ヘドウィグ&アングリィインチ
2008年6月18日 ミュージカル・舞台東京厚生年金会館にて、ロックミュージカル「ヘドウィグ アンド アングリーインチ」を観劇してまいりました。
初演(三上博史主演)以来、上演されるたびに観たいと思いつつ、スケジュールが合わなくて観られなかったこの作品。やっと観ることができて、とても嬉しいです。
もしかしたら映画をご覧になった方もいらっしゃるかもしれませんが…。
原型となったパンクロック・ナイトから映画まで、ずっとタイトルロールを演じていた俳優ジョン・キャメロン・ミッチェルが作った、魂の物語。作詞・作曲はスティーヴン・トラスク。
演出は鈴木勝秀。最近私の注目の演出家ですが、やっぱり良い仕事してくれますね♪
タイトルロールのヘドウィグは山本耕史。
相方のイツァークは、韓国の歌姫 ソムン・タク。
二人+バンドメンバーが5人、計7人で、
東京厚生年金会館の巨大な空間を、物凄く濃ゆいもので埋めた1時間45分。
一人のロックミュージシャンの、一夜のライブ、という形式の作品。
冒頭、舞台上にバンドとイツァークが揃い、「HEDWIG!」と呼びかけると。
客席通路をゆっくりと歩いてくるヘドウィグに、スポット。
ちょうど通路後ろの席だったのですが。
…すぐ目の前を、腰まである金髪ロングの鬘をひらめかせた、厚化粧の耕史くんが通っていきました♪
客席はいきなり総立ち!!
完全にロックコンサートのノリで、最初のナンバー「TEAR ME DOWN」。
…わかんない(^ ^;ゞ
耕史くん、いつからガイタレになったの?と思うほど、ネイティブっぽい英語。宝塚のカタカナ英語ならなんとかなるけど、ガイコクゴに弱いんだよ猫は。涙目。
目の周りに大量にキラキラがついた、ものすごい厚化粧。
土方歳三が良く似合っていた、たくましいマッチョな身体を包む、華やかな衣装。
うらぶれたライブ会場。すぐ隣で、世界的ロック・アイドルのトミー・ノーシスがコンサート中。
彼は、最近巻き込まれた事故の怪我(?)から復帰したばかり。
その車を運転していたのは、恋人だった、
…ということになっている、らしい。
ヘドウィグは言う。
「あの車を運転していたのは、トミー」
「あたしは運転なんてしてる暇はなかった。だって、イイコトをしてあげていたんだもの、彼に」
「彼が前を見ていなかったのは、あたしのせいじゃないわ…」
時折、
ヘドウィグは袖に入って、外のドアをあける。
袖から入ってくる、眩いライト。大音量のスピーカーらしい割れた声が、遠くに聞こえてくる。
「今日は僕のために集まってくれてありがとう!」
「あの事故は、僕の人生にとって大きな事件でした…」
ヘドウィグのライブ・パフォーマンス。
「あんたたちが聞きたいのは、トミーの話。そうね?」
華やかだけれども、どこか安っぽい衣装をひらめかせながら、ヘドウィグは語り続ける。
「あたしの話を聞いて頂戴。あたし、今夜はなんだか喋りたい気分」
東ベルリンに生まれた美少年ハンセルは、「壁」を警護していたアメリカ兵ルーサーと恋(?)に落ち、“手術”を受けて西側への脱出。
母のパスポートを持った彼(女)は、自由の国アメリカでルーサーと結婚。しかしもちろん、人生そううまくはいかない。
あっという間に離婚した彼(女)は苦しい生活の中でロックに傾倒。そして出会った少年・トミーとの恋は、しかし、悲惨な終わりを迎える…
それにしても、割り切った舞台でした。
台詞は日本語ですが、歌はすべて英語。
舞台奥に、大きなスクリーンがあって、さまざまな映像が流れていました。たまーに字幕(←英語の歌詞がロールアップされるだけですが)が出たりして。
まぁ、話自体で解らないところはなかったですけど。耕史くんも、タクさんも、表現力はずば抜けていましたし。
……しかし、歌詞も知りたかったなぁ…。意味不明な歌を聴きながら、メッセージを受け取ろうと観る側も必死でした。訳詩の字幕は無理でも、せめて英語の字幕でもいいから出してほしかった。
でも、字幕があるとついそっちを観てしまって役者を見なくなってしまうから、正解だったのかもしれませんね…。
役者の力、というのをこんなに強く感じたのは、久しぶりでした。
最近、演出家の力(あるいは力の無さ?)を感じることが多かったので。
言葉がわからなくても、ここまで心を奪うことができるのか、と。
何度も何度も、立ったり座ったり(ヘドウィグ・ファンが多いので、皆さんタイミングもばっちりでした)しながら、ヘドウィグが語る一人の人間の人生に、共感していく。
『Better Half』、引き裂かれた半身。
その半身を捜して、もう一度『完全な人間』に戻りたい、それが“Origin Of Love”。引き裂かれた半身と出会うために旅をするのが、人生。
ハンセルの“半身”探しの旅は、とても悲惨で哀しいものなのですが。
彼(女)を見守るイツァーク、という存在。
その存在そのもの、在り方そのものが、素晴らしかった。
ヘドウィグとイツァーク。二人の関係。
二人の間を流れる感情。
トミー、という、舞台の上には存在しないもう一人の主役。
ヘドウィグから視たトミー。
ヘドウィグ視点での、トミー・ノーシス。
ラスト。
金髪の鬘という『最強の盾』を、かなぐり捨てるヘドウィグ。
濃ゆいアイメークを落として。
額に十字架を享けた、『ただひとりの』存在。
半身を得た彼に、天使が歩み寄る…
白いドレスに身を包んだ、天使が。
白い光。
天使が青年を抱きしめる。
上手袖から入る、白い光。
遠くから聴こえてくる、雑音。
山本耕史の、類い稀なボディパフォーマンスと、
ソムン・タクの類い稀なソウルフルな歌声と。
ふたりが響きあい、共鳴してさらにふくらみを増す、熱い空間。
東京厚生年金会館の、だだっ広い空間が。
息苦しいほどの熱で溢れた、1時間45分。
素晴らしいライブを、ありがとう。
二人の歌を、忘れません。
.
初演(三上博史主演)以来、上演されるたびに観たいと思いつつ、スケジュールが合わなくて観られなかったこの作品。やっと観ることができて、とても嬉しいです。
もしかしたら映画をご覧になった方もいらっしゃるかもしれませんが…。
原型となったパンクロック・ナイトから映画まで、ずっとタイトルロールを演じていた俳優ジョン・キャメロン・ミッチェルが作った、魂の物語。作詞・作曲はスティーヴン・トラスク。
演出は鈴木勝秀。最近私の注目の演出家ですが、やっぱり良い仕事してくれますね♪
タイトルロールのヘドウィグは山本耕史。
相方のイツァークは、韓国の歌姫 ソムン・タク。
二人+バンドメンバーが5人、計7人で、
東京厚生年金会館の巨大な空間を、物凄く濃ゆいもので埋めた1時間45分。
一人のロックミュージシャンの、一夜のライブ、という形式の作品。
冒頭、舞台上にバンドとイツァークが揃い、「HEDWIG!」と呼びかけると。
客席通路をゆっくりと歩いてくるヘドウィグに、スポット。
ちょうど通路後ろの席だったのですが。
…すぐ目の前を、腰まである金髪ロングの鬘をひらめかせた、厚化粧の耕史くんが通っていきました♪
客席はいきなり総立ち!!
完全にロックコンサートのノリで、最初のナンバー「TEAR ME DOWN」。
…わかんない(^ ^;ゞ
耕史くん、いつからガイタレになったの?と思うほど、ネイティブっぽい英語。宝塚のカタカナ英語ならなんとかなるけど、ガイコクゴに弱いんだよ猫は。涙目。
目の周りに大量にキラキラがついた、ものすごい厚化粧。
土方歳三が良く似合っていた、たくましいマッチョな身体を包む、華やかな衣装。
うらぶれたライブ会場。すぐ隣で、世界的ロック・アイドルのトミー・ノーシスがコンサート中。
彼は、最近巻き込まれた事故の怪我(?)から復帰したばかり。
その車を運転していたのは、恋人だった、
…ということになっている、らしい。
ヘドウィグは言う。
「あの車を運転していたのは、トミー」
「あたしは運転なんてしてる暇はなかった。だって、イイコトをしてあげていたんだもの、彼に」
「彼が前を見ていなかったのは、あたしのせいじゃないわ…」
時折、
ヘドウィグは袖に入って、外のドアをあける。
袖から入ってくる、眩いライト。大音量のスピーカーらしい割れた声が、遠くに聞こえてくる。
「今日は僕のために集まってくれてありがとう!」
「あの事故は、僕の人生にとって大きな事件でした…」
ヘドウィグのライブ・パフォーマンス。
「あんたたちが聞きたいのは、トミーの話。そうね?」
華やかだけれども、どこか安っぽい衣装をひらめかせながら、ヘドウィグは語り続ける。
「あたしの話を聞いて頂戴。あたし、今夜はなんだか喋りたい気分」
東ベルリンに生まれた美少年ハンセルは、「壁」を警護していたアメリカ兵ルーサーと恋(?)に落ち、“手術”を受けて西側への脱出。
母のパスポートを持った彼(女)は、自由の国アメリカでルーサーと結婚。しかしもちろん、人生そううまくはいかない。
あっという間に離婚した彼(女)は苦しい生活の中でロックに傾倒。そして出会った少年・トミーとの恋は、しかし、悲惨な終わりを迎える…
それにしても、割り切った舞台でした。
台詞は日本語ですが、歌はすべて英語。
舞台奥に、大きなスクリーンがあって、さまざまな映像が流れていました。たまーに字幕(←英語の歌詞がロールアップされるだけですが)が出たりして。
まぁ、話自体で解らないところはなかったですけど。耕史くんも、タクさんも、表現力はずば抜けていましたし。
……しかし、歌詞も知りたかったなぁ…。意味不明な歌を聴きながら、メッセージを受け取ろうと観る側も必死でした。訳詩の字幕は無理でも、せめて英語の字幕でもいいから出してほしかった。
でも、字幕があるとついそっちを観てしまって役者を見なくなってしまうから、正解だったのかもしれませんね…。
役者の力、というのをこんなに強く感じたのは、久しぶりでした。
最近、演出家の力(あるいは力の無さ?)を感じることが多かったので。
言葉がわからなくても、ここまで心を奪うことができるのか、と。
何度も何度も、立ったり座ったり(ヘドウィグ・ファンが多いので、皆さんタイミングもばっちりでした)しながら、ヘドウィグが語る一人の人間の人生に、共感していく。
『Better Half』、引き裂かれた半身。
その半身を捜して、もう一度『完全な人間』に戻りたい、それが“Origin Of Love”。引き裂かれた半身と出会うために旅をするのが、人生。
ハンセルの“半身”探しの旅は、とても悲惨で哀しいものなのですが。
彼(女)を見守るイツァーク、という存在。
その存在そのもの、在り方そのものが、素晴らしかった。
ヘドウィグとイツァーク。二人の関係。
二人の間を流れる感情。
トミー、という、舞台の上には存在しないもう一人の主役。
ヘドウィグから視たトミー。
ヘドウィグ視点での、トミー・ノーシス。
ラスト。
金髪の鬘という『最強の盾』を、かなぐり捨てるヘドウィグ。
濃ゆいアイメークを落として。
額に十字架を享けた、『ただひとりの』存在。
半身を得た彼に、天使が歩み寄る…
白いドレスに身を包んだ、天使が。
白い光。
天使が青年を抱きしめる。
上手袖から入る、白い光。
遠くから聴こえてくる、雑音。
山本耕史の、類い稀なボディパフォーマンスと、
ソムン・タクの類い稀なソウルフルな歌声と。
ふたりが響きあい、共鳴してさらにふくらみを増す、熱い空間。
東京厚生年金会館の、だだっ広い空間が。
息苦しいほどの熱で溢れた、1時間45分。
素晴らしいライブを、ありがとう。
二人の歌を、忘れません。
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