日生劇場にて、「ラ・カージュ・オ・フォール」を観劇してまいりました。


祝!マエストロ塩田、「ラ・カージュ」に復活!!

2年前に「ラ・カージュ」を観た時、塩田さんがいらっしゃらなくて、ちょっとだけ残念だったんですよね。塩田さんが振ると、音が軽やかでキラキラしているような気がするし、ザザがマエストロとコミュニケ―ションを取るときの空気も違うような気がします。役柄以上の、長い付き合いによる阿吽の呼吸があるような。
まあ、先入観なのかもしれませんけど、やっぱり塩田さんが指揮台で踊っているのを見ると、それだけで楽しい気持ちになれるのは事実(^ ^)。「ラ・カージュ」はオケボックスまでが舞台だから、オケボックスのよく見える二階席センターを取るのが基本です(^ ^)。


2年前、「市村正親のザザはこれがファイナル!」とうたって上演されたこの作品。
初演からずっとジョルジュを演じてこられた岡田眞澄さんを喪って、鹿賀さんが登板された最初の公演でした。粋でスマートな鹿賀さんのジョルジュと、もはや名人芸としか言いようのない市村さんのザザ/アルバン。
もう二度と観られないと思って結構無理して観に行ったので、正直、このタイミングで再演されると多少は複雑な気分にもなりますが(- -;、でも、やっぱり市村さんはさすがでした。
前回は、「さすがだけど、やっぱり衰えは隠せないなー」なんて思った場面もあったのですが、今回はそれさえなくて。全盛期の市村さんの勢いが戻ってきたような気がしました。

中でも、1幕ラストの「I AM WHAT I AM」は素晴らしかった!
息子の不用意な一言で、20年間の家族生活を、いいえ、人生そのものを根こそぎ否定された一人の人間が、「それでも私は私!」と叫ぶ。悲しいとか悔しいとか、そんなんじゃなくて、プライドなんてちっぽけなものでもなくて、、、そのアイデンティティの全てを賭けた、魂の慟哭。
前回は、なんというか、、、「市村さんの『I AM WHAT I AM』を聴くのもこれで最後か……」と、本当に名人芸の見納めという気持ちで観ていた部分もあったこの名場面ですが、今回はそんなことを考える余裕もなかったです。すごい勢いでドラマに引き込まれて、ぐるぐる振りまわされて、最後にぽいっとされたような気がしました。
アルバンも、自分の中の「ザザ」に振り回されたところがあるのかな、と、そんなことを考えつつ。


そしてもう一曲。今まで何度も観ていたのにあまり思い入れのなかった場面に、なぜかよくわからないけど、今回はすごく嵌りました。
2幕のジャクリーヌ(香樹たつき)の店で、貞淑なジョルジュの妻(ジャン・ミッシェルの母)を演じるアルバンが、女主人にせがまれて歌う「BEST OF TIMES」。
よくあるミュージカルナンバー、名曲ぞろいの「ラカージュ」の中では、中の上くらいの曲だと思っていたのですが、、、すみません、ほんとにすみません。今まで本当に観ていたのか?と思ったほど、あのジャクリーヌの店でのアルバンのソロに持っていかれてしまいました。
なんだろう。「I GOT Merman」で、諏訪マリーさんが「ジプシー」を歌ったときのような感動。
長い時間を舞台の上で過ごしてきたベテラン役者が、その全てを賭けて客席を巻き込む、その、凄まじいまでの気迫。

そんな市村さんの傍で、軽やかな小鳥のように歌うタータンさんのジャクリーヌも、とても素敵でした。男役時代の重厚感とは全然違う、今のシャープな軽やかさは、とても魅力的だと思います。




ダンドン夫妻は、前回と同じ森久美子&今井清隆。モリクミさんは今回ちょっと不調なようにも見えましたが、単に市村さんが凄すぎただけかもしれません。今井さんは前回の公演からですよね。再演ともなれば、だいぶ慣れてキャラクターの魅力が出てきたな、という印象。

アルバンとジョルジュの一人息子ジャン・ミッシェルは、原田優一さん。
「レ・ミゼラブル」のアンジョルラス役が良かったので非常に期待していたのですが、ああいう無神経な青年の役をやると嫌味にみえてしまうのは誤算でした。天然っぽい、ぽわんと可愛くて優しげなタイプの役者の方が似合う役なのかもしれません。
あ、でも歌は素晴らしかったです!久しぶりに声が聴けて嬉しいです。

ジャン・ミッシェルの恋人・アンヌは、元雪組トップ娘役の愛原実花。みなこちゃん、素晴らしかった!!スタイルの良いダンサーで、芝居は文句なし。歌はもともと大した歌があるわけではないので無問題……というわけで、すごく良かったです。
みなこちゃんの独特の透明感が良い方向に作用して、原田くんの毒気まで中和してくれたような気がします。市村ザザと手を合わせて脚をあげる挨拶の仕草もめっちゃ可愛かった!!(でれでれ)
しかし、終盤のショーシーンでの燕尾ダルマは反則……いや、販促かも(^ ^)。

ルノー夫妻は林アキラ・園山晴子のお二人。ピンポイントの役ですが、久々に聴く美声はさすがでした(*^ ^*)。

ジャコブは花井京之助。フランシスは日比野啓一さん。達者なお二人ですよね。


カジェルメンバーは、あまり変ってなかったような気がします。シャンタルの新納慎也さん、なんていうか、やっぱり出てくると眼が惹きつけられますね。華があるんだなあ。ハンナの真島茂樹さんもあの「鞭の女王さま」役長いですよねえ……!他のメンバーもさらにパワーアップして、しかも綺麗でした。あのレビューシーンはこの作品の宝なので、これからもよろしくお願いいたします。



前回公演はそこまで思いませんでしたが、やっぱり今公演の市村ザザは、まだこの作品をご覧になったことがない方がいらっしゃったら是非にとお勧めしたいです。
男同士の純愛(?)というか夫婦生活がテーマの作品ですから、拒否感を感じる方もいらっしゃるようですが、、、でも、人と人が愛する物語であることにかわりはないと思うんですよね。

人の本能としての「愛したい」「一緒に居たい」という気持ちを、強く刺激する作品でした。
数年後に再演するときは市村さんが出てくださるかどうかわかりませんが、もう一度市村ザザにお逢いできれば幸せだし、新しいザザに逢えるならそれも幸せ、と思っています。

末永いご活躍を期待していますので、どうぞお身体大切に。



【7月1日まで、あと173日】

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