若者たちのヴェローナ【2】
2013年8月10日 宝塚(星)星組新人公演「ロミオとジュリエット」。
先日はメインキャストの印象をざっくり書きましたので、あらためて、作品(演出)について。
新人公演演出は田渕大輔。
去年「Victorian JAZZ」でデビューした新星ですが、それぞれの役者にキャラクターをきちんとはめて、一つの舞台としてしっかりまとめあげたな、と思いました。
作品として仮面舞踏会スタートになるのは、雪、月、星と全部同じなので、おそらく契約の関係なのでしょう。今回は、その前に少し神父(ひろ香)のナレーションで場面設定を説明する場面があって、そのあたりは一年前の月組新人公演での工夫を踏襲してきたのかな、という感じでした。
今回、本公演は大規模な役替り公演なわけですが、全体に、どちらかといえばAパターンがベースになっているような気がしました。
それぞれ役者の個性が違うのでだいぶ違うのですが、ベンヴォーリオが“ある確信(自信?)”をもってマントヴァへ向かうところとか、「街に噂が」のマーキューシオが、かなり本気で怒っていたこと、死が能動的で愛が受動的なところなど、私のツボが全部Aパターンよりだったんですよね。あと、「僕は怖い」リプライズのマーキューシオの踊りだしもAパターンだったし。
ただ、「死」(十碧)については、存在感として、Aパターンの「死」(真風)より、むしろ月組新人公演の「死」(鳳月)に近いものを感じました。
特殊メイクも復活していたし、存在の仕方がなんとなく似ていたような気がしたんですよね。ただ、ちなつちゃんは、振りと振りの間の動きがすごく独特で、動きのすべてが本公演とは全く違っていたのですが、十碧くんはそこまでではなく、動き自体は基本通り美しく踊っていたと思いますが……。
「ロミオとジュリエット」という作品も、宝塚だけでもう4演め。役替りや新人公演も含めると相当なヴァリエーションがありますが、こと「ロミオ」と「死」の組み合わせ、という観点でいうと、今まで上演されたものは、大きく4つのパターンに分類できると思うんですよね。
「生命力に溢れたロミオ」と「能動的に彼の運命を操ろうとする死」という組み合わせは、初演星組、雪組と月組の新人公演、再演星組Aパターンがそうですね。
とっつきやすくてわかりやすく、盛り上げやすい(盛り上がりやすい)バージョンだと思います。新規獲得用、という感じかな。
逆に、「最初から死に魅入られているロミオ」と、「彼が墜ちてくるのを待っている死」という組み合わせは、雪組版と、月組の明日海ロミオ版がそうだったと思います。
主人公が後ろ向きなため、舞台作品としては重くなりやすく「華やかな宝塚」というイメージとのバランスが難しいのですが、、、でも、成功すればポテンシャルは高いパターン。リピーター獲得用、とでもいう感じでしょうか。イメージですけど。
「死を拒否するロミオ」と彼が墜ちてくるのを待っている死」という組み合わせは、月組の龍ロミオ版がそうだったかな、と。……まあ、“死を拒否する”というより、“すぐ近くにいる死に気がつかない”という感じではありましたが(^ ^)
この組み合わせで物語を進めるには、最終的な「死」に向かう強力な牽引車が必要なのですが、月組版の場合は、これがジュリエット(愛希)だったと思います。ジュリエットが「家」を拒否して死に向かうから、ロミオも引き摺られてしまう。それだけの強さと愛のあるちゃぴジュリエット、大好きだったなあ……(しみじみ)
今回の星組新人公演は、「死を拒否するロミオ」と「能動的に彼の運命を操ろうとする死」という組み合わせ。特に礼ロミオの、真っ向勝負な「死ぬのが怖い!」という叫びが新鮮でした。
単なる「生命力に溢れすぎて死も手が出せない」という感じではなく、絶えず「死」が身近にいることを知っていて、小さなころからそれを拒否して生きてきた少年、という印象。
だからこそ、物語全体のフレームに、“ロミオと死の対決”というモチーフがうまく嵌っていたような気がします。もともと新人公演は、一幕の「世界の王~僕は怖い」の流れがカットされているので、どうしても「ロミオ」と「死」が近しい関係にあるところが表現しにくく、つい「対立」に持っていきたくなるのだろうな~、とも思うのですが……(←たまたま?)
いずれにしても、十碧くんの「死」は、氷のような冷たさと美しさがあって、とても良かったと思います(*^ ^*)。
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先日はメインキャストの印象をざっくり書きましたので、あらためて、作品(演出)について。
新人公演演出は田渕大輔。
去年「Victorian JAZZ」でデビューした新星ですが、それぞれの役者にキャラクターをきちんとはめて、一つの舞台としてしっかりまとめあげたな、と思いました。
作品として仮面舞踏会スタートになるのは、雪、月、星と全部同じなので、おそらく契約の関係なのでしょう。今回は、その前に少し神父(ひろ香)のナレーションで場面設定を説明する場面があって、そのあたりは一年前の月組新人公演での工夫を踏襲してきたのかな、という感じでした。
今回、本公演は大規模な役替り公演なわけですが、全体に、どちらかといえばAパターンがベースになっているような気がしました。
それぞれ役者の個性が違うのでだいぶ違うのですが、ベンヴォーリオが“ある確信(自信?)”をもってマントヴァへ向かうところとか、「街に噂が」のマーキューシオが、かなり本気で怒っていたこと、死が能動的で愛が受動的なところなど、私のツボが全部Aパターンよりだったんですよね。あと、「僕は怖い」リプライズのマーキューシオの踊りだしもAパターンだったし。
ただ、「死」(十碧)については、存在感として、Aパターンの「死」(真風)より、むしろ月組新人公演の「死」(鳳月)に近いものを感じました。
特殊メイクも復活していたし、存在の仕方がなんとなく似ていたような気がしたんですよね。ただ、ちなつちゃんは、振りと振りの間の動きがすごく独特で、動きのすべてが本公演とは全く違っていたのですが、十碧くんはそこまでではなく、動き自体は基本通り美しく踊っていたと思いますが……。
「ロミオとジュリエット」という作品も、宝塚だけでもう4演め。役替りや新人公演も含めると相当なヴァリエーションがありますが、こと「ロミオ」と「死」の組み合わせ、という観点でいうと、今まで上演されたものは、大きく4つのパターンに分類できると思うんですよね。
「生命力に溢れたロミオ」と「能動的に彼の運命を操ろうとする死」という組み合わせは、初演星組、雪組と月組の新人公演、再演星組Aパターンがそうですね。
とっつきやすくてわかりやすく、盛り上げやすい(盛り上がりやすい)バージョンだと思います。新規獲得用、という感じかな。
逆に、「最初から死に魅入られているロミオ」と、「彼が墜ちてくるのを待っている死」という組み合わせは、雪組版と、月組の明日海ロミオ版がそうだったと思います。
主人公が後ろ向きなため、舞台作品としては重くなりやすく「華やかな宝塚」というイメージとのバランスが難しいのですが、、、でも、成功すればポテンシャルは高いパターン。リピーター獲得用、とでもいう感じでしょうか。イメージですけど。
「死を拒否するロミオ」と彼が墜ちてくるのを待っている死」という組み合わせは、月組の龍ロミオ版がそうだったかな、と。……まあ、“死を拒否する”というより、“すぐ近くにいる死に気がつかない”という感じではありましたが(^ ^)
この組み合わせで物語を進めるには、最終的な「死」に向かう強力な牽引車が必要なのですが、月組版の場合は、これがジュリエット(愛希)だったと思います。ジュリエットが「家」を拒否して死に向かうから、ロミオも引き摺られてしまう。それだけの強さと愛のあるちゃぴジュリエット、大好きだったなあ……(しみじみ)
今回の星組新人公演は、「死を拒否するロミオ」と「能動的に彼の運命を操ろうとする死」という組み合わせ。特に礼ロミオの、真っ向勝負な「死ぬのが怖い!」という叫びが新鮮でした。
単なる「生命力に溢れすぎて死も手が出せない」という感じではなく、絶えず「死」が身近にいることを知っていて、小さなころからそれを拒否して生きてきた少年、という印象。
だからこそ、物語全体のフレームに、“ロミオと死の対決”というモチーフがうまく嵌っていたような気がします。もともと新人公演は、一幕の「世界の王~僕は怖い」の流れがカットされているので、どうしても「ロミオ」と「死」が近しい関係にあるところが表現しにくく、つい「対立」に持っていきたくなるのだろうな~、とも思うのですが……(←たまたま?)
いずれにしても、十碧くんの「死」は、氷のような冷たさと美しさがあって、とても良かったと思います(*^ ^*)。
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