ランスロットとアーサー王
2011年8月28日 宝塚(星) コメント (2)宝塚バウホールにて、星組公演「ランスロット」を観劇してまいりました。
作・演出は、新進の生田大和。
とりあえず、叫んでおきます。
生田さんのファンでいて良かった!!
(なんか違わないか?)(いいの事実だから)
私にとって、現時点での2011年中小劇場作品のBest、……少なくとも、「作品」は間違いなくBest1です(^ ^)。
いやあ、これ、東上してほしいなあ。
青年館なら即日完売とかしないだろうし、少し時間をおいて真風くんにもう少し歌をレッスンしてもらって、サウンドホライズン好きの人が気軽に観にこられる環境をつくってみてはどうでしょう。
私は「サウンドホライズン」って名前くらいしか知らなかったけど、そっちから宝塚に流れる人、結構いるんじゃないかなあ。たまたま近くの席にサウンドホライズンのファンの方がいたんですが、幕間も終演後もすごい盛り上がりようで、「オーシャンズ11」を観たい観たいと騒いたんですよね(^ ^)。Revoさんの提供曲は数曲で、あとは太田健さんが構成しているはずなんですが、「サウンドホライズン」の世界観にかなり合致していた、みたいだし、宝塚ファンだけを相手にするんじゃ勿体ないなあ、と思いました。
……いや、あの、「音楽」をキーにして新規を取りこむとなれば、真風くんには死ぬ気で歌を練習していただく必要がありますが(^ ^;ゞ
などという夢咄はおいといて、とりあえず……キャストごとに一言ずつ。
まだ公演も始まったばかりなので、ネタばれしないように書くつもりですが……なかなか難しいなあ(- -;
■湖の騎士ランスロット(真風涼帆)
バウ初主演でこの名作、おめでとうございます!
おっとりと優しくて、ヘタレなランスロット。心は熱いんだけど、ヘタレだからあまり表に出てこない真風くんが大好きな猫としては、なかなかおいしいキャラ設定でした。
水さん似の容姿と声から、なんとなくシャープなイケメン、というイメージを持たれることが多いような気がしますが、真風くんの中身は、本当に「おっとりと優しい」感じがします。
ランスロットは、円卓の騎士団の団長だったり、王妃との恋愛があったりするので、もう少し理知的でシャープなイメージかな、と思っていたのですが、生田さんの描いた等身大のランスロットは、真風くんの本来のキャラをそのまま生かして、とても魅力的でした。
冒頭のオープニングで、湖の魔女ヴィヴィアン(美穂)が、戦乱で母(妃白)と国を喪った少年ランスロット(妃海)に問いかける。
「あなたは何を望むの?この世界に」
「もう、何も喪いたくない……」
それが、希み。
幼い少年が全身全霊をかけて叫ぶ、祈り。
その祈りは正しい。でも、
「……強くなりたい。僕は、強い力がほしい!」
その言葉は間違っている。
それは本当の希みではない。
彼は選択を間違えた。彼の希みは、そんなものではないはず。
なのに、
「ならば、この剣を取りなさい……」
人の運命を紡ぐ湖の魔女は、彼の間違った希みを受け容れる。
そうして、動き出す歯車。運命の車輪は、悲劇への坂を一直線に滑り降りる。
最初の第一歩を間違えていた、ランスロット。
アーサーと出会うよりずっと前から、彼は間違った道を歩んでいた。だからこそ彼は、聖杯に欺かれ、主君を苦しめることになる。
主君アーサーが愛したのは、彼の「力」などではなかったのに。
■ブリテンの若き王アーサー(天寿光希)
素晴らしかった!
そもそもの最初から間違った道を歩んできたランスロット。
今までずっと、「正しき道」を選んできたアーサー。
生田さんが描きたかったのはそんな二人の対比であって、技術的にも芝居の構成的にも、どんだけみっきぃさんを信頼しているのか!?と驚いてしまったほど、比重の高い役でした。
まあ、CSの「Young Power!」で、主演でもないのに生田さんが出てきたときから期待はしてましたけど(^ ^)。
生まれながらの王ではなく、なりたかった王でもなく、人智を超えた存在(エクスカリバー)によって選ばれてしまった、王。この設定は、小野不由美さんの「十二国記」と同じで。このシリーズの王たちと同じ苦しみが、そこにありました。
否応なく与えられてしまった運命を受け容れて、いかに生きるか、という、悩み。
自分は本当にその器なのか?という、痛み。
プロローグでの、魔法使いマーリン(如月蓮)との会話の痛さに、まず泣けました(←早いよ)
「人である前に王であれ」
「王である前に人として生きたい」
王が人を愛してはいけないのなら、自分は王にふさわしくない。
そう応じる王は、本当に人々を、騎士たちを信じて、そして、愛していたのだと思う。
いや、マーリンの戒めは「王は、誰か一人を特別に愛することがあってはならない」ということなのでしょうけれども。それがたとえ王妃であっても、特別な愛を捧げてはならない、と。
それは理屈ではわかっていても、それでも彼はこう応じる。
「愛する心持たぬ王にはなりたくない」
人の心は御せないものだから。
運命のままに、人は出会ってしまうものだから。
それでも、アーサーは最後までマーリンの教えを守ろうとしたのだと思います。
思いがけない街での出会いで、グウィネヴィアに「恋」してしまったことを、隠そうとした。「愛」しているのだ、「王妃を愛して」いるだけだ、と、そう自分にも言い聞かせ、王妃の前でも「王」であらんとした。
「恋」している自分をさらけだすことが、どうしても出来なくて。
……そして、グウィネヴィアには彼の気持ちが判らなかった………。
ランスロットは火のように恋をする男。
グウィネヴィアへの気持ちも、アーサーの描き出す理想への想いも、同じように熱く、濃かったのでしょう。
それに対して、アーサーは穏やかな水。方円の容にしたがい、与えられた運命を受け容れて自分の中で消化し、義務(noblesse oblige)を果たそうとしていた。
その、痛々しいまでの生真面目な頑なさが、ちょうど今まで観てきたみっきぃさんのイメージとかぶって、ストレートに胸が痛みました。
みっきぃさんのお芝居は、前から本当に好きなんですけど。
でもやっぱり、休演からの復帰、そして「ユリウス」という大役での本公演のお芝居……いろんなことがあったこの一年で、別人のように成長したな、としみじみと思いました。
小柄なみっきぃさんが、甲冑に若干埋もれつつ、それでも強烈な光を発して「円卓の騎士」たちをまとめる様子を観ていたら、一回くらいこの人のセンターも観てみたいな、と思ってしまいました。
新人公演もあと一回。まあ、ここまでくれば、どんな役でも輝いてくれるだろうとは思いますが。
ここはやっぱり、ね(^ ^)。ことだま、ことだま。
この物語のテーマは、
自分自身の運命を切り拓くために必要なのは、「強い力」ではなく、「自分の頭で考え、意志をもつこと」
……かな、と思いました。
願ったようには動かせぬ世界。
望んだようにはならない人生。
何が幸いするかなんてわからないし、どこで「正しい道」を踏み外すのかも、人の身ではわかりはしない。
聖杯という奇跡に狂わされたランスロット、
グウィネヴィアへの恋とランスロットへの友愛の狭間で、「正しき道」を踏み外したアーサー。
与えられた奇跡に酔ったランスロットは罰を受け、自らの意志で道を外れたアーサーは救われる。
彼自身が描いた理想が、叶えられる。
それを永遠にできるかどうかは、そこに「生きて」在る者たちにかかっているのだけれども。
ちーくんのヨセフが繰り返しつぶやく、「それは誰が望んだ物語なのか?」という問いかけ。
「希み」を持つ者が物語を動かす。
それはつまり、「理想の世界」という希みを掲げたアーサーこそがこの物語の本当の「タイトルロール」なのだ、ということになるんだと思う。
そして、ランスロットは、アーサーの物語を紡ぐ駒の一つでありたかった。
そうなれなかったのが、彼への罰。そして、ランスロットがそうならなかったことが、アーサーの瑕になる。
……瑕の数だけ、彼は偉大な王になるだろう。それが彼の、希みだから。「愛する心を喪わぬまま、王でありたい」……と。
■隻腕の騎士モルドレッド(芹香斗亜)
出番はほぼ2幕だけでしたが、堂々たる悪役っぷりで、こちらも素晴らしかった!
フィナーレで、真風くんセンターに両脇がみっきぃさんとキキちゃん、なんて図を観たら、涙腺緩みますってば。
去年のスカイフェアリーズですっかり見慣れた可愛らしい笑顔からは想像もできないほど、「悪意」に満ちた芝居のできる数少ない色悪のスペシャリスト……などと、この学年(研5)で言われてしまって良いのかどうかわかりませんが(^ ^;ゞ、実に実に!素晴らしかったです。
ちょっとこの人を語りだすと長くなるしネタばれになるので割愛しますが、事実上、2幕の裏主役だったと言っても大袈裟ではないでしょう(^ ^)。
■魔女の娘モルガン(夢妃杏瑠)
アーサーの先王ユーサーと、森の魔女モルゴース(花愛瑞穂)の間の娘。
ユーサーは、ブリテンを護るために魔女の力を借りようとしたらしく、その代償に、モルゴースの子を王家に入れると約束した。けれども、その約束は反故にされた……らしい。(ユーサーが最初からそのつもりだったのか、約束を果たす前に滅んでしまったのかはよくわかりませんでしたが。どっちなんだろう?)
とにかく、モルゴースは娘に「お前を棄てた父親」「約束を護らなかった父親」への憎しみを植え付けて育て、ブリテン王家への復讐の道具として育てた。
こちらも裏ヒロインとも言うべき存在で、定評のある歌だけでなく、芝居も素晴らしかった!
良い役でしたねえ、ホントに。特に二幕の、ヴィヴィアンとの会話あたりからラストにかけて、すごく良かった!
グウィネヴィアと同じように、「自分の役目」を叩きこまれて育てられた少女でありながら、王妃が運命に流されて漂っているだけなのに対して、“自分の意志で”運命を変えようとする。
彼女が選んだのは、運命の打破。
その先に何も見えていなかったから、運命に勝つことはできなかったけれども。
それでも、彼女が意志を持ったことで、たしかに運命は変った。モルゴースという「母」の嘆き、という形で。
あとはもう、ちーくん(美稀)のヨセフがものすごいキーパーソンだったこととか、
汐月しゅうさんのボールスが、思わずオペラグラスを持つ手が震えたほどイケメンだったこととか、
千寿はるさんのケイがめっちゃ優しい瞳でずっとアーサーを視ていたこととか、
夏樹れいさんのパラミデュースが一人黒塗りにアラブ風の衣装(?)が似合ってて大変素敵だったこととか、
漣レイラさんのライオネルが、ボールスと同じ三つ編みを逆サイドにつけて(ボールスとライオネルは兄弟)紅いマントを翻すところが滅茶苦茶格好良かったとか、
書き始めるとキリがないので、今夜のところはこのあたりで。
あ。
少年ランスロットの妃海風ちゃんは、本当に可愛いし、芝居も良いですね!
「メイちゃんの執事」で気になった子ですが、「ノバ・ボサ・ノバ」でもすごく目についたし、パッとした華があるんだと思います。ぜひ、次の新公あたりで何か役がつきますように!
一年半前の、「Bund Neon-上海-」。
あのとき、一幕で拡げすぎた風呂敷を二幕でたたみきれずに玉砕していた生田さん。
今回も、一幕終わって時計を観たら12:10を過ぎていて。
……ああ、また駄目だったか、と肩を落とした幕間。
しかし!
一年半は一人の若者が成長するには十分な時間であったらしい(^ ^)
聖杯探索を2幕の冒頭3分で終わらせて、モルドレッドの誕生をあっさり終わらせ、すべての伏線を拾い切ってラストまで運んだ末に、フィナーレもしっかり3場面。そこまでをきちんと時間内に収めた手腕は素晴らしかった!
いやもう、ホントに良い作品でした。
星組の若手、技術的に未熟だったりいろいろあっても、キラキラした魅力的な子がいっぱいいるのになかなか使われないなあと思っていたら、ここで一気に来た!という気がしました。
若い座組の「若さ」を前面に出して、「未熟ゆえのすれ違い」をテーマにしたところが、生田さんの傑出したところなんだと思います。
そして、私は生まれて初めて、プログラムの作者言を読んで泣きました(- -;ゞ。
ありえん……どんだけファンなんだ自分。
そうだ、ファンレター書こう!(←そこ!?)(その前にみっきぃさんでしょ!!)
.
作・演出は、新進の生田大和。
とりあえず、叫んでおきます。
生田さんのファンでいて良かった!!
(なんか違わないか?)(いいの事実だから)
私にとって、現時点での2011年中小劇場作品のBest、……少なくとも、「作品」は間違いなくBest1です(^ ^)。
いやあ、これ、東上してほしいなあ。
青年館なら即日完売とかしないだろうし、少し時間をおいて真風くんにもう少し歌をレッスンしてもらって、サウンドホライズン好きの人が気軽に観にこられる環境をつくってみてはどうでしょう。
私は「サウンドホライズン」って名前くらいしか知らなかったけど、そっちから宝塚に流れる人、結構いるんじゃないかなあ。たまたま近くの席にサウンドホライズンのファンの方がいたんですが、幕間も終演後もすごい盛り上がりようで、「オーシャンズ11」を観たい観たいと騒いたんですよね(^ ^)。Revoさんの提供曲は数曲で、あとは太田健さんが構成しているはずなんですが、「サウンドホライズン」の世界観にかなり合致していた、みたいだし、宝塚ファンだけを相手にするんじゃ勿体ないなあ、と思いました。
……いや、あの、「音楽」をキーにして新規を取りこむとなれば、真風くんには死ぬ気で歌を練習していただく必要がありますが(^ ^;ゞ
などという夢咄はおいといて、とりあえず……キャストごとに一言ずつ。
まだ公演も始まったばかりなので、ネタばれしないように書くつもりですが……なかなか難しいなあ(- -;
■湖の騎士ランスロット(真風涼帆)
バウ初主演でこの名作、おめでとうございます!
おっとりと優しくて、ヘタレなランスロット。心は熱いんだけど、ヘタレだからあまり表に出てこない真風くんが大好きな猫としては、なかなかおいしいキャラ設定でした。
水さん似の容姿と声から、なんとなくシャープなイケメン、というイメージを持たれることが多いような気がしますが、真風くんの中身は、本当に「おっとりと優しい」感じがします。
ランスロットは、円卓の騎士団の団長だったり、王妃との恋愛があったりするので、もう少し理知的でシャープなイメージかな、と思っていたのですが、生田さんの描いた等身大のランスロットは、真風くんの本来のキャラをそのまま生かして、とても魅力的でした。
冒頭のオープニングで、湖の魔女ヴィヴィアン(美穂)が、戦乱で母(妃白)と国を喪った少年ランスロット(妃海)に問いかける。
「あなたは何を望むの?この世界に」
「もう、何も喪いたくない……」
それが、希み。
幼い少年が全身全霊をかけて叫ぶ、祈り。
その祈りは正しい。でも、
「……強くなりたい。僕は、強い力がほしい!」
その言葉は間違っている。
それは本当の希みではない。
彼は選択を間違えた。彼の希みは、そんなものではないはず。
なのに、
「ならば、この剣を取りなさい……」
人の運命を紡ぐ湖の魔女は、彼の間違った希みを受け容れる。
そうして、動き出す歯車。運命の車輪は、悲劇への坂を一直線に滑り降りる。
最初の第一歩を間違えていた、ランスロット。
アーサーと出会うよりずっと前から、彼は間違った道を歩んでいた。だからこそ彼は、聖杯に欺かれ、主君を苦しめることになる。
主君アーサーが愛したのは、彼の「力」などではなかったのに。
■ブリテンの若き王アーサー(天寿光希)
素晴らしかった!
そもそもの最初から間違った道を歩んできたランスロット。
今までずっと、「正しき道」を選んできたアーサー。
生田さんが描きたかったのはそんな二人の対比であって、技術的にも芝居の構成的にも、どんだけみっきぃさんを信頼しているのか!?と驚いてしまったほど、比重の高い役でした。
まあ、CSの「Young Power!」で、主演でもないのに生田さんが出てきたときから期待はしてましたけど(^ ^)。
生まれながらの王ではなく、なりたかった王でもなく、人智を超えた存在(エクスカリバー)によって選ばれてしまった、王。この設定は、小野不由美さんの「十二国記」と同じで。このシリーズの王たちと同じ苦しみが、そこにありました。
否応なく与えられてしまった運命を受け容れて、いかに生きるか、という、悩み。
自分は本当にその器なのか?という、痛み。
プロローグでの、魔法使いマーリン(如月蓮)との会話の痛さに、まず泣けました(←早いよ)
「人である前に王であれ」
「王である前に人として生きたい」
王が人を愛してはいけないのなら、自分は王にふさわしくない。
そう応じる王は、本当に人々を、騎士たちを信じて、そして、愛していたのだと思う。
いや、マーリンの戒めは「王は、誰か一人を特別に愛することがあってはならない」ということなのでしょうけれども。それがたとえ王妃であっても、特別な愛を捧げてはならない、と。
それは理屈ではわかっていても、それでも彼はこう応じる。
「愛する心持たぬ王にはなりたくない」
人の心は御せないものだから。
運命のままに、人は出会ってしまうものだから。
それでも、アーサーは最後までマーリンの教えを守ろうとしたのだと思います。
思いがけない街での出会いで、グウィネヴィアに「恋」してしまったことを、隠そうとした。「愛」しているのだ、「王妃を愛して」いるだけだ、と、そう自分にも言い聞かせ、王妃の前でも「王」であらんとした。
「恋」している自分をさらけだすことが、どうしても出来なくて。
……そして、グウィネヴィアには彼の気持ちが判らなかった………。
ランスロットは火のように恋をする男。
グウィネヴィアへの気持ちも、アーサーの描き出す理想への想いも、同じように熱く、濃かったのでしょう。
それに対して、アーサーは穏やかな水。方円の容にしたがい、与えられた運命を受け容れて自分の中で消化し、義務(noblesse oblige)を果たそうとしていた。
その、痛々しいまでの生真面目な頑なさが、ちょうど今まで観てきたみっきぃさんのイメージとかぶって、ストレートに胸が痛みました。
みっきぃさんのお芝居は、前から本当に好きなんですけど。
でもやっぱり、休演からの復帰、そして「ユリウス」という大役での本公演のお芝居……いろんなことがあったこの一年で、別人のように成長したな、としみじみと思いました。
小柄なみっきぃさんが、甲冑に若干埋もれつつ、それでも強烈な光を発して「円卓の騎士」たちをまとめる様子を観ていたら、一回くらいこの人のセンターも観てみたいな、と思ってしまいました。
新人公演もあと一回。まあ、ここまでくれば、どんな役でも輝いてくれるだろうとは思いますが。
ここはやっぱり、ね(^ ^)。ことだま、ことだま。
この物語のテーマは、
自分自身の運命を切り拓くために必要なのは、「強い力」ではなく、「自分の頭で考え、意志をもつこと」
……かな、と思いました。
願ったようには動かせぬ世界。
望んだようにはならない人生。
何が幸いするかなんてわからないし、どこで「正しい道」を踏み外すのかも、人の身ではわかりはしない。
聖杯という奇跡に狂わされたランスロット、
グウィネヴィアへの恋とランスロットへの友愛の狭間で、「正しき道」を踏み外したアーサー。
与えられた奇跡に酔ったランスロットは罰を受け、自らの意志で道を外れたアーサーは救われる。
彼自身が描いた理想が、叶えられる。
それを永遠にできるかどうかは、そこに「生きて」在る者たちにかかっているのだけれども。
ちーくんのヨセフが繰り返しつぶやく、「それは誰が望んだ物語なのか?」という問いかけ。
「希み」を持つ者が物語を動かす。
それはつまり、「理想の世界」という希みを掲げたアーサーこそがこの物語の本当の「タイトルロール」なのだ、ということになるんだと思う。
そして、ランスロットは、アーサーの物語を紡ぐ駒の一つでありたかった。
そうなれなかったのが、彼への罰。そして、ランスロットがそうならなかったことが、アーサーの瑕になる。
……瑕の数だけ、彼は偉大な王になるだろう。それが彼の、希みだから。「愛する心を喪わぬまま、王でありたい」……と。
■隻腕の騎士モルドレッド(芹香斗亜)
出番はほぼ2幕だけでしたが、堂々たる悪役っぷりで、こちらも素晴らしかった!
フィナーレで、真風くんセンターに両脇がみっきぃさんとキキちゃん、なんて図を観たら、涙腺緩みますってば。
去年のスカイフェアリーズですっかり見慣れた可愛らしい笑顔からは想像もできないほど、「悪意」に満ちた芝居のできる数少ない色悪のスペシャリスト……などと、この学年(研5)で言われてしまって良いのかどうかわかりませんが(^ ^;ゞ、実に実に!素晴らしかったです。
ちょっとこの人を語りだすと長くなるしネタばれになるので割愛しますが、事実上、2幕の裏主役だったと言っても大袈裟ではないでしょう(^ ^)。
■魔女の娘モルガン(夢妃杏瑠)
アーサーの先王ユーサーと、森の魔女モルゴース(花愛瑞穂)の間の娘。
ユーサーは、ブリテンを護るために魔女の力を借りようとしたらしく、その代償に、モルゴースの子を王家に入れると約束した。けれども、その約束は反故にされた……らしい。(ユーサーが最初からそのつもりだったのか、約束を果たす前に滅んでしまったのかはよくわかりませんでしたが。どっちなんだろう?)
とにかく、モルゴースは娘に「お前を棄てた父親」「約束を護らなかった父親」への憎しみを植え付けて育て、ブリテン王家への復讐の道具として育てた。
こちらも裏ヒロインとも言うべき存在で、定評のある歌だけでなく、芝居も素晴らしかった!
良い役でしたねえ、ホントに。特に二幕の、ヴィヴィアンとの会話あたりからラストにかけて、すごく良かった!
グウィネヴィアと同じように、「自分の役目」を叩きこまれて育てられた少女でありながら、王妃が運命に流されて漂っているだけなのに対して、“自分の意志で”運命を変えようとする。
彼女が選んだのは、運命の打破。
その先に何も見えていなかったから、運命に勝つことはできなかったけれども。
それでも、彼女が意志を持ったことで、たしかに運命は変った。モルゴースという「母」の嘆き、という形で。
あとはもう、ちーくん(美稀)のヨセフがものすごいキーパーソンだったこととか、
汐月しゅうさんのボールスが、思わずオペラグラスを持つ手が震えたほどイケメンだったこととか、
千寿はるさんのケイがめっちゃ優しい瞳でずっとアーサーを視ていたこととか、
夏樹れいさんのパラミデュースが一人黒塗りにアラブ風の衣装(?)が似合ってて大変素敵だったこととか、
漣レイラさんのライオネルが、ボールスと同じ三つ編みを逆サイドにつけて(ボールスとライオネルは兄弟)紅いマントを翻すところが滅茶苦茶格好良かったとか、
書き始めるとキリがないので、今夜のところはこのあたりで。
あ。
少年ランスロットの妃海風ちゃんは、本当に可愛いし、芝居も良いですね!
「メイちゃんの執事」で気になった子ですが、「ノバ・ボサ・ノバ」でもすごく目についたし、パッとした華があるんだと思います。ぜひ、次の新公あたりで何か役がつきますように!
一年半前の、「Bund Neon-上海-」。
あのとき、一幕で拡げすぎた風呂敷を二幕でたたみきれずに玉砕していた生田さん。
今回も、一幕終わって時計を観たら12:10を過ぎていて。
……ああ、また駄目だったか、と肩を落とした幕間。
しかし!
一年半は一人の若者が成長するには十分な時間であったらしい(^ ^)
聖杯探索を2幕の冒頭3分で終わらせて、モルドレッドの誕生をあっさり終わらせ、すべての伏線を拾い切ってラストまで運んだ末に、フィナーレもしっかり3場面。そこまでをきちんと時間内に収めた手腕は素晴らしかった!
いやもう、ホントに良い作品でした。
星組の若手、技術的に未熟だったりいろいろあっても、キラキラした魅力的な子がいっぱいいるのになかなか使われないなあと思っていたら、ここで一気に来た!という気がしました。
若い座組の「若さ」を前面に出して、「未熟ゆえのすれ違い」をテーマにしたところが、生田さんの傑出したところなんだと思います。
そして、私は生まれて初めて、プログラムの作者言を読んで泣きました(- -;ゞ。
ありえん……どんだけファンなんだ自分。
そうだ、ファンレター書こう!(←そこ!?)(その前にみっきぃさんでしょ!!)
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コメント
すごく嬉しいです★
昨年の「Bund Neon-上海-」以来生田先生大好きなので雪組の初日を捨てて
「ランスロット」観劇にした甲斐がありました~
ひろ香さんとかちゃんと復帰してましたか?
「サウンドホライズン」って全然知らなかったので、今回Revoさんの提供曲というのを知ってぐぐったくらいなの。
でもでもすごく楽しみになってきました♪
雪組公演も、なんかさいとう先生爆裂☆らしく想像するとドキドキして恐いくらいなんですが(笑)
楽しみです。あとはこだまっちだけが不安だなぁ・・・
> みっきぃさんが出てるから
いやいや、出演者が発表される前から、遠征することは決定してましたよ(^ ^)。
「BUND NEON」だって、特にお目当ての誰かが出ていたわけじゃないのに宙組公演中に行ったくらいですし、普通に生田ファンなので。
もちろん、みっきぃさんが出る、しかもアーサー王!?と情報が出るたびに狂喜乱舞はしてましたけど(*^ ^*)
> 雪組の初日を捨てて「ランスロット」観劇にした甲斐がありました~
あら、そちらでしたか。初日は外せないだろうから、3日かな?と思っていたのですが。
ご覧になったら感想聞かせてください!
> ひろ香さんとかちゃんと復帰してましたか?
してましたよ!お髭をつけて、男前でした(*^ ^*)。重たそうな甲冑をつけていたけど、ちゃんと踊っていたのでホッとしました(^ ^)。
> でもでもすごく楽しみになってきました♪
あくまでも「私はとても好き!」という個人的な感想ですので、あんまり期待しすぎないでくださいね。中二なのは間違いないので(^ ^;
> 雪組公演も、なんかさいとう先生爆裂☆らしく想像するとドキドキして恐いくらいなんですが(笑)
おおー!期待大、だわ!こだまっちも、、、あまり奇をてらわず、素直ーに作ってくれるといいんですけどね。