若者たちのオーシャンズ11
2012年1月19日 宝塚(星)東京宝塚劇場にて、星組新人公演「オーシャンズ11」を観劇いたしました。
新公演出は田渕大輔。
本公演演出助手が田渕さんと生田さんだったのでホンの少しだけ期待していたんですが、考えてみたら去年の「愛と青春の旅だち」が生田さんだったんだから無理に決まっているじゃん>自分。ああ、いえ、田渕さんには全然不満はないです。「ファントム」新公良かったし、期待してます。単に私が生田さんのファンなだけ!
一本ものの新公は、どんな構成になるのかが楽しみの一つなんですが。
田渕さんのまとめ方って好きだなあ、とあらためて思いました。2、3のショー場面をばっっっさり切って、あとは芝居の流れを守りつつ、各場面の細かいところを丁寧に削って時間をあわせてくれる。芝居を壊さずに時間を稼ぐために、場面の入れ替えや左右の変更など、すごく細かいところまでフォローしてくれるんですよね。すごいなあ、と。
今回の「オーシャンズ11」では、場面自体をカットする大きな変更は、最初の記者会見と、「エル・チョクロ」での「NEVER GIVE UP!」、そして2幕頭のアダムと蛇のダンスからテスの部屋までの3場面……かな。あ、ダイアナのリハーサルも一回飛ばしてましたね。
いずれもショーアップされたミュージカル場面なので、作品の華やかなところがだいぶ削られたなという印象がありましたが、芝居としての流れは逆にスムーズになっていたのではないでしょうか。細々と場面を入れ替えて、分断されていた場面を一つにつないだり、ダニーたちが9人の仲間を集める場面も一つ一つの場面を半分くらいにカットして芝居の骨子は残したり。本当にきれいに、細かいところまで目配りして、芝居として固めにまとめていた印象でした。
そのぶん、ショーとしての華やかさには欠けましたが、一回のみの新人公演に懸ける出演者の熱意がそのあたりを補って、芝居としての質を底上げしていたような気がします。
大劇場では、「なかなかよくできた新人公演」だなあ、と思ったのですが、東宝は「芝居版のオーシャンズ11」だね、と思いました(^ ^)。
真風くんのダニー。
大人っぽくて優しくて、すごく愛情深いダニー。テスにめろめろで、彼女の気の強さも駄目なところも、ぜんぶひっくるめて愛しているのがすごく素敵でした。
役者としての「真風涼帆」は、どちらかというと受身なヘタレ男が本領で、ダニーみたいな積極的にみんなを引っ張っていくリーダーシップのカリスマ役は苦手かな、と思っていたのですが、さすがに彼女は、もう新公レベルを超えているというか、回りのメンバーとは視ている世界も立っている場所も全然違う、というスーパースター感があったのが、役にもよくあっていたと思います。
突出した存在で、隣には誰もいないという孤独感がカリスマ性になっていたかな、と。
昔から台詞の声が大好きな真風くんですが、今回は歌も良かったです。がんばった!!今の真風くんで、「ランスロット」を観てみたいなあ。テーマソングを聴いてみたい(^ ^)。
はるこちゃん(音波)のテス。
大人っぽくて美しくて一生懸命にまっすぐ生きていで、「魅力的なテス」そのものでした。
二人のスーパースターに愛されるだけの魅力があるってすごく難しい課題だと思うのですが、テスがそういう存在でないと芝居として成立しないので、この役がはるこちゃんで良かったな、と思います。……エコプリンセスのソロは厳しかったけど(滝汗)。
はるこちゃんが綺麗な衣装をつけて立っているだけで幸せになっちゃうくらいにはファンなので、あまり冷静に評価できているとは思いませんが、はるこちゃんの丁寧な芝居が、彼女に絡む二人の男の格をあげてくれていたと思います。
一度は心を許した「元夫」に対する苛立ち交じりの冷たさが、「本当は好きなのに」的なツンデレ感ではなく、本当に怒っているんだな、と納得させてくれたのも良かった。そして、そんなに怒ったのは本当に愛していたからなのだ、と、彼女自身もわかっているのがすごい。
ダニーが歌う「あの頃のわたし」の中で、昔を思い出してそっと自分を抱きしめるところとか、愛しているからこそ許せない、許してはいけない、という気持ちと、彼の愛情そのものに対する不信感がすごく鮮明に出ていて。だからこそずっと隙を見せずにきたのに、ダニーにキスされる前の何気ない隙(油断)と、そこにつけこまれた瞬間の怒り、そして、乱れた心を抱えて立ち去る後ろ姿の可憐さ。ああ、はるこちゃんのお芝居、本当に好きです。愛があるんですよね。愛ゆえに傷つくことを怖れない強さも。
そして、CSのインタビューでもちょっと語ってくれましたが、「ベネディクトとの恋人関係」が鮮明にでていたのが、芝居を盛り上げていたと思います。大劇場と違って、観客側にも「こっちがトップコンビ」という先入観がないせいか、テスがちゃんと迷っていたのが印象的。テリーからの一方的なアプローチに応じているだけじゃなくて、ちゃんとテスもテリーが好きだよね。優しくて素敵な人だな、ダニーと違って大人で誠実な人だわ、と思っている。
今回、記者会見の場面がカットされているので「言葉と行動が一致している人」というテスの台詞はないんですが、レストランのディナーの場面とか、「僕が君を守る」と言われて安心したように微笑む場面とか、信じているんだな、と思って、切なくなりました。だからこそ、彼の裏の貌に気がついたとき、彼女の心は決定的に離れてしまう。その心理が自然で、悲しいくらい正直に見えました。
みっきぃさん(天寿光希)のベネディクト。
まず目から鱗だったのは、ベネディクトが本気でテスに恋をしていたことでしょうか。
最初のリハーサルの場面でテスを紹介したあと、まるで恋する少年のようなキラキラした目で舞台上で歌うテスをみつめて、歌を一緒に口ずさみながらニコニコしているベネディクトさん。ほとんどアイドルの出待ちをするファンの域でしたよあれは。
ベネディクトは、「愛する」ことも「愛される」ことも知らない男だと思うんですよね。冷静で冷酷で、今までの人生をそうやって生きてきた。女に不自由したこともなかっただろう。なのに!!それこそ「よりによってウブな歌手のたまご」にそんな男が落ちてしまったのが、すべての始まり。
最初の記者会見のナンバーがまるっとカットされていることもあって(後の場面で内容の説明だけ台詞でしてましたが)、生真面目な彼女らしい、芝居上の「恋敵」かつ「敵役」に徹した役づくりは非常に判りやすくて良かったと思います。
表の貌と裏の貌、というけど、お客さまに向ける顔と部下たちに見せる顔の二つは使い分けできても、テスに向ける顔という「3つめの顔」を持ってしまったことが彼の敗因。本気で恋をしていたからこそ、テスの裏切り(と彼は思った)にあってコントロールを喪い、感情に足を取られてしまうんですよね。
ベネディクトの人生は、たかが一日分の儲けを奪われても何もかわりはないんだけど、テスを喪ったことで彼の「世界」は崩壊してしまった。内面世界が崩壊したとき、現れるのは隠していたはずの「裏の貌」。お客様の前でその貌を晒してしまった以上、この後彼がどう取り繕うのか、みてみたいなと思いました(^ ^)。
キキちゃん(芹香斗亜)のラスティも最高に良かったです!すみません、ちょっと時間がないのであらためて書きたいと思いますが、とにかく、真風くんキキちゃんみっきぃさん、の3人は、本当に相性がよくてお互いを引き立てるトリオだ!と思いました。キキちゃんの組替えが、本当に残念……(T T)。
【7月1日まで、あと164日】
新公演出は田渕大輔。
本公演演出助手が田渕さんと生田さんだったのでホンの少しだけ期待していたんですが、考えてみたら去年の「愛と青春の旅だち」が生田さんだったんだから無理に決まっているじゃん>自分。ああ、いえ、田渕さんには全然不満はないです。「ファントム」新公良かったし、期待してます。単に私が生田さんのファンなだけ!
一本ものの新公は、どんな構成になるのかが楽しみの一つなんですが。
田渕さんのまとめ方って好きだなあ、とあらためて思いました。2、3のショー場面をばっっっさり切って、あとは芝居の流れを守りつつ、各場面の細かいところを丁寧に削って時間をあわせてくれる。芝居を壊さずに時間を稼ぐために、場面の入れ替えや左右の変更など、すごく細かいところまでフォローしてくれるんですよね。すごいなあ、と。
今回の「オーシャンズ11」では、場面自体をカットする大きな変更は、最初の記者会見と、「エル・チョクロ」での「NEVER GIVE UP!」、そして2幕頭のアダムと蛇のダンスからテスの部屋までの3場面……かな。あ、ダイアナのリハーサルも一回飛ばしてましたね。
いずれもショーアップされたミュージカル場面なので、作品の華やかなところがだいぶ削られたなという印象がありましたが、芝居としての流れは逆にスムーズになっていたのではないでしょうか。細々と場面を入れ替えて、分断されていた場面を一つにつないだり、ダニーたちが9人の仲間を集める場面も一つ一つの場面を半分くらいにカットして芝居の骨子は残したり。本当にきれいに、細かいところまで目配りして、芝居として固めにまとめていた印象でした。
そのぶん、ショーとしての華やかさには欠けましたが、一回のみの新人公演に懸ける出演者の熱意がそのあたりを補って、芝居としての質を底上げしていたような気がします。
大劇場では、「なかなかよくできた新人公演」だなあ、と思ったのですが、東宝は「芝居版のオーシャンズ11」だね、と思いました(^ ^)。
真風くんのダニー。
大人っぽくて優しくて、すごく愛情深いダニー。テスにめろめろで、彼女の気の強さも駄目なところも、ぜんぶひっくるめて愛しているのがすごく素敵でした。
役者としての「真風涼帆」は、どちらかというと受身なヘタレ男が本領で、ダニーみたいな積極的にみんなを引っ張っていくリーダーシップのカリスマ役は苦手かな、と思っていたのですが、さすがに彼女は、もう新公レベルを超えているというか、回りのメンバーとは視ている世界も立っている場所も全然違う、というスーパースター感があったのが、役にもよくあっていたと思います。
突出した存在で、隣には誰もいないという孤独感がカリスマ性になっていたかな、と。
昔から台詞の声が大好きな真風くんですが、今回は歌も良かったです。がんばった!!今の真風くんで、「ランスロット」を観てみたいなあ。テーマソングを聴いてみたい(^ ^)。
はるこちゃん(音波)のテス。
大人っぽくて美しくて一生懸命にまっすぐ生きていで、「魅力的なテス」そのものでした。
二人のスーパースターに愛されるだけの魅力があるってすごく難しい課題だと思うのですが、テスがそういう存在でないと芝居として成立しないので、この役がはるこちゃんで良かったな、と思います。……エコプリンセスのソロは厳しかったけど(滝汗)。
はるこちゃんが綺麗な衣装をつけて立っているだけで幸せになっちゃうくらいにはファンなので、あまり冷静に評価できているとは思いませんが、はるこちゃんの丁寧な芝居が、彼女に絡む二人の男の格をあげてくれていたと思います。
一度は心を許した「元夫」に対する苛立ち交じりの冷たさが、「本当は好きなのに」的なツンデレ感ではなく、本当に怒っているんだな、と納得させてくれたのも良かった。そして、そんなに怒ったのは本当に愛していたからなのだ、と、彼女自身もわかっているのがすごい。
ダニーが歌う「あの頃のわたし」の中で、昔を思い出してそっと自分を抱きしめるところとか、愛しているからこそ許せない、許してはいけない、という気持ちと、彼の愛情そのものに対する不信感がすごく鮮明に出ていて。だからこそずっと隙を見せずにきたのに、ダニーにキスされる前の何気ない隙(油断)と、そこにつけこまれた瞬間の怒り、そして、乱れた心を抱えて立ち去る後ろ姿の可憐さ。ああ、はるこちゃんのお芝居、本当に好きです。愛があるんですよね。愛ゆえに傷つくことを怖れない強さも。
そして、CSのインタビューでもちょっと語ってくれましたが、「ベネディクトとの恋人関係」が鮮明にでていたのが、芝居を盛り上げていたと思います。大劇場と違って、観客側にも「こっちがトップコンビ」という先入観がないせいか、テスがちゃんと迷っていたのが印象的。テリーからの一方的なアプローチに応じているだけじゃなくて、ちゃんとテスもテリーが好きだよね。優しくて素敵な人だな、ダニーと違って大人で誠実な人だわ、と思っている。
今回、記者会見の場面がカットされているので「言葉と行動が一致している人」というテスの台詞はないんですが、レストランのディナーの場面とか、「僕が君を守る」と言われて安心したように微笑む場面とか、信じているんだな、と思って、切なくなりました。だからこそ、彼の裏の貌に気がついたとき、彼女の心は決定的に離れてしまう。その心理が自然で、悲しいくらい正直に見えました。
みっきぃさん(天寿光希)のベネディクト。
まず目から鱗だったのは、ベネディクトが本気でテスに恋をしていたことでしょうか。
最初のリハーサルの場面でテスを紹介したあと、まるで恋する少年のようなキラキラした目で舞台上で歌うテスをみつめて、歌を一緒に口ずさみながらニコニコしているベネディクトさん。ほとんどアイドルの出待ちをするファンの域でしたよあれは。
ベネディクトは、「愛する」ことも「愛される」ことも知らない男だと思うんですよね。冷静で冷酷で、今までの人生をそうやって生きてきた。女に不自由したこともなかっただろう。なのに!!それこそ「よりによってウブな歌手のたまご」にそんな男が落ちてしまったのが、すべての始まり。
最初の記者会見のナンバーがまるっとカットされていることもあって(後の場面で内容の説明だけ台詞でしてましたが)、生真面目な彼女らしい、芝居上の「恋敵」かつ「敵役」に徹した役づくりは非常に判りやすくて良かったと思います。
表の貌と裏の貌、というけど、お客さまに向ける顔と部下たちに見せる顔の二つは使い分けできても、テスに向ける顔という「3つめの顔」を持ってしまったことが彼の敗因。本気で恋をしていたからこそ、テスの裏切り(と彼は思った)にあってコントロールを喪い、感情に足を取られてしまうんですよね。
ベネディクトの人生は、たかが一日分の儲けを奪われても何もかわりはないんだけど、テスを喪ったことで彼の「世界」は崩壊してしまった。内面世界が崩壊したとき、現れるのは隠していたはずの「裏の貌」。お客様の前でその貌を晒してしまった以上、この後彼がどう取り繕うのか、みてみたいなと思いました(^ ^)。
キキちゃん(芹香斗亜)のラスティも最高に良かったです!すみません、ちょっと時間がないのであらためて書きたいと思いますが、とにかく、真風くんキキちゃんみっきぃさん、の3人は、本当に相性がよくてお互いを引き立てるトリオだ!と思いました。キキちゃんの組替えが、本当に残念……(T T)。
【7月1日まで、あと164日】
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