ジェリー・ハーマンのSHOW TUNE
2008年11月24日 ミュージカル・舞台 コメント (8)天王洲の銀河劇場にて、ブロードウェイミュージカルショー「SHOW TUNE」を観劇してまいりました。
『「It’s TODAY」に始まり「It’s TODAY」に終わる「SHOWTUNE」』と、演出の三木章雄さんは書かれていらしゃいますが。その、実際のナンバー構成だけではなくて、たしかに「今、このときがすべて。祝おう今こそ!」というテーマが明確に伝わってくるショーでした。
ポジティヴで、真っ直ぐで、ちょっとくらいコケても気がつかないくらい必死で前を向いて歩き続ける人たち。悩みがないわけじゃない、悩みなんて誰にだってある、でも、そんなものに挫けてみたって誰もフォローなんてしてくれない。自分の道は自分で切り開くの、だって私は私(I am What I am)なんだから!
そんな、ハーマンの数々の作品を貫く黄金のワンパターン。
私が彼の作品で観たことがあるのは「ラ・カージュ・オ・フォール」と「ハロー・ドーリー」。あとは、「Mame」と「Mack&Mabel」は一部の音楽を聴いたことがあるくらいですが、やっぱり「ラ・カージュ・オ・フォール」の音楽が物凄く好きなので、チラシを見ては、観たいなーどうしようかなーと悩んでいた作品でした。
……なぜ悩んでいたかといえば。正直に書いてしまいますけれども、私がマリコ(麻路さき)さんの声がすごく苦手だったから、でした…(T T)。巧い下手以前に、声そのものがどうにも受け付けなかったんですよね…
でも、今回、某所でウタコ(剣幸)さんの「I am What I am」が聴けるらしいと読んで、慌ててチケットをGETしたのでした。
……良かったよーーーーー、観に行って本当によかった~~っ!!
マリコさんの声も、全然気になりませんでした。あの、どこかから声が漏れ出ているみたいだった不可思議な響きが、ずいぶん集束してきれいに響くようになって、聴きやすかったです。同期の千秋慎さんの特訓の成果?(笑)
っていうか、噂には聞いてましたがマリコさんのピアノは本当にスゴイ!!まぁ、ラストの弾き語りはだいぶ(歌が)コケてましたけど(^ ^)、でも、あんなに自在に歌手を歌わせられるピアノが弾けるなんて、本当にすごい!!真実プロ級の腕をお持ちなんだなあと感心しました。
そして、9人の役者の中で唯一の男役というべき格好よさ。存在感は圧倒的でした。
ああ、この人はやっぱり、永遠の「タカラヅカトップスター」なんだろうな、と。
観る前は、ハーマンの音楽を使っての小人数でのショー形式、ということしかわからなかったので、なんとなくシャンソン歌手のジャック・ブレルをテーマにした「ジャック・ブレルは今日も巴里に生きて歌っている」みたいな形式の作品かなーと想像していたのですが、
…まぁ、当たらずといえども遠からず、という感じでしょうか。
「シャンソン」は一曲の中にドラマがあるせいか、基本的に一曲一場面で全体を構成していましたが、今回の曲は「ミュージカル作品の中の一曲」なので、何曲かセットでドラマを構成し、それをつないでいく…というところは違っていましたね。っていうか、こう書くと普通の“ショー”と何が違うのかわかりませんが(^ ^;ゞ
たった2時間でハーマン作品を何本も観たような気がするのに、音楽的にはいろんな作品のナンバーを入り混ぜて使っていて、全然違和感も唐突感もないのがすごい。
ブロードウェイ版を構成したPAUL GILGERという人がどんな経歴の人なのか、プログラムにも何も書いていないので判りませんが、センスのあるショー作家なんだろうなあと思います。機会があれば、彼の他の作品も観てみたいです。
あと、私的にとっても嬉しかったのは、「Mack&Mabel」の音楽を生で聴けたこと♪
ヅカファン的にわかりやすく説明するなら、月組の霧矢大夢さんが主演したバウ公演「SLAPSTICK」の主人公である映画監督マック・セネットと彼が愛した女優メイベルの恋をテーマにしたミュージカル…なんですけど、私も古いミュージカルソングを集めたCDに入っていた数曲を聴いたことがあるだけなので、すごく新鮮でした。良かったよーっ♪
ブロードウェイ版では男女7名(PIANOMAN+たぶん男3名女3名?)での上演だったそうですが、今回は宝塚OGのみ9名(うち元男役5名、元娘/女役4名)での上演。
でも。
率直な感想としては。
女優一人(剣)+男役一人(麻路)をメインに、娘役が一人(風花)華を添えて、あとはコーラス(出雲、初風、楓、芽映、大真、雪菜)という印象でした。
あまりにも女優・剣と男役のPIANOMAN・麻路の印象が強くて、他の印象が弱かった、かも。
特に男役の3人が弱かったのがとっても残念!
楓(沙樹)さんは、スタイルが女として抜群に良くて素敵なダンサーさんですけれども、逆にそのせいで補正無しでは全く男役には見えないタイプ。仕方がない面もあるかとは思いますが、でも、今回の作品は全場面男役なんだから、もう少し気合を入れて補正して、その気になって出てほしかったです。歌もダンスも、悪くはないけど男役としては中途半端な感じがつきまとって、すごく残念な感じでした(ごめんなさい)。
ガイチ(初風緑)さんに関しては、ソロで歌った二曲が男役じゃなかった(「Nelson」はピエロ系、「I’ll Be Here Tomorrow」は女性)のが残念だったなー。「SONG ON THE SAND」の前半は、ガイチさんの声で聴きたかったよー(T T)。
相変わらずの伸びやかな歌声は魅力的なんですが、キャラクター的にも声質的にも、男役をやるより女優の方が似合うのかも、とは思いました。今回の公演も、いっそタキさんポジションに入った方が魅力が出たんじゃないかなー、と。
(大真)みらんちゃんは、3人の中では一番「男役」してましたね。まだ卒業してからの時間が短いから?女優としての舞台をそんなに経験していないから?わかりませんけれども、長い髪もあまり気にならなかったくらい、ちゃんと「男役」でした。声も良かったし。ちょっと丸くなってたのが惜しかった(^ ^;
彼らの中途半端さが三木さんの狙いだというのなら、少し考え直してほしいなーと思いますね。
私が観たいのはちゃんとした「タカラヅカ」であり、ちゃんとした「ブロードウェイミュージカル」なんですよ…(T T)。中途半端なモノはいらないんですよ。せっかくいい人たちを集めているのに…。
元娘(女)役さんたちは、概ね健闘されていたと思います。
「娘役」っていうのは「女優」とは全く違う技術を必要とされるモノなんですが、さすがに「男役」よりはハードル低いんだなあと思いました。皆自然な佇まいで、衣装も良く似合って美しかったです。
芽映はるかちゃんの可憐な娘役っぷりに目元も口元も緩みまくり、
雪菜つぐみちゃんの、相変わらずの「月娘」らしい気風のよさに惚れ惚れとし、
……この二人と大真みらんちゃん、みーんな同じ84期なんだなーと思うと、なんだかびっくりしてしまいます(^ ^;
風花舞嬢は、本当に歌が安定しましたね。
もっともっと踊ってほしかったのは本音ですが、歌ももう手に汗握るコトもなく、安心して聴いていられます。ただ、まぁ、やはり「歌姫」ではないし、ある意味「娘役の鑑」みたいなひとなので、どんな歌も「娘役」として歌ってしまってドラマを消してしまうのは、弱みなのかもしれませんね。
「Shalom」だけは、もう少しドラマティックに歌える人で聴いてみたかったような気も。
でも、「SONG ON THE SAND」はしっとりと温かみがあってすごく良かったです。「I am What I am」の歌いだしも透明感があってすごく良かったし。ああ、こういう表現の仕方もあるのか!とすごく吃驚したのが印象的。
…こうやって書いてみて気づく。ドラマの表現にはご本人の作品に対する思い入れが出るのかもしれませんね(風花さんの退団後初出演が「ラ・カージュ・オ・フォール」)。
そんな中、「歌姫」タキ(出雲綾)さんが苦戦していたのがとても残念。タキさんは胸声になる低音部もすごくよく響く人なのに、最近流行っている風邪(突然喉に来るタイプ)にヤられちゃったんでしょうか(T T)。高音部の頭声は綺麗に響いていたので良かったのですが、後半になるにつれて出る音域が狭くなっていく(ちょっとでも響きが下がるとゴロゴロする)のでヒヤヒヤしました。
なんとかかろうじて千秋楽の幕を降ろせて、ご本人もほっとしましたんじゃないでしょうか…。
またすぐ関西公演が始まるので、がんばって治してください!
で。
ただひとりの「女優」、剣幸。
この人の素晴らしさは、一曲がちゃんとお芝居になるところだと思います。
歌いだす前の姿勢、シルエットの肩のラインだけで「挫折」を表現してみせる。で、歌いだしてから少しづつ立ち直っていく様を描いて、ラストのワンフレーズで晴れ晴れと前を向き、「大丈夫、がんばれる!」と高らかに謳いあげる…
ジェリー・ハーマンというクリエーターの創る世界に、ウタコさんの存在感がぴったりとハマっていたと思います。
舞台演出どおり、鏡に向かって化粧しながら歌う「もっとマスカラを!」も素晴らしかったし、
ピアノの脇にふとたたずんでマリコさんの愛を享ける「I Won’t Send Roses」も素晴らしかった。
そして、「If He Walked Into My Life」の絶唱…
ウタコさんが歌うたびに涙が溢れて、とまりませんでした。
そうかと思えば、
男装場面は粋に格好良く(髪をタイトにまとめてくれていたらもっと格好良かっただろうに…)
二幕のメイベルはキュートで可愛く、
そして、なんたって最高だったのは、マリコさんのメイムと思いっきりやりあうドーリー!!
ウタコさんという女優は大好きでしたし、それなりに、条件があえばなるべく観にいっていたつもりでしたが、今回は本当に目から鱗が落ちた気分でした。
ウタコさんの歌に、こんなに力があるなんて知らなかった。芝居の人だとばかり思っていたのに、年齢を感じさせない力強い声と、自信に裏打ちされた圧倒的な表現力。芝居の人だからこそたどり着いた、完璧な解釈と高い技術の交錯するポジション。
……ただ一つ残念だったのは、「I am What I am」を歌ってくれなかったこと(あ、いえ、もちろん歌ってます。ワンフレーズはソロで、後は全員で。しかも、そのワンフレーズのソロで泣きました私)(…でも、ソロで全曲歌ってくれると思ったんだよ……)。
見事に騙されました。……いや、騙してくれてありがとう、って感じではありますが(^ ^)。
ああ、でも、本当~にウタコさんの「I am What I am」が聴きたい………。ディナーショーか何かで歌ってくれるんなら、絶対に行くぞ!
あの歌は本当にドラマティックな大曲なので、今回みたいにみんなの歌い継ぎコーラスにするのは勿体ないんですよー!せっかくあれを一人で歌いきれる女優が出演しているのに、もったいない~(涙)。
二幕の「砂の上のラヴ・ソング」も歌い継ぎだったし、なんか「ラ・カージュ・オ・フォール」はかなり無駄遣いされてしまったような気がします。
…ま、日生に市村ザザファイナルを観にいけ、って感じですかね……(苦笑)。
日本では「ジェリー・ハーマン」があまりメジャーとは言い難いので、ちょっとチケットの売れ行き的には苦戦しているみたいでしたけれども、ショーの構成はとても良かったと思います。
とにかく、ハーマンの「明日はHAPPY!」というメッセージが全編に溢れていて、幸せな気持ちで家に帰りました。本当に楽しかったです~!(^ ^)西宮での公演はまだこれからなので、ぜひぜひ皆様、足を運んであげてくださーい(はぁと)。
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『「It’s TODAY」に始まり「It’s TODAY」に終わる「SHOWTUNE」』と、演出の三木章雄さんは書かれていらしゃいますが。その、実際のナンバー構成だけではなくて、たしかに「今、このときがすべて。祝おう今こそ!」というテーマが明確に伝わってくるショーでした。
ポジティヴで、真っ直ぐで、ちょっとくらいコケても気がつかないくらい必死で前を向いて歩き続ける人たち。悩みがないわけじゃない、悩みなんて誰にだってある、でも、そんなものに挫けてみたって誰もフォローなんてしてくれない。自分の道は自分で切り開くの、だって私は私(I am What I am)なんだから!
そんな、ハーマンの数々の作品を貫く黄金のワンパターン。
私が彼の作品で観たことがあるのは「ラ・カージュ・オ・フォール」と「ハロー・ドーリー」。あとは、「Mame」と「Mack&Mabel」は一部の音楽を聴いたことがあるくらいですが、やっぱり「ラ・カージュ・オ・フォール」の音楽が物凄く好きなので、チラシを見ては、観たいなーどうしようかなーと悩んでいた作品でした。
……なぜ悩んでいたかといえば。正直に書いてしまいますけれども、私がマリコ(麻路さき)さんの声がすごく苦手だったから、でした…(T T)。巧い下手以前に、声そのものがどうにも受け付けなかったんですよね…
でも、今回、某所でウタコ(剣幸)さんの「I am What I am」が聴けるらしいと読んで、慌ててチケットをGETしたのでした。
……良かったよーーーーー、観に行って本当によかった~~っ!!
マリコさんの声も、全然気になりませんでした。あの、どこかから声が漏れ出ているみたいだった不可思議な響きが、ずいぶん集束してきれいに響くようになって、聴きやすかったです。同期の千秋慎さんの特訓の成果?(笑)
っていうか、噂には聞いてましたがマリコさんのピアノは本当にスゴイ!!まぁ、ラストの弾き語りはだいぶ(歌が)コケてましたけど(^ ^)、でも、あんなに自在に歌手を歌わせられるピアノが弾けるなんて、本当にすごい!!真実プロ級の腕をお持ちなんだなあと感心しました。
そして、9人の役者の中で唯一の男役というべき格好よさ。存在感は圧倒的でした。
ああ、この人はやっぱり、永遠の「タカラヅカトップスター」なんだろうな、と。
観る前は、ハーマンの音楽を使っての小人数でのショー形式、ということしかわからなかったので、なんとなくシャンソン歌手のジャック・ブレルをテーマにした「ジャック・ブレルは今日も巴里に生きて歌っている」みたいな形式の作品かなーと想像していたのですが、
…まぁ、当たらずといえども遠からず、という感じでしょうか。
「シャンソン」は一曲の中にドラマがあるせいか、基本的に一曲一場面で全体を構成していましたが、今回の曲は「ミュージカル作品の中の一曲」なので、何曲かセットでドラマを構成し、それをつないでいく…というところは違っていましたね。っていうか、こう書くと普通の“ショー”と何が違うのかわかりませんが(^ ^;ゞ
たった2時間でハーマン作品を何本も観たような気がするのに、音楽的にはいろんな作品のナンバーを入り混ぜて使っていて、全然違和感も唐突感もないのがすごい。
ブロードウェイ版を構成したPAUL GILGERという人がどんな経歴の人なのか、プログラムにも何も書いていないので判りませんが、センスのあるショー作家なんだろうなあと思います。機会があれば、彼の他の作品も観てみたいです。
あと、私的にとっても嬉しかったのは、「Mack&Mabel」の音楽を生で聴けたこと♪
ヅカファン的にわかりやすく説明するなら、月組の霧矢大夢さんが主演したバウ公演「SLAPSTICK」の主人公である映画監督マック・セネットと彼が愛した女優メイベルの恋をテーマにしたミュージカル…なんですけど、私も古いミュージカルソングを集めたCDに入っていた数曲を聴いたことがあるだけなので、すごく新鮮でした。良かったよーっ♪
ブロードウェイ版では男女7名(PIANOMAN+たぶん男3名女3名?)での上演だったそうですが、今回は宝塚OGのみ9名(うち元男役5名、元娘/女役4名)での上演。
でも。
率直な感想としては。
女優一人(剣)+男役一人(麻路)をメインに、娘役が一人(風花)華を添えて、あとはコーラス(出雲、初風、楓、芽映、大真、雪菜)という印象でした。
あまりにも女優・剣と男役のPIANOMAN・麻路の印象が強くて、他の印象が弱かった、かも。
特に男役の3人が弱かったのがとっても残念!
楓(沙樹)さんは、スタイルが女として抜群に良くて素敵なダンサーさんですけれども、逆にそのせいで補正無しでは全く男役には見えないタイプ。仕方がない面もあるかとは思いますが、でも、今回の作品は全場面男役なんだから、もう少し気合を入れて補正して、その気になって出てほしかったです。歌もダンスも、悪くはないけど男役としては中途半端な感じがつきまとって、すごく残念な感じでした(ごめんなさい)。
ガイチ(初風緑)さんに関しては、ソロで歌った二曲が男役じゃなかった(「Nelson」はピエロ系、「I’ll Be Here Tomorrow」は女性)のが残念だったなー。「SONG ON THE SAND」の前半は、ガイチさんの声で聴きたかったよー(T T)。
相変わらずの伸びやかな歌声は魅力的なんですが、キャラクター的にも声質的にも、男役をやるより女優の方が似合うのかも、とは思いました。今回の公演も、いっそタキさんポジションに入った方が魅力が出たんじゃないかなー、と。
(大真)みらんちゃんは、3人の中では一番「男役」してましたね。まだ卒業してからの時間が短いから?女優としての舞台をそんなに経験していないから?わかりませんけれども、長い髪もあまり気にならなかったくらい、ちゃんと「男役」でした。声も良かったし。ちょっと丸くなってたのが惜しかった(^ ^;
彼らの中途半端さが三木さんの狙いだというのなら、少し考え直してほしいなーと思いますね。
私が観たいのはちゃんとした「タカラヅカ」であり、ちゃんとした「ブロードウェイミュージカル」なんですよ…(T T)。中途半端なモノはいらないんですよ。せっかくいい人たちを集めているのに…。
元娘(女)役さんたちは、概ね健闘されていたと思います。
「娘役」っていうのは「女優」とは全く違う技術を必要とされるモノなんですが、さすがに「男役」よりはハードル低いんだなあと思いました。皆自然な佇まいで、衣装も良く似合って美しかったです。
芽映はるかちゃんの可憐な娘役っぷりに目元も口元も緩みまくり、
雪菜つぐみちゃんの、相変わらずの「月娘」らしい気風のよさに惚れ惚れとし、
……この二人と大真みらんちゃん、みーんな同じ84期なんだなーと思うと、なんだかびっくりしてしまいます(^ ^;
風花舞嬢は、本当に歌が安定しましたね。
もっともっと踊ってほしかったのは本音ですが、歌ももう手に汗握るコトもなく、安心して聴いていられます。ただ、まぁ、やはり「歌姫」ではないし、ある意味「娘役の鑑」みたいなひとなので、どんな歌も「娘役」として歌ってしまってドラマを消してしまうのは、弱みなのかもしれませんね。
「Shalom」だけは、もう少しドラマティックに歌える人で聴いてみたかったような気も。
でも、「SONG ON THE SAND」はしっとりと温かみがあってすごく良かったです。「I am What I am」の歌いだしも透明感があってすごく良かったし。ああ、こういう表現の仕方もあるのか!とすごく吃驚したのが印象的。
…こうやって書いてみて気づく。ドラマの表現にはご本人の作品に対する思い入れが出るのかもしれませんね(風花さんの退団後初出演が「ラ・カージュ・オ・フォール」)。
そんな中、「歌姫」タキ(出雲綾)さんが苦戦していたのがとても残念。タキさんは胸声になる低音部もすごくよく響く人なのに、最近流行っている風邪(突然喉に来るタイプ)にヤられちゃったんでしょうか(T T)。高音部の頭声は綺麗に響いていたので良かったのですが、後半になるにつれて出る音域が狭くなっていく(ちょっとでも響きが下がるとゴロゴロする)のでヒヤヒヤしました。
なんとかかろうじて千秋楽の幕を降ろせて、ご本人もほっとしましたんじゃないでしょうか…。
またすぐ関西公演が始まるので、がんばって治してください!
で。
ただひとりの「女優」、剣幸。
この人の素晴らしさは、一曲がちゃんとお芝居になるところだと思います。
歌いだす前の姿勢、シルエットの肩のラインだけで「挫折」を表現してみせる。で、歌いだしてから少しづつ立ち直っていく様を描いて、ラストのワンフレーズで晴れ晴れと前を向き、「大丈夫、がんばれる!」と高らかに謳いあげる…
ジェリー・ハーマンというクリエーターの創る世界に、ウタコさんの存在感がぴったりとハマっていたと思います。
舞台演出どおり、鏡に向かって化粧しながら歌う「もっとマスカラを!」も素晴らしかったし、
ピアノの脇にふとたたずんでマリコさんの愛を享ける「I Won’t Send Roses」も素晴らしかった。
そして、「If He Walked Into My Life」の絶唱…
ウタコさんが歌うたびに涙が溢れて、とまりませんでした。
そうかと思えば、
男装場面は粋に格好良く(髪をタイトにまとめてくれていたらもっと格好良かっただろうに…)
二幕のメイベルはキュートで可愛く、
そして、なんたって最高だったのは、マリコさんのメイムと思いっきりやりあうドーリー!!
ウタコさんという女優は大好きでしたし、それなりに、条件があえばなるべく観にいっていたつもりでしたが、今回は本当に目から鱗が落ちた気分でした。
ウタコさんの歌に、こんなに力があるなんて知らなかった。芝居の人だとばかり思っていたのに、年齢を感じさせない力強い声と、自信に裏打ちされた圧倒的な表現力。芝居の人だからこそたどり着いた、完璧な解釈と高い技術の交錯するポジション。
……ただ一つ残念だったのは、「I am What I am」を歌ってくれなかったこと(あ、いえ、もちろん歌ってます。ワンフレーズはソロで、後は全員で。しかも、そのワンフレーズのソロで泣きました私)(…でも、ソロで全曲歌ってくれると思ったんだよ……)。
見事に騙されました。……いや、騙してくれてありがとう、って感じではありますが(^ ^)。
ああ、でも、本当~にウタコさんの「I am What I am」が聴きたい………。ディナーショーか何かで歌ってくれるんなら、絶対に行くぞ!
あの歌は本当にドラマティックな大曲なので、今回みたいにみんなの歌い継ぎコーラスにするのは勿体ないんですよー!せっかくあれを一人で歌いきれる女優が出演しているのに、もったいない~(涙)。
二幕の「砂の上のラヴ・ソング」も歌い継ぎだったし、なんか「ラ・カージュ・オ・フォール」はかなり無駄遣いされてしまったような気がします。
…ま、日生に市村ザザファイナルを観にいけ、って感じですかね……(苦笑)。
日本では「ジェリー・ハーマン」があまりメジャーとは言い難いので、ちょっとチケットの売れ行き的には苦戦しているみたいでしたけれども、ショーの構成はとても良かったと思います。
とにかく、ハーマンの「明日はHAPPY!」というメッセージが全編に溢れていて、幸せな気持ちで家に帰りました。本当に楽しかったです~!(^ ^)西宮での公演はまだこれからなので、ぜひぜひ皆様、足を運んであげてくださーい(はぁと)。
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