東京宝塚劇場花組新人公演「太王四神記」。


まずは、90期のルナちゃんから。


チュモン(冴月瑠那/嶺乃一真)
パソンの華月由舞ちゃんの項でも書きましたが、今回このパソン&チュモンのコンビは、本公演と新公とで解釈が全然違っていて、すっご~~~く興味深く面白かったです。

月組のみりおくん(明日海りお)をちょっと縦長にしたような美貌のルナちゃん。チュモンは肩をちょっと超えるくらいの長髪(ストレートだったかゆるいウェーブだったか…?)で、真面目な貌をしていると本当にキレイでした。…いや、表情豊か(時々やりすぎ)なのは変わりませんけど(笑)。
出番自体は本公演も新公もたいして変わらないルナちゃんですが、面白いくらいキャラクターがちがっていて、感心してしまいました(^ ^)。「愛と死のアラビア」の悪いマムルークも良かったし、意外に芝居が出来る人だったののか……?(←意外って何よ意外って)



本役の嶺乃一真くんは、パソンの一花が少女系なのに輪をかけて可愛らしく、「愛と死のアラビア」のメドヘッドそのものという感じでしたが、ルナちゃんのチュモンは、うってかわって大人っぽく、茶目っ気にあふれた豪放磊落なキャラクターとして組み立てようとしていた、ふうに見えました。
由舞ちゃんのパソンが仇っぽい美女系なので、その後につき従うちょっと粗野な、野生の残った男っぽい男、という構図が絵になる感じ。ただ、ルナちゃんは元々が細面の美形なので、そういう役作りをしても粗野にも男臭くも見えないんですけどね(汗)。でも、器の大きいやんちゃな男にはちゃんと見えたと思います♪

嶺乃くんのチュモンは、観ていても一花の扱いも本当に“使い走り”っぽくて、靺鞨を出るときに道で拾った孤児、とか、そういうイメージで見ていたのですが。
ルナちゃんのチュモンは、由舞ちゃんパソンの弟子には見えず、その師匠の弟子、つまりパソンから見たら兄弟子なんじゃないかな、くらいの関係に見えました。結局、才能を認められて師匠の名を継いだのはパソンで、チュモンは女の身で刀鍛冶を継いだパソンを守りたい、と思った、みたいな。
あるいは、もともと刀鍛冶の仕事自体が“打つ人”と“支える人”に分業しているのが当たり前なものならば、この二人は仕事上でもプライベートでも「コンビ」である、ということなのかもしれませんが。


まぁ、そんな推察はおいといて。

新公のパソンとチュモンは、間違いなくデキてましたね(*^ ^*)
ありゃーコンビじゃなくてカップルだよ(笑)。結構クールな二人なのであまり人前ではイチャイチャしない(^ ^; んですけど、タムドクとキハが空に舞い上がってしまった後は、チュムチとタルビのカップルをからかいつつ、チュモンの腕はパソンの腰から離れない、みたいな(^ ^;ゞ。
いやー、なんてことない場面でも、さりげなーくパソンを気遣ってスキンシップしているルナちゃんが男前で、素敵でした(*^ ^*)。ああ、いい役者だなあ~~~!!



あえて一つ、なおしてほしいところを指摘するとしたら。
もう少し、役作りするときに姿勢も見直してみるといいのではないか、と思いました。元々ちょっと猫背のような気もするんですよね、ダンサーなのに(^ ^)。シウ部族役でちょこまかチュムチに突っ込んでは蹴られているときは多少背中が丸くても構わないんですけど、戦いの場面でもそのままなので、弱そうに見えてしまうなーと思っていたんです。
チュモンは、あの役作りだったらもっと堂々と動いてもいいと思うのですが、姿勢が悪いのと、全体に動きが小さいので、ご本人が考えているよりも子供っぽく見られる一瞬があるんじゃないかなーと思います。“自分のやりたい芝居”をしっかり持っている人のように見えるので、それを実現できるよう、爪の先まで意識してほしいなあ、と思います。

……あ、あつすぎる……私ってば(^ ^;ゞ




91期以降は、残念ながらわからない方も多いので、一部の方だけ簡単に、覚えている範囲で書かせていただきますね♪


まずは、91期。

ヨン・ホゲ(鳳真由/大空祐飛)
これも相当解釈の違う役になっていました。ヨン・ホゲは物語のキーになる役で、これを研4でやるなんて無茶な…と思っていたのですが、しっかり演じ切れていたと思います。生田さんのご指導の賜物かな?(^ ^)ビジュアルもちゃんと計算されていて、声も良く、なかなかの好演思います。

キャラクター設定は本役の祐飛さんとはかなり違っていて、もっとずっとボンボン風味でしたね。靺鞨でのイルスやチョク・ファンとのやり取りは、思わず「巻き戻してもう一度観たい!」と思ってしまったくらい、なんだか違う場面になってました。
…「愛の無い結婚」の場面は、違った意味で「巻き戻してもう一度!」と思いましたけど(歌が丸ごとカットされていて吃驚…)

なんだろうな、全体に、“可哀相”感が強かったような気がします。すごく普通に育った「良い子」だったんですよね、鳳ホゲは。子供っぽいわけではないんですけど、なんとなく“現実と闘う力を持たない”という意味で、存在として子供の位置にいる気がしました。
本公演ほど、母への依存は感じなかったかな。母に愛されるためには王になるしかなかった、という切迫感はなかったような気がします。
父親が優しくて良いパパだった分、「父上の分まで俺ががんばるぞ!」みたいに思いつめちゃった一面はあったのかもしれませんが。


そして、面白いなーと思ったのは、たいもんタムドクとの力関係の変化。
物語の最初、タムドクとホゲがラブラブしている場面では、タムドクの方が下に見えたんですよ。年齢が、だけじゃなく、立ち位置としてホゲが上にくる感じ。
だけど。タムドクは父王を守るために仮面を捨ててセームの前に立ったときに、一気に成長を遂げる。だから、この直後、邸の前ですれ違うタムドクは、すでにホゲより上位に見えるんです。それだけ、タムドクの急成長が目に見えたんですよね。

それに対して、新公のホゲは、あまり成長しません。
運命に流されて、諦めた目をしていろんなことをしでかしてしまう、そんな解釈だったような気がします。溜息を吐いて諦めてしまう。すべてを。
それを歯がゆく思うチョク・ファン(浦輝)の大人っぽい渋さと、良しとして共に突き進もうとするイルス(輝良)の若さと性急さ。それらが象徴する、ホゲの弱さ。


本公演では、タムドクはそれほど目を瞠るほどの成長はせず、終始皇子様を貫いていて、むしろホゲの変化が鮮やかです。
本公演のホゲは、プルキルに唆されたわけではなく、自らの意思で間違った道に踏み込んでいくのですから。道を間違えたのではなくて。踏み外したのでもなくて。

そういう「意思」というか、「狂気」を、新公では必要としなかった。
鳳くんが表現できなかったのか、ホントは出来るけどさせなかったのか、真実のところはわかりませんが、その違いにこそ、生田さんらしさが出ていたのだと思います。


……やっぱり、生田さんのオリジナル、観てみたいなあ……。
あるいは。柴田さん、新作書いてあげてくださらないかな。生田さん、柴田さんとの相性も良さそうな気がするんですけど。
………あの、次の宙組なんてどうでしょうかねぇっ!!(*^ ^*)




イルス(輝良まさと/日向燦)
儲け役のイルス。輝良くんは、外見的にどちらかと言うと“強面”タイプなので、チョク・ファンの方が似合うかなあとも思ったりしたのですが、最後まで観るとやはりこの配役で正解だな、と納得しました。
本公演のマメちゃんと祐飛さんは、本当に「悪友」とか「幼馴染」とか「乳兄弟」とかいう表現がぴったりで、なんでも相談できる頼りになる兄貴、みたいな感じだったんですけど、輝良くんと鳳くんの間にはそこまでの親密さは感じられませんでした。
…実生活では、新公の二人の方が同期だし、そういう空気も醸しやすそうな気がするんですけどねぇ。やはり年の功、なのかな(^ ^)。まぁ、銀ちゃんとトメさんですからねぇ…。舞台の上での付き合いの深さ濃さは、研4の同期同士なんかよりずっと上なのかもしれません。

あまりに海馬が逃げてしまって、靺鞨での歌がどうだったのか記憶が定かではないのですが、ずっこけた記憶もないのでちゃんと歌えていたんだと思います。今回の新公、何がすごいって歌を聞いてずっこけた人が皆無だったのが凄い、と。
鳳くんも上手かったし。女の子たちも皆達者だったし。
…レベル高いよなあ、花組下級生…。




92期。

ヒョンゴ(真瀬はるか/未涼亜希)
途中でまっつと入れ替わっても気づかなかったかも、と思ったくらい、見事に自然にヒョンゴ先生でした。
どちらかと言うと、大劇場の最初の時のまっつのお芝居に似ていたかな?まっつの芝居は、東宝に来てどんどん可愛らしくかつ面白く(^ ^)なっているので、現時点での芝居と比べるとちょっと違う部分もあるのですが、私は初見の時のまっつヒョンゴのイメージが強く残っているので、逆に真瀬くんのヒョンゴがめちゃめちゃフィットでした(笑)。

声がいいのは本当に強いなあ。それも、ハマコさん(未来優希)さん系の美声じゃなくて、まっつ系の、耳に心地よくてすっと入ってくる美声なんですよね(*^ ^*)。初めて観たときは、まだ大分ふっくらしてらしたけど、わずか一年で随分スッキリして、化粧もキレイになって……(感涙)、本公演のシウ部族なんて、何回か「あの美形は誰だっけ?」って考えちゃいましたよ私…。
ああ、デキる人が、ビジュアルもみるみる改善されていくのを観るのはとても幸せです。誰かさんに爪の垢でも差し入れてあげたい(苦笑)。




子タムドク(月野姫花/野々すみ花)
何もコメントすることはありません。とにかく可愛かったです。この上もなく。

惜しむらくは、子ホゲより10歳近くも年下に見えた、というか、聴こえたな……。
(子ホゲ12歳、子タムドク4歳、とか、そんな感じ)




93期

ヒョンミョン(大河凜/望海風斗)
「愛と死のアラビア」の可愛いヤシムくんが印象的だった大河くん。あれは子役だったので、大人の役はどうかなあ?と思っていたのですが、想像していたよりずっと良かったです。可愛いけど(苦笑)。
歌も安定。この学年であれだけ声ができていれば立派なものなんじゃないかと思います(*^ ^*)。

たいもんは割と正統派二枚目として演じていたと思いますが、大河君はちょっとトリックスターっぽく作っていて、落ち着いた安定感のあるヒョンゴと良いコンビでした。本公演も、最初はそうだったはずなんだけど、最近段々逆転しつつあるので(^ ^)、なんというのかな、懐かしかったというのが近いかな(笑)。
最後、空を舞うタムドク&キハの下でのスジニとのやり取りで何か面白いことをしていたんですけど、忘れてしまった……あああ、何だっけなぁ~~(T T)。




セドル(真輝いづみ/月央和沙)
フッケ将軍のよっちの項でも書きましたが、顔だけでなく、声も芝居もよっちに良く似ていて上手でした。芝居巧者のよっちについて勉強させてもらう、良い機会だったんだろうと思います。
この学年で、そういう役付けをしてもらえるのは素敵なことですよね♪
次はぜひ、また全然違う役で観てみたい人です(^ ^)。






ちょこまかと途中で書いてきた演出の変更点を最後にまとめようと思っていたのですが、文字数も限界だし、だいいちあまりに時間がたって、記憶が曖昧になってしまったので諦めます。がっくり。

とにかく、花組新人公演、このまま劇団四季のウィークデーマチネ公演みたいに毎週500円引きで上演してもいいんじゃあ、と思ったくらい質の高い公演でした。楽しかったです!
祐飛さんが花組に組替えして、1年。大劇場2作品を経て、下級生もずいぶん覚えたもんだなあ、私(^ ^)。
…ちょっと感心。

おかげで本公演も忙しすぎて、一回観るとぐったり疲れるんですけど……(←いつもじゃん)



それにしても、贔屓目抜きで、今回の新公はとっても良かったです!
充実したキャストを優秀な演出家がさばいて、もともと良い作品なんですけど、ちゃんと「新公」が一つの作品として成り立っていたことに驚きました。
そして、経験の浅い下級生たちが、その「作品」に真摯に取り組み、成果を出してくれたことがとても嬉しいです。

皆、あと約2週間、がんばってねっっ!!