東京芸術劇場プレイハウスにて、TSミュージカル「ちぬの誓い」を観劇いたしました。
2012年の大河ドラマ「平清盛」中盤のメインテーマとなっていた、大輪田泊(いまの神戸港)の波除島構築工事の物語。いかにも謝さんらしい、生きるための「目標」を求めた闘いが切ないほど辛く苦しいものとして描かれていて、、、その辛さが、ひどくうつくしくみえました。
平氏の世の中=武士の時代=新しい時代、という夢 の美しさと厳しさに、目眩がしました。
ドラマでは清盛自ら大輪田に居座って実際の工事の指揮を執っていましたが、謝さんは同じ工事をテーマにしながら、清盛を全く登場させず、すべてを清盛の代弁者としての「陰陽師」(今拓哉)を通さないと上にあがらない(そもそも経が島造営自体が彼の上申)、という設定にしていました。この設定による「清盛」と「現場」の距離感と、「陰陽師」の設定が、工事にあたる実務担当者たちの焦りと不安を助長させ、遣る瀬なさを倍増させていたのが、とてもリアルで。。。辛かったなあ。
ドラマとしては、清盛を登場させて彼らと直接話をさせ、同じ夢に向かってがんばるぞ!!とやらせたほうがが、観客は気持ち良く感動できると思うんですよね。
でも、謝さんはあえてそうしなかった。描きたかったのは、見捨てられたのかもしれないという不安の中で、それでも夢を見捨てない、清盛の夢ではなく自分たちの夢を実現するために全力を尽くす男たちだから。清盛との間に確かにあったはずの絆や共感が時間の中で風化してしまっても、清盛の夢は、すでに彼ら自身の夢になっていたはずだから。
武士の世、それは、誰もが生まれに関わらず能力が評価される世の中。
すでに鎌倉時代以降を知っている現代人にとっては、平氏の時代はあくまでも平安時代=貴族の時代の末期であって、武士の時代ではありません。でも、当時を生きている人々にとっては、それは「武士の時代」の黎明期であったのだ、と……その実感が、ぞくぞくするほどリアルに伝わってきました。
美しい物語とはいえない、泥臭い経が島造営工事。TSらしい華やかな殺陣も少なくて、重たい会話がずっとつづく作品でしたが、、、彼らの生き様はとても美しくて、鮮烈で、目が離せませんでした。
たぶんそれは、新撰組のメンバーが視た「武士になるんだ!」という夢に近いものだったのではないかと思う。滅ぶ側に与したことも含めて、彼らには共通点が多そうな気がします。
謝さんがそんなつもりで創っていないことはわかるので、あまり突っ込まないことにしますが(^ ^)。
それでは、出演者について簡単に。
■東山義久
実務責任者の不動丸。リーダーはいつどこで観てもリーダーだなあ。。。とちょっと感慨にふけりつつ。
アンジョルラスを演じたときは歌はまだまだ、と思いましたが、少なくともこのメンバーでこの劇場でやっている分には十分な声量と美声、そして感情を伝える技術。ダンスはもともとすごいのに、歌まですごいって。。。。すごいなー(語彙少ないな)
「ニジンスキー」の再演もすごく楽しみ!チケットないけど、絶対観るぞ!
■相葉裕樹
なんというか、独特の存在感と空気感のある人なので、「有らざるものが視える」能力を持つ貴族の御曹司・松王丸にはぴったりだったと思います。他のメンバーと明らかに生きている世界が違う(^ ^)。
飄々とした中に熱いものが隠されているところが、すごくいいなと思うんですよね。彼の不安と苦しみ、そし最後の決断に至る流れが自然で、説得力のある芝居をする人だなあ、と思いました。
■藤岡正明
不動丸に次ぐナンバー2の五郎丸。音楽のもつ力を一番感じさせてくれたのは彼でした。世界を動かす音楽。共感力のある
■良知真次
見捨てられた孤児で、盗賊団に育てられた過去をもつ達若。もう、あの美貌だけで全てが許せる時代は終わったはずなのに、やっぱり良知くんが苦しんでいるとトキメいてしまう(滝汗)
あの抜群のビジュアル+存在感+被虐的な雰囲気、、、つい物語のキーパーソンに設定したくなる気持ちは良く判るのですが、、、あれでお芝居がもう少しうまければねええ(溜息)
■渡辺大輔
達若の盗賊団時代の仲間で、武士に恨みをもつ常世丸。ありがちなキャラクターですが、ドラマを動かすには必要なんですよね、こういう存在が。
ちゃんと認識したのは多分今回が初めてだと思いますが、そつなくこなしてて巧いなーと思いました。
■上原理生
歌の深みと存在感はさすが。アンジョルラスのイメージが強かったので、髪はぼさぼさで黒く汚した化粧に、しばらく誰だかわかりませんでしたが、歌いだしたらわかりました(^ ^)。
ドラマを動かすというより、「そこに太く在る」という存在感がすごくあって、アンジョルラスとは全く違うけれども、とても良かったです。
■戸井勝海
渡来人の末裔、秦東儀。久しぶりに戸井さんの芝居と美声に酔いました。イロイロどうかと思うご都合主義的な無理矢理設定でしたが(苦笑)、戸井さんの芝居はすごく的確だったと思う。的確すぎて若干いけすかない感じになってたけど、それも含めてすごく良かった(*^ ^*)
■今拓哉
現場の責任者として、清盛と現場との間をつなぐ「陰陽師」。
謝さんは、彼を妖しげな人物に設定することで現場の苛立ちを強調してみせましたが、その役割をきっちり果たした今さんの存在感は、さすがの一言でした。いやー、この人本当にすごい。。。
印象に残ったのはそのあたりでしょうか。
ここしばらいく忙しくてTSも観られない公演が増えつつあったのですが。。。やっぱり観つづけたいカンパニーですよね。……いや、あの、秋の公演は、思いもよらない方が主演されるので、観にいかなくてはならないわけですが。。。。
http://www.tsmusical.com/
………謝さんとは、「黒い瞳」「MAHOROBA」以来でしょうか? ショーの振付のみとかだったら他にもあるかな。
いずれにしても、歌とダンスのレベルは誰よりも謝さんがご存知だと思いますので、今の女優・大空祐飛の芝居をどう使うのか、楽しみに期待してお待ちしています!
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2012年の大河ドラマ「平清盛」中盤のメインテーマとなっていた、大輪田泊(いまの神戸港)の波除島構築工事の物語。いかにも謝さんらしい、生きるための「目標」を求めた闘いが切ないほど辛く苦しいものとして描かれていて、、、その辛さが、ひどくうつくしくみえました。
平氏の世の中=武士の時代=新しい時代、という夢 の美しさと厳しさに、目眩がしました。
ドラマでは清盛自ら大輪田に居座って実際の工事の指揮を執っていましたが、謝さんは同じ工事をテーマにしながら、清盛を全く登場させず、すべてを清盛の代弁者としての「陰陽師」(今拓哉)を通さないと上にあがらない(そもそも経が島造営自体が彼の上申)、という設定にしていました。この設定による「清盛」と「現場」の距離感と、「陰陽師」の設定が、工事にあたる実務担当者たちの焦りと不安を助長させ、遣る瀬なさを倍増させていたのが、とてもリアルで。。。辛かったなあ。
ドラマとしては、清盛を登場させて彼らと直接話をさせ、同じ夢に向かってがんばるぞ!!とやらせたほうがが、観客は気持ち良く感動できると思うんですよね。
でも、謝さんはあえてそうしなかった。描きたかったのは、見捨てられたのかもしれないという不安の中で、それでも夢を見捨てない、清盛の夢ではなく自分たちの夢を実現するために全力を尽くす男たちだから。清盛との間に確かにあったはずの絆や共感が時間の中で風化してしまっても、清盛の夢は、すでに彼ら自身の夢になっていたはずだから。
武士の世、それは、誰もが生まれに関わらず能力が評価される世の中。
すでに鎌倉時代以降を知っている現代人にとっては、平氏の時代はあくまでも平安時代=貴族の時代の末期であって、武士の時代ではありません。でも、当時を生きている人々にとっては、それは「武士の時代」の黎明期であったのだ、と……その実感が、ぞくぞくするほどリアルに伝わってきました。
美しい物語とはいえない、泥臭い経が島造営工事。TSらしい華やかな殺陣も少なくて、重たい会話がずっとつづく作品でしたが、、、彼らの生き様はとても美しくて、鮮烈で、目が離せませんでした。
たぶんそれは、新撰組のメンバーが視た「武士になるんだ!」という夢に近いものだったのではないかと思う。滅ぶ側に与したことも含めて、彼らには共通点が多そうな気がします。
謝さんがそんなつもりで創っていないことはわかるので、あまり突っ込まないことにしますが(^ ^)。
それでは、出演者について簡単に。
■東山義久
実務責任者の不動丸。リーダーはいつどこで観てもリーダーだなあ。。。とちょっと感慨にふけりつつ。
アンジョルラスを演じたときは歌はまだまだ、と思いましたが、少なくともこのメンバーでこの劇場でやっている分には十分な声量と美声、そして感情を伝える技術。ダンスはもともとすごいのに、歌まですごいって。。。。すごいなー(語彙少ないな)
「ニジンスキー」の再演もすごく楽しみ!チケットないけど、絶対観るぞ!
■相葉裕樹
なんというか、独特の存在感と空気感のある人なので、「有らざるものが視える」能力を持つ貴族の御曹司・松王丸にはぴったりだったと思います。他のメンバーと明らかに生きている世界が違う(^ ^)。
飄々とした中に熱いものが隠されているところが、すごくいいなと思うんですよね。彼の不安と苦しみ、そし最後の決断に至る流れが自然で、説得力のある芝居をする人だなあ、と思いました。
■藤岡正明
不動丸に次ぐナンバー2の五郎丸。音楽のもつ力を一番感じさせてくれたのは彼でした。世界を動かす音楽。共感力のある
■良知真次
見捨てられた孤児で、盗賊団に育てられた過去をもつ達若。もう、あの美貌だけで全てが許せる時代は終わったはずなのに、やっぱり良知くんが苦しんでいるとトキメいてしまう(滝汗)
あの抜群のビジュアル+存在感+被虐的な雰囲気、、、つい物語のキーパーソンに設定したくなる気持ちは良く判るのですが、、、あれでお芝居がもう少しうまければねええ(溜息)
■渡辺大輔
達若の盗賊団時代の仲間で、武士に恨みをもつ常世丸。ありがちなキャラクターですが、ドラマを動かすには必要なんですよね、こういう存在が。
ちゃんと認識したのは多分今回が初めてだと思いますが、そつなくこなしてて巧いなーと思いました。
■上原理生
歌の深みと存在感はさすが。アンジョルラスのイメージが強かったので、髪はぼさぼさで黒く汚した化粧に、しばらく誰だかわかりませんでしたが、歌いだしたらわかりました(^ ^)。
ドラマを動かすというより、「そこに太く在る」という存在感がすごくあって、アンジョルラスとは全く違うけれども、とても良かったです。
■戸井勝海
渡来人の末裔、秦東儀。久しぶりに戸井さんの芝居と美声に酔いました。イロイロどうかと思うご都合主義的な無理矢理設定でしたが(苦笑)、戸井さんの芝居はすごく的確だったと思う。的確すぎて若干いけすかない感じになってたけど、それも含めてすごく良かった(*^ ^*)
■今拓哉
現場の責任者として、清盛と現場との間をつなぐ「陰陽師」。
謝さんは、彼を妖しげな人物に設定することで現場の苛立ちを強調してみせましたが、その役割をきっちり果たした今さんの存在感は、さすがの一言でした。いやー、この人本当にすごい。。。
印象に残ったのはそのあたりでしょうか。
ここしばらいく忙しくてTSも観られない公演が増えつつあったのですが。。。やっぱり観つづけたいカンパニーですよね。……いや、あの、秋の公演は、思いもよらない方が主演されるので、観にいかなくてはならないわけですが。。。。
http://www.tsmusical.com/
………謝さんとは、「黒い瞳」「MAHOROBA」以来でしょうか? ショーの振付のみとかだったら他にもあるかな。
いずれにしても、歌とダンスのレベルは誰よりも謝さんがご存知だと思いますので、今の女優・大空祐飛の芝居をどう使うのか、楽しみに期待してお待ちしています!
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