日生劇場にて、ミュージカル「ジキル&ハイド」を観劇いたしました。



日本初演からずっと主役を演じてきた鹿賀丈史さんが降りられて、ニューキャストでの初演。
素晴らしかった!!

私はもともとこの作品の大ファンで、ブロードウェイオリジナルキャストのCDは死ぬほど聴いたし、現地まで観に行って大感激して、日本初演を待ちわびていたのですが、鹿賀さんのジキルやマルシアさんのルーシーは、あまり私のイメージに合わなくて……(- -;
「Facade」「Muder, Muder」などのアンサンブルナンバーの素晴らしさはブロードウェイより良いぞ!と思いましたが、あとはちょっと違うな、と思っていたのですが。

新しいキャストは、石丸さんのジキル、濱田めぐみさんのルーシー、笹本怜奈さんのエマ、そして吉野圭吾さんのアターソン!!
キャストが発表されたときから、今の日本ミュージカル界で、ある程度ベテランを揃えて上演することを考えたら、私的にはかなりベストだなと思っていたのですが、期待以上に良かったです。



全体の演出はそんなに大きく変わってはいなかったと思いますが、細かいところはいろいろありました。
まず、幕開き冒頭のジキルのソロが一曲増えていて、ちょっとびっくりしました(@ @)。良い曲だけど、慣れるまでちょっとかかりそう。

この一曲の影響か、全体にジキルの印象が強くなった、というか……鹿賀さんは芝居の方向性としてもハイドの異常性が印象的だったのですが、石丸さんはあくまでもジキルの一部としてのハイドだったと思います。
それが物足りない方というもいらっしゃるかもしれませんが、私はすごく納得できたんですよね。なんていうか、ハイドこそジキルの最大の理解者であるという設定が垣間見えるというか。ハイドに理解され、憐れまれている自分を否定しようと、逆方向に突っ走っていくジキルの辛さ。もっと早い段階で自分の中のハイドを受け容れていればあんなことにはならなかったかも……と思ったりもするんですよね。
もちろん、実際には、ハイドが恋したルーシーはジキルに片思い中なわけで、平和な解決は望めないのですけれども。

すれ違う愛と、恋。哀しい物語だな、とあらためて強く思いました。


ルーシーのめぐみちゃんは、あまり娼婦らしい色気がなかった(というか、衣装が似合ってなかった)のと、「どん底」のセットやダンスがつまらなくなっていたのでだいぶ割を食ってましたが、「A NEW LIFE」でお釣りがきました。
素晴らしかった!!

エマの玲奈ちゃんは、嵌り役。若いのに包容力があって、大先輩である石丸さんや濱田さんと対等に戦っている感じが本当に良かった!

吉野くんのアターソンも嵌り役でした!この役はいわゆる「おいしい役」で、今までのキャストもみんな良かったんですが、吉野くんの良い意味での軽さというか明るさがジキルにとってどんな意味を持つのかが、すごく鮮明に出ていたと思います。
石丸さんと吉野さんの並びも良かった。この二人が組んだ舞台をもっと観てみたいな、と思いました。


ストライドは畠中さん。
今まで、彼の印象はただの「嫌味な男」で、彼がエマに片思いしていることがこんなに鮮明に表現されていたのは初めてのような気がします。……いままで観てなかっただけかなあ?いやでも、禅ちゃんがやってたんだけど。おかしいな。
ストライドとジキルの間にあるのがただの敵愾心ではなく嫉妬であり、この二人が恋仇だというのがこんなに物語の印象を変えるとは思いませんでした。なるほど。
いや、ハンサムで恰好よくて歌が迫力あって、そして、殺されるシーンのアクションの派手さにはちょっと笑ってしまいましたが(汗)、畠中さんらしくてとっても素敵でした(*^ ^*)。


理事会メンバーも一新されて、継続したのはグロソップの石山さんのみ。以前は長いメンバーが多かったので阿吽の呼吸みたいなものがありましたが、いまはまだ、開幕したばかりで探り探りな印象だったかな。これからまとまってくるんじゃないかと思います。ビーコンズフィールド夫人が岡田静さんだったのは驚きましたが、老けメイクも自然でさすがの芝居勘でした。

一つだけ今回のメンバーで不安を言うなら、ダンヴァース卿の中島しゅうさんでしょうか。初演以来ずっと演じていた浜畑さんが嵌り役だったのもあるかもしれませんが、歌も芝居も残念の一言。
中嶋さん自身はいい役者さんだと思うのですが、ああいう貴族の役になぜ中嶋さんをふったのかな…?というのがとても謎です。しかも、歌も結構多いのにね。
他のキャストがかなりベストに近いだけに、ここだけ再考してくれればよかったのに……という気持ちがぬぐえません(涙)。



でもまあ、メインキャストがこれだけ嵌っている公演も珍しいので、とても幸せでした。
石丸さんの「This Is The Moment」、濱田さんの「A New Life」、玲奈ちゃんの「Once Upon a Dream」、どれも本当に素晴らしかった!!
東京公演は28日まで。ぜひ、今までの上演をご覧になって「うーん…」と思われた方にはとくにお勧めします!
ワイルドホーンのデビュー作、甘美な音楽にうっとりしてください(^ ^)。



【7月1日まで、あと107日】