宝塚バウホールにて、雪組バウ・ワークショップ「凍てついた明日」を観劇してまいりました。
先行パターンなので、ヒロイン・ボニーはみなこ(愛原実花)ちゃんでした。
とりあえず、キャストのまとめを。括弧内は初演キャストです。
バロウ家
カミー (京三紗) 京三紗
バック (風早優) 未来優希
ネル (五峰亜季) 涼花リサ
クライド (香寿たつき)凰稀かなめ
パーカー家
エンマ (矢代鴻) 五峰亜季
ボニー (月影瞳) 愛原実花/大月さゆ
バロウ・ギャング
ジェレミー(安蘭けい) 凛城きら/真那春人
レイモンド(汐美真帆) 沙央くらま
メアリー (森央かずみ)舞羽美海/透水さらさ
ジョーンズ(未来優希) 冴輝ちはや/彩風咲奈
ブランチ (美穂圭子) 早花まこ/千風カレン
クライドの元カノ
アニス (貴咲美里) 大月さゆ/愛原実花
ボニーの元夫
ロイ (天希かおり)香綾しずる
保安官サイド
テッド (楓沙樹) 緒月遠麻
ボブ (立樹遥) 梓晴輝/朝風れい
シュミット保安官(すがた香)香音有希
フランク捜査官 (風早優) 未来優希
ダイナー
ビリー (紺野まひる)花夏ゆりん/早花まこ
店主 (すがた香) 香音有希
記者 (風早優)未来優希
…初演から10年たって、同役で出演したのは京さんただお一人。
初演に出演していたのも、五峰・未来の二人だけ。っていうか、そもそも、主演の凰稀を含む86期で2000年入団。ハマコさん以外の組子は、初演時にはまだ一人も劇団に入っていなかったんですね(T T)。
あのときの胸の痛みから、10年。
プログラムで荻田さんが「出演者の多くはこの10年の間に花園を去りました」ということを書かれているとおり、初演で役付きだった人で、今も劇団に残っているのは美穂・安蘭・立樹の3人だけ。
時は流れ、時代は変わり。
荻田さんも「新進気鋭の若手演出家」から、立派なヒットメーカーとして認められ、
あれだけの実力派俳優をかき集めた名作なのに、随分集客に苦労していたこの作品も、若手主体のワークショップにも関わらず、立派に「荻田ファン」でバウが埋まる時代になったんですねぇ…(感慨)。
というわけで。
いやー、良かったです。生まれ変わった「ボニー&クライドとの邂逅」。
初演も大好きでした。
一回観て号泣して、無理やりもう一回観た……と、思います。(たぶん)
あまり細かくは覚えてないんですけど、とにかくボニーに物凄く感情移入してしまって、マジ泣きしたのが印象的。
月影さんのベストアクトは、間違いなくボニー。この作品が決まる前から「宝塚おとめ」の「やりたい役」にボニーをあげていらっしゃった月影さん。宝塚娘役として「ボニーがやりたい」っていうトップってどうよ、と思いつつ(笑)、本当にやりたかったんだろうなあ、と納得もしたんですよね。
ラスト近くに、クライドから渡された花束を、軽く肩をすくめて「ぽいっ」と投げ捨てる、その鮮やかさ。
ロイのダンスの冷酷さに翻弄される、脆さ。
包容力も余裕もない、乾ききった心を抱えた、愛に渇いた女。
クライドに「愛したい」とささやきながら、自分の愛の泉が枯れきっている自覚。
もう「愛」が溢れてくることはない、その絶望と恐怖。
ああ、ボニーってこういう人だったんだなあ、と、すとん、と落ちてきた想い。
そして、再演。
みなこちゃんのボニーを観て驚いたのは、その優しさ、でした。
二幕冒頭で、「幸運にも死者の出なかった」成功した強盗事件の様子が描かれますが、あそこで、妊婦さんにお金をあげたり、シスターに寄付をしたりといったことは同じようにグンちゃんもやっていたと思うんですよね。(違いましたっけ…?覚えてない)
それに、ジョーンズを抱きしめる仕草も、繰り返しあった記憶がある。
なのに。
それでも、グンちゃんのボニーからは「包容力」とか「優しさ」とか「甘さ」とか…そういった“ふんわりとしたもの”を、全く感じなかったのです。
ただただ、西部の砂のように乾いた心。
ジョーンズを抱きしめる仕草は、むしろ大人が子供のぬくもりにすがり付くようで切なかったし、義賊っぽいエピソードは、むしろ嘲弄するように、得たものを投げ捨てているだけのように見えたのです。
乾いて、渇いて、すぐ側に水さしがあるのに縛りつけられて届かない罪人のように、海の水をすべて飲みつくしたいのに呑み方がわからない海の神のように、渇きを癒すすべを知らない子供。
クールでハンサムで投げやりな、そんなボニーだったグンちゃん。
でも、みなこちゃんは。
もっとずっと、地に足のついた、子供だった。
世の中のすべてを闇雲に恐れて、怯えて、びくびくし通しの、子供。
ロイの幻想が登場するたびに酷く怯える仕草。
ちょっとうがちすぎかもしれませんけど、ドメスティック・バイオレンスの被害者っていう設定なのかなー、と思いました(映画えはどうでしたっけ…?)。
暴力に馴れている様子も、にもかかわらず、人が傷つくことに敏感なところも。
妊婦に祝い金を渡す仕草、
ジョーンズを抱きしめる腕のまろやかさ、
クライドに見せる辛そうな貌の甘さ…
被虐的で優しくて甘ったれな、そんな、ボニー。
グンちゃんがアメリカ中西部の砂漠地帯を舞台にした「俺たちに明日はない」の『ボニー』だったとしたならば。
みなこちゃんは、梅雨時の日本で上演される「凍てついた明日」にふさわしい『ボニー』、でした。
湿り気と柔らかさと温かさ、そして曖昧さ。
可愛くて、表情豊かで、スタイル抜群で、衣装がどれも良く似合って、
声が柔らかくて、高くも低くも使い分けられて・・・・
何よりもあの被虐性に、ものすごくソソられました(*^ ^*)。
こんな猫ですみません。
そして。
初演が「ボニー&クライド」で、
再演が「ボニー&クライドとの邂逅」であった意味をひしひしと感じました。
明日は多分、この続きはかけないのに、
こんなとこで切ったらまずいような気はするのですが。
このうえテルくんのことを書き始めると軽く5000字突破する自信があるので、今日はここまでにさせていただきますm(_ _)m。
それにしても、ホントにみなこちゃんサイコーだった!あああ、もっと観たい!
……花組に組替えして「銀ちゃん」で小夏してくれないかなあ(祈)物凄く嵌りそう。…つかこうへいさん的に、娘にやらせたい役なのかどうかわかりませんけどね……。
.
先行パターンなので、ヒロイン・ボニーはみなこ(愛原実花)ちゃんでした。
とりあえず、キャストのまとめを。括弧内は初演キャストです。
バロウ家
カミー (京三紗) 京三紗
バック (風早優) 未来優希
ネル (五峰亜季) 涼花リサ
クライド (香寿たつき)凰稀かなめ
パーカー家
エンマ (矢代鴻) 五峰亜季
ボニー (月影瞳) 愛原実花/大月さゆ
バロウ・ギャング
ジェレミー(安蘭けい) 凛城きら/真那春人
レイモンド(汐美真帆) 沙央くらま
メアリー (森央かずみ)舞羽美海/透水さらさ
ジョーンズ(未来優希) 冴輝ちはや/彩風咲奈
ブランチ (美穂圭子) 早花まこ/千風カレン
クライドの元カノ
アニス (貴咲美里) 大月さゆ/愛原実花
ボニーの元夫
ロイ (天希かおり)香綾しずる
保安官サイド
テッド (楓沙樹) 緒月遠麻
ボブ (立樹遥) 梓晴輝/朝風れい
シュミット保安官(すがた香)香音有希
フランク捜査官 (風早優) 未来優希
ダイナー
ビリー (紺野まひる)花夏ゆりん/早花まこ
店主 (すがた香) 香音有希
記者 (風早優)未来優希
…初演から10年たって、同役で出演したのは京さんただお一人。
初演に出演していたのも、五峰・未来の二人だけ。っていうか、そもそも、主演の凰稀を含む86期で2000年入団。ハマコさん以外の組子は、初演時にはまだ一人も劇団に入っていなかったんですね(T T)。
あのときの胸の痛みから、10年。
プログラムで荻田さんが「出演者の多くはこの10年の間に花園を去りました」ということを書かれているとおり、初演で役付きだった人で、今も劇団に残っているのは美穂・安蘭・立樹の3人だけ。
時は流れ、時代は変わり。
荻田さんも「新進気鋭の若手演出家」から、立派なヒットメーカーとして認められ、
あれだけの実力派俳優をかき集めた名作なのに、随分集客に苦労していたこの作品も、若手主体のワークショップにも関わらず、立派に「荻田ファン」でバウが埋まる時代になったんですねぇ…(感慨)。
というわけで。
いやー、良かったです。生まれ変わった「ボニー&クライドとの邂逅」。
初演も大好きでした。
一回観て号泣して、無理やりもう一回観た……と、思います。(たぶん)
あまり細かくは覚えてないんですけど、とにかくボニーに物凄く感情移入してしまって、マジ泣きしたのが印象的。
月影さんのベストアクトは、間違いなくボニー。この作品が決まる前から「宝塚おとめ」の「やりたい役」にボニーをあげていらっしゃった月影さん。宝塚娘役として「ボニーがやりたい」っていうトップってどうよ、と思いつつ(笑)、本当にやりたかったんだろうなあ、と納得もしたんですよね。
ラスト近くに、クライドから渡された花束を、軽く肩をすくめて「ぽいっ」と投げ捨てる、その鮮やかさ。
ロイのダンスの冷酷さに翻弄される、脆さ。
包容力も余裕もない、乾ききった心を抱えた、愛に渇いた女。
クライドに「愛したい」とささやきながら、自分の愛の泉が枯れきっている自覚。
もう「愛」が溢れてくることはない、その絶望と恐怖。
ああ、ボニーってこういう人だったんだなあ、と、すとん、と落ちてきた想い。
そして、再演。
みなこちゃんのボニーを観て驚いたのは、その優しさ、でした。
二幕冒頭で、「幸運にも死者の出なかった」成功した強盗事件の様子が描かれますが、あそこで、妊婦さんにお金をあげたり、シスターに寄付をしたりといったことは同じようにグンちゃんもやっていたと思うんですよね。(違いましたっけ…?覚えてない)
それに、ジョーンズを抱きしめる仕草も、繰り返しあった記憶がある。
なのに。
それでも、グンちゃんのボニーからは「包容力」とか「優しさ」とか「甘さ」とか…そういった“ふんわりとしたもの”を、全く感じなかったのです。
ただただ、西部の砂のように乾いた心。
ジョーンズを抱きしめる仕草は、むしろ大人が子供のぬくもりにすがり付くようで切なかったし、義賊っぽいエピソードは、むしろ嘲弄するように、得たものを投げ捨てているだけのように見えたのです。
乾いて、渇いて、すぐ側に水さしがあるのに縛りつけられて届かない罪人のように、海の水をすべて飲みつくしたいのに呑み方がわからない海の神のように、渇きを癒すすべを知らない子供。
クールでハンサムで投げやりな、そんなボニーだったグンちゃん。
でも、みなこちゃんは。
もっとずっと、地に足のついた、子供だった。
世の中のすべてを闇雲に恐れて、怯えて、びくびくし通しの、子供。
ロイの幻想が登場するたびに酷く怯える仕草。
ちょっとうがちすぎかもしれませんけど、ドメスティック・バイオレンスの被害者っていう設定なのかなー、と思いました(映画えはどうでしたっけ…?)。
暴力に馴れている様子も、にもかかわらず、人が傷つくことに敏感なところも。
妊婦に祝い金を渡す仕草、
ジョーンズを抱きしめる腕のまろやかさ、
クライドに見せる辛そうな貌の甘さ…
被虐的で優しくて甘ったれな、そんな、ボニー。
グンちゃんがアメリカ中西部の砂漠地帯を舞台にした「俺たちに明日はない」の『ボニー』だったとしたならば。
みなこちゃんは、梅雨時の日本で上演される「凍てついた明日」にふさわしい『ボニー』、でした。
湿り気と柔らかさと温かさ、そして曖昧さ。
可愛くて、表情豊かで、スタイル抜群で、衣装がどれも良く似合って、
声が柔らかくて、高くも低くも使い分けられて・・・・
何よりもあの被虐性に、ものすごくソソられました(*^ ^*)。
こんな猫ですみません。
そして。
初演が「ボニー&クライド」で、
再演が「ボニー&クライドとの邂逅」であった意味をひしひしと感じました。
明日は多分、この続きはかけないのに、
こんなとこで切ったらまずいような気はするのですが。
このうえテルくんのことを書き始めると軽く5000字突破する自信があるので、今日はここまでにさせていただきますm(_ _)m。
それにしても、ホントにみなこちゃんサイコーだった!あああ、もっと観たい!
……花組に組替えして「銀ちゃん」で小夏してくれないかなあ(祈)物凄く嵌りそう。…つかこうへいさん的に、娘にやらせたい役なのかどうかわかりませんけどね……。
.