ランスロットとアーサー王【2】
2011年9月1日 宝塚(星)星組バウホール公演「ランスロット」。
CSの突撃レポートが流れましたが。いやー、可愛いなあみんな(まとめ)。
「初日どうでしたか?」というみきちぐの質問に
「気がついたら終わってました」と言ってへにゃっと笑う真風(涼帆)くんがすごい可愛い。
やっぱりこの人はヘタレでほんわかで……そんなところが本当に可愛いです。
そして。みっきぃさん(天寿光希)が「すごく緊張したけど、ゆりか(真風)が落ち着いてたから、、、」と言いながら真風くんと顔を見合わせて喋っている図を三回巻き戻しました。ああ、ビデオプリンターがほしい(真顔)。……どんだけこの二人の並びが好きなんだ私。
上級生とはいえ、これだけの大役に挑むのは全く初めてのみっきぃさんと、新公主演を何度もやって、本公演で役替りとはいえ二番手役までやっている真風くんでは、経験値がお話にならないほど違うんですけど(^ ^)、、、それにしても、真風くんの貫録はすごいなあ~!本当に、良い意味で研6には見えませんわ♪
まっすぐに背を伸ばし、真風くんを見上げて、「真風さんに何があってもついていこう、と」と告げるわかばちゃんも、とっても可愛い。舞台で芝居をしているのを観ていると「人形のように可愛い」という表現が浮かぶ人ですが、そのひたむきさが舞台でも出るようになったら良くなりそう♪
キキちゃん(芹香斗亜)は、美しいなあ(*^ ^*)。この、毒のある美しさと安定感は、今の星組若手ではピカ一だと思っています(贔屓目?)。みっきぃさんは、巧いけど持ち味自体が「不安定」で「脆い」、なんというか、非常に「あやうい」タイプなので、キキちゃんの毒と安定感がすごく印象に残りました。
キキちゃん、ここんとこ本当に良い仕事してるなあ。歌も良かったし、この作品が成功したのは、もしかしたらキキちゃんの功績かも、と思ったりします。
すごくどうでもいいことなんですが、「ランスロット」って、「ラ」にアクセントがあるんですね(@ @)。
観るまではずっと「ロ」にアクセントをおいて考えていたので、最初はすごく違和感がありました。「ヴァレンチノ」も「レ」にアクセントがあるのかと思っていたら平坦だったので驚きましたが、こういうのって多いのかなあ?それとも、「ランスロット」の「ロ」にアクセントがあると思っていたの私だけ?たしかに、言われてみればスロットマシーンか何かみたいかもしれないけど<「ロ」にアクセント。
なんだか、前回舞い上がりすぎたので、今度こそ少しはまとめようと思ったのですが、、、突撃レポートがあまりにも可愛いんで、またちょっと壊れてしまいました(^ ^;ゞ
なので、今日もたぶんまとまりません(宣言。ごめんなさい。
この作品に登場する、「人ならざる者」たち。
聖杯の守護者ヨセフ(美稀千種)、湖の魔女ヴィヴィアン(美穂圭子)、森の魔女モルゴース(花愛瑞穂)、魔法使いマーリン(如月蓮)、そして、モルゴースによって造られた、ホムンクルスたち。
彼らがどのような存在で、どのような能力があって、普段はどのような生き方をしているのか、、、そのあたり、はっきりとした説明はないのですが、彼らの存在感が非常にうまく処理されているのが生田さんの手腕なんだろうな、と思いました。
「人間たちの世界」から浮き上がった存在。
アーサーが治める「ブリテン」-“剣の世界”と、その裏側にある“魔法の世界”。
マーリンはそこから出てきてアーサーを補佐し、モルゴースは「ブリテン」を我がものとするために先王と契る。
ヴィヴィアンとヨセフは、人間界には興味がないのに、ランスロットには関わろうとする。彼を護り、導き、真実に気づかせよう、と。おそらく、彼らにとってランスロットは「光」みたいなものなのでしょう。眩しくて直接は手が出せず、回りをぐるぐる回って暖をとるくらいしかできないのに、離れることもできなくて。
「剣と魔法」……なんていうと、勧善懲悪を基本とする「ヒロイックファンタジーを思い浮かべてしまいますが、生田さんが紡ごうとした物語は、「勧善懲悪」とは全く違う方向を向いているんですよね。
善も悪もない、もっと混沌とした世界。「悪」は自分自身の中にあり、それを切り捨てれば、余計に大きな影となって歩く道の前に立ちふさがる。安易な手段(「強い力」)に頼ろうとする弱い心と、理想を信じて一歩ずつ歩んでいこうとする辛抱強さの相克。そして、「世界」を見守る「眼」の存在。
……そうやって考えると、宮部みゆき氏の「ブレイブ・ストーリー」と非常に良く似た展開なんだなあ、この話って。
本題とは関係ないんですが、「ブレイブ・ストーリー」を読んで、一番心に残った(ぶっちゃけ、泣いた)祈りの詞を書いてもいいですか?
『小さき子よ。地上の子よ。神の御意志に背いたことを悔いているか』
『時に争い、時に諍い、虚偽に躍り、愚蒙に走り、ヒトの子の罪を重ねたことを悔いているか』
『時に偽り、己の欲に従い、神の与え賜いしヒトの子の栄光に顔を背けたことを悔いているか』
今際の際に3つの問いかけをして、そのすべてに「はい」と答えた人は救われる……そんな、とてもシンプルな信仰。
『……ここに深く悔い改め、地上のあなたの罪は赦された。安らぎなさい、ヒトの子よ。召されていくあなたを永遠の光と平穏が包むだろう』
この、宮部氏の名調子の素晴らしいことといったら!
話しがだいぶ飛ぶんですけど、生田さん、「ブレイブ・ストーリー」を舞台化してくれないかなあ。現時点でのイメージでいうと、ワタル=キキちゃん、ミツル=みっきぃさん、ですかね。
と、ここまで書いて、私の中で、みっきぃさんは常に崩壊する側だという事実に驚く……。
もとい。
みきちぐのヨセフの、あの安定した緊張感がすごく好きです。
「剣の世界」を外側から眺めて、一人の男を選び出す、その気まぐれさと存在の重さ。
そして、物語のキーを握るみきちぐを観ながら、思ったこと。
アーサーを選んだエクスカリバーの守護者は、どんな存在なんでしょうね。……ああいう、脆くて不安定で危なっかしくて、しかも責任感の強すぎる生真面目な人を王に選ぼうと思ったのは。
そして、湖の魔女ヴィヴィアンの クールな上から目線っぷり の素晴らしさ!
美穂さん、8月7日まで宙組東宝に出ていて、10月7日からまた宙組大劇場(ショーのみ)に出てくださるんですよね。その間、わずか2カ月。今夏は「ヴァレンチノ」再演が入ったから宙っ子も半数は仕事してたけど、普通はお休みですよ!!すごい無理して「ランスロット」に出てくださったんだなあ。きっと生田さんが切望したんでしょうけれども(←憶測)、本当に本当に、出てくださってありがとう!!
いやはや、花愛さん(モルゴース)も良かったけど、、、やっぱり美穂さんが素晴らしかったんですよ(感涙)。寧々も良かったけど、ヴィヴィアンは本当に素晴らしい。
歌える子はいても、あの絶妙の存在感が出せる人はあまりいないと思うんですよね。まさに「この世のものならぬ」存在の重み。ランスロットの運命にあれだけ関与していながら、「人の世の運命にに関与はならぬ」とか平気で言いそうな、人間味のなさ。
いやーーーー。美穂さんってすごいなあ……。
モルゴースとモルガンについては前回もちょっと書きましたが。
「ル・フェイ(妖精)」の血統でヴィヴィアンの弟子……なんですよね、モルゴースは。
「魔力」を引き継いだんだか与えたんだかっていう台詞のやりとりもありましたが、この二人(美穂×花愛)のガチンコ勝負を観ながら、この二人の「若い」時代も観てみたいな、と思ったりしました(^ ^)。
そして、マーリン。
冒頭プロローグの、アーサー王との掛け合いにまず持っていかれたのですが。
芝居が始まって少し経ってから、「お妃さまがやってくる♪(意訳)」と歌いながらみんなで踊る場面のセンターで踊っている白髭の魔法使いが、まさかれんただとは露思わず。
……あの独特のちょっと甲高い声を聴くまで、気がつきませんでした(滝汗)。かわいい!かわいいぞれんた!!大好き!
面白いなあと思ったのは、マーリンは“剣の世界”に違和感なく混ざっていたこと。
むしろ、純粋に人間であるはずのアーサーの方が、よっぽど違和感があった。
本来、此処にいるべき存在じゃない、というか。
無理して「王」を演じている、というのとはちょっと違う。無理して「王で在ろうとしている」というのが近いのかも。聖剣エクスカリバーによって否応なく選ばれてしまった、哀れな王。
……やっぱり、前回も書きましたが、小野不由美氏の「十二国記」がかぶってみえる。“麒麟”という人智の外の存在によって選ばれ、不老不死の王(=神)となり、「神の国」へ迎えられる、という設定が。
アーサーの宮殿は「剣の世界」の中にあるんだけど、アーサーはもはやそこにふさわしい存在ではなくなっている。彼は「王」という名の「人ならざるもの」になっている………そんな浮きっぷりが、とても不思議な感覚でした。
シドといい、アーサーといい、みっきぃさんって、ちょっと回りから浮きあがった存在感のある芝居をよくやっていますが、そういうところが生田さんに愛されているのかも…?
マーリンはアーサーに助言(予言)を与える立場。マーリンとアーサー、二人で並ぶと、浮いているのがアーサーなのが面白いな、と。
二幕の後半で、「人の子の運命」と「自分が視る世界」の乖離を説明する台詞がありますが、、、結局、彼(魔法使い)の視る世界を超えていくのは、人ならざる者に選ばれた二人(ランスロットとアーサー)なんだな、と思いました。
ランスロットはあくまでも“剣の世界”にとどまるのに、なぜアーサーはとどまれなかったのか。……それは、彼が「王」という役割を持つ者として選ばれたから、なんでしょうね。アーサー自身はそんなこと全然望んでいないのに。
持たされた(与えられた)責任の重さゆえに、人の世からはみ出してしまったアーサー。
だから、グウィネヴィアは彼に対して「尊敬」以上の関心を抱けなかった。
夫とは棲む世界が違うゆえに、愛することも憎むこともできず、ただランスロットを求めてしまう女心。
アーサーはあんなに素直に恋をしたのに。ランスロットに恋をする、一人の少女に。
いっそ、王妃がアーサーを憎んでいたならば、また話は違っていたんだろうな、なんてことも考えました。アーサーとランスロットがもっと素直に敵になれたら、と。
モルドレッドにつけこまれるのではなく、二人が二人の意志によって対立していたならば。
……いや、生田さんが語りたかった話はそういう話じゃないから、仕方ないんでしょうね……。
アーサーが治める「世界」の中で、グウィネヴィアを抱きしめて生きていたかったランスロット。
自分自身をはじき出した「世界」を治めながら、自分が自分でいられる時間を希求するアーサー。たぶん、グウィネヴィアの傍でならそう在れると思ったんでしょうね。街で見かけたグウィネヴィアが、とても素直で、自然だったから。
でも。彼女を得られるのは自分が「王」だから。
一介の騎士には、彼女は与えられない。
ランスロットを得られたのは、自分が「王」で、「王妃」がグウィネヴィアだから。
一介の王には、彼は得られない。
王妃とランスロット、二人を共に得ることは叶わないと知りながら、アーサーはマーリンの予言に飛びつく。
「聖杯を探す」
それがどんな結果に終わるのか、マーリンに視えぬ未来が、このときアーサーにも視えていたはずなのに。モルドレットという悪意に、つけこまれるまでもなく。
.
CSの突撃レポートが流れましたが。いやー、可愛いなあみんな(まとめ)。
「初日どうでしたか?」というみきちぐの質問に
「気がついたら終わってました」と言ってへにゃっと笑う真風(涼帆)くんがすごい可愛い。
やっぱりこの人はヘタレでほんわかで……そんなところが本当に可愛いです。
そして。みっきぃさん(天寿光希)が「すごく緊張したけど、ゆりか(真風)が落ち着いてたから、、、」と言いながら真風くんと顔を見合わせて喋っている図を三回巻き戻しました。ああ、ビデオプリンターがほしい(真顔)。……どんだけこの二人の並びが好きなんだ私。
上級生とはいえ、これだけの大役に挑むのは全く初めてのみっきぃさんと、新公主演を何度もやって、本公演で役替りとはいえ二番手役までやっている真風くんでは、経験値がお話にならないほど違うんですけど(^ ^)、、、それにしても、真風くんの貫録はすごいなあ~!本当に、良い意味で研6には見えませんわ♪
まっすぐに背を伸ばし、真風くんを見上げて、「真風さんに何があってもついていこう、と」と告げるわかばちゃんも、とっても可愛い。舞台で芝居をしているのを観ていると「人形のように可愛い」という表現が浮かぶ人ですが、そのひたむきさが舞台でも出るようになったら良くなりそう♪
キキちゃん(芹香斗亜)は、美しいなあ(*^ ^*)。この、毒のある美しさと安定感は、今の星組若手ではピカ一だと思っています(贔屓目?)。みっきぃさんは、巧いけど持ち味自体が「不安定」で「脆い」、なんというか、非常に「あやうい」タイプなので、キキちゃんの毒と安定感がすごく印象に残りました。
キキちゃん、ここんとこ本当に良い仕事してるなあ。歌も良かったし、この作品が成功したのは、もしかしたらキキちゃんの功績かも、と思ったりします。
すごくどうでもいいことなんですが、「ランスロット」って、「ラ」にアクセントがあるんですね(@ @)。
観るまではずっと「ロ」にアクセントをおいて考えていたので、最初はすごく違和感がありました。「ヴァレンチノ」も「レ」にアクセントがあるのかと思っていたら平坦だったので驚きましたが、こういうのって多いのかなあ?それとも、「ランスロット」の「ロ」にアクセントがあると思っていたの私だけ?たしかに、言われてみればスロットマシーンか何かみたいかもしれないけど<「ロ」にアクセント。
なんだか、前回舞い上がりすぎたので、今度こそ少しはまとめようと思ったのですが、、、突撃レポートがあまりにも可愛いんで、またちょっと壊れてしまいました(^ ^;ゞ
なので、今日もたぶんまとまりません(宣言。ごめんなさい。
この作品に登場する、「人ならざる者」たち。
聖杯の守護者ヨセフ(美稀千種)、湖の魔女ヴィヴィアン(美穂圭子)、森の魔女モルゴース(花愛瑞穂)、魔法使いマーリン(如月蓮)、そして、モルゴースによって造られた、ホムンクルスたち。
彼らがどのような存在で、どのような能力があって、普段はどのような生き方をしているのか、、、そのあたり、はっきりとした説明はないのですが、彼らの存在感が非常にうまく処理されているのが生田さんの手腕なんだろうな、と思いました。
「人間たちの世界」から浮き上がった存在。
アーサーが治める「ブリテン」-“剣の世界”と、その裏側にある“魔法の世界”。
マーリンはそこから出てきてアーサーを補佐し、モルゴースは「ブリテン」を我がものとするために先王と契る。
ヴィヴィアンとヨセフは、人間界には興味がないのに、ランスロットには関わろうとする。彼を護り、導き、真実に気づかせよう、と。おそらく、彼らにとってランスロットは「光」みたいなものなのでしょう。眩しくて直接は手が出せず、回りをぐるぐる回って暖をとるくらいしかできないのに、離れることもできなくて。
「剣と魔法」……なんていうと、勧善懲悪を基本とする「ヒロイックファンタジーを思い浮かべてしまいますが、生田さんが紡ごうとした物語は、「勧善懲悪」とは全く違う方向を向いているんですよね。
善も悪もない、もっと混沌とした世界。「悪」は自分自身の中にあり、それを切り捨てれば、余計に大きな影となって歩く道の前に立ちふさがる。安易な手段(「強い力」)に頼ろうとする弱い心と、理想を信じて一歩ずつ歩んでいこうとする辛抱強さの相克。そして、「世界」を見守る「眼」の存在。
……そうやって考えると、宮部みゆき氏の「ブレイブ・ストーリー」と非常に良く似た展開なんだなあ、この話って。
本題とは関係ないんですが、「ブレイブ・ストーリー」を読んで、一番心に残った(ぶっちゃけ、泣いた)祈りの詞を書いてもいいですか?
『小さき子よ。地上の子よ。神の御意志に背いたことを悔いているか』
『時に争い、時に諍い、虚偽に躍り、愚蒙に走り、ヒトの子の罪を重ねたことを悔いているか』
『時に偽り、己の欲に従い、神の与え賜いしヒトの子の栄光に顔を背けたことを悔いているか』
今際の際に3つの問いかけをして、そのすべてに「はい」と答えた人は救われる……そんな、とてもシンプルな信仰。
『……ここに深く悔い改め、地上のあなたの罪は赦された。安らぎなさい、ヒトの子よ。召されていくあなたを永遠の光と平穏が包むだろう』
この、宮部氏の名調子の素晴らしいことといったら!
話しがだいぶ飛ぶんですけど、生田さん、「ブレイブ・ストーリー」を舞台化してくれないかなあ。現時点でのイメージでいうと、ワタル=キキちゃん、ミツル=みっきぃさん、ですかね。
と、ここまで書いて、私の中で、みっきぃさんは常に崩壊する側だという事実に驚く……。
もとい。
みきちぐのヨセフの、あの安定した緊張感がすごく好きです。
「剣の世界」を外側から眺めて、一人の男を選び出す、その気まぐれさと存在の重さ。
そして、物語のキーを握るみきちぐを観ながら、思ったこと。
アーサーを選んだエクスカリバーの守護者は、どんな存在なんでしょうね。……ああいう、脆くて不安定で危なっかしくて、しかも責任感の強すぎる生真面目な人を王に選ぼうと思ったのは。
そして、湖の魔女ヴィヴィアンの クールな上から目線っぷり の素晴らしさ!
美穂さん、8月7日まで宙組東宝に出ていて、10月7日からまた宙組大劇場(ショーのみ)に出てくださるんですよね。その間、わずか2カ月。今夏は「ヴァレンチノ」再演が入ったから宙っ子も半数は仕事してたけど、普通はお休みですよ!!すごい無理して「ランスロット」に出てくださったんだなあ。きっと生田さんが切望したんでしょうけれども(←憶測)、本当に本当に、出てくださってありがとう!!
いやはや、花愛さん(モルゴース)も良かったけど、、、やっぱり美穂さんが素晴らしかったんですよ(感涙)。寧々も良かったけど、ヴィヴィアンは本当に素晴らしい。
歌える子はいても、あの絶妙の存在感が出せる人はあまりいないと思うんですよね。まさに「この世のものならぬ」存在の重み。ランスロットの運命にあれだけ関与していながら、「人の世の運命にに関与はならぬ」とか平気で言いそうな、人間味のなさ。
いやーーーー。美穂さんってすごいなあ……。
モルゴースとモルガンについては前回もちょっと書きましたが。
「ル・フェイ(妖精)」の血統でヴィヴィアンの弟子……なんですよね、モルゴースは。
「魔力」を引き継いだんだか与えたんだかっていう台詞のやりとりもありましたが、この二人(美穂×花愛)のガチンコ勝負を観ながら、この二人の「若い」時代も観てみたいな、と思ったりしました(^ ^)。
そして、マーリン。
冒頭プロローグの、アーサー王との掛け合いにまず持っていかれたのですが。
芝居が始まって少し経ってから、「お妃さまがやってくる♪(意訳)」と歌いながらみんなで踊る場面のセンターで踊っている白髭の魔法使いが、まさかれんただとは露思わず。
……あの独特のちょっと甲高い声を聴くまで、気がつきませんでした(滝汗)。かわいい!かわいいぞれんた!!大好き!
面白いなあと思ったのは、マーリンは“剣の世界”に違和感なく混ざっていたこと。
むしろ、純粋に人間であるはずのアーサーの方が、よっぽど違和感があった。
本来、此処にいるべき存在じゃない、というか。
無理して「王」を演じている、というのとはちょっと違う。無理して「王で在ろうとしている」というのが近いのかも。聖剣エクスカリバーによって否応なく選ばれてしまった、哀れな王。
……やっぱり、前回も書きましたが、小野不由美氏の「十二国記」がかぶってみえる。“麒麟”という人智の外の存在によって選ばれ、不老不死の王(=神)となり、「神の国」へ迎えられる、という設定が。
アーサーの宮殿は「剣の世界」の中にあるんだけど、アーサーはもはやそこにふさわしい存在ではなくなっている。彼は「王」という名の「人ならざるもの」になっている………そんな浮きっぷりが、とても不思議な感覚でした。
シドといい、アーサーといい、みっきぃさんって、ちょっと回りから浮きあがった存在感のある芝居をよくやっていますが、そういうところが生田さんに愛されているのかも…?
マーリンはアーサーに助言(予言)を与える立場。マーリンとアーサー、二人で並ぶと、浮いているのがアーサーなのが面白いな、と。
二幕の後半で、「人の子の運命」と「自分が視る世界」の乖離を説明する台詞がありますが、、、結局、彼(魔法使い)の視る世界を超えていくのは、人ならざる者に選ばれた二人(ランスロットとアーサー)なんだな、と思いました。
ランスロットはあくまでも“剣の世界”にとどまるのに、なぜアーサーはとどまれなかったのか。……それは、彼が「王」という役割を持つ者として選ばれたから、なんでしょうね。アーサー自身はそんなこと全然望んでいないのに。
持たされた(与えられた)責任の重さゆえに、人の世からはみ出してしまったアーサー。
だから、グウィネヴィアは彼に対して「尊敬」以上の関心を抱けなかった。
夫とは棲む世界が違うゆえに、愛することも憎むこともできず、ただランスロットを求めてしまう女心。
アーサーはあんなに素直に恋をしたのに。ランスロットに恋をする、一人の少女に。
いっそ、王妃がアーサーを憎んでいたならば、また話は違っていたんだろうな、なんてことも考えました。アーサーとランスロットがもっと素直に敵になれたら、と。
モルドレッドにつけこまれるのではなく、二人が二人の意志によって対立していたならば。
……いや、生田さんが語りたかった話はそういう話じゃないから、仕方ないんでしょうね……。
アーサーが治める「世界」の中で、グウィネヴィアを抱きしめて生きていたかったランスロット。
自分自身をはじき出した「世界」を治めながら、自分が自分でいられる時間を希求するアーサー。たぶん、グウィネヴィアの傍でならそう在れると思ったんでしょうね。街で見かけたグウィネヴィアが、とても素直で、自然だったから。
でも。彼女を得られるのは自分が「王」だから。
一介の騎士には、彼女は与えられない。
ランスロットを得られたのは、自分が「王」で、「王妃」がグウィネヴィアだから。
一介の王には、彼は得られない。
王妃とランスロット、二人を共に得ることは叶わないと知りながら、アーサーはマーリンの予言に飛びつく。
「聖杯を探す」
それがどんな結果に終わるのか、マーリンに視えぬ未来が、このときアーサーにも視えていたはずなのに。モルドレットという悪意に、つけこまれるまでもなく。
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