東京宝塚劇場花組公演「太王四神記」。



第2幕1場 コムル村~幻想

一幕も二幕も、ヒョンゴ(未涼亜希)のピンスポで始まる。
小池さん、どんだけまっつが好きなんだ…(^ ^)。なんつったって“海馬の帝王”だもんな(←しつこい)。


「コムル村の民は、“チュシンの王”として目覚めたあなたに忠誠を誓います!」

白い“コムル村の制服”を着てタムドクを取り囲むメンバーは、スジニ(愛音羽麗)、ヒョンミョン(望海風斗)、くみちゃん(芽吹幸奈)、ネコちゃん(彩城レア)、アーサー(煌雅あさひ)、彩咲めいさん、鞠花ゆめちゃん、銀華水さん、花輝真帆さん、神房佳希さんかぁ……。いつもアーサーに気をとられてしまうのですが、センターちょっと下手の娘役さんは誰でしょう?



タムドクを“王”と呼ぶ村人たちに向かい合い、彼は
「僕はなによりも、なぜキハが父上を殺したのかが気になるんだ」と告げて、立ち去る。

「キハ、教えてくれ、なぜ僕を苦しめるのか?」と呟きながら。


小池さん……。
ここはせめて、「キハと暮らすために国も父王も捨てようとした自分など放っておけ」(NHKの太王四神記公式サイト 第十話あらすじより)」くらいのことを言わせてやってください。
いくらなんでも、チュシンの王として覚醒した身で「王位なんてどうでもいいもん!キハの方が大事だもんっ!!(←意訳)」は無いのでは……?


ドラマの台詞だと、タムドクは『王たる自覚をもってやるべきことを選択している』けど、舞台の台詞だと『王たる自覚がない』としか思えない。行動(コムル村を離れて王宮へ向かう)は同じなんですけど、動機が違う。一つ一つは細かいことなんですけど、主役の心理の変化を追っていくと、ここで断絶があって勿体ないなあと思うのです。

だって。
新公にはこの場面がないから、一幕ラストで覚醒したタムドクが、そのまま神剣を持ってヤン王葬儀の場に現れて、カウリ剣の儀式を受け、「父上の遺志、しかと承りました!」となり、次に王になるためにカンミ城へ向かうぞ!っていうところまで、タムドクの気持ちがぶれなくてすむんですよ。
それ(テジャ城での覚醒)まで、タムドクは「王になりたくない」と思っていた。それは、いろんな理由があったわけですが、最終的にはそれ(“王になること”)がタムドクにとっての“義務”だから嫌だった訳ですよね。

で、覚醒した=自らに課せられた義務に納得した、んだと思うんですよ。責任を自覚した、というか。

その上で、『コムル村の忠誠』を受け入れることは拒否する。
偶々知り合ったスジニやヒョンゴという個人の友情はありがたいけれども、自分が宿命の王だから、という理由で奉げられる団体の忠誠は受け入れられない。
それが、「自分のことなど放っておけ」という台詞の、本来の意味だと思うのです。


タムドク・キハ・ホゲの掛け合いの歌はとても好きなんですが、その歌につながる伏線としてコムル村を出すと、コムル村があまり説明されていないこともあって、判りにくいんですよね。
ちょっと不適切だったんじゃないかなー、と思います。
あえて芝居の場面として「高句麗の隠れ里」を出さなくても、普通に二幕の幕があいたら、いきなり板つきでタムドクが歌いだしても、別に問題ないと思うんだけど、ダメなのかしら……。




第2幕2場 ヤン王葬儀

三人のコーラスが終わり、ホゲだけが舞台に残ると、いったん暗転して紗幕があがる。
二つのポンファ通り&武道大会に並ぶ、猫的“オペラグラスを持つ手が(疲れて)震える”場面の始まりです。


幕があがると、天地神堂での儀式の最中。
コーラスを歌いながら、ヤン王の棺とその前の花のセットを人力で舞台前方に運ぶ兵士たちが結構ツボ。真ん中に偉そうに立っているコ将軍と、両側を固めるイルス&チョク・ファンが格好良い♪
鎧にマント姿の彼らは、舞台上をところせましとウロウロしている色とりどりの大きな衣装に紛れて見えなくなりがち。この作品は、やっぱり二階がお勧めです★……イルスもチョク・ファンもコ将軍も、それぞれがバラバラにいろんな小芝居をやっていて、全部チェックするのはほとんど不可能ですけどね……(T T)。

あとは、とりあえず、舞台下手にじっと直立不動で立っている兵士二人(華月由舞・白華れみ)をお見逃しなく。超可愛いですから!



5色の衣装に身を包んだ各部族のみなさまが、次々にポジションを替えながら入れ替わり立ちかわり、ちょっかいを掛け合い、脅しをかけあい、コソコソ噂話をしているのを視ていると、あっという間に場面が終わります。

基本的には武道大会の息子以外のメンバーを残しつつ(ケマ部族以外)、近衛隊など他のメンバーも入れていて、結構微妙なメンバー構成なんですよね。あと、息子たちをさりげなく入れ替えて出しているのがなんとなくおかしい(笑)。



(赤)ケマ部族(夏美よう/遼かぐら、煌雅あさひ、白姫あかり、朝陽みらい)
遼かぐらちゃんの小芝居、とても好きです。チョルロ族や、時には天地神堂の大神官の言でさえ、莫迦にしたように鼻で笑う仕草がとても嫌味でかっこいい。タムドクが現れ、「カウリ剣の儀式を受ける!」と言った瞬間にも、そして刺された瞬間にも、思いっきり「ニヤリ」とするんですよーっ(はぁと)ああ、素敵にどSなお姉さまになってくれそう…(嬉)。
アーサーは、そんなかぐらちゃんの後ろにどっしりと構えて見守っている風情が素敵です。なんだか今回、アーサーは見守り役ですね。新公もコ将軍だし(^ ^)。
白姫あかりちゃん、近衛兵もカッコイイけど、この場面も好きです。まだ他の場面では見分けられないのですが、この公演の間に覚えるぞー!



(青)ソノ部族(眉月凰/月央和沙、天宮菜生、天真みちる、和海しょう)
えーっと、セドルさん死んだら青族に生まれ変わったのね!と毎回突っ込まずにはいられません(^ ^)。息子たちは皆生まれ変わっているんですけど、よっちが一番目立つんですよ。
最初に観たとき、青族のキレイな男役さんは誰だろう、と思ったらはるちゃんだった(^ ^)とことん好みなんだなあ(照)。ここは普通に“中性的な”男役に見えます(^ ^)。可愛い~♪
天真くんはどんな場面でも手抜きなしで顔芸してくれるのでついつい観てしまいます☆

ふ、と思った。
…『表情豊か』と『顔芸』の違いって、何…?



(黒)チョルロ部族(悠真倫/彩城レア、日高大地、大河凜、舞月なぎさ)
他4族に真っ向から対立するフッケ将軍の後ろで、うんうん頷いたり、ヨン・ガリョの発言に「なに言ってやがる!」みたいに威嚇してみたり、ころころ表情が変わったり、かなり面白い。黒族はこの場面ではドラマの中心にいるので、メンバー一人一人が芝居をがんばらないと盛り上がらないんですよね。
新公を観て、大河くんは芝居巧いなあと感心したんですが、ここでもとても表情豊かにいい小芝居をしているので、観ていて楽しいです。
舞月なぎささんって、ロケットで日高くんの二人隣くらいにいますか?美人ですよねー♪



(黄)スンノ部族(紫陽レネ/輝良まさと、花峰千春、銀華水、鳳龍あや)
ハマちゃんいつの間に生まれ変わっ(以下略)
花峰さん、卒業したちあき(白鳥かすが)に似た美貌、という印象の人なんですが、なにげにちょこちょこ動いていて、要チェックです。
銀華さんは、天真くんに負けない顔芸っぷりがかなりツボ。



(緑)カンノ部族(夕霧らい/望月理世、浦輝ひろと、神房佳希、航琉ひびき)
初めて観たとき、「り、理世ちゃんがこんなところに!」と感動したところ。やっぱり美人だなあ、とつくづく思います。理世ちゃん、あと5cm身長が低かったら、シャープでかっこいい、素敵な娘役さんだったろうなあ……。っていうか、この役でも“娘役がこんなところに”と思わせてしまう理世ちゃんって(汗)。
浦輝さんは、他の場面では結構ほんわかした雰囲気につくっているのに、ここだけなんだかえらくシャープで怖いくらいです。意外と、メンバーの怖さは緑族が一番かも、と思ったりする。




忙しすぎて天地神堂の大神官さまや巫女さんたちまで目が回らないのですが、絵莉さんのこの場面の芝居の声色の使い分けがいいなあ、と毎回思います(←耳は足りているらしい)。

なんとかカウリ剣の儀式を回避しようとする大神官と、なんとしても儀式に持ち込みたいヨン・ガリョの間で、ああいえばこういう議論が盛り上がる。
ちなみに、「カウリ剣」は剣の名前ではなく(剣の名前は“チュモ神剣”)儀式の名前なんでしょうか。古代日本でいう“盟神探湯(くがたち)”みたいなものなのかなあ?


「誰が皇子を刺せましょう」
という大神官様の、強い調子が印象的です。

でも、そんな目論みもホゲの一言で潰えさる。
「私なら、同じチュシンの星の下に生まれました」

ホゲの意図がどんなにミエミエでも、もうどうしようもない。
「草の根をわけてもタムドクを捜し…」

「それにはおよびません!」
そう呼ばわりながら登場するタムドク。さすがの格好良さです。主役だー!という迫力。



タムドクに王の死の真相を尋ねられ、
「陛下は自害なさられたのです」と答えるキハ。

『なさられたのです』…って、変な日本語!と思うんですけどどうなんでしょうか。
っていうか、そんな瑣末なことはどうでもいんですが。
せっかくヤン王が「タムドクにお前を憎ませろ」と遺言して死んで、その悪夢に何度も苛まれているはずなのに、 そんな言い訳を本人の前でしちゃったら、意味ないじゃん!!



ここでタムドクが差し出す剣は、一幕ラストで彼が掲げた蛍光灯 光の剣ではなく、仕掛けが無いのでずっと華奢にできています。別物すぎてちょっと笑えるくらい。
ホゲが剣を受け取ると、それをキハが奪い取る。
「朱雀の守り主が、天に問います!」


…この場面の芝居の間とか、刺したあとのキハの表情とか、ホゲを気遣うイルスとか、回りの各部族の反応とか、、、新公の方が良かったところもあり、本公演はさすがだなあと思うところもあり……。
すみ花ちゃんキハは、タムドクが生き返った瞬間に、人形に血が通ったように瞳が急に潤んで、涙がぽろっとこぼれたんですよね。あれはすごかった!タムドクに剣を突き立ててから、生き返るまでの数分間、キハも死んでたんだな、と納得できる芝居でした(*^ ^*)。

彩音ちゃんは、あまり感情が表情に出ないタイプなのですが、タムドクが助かったとわかった瞬間に姿勢が崩れるのが凄く良かった。それを支える祐飛さんの、愛のない冷たい瞳が好きです。
ホゲが愛しているのは、やっぱりキハじゃなくてタムドクだと思う。(きっぱり言うな)



キハによって心臓に神剣を突き立てられ、倒れるタムドク。
取り縋るスジニの泣き声。

…ふ、と音楽が変わり、タムドクが目覚める………。

ここの間が、どうにも短すぎるような気がします。もうちょっとタメがあってもいい。
みわっちの泣きが止まるのも、ちょっと唐突すぎる。

でもまぁ、タムドクが生きていると判った瞬間の、まっつの笑顔がとても可愛いです★



「タムドク皇子は潔白である!」
という大神官の宣言に、思いっきり反論するヨン・ガリョ。

「青龍と白虎、二つの神器の護り主が敬い、慕う、その者こそがチュシンの王。
 それがはっきりするまで、タムドクが仮王として、ヨン・ホゲが将軍として国を治めよ」

たしかに、その気になればタムドクの方が視界が広いし、良い王になりそう。
勇敢で武術に長けた(はずの。イカサマしたけど)ホゲは、将軍として、司令官として既に実績がある。

「天地神堂の決定である」

と言われて、錚々たる部族長や有力者たちが一言も言い返せない。
神の預言でなくとも、彼女の言にはそれだけの重みがあるし、やはり現実に沿った発言をしているっていうのも事実なんでしょうねぇ……。




第2幕3場

カーテンが下りて、タムドクとヒョンゴたち三人が場に残る。
と同時に、上手から出てくるチュムチたち。

「天地神堂のおふれを聞きました!残りの神器を探すんですね?」
当たり前のようにそう訊いてくるパソン。

『ぼくはね、ぼくは、王様になんてなりたくないんだよ……』
そんな本音を、言いだせるはずもなく。

……いや、もう、この時のタムドクは、それは本音じゃないんですよね。

「父上の遺言、しかと承りました!」
と言ったとき、彼はついに、自分の運命を受け容れたのだから。
従うことをあんなに嫌がっていた運命、一度は本気で捨てようとした運命を。
積極的にアイディア(「狩に行くふりをして、河伝いにカンミ城を目指そう!」)を出して、実現の可能性を探りながら。


誰のために?という「一番大切なところ」を、置き去りにしたままで。




そういえば。
どうでもいいツッコミですが、火天会はカンミ城の主を殺した後は、すぐ引き上げたんですよね。サビ城も同じく。火をかけて、どんな小さな隅もあまさずに捜索したら、あとは見捨てて去るだけ。
なんとか隠れて逃げ切ったチョロを連れたカグン将軍が城に戻って、散らばった部下たちを集めて“西百済”という国を再建しても、火天会は黙認というか無視するんですね……。

うーん。そのまま国を支配する、っていう発想は、プルキルには無かったんでしょうか。
不意をついたとはいえ、いくつもの城を同時に落とすだけの実力があるのに、もったいない。
部下たちは、プルキルが操っているだけで自分で判断することができない生き人形たちだから、殺すことや探すことはできても、支配することはできない、とか、そういうこと?

っていうか、とにかくプルキルの目的が謎だ。
私にはわからない理屈で動いているんだなあ、彼は…。(しみじみ)





タムドクチームが左右にハケて、中央のセットからヨン家一党が登場。

「残りの神器はどこにある?」
性急に問いただすヨン・ガリョ。

「わかりません…」
そこまではずっと自信満々にいろんな策謀をめぐらしてきたチョ・ジュドが、初めて自分の無力にうちひしがれる。
そこに、勝ち誇ったようなプルキルの声。
「水晶玉に訊きました……」



しかし!
プルキルの水晶玉は、自分の支配下にあるキハを映したり操ったりすることはできるけれども、自分の支配下にないもの(他の三つの神器のありか)を示すことはできない。だから、ここで彼が
「西百済に青龍があり、北の靺鞨に白虎がある」
と告げるのは、十数年前の「チュシンの夜」にあがった烽火の記憶にすぎません。

実際には、白虎の神器はパソンが持って国内城に来ているんだから、水晶玉が当てにならないのは事実。でも、この時点ではそんなことはまだ判らない。ミョンヒョン山を示したプルキルの力の幻影に、全員が惑わされたまま。


「西百済を攻めるとなると、戦争になる」
「国王(代理のタムドク)の許可なく戦争はできない」

「ならば、靺鞨の蛮族を成敗するふりを!」

すっ、と手をあげてチョク・ファンを呼び、遠征の準備を命ずるヨン・ホゲがかっこいいです。
そして、「はっ!!」というチョク・ファンの返事が、とてもとても男前(*^ ^*)。
やっぱりしゅん様素敵だわー♪(最後はそれか)



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