん役は、ちょっとがんばりすぎちゃったかな?という気もしましたが、良かったと思います。もっと小柄なイメージでしたが、案外スタイル良いいんですね。制服が似合ってカッコよかったです。


 
■踊り子さん:瞳ゆゆ、白姫あかり
かわいい………かわいい………かわいい!!
それにしても、ヴィクトリア座の演目のあまりのロリータぶりに驚きを隠せません。もう少し大人っぽい演目にしたほうが良かったんじゃないかと思うんですが……>景子さん


 
初輝よしや
…やっと見覚えることができて嬉しいです。次の大劇場でも見分けられますように!(ターバンに髭つけられたら絶対わからないだろうな…涙)

輝良まさと
いろんな役で出ていましたが、常に目立ってましたね。かっこよかった!台詞はまだちょっと棒でしたけど、これからが楽しみです。


 

花組さんの下級生もだいぶ覚えたし、大劇場公演にむけて準備はばっちり!!…かな?

この作品については、まだまだ書きたいことがあるので、たぶんまた書くと思いますが。とりあえず、キャストについてはこのあたりで。


.
銀座博品館劇場「WILDe Beauty」、千秋楽おめでとうございます。
いやあ、面白かったです。幸せな体験でした。


オスカー・ワイルド、という作家について、私はほとんど何も知りません。
かろうじて読んだことがあるのは「サロメ」のみ。「ドリアン・グレイの肖像」をはじめ、あらすじくらいは知っているものもありますが、実際に読んだことはありません。あ、「幸福な王子」は絵本で読んだけど、あれを書いたのがワイルドだったとは今回初めて知りました。
アイルランド生まれだったことも、最後の裁判のことも、それにいたる経緯についても、ほとんど知りませんでした。なんとなーく、いろんな意味で妖しげなイメージはもっていたのですが、詳しいことは何も。
むしろ、「サロメ」の挿絵を描いたオーブリー・ビアズリーの方が詳しいくらいで。



だから。

荻田さんがワイルドを取り上げる、と聞いて、ちょっと意外な気がしていたのですが。


…すいませんごめんなさい。ワイルド、読んでみます。はい。
と、ひれ伏したくなってしまいました…。



でも、荻田さんが本当に描き出したかったのは、「オスカー・ワイルド」という一人の人間ではないのだ、と思いました。
彼が描きたかったのは、『人間は、絶対的な“美”に全てを捧げることができるか?』だった。
それはたぶん、月組DC公演「A-“R”ex 」の副題、如何にして大王アレクサンダーは世界の覇者たる道を邁進するに至ったかと、たぶんまったく同じ問いかけだったのではないでしょうか。如何にして、美の伝道者オスカー・ワイルドは、美を追求する道を邁進するにいたったか?、と。

父によって天賦の才を与えられ、
母によって自分の役割を規定され…
彼自身、“美の伝道者”であり続けるためのさまざまな見栄に疲れ果てる瞬間もあったかもしれない。
それでも、彼は諦めない。「一人の人間」であることに価値を見出すことができないままに、破滅へ向かって走り続ける。

植田景子さんの「舞姫」で、太田豊太郎が「私という人間は、(母や友によって)望まれるとおりに演じる役者のようなもの」と述懐するのとまったく同じ感慨を、荻田作品の登場人物は常に抱えて生きている。ただ、荻田作品の登場人物は、そんなわかりきった青臭い台詞をわざわざ吐かないことと、植田景子作品の登場人物ほど「リアル」に描かれていないだけ。
太田豊太郎は、その台詞を独白した後、自分の来し方を見て「新しい生き方」を模索しはじめる。
たまたまそれがエリスとの出会いと重なったこともあって、「新しい生き方」の象徴としてエリスを愛し、逆に「エリスを愛する自分」に酔うことになる…。


オスカーは、違う。最初から、「美の伝道者」であるために見栄をはり、欺瞞でかためた自分の姿を愛することはない。
そうやって「有名な」ひとびとにもてはやされる自分というもの、「名誉ある」交際に長けた自分自身を嫌悪し、唾棄すべきものと思いながら、そこを離れて“新しい生き方”を探そうとは思わない。
逆に、彼は『その道』を極めることを望む。

極めるならば、それが真実へ続く道だと思っているから。



荻田作品の中で、登場人物自身が「創造する」ことについて説明的な台詞を吐くことはありません。
むしろ彼らは、「創造する」ことを汚いものであるかのように語ることが多い。それは排泄物なのだと。美を追い求めることは、「それと共に生きる」「自分が美しいものになる」ことが目的なのであって、「自分が美しいものを生み出す」ことに重きをおいてはいない。
むしろ、自分が「排泄物」として棄ててしまいたいものを、他人が褒め称え、崇めることに我慢ができない、そんな気分が強い。

荻田さん自身が、『なんでも好きなことをやれる』はずの外部舞台で、人間の汚い部分をことさらに引きずり出し、気分が悪くなるような昏く醜悪な物語を愉しげに、まるでその醜悪さこそが気持ちいいかのようにさらけだし、見せつけたがるのは、この「ワイルド・ビューティ」にいたる前段階だったのかな、と思いました。
自分が生きていくためには吐き出さなくてはならない「排泄物」だから、どんなに醜悪なものでも表に出すしかない。そんな、ギリギリの「クリエーター」。

彼と波長が合う人と、合わない人と。「醜悪なものにまみれた美しさ」こそが美だ、という主張にのれるひとと、のれないひと。そんなことを考えながら、ワイルドの嘆きを聞いていました。



オーブリー・ビアズリーと、その姉・メイベルとの、ギリギリの会話。
決定的なことは何も掴ませない、それでもはっきりと「あのうわさ」をあてこすっている会話。
二人の間に流れる愛情と、恋情と、欲望と、そして絶望と。
死にゆく弟。姉を置いて逝く弟。共に死んでくれない姉。共に死んであげられない姉。
そんな、直接的な言葉のいっさいない、切なすぎる姉弟の対話。
お互いに相手の目を見ることなく、手を握り合っても目線はそらしたままで、
「ねぇさん、…」と。

それが実際に彼の枕元で交わされた会話だったのか、それとも、メイベルの頭の中で鳴りつづける嘆きなのか、そのあたりは曖昧に濁したまま、場面は移り変わっていく。
オスカーの最後の恋人、ボジー(アルフレッド・ダグラス)。
ボジーを演じる浦井くんが、本当に凄い、と、千秋楽になってあらためて思いました。
「野心的な目」と宮川さんが歌う、オスカーの記憶の中のボジー。
ギラギラと瞳を輝かせて、破滅的な快楽に彼を誘う青年。


“軽妙な受け答え、豊富な話題、一風変わったファッション”
“真面目そうな貌をして、実はへんなヤツ”
そんな、「若い頃のオスカー」を演じる浦井くんの、飄々としてどこかつかみどころのない青年ぶり。野心的な言葉の数々も、わがままも、「まぁ仕方ないか」と思わせる、周囲の愛情を享けるに足る存在感。
そんな浦井くんが、ファッションもメークもそのままで、悪魔的な魅力を湛えた美青年・ボジーを演じる。表情と、声と、変化をつけられるのはそれだけなのに、まさに別人として出現する、抗いがたい魅力。

どちらの青年も、宮川さんが演じる“晩年のオスカー”の頭の中から出てきたもの、“晩年のオスカー”が記憶して(たぶん少し美化していて)いた自身の青年時代と、自分を捕らえて離さなかったボジーと。
彼(“晩年のオスカー”)の中で、その二人は『うつくしきもの』という同じポジションに置かれている。

そして、彼は、『うつくしきもの』のために全てを喪ったことを、悔いてはいないのだ。
それは彼にとっては究極の幸福。

『美』のために全てを捧げた、と思うことができること、そのものが。




繰り返し歌われる「塔の上の幸福な王子」の歌。
『うつくしきもの』のために、自分自身の持てる全てを捧げることは、彼にとってあまりにもアタリマエなことだから。


副題にもなっている「幸福な王子」が、最初から最後までほとんど出てこないこと、
むしろ、副題に「肖像画」が入っていないことが不思議なほど、繰り返し語られる「肖像画」というものに対する恐怖心。


その象徴が、メイベルが大事に包んで持ってきた「オーブリーが最後に描いたオスカーの肖像画」だったのだ、と、納得しました。



一番最後に、肖像画の包みを解くラストシーンが、あまりにも印象的で。

出てきたものは、ほぼ予想通りではあったのですが、
それをのぞきこむ宮川さんの、浦井くんの表情に、

「金の肌も、サファイアの瞳も、何もかもはぎとられた」…いえ、「何もかもを捧げた」、幸せな王子の貌が

たしかに浮かんでいたから。



とまらない涙の向こうに、オスカー・ワイルドの「幸福」が。

その幸福を見守って、その足元に息絶えるつばめの、「幸福」が。




荻田さんって、本当に子供のように残酷だ、と思いながら…





宝塚花組公演「舞姫」。

さすがは、予定になかった再演東上を実現させただけのことはある作品でした。おかげで、書きたいことがとてもたくさんありすぎて、とても困っています(^ ^;

うーん、先にキャストの話をさせていただこうかな。
とりあえず、メインキャストから。



 
■太田豊太郎:みわっち愛音羽麗)
優しくて包容力のあるトヨさんでした。
でも……ごめんなさいっ!!先にフォンダリさんを観てしまうと、なんていうか物足りないっていうか;;;;;;
上演された順番どおりに観ていたならば。たぶん、ねこの好みからして
トヨさんステキだー!と感動して、
ジャンヌさんの麗しさに惚れ込んで、
そして、フォンダリさんで完落ちしたはず…と思うのですが。

…残念ながら。
フォンダリさんの大人の魅力に落ちかけた身には、トヨさんはあまりにも青すぎて(汗)、ステキだけどもったいないなーと思ってしまったのでした(^ ^;ゞ。

いやいや、ステキでした本当に。歌はちょっと音程あやうかったけど、声がすごく好きです。中日のときも良い声や〜と思いましたが、さすがに持ち歌だけあってのびのび歌っていらっしゃいました。音響の悪い青年館で、よくあれだけ聴かせてくれたものだ、と感心しきりです。

 

■相沢謙吉 まっつ(未涼亜希)
や、やっと観れた………
お噂はかねがね、としか言いようがないくらい、散々きかされたまっつの相沢。愛が溢れすぎててヤバい、と評判だったまっつの相沢。
…惚れ直しました(うっとり)。

今なので正直に書きますが。先週末の初見時は、ちょっと物足りなかったのです、実は。
ま、バウでの評判を散々聞いていたので、期待しすぎたかな?という感じで。それもあって、最初日の日記には、まっつのことは何も書かなかったのですが。
一幕は可愛らしいけどあまり存在感がなく、二幕はあえて感情を抑えた演技のまま最後までいってしまって、ものすごく冷酷な人みたいになっていたのが気になって。
うわさに高い(苦笑)“豊太郎への愛”は確かにあったけれども、それがすごく身勝手な愛に見えたのです。豊太郎の幸せを祈る、彼のための愛ではなく、自分が彼を喪いたくないだけの恋情にみえた。

それはそれで、腐女子的には楽しいキャラクター造形でしたけれども、宝塚作品としてそれはどーよ、という正論以前に、あまり魅力的な男には見えなかったんです、私には。相沢単体で。

それが。

小雨降る千秋楽、
相沢が、ものすごく切なかった。


振り絞るように、全身で豊太郎への思いを歌いあげる相沢。
小さな身体をいっぱいにはりつめて、脚の先までびりびりと震えるくらい、
彼の思いが、鳴りひびいている。

エリスの心を叩く音。
空気が揺れる。
エリスの心を切り裂く刃。
時間が裂ける。

そして、とまる、とけい。



エリスの心が壊れてしまったことを知ったときの相沢の表情が、くるしいほど切なくて。


相沢の、
ロシア遠征の帰り道、豊太郎が天方大臣に「要職を用意するから、ぜひ一緒に日本へ帰ってもらいたい」と言われたときの嬉しそうな貌が、
「この仕事をやれるのは、太田豊太郎をおいて他にはいない」と言い切ったときの自慢げな貌が、
卒業証書をにぎりしめて「さすがは太田豊太郎だ!」というときの、憧れにみちた晴れやかな笑顔が、

壊れてしまったエリスにすがりつく相沢の背中から、彼自身の幸せな記憶が、こぼれおちていく。


相沢はたぶん、もう幸せにはなれないのだろう。
彼はずっと、このエリスを背負って歩いていくのだ、
たった独りで。


そんなことを思った、千秋楽の夜。



まっつがこの物語の後の相沢について、どんなイメージを持っていたのか聞いてみたかったな、と思いました。
誰のことも愛さずに、心を閉じて生き、友情と国への忠義に殉じる男のイメージを抱いたのは、私の気のせいなのでしょうか…?

逆に、みわっちの豊太郎は、なんだかんだ言いつつも可愛い嫁さんを貰って、穏やかでつつましい幸せを得るような気がします。
そして、なにかの折に「私はね、若い頃に激しい恋をしたんだよ…。全てを捨てても悔いはないと思ったんだ。それを、親友に止められてね…」と、穏やかに微笑んで話すの。

ねこの勝手なイメージですごめんなさいm(_ _)m。
でも。
みわっちの豊太郎には、エリスの哀しい運命を受け入れる大きさがあったと思うのです。
エリスという純粋すぎる少女の“夢”となるために必要な美しさと優しさと、
“夢の中の少女”のキレイすぎる純粋さに引きずられない、生きること、楽しむことへの熱意とおおらかな愛情と。

でも、まっつの相沢にはそのどちらもなかった。
自分に厳しく、他人にも厳しい、理想的な文官。
“支配者”層に属するものとして、“俗人”とは一線を画するようなところがあったのかもしれません。
国のため、日本のために、自分にはなにができるのか、そのことばかりを考えていた、男。

“国のため、日本のため”に、豊太郎を取り戻さなくてはならない、と、

異郷の女を愛しても、いい。
それでも、お前が本当に愛しているのは、日本のはずだ、と。
お前を本当に必要としているのは、異郷の女だけではない。
日本が、お前を必要としている。

そう、言いたかった。
大きな声で自慢したかった。自慢の友を。

人々の前で、大きな声で叫びたかった。見せつけたかった、
…これが俺の、自慢の友だぞ、と。


目の前で壊れたエリス。

目の前に居るのに、手の届かない、友。

信じていた理想、信じていた真実、

……扇を握って、微笑むエリス……


青年館で3回観て。
ラストの病院で、豊太郎とエリスの二人から相沢が眼を逸らすタイミングが3回とも違っていたのが印象的でした。
…私は、千秋楽の、ギリギリまで瞬きもせずにみつめていて、最後の最後に視線を落とす相沢に、泣かされました。



バウの評判で想像していた相沢は、もっとアグレッシブで情熱的に豊太郎を愛して(←おい)いるのだとばかり思っていたのですが…
あまりにも痛々しい、自分自身に厳しすぎる相沢で、イメージしていたのとは全然違っていたのですが、両方ご覧になった方は、どう思われたのでしょうか…?

 

■原芳次郎 みつる(華形ひかる)
原作にはいない、架空のキャラクター。私費で独逸へ留学した画家の卵。美大に通っていたが、実家が傾いて仕送りがとまり、貧乏生活を送っている…。
物語世界に必要、というよりは、かなり植田景子さんの趣味が入った、景子さんの思いを語らせるために創られた“芸術家”キャラですが。

いやー、良かったです。見た目もハマっていたし、なにより歌をがんばってた(*^ ^*)。今まであんまり印象に残ったことがなかったみつるくんですが、今回かなりキタなー、って感じです。
やりやすい役ではありましたけれども、それ以上によくがんばってました。
方言はちょっと違和感あったけどね。それじゃ石見じゃなくて土佐だよ、とちょっと思ったり。あれで、もう少しマリィへの愛が見えると良かったなーと(みつるくんの芝居というより、景子さんの演出がそこはちょっと省略気味な感じでしたが…)。

 

■マリィ(華月)由舞
芳次郎の恋人。踊り子だと聞いていたので、観るまでずっとエリスの同僚だと思っていたのですが、由舞ちゃんはもっと妖しげなところの“踊り子”さん、たぶんストリップダンサー系みたいでしたね。……由舞ちゃんならそりゃー稼げるだろうし、恋人だったら稼いでもらいたくないだろうなあ……(嵌り役)。

由舞ちゃんのショー場面がなかったのは不満です。きっぱり。
エリスのいるヴィクトリア座があまりにも夢々しく可愛らしい演し物だったので、おどろおどろしい『キャバレー』チックな由舞ちゃん出演のショー(できれば着物を脱いだみほちゃんメインで)があれば、あの時代のベルリンの光と影、って感じでよかったと思うのですが……
まぁ、その場面を入れるために削るべき場面もないので、仕方ないです。わかってはいるんですけどね(; ;)。


以下つづく。


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