舞姫−Meine Liebe−
2008年3月22日 宝塚(花) コメント (6)宝塚花組公演「舞姫」。
さすがは、予定になかった再演東上を実現させただけのことはある作品でした。おかげで、書きたいことがとてもたくさんありすぎて、とても困っています(^ ^;
うーん、先にキャストの話をさせていただこうかな。
とりあえず、メインキャストから。
■太田豊太郎:みわっち愛音羽麗)
優しくて包容力のあるトヨさんでした。
でも……ごめんなさいっ!!先にフォンダリさんを観てしまうと、なんていうか物足りないっていうか;;;;;;
上演された順番どおりに観ていたならば。たぶん、ねこの好みからして
トヨさんステキだー!と感動して、
ジャンヌさんの麗しさに惚れ込んで、
そして、フォンダリさんで完落ちしたはず…と思うのですが。
…残念ながら。
フォンダリさんの大人の魅力に落ちかけた身には、トヨさんはあまりにも青すぎて(汗)、ステキだけどもったいないなーと思ってしまったのでした(^ ^;ゞ。
いやいや、ステキでした本当に。歌はちょっと音程あやうかったけど、声がすごく好きです。中日のときも良い声や〜と思いましたが、さすがに持ち歌だけあってのびのび歌っていらっしゃいました。音響の悪い青年館で、よくあれだけ聴かせてくれたものだ、と感心しきりです。
■相沢謙吉 まっつ(未涼亜希)
や、やっと観れた………
お噂はかねがね、としか言いようがないくらい、散々きかされたまっつの相沢。愛が溢れすぎててヤバい、と評判だったまっつの相沢。
…惚れ直しました(うっとり)。
今なので正直に書きますが。先週末の初見時は、ちょっと物足りなかったのです、実は。
ま、バウでの評判を散々聞いていたので、期待しすぎたかな?という感じで。それもあって、最初日の日記には、まっつのことは何も書かなかったのですが。
一幕は可愛らしいけどあまり存在感がなく、二幕はあえて感情を抑えた演技のまま最後までいってしまって、ものすごく冷酷な人みたいになっていたのが気になって。
うわさに高い(苦笑)“豊太郎への愛”は確かにあったけれども、それがすごく身勝手な愛に見えたのです。豊太郎の幸せを祈る、彼のための愛ではなく、自分が彼を喪いたくないだけの恋情にみえた。
それはそれで、腐女子的には楽しいキャラクター造形でしたけれども、宝塚作品としてそれはどーよ、という正論以前に、あまり魅力的な男には見えなかったんです、私には。相沢単体で。
それが。
小雨降る千秋楽、
相沢が、ものすごく切なかった。
振り絞るように、全身で豊太郎への思いを歌いあげる相沢。
小さな身体をいっぱいにはりつめて、脚の先までびりびりと震えるくらい、
彼の思いが、鳴りひびいている。
エリスの心を叩く音。
空気が揺れる。
エリスの心を切り裂く刃。
時間が裂ける。
そして、とまる、とけい。
エリスの心が壊れてしまったことを知ったときの相沢の表情が、くるしいほど切なくて。
相沢の、
ロシア遠征の帰り道、豊太郎が天方大臣に「要職を用意するから、ぜひ一緒に日本へ帰ってもらいたい」と言われたときの嬉しそうな貌が、
「この仕事をやれるのは、太田豊太郎をおいて他にはいない」と言い切ったときの自慢げな貌が、
卒業証書をにぎりしめて「さすがは太田豊太郎だ!」というときの、憧れにみちた晴れやかな笑顔が、
壊れてしまったエリスにすがりつく相沢の背中から、彼自身の幸せな記憶が、こぼれおちていく。
相沢はたぶん、もう幸せにはなれないのだろう。
彼はずっと、このエリスを背負って歩いていくのだ、
たった独りで。
そんなことを思った、千秋楽の夜。
まっつがこの物語の後の相沢について、どんなイメージを持っていたのか聞いてみたかったな、と思いました。
誰のことも愛さずに、心を閉じて生き、友情と国への忠義に殉じる男のイメージを抱いたのは、私の気のせいなのでしょうか…?
逆に、みわっちの豊太郎は、なんだかんだ言いつつも可愛い嫁さんを貰って、穏やかでつつましい幸せを得るような気がします。
そして、なにかの折に「私はね、若い頃に激しい恋をしたんだよ…。全てを捨てても悔いはないと思ったんだ。それを、親友に止められてね…」と、穏やかに微笑んで話すの。
ねこの勝手なイメージですごめんなさいm(_ _)m。
でも。
みわっちの豊太郎には、エリスの哀しい運命を受け入れる大きさがあったと思うのです。
エリスという純粋すぎる少女の“夢”となるために必要な美しさと優しさと、
“夢の中の少女”のキレイすぎる純粋さに引きずられない、生きること、楽しむことへの熱意とおおらかな愛情と。
でも、まっつの相沢にはそのどちらもなかった。
自分に厳しく、他人にも厳しい、理想的な文官。
“支配者”層に属するものとして、“俗人”とは一線を画するようなところがあったのかもしれません。
国のため、日本のために、自分にはなにができるのか、そのことばかりを考えていた、男。
“国のため、日本のため”に、豊太郎を取り戻さなくてはならない、と、
異郷の女を愛しても、いい。
それでも、お前が本当に愛しているのは、日本のはずだ、と。
お前を本当に必要としているのは、異郷の女だけではない。
日本が、お前を必要としている。
そう、言いたかった。
大きな声で自慢したかった。自慢の友を。
人々の前で、大きな声で叫びたかった。見せつけたかった、
…これが俺の、自慢の友だぞ、と。
目の前で壊れたエリス。
目の前に居るのに、手の届かない、友。
信じていた理想、信じていた真実、
……扇を握って、微笑むエリス……
青年館で3回観て。
ラストの病院で、豊太郎とエリスの二人から相沢が眼を逸らすタイミングが3回とも違っていたのが印象的でした。
…私は、千秋楽の、ギリギリまで瞬きもせずにみつめていて、最後の最後に視線を落とす相沢に、泣かされました。
バウの評判で想像していた相沢は、もっとアグレッシブで情熱的に豊太郎を愛して(←おい)いるのだとばかり思っていたのですが…
あまりにも痛々しい、自分自身に厳しすぎる相沢で、イメージしていたのとは全然違っていたのですが、両方ご覧になった方は、どう思われたのでしょうか…?
■原芳次郎 みつる(華形ひかる)
原作にはいない、架空のキャラクター。私費で独逸へ留学した画家の卵。美大に通っていたが、実家が傾いて仕送りがとまり、貧乏生活を送っている…。
物語世界に必要、というよりは、かなり植田景子さんの趣味が入った、景子さんの思いを語らせるために創られた“芸術家”キャラですが。
いやー、良かったです。見た目もハマっていたし、なにより歌をがんばってた(*^ ^*)。今まであんまり印象に残ったことがなかったみつるくんですが、今回かなりキタなー、って感じです。
やりやすい役ではありましたけれども、それ以上によくがんばってました。
方言はちょっと違和感あったけどね。それじゃ石見じゃなくて土佐だよ、とちょっと思ったり。あれで、もう少しマリィへの愛が見えると良かったなーと(みつるくんの芝居というより、景子さんの演出がそこはちょっと省略気味な感じでしたが…)。
■マリィ(華月)由舞
芳次郎の恋人。踊り子だと聞いていたので、観るまでずっとエリスの同僚だと思っていたのですが、由舞ちゃんはもっと妖しげなところの“踊り子”さん、たぶんストリップダンサー系みたいでしたね。……由舞ちゃんならそりゃー稼げるだろうし、恋人だったら稼いでもらいたくないだろうなあ……(嵌り役)。
由舞ちゃんのショー場面がなかったのは不満です。きっぱり。
エリスのいるヴィクトリア座があまりにも夢々しく可愛らしい演し物だったので、おどろおどろしい『キャバレー』チックな由舞ちゃん出演のショー(できれば着物を脱いだみほちゃんメインで)があれば、あの時代のベルリンの光と影、って感じでよかったと思うのですが……
まぁ、その場面を入れるために削るべき場面もないので、仕方ないです。わかってはいるんですけどね(; ;)。
以下つづく。
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さすがは、予定になかった再演東上を実現させただけのことはある作品でした。おかげで、書きたいことがとてもたくさんありすぎて、とても困っています(^ ^;
うーん、先にキャストの話をさせていただこうかな。
とりあえず、メインキャストから。
■太田豊太郎:みわっち愛音羽麗)
優しくて包容力のあるトヨさんでした。
でも……ごめんなさいっ!!先にフォンダリさんを観てしまうと、なんていうか物足りないっていうか;;;;;;
上演された順番どおりに観ていたならば。たぶん、ねこの好みからして
トヨさんステキだー!と感動して、
ジャンヌさんの麗しさに惚れ込んで、
そして、フォンダリさんで完落ちしたはず…と思うのですが。
…残念ながら。
フォンダリさんの大人の魅力に落ちかけた身には、トヨさんはあまりにも青すぎて(汗)、ステキだけどもったいないなーと思ってしまったのでした(^ ^;ゞ。
いやいや、ステキでした本当に。歌はちょっと音程あやうかったけど、声がすごく好きです。中日のときも良い声や〜と思いましたが、さすがに持ち歌だけあってのびのび歌っていらっしゃいました。音響の悪い青年館で、よくあれだけ聴かせてくれたものだ、と感心しきりです。
■相沢謙吉 まっつ(未涼亜希)
や、やっと観れた………
お噂はかねがね、としか言いようがないくらい、散々きかされたまっつの相沢。愛が溢れすぎててヤバい、と評判だったまっつの相沢。
…惚れ直しました(うっとり)。
今なので正直に書きますが。先週末の初見時は、ちょっと物足りなかったのです、実は。
ま、バウでの評判を散々聞いていたので、期待しすぎたかな?という感じで。それもあって、最初日の日記には、まっつのことは何も書かなかったのですが。
一幕は可愛らしいけどあまり存在感がなく、二幕はあえて感情を抑えた演技のまま最後までいってしまって、ものすごく冷酷な人みたいになっていたのが気になって。
うわさに高い(苦笑)“豊太郎への愛”は確かにあったけれども、それがすごく身勝手な愛に見えたのです。豊太郎の幸せを祈る、彼のための愛ではなく、自分が彼を喪いたくないだけの恋情にみえた。
それはそれで、腐女子的には楽しいキャラクター造形でしたけれども、宝塚作品としてそれはどーよ、という正論以前に、あまり魅力的な男には見えなかったんです、私には。相沢単体で。
それが。
小雨降る千秋楽、
相沢が、ものすごく切なかった。
振り絞るように、全身で豊太郎への思いを歌いあげる相沢。
小さな身体をいっぱいにはりつめて、脚の先までびりびりと震えるくらい、
彼の思いが、鳴りひびいている。
エリスの心を叩く音。
空気が揺れる。
エリスの心を切り裂く刃。
時間が裂ける。
そして、とまる、とけい。
エリスの心が壊れてしまったことを知ったときの相沢の表情が、くるしいほど切なくて。
相沢の、
ロシア遠征の帰り道、豊太郎が天方大臣に「要職を用意するから、ぜひ一緒に日本へ帰ってもらいたい」と言われたときの嬉しそうな貌が、
「この仕事をやれるのは、太田豊太郎をおいて他にはいない」と言い切ったときの自慢げな貌が、
卒業証書をにぎりしめて「さすがは太田豊太郎だ!」というときの、憧れにみちた晴れやかな笑顔が、
壊れてしまったエリスにすがりつく相沢の背中から、彼自身の幸せな記憶が、こぼれおちていく。
相沢はたぶん、もう幸せにはなれないのだろう。
彼はずっと、このエリスを背負って歩いていくのだ、
たった独りで。
そんなことを思った、千秋楽の夜。
まっつがこの物語の後の相沢について、どんなイメージを持っていたのか聞いてみたかったな、と思いました。
誰のことも愛さずに、心を閉じて生き、友情と国への忠義に殉じる男のイメージを抱いたのは、私の気のせいなのでしょうか…?
逆に、みわっちの豊太郎は、なんだかんだ言いつつも可愛い嫁さんを貰って、穏やかでつつましい幸せを得るような気がします。
そして、なにかの折に「私はね、若い頃に激しい恋をしたんだよ…。全てを捨てても悔いはないと思ったんだ。それを、親友に止められてね…」と、穏やかに微笑んで話すの。
ねこの勝手なイメージですごめんなさいm(_ _)m。
でも。
みわっちの豊太郎には、エリスの哀しい運命を受け入れる大きさがあったと思うのです。
エリスという純粋すぎる少女の“夢”となるために必要な美しさと優しさと、
“夢の中の少女”のキレイすぎる純粋さに引きずられない、生きること、楽しむことへの熱意とおおらかな愛情と。
でも、まっつの相沢にはそのどちらもなかった。
自分に厳しく、他人にも厳しい、理想的な文官。
“支配者”層に属するものとして、“俗人”とは一線を画するようなところがあったのかもしれません。
国のため、日本のために、自分にはなにができるのか、そのことばかりを考えていた、男。
“国のため、日本のため”に、豊太郎を取り戻さなくてはならない、と、
異郷の女を愛しても、いい。
それでも、お前が本当に愛しているのは、日本のはずだ、と。
お前を本当に必要としているのは、異郷の女だけではない。
日本が、お前を必要としている。
そう、言いたかった。
大きな声で自慢したかった。自慢の友を。
人々の前で、大きな声で叫びたかった。見せつけたかった、
…これが俺の、自慢の友だぞ、と。
目の前で壊れたエリス。
目の前に居るのに、手の届かない、友。
信じていた理想、信じていた真実、
……扇を握って、微笑むエリス……
青年館で3回観て。
ラストの病院で、豊太郎とエリスの二人から相沢が眼を逸らすタイミングが3回とも違っていたのが印象的でした。
…私は、千秋楽の、ギリギリまで瞬きもせずにみつめていて、最後の最後に視線を落とす相沢に、泣かされました。
バウの評判で想像していた相沢は、もっとアグレッシブで情熱的に豊太郎を愛して(←おい)いるのだとばかり思っていたのですが…
あまりにも痛々しい、自分自身に厳しすぎる相沢で、イメージしていたのとは全然違っていたのですが、両方ご覧になった方は、どう思われたのでしょうか…?
■原芳次郎 みつる(華形ひかる)
原作にはいない、架空のキャラクター。私費で独逸へ留学した画家の卵。美大に通っていたが、実家が傾いて仕送りがとまり、貧乏生活を送っている…。
物語世界に必要、というよりは、かなり植田景子さんの趣味が入った、景子さんの思いを語らせるために創られた“芸術家”キャラですが。
いやー、良かったです。見た目もハマっていたし、なにより歌をがんばってた(*^ ^*)。今まであんまり印象に残ったことがなかったみつるくんですが、今回かなりキタなー、って感じです。
やりやすい役ではありましたけれども、それ以上によくがんばってました。
方言はちょっと違和感あったけどね。それじゃ石見じゃなくて土佐だよ、とちょっと思ったり。あれで、もう少しマリィへの愛が見えると良かったなーと(みつるくんの芝居というより、景子さんの演出がそこはちょっと省略気味な感じでしたが…)。
■マリィ(華月)由舞
芳次郎の恋人。踊り子だと聞いていたので、観るまでずっとエリスの同僚だと思っていたのですが、由舞ちゃんはもっと妖しげなところの“踊り子”さん、たぶんストリップダンサー系みたいでしたね。……由舞ちゃんならそりゃー稼げるだろうし、恋人だったら稼いでもらいたくないだろうなあ……(嵌り役)。
由舞ちゃんのショー場面がなかったのは不満です。きっぱり。
エリスのいるヴィクトリア座があまりにも夢々しく可愛らしい演し物だったので、おどろおどろしい『キャバレー』チックな由舞ちゃん出演のショー(できれば着物を脱いだみほちゃんメインで)があれば、あの時代のベルリンの光と影、って感じでよかったと思うのですが……
まぁ、その場面を入れるために削るべき場面もないので、仕方ないです。わかってはいるんですけどね(; ;)。
以下つづく。
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