日本青年館にて、花組公演「近松・恋の道行」を観劇いたしました。
作・演出は植田景子。
景子さんって、本格的な(江戸以前の)和物は初めて……かな?何かやったことありましたっけ。(忘れていたらすみません)
若手で和物といえば大野さんというイメージでしたが、景子さんもロマンティックでいいなあ。飛鳥時代とか、一度挑戦してみてほしいです。
……なんてことを思ったくらい、お見事な作品でした(^ ^)。
観終わって最初に思ったことは、、、この作品、主役はもちろん嘉平次(愛音)なんですけど、タイトルロールはやっぱり近松門左衛門(夏美)であり、そのドラ息子の鯉助(春風)なんだな、と。
景子さんのライフワークともいうべき「クリエイターの苦悩」がこの作品においてもテーマになっていて、
普通の心中物……たとえば「心中・恋の大和路」のテーマが「純愛」であるのとはちょっと違う作品になっていたんだと思います。
そして。
一番印象に残ったのは、実は2幕ラスト前、嘉平次とさが(実咲)が生玉神社で心中した後の、翌朝の場面でした。
骸の処理を見物しながら、いつもどおりの日常に浸る人々、
悲嘆にくれる死者の家族たち、
無邪気に「心中ごっこしよう!」と騒ぐ子供たち、
現実を受け容れられずに、ただ声をあげて、全身全霊で嗤うことしかできない鯉助。
鯉助はこの時、初めて本当に「死」に触れて、それゆえに初めて「生きる」ことを理解したんですよね。
「本気で生きる」ことのできない者には「創作」は不可能である、というのは景子さんがずっと追いかけてきたテーマで、だからこそこの物語は、クリエイターである近松の物語であり、鯉助の物語でもあるんだな、と。
鯉助がこの後どんな物語を紡いだのかは問題ではなくて(←史実としては、残念ながら大した才能は無かったようですが)、彼がこの後は「本気で生きる」ことが出来たのかどうか、が問題で。
その謎かけへの答えを、あの高笑いだけですませた景子さん。今までの彼女だったら、最後の近松の口説の中で“その後の鯉助”を説明させてしまいそうなところを、役者・春風弥里と観客の感性に委ねることができたことは、彼女自身の充実を物語っているようで、彼女の作品のファンとしてとても嬉しかったです。
作品についてはこのくらいにして、出演者について簡単に。
■一つ屋嘉平次(松屋町の茶碗屋『一つ屋』の跡取り息子) 愛音羽麗
「上方絵草紙」という副題の意味が、みわっちが出てくるだけで伝わってくるような気がしました。
はんなり、という言葉が本当によく似合う、親に厳しく育てられた、真面目一方の好青年。
あまりの真っ直ぐさと曇りなさゆえに、幼馴染として近しいところで生きてきたはずの長作に憎まれるに至るところが悲しいですが、おさがが嘉平次に恋をするのも、その真っ直ぐさ故かと思えば、仕方ないことなのかな、と。
みわっちの芝居は、本当に情が深いというか、一挙手一投足に情緒があるんですよね。「くらわんか」「舞姫」「近松」と、主演作がどれも和物なのも、「和」の情緒があるスターといえばやっぱり今はみわっちが第一人者なのかな、と思ったりしました。
声の良さは元々なんですけど、今回は歌も心情がのっていてすごく良かったし、言葉に苦労していない分、芝居としての表現はさすがの深さでした。いやもう、要するにみわっちすっごくすっごく良かったよ!!ってことで(*^ ^*)。
■柏屋さが(嘉平次と相思相愛の『柏屋』の見世女郎) 実咲凜音
「カナリア」のアジャーニで、思いっきり弾けてくれたみりおん。今回は女郎役で、ぐっと抑えた役なのかと思えば、、、案外元気で前向きな人だったのでよく似合っていたような気がします。
アジャーニもそうでしたけど、おさがも「過去」に幸せな時代がないキャラクターなんですよね。そういえばクリスティーヌもそうだったなあ。。。客観的に見たらどんなに不幸でも、本人の気の持ちようで「幸せ」と感じることができる、という、ある意味すごく前向きな芝居が似合う人なんだな、と思います。
愛されることに素直で、愛することに怯えがない。過去に「幸せ」の記憶がないかわりい、「幸せを奪われた」こともないから、すごく前向きなんですよね。それが小弁との大きな違いで、だからこそ彼女は、死でさえも前向きに、幸せな気持ちで受け容れることができる……その対比が哀れで、切なくて、でも羨ましくさえあるのかもしれません。
■小弁(喜世)(さがの妹女郎、浅野家家臣・原惣右衛門の妾の娘) 桜咲彩花
「幸せな子供時代」の記憶と、「幸せを奪われた」記憶の両方を抱えて生きる娘。
それでも、「幸せ」の味を知っている彼女は、一時の激情にかられないかぎり、自ら死を選ぶことは無い。いつかその「幸せ」を取り戻すことができると信じる強さを、ちゃんと持っている人だから。
べーちゃんのことは、ずっと笑顔の可愛い元気娘というイメージで観てきたのですが、泣いていても、男に縋りついても、本当に可愛い!!!ですよね(*^ ^*)。本来は勝気でプライドの高いお嬢さんだけど、好いた男の前では必死になれるところとか、けなげで可愛いです。「殉情」のこいさんとか、ああいう役も似合いそうな気がします。……いや、もちろん、あの爆発的な笑顔をもっと生かした役も観てみたいんですけどね!でも、ああいう上から目線な泣き顔の可愛さというのも、べーちゃんの魅力の一つだなとすごく思いました。
■早水清吉(忠清)(小間物の行商人、赤穂浅野家家臣・原家に代々仕えた足軽の息子) 華形ひかる
いやはや。恰好良いです。ええ。もう、言葉もないほど恰好良い。
「舞姫」も良い役だったけど、今回も良い役ですよね。これ以上はない二番手役でした……素敵だった(*^ ^*)。
■杉森鯉助(近松景鯉)(浄瑠璃作家を目指す近松門左衛門の二男) 春風弥里
上で散々語ったので、省略。
■徳兵衛(浄瑠璃人形)(『曽根崎心中』の主人公、醤油問屋平野屋の手代) 柚香光
■お初 (浄瑠璃人形)(『曽根崎心中』の主人公、天満屋の見世女郎) 乙羽映見
柚香くんの美貌と姿の良さ、そして、なんともいえない独特の空気感を堪能させていただきました。人形振りも巧かったし、いろんな意味で印象的な存在だったと思います。
「Hollywood Lover」の過去の恋人たち(紫門・蘭乃)と同じような位置づけの存在でしたが、「生玉心中」自体が「曽根崎心中」の大ヒットという時代背景のもとに起こった事件であったことを考えれば、この二人は、劇中劇ではなくて物語の外枠なんですよね。ふわりと出てくるだけで空気を変えられる、その存在感はすごいなあと思いました。鼻たてをした和物メークの美しいこと!!舞台写真が出たら買いたいです(^ ^)。
他にも出演者はたくさんいるので、そのあたりのツボについてはいずれまた(^ ^)。
まー、花組の誇る芝居巧者を全員集めた完璧な布陣に感心しました。いや、景子さんってすごいなー。
【7月1日まで、あと35日】
作・演出は植田景子。
景子さんって、本格的な(江戸以前の)和物は初めて……かな?何かやったことありましたっけ。(忘れていたらすみません)
若手で和物といえば大野さんというイメージでしたが、景子さんもロマンティックでいいなあ。飛鳥時代とか、一度挑戦してみてほしいです。
……なんてことを思ったくらい、お見事な作品でした(^ ^)。
観終わって最初に思ったことは、、、この作品、主役はもちろん嘉平次(愛音)なんですけど、タイトルロールはやっぱり近松門左衛門(夏美)であり、そのドラ息子の鯉助(春風)なんだな、と。
景子さんのライフワークともいうべき「クリエイターの苦悩」がこの作品においてもテーマになっていて、
普通の心中物……たとえば「心中・恋の大和路」のテーマが「純愛」であるのとはちょっと違う作品になっていたんだと思います。
そして。
一番印象に残ったのは、実は2幕ラスト前、嘉平次とさが(実咲)が生玉神社で心中した後の、翌朝の場面でした。
骸の処理を見物しながら、いつもどおりの日常に浸る人々、
悲嘆にくれる死者の家族たち、
無邪気に「心中ごっこしよう!」と騒ぐ子供たち、
現実を受け容れられずに、ただ声をあげて、全身全霊で嗤うことしかできない鯉助。
鯉助はこの時、初めて本当に「死」に触れて、それゆえに初めて「生きる」ことを理解したんですよね。
「本気で生きる」ことのできない者には「創作」は不可能である、というのは景子さんがずっと追いかけてきたテーマで、だからこそこの物語は、クリエイターである近松の物語であり、鯉助の物語でもあるんだな、と。
鯉助がこの後どんな物語を紡いだのかは問題ではなくて(←史実としては、残念ながら大した才能は無かったようですが)、彼がこの後は「本気で生きる」ことが出来たのかどうか、が問題で。
その謎かけへの答えを、あの高笑いだけですませた景子さん。今までの彼女だったら、最後の近松の口説の中で“その後の鯉助”を説明させてしまいそうなところを、役者・春風弥里と観客の感性に委ねることができたことは、彼女自身の充実を物語っているようで、彼女の作品のファンとしてとても嬉しかったです。
作品についてはこのくらいにして、出演者について簡単に。
■一つ屋嘉平次(松屋町の茶碗屋『一つ屋』の跡取り息子) 愛音羽麗
「上方絵草紙」という副題の意味が、みわっちが出てくるだけで伝わってくるような気がしました。
はんなり、という言葉が本当によく似合う、親に厳しく育てられた、真面目一方の好青年。
あまりの真っ直ぐさと曇りなさゆえに、幼馴染として近しいところで生きてきたはずの長作に憎まれるに至るところが悲しいですが、おさがが嘉平次に恋をするのも、その真っ直ぐさ故かと思えば、仕方ないことなのかな、と。
みわっちの芝居は、本当に情が深いというか、一挙手一投足に情緒があるんですよね。「くらわんか」「舞姫」「近松」と、主演作がどれも和物なのも、「和」の情緒があるスターといえばやっぱり今はみわっちが第一人者なのかな、と思ったりしました。
声の良さは元々なんですけど、今回は歌も心情がのっていてすごく良かったし、言葉に苦労していない分、芝居としての表現はさすがの深さでした。いやもう、要するにみわっちすっごくすっごく良かったよ!!ってことで(*^ ^*)。
■柏屋さが(嘉平次と相思相愛の『柏屋』の見世女郎) 実咲凜音
「カナリア」のアジャーニで、思いっきり弾けてくれたみりおん。今回は女郎役で、ぐっと抑えた役なのかと思えば、、、案外元気で前向きな人だったのでよく似合っていたような気がします。
アジャーニもそうでしたけど、おさがも「過去」に幸せな時代がないキャラクターなんですよね。そういえばクリスティーヌもそうだったなあ。。。客観的に見たらどんなに不幸でも、本人の気の持ちようで「幸せ」と感じることができる、という、ある意味すごく前向きな芝居が似合う人なんだな、と思います。
愛されることに素直で、愛することに怯えがない。過去に「幸せ」の記憶がないかわりい、「幸せを奪われた」こともないから、すごく前向きなんですよね。それが小弁との大きな違いで、だからこそ彼女は、死でさえも前向きに、幸せな気持ちで受け容れることができる……その対比が哀れで、切なくて、でも羨ましくさえあるのかもしれません。
■小弁(喜世)(さがの妹女郎、浅野家家臣・原惣右衛門の妾の娘) 桜咲彩花
「幸せな子供時代」の記憶と、「幸せを奪われた」記憶の両方を抱えて生きる娘。
それでも、「幸せ」の味を知っている彼女は、一時の激情にかられないかぎり、自ら死を選ぶことは無い。いつかその「幸せ」を取り戻すことができると信じる強さを、ちゃんと持っている人だから。
べーちゃんのことは、ずっと笑顔の可愛い元気娘というイメージで観てきたのですが、泣いていても、男に縋りついても、本当に可愛い!!!ですよね(*^ ^*)。本来は勝気でプライドの高いお嬢さんだけど、好いた男の前では必死になれるところとか、けなげで可愛いです。「殉情」のこいさんとか、ああいう役も似合いそうな気がします。……いや、もちろん、あの爆発的な笑顔をもっと生かした役も観てみたいんですけどね!でも、ああいう上から目線な泣き顔の可愛さというのも、べーちゃんの魅力の一つだなとすごく思いました。
■早水清吉(忠清)(小間物の行商人、赤穂浅野家家臣・原家に代々仕えた足軽の息子) 華形ひかる
いやはや。恰好良いです。ええ。もう、言葉もないほど恰好良い。
「舞姫」も良い役だったけど、今回も良い役ですよね。これ以上はない二番手役でした……素敵だった(*^ ^*)。
■杉森鯉助(近松景鯉)(浄瑠璃作家を目指す近松門左衛門の二男) 春風弥里
上で散々語ったので、省略。
■徳兵衛(浄瑠璃人形)(『曽根崎心中』の主人公、醤油問屋平野屋の手代) 柚香光
■お初 (浄瑠璃人形)(『曽根崎心中』の主人公、天満屋の見世女郎) 乙羽映見
柚香くんの美貌と姿の良さ、そして、なんともいえない独特の空気感を堪能させていただきました。人形振りも巧かったし、いろんな意味で印象的な存在だったと思います。
「Hollywood Lover」の過去の恋人たち(紫門・蘭乃)と同じような位置づけの存在でしたが、「生玉心中」自体が「曽根崎心中」の大ヒットという時代背景のもとに起こった事件であったことを考えれば、この二人は、劇中劇ではなくて物語の外枠なんですよね。ふわりと出てくるだけで空気を変えられる、その存在感はすごいなあと思いました。鼻たてをした和物メークの美しいこと!!舞台写真が出たら買いたいです(^ ^)。
他にも出演者はたくさんいるので、そのあたりのツボについてはいずれまた(^ ^)。
まー、花組の誇る芝居巧者を全員集めた完璧な布陣に感心しました。いや、景子さんってすごいなー。
【7月1日まで、あと35日】
コメント
面白かったです。こういうのはバウならありだねと思います。
景子先生のコダワリが隅々まで徹底されていて、さぞやお稽古の時には大変だったろうと・・・でもそれって必要だよね。
いま、どこの組も上が抜けてきて芝居力が落ちてきていると感じることがあるので
「オネーギン」以降雪組下級生芝居力がアップしたように
(ちなみにダンス力やショーでの自分の見せ方は「インフィニティ」でアップ)
花組も力がある人をしっかり使って芝居の面白さを味あわせてあげて欲しいと思っていました。
花組ってなんとなく年功序列で、しかも路線以外は外しがちだし。
今回は全員思い切り芝居に係わっていて気持ちが良かったです。
個人的には春花きららちゃんの「お蝶」さんがすごく良くて、
とくに声が彼女の魅力になってきたなぁと今回で何かを掴んでくれたことが誇らしい気持ちにすらなりました。えへへへ
お化粧もきれいでしたし。
1人1人に触れたいんだけど、そうすると本当に出演者全員の感想になってしまいそうです~
客席の宙組の組長、副組長以下大勢の皆様はみーちゃんのことをきっと誇らしく
感じたでしょう。
みーちゃん、花で思い切りやってください♪ 楽しみにしてまーす。
そしてみりおんも、新公の頃よりも更に女度を上げていて
宜しくお願いしますといいたくなりました。すみかちゃんが来てましたから
沢山助言をいただけるかなと。
すみかちゃんがすごくやせ細ってたことが心配。
そして花組全国ツアーが全員来ていたことも、これってもしや・・・などなどドキッ!
としつつも楽しい客席でした。
つい先日客席でいじられるみわっちさんをみたので、幸運にも双方確認できたなぁ~なんてね。
月曜日休んでしまったのに、昨日はワオコンに、明日は宙組初日にとめまぐるしいです。
ねこさま、カナリヤさま、明日から頑張ってね♪
最終日にいらっしゃったんですね。羨ましいー。客席のお客様をきいて、会社で身悶えてました(^ ^)。
そう!春花きららちゃんすごく良かったんです!!
ちょっと時間がなくて続きが書けてないんですが、きららちゃんのお蝶さん、私の中では今作品のVIPです(^ ^)。最初に女郎さんたちが登場した場面から目を惹きまくりでした!!座って煙管を吸ってるだけなのに、はんなりとしどけない佇まいがいわゆる「女郎」というイメージにぴったりで、すごく素敵でした。
鯉助さんとの場面は名場面でしたね!みーちゃんも良かったしきららちゃんも良かったし、なんだかすごく印象的だったのでした。
……はやく続きを書かねばー。
宙組初日ご覧になるんですね(^ ^)。みなさんによろしくですー。