「カサブランカ」【2】
2010年1月2日 宝塚(宙)宝塚歌劇団宙組公演「カサブランカ」。
■第3~11場 リックの店 ~1941年12月1日夜~(つづき)
ここからしばらくは、リックの店の中をいったりきたりしつつ、会話だけで物語が進んでいきます。
まず最初は、オーナーのリックが不在の店内。
いつもどおりに、賑やかで陽気で。だけどちょっとだけ、そこかしこに漂う不穏な空気。
人生の酸いも甘いも知り尽くしたサム(萬あきら)の、穏やかな歌声。
それを切り裂くような亡命者(星吹彩翔)の心の叫び。「カサブランカは俺の墓場だ!」机に突っ伏す、彼の熱情。
上手側のテーブルでは、女性(花露すみか)が宝石商(天輝トニカ)に宝石を売っている。
「皆さんダイヤをお売りになるので値崩れして…」
「そんな!」
こんな金額ではヴィザは手に入らない。再び絶望に染まっていく頬。
その隣のテーブルでは、レジスタンス(鳳翔大・愛月ひかる)が活動を報告しあっている。
「トラックの手配はできた」
「じゃあ、、、」
フランス娘(琴羽桜子)の肩を抱いたドイツ兵(春瀬央季)が、彼らの後ろを通り過ぎる。敬礼して話しかけてくるドイツ人のヘルム(雅桜歌)。慌てて話を切って、当たり障りの無い話を始めるレジスタンス。
「…あの女はやめておけ」
ビールを注ぎながら話しはじめる愛月くんが、回を重ねるごとにどんどん巧くなっていくのを凄いなあと思いながらみてました♪
さらにその隣(下手側)では、密航による出国の相談。
「1万5千、キャッシュで」
冷酷に告げる天玲美音くんの、反論を許さない明確な声と、凄み。底冷えのする凄艶な笑みが怖ろしい。そして、音が飛び飛びで難しいナンバーをピタッとはめる歌唱力。さすが歌手だなあ、と思いました。
「足りなければ舟は出ない。それだけだ」
亡命者役の美月遥くんの、喜びから絶望へ一瞬にして転げ落ちていく芝居がすごく良いです。ここは必見。っていうか、天玲くん、死の大天使と呼んであげたいくらい素敵です(^ ^)。
……えーっと、このあたりで一段落ついて、視点がバーカウンターに回る……んだったかな?
もしかして、順番とかが違っていたらご指摘くださいませ。
あちこち注文を聞いてカウンターに回ったカール(寿つかさ)に、バーテンのサッシャ(春風美里)が話しかける。
「どうだい、景気は?」
「上々さ」
気心の知れた店員どうしのさりげないやり取りにも、『リックの店』らしさがあるんだなあ、と思うのはこんなところですね。
店の中をうろうろしたあげくに、バーカウンターに近づいてくるアメリカ人観光客のカーティス夫妻(美風舞良・十輝いりす)。
妻「みんな愉しそうねえ」
サ「お客さん、アメリカから?」
妻「どうしてわかるの?」
サ「そりゃ…(逡巡)、垢抜けてるから!」(←絶対、「お気楽だから」って言いたかったに違いない)
このあたりでサムの歌が止まり、少し雰囲気が変わります。
たぶん、時間が流れた、ってことを表現しているんだと思うのですが。
その間に、女の子の肩を抱いたドイツ兵をはじめ、大半の客は店から出て行き、また新しい客が入って来る。
店の奥に腰を据えたヘルムは、最奥のドア(実はカジノへの入り口)に関心を持ち、そのあたりをうろうろし始める。
ジャン(珠洲春希)は、テーブルからテーブルへ渡り歩きながら「カジノに行かない?」と誘いをかける(←賭け金をねだろうとしているのか?)
さっきまで不穏な会話をしていた前方テーブルの客たちは後方へ異動し、空いた一番真ん中の席に、さっきまでドア近くの席にいた美女二人(妃宮さくら・愛花ちさき)が移動してくる。
「リックはどこ?彼と話がしたいの。彼を呼んで?」
驕慢な態度でカールに言いつける二人。
「恐れ入りますが、オーナーは不在ですし、居たとしてもお客様のテーブルにはつきませんので」
「いいから呼んで頂戴!」
自分の身分をひけらかし、ヒステリックに言い募る上流階級の女性たちを、飄々とした態度で受け流すカール。
「私でよろしければ……」
そんな会話をしている後ろで、ヘルムが勝手にカジノに入ろうとして、アブドゥル(鳳樹いち)に止められるという騒ぎが起こる。
「こちらは特別室でございまして」
掴みかかられながら、二階に目をやるアブドゥル。
二階のカーテンの陰から、手の先だけで「NO」という仕草を見せるオーナー。
「オーナーの許可の無い方は、お通しできません」
「俺たちドイツ人は世界一優秀な民族なんだ。お前たちごときに!」
激昂して言い募るヘルム。
「私の店では、万人は皆、平等です」
涼やかな声が入って、二階との境のカーテンがあがる。
白いダブルのスーツを着込んだリック(大空祐飛)の登場。
初見での素朴な疑問として、“万人が平等”であるのならば、カジノに入れるか入れないかの基準はなんなんだろうな、と思いました。
だって、モロッコに来たばかりで、この店に来たのも初めてのはずのカーティス夫妻は、あっさり入れてるわけじゃないですか。タイミング的に、リックと会った気配もないし。ってことは、「一見さんお断り」ってわけじゃないんですよね?
いや、もちろん、ヘルムがあの差別的な言動から言って絶対駄目なんでしょうけど(汗)、カーティス夫妻がOK、という判断は何処でくだしたの?なんてことが気になったりします。
「私がこの目で判断する」と言っているけど、君はいつカーティスに会ったのかな?と。
……なんて、屁理屈はおいといて。
雅さん、「大江山花伝説」は三田も藤原保昌もすごく良かったのに、ヘルムは何かがおかしいような気がする(T T)なのに、「何」がおかしいのかが判らない(←ファンだから?)。うーん、スーツの着こなしというか、スーツを着たうえでの仕草のひとつひとつに何か違和感があるんですが、根本的に何がいけないんだろう。和物は似合っていたし、動きも良かったと思うのですが……(泣)。
えーっと。
話が逸れました。階段を降りてくるリックに注目。
美女たちの溜息が色っぽい♪
さすがに『ミリ単位で調整してもらった』だけあって、白いダブルのスーツもよく似合っています。良かった良かった……。
“これでもか”というほどの演出をしてもらっているとはいえ、ちゃんと、役者本人にも舞台全体を覆いつくすだけのオーラがあったことが、単純に嬉しくて、思わず拍手してしまいます♪(←ファンだなあ)
ヘルムが差し出す名刺を、ろくに見もしないで破り捨てる仕草が、何故だか格好良い。
舌打ちして店の奥に向かうヘルムの背に「一杯呑んでいってください。サービスします」と、笑い含みに投げつける嫌味が、すごく好き(*^ ^*)。ここは、雅さんにも、もう少し屈辱に震えてほしいところです(^ ^)。
そんな二人を見守っていた野次馬の輪の中からコソっと出てきて、
「カジノに入ってもいい?」
と甘えたように訊くウガーテ(天羽珠紀)も、タイミングが良くて巧いなあと思います。たまちゃん、今回も良い仕事しているよなあ♪ そして、そんなウガーテにOKを出すリックを見てキレるヘルムが、なんとなく可哀相な気もする。
そのまま、カジノへ向かうリック。盆が回り、ドアを自然に越えて入っていく。右方向へ水平にパンしていく視点。
中央にルーレット台のある、そんなに広くない部屋。西欧人のほとんどはルーレット台の回りに集まっていて、隅っこの方では、宝石商が売り物を見せていたり、ムーア人の客たちがのんびりとさんざめいていたり。
ドア近くのキャッシャーに並びながら、話しかけてくる客(光海舞人)。皆の呼びかけが「よう、リック」なのが、すごく良いなあと思います。客のテーブルにはつかない。個人的な話はいっさいしない。でも、店をうろうろしているときに掴まえれば、気の利いた会話の一つや二つはできる……そんな存在。
「やあ、リック」
「やあ、○○」
そんな、気の置けない挨拶が気持ちいいんだろうなあ。……こんな、地の果てでは。
貌に似合わない高い声で、リックに話しかけるウガーテ。
「さっきのドイツ野郎との喧嘩、格好良かったな」(←相当意訳してます)
「……」
「君が僕を軽蔑しているのは知ってる。僕が闇ヴィザを売っているからなんだろう?」
「それも、とんでもない高値でな」
「でも、あの悪徳警視総監よりは安いんだぜ」
「……」
「まあ、そんな闇稼業も今日で終わりだ。今夜、コレと引き換えに大金を手に入れて、僕はこの国を出て行く」
「それは?」
「外交官特権つきの通行証。どこにでも行ける魔法のヴィザさ。だからリック、僕が小一時間ルーレットで遊んでいる間、これを預かってくれないかい?」
「……何故俺に?」
それまで顔を伏せ気味にして、目を見ようとしなかった男が、ふと顔をあげる。
「あんたは、俺からモノを奪うような奴じゃない」
まっすぐな声で。
少し高めのたまちゃんの声には僅かに甘えたような響きがあって、ウガーテは見た目より若い男として造っているのかな、という印象をうけました。向こう見ずで無鉄砲で、ワルいけれども案外と筋の通った若者。
「ウガーテ。昨日殺されたドイツの外交官は、大事な書類を盗られたと聞いたが?」
「そうなのかい?」
書類をリックに預けて、肩の荷を下ろしたようにすっきりした顔で立ち上がりかけながら、生返事を返すウガーテ。
「ウガーテ、……君を見直したよ」
リックの台詞に、思わず振り返って破顔一笑するウガーテ。
……よっぽど、リックに認められたことが嬉しかったんだろうなあ、と、素直に思えた二人の絶妙の距離感が、さすがだと思いました。
そのまま、はずむ足取りでルーレット台に向かうウガーテを見送って、預った書類を懐にしまいつつ、思案顔でカフェに戻るリック。
おりしも店内は、サムの歌で大盛り上がりの真っ最中。
「(不幸の数だけ)テーブルを叩こう!」という陽気な歌に、客は皆、ノリノリで踊り、歌っている。
そんなサムを羨ましそうに見ているフェラーリ(磯野千尋)。
「リック、この店を俺に譲らないか?」
……いや、一年前にこの屋敷を紹介したのは貴方でしょうに。
フェラーリと話をしながら、サムのピアノの中にこっそり懐の書類を隠すリック。
そんなリックを見つけて、バーカウンターから立ち上がるイヴォンヌ(純矢ちとせ)。
「リック、昨夜はどこにいたの?」
「そんな昔のことは覚えてないな」
「じゃあ、今夜この後会える?」
「そんな先の計画は、……たてたことが、ない」
この会話は、本当に名台詞ですよね。
リックに振られて、荒れるイヴォンヌ。自分に惚れているサッシャに、「もう一杯」とねだる女心。
「サッシャ、もう十分だ。……タクシーを」
リックのクールな声が、頭を抱えていたサッシャを動かす。
弾かれたようにイヴォンヌの鞄を取ってくるサッシャ。…は、良いんですけど、どーして返事が「合点!」なんだろう……キミハイッタイドコノヒト(; ;)
さりげなくコートをもって来るカール。(←さすが年の功)
嫌がるイヴォンヌを店の外に連れ出し、タクシーに乗せるリックとサッシャ。
「サッシャ、家まで送れ。……すぐに戻って来るんだぞ」
一瞬喜びに輝いて、でもまたしょぼんとする大型犬が可愛いです。
タクシーのテールランプを見送るリックに、さりげなく話しかけてくるルノー。
プログラムを見ると、ここはオープンカフェになっているようですね。どうみても、待合のための椅子がある店先、程度にしか見えないんですが(T T)。
リックとルノーが喋っている脇を、なにやら言い争いしながら通り過ぎていくカッセル(澄輝さやと)とトネリ(月映樹茉)。
この二人、この場面では何とも思わないんですけど、後から考えると不思議な取り合わせですよね。カッセルは重大任務のために(ルノーの指示で)来たはずなのに、なんで単身で、ただカフェに遊びに来ただけの(?)トネリと一緒に入っていくんだろう……?
……たぶん、部下の掌握と管理はさっつん(風羽玲亜)に任されているんだろうな、と勝手に解釈してみた(^ ^)。
と、いうところで。
本当は、初日前にラズロとイルザの登場まで進んでおきたかったのですが。
あえなく終了……(T T)。
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■第3~11場 リックの店 ~1941年12月1日夜~(つづき)
ここからしばらくは、リックの店の中をいったりきたりしつつ、会話だけで物語が進んでいきます。
まず最初は、オーナーのリックが不在の店内。
いつもどおりに、賑やかで陽気で。だけどちょっとだけ、そこかしこに漂う不穏な空気。
人生の酸いも甘いも知り尽くしたサム(萬あきら)の、穏やかな歌声。
それを切り裂くような亡命者(星吹彩翔)の心の叫び。「カサブランカは俺の墓場だ!」机に突っ伏す、彼の熱情。
上手側のテーブルでは、女性(花露すみか)が宝石商(天輝トニカ)に宝石を売っている。
「皆さんダイヤをお売りになるので値崩れして…」
「そんな!」
こんな金額ではヴィザは手に入らない。再び絶望に染まっていく頬。
その隣のテーブルでは、レジスタンス(鳳翔大・愛月ひかる)が活動を報告しあっている。
「トラックの手配はできた」
「じゃあ、、、」
フランス娘(琴羽桜子)の肩を抱いたドイツ兵(春瀬央季)が、彼らの後ろを通り過ぎる。敬礼して話しかけてくるドイツ人のヘルム(雅桜歌)。慌てて話を切って、当たり障りの無い話を始めるレジスタンス。
「…あの女はやめておけ」
ビールを注ぎながら話しはじめる愛月くんが、回を重ねるごとにどんどん巧くなっていくのを凄いなあと思いながらみてました♪
さらにその隣(下手側)では、密航による出国の相談。
「1万5千、キャッシュで」
冷酷に告げる天玲美音くんの、反論を許さない明確な声と、凄み。底冷えのする凄艶な笑みが怖ろしい。そして、音が飛び飛びで難しいナンバーをピタッとはめる歌唱力。さすが歌手だなあ、と思いました。
「足りなければ舟は出ない。それだけだ」
亡命者役の美月遥くんの、喜びから絶望へ一瞬にして転げ落ちていく芝居がすごく良いです。ここは必見。っていうか、天玲くん、死の大天使と呼んであげたいくらい素敵です(^ ^)。
……えーっと、このあたりで一段落ついて、視点がバーカウンターに回る……んだったかな?
もしかして、順番とかが違っていたらご指摘くださいませ。
あちこち注文を聞いてカウンターに回ったカール(寿つかさ)に、バーテンのサッシャ(春風美里)が話しかける。
「どうだい、景気は?」
「上々さ」
気心の知れた店員どうしのさりげないやり取りにも、『リックの店』らしさがあるんだなあ、と思うのはこんなところですね。
店の中をうろうろしたあげくに、バーカウンターに近づいてくるアメリカ人観光客のカーティス夫妻(美風舞良・十輝いりす)。
妻「みんな愉しそうねえ」
サ「お客さん、アメリカから?」
妻「どうしてわかるの?」
サ「そりゃ…(逡巡)、垢抜けてるから!」(←絶対、「お気楽だから」って言いたかったに違いない)
このあたりでサムの歌が止まり、少し雰囲気が変わります。
たぶん、時間が流れた、ってことを表現しているんだと思うのですが。
その間に、女の子の肩を抱いたドイツ兵をはじめ、大半の客は店から出て行き、また新しい客が入って来る。
店の奥に腰を据えたヘルムは、最奥のドア(実はカジノへの入り口)に関心を持ち、そのあたりをうろうろし始める。
ジャン(珠洲春希)は、テーブルからテーブルへ渡り歩きながら「カジノに行かない?」と誘いをかける(←賭け金をねだろうとしているのか?)
さっきまで不穏な会話をしていた前方テーブルの客たちは後方へ異動し、空いた一番真ん中の席に、さっきまでドア近くの席にいた美女二人(妃宮さくら・愛花ちさき)が移動してくる。
「リックはどこ?彼と話がしたいの。彼を呼んで?」
驕慢な態度でカールに言いつける二人。
「恐れ入りますが、オーナーは不在ですし、居たとしてもお客様のテーブルにはつきませんので」
「いいから呼んで頂戴!」
自分の身分をひけらかし、ヒステリックに言い募る上流階級の女性たちを、飄々とした態度で受け流すカール。
「私でよろしければ……」
そんな会話をしている後ろで、ヘルムが勝手にカジノに入ろうとして、アブドゥル(鳳樹いち)に止められるという騒ぎが起こる。
「こちらは特別室でございまして」
掴みかかられながら、二階に目をやるアブドゥル。
二階のカーテンの陰から、手の先だけで「NO」という仕草を見せるオーナー。
「オーナーの許可の無い方は、お通しできません」
「俺たちドイツ人は世界一優秀な民族なんだ。お前たちごときに!」
激昂して言い募るヘルム。
「私の店では、万人は皆、平等です」
涼やかな声が入って、二階との境のカーテンがあがる。
白いダブルのスーツを着込んだリック(大空祐飛)の登場。
初見での素朴な疑問として、“万人が平等”であるのならば、カジノに入れるか入れないかの基準はなんなんだろうな、と思いました。
だって、モロッコに来たばかりで、この店に来たのも初めてのはずのカーティス夫妻は、あっさり入れてるわけじゃないですか。タイミング的に、リックと会った気配もないし。ってことは、「一見さんお断り」ってわけじゃないんですよね?
いや、もちろん、ヘルムがあの差別的な言動から言って絶対駄目なんでしょうけど(汗)、カーティス夫妻がOK、という判断は何処でくだしたの?なんてことが気になったりします。
「私がこの目で判断する」と言っているけど、君はいつカーティスに会ったのかな?と。
……なんて、屁理屈はおいといて。
雅さん、「大江山花伝説」は三田も藤原保昌もすごく良かったのに、ヘルムは何かがおかしいような気がする(T T)なのに、「何」がおかしいのかが判らない(←ファンだから?)。うーん、スーツの着こなしというか、スーツを着たうえでの仕草のひとつひとつに何か違和感があるんですが、根本的に何がいけないんだろう。和物は似合っていたし、動きも良かったと思うのですが……(泣)。
えーっと。
話が逸れました。階段を降りてくるリックに注目。
美女たちの溜息が色っぽい♪
さすがに『ミリ単位で調整してもらった』だけあって、白いダブルのスーツもよく似合っています。良かった良かった……。
“これでもか”というほどの演出をしてもらっているとはいえ、ちゃんと、役者本人にも舞台全体を覆いつくすだけのオーラがあったことが、単純に嬉しくて、思わず拍手してしまいます♪(←ファンだなあ)
ヘルムが差し出す名刺を、ろくに見もしないで破り捨てる仕草が、何故だか格好良い。
舌打ちして店の奥に向かうヘルムの背に「一杯呑んでいってください。サービスします」と、笑い含みに投げつける嫌味が、すごく好き(*^ ^*)。ここは、雅さんにも、もう少し屈辱に震えてほしいところです(^ ^)。
そんな二人を見守っていた野次馬の輪の中からコソっと出てきて、
「カジノに入ってもいい?」
と甘えたように訊くウガーテ(天羽珠紀)も、タイミングが良くて巧いなあと思います。たまちゃん、今回も良い仕事しているよなあ♪ そして、そんなウガーテにOKを出すリックを見てキレるヘルムが、なんとなく可哀相な気もする。
そのまま、カジノへ向かうリック。盆が回り、ドアを自然に越えて入っていく。右方向へ水平にパンしていく視点。
中央にルーレット台のある、そんなに広くない部屋。西欧人のほとんどはルーレット台の回りに集まっていて、隅っこの方では、宝石商が売り物を見せていたり、ムーア人の客たちがのんびりとさんざめいていたり。
ドア近くのキャッシャーに並びながら、話しかけてくる客(光海舞人)。皆の呼びかけが「よう、リック」なのが、すごく良いなあと思います。客のテーブルにはつかない。個人的な話はいっさいしない。でも、店をうろうろしているときに掴まえれば、気の利いた会話の一つや二つはできる……そんな存在。
「やあ、リック」
「やあ、○○」
そんな、気の置けない挨拶が気持ちいいんだろうなあ。……こんな、地の果てでは。
貌に似合わない高い声で、リックに話しかけるウガーテ。
「さっきのドイツ野郎との喧嘩、格好良かったな」(←相当意訳してます)
「……」
「君が僕を軽蔑しているのは知ってる。僕が闇ヴィザを売っているからなんだろう?」
「それも、とんでもない高値でな」
「でも、あの悪徳警視総監よりは安いんだぜ」
「……」
「まあ、そんな闇稼業も今日で終わりだ。今夜、コレと引き換えに大金を手に入れて、僕はこの国を出て行く」
「それは?」
「外交官特権つきの通行証。どこにでも行ける魔法のヴィザさ。だからリック、僕が小一時間ルーレットで遊んでいる間、これを預かってくれないかい?」
「……何故俺に?」
それまで顔を伏せ気味にして、目を見ようとしなかった男が、ふと顔をあげる。
「あんたは、俺からモノを奪うような奴じゃない」
まっすぐな声で。
少し高めのたまちゃんの声には僅かに甘えたような響きがあって、ウガーテは見た目より若い男として造っているのかな、という印象をうけました。向こう見ずで無鉄砲で、ワルいけれども案外と筋の通った若者。
「ウガーテ。昨日殺されたドイツの外交官は、大事な書類を盗られたと聞いたが?」
「そうなのかい?」
書類をリックに預けて、肩の荷を下ろしたようにすっきりした顔で立ち上がりかけながら、生返事を返すウガーテ。
「ウガーテ、……君を見直したよ」
リックの台詞に、思わず振り返って破顔一笑するウガーテ。
……よっぽど、リックに認められたことが嬉しかったんだろうなあ、と、素直に思えた二人の絶妙の距離感が、さすがだと思いました。
そのまま、はずむ足取りでルーレット台に向かうウガーテを見送って、預った書類を懐にしまいつつ、思案顔でカフェに戻るリック。
おりしも店内は、サムの歌で大盛り上がりの真っ最中。
「(不幸の数だけ)テーブルを叩こう!」という陽気な歌に、客は皆、ノリノリで踊り、歌っている。
そんなサムを羨ましそうに見ているフェラーリ(磯野千尋)。
「リック、この店を俺に譲らないか?」
……いや、一年前にこの屋敷を紹介したのは貴方でしょうに。
フェラーリと話をしながら、サムのピアノの中にこっそり懐の書類を隠すリック。
そんなリックを見つけて、バーカウンターから立ち上がるイヴォンヌ(純矢ちとせ)。
「リック、昨夜はどこにいたの?」
「そんな昔のことは覚えてないな」
「じゃあ、今夜この後会える?」
「そんな先の計画は、……たてたことが、ない」
この会話は、本当に名台詞ですよね。
リックに振られて、荒れるイヴォンヌ。自分に惚れているサッシャに、「もう一杯」とねだる女心。
「サッシャ、もう十分だ。……タクシーを」
リックのクールな声が、頭を抱えていたサッシャを動かす。
弾かれたようにイヴォンヌの鞄を取ってくるサッシャ。…は、良いんですけど、どーして返事が「合点!」なんだろう……キミハイッタイドコノヒト(; ;)
さりげなくコートをもって来るカール。(←さすが年の功)
嫌がるイヴォンヌを店の外に連れ出し、タクシーに乗せるリックとサッシャ。
「サッシャ、家まで送れ。……すぐに戻って来るんだぞ」
一瞬喜びに輝いて、でもまたしょぼんとする大型犬が可愛いです。
タクシーのテールランプを見送るリックに、さりげなく話しかけてくるルノー。
プログラムを見ると、ここはオープンカフェになっているようですね。どうみても、待合のための椅子がある店先、程度にしか見えないんですが(T T)。
リックとルノーが喋っている脇を、なにやら言い争いしながら通り過ぎていくカッセル(澄輝さやと)とトネリ(月映樹茉)。
この二人、この場面では何とも思わないんですけど、後から考えると不思議な取り合わせですよね。カッセルは重大任務のために(ルノーの指示で)来たはずなのに、なんで単身で、ただカフェに遊びに来ただけの(?)トネリと一緒に入っていくんだろう……?
……たぶん、部下の掌握と管理はさっつん(風羽玲亜)に任されているんだろうな、と勝手に解釈してみた(^ ^)。
と、いうところで。
本当は、初日前にラズロとイルザの登場まで進んでおきたかったのですが。
あえなく終了……(T T)。
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