赤坂ACTシアター「ロミオ&ジュリエット」キャスト別感想です。


◆ロミオ 城田優
いやはや、二枚目!でした(^ ^)。
ロミオってこうだよね、という、真っ白な王子様そのもの。歌唱力も及第点で、トートで評判取っただけあるなあと感心しました。
あのビジュアルにあの歌唱力なら、これからどんどん舞台に立ってほしいですね!(…むしろ、そんな暇はない、かも?)

ただ、観ていてちょっと違和感があるというか、、、こういう若々しくて純な役よりも、もう少し大人の役が観てみたいなあと思わせるところがあって、ちょっと「ロミオ」という役が勿体無い感じがありました。
むしろティボルトで観てみたかった、というか。
あと、背が高すぎて、回りのキャストによってはリリパット国に来たガリバーみたいな感じ……とまで言ったら言い過ぎですが、アンサンブルのモンタギュー家メンバーに囲まれた時に明らかに頭一つ抜けていたのがちょっと不思議な感じでした(^ ^; もうちょっとスタイルの良いアンサンブルが居ればなあ(^ ^)。



◆ロミオ 山崎育三郎
小柄で若くて必死で可愛い、少年ロミオ!
私のイメージするロミオにぴったりで、歌唱力はもちろんだし、とにかくすっごく良かったです!なんだかもう、一途で無茶苦茶で力づくで、すごい可愛かった(^ ^)。

あえて難をいうなら、いかんせん、『ヴェローナじゅうの娘たちが夢中』だとかの設定が間違ってるように見えたのはあったかも(ごめんなさい)。そのあたり、ロミオがシングルキャストだったらどちらかの個性に合わせて回りの台詞も変わったのかなあ、とは思うのですが。
個人的な印象ですが、最初の留守録を消す場面は、雰囲気的に城田くんだと文字通り「夜の仕事」に近い立場の女の子たちが残した留守録に聴こえたけど、山崎くんだと、街の有力者のご婦人たちが若いツバメを探してるみたい……で、それはそれでありかな、と思いました(^ ^)。



◆ジュリエット フランク莉奈
若くて長身、可愛くてスタイルの良いジュリエット。城田くんとは並びもきれいでとってもお似合いでした(^ ^)。歌も、綺麗な声だし音程も及第点♪ 表情がまだすこーし硬いのが気になりましたが、これから色々な役を経験して成長して、もう一度ジュリエットを演じてほしいなと思います。



◆ジュリエット 昆夏美
表情豊かで可愛らしく、圧倒的な歌唱力のジュリエット。とても小柄なので城田さんと並ぶと大人と子供みたいでしたが、山崎さんとはちょうど良いバランスでした。声質もあっていて、今回のダブルキャストは城田&フランク、山崎&昆で固定でも良かったのでは、と思ったくらいお似合いでした(*^ ^*)。
芝居の方向性もよく噛み合っていて、説得力のある組み合わせでした。決して美人じゃないけど、ファニーで可愛くて私はとても好きです。あえて難を言うなら、立ち姿があまり美しくないので、姿勢にきをつけてほしいな。
今回は衣装もあまりよくないので余計スタイルが悪く見えるのですが(T T)、ロミオとジュリエットだけでもそれぞれのキャストに合わせた衣装デザインを起こしてくれたらよかったのになあ。


「似合わない」ことを別にしても、今回のジュリエットの衣装はどうかと思いました。…ずーっと肩を出しているのがすごく嫌。肩(と背中)を出す衣装は、よほど背筋を張って、筋肉をちゃんとつけないとすごく下品に見えるのに、大舞台の経験がない二人にあの衣装で『純真無垢な深窓の令嬢16歳』に見せろというのは厳しいですよ。結果として昆さんはお洒落した小学生みたいに見えたし、フランクさんはディスコ(←古いよ)に紛れ込んだ高校生みたいでした(T T)。
宝塚の娘役は肩を出すのが仕事というか、人に見せるための身体(肩とか背中とか)を創ることが仕事の第一歩なんだな、と、ああいうのを観ると思うんですよね。ある程度の年数を舞台で過ごした娘役OGを使うならあの衣装でも全然心配いらないでしょうけれども、新人を使うなら衣装でカバーしてあげるのがプロの仕事なんじゃないでしょうか。正直、お二人がちょっと気の毒な気がしました。



◇キャピュレット夫人 涼風真世
素晴らしかったけど、「さすがの歌唱力!」というべきなのか「…ちょっと崩しすぎ?」というべきなのか、若干迷うところがありました。
若者チームと大人チームで、あるいはキャピュレット夫妻とその他で歌の傾向が違うんですよね。まあ、あれはあれで面白かったんですが、表現過多というか、情感過多なところはあったような気がします。もう少し抑えても良かったのかも。


宝塚版と違っていたのは……パリスが最初のプロポーズに来たことをジュリエットに話す時、新曲が一曲入ったせいか、乳母とコーラスするナンバーは乳母のソロになって、キャピュレット夫人は後から登場して、新曲をソロで歌う形に変更されていたのが一番目立ったかな。
新曲、っていうか「宝塚版では採用されていなかった」曲なんですが、、、夫と結婚したのはそもそも財産目当ての父親に命令されたから。夫も若く美しい自分を抱いてみたかっただけで、お互いに愛したことも愛されたこともない。でも私は出会ってしまった、ただ一人愛する男に。そうしてお前が生まれた……という、まあそりゃー宝塚版では使えないわ、という内容の曲ですわ。
オリジナルに元々あった曲ではなく、最近追加された曲なので、来年の来日版でも使われるかどうか?ですが。

この歌の存在によって、キャピュレット夫人が明確に『ジュリエットの敵』になったのが面白い効果だなと思いました。「♪その美しい肌をみせておやり」とまで言って、自分の娘に娼婦まがいのことをさせようとする。それは自分の親にそう言われたから……という、「悪夢」の連鎖を再生産してしまう「大人」たち。
結局、両家の争いを止められないのも同じ理由なんだなあ、と思いました。理屈じゃないんですよ。単に気に入らないから、親が喧嘩してたから、「おまえのかあちゃんデベソ」って言われたから、、、あるいは昔、喧嘩で父親の弟が殺されたから。そんな理由にならない理由で「憎しみ」が再生産されるのは、「大人たち」が本気で止めようとしないからなんですよね。
親に言われて喧嘩をする少年たちのまま、そのまんま大人になって、親に言われたとおりに喧嘩を続ける。それでは連鎖は断ちきれない。

「♪私は憎む 貴方の中にある憎しみ…」と歌いながら、彼女の心には憎しみと嫉妬が渦を巻いている。まだまだ美しいのに、もはや夫にかえりみられることのない自分。若く美しく、そして、ティボルトに愛されている少女。自分の娘に本気で嫉妬する「女」の情念が強く出た女性といえば、私の中では有吉佐和子の「母子変容」なんですが……勿論あの森江耀子女史とは全く違うんですが、涼風さんのキャピュレット夫人も素晴らしく怖ろしくて、とても印象的でした。



◇キャピュレット卿 石川禅
いやもう、素晴らしかったです♪♪ 禅ちゃんいいわーーーー。
召使に次から次と手を出す色ボケ親父で、妻は飾りものだと思ってて、娘のことは溺愛しているけど彼女が何を考えているのかさっぱりわからない。そんな駄目親父がめっちゃ嵌ってて、ちょっとびっくりしました。ええ。
「娘よ」のソロは素晴らしかったです!が、夫婦揃って録音伴奏に苦戦してたかも。たっぷりと歌うことに慣れてる上に、私が観たのも赤坂ACT公演の終わり近かったしなあ……

キャピュレット夫人の追加曲に合わせて、「娘よ」の歌詞も大分変ってました。
「♪お前が3歳の時に気付いた。お前は私の子じゃない」「♪細い首に手をかけて……でも、できなかった」というモノローグが、すごく切なかったです。駄目親父なりの愛情と、駄目夫なりの、妻への情と。たぶん彼は、「父親」が誰なのか判ったんですよね。辛かっただろうなあ……と思った、重たい一曲でした。



◇乳母 未来優希
ハマコさん、Bravo!!
贔屓目かもしれませんが、素晴らしかったです♪ うん。ただ、乳母の音域って微妙なんだな、と思いました。ソロだけでも、もう1,2度下げて貰って地声で歌いきった方が良かったのでは?
宝塚版よりだいぶリアルというか品のないおばちゃんっぽく造っていましたが、たぶん今回の作品だとあれが正解なんでしょうね。キャピュレット夫人よりお高い感じじゃ困るし!衣装は赤と牛柄の組み合わせという凄まじいセンスで、あれはもう品よくつくるのとか無理だろうしなあ(- -;(溜)



◇ロレンス神父 安崎求
アロマおたくでネットサーファーな神父様。
……まあ、その設定はおいといて!!安崎さん、素敵だった~~~(*^ ^*)。
最初の登場の直後、薬草棚を覆っていた布を取って振りまわすところなんて、「よっ!マリウス!」と掛け声をかけたくなったくらいステキでした♪♪
トボけた味のある芝居は相変わらずで、どっちのロミオとの芝居もうまく引っ張っていってくれたと思います。そして、ハマコさんとのデュエットは秀逸だった♪♪もっと聴いていたかった♪♪

キャラクターのせいか、霊廟に現れる場面でつい笑いを取りに行ってしまうはやめてほしいんですが、、、うーん、あれで集中が切れるのは私がいかんのか?(T T)



◇モンタギュー卿 ひのあらた
渋くてスタイルよくて衣装が素晴らしく良く似合って、いやもう、ホントに格好良かった!
モンタギュー卿は出番も少なくてあまり見せ場がないんですが、出てくるたびに「うおお!」と思うほど格好良かったので満足です。大公閣下とはまた違う格好良さと色っぽさがあるところが好き!
歌は流石でした。ええ。さすが、っていうのはこういうことを言うのかああ、と思う今日この頃。



◇モンタギュー夫人 大鳥れい
みどりちゃん、初見では衣装に気を取られてあまり芝居を視る余裕がなかったのですが、、、うーむ、あんなものかなあ。「憎しみ」「さばき」「つみびと」と、結構見せ場があるわりに、あまり印象に残らなかったような。
堅実でしっかりした演技(歌も芝居も)をする人ですが今回はそれが若干裏目にでたのかもしれませんね。まあ、どうしてもこの作品はキャピュレット家の話がメインになっているから、立ち位置として難しいところではあるのですが。……やっぱり「つみびと」の歌いだしは、もう少し圧倒的な何かがあるともっと良かったような気がします。
自分が「罪人」であることの自覚と、相手に対する赦しと、その両方を伝え切れていなかったような気がする。……録音だからしかたないかなあ……。


あれっ、長くなりすぎ……。すみません、もう一回続くみたいです。
大公と、あと若い人たちをまとめて書きますね。



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