日本青年館大ホールにて、雪組青年館公演「雪景色」Bパターンを観てまいりました。


本当はバウホールで観たかったのですが、希望の公演のチケットが手に入らず……、結局一回しか観ることができませんでした。まあ、さすがに4パターン観ることは最初から諦めていたのですが、せめてAパターンとBパターンくらいは両方観たかったのになあ………。CSさん、よろしくお願いしますね(^ ^)。


ちなみに、Bパターンとは……
第一部「愛ふたつ」
 小四郎 沙央くらま
 三五郎 早霧せいな

第二部「花かんざし」
 伊佐次 早霧せいな
 吉蔵  沙央くらま
 巳之助 彩風咲奈

第三部「夢のなごり」
 伊予三郎忠嗣 早霧せいな
 伊予四郎信嗣 沙央くらま
 伊予八郎直嗣 帆風成海
 おゆき    妃桜ほのり

というパターンです。主役でいうならば、一部はコマちゃん、二部と三部はチギちゃん、という組み合わせ。



で。




すみません。私、自分でも気づいてなかったんですけど、どうやらコマちゃんファンだったらしい です。


帰り道で友人にそう言ったら、「アリョーシャ以来だよね?」と言われました。
……言われてみれば、そうなのかな。アリョーシャは大好きだった。たしかに。……そして、マリポーサの「だんなさまぁぁぁぁ」の彼も好きだったわ、そーいえば(^ ^)。

………ああ、どーしてAパターンを観なかったんだよ私ぃぃぃぃぃ!!





Bパターンしか観ていない猫が言っていいのかどうかわかりませんが。
チギちゃんの小四郎&コマちゃんの三五郎は、それはそれで嵌りそうだな、と思います。
コマちゃんの伊左次も、それなりに嵌るんじゃないかと思う。
でも、チギちゃんの吉蔵と四郎、コマちゃんの三郎が想像できない(^ ^;ゞ。

いや、たぶん、観ればきっと納得すると思うんですよ。
どの役も、それぞれに個性が出せる役だし。

ただ、今は想像することができない、というだけのことで。




コマちゃんは、発声が良くなったな、と改めて思いました。
以前は、歌える人だけど台詞の声がこもっているのであまり好きなタイプではなかったんです。きれいな人だな、とは思っていたのですが、それ以上にはなかなか進まなかった。
それが、一年前の「ソロモンの指輪」で、西風の歌声に嵌ったんですよね。おお、こんなに好きな声だったのか!?と思っていたんです。で、「カラマーゾフの兄弟」のアリョーシャで相当ポイントアップ!して。

そうは言っても、第一部はせいぜい、ずいぶん滑舌がよくなったなあ、と思ったくらいでした。
前半の一人芝居も良かったし、昔の鼻声っぽい篭り方がなくなって、聞きやすくて判りやすい、良い声だな、と。まあ、その程度だったのです。


が!

……二部の、吉蔵の深みのある声と貫禄ある口調に、ヤられてしまいました。
まあ、あの貫禄では、岡っ引には見えないんですけどね!

(アップ当初は、この後に「岡っ引きは十手なんて持っていないはずだから、吉蔵は同心なんじゃないかと思います」などと非常に適当なことを書いていたのですが、その認識は間違いだとコメントで教えていただいたので、削除させていただきます。はにはにさま、ありがとうございました!)



しかーし、良い声だなあコマちゃん。あの声でじゅんじゅんと説得されたら、普通に何もかも喋っちまいたくなるんじゃないかと思うんですけど(汗)、それは私だけでしょうか……(←たぶん君だけ)


で。

“コマファンかもしれない自分”を自覚したのは、三部のラストシーンでした。



白い雪の上を、ただ絶望へ向かって歩いていくしかない彼の絶唱を聴きながら。
死出の旅路を往く仲間たちを思いだしながら、置いていかれた子供のように啼く彼を見凝めながら。

……諦めるなよ、と。

そんなことを想いながら、その絶望に囚われて。





チギちゃんとコマちゃん。
同期で、ちょっと小柄だけど美貌の二人。
この二人が並んで笑っているだけで、なんとなく幸せな気がするのは、その空間の美形率が高いから、なんですよねきっと(^ ^)。


ちょっと硬めの、ハスキーで色っぽい、だけどちょっと響きが軽薄気味で、呼吸が浅くて早口なチギちゃん。
チギちゃんは、本当に攻めの人なんだな、と思います。
芝居の創り方が完全に攻めだし、キャラも攻め系。なんたって、「殉情」の佐助を攻め系で演じきったひとだもん。
攻め系だけど愛があるところが魅力なんだと思います。根本のところでポジティブなんですよね。
だから、伊左次も三郎も、とても良く似合ってました。こういう役(←要するに主役)をやらせると、ちゃんと『宝塚らしい芝居』に仕上げてくれる人なんだと思う。

明るくて、真直ぐで、正直で、綺麗。
それはたぶん、宝塚のスターとしての基本要素であり、一番大事なところなんだと思う。
ただ、それだけでは薄っぺらくてツマラナイ役者になってしまうから、それに加えて何を個性にしていくかが重要で。そのプラスアルファが、チギちゃんの場合は「攻め系」だったんだろうな、と。



深みのある柔らかな声だけど、ちょっと早口が苦手っぽいコマちゃん。
彼女は意外に『闇』を見ることができるひとなんだな、と、今回すごく思いました。
でも、思いかえせばアリョーシャのときもちょっと思ったんですよね。見た目が愛くるしいタイプなので、あまりそういう印象がなかったのですが。
なんとなく、チギちゃん同様、明朗で真直ぐな、健康的なタイプだとばかり思っていたんですが。最近のコマちゃんを観ていると、もしかしたら本質は違うのかな?と。
あるいは、チギちゃんが来たことで、無意識に棲み分けしようとしているのかもしれませんが。

ただ、本質的にチギちゃんと違うのは、コマちゃんは受け芝居の人だってことだと思います。相手の出方をみて、それにあわせて返すタイプ。それでいて、案外と荒事が似合うのが面白いところなんですが。(チギちゃんはどちらかというと和事が本領っぽい)



どっちが好きか、というのは好みの問題ですし、まあ大部分の人は『どっちも好き』という答えになると思うのですが。
んー、二人とも可愛かったなあ★(←結局それ?)





谷さんお得意の、落語シリーズ。今回は珍しく三本立てということで、何から書くか迷ったのですが……。
とりあえず、幕ごとに。


第一部「愛ふたつ」
みみちゃんの役は、第一部では流しの小間物屋である小四郎の女房・お咲。小四郎が死んだという報せを受けて自害さえ考えるが、家主(汝鳥玲)に諭されて、小四郎の従兄である三五郎と再婚する。ところが、小四郎は生きていた……!!という、どっかで聞いたことのある話(それも、すごく最近に何回も何回も!)でした。
長屋の若妻が良く似合って、考えなしな若いもんぶりが、悶えるほど可愛かったです♪

お咲ちゃんが好きで好きで大好きで、物凄い歌(←としか説明のしようがない)を歌う三五郎のチギちゃんも可愛い!小四郎が帰ってきたことを知って、怯えて小さくなっているところもいい。なのに、あんなに小さくなっているのに攻め系なところがもっといい(^ ^)。
落語的な長口舌のところは全くダメダメでしたが、あれは勉強と割り切れば、それ以外はよくがんばっていたと思います。

大月さゆちゃんは、小四郎が旅の途中で助けた大店の主人の女房。圧倒的な華と存在感。コマちゃんチギちゃんさえ吹っ飛ばす格がありました。なのに、最後のコマちゃんとの並びが可愛くて、歌の歌詞どおりの「夫婦雛」そのもの(*^ ^*)。可愛いなあ、本当に。

第一部では、他に大凪真生さんの茶屋の婆役が素晴らしかった♪
化粧も芝居も思い切ってやっていて、とても気持ちが良かったと思います。ありがとう!




第二部「花かんざし」
上にも書きましたが、コマちゃんの貫禄の親分ぶり(←違う)が素晴らしかったです。
あの声をもっと聴いていたかった…。
伊左次は無口な職人という設定で、ほとんど台詞はない(というか、吉蔵たちが喋りすぎてて、あれじゃあ返事をする隙がないと思う…)んですよね。最後のほうにちょっと喋るけど。
…チギちゃんの立ち姿がきれいで、うっとりしました。うん。

巳之助の彩風さんは、達者な人なんだけど、そろそろ声を低くする努力をはじめないと…と思いました。声そのものというか、喋り方の問題なのかな?
今、研3ですよね。最初に観たのが「凍てついた明日」なので、あれからもう1年半。見た目も丸っこくて可愛らしくて、台詞も声も女の子らしくて可愛らしくて……のままでは、さすがにそろそろキツくなってきたんじゃないかと思います。華は十分すぎるほどあるひとなので、もう少し、スタイルなり声なり、目標を定めて歩き出してほしいなあ。

ここでもさゆちゃんがめっちゃ別嬪で、元気で、気迫があって見事です。
あああ、さゆちゃんのリンダも似合いそうだなあ……!!

伊左次の妹・お市の透水さらさちゃんは、元々歌が本領の人なんですが、台詞はまだまだだったかな。「ロシアンブルー」の美穂さんの役は良かったんだけどなあ。お化粧も、第一部の幽霊娘の方が可愛かったぞー!!と思ってしまった(T T)のと、チギちゃんの妹というにはすこーし背が高すぎるのが問題、だったような。



で、谷さんに質問。
吉蔵さんは伊左次狙い、という読みは当たっていますか?(←おい………)



チギちゃん&ミミちゃん、コマちゃん&さゆちゃんというコンビは、それぞれに似合いのコンビで、とても良かったと思います。
3話ともこのパターンになっているBパターンしか観ていないからそう思うだけなのかなあ?

第二部までは、さゆちゃんもみみちゃんも今の役がご本人の個性に合っているので、男二人が役替りしてもそのままで良いと思うのですが、第三部だけは、娘役も役替り(三郎がコマちゃんのときは姫はさゆちゃん、チギちゃんのときは美海ちゃん)した方がよかったのでは、と思ったりしました。





第三部「夢のなごり」
平家の落人伝説をヒントに創られた、舞踊劇。
二部が終わって、そのまま緞帳をおろさずに三部をはじめる構成は、なかなか良かったと思います。鎧兜に総髪のがおりちゃん(香稜しずる)が、状況を説明しながらソロで歌って通り過ぎます。目張りのきいたメークが似合って、ホンモノの武者人形みたい。歌も良かった(*^ ^*)。ああ、がおりちゃんが格好良い♪♪幸せだ♪♪


話自体は、ありがちな落人伝説。平家の落胤(姫がみみちゃん、若君が凛城きらさん)を守る小集団が、追い詰められて全滅する話なんですけどね。
壇ノ浦の合戦、今まで共に生きてきた全てが海の底の都に沈んでいったのに、穢れた地上に生き残ってしまった僅かな人間たちの煩悶が、芝居ではなく歌舞が中心なので、ちょっとわかりにくかったような気がします。

エピソードとして挟まれていた、狐たちの恋の逃避行(真那春人・妃桜ほのり)のくだりは、“生きよう”という意思を持ち、未来を望む若者たちと、皆と“海の底の港”へ行き損ねたことを悔やむばかりの彼らの対比という意味で、判りやすくてよかったと思います。
ただ、もう少し喋らせても良かったのになあ、とは思ってしまいます。妃桜さんはわかりませんが、真那くんは喋れる人なのに勿体無い(; ;)。



まあ、それはともかく。

チギちゃんの三郎は、佐助の最後と良く似た解釈だな、と思いました。
自分自身(と恋しい姫)に傷をつけることで、別世界の人だった姫と同じ世界に行こうとする。

攻めの佐助を構築してのけたチギちゃんらしい、攻めの三郎でした。
ラスト、懐剣を胸にあてた姫を抱きしめて、そのまま自らの首に刃を立てる瞬間の、幸せそうな微笑みが、すごく佐助を思い出しました……。ポジティブな自傷。死ぬことで、自分も姫も幸せになれると信じて疑わない、その純粋な盲目ぶり。


でもさー、みみちゃん。
そこで戻ってくるなら、狐たちに倣って「二人で逃げましょう!」、くらいのことを言ってみようよ!貴女がそこで死んだら、身替りになったさゆちゃんが犬死じゃないか!



そして、若君を託された、コマちゃんの四郎。
この人の絶唱は、ちょっと、しばらく忘れられないかもしれないです………




コマちゃんのファンかもしれない自分に気がついた、そんな12月9日の夜。





千秋楽の前日ということで、多くのメンバーが千秋楽を迎えていましたが、皆さんとても爽やかな笑顔でしたね。
な新公を卒業しているのが組長と主演の二人、そして大凪真生さんと専科の汝鳥さんの5人のみ、という若い座組での怒涛の役替り。さぞ大変だったろうなあと思います。

千秋楽の最後の最後まで、どうぞ、気を抜かないでがんばってくださいね。

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