新大久保の東京グローブ座にて、オフ・ブロードウェイ。ミュージカル「I Love You, You’re Perfect, Now Change!」を観劇してまいりました。


わずか4人の出演者がとっかえひっかえ18のシーンを演じるオムニバス形式の、オフ・ブロードウェイ作品。
脚本・作詞はJoe DiPietro、作曲はJimmy Roberts。演出はオリジナルのジョエル・ビショフを招聘しての公演でした。
出演は中川晃教、白羽ゆり、神田沙也加、米倉利紀の4人。演奏は、ピアノ:栗田信生、ヴァイオリン: 高橋和葉のお二人。


この作品は、オフ・ブロードウェイで1996年に幕をあけてから2008年まで、12年にわたってロングランされたオフの傑作。日本では2003年に「I LOVE YOU ~愛の果ては?」というタイトルで初演されています。このときの演出は山田和也。出演は川平慈英・戸井勝海・絵麻緒ゆう・堀内敬子の4に、ヴァイオリン(工藤美穂)とピアノ(田中詞崇)の6人。このままのスタッフ&キャストで翌年再演され、全国を回った……はず。

私はこの初演と再演に死ぬほど通ったので、今回の上演をストレートに鑑賞できるか不安だったのですが……(^ ^;
特に、慈英くんと敬子ちゃんは本当にこの作品の立役者だったので……この二人がいない「I Love You…」なんて想像もつかない!舞台として成り立つのかこのキャストで!?
……なんて、今にして思えばひどく失礼なことを考えながらグローブ座に向かったのですが。

いやいや、心配ご無用でした!やっぱり傑作は傑作ですね!(^ ^)




舞台正面に3つのドアがある壁のセット。その2階部分にピアノとヴァイオリンの演奏者がいる…という基本の舞台構造は前回と同じでした。
衣装や小道具はかなり違っていたのですが、場面ごとの役の割り振りも、それどころか各キャストの基本的な動きはほぼ覚えていたとおり。前回公演の演出は山田和也さんですが、かなりオリジナルに忠実な演出だったんだな、とあらためて思いました。
歌詞や台詞も結構同じのを使っていたのはご愛敬?(全然違う曲もあったんですが、ほぼ記憶どおりでびっくりした場面もありました)


4人の役者が入れ替わり立ち替わり、さまざまなシチュエーションのカップルを演じ分ける、オムニバス形式の作品。
ドキドキワクワクしながら相手の気持ちを探り合う初デートの、甘酸っぱい気まずさ。
次のステップへ進みたいという気持ちと、そのステップでつまづきがちな自分たち。
結婚への踏ん切り。背中を押してくれる“Something”。
そして、結婚後のいろんないろんなアレやコレや。

ミュージカルなしの、芝居のみの場面もあれば、最初から最後まで歌いっぱなしの場面もある。
ダンスはあまり大したものはないけど、歌と芝居はハイレベルでないと成立しない、18篇のものがたりの集合。

誰であっても、観てみればたぶん、18編のうち数編は身に覚えがあるエピソードがあると思うんですよね(^ ^)。
結構リアルな台詞も多いので、心のどこかで傷になっているような思い出はちょっと痛むかもしれないけど。でも、この作品で笑い飛ばして貰えれば、その後はまた前を向いて歩いていけるような気がします。
とにかく、観ている間はアレコレあっても、観終わった後で「人を愛するって、幸せなことなんだな」と思える、そんな作品……だと思います、たぶん。




では、キャストについて簡単に。

■中川晃教(戸井勝海)
観る前は、中川くんと米倉さん、役が逆だと思っていたのですが……観てみて納得。これは中川くんはこっちだわー。
ただ、この役は本来、見るからに「マッチョ」な役者が演じるべき役なんじゃないかと思うんですよね。初演の戸井さんも「マッチョ」というタイプではなかったけど、中川くんはまったくもって「マッチョ」の「マ」の字もなさそうで、そんなところは若干痛かったかな。

でも、良かったです。小柄な身体で舞台いっぱいに弾けてて、とても可愛かった♪
個人的には、2幕のとなみちゃんとのタンゴがすごく好き。切迫感と若さがとても印象的でした。
ただ、一番の聴かせどころとなるはずの2幕後半のソロが、歌詞の変更もあって『私の』耳なじみが良くなかった……のは残念でした。こなれたころにもう一回観たい(聴きたい)な、と思っています。



■米倉利紀(川平慈英)
初演の慈英くんが、この作品にとってはあまりにも偉大だったのでいろいろ大変だったと思いますが(ごめんなさい)、単体で観ればまったく問題無く、すごく良かったです(はぁと)。

「RENT」のコリンズ役でしか知らなかった米倉さんですが、こんなに芸達者な方だとは!ええ、もう!慈英くんに負けてないって、凄いことだよ!!(@ @)。
この作品は、なんだかんだ言ってもこの役がポイントで、この役に誰を配するかで決まるところが大きいと思うのです。だから、プレッシャーも重かっただろうなあ……と思いつつ、ちゃんとその期待にこたえた米倉さん、さすが!と思いました。

個人的には、1幕の、結婚しないと決めたカップルの両親(父親役)がとても良かったと思いました。あと、ラストのお葬式の場面は大好きすぎる。とぼけた味わいがあって、素敵でした(はぁと)。



■白羽ゆり(絵麻緒ゆう)
良くも悪くも「宝塚出身女優」の枠から一生懸命はみ出して色っぽくやる……のが良いんでしょうね、この役は。最初からすみれコードもへったくれもない女優さんより、宝塚OG向きの役なんだと思います。
となみちゃんは、娘役にしては声も低くて色っぽいせいか、とてもよく似合ってました(^ ^)。

どの場面も良かったけど、今まで挙げてない場面では、1幕前半の「話を聞いてない女」がとってもキュートで可愛かったです(^ ^)。



■神田沙也加(堀内敬子)
慈英くんと並んで初演の立役者となった堀内敬子嬢の、役。怪演としか言いようのない名演技で話題をさらった人の後を継ぐのは大変だったと思いますが、よく頑張っていたと思います。

いや、予想よりずっと弾けてて、可愛くて、歌も芝居も本当に良かったです!
考えてみれば、「レ・ミゼラブル」でコゼットやってこの役、って、同じ流れなんだなあ……。

敢闘賞は、「ローズ・リッツのお見合いビデオ」に。あれはもう、、、、最後までちゃんと途切れることなく演じきれただけで十分感動しました。ええ、もう本当に。



そんなところでしょうか。

どうしても初演の思い出が色濃くて、このキャストで初めてご覧になった方がどういう印象を受けるものなのか判らないのですが(汗)、作品そのものが良いし、歌も芝居も大きな不足の無い4人が揃って、楽しい時間を過ごすことができました♪
何度観ても飽きない、観るたびに新たな発見がある作品。東京千秋楽までにもう一回観にいきたいな、と思っています(^ ^)。



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