東京宝塚劇場花組公演「太王四神記」。


最後の三連休も二日が終わり、あと1日で千秋楽です。

なんか、あらためて「こんなに(気分的に)盛り上がった公演は久しぶりだ…」と思ってしまった(^ ^;。だって、その前は谷さんの「目が点なアラビア」だったしさー(ショーは結構好きでしたが)。

その前は…あ、「MAHOROBA」か。あれも好きだった(遠い目)。でも、もう10年も前のような気がします。祐飛さんが花組に来て、まだ一年だなんてどうしても信じられない(T T)。
花組っ子たちが可愛くて可愛くて、別れるのがとてもとても寂しいです……(> <)。





さて。
今日、観劇して、いくつか初めて気づいた小ネタがあったので呟かせていただきます。

①ポンファ通り
トラジの店の女の子たちのコマーシャルソング。瞳ゆゆちゃんに抱きついてあちこち触っているルナちゃんは、その後客引きする女の子たちに順番に掴まり、最終的には花蝶しほちゃんに思いっきり抱きついて、そのまま店に引っ張り込まれ……そうになったところで、一緒にお店をやっている奥さん(?)に叱られて、連れ戻されていました。
こ、こんなドラマがあったなんて!!知らなかったぞーっ!


②二回目のポンファ通り
スリョンとして出ている姫花ちゃんは、タムドクが店に入る時に一緒に入った後、出てこないんですね。あれっ?と思っていたら、次の武道大会では天地神堂の巫女だった!(@ @)…いつの間に。


③ヤン王葬儀
赤族の遼かぐらちゃんとイルス(日向燦)。キハがタムドクに剣を向け、刺すときに思いっきりニヤリ笑いを浮かべて顔を見合わせていました。ワルいわ~~っ(*^ ^*)。

その後ろでおとなしく控えているチョク・ファン(祐澄しゅん)は、どちらかと言うと他の部族同様、タムドクが刺されるときには目を瞑って沈鬱な表情をし、助かったと知って微かな笑顔を浮かべます。ただ、他の部族と違うのは、笑顔をすぐに消し、顔を伏せるところ。赤い服を着たほかの人々に、タムドクが生き返ってホッとしている姿を見られてはまずいと思うんでしょうね。
見るたびに印象の違う人でしたが、ここ最近ですっかり「優しくて朴訥な、正直者の職業軍人」というキャラクターが定着したんだなー、と思いました。


④タムドクの帰還
ヒョンゴが「スジニは王妃にはなれない」ことを縷々説明するくだり。
チュモン(嶺乃一真)が、話を聞きながらヒョンミョンの腕に縋るようにして、『ねぇ、なんとかしてあげられないの?』みたいなことを訊いてました。それに対して、ヒョンミョンは心配そうにスジニを見守りながら、チュモンに対しては『仕方ないんだよ』みたいクールに突き放していて、めっちゃ格好良かった!!


…そんなところかな?
本当に観るべきところが多すぎて、毎回「…え?こんな場面あったっけ?」「こんなことしてたのっ!?」と何度も思う作品でした。そーゆーところはさすが小池さんです。
星組版も観られますように(^ ^)。





第2幕7場 ヨン・ホゲの帰還 ~ 愛のない結婚 (続き)

ヨン・ホゲの婚約発表を兼ねた、凱旋パーティ。

プルキルが、武力を握ったホゲに神器を探させるために仕組んだ結婚。
『子供を守るため』に、プルキルに従うキハ。

「神器が揃い次第、祝言をあげる」

ヨン・ガリョの宣言と共に、紫の服に甲冑を重ねたホゲとオレンジの衣装に身を包んだキハが、部下たちが居並ぶ中を進んでくる。

「本当にこれでいいのか」
「あなたこそ構わないの?」

目を合わせようともせず、静かに、深い絶望とともに語り合う二人。

「お前が産む子供の父親になれば、朱雀の神器は俺のもの」

遠いところを見凝めたまま、呟くように。

「子供が生まれるまでに、残りの神器を見つけて」

プルキルによって課せられた約束。
神器が揃ったら祝言をあげる。
子供が生まれるまでに祝言をあげ、ヨン家の子供として生んでプルキルから守ってもらう。二重・三重のはかりごと。
幾重にも二人を縛る、重たい鎖。

「愛のない結婚でお前は傷つかないのか」
「あなたこそ、他に好きな人がいるのでは…?」

背を向け合って問いかける、切ないまでに悲しい恋心。

「俺が愛したのは炎の巫女」

目を伏せて、

「俺を王だと言った女」

自らに言い聞かせるように。

「私が(お前が)愛したのは真の王。そうと知っても私を(お前を)抱く」

やわらかに揃うハーモニー。二人とも、あまり歌を得意とする人たちではありませんが、絶妙に声とピッチが合うんですね。デュエットの響きが、とても美しい。
すれ違う想いの美しさ。
ホゲはもう、キハにとっての「真の王」が誰であるかを知っているのに。それでも、どうしても諦めることができなくて。

「…偽りの愛に、この身をやつして…」



白華れみちゃんに迫られて、タジタジになっているチョク・ファンとか、きらりんと物凄く楽しそうにお喋りしているイルスとか、物凄く女たらしなアーサー(煌雅あさひ)とくどかれ上手なくみちゃんとか、月野姫花ちゃんをめぐる日高大地&大河凛のひそかな争いとか、花蝶しほちゃんをめぐる結構あからさまな争いとか、見所満載な場面ではありますが、
ここはやはり、ホゲ様とキハのすれ違いっぷりをしっかりチェックしないといけません!

ちなみに、チョク・ファンはれみちゃんに無理矢理(?)フロアの真ん中近くに連れ出された後、軽く乾杯して別れ、一息ついたところで今度は瞳ゆゆちゃんに引っかかってました(笑)。
「乾杯!」と軽くグラスを掲げたあとの、ホゲとキハのキスシーンは、以前のように目を背けたり不機嫌になったりすることなく、ただ穏やかに微笑んでいて、すごく大人っぽくなってました。なのにゆゆちゃんが触れてくるとキョドってみたりして、どうしてそんなに可愛いんだろうか…(汗)。



そうこうしているうちにホゲ様とその崇拝者たち(←おい)は舞台奥に向かって穏やかに談笑をはじめ、
フロアに残って人々から少し離れたキハには、小さな声がかかる。
「…ちょっと」
物陰からキハを呼ぶスジニ。

「もう一度タムドク様に会ってあげて」
タムドクの望みを叶えたい一心で、彼の愛する女に訴える。切ないけれども、傍にいられる女の心。

「私は、タムドク様に剣を向けた女。あの方の前からは消えました」
そのために、ヤン王は私にお命じになったのだから。タムドク様に、私を憎ませるために。


会話の流れで二人ともサビ城の姫であることが判明し、姉妹であることがわかる二人。
再会を約して、消えるスジニ。
舞台奥でイルスやチョク・ファンと語らっていたホゲが、ふと振り向いてキハを迎えに来る。
紗幕に隠れた溶暗の中、幽かに微笑んで二人を見守るチョク・ファンの寂しげな瞳に、大劇場での衝撃とはまた違う射抜かれ方をしてしまう自分は、単なるしゅん様ファンのような気もしてきます。



それにしても。
みわっちと彩音ちゃん。学年にして5年も逆転しているのに、違和感なく「姉」と「妹」でいられる二人が凄いなー、と思わずにはいられません☆





第2幕8場 玉座の間

タムドクにピンスポット。銀橋には出ずに、本舞台で歌うソロ。
見失った希望。
チュシンの王になるという目的は得た(与えられた)けれども、
『誰のために』というところが空白になってしまった…

ひびわれた心の底を、風が吹き過ぎていくばかりで。

『愛する人を疑ってばかり、愛とは何か疑ってばかり』

震える声でそう嘆くタムドクを、ここまで来てもまだ子供のままなんだな、と、哀れに思います。
愛することの苦しさを、はじめて知った男の子。
どんなに彼が苦しくても、それは誰にも助けられない。

『命掛けて愛した人の名は、キハ…!』



そこに現れる、“心優しい娘”、スジニ。

「私の、お姉さんに会って欲しいんだ…」

ただ、タムドクの笑顔が見たい、と、ただそれだけの一途な少女。

「キハ……っ!」

思いもよらない人物の登場に、驚愕を隠せないタムドク。

新人公演のだいもんは、ここで抑えきれずに嬉しそうに笑んだような気がしたのですが、私の気のせいでしょうか?
まとぶんは、むしろ“死んだ筈の者が生き返ってきた”かのような驚きよう(^ ^)。

「お腹の子供が目立たないように」
黒い服を着てきた、と告白するキハ。
ヨン・ホゲの子を身籠った、と言われて、自嘲的に微笑むタムドク。

カウリ剣の儀式で、一度は死を覚悟した二人。
「だが私は生き残り、お前も生きている。生きているから子供が生める、それでいいじゃないか」

たった一夜限りでも、お前は僕に、希望と勇気を与えてくれたのだから。
こんな僕でも、愛は得られるのだ、と。


愛を知らない二人。
愛されたことのない、愛し方を知らない恋人たち。

「命掛けて愛した人の名は……」

溜息と共に吐き出して。

誰のために?
誰のために諦めるのか、この恋を……?






第2幕9場 国内城内

タムドクの行動について議論する、ヨン家一党+プルキル。

狩に行って見知らぬ男を連れて戻ってきた。
なのに何も言わず、おとなしく勉強ばかりで、とても青龍の神器を見つけたとは思えない。

「そんなことより白虎の神器早く見つけねば!」
プルキルはだいぶ焦りが出ている。

「お前の水晶玉 もう信じはしない!」
プルキルをまっすぐに指差して、そう宣言するホゲ様は、めちゃめちゃ切れ者の男前(*^ ^*)。

「外国と闘って勝利を収め、奴隷を連れて凱旋することで王にふさわしいと認めさせる!」


「ヨン・ホゲ様こそチュシンの王」
繰り返すプルキル。
この時彼は、すでに真のチュシンの王が誰なのかを知っているはず。なのにヨン家に固執するのは、軍隊を掌握しているヨン家の方が神器探しで有利と思っているから、って解釈で良いのでしょうか?

「もう聞き飽きた。キハの産む子供の父親こそ、チュシンの王だ」
「ヨン家の血をひかない子供なら、キハは阿佛蘭寺で出産を」

ホゲは、キハの子が自分の子でないことは最初から知っている。(婚約式でも歌っているし)
でも、プルキルはこの時までホゲは知らないと思ってた、ってこと…?
えええ?ってことはプルキルはキハとホゲは寝てると思っているんですよね?いつの間にそんなことに?


…こほん。


「勝手にしろ!俺は靺鞨の北、契丹を攻める!」

“靺鞨”は高句麗の版図、“契丹”は外国。だから当然、契丹との戦いは西百済同様“戦争”に該当するわけです。

「噂によれば、白虎の神器の持ち主は契丹に逃げたという。勝てば神器を探せる!」



このあたりの会話を思い返してみて、しみじみと思ったのですが。

…この作品って、よーく考えてみると、ものすごい情報戦なんですよね。
プルキル&チョ・ジュド陣営は、いろんな噂を流して情報操作することには長けている(らしい)けれども、調査能力に欠けていて正確な情勢がつかめていない。コムル村チームは、逆に情報収集力が突出していて、正確な情勢をつかんでいるが、権力がないので操作は難しい。
チームミーティングのたびにいろんな情報を流してみたり煽ってみたり、お互いに民心を操作しあって相手の裏をかこうとしているやりとりがすごく面白いです。

うーん、小池さん「三国志」とかやってみたくないですか?(^ ^)。
今の作品だと、そういった情報操作がいちいち「えぇ~!?なんでそんな変なコトするのぉ?」って感じなので、ちゃんと権謀術数がかみ合っている原作で作ってみてほしいんですけど。

ああ、でも私は、どうせ「三国志」をやるなら「レッドクリフ」じゃなくて諏訪緑のコミック「時の地平線」をうまく潤色してほしいので、大野さんで観たいかも……。




あと。
ここで話題にすることでもないような気がするんですが、忘れないうちに聞いてみていいですか?
“カウリ剣”の儀式で裁かれた罪って、何?

ホゲがタムドクに尋ねたとおり、「近衛隊にヤン王殺害を命じた」罪なんでしょうか。キハが刺したのではなく、近衛隊が殺したことになっているのは…情報操作か?

で、四部族の息子たちを殺した罪は放置ですか?

「公平たるべき皇子の身で一部族に肩入れした」罪は不問で「王の代理」になっちゃうの?
…こっちについてあ、ヨン・ホゲのイカサマを告発するためだった、といわれたらそれまでか。

「神の裁きはくだされた。タムドク皇子は潔白である」
と大神官は宣言しますが、それは「罪が無い」ってことなるのでしょうか。儀式のタイトルになった罪だけでなく…?





ヨン・ホゲたちが契丹を攻めるらしいと聞きつけた(さすが情報収集のプロ)ヒョンゴたちのカーテン前をはさんで、
天幕でのホゲと、忍んできたサリャンの会話。


「キハ様を阿佛蘭寺へお送りにならないでください」
必死の訴え。

「プルキルは西域の商人ではなく、火天会の大長老。集めた神器をチュシンの王の子供の血で神器を洗い、世界を手にいれようとしているのです!」

キハを救うため、必死なサリャン。
すべての秘密を話してでも、キハだけは助けよう、助けたい、と。
自分自身に課せられた烙印の目さえ、かいくぐって、忍んできた天幕。

「…サリャン」
天幕の影から現れる、赤と黒の影。
サリャンの命を奪い、朱雀の神器と引き換えにキハを連れて本拠地へ帰っていく。


サリャンの人生って、結局何だったのでしょうね。
どういうきっかけがあって、火天会に入ったのでしょうか。…キハと同様に、さらわれてきたのかも?

ホゲ様の「…哀れな奴」という述懐が、彼にとっては一番の餞なのかもしれません。キハに惜しまれることさえない、彼の人生。最後の最後に幸せそうな二人の笑顔を見るたびに、サリャンの淋しい死に顔が浮かぶのです…。





もう一度タムドクチームが登場し、カーテン前で契丹攻めにどう対応するかを協議。

「私が治める国は、戦で人が死なない国だ!」


高句麗の実在の王・広開土王は、実際に契丹を攻めたんでしょうか。彼はかなり戦好き、というか、広く戦争を仕掛けてあちこち征服してまわった王様(国を広げたから諡に「広」の字が入った)なので、「戦で人が死なない国」なんて思ってなかったと思うんだけど…。
むしろ、ホゲの方がキャラクターイメージには近いんだけどな(^ ^;ゞ


神器の意味を知らないパソンが、“国を出るときから持っているお守り”をチュムチに渡す。
「あんた、そそっかしいから持っていきな!」

残念ながら姐さんらしくは全く見えない“永遠の少女”一花ですが、この場面は、なかなか良いです。
「生きて帰ったら、タルビと夫婦になるんだろう?」とからかうところなんか、偉そうでステキです!そして、すみ花ちゃんを軽々と抱き上げるまぁくんが男前(でも、ほんのちょっとだけ『うちのすみ花に触らないでよ!』と思ってしまう自分…ごめんなさい!汗)







第2幕10場 戦場

契丹へ向けて行軍する高句麗軍。

ここのフォーメーションは本当に驚くほど格好良いです。ホントに、二階席から観るべきですよこの場面は。
盾の列の上に聳え立つリフト。しゅん様とマメちゃんの、揺ぎ無い足元が素晴らしい。祐飛さん、さぞ重たいだろうに…。

小池さんの天才を心の底から実感する、場面です。





ヨン・ホゲを留めるために現れる、タムドクチーム。
とりあえず盾は持ってきてみたけど、装備も人数も貧弱なのに代わりはない。っていうか、そういえば百済兵は連れてきていなんですね、チョロ様は。身一つ(カグン将軍だけ連れて)で参加したのか……。


「王の許可なく戦争を始めることは禁じられている。今すぐ撤退しろ!」
「俺の王は俺自身だ!お前の指図は受けない!」


あまりにも圧倒的な兵力差。それでも勝負を挑むタムドク。

乱戦になる戦場で、ふいにチュムチが倒れ、“お守り”が輝くー。

本人さえも知らなかった、運命。
白虎の守り主であったチュムチが、当たり前のようにタムドクに惹かれ、部下として付き従うようになったのも、運命。
そしてまた神器の守り主と、神器を運ぶ手が、同時に“チュシンの王”に出会い、行動を共にしていたのも、運命の必然。



神器の探し方も、結局はタムドクが正解だった。
ホゲは、戦上手で経験豊富だったことが仇になった。
闘って奪うことしか思いつかなかったのだから。

話し合いで、もしくは愛で尊敬を勝ち得る、そういう発想がホゲにはなかった。それがホゲの罪で、チュシンの王との器の差、ということなのでしょう…(T T)。

だって。チュシンの王が玉座を埋めるのは、それ自体が運命なのだから。




「神器をよこせぇ~~っ!」

悪鬼の表情で、向かっていくホゲ。

「多くの人の命を奪って、何になる!?」

必死で諭すタムドク。

「俺に説教するのか。俺に槍を習ったお前が?」
「そうだ。もう一度教えてもらおうか。一対一で!」

槍を奪われ、腰の刀を握るホゲ。

「俺はもう、後戻りできないんだ!」

ガツっ、と得物を合わせ、力勝負に持ち込まれて。

「やり直せる!きっと!」

タムドクの、必死の訴え。




なのに。
そうこうしている間に、火天会兵士たちが花道に一瞬登場し、矢を放って去る。
タムドクを狙った矢が、見事に胸に突き立ってしまう、ホゲ。





タムドクの腕の中で、抱きしめられる大きな肩。
1階席だと、タムドクの貌とホゲの横顔が美しく映り、
2階席だと、タムドクの貌は影になってほとんど見えないけど、ホゲの貌は正面からばっちり見える………

ど、どっちもステキです。ぜぇはあ。




それにしても。

いくらタカラヅカとはいえ、盛りだくさんすぎる死に際でしたね。

朱雀の神器を渡し、
ヤン王自決の真相を語り、
キハの子供の父親を教え、
彼女の身に危険が迫っていることを伝え、

…「思い出すぜ…城の壁を…」
自主練習の思い出を語り、「俺が王なら…」と夢を語る。


もう少しなんとかすることはできなかったのかなあ。たとえば、キハ関係は戦いの中で無駄口叩かせておくとか。
できれば、「思い出すぜ…」から始まってもらいたいもんです。





あ、あとちょっとだ!!
公演もあと一日だけど(涙)。
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