花組新人公演「復活」について、つづき。


ここからは、印象に残った順に書いてみたいと思います。
っていうか、そういえばまだ本公演を書いてないんですね私。すみません……。


■大河凜(シェンボック/壮一帆)
本公演の、「からっと明るい、確信に満ちた蘭トムさんのドミトリー」に対峙する壮ちゃんのシェンボックは、表向きのやんちゃな不良学生の一面と、表層的でない、地に足のついた観察眼によって得られる知識を蓄えた賢者の一面を併せ持った優しいひとですが。
「湿った闇の中を、どうしたらいいのか分からずにもがいている真由ちゃんのドミトリー」と肩を並べたがりんちゃんのシェンボックは、ひょうひょうと人生を生きる自由人、という印象でした。
真由ちゃんのドミトリーに正面から対峙する存在ではなく、その隣で軽やかに生きている、という感じ。こちらも本役さんとは全然違っていて、個性的で面白い役づくりだったと思います。

ただ、その分、ドミトリーの孤独を強調する存在になっていて、彼に対する影響力はちょっと弱まっていたような気もしました。(本公演のドミトリーは、シェンボックの存在にかなり救われていると思う)
シェンボックという役は、原作から膨らませる過程でかなり大幅に石田さんの思想を反映した存在になっていただけに、石田さんと児玉さんの演出の違いが鮮明に出たのかな……?とも思いましたが、、、どうなんでしょうか。



■仙名彩世(アニエス/月野姫花)
率直に書きますが、がりんちゃんのシェンボックに対するには、仙名さんのアニエスはちょっと強すぎた…ような気がしました。
仙名さんが悪かったのではなく、組み合わせが悪すぎたと思います。
組む相手が壮ちゃんのシェンボックならあのくらいアニエスが強くても良いと思うのですが、がりんちゃんの演じる自由人シェンボックが「一緒にパリに行こう!」と思うだけのキュートさがないと、ラストの手紙の説得力が弱いと思うんですよね。
仙名さんは仙名さんなりにキュートなんですが、それよりも「パトロンを捕まえてロシアまで追い掛けてきた」たくましさみたいなものが前に出てしまっていたところが、がりんちゃんの軽やかさと合わなかったんじゃないかな、と。このあたりは、新人公演なんだから演出家が調整して舞台が成立するよう指導するレベルだと思うのですが、、、児玉さんだからなあ……。



■柚香光(シモンソン/愛音羽麗)
「愛のプレリュード」で歌も芝居も一通りこなせるところを見せてくれた下級生。
典型的な二枚目役のシモンソンがこんなにはまるとは思いませんでした。強く印象に残りました。

本役のみわっちは、見た目もふんわりやわらかいタイプだから、「非暴力主義」で「ビラ撒きしてただけなのにストライキを扇動したと勘違いされて」という説明にも納得感があったのですが、柚香くんの鋭角的な美貌や鋭い目つきを視ていると「いや扇動したでしょ」と思ってしまう……(^ ^;ゞという問題は若干ありましたが(汗)。

それにしても、あの「私はさっきカチューシャにプロポーズしました」とドミトリーに告げる場面の確信の深さはすごいなと思う。あの2枚目っぷりからくる自信過剰、という薄っぺらさじゃなくて、ちゃんと「カチューシャを安らがせてあげられるのは自分だ」という確信があるところが良い。
みわっちの、ちょっと気の弱い、公爵さまに遠慮がちな革命家もホントに素敵なんですけどね!!そこは、ドミトリーがカチューシャに対して抱く感情の種類の違いにも影響するので、お芝居の面白いところだな、と思う。
しかも、そのあたりを演出家がコントロールするのではなく、役者たちが勝手に落としどころを見つけて演じているようにしか見えないところもすごいです。



■月野姫花(マリア・パーブロア/花野じゅりあ)
とにかく可愛かった!!でれでれ。いままであんなに、一言喋るたびに気になってしかたがなかった姫花の声(口調)が、この公演に限っては本公演も新人公演も「(魅力の一つとしての)個性的な声」に聞えるのはなぜなでしょうか……すごく謎。
アニエスはともかく、どうしてパーヴロアがあんな舌ったらずな喋り方でいいんだよ!?……いやでも、全然気にならなかったんだよ私は……。
最後の最後に姫花の発音が良くなったのか、それとも、これぞ退団オーラなのか……?永遠の謎になったような気がします。
っていうかさ!こうなっちゃうと、すごく今更だけど新公ヒロインも観たくなっちゃうじゃん!!(涙)。



■水美舞斗(ファナーリン弁護士/華形ひかる)
人道派で有能な弁護士。もちろん悪くなかったし、みつるくんと比べるつもりもありません。ただ、カチューシャのところでもちょっと書いたのですが、
「愛想尽かししたのか!?」
という場面は、カチューシャの2面が交差するポイントを印象付ける台詞でもあるので、もう少し大事にしてほしかったような気がします。演出の違いと言われればそれまでですが。

ファナーリンは、それまでの芝居を切るような登場も多いので、居方の難しい役なんですよね……。決して悪くはなかったと思うので、もう少しパワーの配分を自由にコントロールできるようになったら、もっと良くなるんじゃないかな、と思いました。まだまだ一杯一杯すぎて、すべての場面を全力疾走で演じている感じなのが観ていて疲れる、、、というか、途中ちょっとだれたような気がしたので。
台詞も歌も、技術面のしっかりしている人なので、芝居巧者のみつるくんから学んだモノを次に生かしてくれれば鬼に金棒!次の作品を楽しみにしています。



■真輝いづみ(マトヴェイ検事/鳳真由)
92期の面々に続く、小芝居キングのマキシム。本公演でもダンサーとして小人数口に入ってきたし、芝居でもあちこち使われていて嬉しいのですが、今回の新公では真由ちゃん演じる検事さま。
よく怖さを出していたと思います。追い詰める時の迫力もなかなかでした。
マトヴェイとして登場する場面は少ないので、あとはいろいろアルバイトしていましたが、、、あまりちゃんとチェックしなかったのが悔やまれる(涙)。医療刑務所の患者とか、もっとちゃんと観ればよかったなあー。



■白姫あかり(イワノーヴァナ伯母/京三紗)
率直に言って、今まであまり役者としての評価が(私の中で)高くなかった白姫さん。今回はすごく良かったです!元々ダンサーとして高く評価されている人ですが、ああいう動きの制限された老婦人の役を、とても丁寧に、誠実に演じていたのが嬉しかったです。
「あたしがもっと若かったら…」のくだりも、ちゃんと気持ちが入っていて良かったと思います(^ ^)。
台詞回しは相変わらずなところもありましたが、京さんの、あのなんともいえずコケティッシュで可愛らしい魅力的な老婦人っぷりを、模倣ながらもちゃんと自分のものにして、楽しそうに演じていて、、、、なんだか、良かったなあ、と素直に思えました。



■彩咲めい(クララ/華耀きらり)
この公演を最後に卒業される彩咲さん。今まであまり大きな役がつかなかったけれども、最後にいい役がついて良かったね、と素直に思いました。しっとりとした大人の女性らしい仕草がきれい。
顔もホントに可愛いですよね!……ただ、クララという役にはちょっと可愛らしすぎるかな、という気もしましたが(化粧とか)。



それにしても、本当に女役の良い役が多くて羨ましい……。
石田さん柴田さん大野さんと、女役に良い役の多い三大作家を続けざまに観てしまったので、次に観劇する作品のハードルが上がっちゃいそうです(ドキドキ)(←娘役はね……)。


【7月1日まで、あと123日】

コメント