中日劇場にて、「紫子/Heat On Beat」を観劇してまいりました。


いやはや。
初日にも書きましたが、きりやん、まりもちゃん、トップコンビお披露目おめでとうございます!
もう、ただただその気持ちで一杯です♪



「紫子」は、「大江山花伝」と同じ木原敏江原作・柴田侑宏作。ただ、演出が新鋭・大野拓史だったのは大きな違いかも(^ ^;ゞ。ちょっと月組が羨ましい……。

「とりかえばや物語」にインスピレーションを得た名作漫画の舞台化で、きりやんは安芸国佐伯氏の当主・碧生と、その双子の妹・紫子の二役。
基本的には紫子が主役の物語なので、お披露目から女役という珍しいパターンですが、男勝りのおきゃんな少女らしさはとても可愛らしくて、よく似合っていたと思います(*^ ^*)。



トップ娘役として組替えしてきたばかりのまりもちゃんは、毛利の姫君・舞鶴姫。
碧生の婚約者として佐伯に現れ、当主身替りの紫子と友情を結ぶ、なかなか宝塚では珍しい役ですが、まりもちゃんの真直ぐな明るさが生きて、すごく良かったです!もうね、とにかくまりもちゃんがめちゃくちゃ可愛くて、前から大好きだったけど、それ以上に好きになりました。ナウオンでニコニコしながらきりやんとじぃーっと視ている様子も可愛くてたまりません(^ ^;ゞ思いのほかきりやんとの並びも似合ってて、すごく嬉しいです(←つ、つい熱く語ってしまった……だってホントに可愛いんだもん!)

ただ。演劇的には、舞鶴姫の出番を減らして二番手娘役にやらせ、ちゅーちゃん(咲希あかね)が演じたお香をまりもちゃんが演じた方がバランスが良かったんじゃないか、と思いました。お香のほうが書き込まれているし、舞鶴姫の出番を思い切って減らせば、普通に大人しくて可愛い、無難な姫になるんじゃないか、と。
まあ、トップ娘役がトップスターと全く絡まないというのは宝塚にはあまり無いから、仕方ないのかな。



お芝居の二番手、というか、トップスターの相手役は、風吹役のもりえちゃん(青樹泉)。日本物のメークがよく映えて、すごく格好良かったです。何はなくても、きりやんを包み込める包容力があれば良い、って感じの役でしたが、すごく似合ってました。
この話、もっと風吹の事情をフィーチャーしてトップスターにやらせ、紫子をトップ娘役がやるという構成もありだと思うんですよね。そのくらい、良い役でした。
原作では、「大江山花伝」と同じ『鬼』の血を引く存在という設定がありましたが、舞台では説明が面倒なのか(汗)そのへんは端折って、ただの忍びの一員って感じ。アウトローな立ち姿、それでいて紫子にだけは真摯なところ、般若の面を被って出てきたときの投げ遣りな風情、立ち回りで見せる鋭い眼、どれもすごく良くて、惚れ惚れしました。紫子が惚れるのもわかる水際立った男っぷり。「エリザベート」のルドルフも良かったし、きちんと脚本に書き込まれた役を現実感をもって舞台の上で立ち上げる力は充分にあるんだな、と、あらためて思いました。

前回の大劇場公演で怪我のため休演していたもりえちゃん、今回は日本物の立ち回りもショーでのダンスも危なげなく踊っていて、すごくホッとしました。今の躍進が次に繋がることを、祈っています。



娘役二番手は、ちゅーちゃんのお香。
鋭利な美しさと暗い翳のある佳い女を好演していて、凄く嬉しかったです!(*^ ^*)
風吹と雇い主の間をつなぐ忍びの女。風吹に惚れて雇い主の命にそむき、殺されてしまう役ですが、切ない女心がしっかりと伝わる、すごく良い芝居を見せてもらいました。
新公はある程度役がついているけど、公演では役らしい役がついたことのない91期。力はある人なのにどうしてこうも役がつかないのか……(月組は結構そういう人が多いんですけど涙)と哀しんでいたのですが、きりやんがトップになって、こういう人に光が当たることを祈っています。



みりおくん(明日海りお)の金井定嗣。
「定嗣は真面目すぎて(身替りをさせても)すぐバレる」と言われる、堅苦しい男。
碧生の側仕えとして主君を護りぬこうとする強い意志と、その遺志を継いだ紫子に対する仄かな恋心。みりおくんは綺麗だから、つい女役をふられがちですけど、宝塚においては常に「愛される」側となる女役よりも、こういう骨太で不器用な「愛する」側の方が、圧倒的に持ち味に合っていると思うのです。
今はまだ、顔がふっくらと丸みがあったり、衣装の着こなしも改善の余地があったりして、見た目が坊やになってしまうのが残念なのですが、新公も卒業したこのあたりで一皮剥けてほしい、せっかく包容力のある芝居ができるんだから、見た目でも包容力を感じさせてほしい、と切に願っています。
このタイミングでショーヴランを(役替りで)与える劇団は、みりおくんのコトは本気で育てようとしているんだなあ、と思うんですよね。ぜひ、その期待に応えてほしいと思います。

そして。
今回この芝居を観ていて、いつかこの人の紫子を観てみたい、と思いました。女役だけど、紫子は「愛する」側の人だから、多分似合うと思うんです。
そういう意味では、オスカルはどちらかというと「愛される」側の役なので(原作ではそんなことないんですが、植田脚本はすごく「愛される」側に描いていると思う)、あまりそそられないのですが。
みりおくんの紫子。その頃には、いったい誰が月組に居てくれるんだろう。……珠城くんの風吹、宇月くんの定嗣、みっしょんの外記、あちょうさんの丹波、とか、そんな感じでどうかしら。いや、個人的にはみっしょんの風吹でも良いんですけど(笑)。



(桐生)園加の丹波。
久々にクールな役で、文句無く格好良かったです。ちょっと頭が弱くて可愛い感じの役が続いていたので、良い役がきてとても嬉しい!
何が良かったって、お香を殺しきれない弱さを、出番の最初からちゃんと見せていたのが凄く説得力がありました。脚本の流れのままに演じてしまうと、あそこで凄く唐突に「良い人」になってしまいそうなところをしっかり押さえていたのは、上級生の貫禄って奴でしょうか。
客席からの登場にも色気と貫禄があって、良かったです(*^ ^*)もうすっかり上級生だねえ、園加……(←だいぶ前から上級生ですけど、何か)



マギー(星条海斗)の天野外記。
帰宅してからナウオンを視たのですが、マギーは案外いろいろ考えていたんですね。すみません、私にはあまり伝わらなかったみたいで(T T)あまり裏表の無い、普通の悪役に見えてしまいました。あまりにもワルすぎて、「それじゃあ家老として家中の信頼を得ることは難しいだろうに…」などと思ってしまった(汗)。
だってだって、碧生(実は紫子)の前でもすごく莫迦にしきった顔をしていたりとか、ちょっと遣りすぎ?と思ったんですよ~~~。
いろいろ考えてはいるんですね。次は私にも、そんな思いを受け止められますように…(祈)



みっしょん(美翔かずき)の川寺刑部。
いやはや。吃驚しました。あまりにも良い役で。
毛利家の重臣で、舞鶴姫の婚礼の世話役を勤め、その後佐伯攻めを差配する大将となって立ちはだかる。
細い身体が大きな衣装の中で泳いでいたのがちょっと気になったくらいで、口跡といい、キツめのメークといい、髭をつけなくても貫禄って出せるんだなあ、と感心しました。
観ている観客にも「さすがは大毛利家の重臣」と思わせるだけの説得力を、見た目にも芝居にもきっちりつくりこんできたのがとても嬉しかったです。元々綺麗な人だけど、日本物の化粧をすると本当に美しい。武者人形のような迫力があって、もっと本格的な殺陣を視てみたい、と思いました。



邦なつきさんのたず、ガチャ(一色瑠加)の梅沢三太夫。
佐伯家家老の三太夫と、その妻で碧生の乳母だった、たず。
冷静に数えれば随分な学年差のある二人ですが、ガチャがなかなか良い具合に老けていて、バランス良かったです。役者やのう~!
ラスト前に、二人だけでの比較的長い芝居があるんですが、ほとんど台詞の無い時間が長いのに、濃やかな仕草だけで観客を完全に引き込んでいたのが凄かったです。ああいう時間が過ごせるのは、観客として無上の喜びなのかもしれません。お二人とも、ありがとう。



あーちゃん(花瀬みずか)の笹島。
毛利家からまりもちゃんについてくる、舞鶴姫の側仕え。
長身の姫君が、碧生(実は紫子)に合わせてものすごく小さく縮んでいたので、その隣でえらく大きく見えました(苦笑)。
酔っ払いの演技も可愛らしく、この人は本当に、いつまで経っても可愛らしいなあ……と、今更ながら感心してしまった。もう副組長になってそこそこ長いのに、ねぇ(^ ^;ゞ。



みっぽー(美鳳あや)のお藤、紗那ゆずは&愛風ゆめの禿。
紫子が最初に勤めようとする遊女屋の差配(お藤)と、紫子づきの禿の二人。
とにかく可愛かったんで、ここで取り上げてみました。みっぽーの貫禄を見ると、余計にあーちゃんのかわいらしさが際立ちますね。学年で四つも下だというのに(汗)。みっぽーも、姿は充分すぎるほど可愛らしいというのに(!)
ゆずはちゃんとゆめちゃんの二人は、これから劇団的にも育てていきたい二人なんでしょうか。口跡もよかったし、ゆずはちゃんとか死ぬほど可愛かったです(*^ ^*)



舞乃ゆかちゃんの宮乃
定嗣の妹で、主君・碧生に恋している少女。体の弱い碧生の世話をすることに生きがいを感じている、という、いかにも下級生娘役向きの純粋無垢な美少女の役。
以前から可愛いと思っていたゆかちゃんですが、ちゅーちゃん同様、本格的な大役はこれが初めて……ですよね。予想以上に声もよくて、切なさのある良い芝居をしてくれました。Hollywood Lover組が認められていくのはとても嬉しい。これからもがんばってほしいです♪



千海華蘭ちゃんの千丸
碧生の太刀持ち。劇団はこの人をあくまでも子役として扱うつもりなのか?たしかに、声がちょっと個性的(カチャ系の発声)なので、大人の男の役は現段階では難しいと思うんですけどね。
あまりにも可愛らしいので、いつまでも子役にしておきたい気持ちもわからないではありませんが、そろそろ大人の役もつけてあげてほしいなあ……。




目立つ役では、そんなところでしょうか。

男役にも娘役にも良い役がたくさんあるところはいかにも柴田作品。しかも、大野さんの演出は細かい所に神経が通っていて、とても良かったと思います(*^ ^*)。
大野さんのオリジナルも大好きなので観たいけど、たまには柴田作品の演出もお願いしたい!!



ただ、トップコンビのお披露目作品としては今ひとつ、という気もしてしまいました……お披露目公演っていうのはお祭だから、ある程度オーソドックスな形式に沿っていることって大事なのかもしれません。
まあ、今回はショーも異例な(トップ娘役無しの)形式だったので、余計そう思ったんだと思います。ショーがアレなら、せめてお芝居だけでも、トップコンビがちゃんと組む作品が観たかった人も多いんじゃないかなあ、と。


……まあ、次の「スカーレット・ピンパーネル」が、舶来ミュージカルにしては珍しいくらいトップコンビがっつりの良い作品なので、それを楽しみにしています♪
さっそく大劇場にも行く予定ですし(^ ^)、あ~、まりもちゃんがすっごい可愛いのでメチャクチャ楽しみです~~~っ(壊)

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