帝国劇場にて、「ルドルフ ザ・ラスト・キス」を観劇いたしました。


フランク・ワイルドホーン作曲、名曲ぞろいのこのミュージカル。
すっごく良かったです!

特に、初演でいまいち……と思われた方(←私だ)、ぜひ時間をつくってご覧になってみてください!(真顔)


主なキャストは以下のとおり。()内は2008年版でのキャストです。

ルドルフ    (井上芳雄) 井上芳雄
マリー     (笹本玲奈) 和音美桜
ターフェ    (岡幸二郎) 坂元健児
シュテファニー (知念里奈) 吉沢梨絵
ラリッシュ夫人 (香寿たつき)一路真輝
皇帝フランツ  (壌晴彦)  村井国夫
ツェップス   (畠中洋)  港幸樹
ウィルヘルム  (岸祐二)  山名孝幸
エドワード皇太子(新納慎也) 照井裕隆

ファイファー  (浦井健治)-


日本初演は2008年5月。あのときは、宮本亜門さんの演出でした。
今回の演出は、ウィーン版の演出家デイヴィッド・ルヴォー。ちなみに、この作品の世界初演は2006年のハンガリー版で、この時の演出はルヴォーでも亜門さんでもないはず。ハンガリー版と日本版・ウィーン版はたしか並行して進んでいて、最初にハンガリー版、次に日本版、2009年にウィーン版が、お互い無関係に開幕した……はずです。たぶんですが。
私も観劇しましたが、音楽は良いのだけど…という感じでぴんと来ず(T T)、体調も悪かったりして、内容もあまりよく覚えていなかったりします……すみません。


それでも、今回観劇しまして、マリーやターフェのキャラクターが全然違っていたり、脚本もかなり変っていたりして、亜門版の「再演」とはいえない、まるっきりの別作品だなあと思いました。
とくに、一番印象的に違っていたのは、影の主役のようだった狂言回しのファイファー役が存在しなかったこと。
最初に上演を知ってキャストをみたときに、浦井くんの役は誰がやるんだろう……このメンツだったら坂健かな?とか漠然と考えていたのですが、、、まさか無くなるとは!確かにあの役は、物語世界全体を「お祭りの人形劇」という枠にいれるという亜門さんの演出コンセプトが先にあって、その「人形劇」をみせる人形遣いのファイファー、という存在だったから、演出コンセプトが変わった瞬間に不要になるキャラクターではあったのですが……とても印象的な役だったので、本当に驚きました(^ ^;ゞ



装置は、ウィーン初演と同じマイク・ブリットン。本来の舞台面の上に2重盆を置き、舞台の前面と奥にアイリスシャッター(っていうのかな?三方から絞ったり開いたりできる緞帳代わりの幕)を設置して、さらに内盆のサイズに回転可能な吊りカーテンが天井から降りてくる……という、シンプルだけれども豪華なセットでした。

全体のコンセプトカラーは赤。登場人物たちの衣装は、落ち着いたワントーンの組み合わせが多く、全体としては華やかながらも落ち着きがあって、19世紀末のウィーンという「あの時代」に、よく似合っていたような気がします。
デザインも生地もなかなか上品で、みなさん似合ってました。女性陣は宝塚出身者が多かったので、上手にアレンジしていたのかな?衣装の面で残念だったのは吉沢さんのシュテファニーなのですが、彼女に関しては、あの地味な感じも演出のうちかなという気もするし……。
振付のジョン・オコネルもふくめて、舞台面の美しさが印象的な舞台でした。



それでは、メインキャストについて簡単に。

ルドルフの井上芳雄くん。
いやー、懐深い役者になってきたなあ……(感慨)。
2008年のルドルフ役の造形には批判的だった私ですが、今回は素直に良かったと思います。
なんていうか、井上君は鬱々と後ろ向きなキャラクターよりも、まっすぐにエネルギーを発散する役が似合うと思うんですよね。見た目のイメージよりエネルギッシュなタイプだから、「ファンタスティックス」とか「ウエディング・シンガー」みたいな作品で魅力が出るのも当たり前、というか。

2008年のルドルフは、かkなり鬱々としたハムレットキャラだったと思うのですが、今回のルヴォー演出のルドルフは、障害の多い中で精一杯生きた若者だったから、井上くんのエネルギッシュなところがすごく生きたと思います。とくに「明日への道」の前、マリーの決意をうけて生まれ変わろうとする「私という人間」で見せたエネルギーは凄まじかった(*^ ^*)。2008年の時はあまり印象に残らなかったナンバーなのですが、今回はあの曲が一番印象的だったかもしれません。いやもう、素晴らしかったの一言でした。


マリー・ヴェッツェラのたっちん(和音美桜)。
現役時代からたっちん好きなので贔屓目かもしれませんが、なんか誉め言葉が溢れすぎちゃってでてこないくらい素晴らしかったです。
歌声が魅力のたっちんですが、私は彼女の芝居が好きなんだなあ、とあらためて思ったのでした。

1幕前半の、少女らしい無鉄砲さと、怖いものしらずな頑固さの魅力。
ルドルフと恋に落ちた後、「この人を喪うかもしれない」という怖さを知った少女の、「絶対に私が護ってみせる!」という決意と、そこから溢れてくる母性。
ピュアで頑固で可愛くて、なのに愛する男を護るために、大人になるしかなかった少女。
父親である皇帝に脅迫されてマリーとの別れを決意し、ミッツィの酒場に入り浸るルドルフを迎えに来たマリーの、「私はもう、選んだわ!」という魂の叫びが、とても綺麗でした。
そして、一番好きな場面は、ターフェとの対決場面でした。ここで、すべてを見透かしたかのように笑いながら、「皇国の未来」に汲々として策を弄する首相を嗤いながら、、ただ、愛する者を護ることしか考えていない彼女の頑なな純粋さが、眩しくて、そして危うくて、観ていることしかできない観客の自分が歯がゆくて。
2008年版の亜門さんの演出によるマリーとは全く違うキャラクター設定がとても私のツボにはまってくれて、、、今回の設定での玲奈マリーも観てみたかったな、と思いました。……いやいや、でも、たっちんのマリーに出会えてとても幸せです。ありがとうありがとうありがとう♪♪♪


ターフェ首相の坂健(坂元健児)。
いやはや。名演というか怪演というか!!素晴らしかった!!
坂健って、いままでは素直で優しい、地に足のついた「いいひと」の役が多かった印象でしたが、これからこういう役も来るだろうなあ……鮮烈なデビューでした(^ ^)。
嫌味な存在感、掴みどころのない台詞術とやわらかな歌声。特に、一幕の「明日への道」リプライズ(というか「栄光への道」)の甘い歌声は、本当に素晴らしかったです!!


皇太子妃シュテファニーの吉沢梨絵さん。
この方もとても素晴らしかったです(^ ^)。
プロローグでつけつけとルドルフに話しかけるところは、劇団四季の台詞術の癖が抜けてないなあ、、、なんて思ったりもしましたが、物語が進むにつれて、そんなこと気にならなくなってきました。
マリーとの浮気をとがめる場面のソロも素晴らしかったけど、それ以上に印象的だったのは、教会での対決と、その後の祈りの場面の表情……素直に泣けました(T T)。すごくやりがいのある、良い役ですよね。とても良かったです!


ラリッシュ夫人の一路真輝さん。
歌は一番高いところの数音がかなり苦しそうでしたが、芝居はとても良かったです。ルドルフへの秘めた恋心と高すぎるプライドのせめぎ合いが美しく、2幕のラスト前の場面、揺れる想いの表現が秀逸でした。こういう役だったのか!と、目から鱗でした。


皇帝フランツ・ヨーゼフの村井国夫さん。
いやはや、もう。
「エリザベート」のフランツはありえないけど、この作品のフランツは本当に似合うなあ。
息子をちゃんと愛していながら、さりげなく追い詰めていく「王者の冷酷」がこんなに似合う人も珍しい。大好きです。



宝塚OGでは、他に大月さゆ、舞城のどか、美鳳あや、望月理世、柳本奈都子(夏鳳しおり)、やまぐちあきこ(あゆら華央)が参加していて、月組ファン的には、とっても懐かしかったです(^ ^)。みほちゃんとみっぽーはダンスがメインで、特に1幕の舞踏会でのリフトは凄かった!!さゆちゃんの可愛らしさとコケティッシュな魅力がすごく出ていて素敵でした。
それと、ドレス姿の望月理世さんの美しさに瞠目(@ @)。いやー、絶対女優の方がいいよあなたは……。



それにしても。
ああもう、一ヶ月公演とか短いなあ……また再演してほしい!このキャストで!!



コメント

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カナリヤ
2012年7月17日21:38

ねこさん、こんばんは。
「ルドルフ」は友人が和音さんが出演するので是非見て!と言われチケットを買いました。私の観劇は来週です。
宝塚ばかり観ていて外の舞台をなかなか見る気持ちが起きない私ですが、ねこさんの感想を読んで楽しみになってきました。

あと、月組ロミジュリを日帰りで本公演と新公を観てきました。
一言、ちなつちゃんの「死」は素晴らしかったです。予想以上の凄い集中力を感じました。それだけ彼女の世界に導かれたのかも知れません。ちなつちゃんばかり観ていたので、全体感想は抜けています。(苦笑)東京新公をお楽しみに!!

みつきねこ
2012年7月18日0:03

カナリヤさま いつもコメントありがとうございます!

「ルドルフ」来週ご覧になるんですね♪ 感想はひとそれぞれだと思うので保証はできませんが(^ ^;ゞ、作品としてのレベルも高かったし、出演者も良かったので、楽しんでいただけたらいいなあと思います(^ ^)。

> あと、月組ロミジュリを日帰りで本公演と新公を観てきました。

いいなあ~~!!私も新公観たかった……。
とりあえず本公演は観てきましたので、今度感想書きますね(^ ^)。すごく良かったです!
そして、東京新公、もちろん楽しみにしています!

nophoto
hanihani
2012年7月18日15:13

「ルドルフ」は初演がつまらなかったので、観る予定がなかったのですが
無料チケットに誘われてみたら・・・
良かったです。明日からバウが始まるのでなければ、もう一回みたいです。

マリーの作り方の違いには驚きましたよ。たっちもものすごく生き生きして
似合ってましたよね。
で、吉沢さんのステファニーもすごく良かった。
なんか四季を辞めてこっち側にきてくれて有難うとか思いました。
四季ファンの方、ごめんなさい。

この二人が丁々発止とやりあうなんて、面白すぎですよね。
ルドルフは基本同じタイプが好きなんだなぁと思いました(笑)
そしてルドルフ井上くんに似合いすぎ。井上くんって本当にプリンスが
それもちょっと優柔不断なプリンスが似合う。
妻と愛人に大人にしれもらったみたいな感じの作りでしたよね。

そしてサカケンの首相もすごく良かった。
サカケンはこの前の神戸港の移民局の人もすごく良くて
この人はいつのまにか守備範囲を広げたなぁと感じましたが
今回はますます「重要」な存在となったと思います。

舞台装置もお洒落だったし、みっぽーとかみほちゃんとかを
ちゃんとダンサーとして上手に扱ってくれていたりして
イチロさんのドレスも素敵だったり、他のOGもみんなドレスさばきも
美しくてダンスの時が本当にきれいでした。
OGはこういうところで上手に使ってくれると嬉しいです。
好印象な舞台なので、本当にもう一回みたかったです。

これからご覧になる方は期待してご覧になってください。
でも『うたかた』は忘れてくださいね~(笑)

みつきねこ
2012年7月19日1:00

hanihaniさま

> 「ルドルフ」は初演がつまらなかったので、観る予定がなかったのですが

お気持はよくわかります(^ ^)。わたしも全然期待していなかったので、観て良かったなあと心から思いました(^ ^)。

> なんか四季を辞めてこっち側にきてくれて有難うとか思いました。

本当ですよねー!

> サカケンはこの前の神戸港の移民局の人もすごく良くて

観たかった(涙)

> この人はいつのまにか守備範囲を広げたなぁと感じましたが
> 今回はますます「重要」な存在となったと思います。

こういう役をこういう風に演じてくれる役者になるとは、正直思っていませんでした……。
本当に吃驚したし、とても良かったと思います(^ ^)。

> 好印象な舞台なので、本当にもう一回みたかったです。

ぜひぜひ(^ ^)。

> でも『うたかた』は忘れてくださいね~(笑)

たしかに、それは重要ですね!本文に追加するべき?(笑)