心中・恋の大和路。
菅沼 潤、という、私みたいな新参のファンは名前しか知らない演出家の作品。
彼の現役時代の他の作品に、どんなものがあるのかも知りませんが。
私が「宝塚歌劇団の作品で一番好きなものは?」という質問をされたとしたら。
もちろん、すごーくすごーく悩んでしまうでしょうけれども、
「公演」でなく「作品」ならば、この作品をあげる可能性は結構高い、かもしれません。
そのくらい、大好きな作品です。
正直、レ・ミゼラブルマニアだった私にとって、この作品以前に観た宝塚の作品ってどれも「脚本」が物足りないものばかりだったんですよね…。
この作品に出会わなかったら、今でも「宝塚は面白いしキレイだしエンタメとして大好きだけど、“芸術”(←何をエラそーに)としてはちょっとね」とか(ごめんなさい!)思っていたかもしれません……。
だから。
再演すると聞いて、とても嬉しいです。
「宝塚」にはこんなに素敵な作品があるってことを、宝塚「喰わず嫌い」の方に教えてあげたいですo(^ ^)o
私は、この作品、都合3公演観ています。
最初が、汐風幸さんで再演されたバウホール公演。
(忠兵衛 汐風幸、梅川 貴咲美里、八右衛門 汐美真帆)
汐風さんも汐美さんも大好きだったので、生まれて初めて「バウのためだけに」遠征して。
終演後、客席で号泣して立てませんでした。
ハマコ(未来優希)さんの歌。
布を使っただけのシンプルきわまりない、壮絶な装置。
白一色の、凛然とした世界に、ひっそりと嵌る透明な二人。
あ、梅川が逝ったな、と思った瞬間の幸さんの動き。
ふわっ、と手が動いて、そして、ふ、と顔をあげる幽かな動き。
…ああ、忠兵衛も逝くんだな、と。
鳴り響くドラム。
泣き叫ぶベース。
運命はかく扉を叩き、
この汚れた世界から透明な二人を運び去る…
二人を死の道へ送り込むのが、二人をずっと見守ってきた「保護者」八右衛門であり、
死の道へ向かう二人を見取るのが、花魁に叶わぬ恋をした与平(未来優希)であり、
どちらも二人を愛しているからこそ、「世知辛い世間」から解き放ってやりたいと思ったのかもしれない、と。
そのくらい、あの白い世界で抱き合う二人は、ある意味、幸せそうで。
自分たちを受け入れない“世界”を、拒否してのける程の、恋だったのだ、と。
この究極の恋を成就させるためには、あの世界に閉じこもるしかなかったのだ、と。
愛の大和路、ではなく、「恋」の大和路。
それが、すとんと落ちてきて。
涙で前が見えません…(←そこでギャグを飛ばしてどーするんだ私)
文楽や歌舞伎の「冥途の飛脚」は、私が知る限り全幕での上演はされていないと思うので、名場面としての道行きと封印切りくらいしか観ていないのですが。
「心中・恋の大和路」と「冥途の飛脚」は、違う話と言ってもいいくらい違う印象でした…。
まぁ、全幕観れば違うのかもしれませんね。
歌舞伎も、名場面集ばかりじゃつまらないから、たまには全幕ものをやってほしいなあと思うのですけれどもね(やっているのかしら?歌舞伎座の演目はチェックしているつもりなのですが…涙)
次に観たのは、ものすごーくものすごーーーく楽しみに待っていた日本青年館公演。
(忠兵衛 汐風幸、梅川 貴咲美里、八右衛門 朝海ひかる)
前半のコメディ部分の流れが良くなっていたことで、ラストへの展開の怒濤感が増し、感動がいや増したんじゃないかなと思いました。
忠兵衛が朝帰りした時の愛さんとの遣り取りとか、婆さまを誤魔化すために八右衛門に協力を頼むところとかのテンポが良くなって。この大悲劇の中で、笑わせるところはしっかりと笑わせ、泣かせるところはしっかりと泣かせるメリハリの良さ。
劇場自体が広かったり、生演奏じゃなかったり(バウはナマ)、客席もちょっと寒かったり(…涙)、マイナスポイントは多かった筈ですが、役者の集中力があがっていて、公演時間がさらに短くなったような気がしたものです。
個人的には、八右衛門のケロ(汐美真帆)さんがあまりにもあまりにも素敵だったので、コム(朝海ひかる)さんはかなり大変だったろうな、というか、正直可哀相だったんじゃないかと思うのですが。
でも、私はコムさんの八右衛門もとても良かったと思います。
幸さんが半年ですごーく良くなっていたので(笑)、その相乗効果があったかな、という気もしますが。
なんというか。
ケロさんの八右衛門さまは、あまりにも格好良かったんですよね。
見た目も落ち着いているので(…ごめんなさい。ケロさん大好きです)、幸さんの忠兵衛と随分年が離れているように見えました。だから、「近所のもの慣れた兄貴分」が、可愛い弟分を「色街に連れて行って、作法のイチから教えてやった」みたいに見えたんですよね。
それが、コムさんは見た目も可愛らしいので(←ケロさんと同期であることさえ知りませんでした)、忠兵衛と同年に見えるようになって。「一緒に色街で遊んでいる対等な兄弟分」、に見えるようになったのです。
だから。
八右衛門の名場面、後を追うことを決めたときの台詞にも、
ケロさんはどこかに保護するべきものを「守りきれなかった痛み」があり、ほんのかすかに「手のうちから逃げてしまったことへの怒り」さえほのめかして(←考えすぎ?)いらっしゃったような気がするのです。
それに比べて、コムさんは、ただひたすら「自分の余計な一言で傷つけてしまった」「親友」を心配し、無事を祈っていた、ような気がしました。
観ていても、全然違うお二人のキャラに合わせて違う解釈をされていて、どちらもとても好きでした。
そして、受ける幸さんも、お二人に対する態度は全然違ってい
たんですよね。特に大和で追いつかれた時の反応の違いは大きくて。
八右衛門のキャラで、全体の印象がここまで変わるのか、と、ちょっと驚きました…。
あと、個人的にですが、愛耀子さんの子役が憧れている丁稚役のユミコ(彩吹真央)さん→蘭香レアちゃんの役替わりが印象的でした♪どっちも可愛かったです♪
しかし、あの頃から疑問に思っていたことが。
ユミコさんはあの時点で与平の代役だったんじゃないかと思いますが(エンカレで歌われた主題歌は素晴らしかったです!!公演でも聞きたかった!)、レアちゃんはどうだったんでしょうね。歌は決して得意ではない彼女ですが…。代役は違う人だったのかなあ……。
その後上演された、池袋芸術劇場でのOG公演も勿論観ました!
(忠兵衛 瀬戸内美八、梅川 若葉ひろみ、八右衛門 峰さを理)
瀬戸内さん、初めて観ましたが滅茶苦茶大人の色気があって、ぞっとするほど「色男」でしたねぇ…。なのに可愛らしくて、そりゃあ、女なら誰だってあの世までついて行きますわ、あれは。
アレを観てしまうと、幸さんは生真面目な旦那だったなあ、と思いますねぇ。まぁ、生真面目な人が燃え上がった時の方が怖い、という意味では、説得力ありましたけど。
誰にもわからないレミゼ話で恐縮ですが、「石川禅さんのマリウス=30過ぎて初恋に狂った男は怖い」っていうのと同じレベルで、汐風さんの忠兵衛も、女は「溜息ついてついて行くしかない」妙な迫力、がありましたね……
OG公演は、あまりにも瀬戸内さんの印象が強くて、峰さんはラストの道行きの歌の素晴らしさで号泣ましたが、芝居としてはちょっと弱かったのかな?瀬戸内さんよりかなり若く見えてしまうのに、キャラとして忠兵衛より「上」に立たなくてはいけないのが辛そうでした。峰さん自身は素晴らしかったと思いますが、「忠兵衛より若い八右衛門」で全然構わないから、そういう形で演出してあげればいいのになあ、と思いました。
今回の再演では、そのあたりに期待しています♪>谷さん
……長くなってしまった…(いつもか)
すいません。とにかく、大好きな作品なので。
がんばってチケットGETして、観に行きたいと思います!
そして。
もし、万が一将来現役での再演があり得るのであれば。
ぜひ、まっつ(未涼亜希)さんの忠兵衛でお願いいたします〜!!
八右衛門は、花組あまりよく知らないのでアレですが…ふみか(紫峰七海)さんあたりでいかがなものでしょうか。あるいは他組ですけどキタロウ(緒月遠麻さん)とか…全然違うかな!?
とにかく、まっつと同世代に見えて、愛情に溢れたお芝居ができて、でもちょっと裏があるっぽい深みのある大人がやれる人がで観てみたい…さらに歌えればベスト。そんな感じで(どんな感じだ)お願いします!
…ま、キャストに関係なく。
名作なので、再演は常に切望してます。はい。
谷演出は、今回のOG公演を最後にして、次回からは大野演出でやってみてくれないかなあ…。
そんなことしたら、梅川ほっぽって八右衛門×忠兵衛で心中しちゃいそうだからダメなのかしらん(…キコエナイフリ)
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菅沼 潤、という、私みたいな新参のファンは名前しか知らない演出家の作品。
彼の現役時代の他の作品に、どんなものがあるのかも知りませんが。
私が「宝塚歌劇団の作品で一番好きなものは?」という質問をされたとしたら。
もちろん、すごーくすごーく悩んでしまうでしょうけれども、
「公演」でなく「作品」ならば、この作品をあげる可能性は結構高い、かもしれません。
そのくらい、大好きな作品です。
正直、レ・ミゼラブルマニアだった私にとって、この作品以前に観た宝塚の作品ってどれも「脚本」が物足りないものばかりだったんですよね…。
この作品に出会わなかったら、今でも「宝塚は面白いしキレイだしエンタメとして大好きだけど、“芸術”(←何をエラそーに)としてはちょっとね」とか(ごめんなさい!)思っていたかもしれません……。
だから。
再演すると聞いて、とても嬉しいです。
「宝塚」にはこんなに素敵な作品があるってことを、宝塚「喰わず嫌い」の方に教えてあげたいですo(^ ^)o
私は、この作品、都合3公演観ています。
最初が、汐風幸さんで再演されたバウホール公演。
(忠兵衛 汐風幸、梅川 貴咲美里、八右衛門 汐美真帆)
汐風さんも汐美さんも大好きだったので、生まれて初めて「バウのためだけに」遠征して。
終演後、客席で号泣して立てませんでした。
ハマコ(未来優希)さんの歌。
布を使っただけのシンプルきわまりない、壮絶な装置。
白一色の、凛然とした世界に、ひっそりと嵌る透明な二人。
あ、梅川が逝ったな、と思った瞬間の幸さんの動き。
ふわっ、と手が動いて、そして、ふ、と顔をあげる幽かな動き。
…ああ、忠兵衛も逝くんだな、と。
鳴り響くドラム。
泣き叫ぶベース。
運命はかく扉を叩き、
この汚れた世界から透明な二人を運び去る…
二人を死の道へ送り込むのが、二人をずっと見守ってきた「保護者」八右衛門であり、
死の道へ向かう二人を見取るのが、花魁に叶わぬ恋をした与平(未来優希)であり、
どちらも二人を愛しているからこそ、「世知辛い世間」から解き放ってやりたいと思ったのかもしれない、と。
そのくらい、あの白い世界で抱き合う二人は、ある意味、幸せそうで。
自分たちを受け入れない“世界”を、拒否してのける程の、恋だったのだ、と。
この究極の恋を成就させるためには、あの世界に閉じこもるしかなかったのだ、と。
愛の大和路、ではなく、「恋」の大和路。
それが、すとんと落ちてきて。
涙で前が見えません…(←そこでギャグを飛ばしてどーするんだ私)
文楽や歌舞伎の「冥途の飛脚」は、私が知る限り全幕での上演はされていないと思うので、名場面としての道行きと封印切りくらいしか観ていないのですが。
「心中・恋の大和路」と「冥途の飛脚」は、違う話と言ってもいいくらい違う印象でした…。
まぁ、全幕観れば違うのかもしれませんね。
歌舞伎も、名場面集ばかりじゃつまらないから、たまには全幕ものをやってほしいなあと思うのですけれどもね(やっているのかしら?歌舞伎座の演目はチェックしているつもりなのですが…涙)
次に観たのは、ものすごーくものすごーーーく楽しみに待っていた日本青年館公演。
(忠兵衛 汐風幸、梅川 貴咲美里、八右衛門 朝海ひかる)
前半のコメディ部分の流れが良くなっていたことで、ラストへの展開の怒濤感が増し、感動がいや増したんじゃないかなと思いました。
忠兵衛が朝帰りした時の愛さんとの遣り取りとか、婆さまを誤魔化すために八右衛門に協力を頼むところとかのテンポが良くなって。この大悲劇の中で、笑わせるところはしっかりと笑わせ、泣かせるところはしっかりと泣かせるメリハリの良さ。
劇場自体が広かったり、生演奏じゃなかったり(バウはナマ)、客席もちょっと寒かったり(…涙)、マイナスポイントは多かった筈ですが、役者の集中力があがっていて、公演時間がさらに短くなったような気がしたものです。
個人的には、八右衛門のケロ(汐美真帆)さんがあまりにもあまりにも素敵だったので、コム(朝海ひかる)さんはかなり大変だったろうな、というか、正直可哀相だったんじゃないかと思うのですが。
でも、私はコムさんの八右衛門もとても良かったと思います。
幸さんが半年ですごーく良くなっていたので(笑)、その相乗効果があったかな、という気もしますが。
なんというか。
ケロさんの八右衛門さまは、あまりにも格好良かったんですよね。
見た目も落ち着いているので(…ごめんなさい。ケロさん大好きです)、幸さんの忠兵衛と随分年が離れているように見えました。だから、「近所のもの慣れた兄貴分」が、可愛い弟分を「色街に連れて行って、作法のイチから教えてやった」みたいに見えたんですよね。
それが、コムさんは見た目も可愛らしいので(←ケロさんと同期であることさえ知りませんでした)、忠兵衛と同年に見えるようになって。「一緒に色街で遊んでいる対等な兄弟分」、に見えるようになったのです。
だから。
八右衛門の名場面、後を追うことを決めたときの台詞にも、
ケロさんはどこかに保護するべきものを「守りきれなかった痛み」があり、ほんのかすかに「手のうちから逃げてしまったことへの怒り」さえほのめかして(←考えすぎ?)いらっしゃったような気がするのです。
それに比べて、コムさんは、ただひたすら「自分の余計な一言で傷つけてしまった」「親友」を心配し、無事を祈っていた、ような気がしました。
観ていても、全然違うお二人のキャラに合わせて違う解釈をされていて、どちらもとても好きでした。
そして、受ける幸さんも、お二人に対する態度は全然違ってい
たんですよね。特に大和で追いつかれた時の反応の違いは大きくて。
八右衛門のキャラで、全体の印象がここまで変わるのか、と、ちょっと驚きました…。
あと、個人的にですが、愛耀子さんの子役が憧れている丁稚役のユミコ(彩吹真央)さん→蘭香レアちゃんの役替わりが印象的でした♪どっちも可愛かったです♪
しかし、あの頃から疑問に思っていたことが。
ユミコさんはあの時点で与平の代役だったんじゃないかと思いますが(エンカレで歌われた主題歌は素晴らしかったです!!公演でも聞きたかった!)、レアちゃんはどうだったんでしょうね。歌は決して得意ではない彼女ですが…。代役は違う人だったのかなあ……。
その後上演された、池袋芸術劇場でのOG公演も勿論観ました!
(忠兵衛 瀬戸内美八、梅川 若葉ひろみ、八右衛門 峰さを理)
瀬戸内さん、初めて観ましたが滅茶苦茶大人の色気があって、ぞっとするほど「色男」でしたねぇ…。なのに可愛らしくて、そりゃあ、女なら誰だってあの世までついて行きますわ、あれは。
アレを観てしまうと、幸さんは生真面目な旦那だったなあ、と思いますねぇ。まぁ、生真面目な人が燃え上がった時の方が怖い、という意味では、説得力ありましたけど。
誰にもわからないレミゼ話で恐縮ですが、「石川禅さんのマリウス=30過ぎて初恋に狂った男は怖い」っていうのと同じレベルで、汐風さんの忠兵衛も、女は「溜息ついてついて行くしかない」妙な迫力、がありましたね……
OG公演は、あまりにも瀬戸内さんの印象が強くて、峰さんはラストの道行きの歌の素晴らしさで号泣ましたが、芝居としてはちょっと弱かったのかな?瀬戸内さんよりかなり若く見えてしまうのに、キャラとして忠兵衛より「上」に立たなくてはいけないのが辛そうでした。峰さん自身は素晴らしかったと思いますが、「忠兵衛より若い八右衛門」で全然構わないから、そういう形で演出してあげればいいのになあ、と思いました。
今回の再演では、そのあたりに期待しています♪>谷さん
……長くなってしまった…(いつもか)
すいません。とにかく、大好きな作品なので。
がんばってチケットGETして、観に行きたいと思います!
そして。
もし、万が一将来現役での再演があり得るのであれば。
ぜひ、まっつ(未涼亜希)さんの忠兵衛でお願いいたします〜!!
八右衛門は、花組あまりよく知らないのでアレですが…ふみか(紫峰七海)さんあたりでいかがなものでしょうか。あるいは他組ですけどキタロウ(緒月遠麻さん)とか…全然違うかな!?
とにかく、まっつと同世代に見えて、愛情に溢れたお芝居ができて、でもちょっと裏があるっぽい深みのある大人がやれる人がで観てみたい…さらに歌えればベスト。そんな感じで(どんな感じだ)お願いします!
…ま、キャストに関係なく。
名作なので、再演は常に切望してます。はい。
谷演出は、今回のOG公演を最後にして、次回からは大野演出でやってみてくれないかなあ…。
そんなことしたら、梅川ほっぽって八右衛門×忠兵衛で心中しちゃいそうだからダメなのかしらん(…キコエナイフリ)
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