府中の森芸術劇場にて、月組全国ツアー公演「JIN/Fantastic Energy」を観劇いたしました。


雪組さんで上演されてから、1年ちょっと。東京組の猫にとっては、ちょうど一年、、、という気がする再演ですが、ずいぶん雰囲気の違う作品に仕上がったな、と思いました。

初演はやっぱり、トップコンビのサヨナラ公演で、他にも花帆杏奈ちゃんや詩風翠さんも卒業で……作・演出の齋藤さんの愛情がいっぱいに詰まった、思い出深い作品でした。
今回、全国ツアーということで10分ほど短くなり、詩風さんが演じた佐吉は役ごとなくなり、杏奈ちゃんの夕霧(都月)も最後の見得切りがなくなって、、、全体に枝葉が刈りこまれて、すっきりしたような気がします。

ただ、同時に主筋まで刈り込んでしまったような、そんな印象もありました。原作は長大な連作作品ですし、齋藤さん自身も初演を群像劇として組み立てていたと思うので、周囲のエピソードをおさえると、結果的に主筋も沈んでしまうんだと思うんですよね。
あと、舞台機構ですが、意外に銀橋の有無はこの作品に大きな影響を与えているなと思いました。銀橋の上と本舞台に分かれることで、「現代」と「過去」の距離感(遠さ)が感覚的に理解でき、「彼岸と此岸」にちゃんと見えたんですよね。それが、同じ本舞台で並んでしまうと、理性でワンクッションおかないと納得できないところはあるな、と。

まあでも、沢山のキャラクターが真剣かつ笑顔でその「時代」を生きていて、その、月組らしい端正な小芝居がすごくよかったです(*^ ^*)。まだ公演は始まったばかりなのに、いい空気ができているなと。これで、仁先生が「この場所で生きていく」と決意するまでの心境の変化と、決意した後の柔らかさが見えてくるとぐっと面白くなるはずなので、まさおには、もっと周りを信じて、劇場の空気に乗っかってほしいなと思いました。


橘咲のちゃぴ(愛希)は、とにかく可愛くて健気で一途な咲でした。……あの泣き虫ちゃぴが、龍馬も恭太郎も倒れ、仁先生もいなくなった後、仁友堂を泣きながら守ったんだなあと思うと泣けてくるんですよね(T T)。
「武士の娘」らしい強さはみみちゃん(舞羽)の方が上だったかなと思いますが、ちゃぴの健気さというか、必死で虚勢をはって「咲は武士の娘です!」と譲らないところが本当に可愛くて、ですねっ!!!(←落ち着け)


龍馬のコマちゃん(沙央)は、見た目の豪放磊落さと心奥の底知れなさのギャップをちゃんと表現していて、とても素敵でした♪ 口にする言葉や仁たちに見せる行動の軽やかさと、腹の中に抱えたモノの熱量のバランスがよくて、とても納得できる龍馬でした。
チギちゃんの二面性のある龍馬も良かったし、キムちゃんの仁にはその方が似合っていたような気がしますが、直情的なまさおの仁には、懐深く理想を抱えた優しい龍馬がとても合っていたような気がします。
公演後半の龍馬を観てみたかったです。。。。全国ツアーって難しいなあ(涙)


恭太郎のみやるり(美弥)。まっつ(未涼)の恭太郎もすごく好きだったけど、みやるりもとても良かったです!「あなたのそういうところが嫌いなんだ!」の言い方とか、記憶の中のまっつはもっと嫌みな感じでしたが、みやるりはちょっと諦めたように言うのが印象的でした。雪組版だとトップ同期のまっつが恭太郎で87期のチギちゃんが龍馬でしたが、月組は逆にトップ同期のコマちゃんが龍馬で下級生のみやるりが恭太郎で、、、どちらもありだけど、脚本的には恭太郎が下位のほうが解りやすいな、と思いました。(←言葉遣いとか)
妹の咲への愛情と、茜(晴音)をはじめとする町娘たちへの優しさと、旗本の総領息子としての信念と、そして、勝先生の弟子としてのプライドと確信と。恭太郎という人物を形成するさまざまな要素をちゃんと「一人の人物」としてまとめあげてくれて、物語のクライマックスでの行動にも説得力がありましたし、青天姿も素敵でした(*^ ^*)
殺陣は……がんばれ!!


勝先生のるうちゃん(光月)。初演がみっちゃん(北翔)だっただけに、ちょっと心配していたのですが、どうしてどうして、素晴らしかったです!!ちゃきちゃきの江戸っ子で、幕府の重鎮で、子供のように好奇心でいっぱいな、立派な大人。早口でべらべら喋っているのに、五月蠅くない落ち着いた声、芝居の間合いの良さ。とにかく、出過ぎず引きすぎずで、文句なく本当に良かったです!こういう役だったのか……と目から鱗でした。そして、あらためて新人公演の真那くんの勝先生を観たかった……!!と思いました(^ ^)。CSさん、早く流してくれないかなあ(^ ^)(12月に本公演の1st runなんだから、まだだいぶ先じゃない?)


佐分利先生のとしちゃん(宇月)と、山田先生のからんちゃん(千海)。可愛かった!!出演者が半分になったあおりで、仁友堂のメンバーは全部カットされてしまったので、完全にこの二人+仁と咲の4人で切り盛りする羽目になったわけですが(^ ^)、とても和気藹藹と盛り上がっていて、楽しそうに演じてくれていました。
仁先生が「この場所で生きていく」と決意するには、まずはやはり仁友堂のメンバーの笑顔が重要なわけで、月組の誇る芝居巧者な二人ががっつり組んで芝居している仁友堂は、本当に楽しそうな空気があったと思います。小柄な二人ですが、態度や話し方で鷹揚な雰囲気を醸し出していたからんちゃんと、ひたすら猪突猛進で明るい人物を楽しそうに演じていたとしちゃん。月組の芝居力もまだまだ大丈夫、嬉しかったです。


高岡さまのちなつちゃん(鳳月)。いやはや、89期の恭太郎どころか、87期の龍馬より、ちゃんと格上に見える92期のちなつちゃんの貫録は、さすが、皇子経験者は違いますね(←そこ?)。
丸顔の白い頬に傷、という、齋藤さんお得意のキャラクター(初演も再演も)ですが、他の人のエピソード場面が細かく削られている分、フルで残った高岡さま(←元々出番が少なかったともいう)は、初演より印象が強くなっていたような気がします。
アルバイトの町人も可愛かったです~(*^ ^*)。


千吉のたまきち(珠城)。初演のともみん(夢乃)とはずいぶん印象が違っていて、驚きました。ともみんの千吉は可愛かったけど、たまきちは恰好良かった(*^ ^*)。生真面目で実直で不器用で、とても優しい千吉……たまきちの茂次とか、案外似合うんじゃないかなんて思いました。(嫁に来るのか来ねぇのか、どっちでぃっ!?)(あー、でも、たまきちは尻に敷かれている姿が似合うから、茂次は違うかも……?)



他にも、中岡慎太郎(美翔)の傾城的な美しさだとか、読売(響)の大活躍っぷりだとか、ルロンさん(瑞羽)の違和感のなさだとか、いろいろ語りたいことはたくさんあるのですが。

とりあえず、一つだけ叫んでもいいですか。
ちゅーちゃん(咲希)のお駒さんが観たかったよーーーーっ!!





それにしても。
一年前、雪組さんは東宝で「仁」を上演していたわけですが、月組トップコンビは、そのちょっと前まで「愛するには短すぎる」で全国を回っていたんですよね……。
まさおのフレッド、可愛くて好きだったなあ……(←莫迦な子ほどかわいい)(CS放送鑑賞なう)。
仁は現代人だから、作品の舞台は江戸時代がメインでも、オスカルやアンドレやビルやルパンより、フレッドにずっと近い役だと思うのですが……まさおの台詞回しは、むしろルパンに近いですよね。なぜ?齋藤脚本の仁先生は、あんまり発散系の人物像ではないから……でも、もうちょっと現代人っぽい喋り方でも構わないと思うんだけどなあ……(ぶつぶつ)