CHESS in concert
2012年2月6日 ミュージカル・舞台青山劇場にて、「CHESS in concert」を観劇いたしました。
もうすぐ梅田での公演が始まりますので、今のうちに書かせていただきます。
私はこの作品、岡幸二郎さんがよくコンサートで歌っていた「Anthem」一曲しか聞いたことがなくて、作品そのものは全く知らない(CDも聴いたことがない)のですが、噂で聴いていた以上に曲が素晴らしく、名曲ぞろいでした。
その名曲の数々を素晴らしい歌唱力で表現してくださったキャストのみなさまに、精一杯の拍手を。
ABBAの、アンダーソン&ウルヴァースコンビによる音楽で有名な作品ですが、脚本もティム・ライスなんですね。ティムがA・L・ロイド=ウェッバーと袂を分かってから、最初に組んだのがABBAの二人だった、というのが凄い。
物語は、冷戦時代を舞台に、チェスの世界大会というイベントをめぐる人間模様を描いています。
まあ、当時はオリンピックもいろいろ政治の舞台になったりしたこともありますし、チェスの世界大会なんて恰好の舞台なのかもしれませんね。
現在の世界王者であるロシアのプレイヤー、アナトリーに石井一孝。
アナトリーに挑むアメリカのプレイヤー、フレディに中川晃教。
ハンガリー出身の亡命者で、いまはイギリス国籍を取ってフレディのマネージャーをしているフローレンス役に安蘭けい。
アナトリーの妻、スヴェトラーナに、AKANE LIV(岡本茜=神月茜)
そして、大会の審判かつ語り手のアービターに、浦井健治
メインキャストは以上5名(一幕はスヴェトラーナもコーラス)。これに、実力派揃いのコーラス4人(池谷京子、角川裕明、田村雄一、ひのあらた、横関咲栄)とダンサー1人(大野幸人)の計10名による、パワフルな舞台でした。
青山劇場を広く感じさせなかった音楽の素晴らしさに、脱帽。
演出は荻田浩一。
今回、私はただ「CHESS」だから観ると決めて、キャストも演出も全然気にしていなかったのですが(^ ^;、一幕終わって、どうも私の知っている匂いがする!と思いながらプログラムを開いて、おお、荻田さんだったのか!と納得しました(^ ^)。
言われてみれば、キャストももろに荻田節全開ですね(^ ^)。
セットはあまり荻田色は強くなく、シンプルな階段セットでした。
コンサート形式とはいっても、別に舞台前面にスタンドマイクが並んでいるわけではなく、誰かのMCがあるわけでもなく、普通に皆さんワイヤレスマイクをつけて動きまわって、芝居しながら歌ってました。以前ウィーン版キャストが来日したときの「エリザベート」コンサート版みたな感じでしたね。
衣装も変えるし、ダンスもある。おそらく台詞のみの場面はカットされていたんだと思いますが、普通に一本のお芝居として観ても違和感のないレベルでした。
音楽監督は島健さん。言わずと知れた島田歌穂ちゃんの旦那様ですが、久しぶりに本気で弾いてる彼を観たような気がします。もともと素晴らしい音楽なんですけど、島さんのアレンジも素敵でした(はぁと)
アナトリーの石井さん。
カッコいい!!
荻田さんにとっての石井さんは、「優しすぎる男(←最初に観たのはオカマでしたが)」なんだな、というのを再確認。
優柔不断で、フローレンスにもスヴェトラーナにも押されっぱなしの優しい男。すべての女を幸せにしようとして、結局誰も幸せにできない、その無力感がとても荻田さんらしかった。
彼はフローレンスを救おうとしただけで、スヴェトラーナを捨てた自覚は無いんですよね……。優しすぎるのは時として罪となる。それを知っているスヴェトラーナが、自ら彼を罠にかけにいく、その女心が悲しかった。フローレンスのためにロシアへ戻る決心をするアナトリーを、本当のところスヴェトラーナはどう思っているのだろうか、と思いながら。
歌はさすがです。文句なし。
「Anthem」を、石井さんの声で、石井さんの芝居で、アナトリーの歌として聴くことができて幸せでした。幸ちゃんのコンサートバージョンの歌とは全く別の、切ないまでに美しい「世界」がそこにあったことに驚きました。ああいう場面で歌われる歌だったのか……(@ @)。
フレディの中川くん。
久しぶりに「中川くん」を堪能しました!
いやーいい声だった。天才性と幼児性を前面に出したキャラクターで、小池さんが引き出した「天才ヴォルフ」とはまた違ったエキセントリックさの“中川くんらしさ”があって、良かったと思います。
歌はもちろん文句なし!です(*^ ^*)。この作品をコンサートバージョンではなく一本のミュージカルとして上演するとしても、フレディは変る可能性が高いよなあ……と思うと、このコンサートバージョンで観る(聴く)ことができて本当に良かったなあ、と思います。
審判の浦井くん。
これはもう、「ルドルフ」などでもおなじみのキャラクター。ある意味「ロミオとジュリエット」のベンヴォーリオも似てるんですよね。「傍観者」という名前の語り手、その、自由自在な存在感。
歌は……今回はメインキャストもアンサンブルも、全員歌は文句なしなんだもん!何を書けばいいのかわからないよ!!(逆切れ)
フローレンスの安蘭けい。
実は退団後初トウコさんだったのですが、姿も歌唱力も女優として違和感なくて、さすがだなと思いました。
(中川くんより大きいのは当たり前なので違和感はない)
複雑な生い立ちと愛に翻弄されつつも、まっすぐに立って自分の脚で歩こうとする「毅然とした女」。良い役だなあ、と思いました。1幕が終わったときは、歌穂ちゃんで観てみたかったなーと思ったのですが、最後まで観るとやっぱりトウコさんかな、と納得。少なくとも、荻田さんがトウコさんを選んだのはよく判ったと思います(^ ^)。愛情に溢れた人にはなかなか難しい役ですね、あれは。
スヴェトラーナのAKANE LIV(岡本茜=神月茜)。
歌手としての活動を開始しているAKANEちゃん。美貌とナイスバディと美声を兼ね備えた美しい人ですが、スヴェトラーナは当たり役だったと思います。フローレンスとデュエットする「I know him so well」は素晴らしかった!!(興奮)
「母性」と「女」の狭間でアナトリーを愛するスヴェトラーナ。出番は2幕だけなんですが、少ない出番でもすごく印象的な存在感がありました。
「ダンサー」の大野さん。
なんというか、「ロミオとジュリエット」の「死」みたいな役どころなんですが、、、
ほとんど平面のない階段状のセットで、よくあんなに踊れるなあと感心しました。作品が醸し出す「時代の空気」に色をつける、大事な役割でしたが、素晴らしかったと思います。
アンサンブルのみなさん。
人数は少ないけど、出づっぱりで歌ってくれてました。お一人お一人それぞれに違う、バラエティのある声で、コーラスになると迫力があって……なんかすごく良かったです。うん。
ひのさんは結構ソロで目立つ場面が多かったような。田村さんもかな?メインキャストが全員テノールなので、重たい音質が必要な曲は彼らがこなしていたような気がします。他の方は顔と名前が一致しないので説明ができないのですが、女性も男性もソロフレーズはしっかり歌ってらして、恰好良かったです。
モノクロの衣装がシンプルで、舞台美術の一環として効果的。ダンスナンバーみたいなのはないのですが、結構フォーメーションを動かす場面が多くて、本当に「舞台美術の一部」という感じでした。
そんなところかな……。
冷戦時代、という中途半端に身近すぎて、逆に「現在」とのギャップを大きく感じる時代をテーマにした作品ですが、時代が変わっても「愛」は色褪せないんだな、と感じました。
時代の匂いを強く感じる作品、なんですよね。
その「時代」ゆえに「立場」が定まってしまい、身動きがとれなくなってしまうアナトリーとフローレンス。「自由」の中で孤立し、現実を拒否する方向に流れてしまうフレディ。そして、彼らを冷たく見守る「時代」そのもの目線を感じさせるアービター。
上にも書いた気がしますが、全体にありもののミュージカルだとは思えないほど、荻田節全開!の作品だったことに驚きました。
なんというか。荻田さんってやっぱり面白い……っていうか、やっぱり私は、なんだかんだ言っても荻田ファンなんだなあ(*^ ^*)。
「CHESS」の本編上演、それも演出=荻田さんでの上演を、切に願いつつ。
【7月1日まで、あと146日】
もうすぐ梅田での公演が始まりますので、今のうちに書かせていただきます。
私はこの作品、岡幸二郎さんがよくコンサートで歌っていた「Anthem」一曲しか聞いたことがなくて、作品そのものは全く知らない(CDも聴いたことがない)のですが、噂で聴いていた以上に曲が素晴らしく、名曲ぞろいでした。
その名曲の数々を素晴らしい歌唱力で表現してくださったキャストのみなさまに、精一杯の拍手を。
ABBAの、アンダーソン&ウルヴァースコンビによる音楽で有名な作品ですが、脚本もティム・ライスなんですね。ティムがA・L・ロイド=ウェッバーと袂を分かってから、最初に組んだのがABBAの二人だった、というのが凄い。
物語は、冷戦時代を舞台に、チェスの世界大会というイベントをめぐる人間模様を描いています。
まあ、当時はオリンピックもいろいろ政治の舞台になったりしたこともありますし、チェスの世界大会なんて恰好の舞台なのかもしれませんね。
現在の世界王者であるロシアのプレイヤー、アナトリーに石井一孝。
アナトリーに挑むアメリカのプレイヤー、フレディに中川晃教。
ハンガリー出身の亡命者で、いまはイギリス国籍を取ってフレディのマネージャーをしているフローレンス役に安蘭けい。
アナトリーの妻、スヴェトラーナに、AKANE LIV(岡本茜=神月茜)
そして、大会の審判かつ語り手のアービターに、浦井健治
メインキャストは以上5名(一幕はスヴェトラーナもコーラス)。これに、実力派揃いのコーラス4人(池谷京子、角川裕明、田村雄一、ひのあらた、横関咲栄)とダンサー1人(大野幸人)の計10名による、パワフルな舞台でした。
青山劇場を広く感じさせなかった音楽の素晴らしさに、脱帽。
演出は荻田浩一。
今回、私はただ「CHESS」だから観ると決めて、キャストも演出も全然気にしていなかったのですが(^ ^;、一幕終わって、どうも私の知っている匂いがする!と思いながらプログラムを開いて、おお、荻田さんだったのか!と納得しました(^ ^)。
言われてみれば、キャストももろに荻田節全開ですね(^ ^)。
セットはあまり荻田色は強くなく、シンプルな階段セットでした。
コンサート形式とはいっても、別に舞台前面にスタンドマイクが並んでいるわけではなく、誰かのMCがあるわけでもなく、普通に皆さんワイヤレスマイクをつけて動きまわって、芝居しながら歌ってました。以前ウィーン版キャストが来日したときの「エリザベート」コンサート版みたな感じでしたね。
衣装も変えるし、ダンスもある。おそらく台詞のみの場面はカットされていたんだと思いますが、普通に一本のお芝居として観ても違和感のないレベルでした。
音楽監督は島健さん。言わずと知れた島田歌穂ちゃんの旦那様ですが、久しぶりに本気で弾いてる彼を観たような気がします。もともと素晴らしい音楽なんですけど、島さんのアレンジも素敵でした(はぁと)
アナトリーの石井さん。
カッコいい!!
荻田さんにとっての石井さんは、「優しすぎる男(←最初に観たのはオカマでしたが)」なんだな、というのを再確認。
優柔不断で、フローレンスにもスヴェトラーナにも押されっぱなしの優しい男。すべての女を幸せにしようとして、結局誰も幸せにできない、その無力感がとても荻田さんらしかった。
彼はフローレンスを救おうとしただけで、スヴェトラーナを捨てた自覚は無いんですよね……。優しすぎるのは時として罪となる。それを知っているスヴェトラーナが、自ら彼を罠にかけにいく、その女心が悲しかった。フローレンスのためにロシアへ戻る決心をするアナトリーを、本当のところスヴェトラーナはどう思っているのだろうか、と思いながら。
歌はさすがです。文句なし。
「Anthem」を、石井さんの声で、石井さんの芝居で、アナトリーの歌として聴くことができて幸せでした。幸ちゃんのコンサートバージョンの歌とは全く別の、切ないまでに美しい「世界」がそこにあったことに驚きました。ああいう場面で歌われる歌だったのか……(@ @)。
フレディの中川くん。
久しぶりに「中川くん」を堪能しました!
いやーいい声だった。天才性と幼児性を前面に出したキャラクターで、小池さんが引き出した「天才ヴォルフ」とはまた違ったエキセントリックさの“中川くんらしさ”があって、良かったと思います。
歌はもちろん文句なし!です(*^ ^*)。この作品をコンサートバージョンではなく一本のミュージカルとして上演するとしても、フレディは変る可能性が高いよなあ……と思うと、このコンサートバージョンで観る(聴く)ことができて本当に良かったなあ、と思います。
審判の浦井くん。
これはもう、「ルドルフ」などでもおなじみのキャラクター。ある意味「ロミオとジュリエット」のベンヴォーリオも似てるんですよね。「傍観者」という名前の語り手、その、自由自在な存在感。
歌は……今回はメインキャストもアンサンブルも、全員歌は文句なしなんだもん!何を書けばいいのかわからないよ!!(逆切れ)
フローレンスの安蘭けい。
実は退団後初トウコさんだったのですが、姿も歌唱力も女優として違和感なくて、さすがだなと思いました。
(中川くんより大きいのは当たり前なので違和感はない)
複雑な生い立ちと愛に翻弄されつつも、まっすぐに立って自分の脚で歩こうとする「毅然とした女」。良い役だなあ、と思いました。1幕が終わったときは、歌穂ちゃんで観てみたかったなーと思ったのですが、最後まで観るとやっぱりトウコさんかな、と納得。少なくとも、荻田さんがトウコさんを選んだのはよく判ったと思います(^ ^)。愛情に溢れた人にはなかなか難しい役ですね、あれは。
スヴェトラーナのAKANE LIV(岡本茜=神月茜)。
歌手としての活動を開始しているAKANEちゃん。美貌とナイスバディと美声を兼ね備えた美しい人ですが、スヴェトラーナは当たり役だったと思います。フローレンスとデュエットする「I know him so well」は素晴らしかった!!(興奮)
「母性」と「女」の狭間でアナトリーを愛するスヴェトラーナ。出番は2幕だけなんですが、少ない出番でもすごく印象的な存在感がありました。
「ダンサー」の大野さん。
なんというか、「ロミオとジュリエット」の「死」みたいな役どころなんですが、、、
ほとんど平面のない階段状のセットで、よくあんなに踊れるなあと感心しました。作品が醸し出す「時代の空気」に色をつける、大事な役割でしたが、素晴らしかったと思います。
アンサンブルのみなさん。
人数は少ないけど、出づっぱりで歌ってくれてました。お一人お一人それぞれに違う、バラエティのある声で、コーラスになると迫力があって……なんかすごく良かったです。うん。
ひのさんは結構ソロで目立つ場面が多かったような。田村さんもかな?メインキャストが全員テノールなので、重たい音質が必要な曲は彼らがこなしていたような気がします。他の方は顔と名前が一致しないので説明ができないのですが、女性も男性もソロフレーズはしっかり歌ってらして、恰好良かったです。
モノクロの衣装がシンプルで、舞台美術の一環として効果的。ダンスナンバーみたいなのはないのですが、結構フォーメーションを動かす場面が多くて、本当に「舞台美術の一部」という感じでした。
そんなところかな……。
冷戦時代、という中途半端に身近すぎて、逆に「現在」とのギャップを大きく感じる時代をテーマにした作品ですが、時代が変わっても「愛」は色褪せないんだな、と感じました。
時代の匂いを強く感じる作品、なんですよね。
その「時代」ゆえに「立場」が定まってしまい、身動きがとれなくなってしまうアナトリーとフローレンス。「自由」の中で孤立し、現実を拒否する方向に流れてしまうフレディ。そして、彼らを冷たく見守る「時代」そのもの目線を感じさせるアービター。
上にも書いた気がしますが、全体にありもののミュージカルだとは思えないほど、荻田節全開!の作品だったことに驚きました。
なんというか。荻田さんってやっぱり面白い……っていうか、やっぱり私は、なんだかんだ言っても荻田ファンなんだなあ(*^ ^*)。
「CHESS」の本編上演、それも演出=荻田さんでの上演を、切に願いつつ。
【7月1日まで、あと146日】
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