宙組中日公演「仮面のロマネスク」について。



……の、前に。
以前録画した「Energy ~仮面のロマネスク~」を視ました。
かしちゃん(貴城けい)主演の、雪組新人公演ダイジェスト。

ダイジェストなので前に観たときはよくわからなかったのですが、作品を知ってから観るとなかなか面白いです(^ ^)。

脚本はいろいろ細々と違っているんですね。
最初の前口上が、中日ではダンスニー(北翔/汐美)だけなのに、雪組版は途中ジェルクール(悠未/夢輝)が引き継いでいたり。台詞もずいぶん違う。演じ手が違えば芝居が違うのは当たり前ですが、予想外に脚本が違っていることにあらためて驚きました。
【追記:Energyは大劇場の映像ですが、本公演は、大劇場と東宝の間にもだいぶ変更されていたそうです】

驚いたのは、トゥールベル夫人(紺野)を彼女の部屋で口説いた場面の後です。
マリアンヌの部屋を出た後、逡巡の歌を歌ったジャンピエールが「フランソワーズ、君はどう思う…?」と呟いたこと(中日ではフランソワーズの名前を呼ぶだけ)。
そして、時計の音に我に返ったジャンピエールが「次はセシルだ」と宣言したこと、でしょうか(中日では無言でセシルの部屋のドアに向かう)【追記:そして、時計の音が鳴るのも、ヴァルモンがセシルの部屋に入った後になっています】。

いやー、その二言があるかないかで、ジャンピエールが別人になるなあ、と思いました(@ @)。
ジャンピエールがマリアンヌに本気で恋しかけてしまうのは同じですが、そんな自分に驚きつつ否定しようとするか、面白がろうとするか、その違い。
マリアンヌを手に入れる場面で、「ジャンピエール」と名前を呼ぶマリアンヌも、全然違う。



あと、ロベール(十輝)がしいちゃん(立樹)だったり、ベルロッシュ(鳳翔)が(華宮)あいりだったり、柴田さんの役に対するイメージは明解だなあと思ったりしました。
そして、ガボット(中日では月映樹茉)役が出てこなかったのがとても残念!オリジナルではどんな役だったのか知りたかったのにー

いやはや、面白かったです。
ダイジェストではない、フルの雪組版を観てみたいです。


しかし!
前口上のみっちゃん(北翔)の、「わたしはいま、『あんな男』と……ふっふっふっ、」という含み笑いが初見からずっと気になっていたのですが、雪組新公のケロさん(汐美)はやってなかったんですね。ってことは、本役の轟さんもやっていなかったのかなあ?舞台の上を生きる一人の人物像として違和感があるので、やめてほしいのですが……(←観るたびに、トラファルガーのハミルトンを思いだします)

そして、ジャンピエールがセシルに「鍵をあけておくように」と言ったとき、「Energy」のセシルが何の迷いもなく「はい、鍵はあけておきます!」と元気に答えてたことにも驚きました。れーれの、逡巡とそれを振り切るような返事がこっそりとジャンピエールに魅かれているセシルを表していてとても好きだったのですが、あれは景子さんの女性ならではの演出の一つだったのかな。

あと、雪組版には「ジェルクール、ヴァルモン=国王側、ダンスニー=オルレアン公側」という設定があったんですね。中日でこの設定が消えていたのは何故なんでしょう。ラストのジャンピエールとフランソワーズのダンスを観ながら、ダンスニーとセシルは幸せになったんだなあ…と思ったのに。

あと面白かったのは、松雪さんのソフィ(中日では夢涼りあん)。若いのに世話好きなおばさんみたいなキャラクターでした(^ ^)。達者だなあ。そういえば、私は彼女の歌声がとても好きだったんですけど、芝居をしているのはあまり観たことがなかったんだな……。




さて。新公映像との違いはそんなところにして、中日公演に戻ります(^ ^)。

第一場 プロローグ

まずは上手花道のすっぽんセリから白い軍服のヴァルモン子爵(大空)がセリ上がり。
下手花道に登場するメルトゥイユ侯爵未亡人(野々)と、いきなりの口争いがはじまる。

二人がひとくさり言い争ったところで、下手袖からダンスニー男爵(北翔)が登場。(ここのダンスニーの口上については、上で書いたので省略 ^ ^)

ダンスニーから口上を引き継ぐのは、メルトゥイユ邸の執事ロベール。
台詞を喋るたびに頭を抱えることが多いまさこちゃんですが、今回のロベールの台詞は良かったです!温かみのある優しい口調と朴訥な雰囲気が、あの役にとても合っていたような気がします。
先が見えすぎてキリキリしがちな、頭の良すぎる女主人を、ふわっと包む優しい執事さんでした。


邸でおこなわれる舞踏会のお客様を迎える使用人たち。
この場面で特筆するべきは、やはり深紅の薔薇を抱えて登場する青年貴族ベルロッシュ(鳳翔)。女主人フランソワーズの「現在の」恋人。
いやはや。素晴らしい大ちゃんクオリティでした!「クラシコ・イタリアーノ」の五峰さんの旦那様も素敵だったけど、今回も本当に素敵です。立ち姿の美しさと、相手役を見つめる目線の優しさが良いんですよね(^ ^)。
ちなみに、雪組版は薔薇を抱えていないらしいので、これは景子さんの夢を大ちゃんが叶えた、ってことでよろしいでしょうか(^ ^)。



紗幕があがると、華やかな舞踏会の真っ最中……1830年、春の宵。

真ん中で踊るのはジェルクール(悠未)とセシル(すみれ乃)……だったかな。
もう一組はダンスニーと貴族の女(瀬音リサ)。
てんれーさんとあゆみさんが踊ってるー、あらまあラブラブ(^ ^)。と思っていたら、お二人はちゃんと夫婦役でした(^ ^;(テチエンヌ公爵/天玲とその夫人/鈴奈)。
ブランシャール夫人(梨花)は春瀬くんと踊ってたような気がします。みとさんの完璧な貴婦人風にうっとり。

あとは誰だったかなー?
七海×夢涼、月映×美桜、愛月×花里、美月×真みや、七生×愛咲、、、、だったかな?とにかくかなり情報量の多い場面で、私の頭の中では処理しきれてないみたいですが(^ ^)。


曲が盛り上がったところで、メルトゥイユ夫人が登場。
取り巻きの美青年たち(ナヴァラン/澄輝、ヴァレリー/愛月)が彼女にまとわりついてダンスに誘う。七生・秋音あたりも参戦するけど、結局はベルロッシュに持っていかれるんですよね。それも当然と思わせる大ちゃんの美しさと華はさすがです。

「未亡人になってもますますあでやかに……」と讃えられるフランソワーズ。
未亡人になったからこその輝きなのかもしれませんが、とにかく、そこらの美青年たちとは格が違う、というのを見せつけた、すみ花ちゃんの美しさでした(*^ ^*)。


ジャン・ピエール・ヴァルモンが上手の階段に登場して、スポット。
その瞬間に、彼以外のすべてが朧にかすむ。
……メルトゥイユ夫人以外は。


格式高い侯爵夫人の舞踏会を台無しにするために、彼が連れてきた娼婦たち。エミリー(大海)とイヴォンヌ(舞花)の手慣れた風情。
彼女たちを連れて去るジャンピエールの従者、アゾラン(凪七)。

妻を連れてメルトゥイユ夫人に挨拶するトゥールベル法院長(寿)。
「しばらく仕事でパリを離れることになりまして、、、」
慎ましく夫の傍に寄り添いながら、
「心細くて……」
という、淑やかなトゥールベル夫人(藤咲えり)。

夫と仲睦まじく帰って行くトゥールベル夫人の背中をじっと眼の隅で追うヴァルモン。
ニヤリと笑いながらあごを撫でる仕草が色っぽくて好きです。

そして、そんな彼を凝っとみているフランソワーズ……。

こ、こ、こわい……とっても素敵だけど、でも、怖い(^ ^;


成りあがり(?)の青年男爵フレデリック・ダンスニーをブランシャール家のセシル嬢に紹介するフランソワーズ。
フランソワーズとダンスニーのこの時点での関係はよくわかりませんが、フランソワーズの旦那のとダンスニーの父親が懇意だったとか、そういう感じでしょうか。
若い彼は可愛らしいセシルに一目惚れ。分かりやすい彼の反応を面白がっているフランソワーズ。

ブランシャール夫人が慌てて、セシルの婚約が調ったことを公表する。
お相手は近衛隊の将軍・ジェルクール伯爵。

……それを聞いて、微かに眉をひそめるフランソワーズ。謎めいた無表情。

じっとセシルの眼をみながらその手にキスをして、国境の騒ぎをおさえに行くジェルクール。彼に従う副官(?)のフレネー(美月)とラヴァル(春瀬)。
無表情にそれを見送るジャンピエール。


「宴が果てて夜深く、仮面を脱いで二人きり……」
暗転の中、影コーラスがただよう。ジャンピエールとフランソワーズ、二人っきりの時間。

昔、ひそかに恋人同士となっていた二人。
別れた経緯についてのはっきりした説明はありませんが、身分の高い夫のいるフランソワーズには、若い男と遊ぶことは許されても、一人の男と「深い仲」になることは許されなかったのかな、と思ったりしました。
若いヴァルモンは、そんなフランソワーズに弄ばれたと思ったのかな、とか。

そのあたりの事情はわかりませんが、二人の会話は、とにかく怖いです。
言葉は刃なんだな、と思う。二人とも真剣を抱えて対峙しているかのような、それも構えているのではなく、居合抜きの達人同士みたいな気迫がありました(←わかりにくい)

すごいなあ。美しいなあ。怖いなあ。
ピンと張りつめた空気、腹のうちを探り合いながら、唇とはぜんぜん違うことを語っている瞳

「お互いもっと自由になるためにお別れしましたわね」
「僕は別れたつもりなんて」

「……あら。そうでしたの?」

フランソワーズの、謎めいた笑み。
『女』の全てを賭けた、笑み。


愛しているからこそ、「男のモノ」にはなれなかった女と、
愛している女のことだけは「モノに」できなかった男。


面と向かって決して本当のことを言わない二人の痛いほどの寂しさだけが、意味もわからずに伝わってきました。
本音で語り合う仲間を持たない、孤独な二人。


孤独の「孤」の字は今回はフランソワ―ズの背中にもちゃあんと見えました(^ ^)。



……そんなヨタ話で引っ張っていいのか、悩みつつ。



【7月1日まで、あと135日】

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