宙組新人公演「誰がために鐘は鳴る」。



まずは、今公演で新人公演を卒業する90期について(^ ^)。
いやー、90期って、どの組も面白い期ですよね。
なんていうか、『華やかな根っからのスター!』みたいな人は少ないけど、いぶし銀の輝きをもつ人が多い、というか、
期全体の粒がそろっている、と言ってもいいかも。とにかく、誰を観ても面白くて、みんな巧いなあ!と感心するんですよね。目立たないけど、何気に美形も多いし。
まあ、毎年年の後半の新公を観るたびに「この期が卒業して来年から大丈夫かな……」と思うことって多いのですが、この宙組新公は、ひさしぶりにその感を強くしました。

まあ、今回はやっぱり、アグスティンのいちくんと、専科さんの役をされた二人が突出して良かったです。この三人が若いメンバーをよく引っ張って、この難しいお芝居を支えんだろうな、と思いました。



琴羽桜子のピラール(京三紗)
素晴らしかった!
(藤咲)えりちゃんといい、桜子といい、元々好きな役者だから良く見えるのかなあ?とも思ったりしたのですが、、、いや、そんなことはない!二人とも本当に良かったと思います。
そっか、ピラールってジプシーなんだ!と改めて思いました(ごめんなさいごめんなさい)。

ピラールっていうのは本当に難しい役で、ある程度年齢を重ねなければ出せない味というのもあるので、京さんのピラールもとても好きなんですよね。
パブロが雷管と導火線を奪って出て行った後、手相がどうこう言ってロベルトを苛立たせる場面での年寄りらしいくどさとか、ああいうのはさすがだったし(桜子は気風が良すぎてああいうことをぐちゃぐちゃ言いそうにないし/笑)。

ども、桜子の溌剌とした若々しいピラールも、とても魅力的でした(*^ ^*)。
ゲリラ隊メンバーの信頼を勝ち得て、指導者としてパブロに取って替るに十分な激しさと強さ、そして、美しさ。身のこなしが鮮やかで、長いスカートをはいてはいても、えりちゃんのローサよりずっと強そうに見えたのも良かったです。そうでないと、男どもが従わないよね。

とにかく「気風のいい」「カッコいい」そして、「美しい」。
本当に佳い女だなあ、と思いました♪



風羽玲亜のパブロ(星原美沙緒)
これがまた格好良かった(*^ ^*)。
髭はつけず、浅黒くて精悍な、まだまだ現役まっさかりの「首領」という印象。
顔に傷をつけて貫録を出していましたが、あれも自分で考えたのかなあ。スタイルはあまり良くない人ですが、衣装の着こなしやいろんなところで工夫して、『二枚目のパブロ』を創っていました。

歌える人ですが、ロバートへの不信をぶつけるナンバーをちゃんと芝居で歌ってくれたのは良かったな、と。台詞の声も朗々と通るタイプなんですが、語尾の言い捨て方を工夫してヤサグレた感じをだしたり、本当にいろいろ工夫を凝らしていましたね。
雷管と導火線を「川に投げ捨てちまった」あと、猛然と寂しくなるのが納得できる、さびしがり屋で強がりな、それでいて一度キレたら何をしでかすか判らない怖さを持った男、でした。

パブロ「急にさびしくなっちまったのさ……」
ピラール「さびしくなっちまったんだね、わかるよ!」

というやりとりに、かなりグッときました(^ ^)。
なんでだろう。不思議だ……。
(この場面が良かったのは、「おっかしな夫婦だぜ!」という締めの台詞が巧かったせいもある……かも)



光海舞人のアンセルモ(珠洲春希)
あらためて、本公演のアンセルモは良い役だったなあ~~~。
かなり細かく削られていた今回の新人公演。正直、アンセルモはちょっと目立たない役になっていたような気がします。もちろん「見せ場」はあるんですが、そこにつながる細かいやり取りが減っているので、ちょっと感動も目減りしたかな、と。
でも良かったです。顔がほとんどわからないくらいびっしりした髭でしたけど(^ ^)、似合っていたし、声も仕草も相当研究したんだろうなあ、と。
ロバートの愛月くんとの経験の差が良い意味で出せて、とても良かったと思います(*^ ^*)。ロバートとの会話、やっぱり良い場面だったなあ~~~♪



美影凜のサラ(鈴奈沙也)
美人で気風がよくて素敵だった!
判りやすい美人で、体つきも女らしい美影さん。夫と一緒に闘うために銃を持つ女ではなく、夫の後ろで彼の世話をし、彼の背中を護る女。
エル・ソルドのあっきー(澄輝さやと)のちょっとした仕草にも細かく反応して、阿吽の呼吸で動いてくれる彼女は、本当に得難い妻なんだろうな、と思いました。

パコに向ける優しい顔とか、いろんな顔がどれもよく似合っていて、短い台詞にも重みがあって。柔らかな低い声が魅力的な、とても素敵なサラでした♪



花音舞のメリーナ(美風舞良)、千鈴まゆのタマラ(綾音らいら)
ラ・グランハチームの大人二人。

花音舞さんは、おっとりと落ち着いた感じが「お母さん」っぽくてとても良かったです。美風さんはどちらかというとチャキチャキした感じですが、花音さんは花音さんらしい、ちょっと疲れているけれども、優しくて包容力のある母親でした。パコの桜木みなとくんに向けるまなざしが優しくて、なんか嬉しくなった(^ ^)。
エル・ソルドがパコに「母親を護れ。それがお前の役目だ…」と言い聞かせている間、ちょっと曖昧に微笑みながら、心配そうに息子を見ている様子がとても良かったです。

今回の公演で卒業する千鈴まゆちゃんは、相変わらずイケイケな感じで、やっぱり目が離せません(^ ^;。自分自身の最後の台詞になる「こないだのジャム、美味しかったわ!!」という台詞を言われる側に回っているのが密かなツボでした(^ ^)。

翌日、全滅したエル・ソルド隊のキャンプに卵を持って行った二人が、パブロ隊のキャンプに現れたときの辛そうな様子が良かったです。ショックを受けたパコを心配するメリーナ、何かの覚悟を決めつつ、明るくふるまうタマラ。短い場面ですが、パコの好演と共に、強く印象に残りました。



天風いぶきのイグナシオ(蓮水 ゆうや)
特に可もなく不可もなく……という感じでしたが、役割はきっちり果たしていたと思います。
天風さんはこれからどんな役者になるんだろうなあ……。




そういえば、昨日書くのを忘れたのですが、小柳さんによる変更点の一つとして、ロバートの心情のモノローグが全面的にカットされていました。
「怒ってはいけない……」とか、「70時間で70年分の人生を」とか、「お前は二日後の死をまだ知らない」とか。

どれも、祐飛さんを観ていれば何を考えているのか判るので、わざわざ録音で流さなくてもいいのになーと思っていたので、すっきりカットした勇気に拍手したいです。
そして、モノローグが無い分、愛月くんがすごく一生懸命気持ちを伝えようとがんばっていて、とっても微笑ましかったです♪


小柳さん、GJ
今回の新公は、もしかしたらその一言に尽きるのかもしれません(べた褒め)。