星組バウホール公演「おかしな二人」、千秋楽おめでとうございます!
あーあ、もう一回観たかった……。轟さんと未沙さんのかけあいも楽しかったし、若い連中(^ ^)も楽しそうで、いい公演だったなあ(^ ^)。

フィナーレについては何もレポートしませんでしたが、娘役二人の歌も、轟さんの歌も、男役4人が加わってのダンスも、どれも楽しくて、可愛くて、格好良くて、大好きです。
でも、一番印象に残ったのは、マヤさんの「My Way」。本当に心に沁みました。「♪私には愛する舞台があるから」……と歌うマヤさんの横顔に、涙が溢れたのも懐かしい思い出になりつつあります。
あの舞台を生で観ることのできた幸運に感謝しつつ。



というところで、遡って「ランスロット」2幕から。



第1場 聖杯探求

聖杯の守護者ヨセフの重々しい語り。
『聖杯探求』の旅は、実際にはそれだけではなく、『円卓思想の流布』をも目的としていた、と。

長引く聖杯探求の旅に倦み、性急に成果を求める騎士たち。
自分たちに敬意を表しない民に怒り、聖杯の情報を与えない民に襲いかかる。

「これは、誰が臨んだ物語なのか」

……ヨセフの呟きを聴く者は、いない。


「ランスロットに続けー!」

騎士団長に従う、という名目で、暴力を正当化する騎士たち。
最初から『聖地奪還』を目標とし、敵地征服を目論んだ十字軍よりはマシであるにせよ、結局彼らは「キリスト教徒」であり、主君の目指した理想に関わらず、同じ行動するものなのでしょうか。
彼らの中には、異教徒(パラミデュース)もいるというのに。


めまぐるしい襲撃の場面のBGMとして流れる、単調なリズムの呪詛のような声が、とても不気味でした。
アーサー王、グウィネヴィア、モルドレッドそしてモルゴース以外は、全員がずっと走り回っていて歌う余裕はほとんどなかったと思うので、録音に効果を当てていたのかな?不思議な音でした。

襲撃を受ける村人が、男はレオデグランス(碧海りま)とマーリン(如月蓮)のみなあたり、総出でやってるな、という印象が強いですね。あとは全員騎士団員だもんなー。
碧海さんはこの後あまり出番がないのでちょっと寂しい……あとは廷吏だけですもんね。
れんたは、お髭無しの場面がここ(とフィナーレ)だけなので、かなり気合が入っていたような(^ ^)。幕間をはさんでいるせいか、しっかり化粧を直されていたような気がします。でもまたすぐにマーリンになって出てくるんですけどね!(^ ^)。

娘役も総出演……っていうか、モルガン(夢妃杏瑠)もいたのか!!(@ @)。それは気がつかなかった……(しょぼん)



上手から、下手から、村人たちを追って斬り捨てる騎士たち。
血に飢えた、いや、血に酔った、強引な行軍。
正義とは思えない行動に、「ブリテン」そのものへの不信の雲が湧き上がる。

そんな中を逃げまどう子供たち。
蒼い服を着た少年ランスロット(妃海)と、黄色いドレス姿の少女グウイネヴィア(綺咲)。

少女の右手と少年の左手はしっかりと握りあわされ、お互いを庇い合って騎士たちの足許を駆け抜けようと走り続ける。

円卓の騎士団長は、ひたすら「敵」を屠り続ける。
もはやそれが本当に「敵」なのか、無力な「民」なのかを判断することもできず、視界の隅を走り抜けるものを逃さずに刃にかけて。


不信と猜疑の雲が、彼を捕える。
血に酔った彼にはもはや目の前の子どもが何者であるのかわからない。


「ランスロット!」

涼やかな声を振りきるように、彼は自分の中の影を切り捨てる。
自分とグウィネヴィアを繋いでいた腕。細くかよわい左腕を、根元からばっさりと。

♪左手を締めつける糸を断てず
♪右手の愛 こぼれおちてゆく

グウィネヴィアの右手の愛はこぼれおち、ランスロットの左手は身体から切り離されて地に墜ちる。
血に塗れたその腕は、ランスロットの罪のあかし。グウィネヴィアの笑顔のためにしてやれることを見失った短慮が、彼をこんなところまで連れてきた。

敬愛する王と、愛する王妃。そのどちらをも護れなかった……彼には。



第2場 森の中

暗転した舞台に灯が入ると、舞台奥にモルゴース(花愛)が立ちふさがる。
手前に倒れこんだ少年には、左腕がない。

「魔女さん、、、僕、死ぬのかな」
「そう。……だが、私にはお前を生かすことができる」
「本当に、救けてくれるの…?」

魔女が嗤いを浮かべて深くうなずく。
少年は気づかない。魔女は彼を救いはしない。生かすだけ。それも、魂と引き換えに。

「………たましい…?」
「そう。……お前はその腕を斬り落とした騎士が憎くはないか?復讐したいとは思わぬのか?」

たたみかけるように問う魔女に、少年は駆り立てられる。

「僕は生きたい……強い力が、ほしい!」

ランスロットはここでも間違える。
同じ問いに、同じ答えを返す。それが間違っていることに、まだ彼は気づかない。

「よろしい。されば我が寿命から、そなたに10年を分け与えよう!」

モルゴースが宣言し、そこに新たな闇の器が生まれる。

意志と決意と、そしてランスロットと同等の力を持った強い騎士。

「そなたの名は、モルドレッド」

金褐色の巻き毛に紅い光を浴びて、残忍な笑顔を浮かべる魔女の騎士。

「必ずや、円卓を崩壊へと向かわせるのだ」
「はぁっ!」

もはや少年ランスロットの面影はなく……
そうして彼は、立ち上がる。
ブリテンの王を、その騎士団長を、滅ぼすために。




ほんの5分足らずの間にこれだけの物語を詰め込んで、
舞台は再び、ブリテンの円卓の間に戻る。


騎士たちの無事と聖杯と。両方を望んだ王は、この結末をどう切り抜けるのか。
血に狂わされた彼らの気持ちを、再びまとめあげることはできるのか?

Noblesse Oblige の名のもとに。


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