市川文化センターにて、雪組全国ツアー公演「若き日の唄は忘れじ/ナルシス・ノアール」を観劇いたしました。

素晴らしかった!

「若き日の唄は忘れじ」
冬の中日で初めて観劇し、心底から感動した名作。こうして、ふたたび壮ちゃんの文四郎さまにお逢いすることができて、とても幸せです。

そういえば、水さんととなみちゃんのお披露目だった「星影の人」も、中日では初顔合わせの初々しさが逆に新鮮で良かったけど、「エリザベート」を経た秋の全国ツアーではまた全然違う、しっとりとした魅力があって、とても素敵な公演だったなあ……なんて懐かしく思い出したりして。
どちらもお芝居が日本ものなのは偶然なんでしょうけれども、、、やっぱり日本物は(作品と人を選ぶけど)良いものだなあ、と思いました(^ ^)。


そして。
今回の全国ツアーは、出演者の関係で、中日とはだいぶキャストが変わったわけですが……キャストに合わせて演出が全く違うことに、本当に驚きました。
大野さんすげー!!
脚本を(ほとんど)変えてないのに、演出だけでこれだけ違う作品になるなんて!!


中日ではキング(蓮城)が演じた武部春樹に、大ちゃん(鳳翔)が演じた佐竹の要素を足した役をまっつ(未涼)が演じて、チギちゃん(早霧)が演じた小和田逸平をともみん(夢乃)が演じる。これが役の重みづけを大きく変えた部分ですが……いやはや、大野さんのまっつへの信頼というか期待というか……まっつにこういう役をやらせたかったんだな、というのがすごく伝わってきたし、まっつ側も、大野さんの期待に応えようという気合をすごく感じました。

石栗道場の師範代だった佐竹。彼にあった「剣豪」という要素を加えた武部のキャラクターは、とても複雑な、興味深いものになっていたと思います。単なる立身出世を望む策謀家ではなく、「剣」に生きたかったのに、「剣」に選ばれなかった哀れな剣士、というものに。
文四郎を温かく見守り、その成長を心の底から言祝いでいた佐竹とまったく同じ言葉を与えながら、心の底では文四郎を憎んでいた武部。文四郎の不運は、武部の眼の前で「剣」に選ばれてしまったことだった……たぶん。「剣」に選ばれた文四郎を羨みつつ憎みつつ、なのに、憎む理由から目をそらして生きるしかない武部が哀れにさえ見えて、、、こんな複雑な物語になりえたのか、と、目から鱗でした。
脚本はほとんど変わってないのにーーー!!

もちろん、まっつの武部はそれだけの男ではなくて。志摩守のために忠義を尽くし、牧助左衛門(夏美)の動向を探り…と大活躍。むしろ、里村(蓮城)のほうが武部に巻き込まれたんじゃないかと思ってしまうほどの有能っぷりがすごい。ナウオンで「(里村邸のメンバーは)みんな武部が好き」と大野さんが言ったとのエピソードが披露されていましたが、、、まあ「好き」っていうと若干語弊があるけど、「武部が中心」であることは間違いなかったですね。うん。

あとは、最初の野合わせでの文四郎と武部の遣り取りがすごく印象的で。
物語の終盤、逃避行のラストにラスボスとして武部が登場した時、あの野あわせの場面をすごく思い出しました。「秘剣・村雨を」と要求する声の響きが、とても好きです。まっつのああいう切羽詰まった芝居って珍しい気がするので、とても嬉しい(^ ^)。


他にもいろいろ印象的な役替りは多かったのですが、、、逸平と与之介(彩風)もまた全然違ってて、面白かったです。それこそ全く同じ台詞で同じ動きのはずなのに、ぜんぜん違いすぎて、、、本当にびっくり。
中でも凄いと思ったのは、、、壮ちゃんと彩風さんって11期違うんですよね。壮ちゃんとともみんが5期。なのに、16歳の親友トリオ、と言われて、違和感無かった!! 星組「ロミオとジュリエット」Aパターンで、ロミオを演じた礼音くんとベンヴォーリオの礼くんの学年差が10期で、あれだけ「親友に見えない!」って言われていたのに。
もちろん、研5の礼くんと研7の彩風さんの経験値の違いも多少はあるかもしれませんが、やっぱり壮ちゃんの16歳の違和感のなさが凄いってことじゃないかな、と思いました(*^ ^*)。

ともみんの逸平は、本能的な優しさとパワーのバランスがすごく良かったです。チギちゃんの逸平はもっと文四郎に近い感じがあったけど、ともみんの逸平は、本能的に文四郎を理解してはいてもそれを言葉に表せない感じがすごく可愛くて、絶妙な距離感のある遣り取りが、一つ一つがどれも大好きになりました。

彩風さんの与之介は、本当に情けなくて可愛くて、、、ちょっと違うんですけど、私が最初に彩風さんに注目した「凍てついた明日」のジョーンズを思い出しました。守られてばっかりで、それを情けないと思っているんだけどどうしようもない子供。そんな与之介と並ぶと、あの可愛いあんりちゃん(星乃)がすごく大人に見えて、箒を構えた姿勢がとても凛々しく決まっていて、、、素敵すぎました(*^ ^*)。

側室のきゃびぃ(早花)は、哀しかった。。。。中日のヒメ(舞咲)は、どちらかといえば「怖さ」が勝った印象だったと思うのですが、きゃびぃからはもっと、なんというか人間らしい感情がいろいろ見えたような。
台詞もない、動きだけの役ですが、ちょっと能でいう「直面」を思わせる無表情から、逆にいろんな感情が伝わってくるような気がしました。

石栗先生のにわにわ(奏乃)のとぼけた味わいと温かみは、飛鳥さんの重みや包容力とはまた違う役づくりで、とても興味深かったです。佐竹さんという存在がいなくなって、事実上道場を一人で切りまわしているわけですが(^ ^)、あのとぼけた調子で毎日を楽しく軽やかに過ごしていらっしゃるんだろうな、と、そんな想像をしてしまったほど、自然な「先生」感がありました。

山根清二郎の月城かなとくん。月城くんがどうこうというより、作品的に、中日で犬飼と山根に役が分れていたのが統合されて、文四郎との対立軸がわかりやすくなったなと思いました。剣士として武部に憧れているのもわかりやすかったし。
と言いつつ、設定とかなんとか全部ほっといて、月城くんが恰好良かった!!いやはや、二枚目ですね。って今更なんですけど、あれだけ大きな役で芝居しているのを観るのは初めて…少なくとも新公以外では初めてだと思うのですが、声の良さと押し出しに感動しました。あれで研5?95期、おそるべし(←いまさらだってば)




「ナルシス・ノワールII」
岡田さんの傑作ショーのリメイク。私は初演を観ていませんが、だいぶ違うのだそうですね。
中詰めは「ローズ・ガーデン」と同じだそうですが……「ローズ・ガーデン」観たはずなのに全然まったく記憶に無かった…(汗)。言われてみればたしかに、黒水仙というよりは薔薇という感じの場面だなあと思ったのですが。本当にそうだったとは。

その後の「光と影」は元々「ナルシス・ノワール」の場面なんですよね?ってことは、そこからフィナーレまでの構成は同じ?
全体的に、洗練された美しい場面の連続で、これぞ「ロマンティック・レビュー」の真髄というものなのかもしれないな、と思ったりしました。先年再演された「ル・ポアゾン」は(←これもだいぶ場面の入れ替えがあったようですが)、もう少しエネルギッシュというか、エロティックな場面があったりして体温があがる気がしましたが、「ナルシス・ノワールII」は、もう少し穏やかな、「気持ちいい」感じがありました。
一種の“充足感”、なのでしょうかね、あれは。

ちょっと全体の観にくい席だったので、詳しいことはもう一度観てから書きたいと思います。
あ、でも、娘役についてちょっとだけ。
ひーこ(笙乃)かわいいよひーこ!! ひなちゃんがお姉さんで美しすぎてすごくびっくりした(いまさら)。 うきちゃん(白峰)、今回はあんまり目立ってなかったような気が……彼女には、もっと布地の少ない衣装を着せたいです(真顔)。 




蝉しぐれの似合う季節、と壮ちゃんが初日のご挨拶で言っていましたが、、、休憩の間に劇場の外に出たら、本当に蝉の声が聴こえて、なんだかあらためて感動したのでした。

最後の仙台まで、誰も怪我などすることなくあの世界を生ききってくださいますように!
次の観劇を、楽しみにしています。


コメント

nophoto
hanihani
2013年9月9日13:01

ねこさん、昨日はバウをご覧になっていたようで…
私は大劇場を観劇で、ご挨拶できずに残念でした。
急に法事の帰りに大劇に行ったので、バウのこととかすっかり失念してました。


さて、市川公演の感想、「そうそう、だよね~」と言いながら拝見しました。
1つ、きゃびいは正室ではなくて、側室のお舟の方なんですのよ。
側室だからこそ、さらにおふくの方をいじめるのかなぁと。

あと、原作からするとやはり藩の転覆を計るという意味でも
次席家老と争うんだし、元の家老で藩主の伯父という方とも色々あるということは
やはり里村がラスボスであるべきとは思うんだよね・・・
大野先生の書き換えは面白いけど、中日の里村チームのバランスが良かっただけに
ちょっと気になりました(笑)
里村家老が壮ちゃんのこと、遠慮があってあまり扇子でぐいぐいいじめないし…


そして、全体が見えない席ってほんとでした。

伊勢崎公演をみたら、センター12列とかの超見やすい席で観れて
声も市川より鮮明に聞こえて、すごく楽しかったのです。
次回は良く見える後方席で色々とまた盛り上がりましょう!

みつきねこ
2013年9月9日23:27

hanihaniさま♪
昨日、同じ屋根の下にいらっしゃったんですねー!全然気がつかず、失礼いたしました!

> 1つ、きゃびいは正室ではなくて、側室のお舟の方なんですのよ。

おっと、そうでしたっけ。すみません、あのあたりの場面は眼が忙しくて耳がちょっとお留守で(汗)

> 側室だからこそ、さらにおふくの方をいじめるのかなぁと。

正室なら守られるけど、側室じゃお腹さまにならなきゃ何の保証もないですものね。。。


> あと、原作からするとやはり藩の転覆を計るという意味でも
> 次席家老と争うんだし、元の家老で藩主の伯父という方とも色々あるということは
> やはり里村がラスボスであるべきとは思うんだよね・・・

それは思いました。だからこそ、大野さん大胆だな、と驚いたんですよね。

ただ、原作とか初演とか考えず、純粋に一つの公演(作品)として考えたら、ああいうパワーバランスも面白いな、とは思いました。まっつを武部にして、志摩守方の中心人物を武部に置くなら、里村家老が大物だと逆にバランスが悪くなるんですよね。
中日の里村チームはたしかにバランスが良かったので、役替りしてしまったのは残念でしたが、飛鳥さんが組替えされて石栗せんせいを演じる人がいなくて仕方なく、とかそういうのではなく、作品全体のパワーバランスをみて里村の比重を変えたんだな、と感じました。

……この全国ツアーを大関さんがご覧になったら、どう仰るのでしょうね……。

> 里村家老が壮ちゃんのこと、遠慮があってあまり扇子でぐいぐいいじめないし…

すみません(^ ^;ゞ、私は未沙さんの秀吉と祐飛さんの三成の記憶が鮮明すぎて、にわにわでも物足りなかったりしたので、あまりそこは思いませんでした(^ ^)。

> 次回は良く見える後方席で色々とまた盛り上がりましょう!

はいっ!!楽しみです!!(^o^)