東京宝塚劇場にて、花組公演「ファントム」を観劇してまいりました。
とりあえず、Aパターン(ショレ=愛音、セルジョ=華形、シャンドン=朝夏)でした。
蘭寿さん、東京でのお披露目おめでとうございます!!の気持ちを拍手に籠めて。
大劇場でも観たんですが、東宝で、あらためて思ったこと。
蘭トムさんのエリックは、天使のようでした。
「カサブランカ」のヴィクター・ラズロについて語ったときも書いたと思うんですが。
私にとって蘭トムさんって、すっごく格好良いしダンスは素敵だし歌もちゃんと歌えるし……だけど、なんていうか、リアリティのない役者なんですよね。
湿り気がない、というか。あくまでもアメリカン・ヒーローで、すごく前向きで、いつだってポジティヴで。
現世の塵芥にまみれたことのないひと、というイメージがあるんです。
そのキャラクターで、なぜお披露目がエリックなんだろう?と思っていたのですが。
観てみて、なんとなく納得しました。
エリック=天使って、演出的にありだったんだな、と。
カーンと響く、金管楽器系の声質が、軽やかで明るいオケの音(指揮:塩田明弘)との相性も良くて。数々の演出変更がいい方向に作用して、重厚なゴシックロマンから、現代的な作品に生まれ変わった「ファントム」。
とても興味深く、面白かったです。
演出は今まで通り中村一徳さんですが、全面的な振付変更による従者たちのクローズアップといい、数々のセットの変更といい、ちょっとした人の動かし方といい、なんだか今までとは全然意がう印象を受けたところがたくさんありました。
今まで、「ファントム」という作品は音楽は大好きだけど演出がイマイチ、と思うことが多くて、あまり嵌っていなかったのですが、今回は嵌りそうです(^ ^)
中村さんも三回目の上演でいろいろお考えになった部分もあるでしょうし、演出助手さんが新しい感性で手伝った部分もあるんでしょうね、きっと。ちなみに演出助手は、新公を担当した田渕さんと、もう一人、生田大和さんのお名前が入っています。田渕さんも新公を観るかぎり才能ありそうですし、生田さんの才能については私はとってもとっても期待しているわけで(^ ^)。いや、なかなかに羨ましい布陣です。
……お披露目はやっぱり、劇団側も精一杯のスタッフを揃えてくれるんでしょうか(^ ^)。
蘭トムさんのエリックが「現実」を生きていない天使だなあと思ったところはいろいろあったんですが。
あらためて東宝で観て、一番印象に残ったのは「My Mother Bore Me」でした。
「My True Love」を歌ってくれたクリスティーヌに逃げられてしまったのに、絶望しないエリック。
新公の(鳳)真由ちゃんの「My Mother Bore Me」の歌い方がちょっと中途半端だなあと感じていたのですが、そうか!と思いました。
本公演は全く絶望していないから、ああいう歌い方になるのも当然なんですけど、新公は、エリックの解釈が全く違うのに歌い方だけ引き継いでいたから、なんか違和感あったんだな、と思いました。
蘭寿さんのエリックなら、あそこはあのくらい希望に溢れて歌うのが当然で、全く違和感はなくて。あの場面のエリックの確信が強く、そして深ければ深いほど、何もせずに地下へ戻ることができずに、クリスティーヌの姿を視た途端に飛び出してしまうエリックに納得もできて。
なるほど………。
そしてもう一つ、印象的だった変更点(というか、キャラクターの違い)。
今回のクリスティーヌは、フィリップに恋してますよね?
ビストロの後のデートシーン。
「ごめんなさいフィリップ。私はなんだか混乱しているの」
という、クリスティーヌのソロ。
……今まで、宙組版でも花組版でも、ここはクリスティーヌは別にフィリップのことはどうも思ってないのよ、今はちょっと舞い上がって混乱しているだけなの、という場面だと思っていたのですが。
今回に限っては、その次の
「優しいあなたに見守られて歌いたい」「恋に落ちた、そんな気持ち♪」
というフレーズに意味がある、ように見えました。
この場面のラストに、シャンドン伯爵の御者が来るのは以前のバージョンも同じだったのでしょうか?(←覚えてない)
そこのちょっとしたやり取りを見て、すごく二人(クリスティーヌとフィリップ)の心が近い感じがしたんですが。
そして、それと同時くらいに上手から登場するエリック。
まず、仮面を着けただけで、ふつーに花束持ってあらわれるのがとっても好きです。初演宙組の、電話ボックスみたいなセットがぐるっと回るとあらわれるのがすごく不思議だったので(^ ^;。
で。
御者を追うように、仲良く走っていくフィリップとクリスティーヌ。
それを切ない瞳で見送って、新曲「If She Loves Him」を歌うエリック。
ああ、そうなんだ。クリスティーヌは、フィリップを愛しているという設定なのか、と。
エリックに対する気持ちは、「先生」に対する感謝と信頼と、そして、「天使のような美少年」に対する憧れまじりの母性愛、それだけなのか、と。
初演の宙組版を観た時は、クリスティーヌは最初からエリックしか見えていなくて、フィリップがいくらアピールしても眼中にない!という感じでしたし、前回の花組は、そもそもエリックが愛したのはクリスティーヌの声であってクリスティーヌではない、という気がしていました。
でも、今回は違う。
クリスティーヌは、はっきりとフィリップに恋をしている。
ロイド=ウェッバー版の「オペラ座の怪人」のクリスティーヌが、ファントムに「父親」を視ていたような意味で、コーピット版のクリスティーヌがエリックに視るのは、最初は「先生」であり、そして、素顔を知った後では「ピュアな美少年」だった……のだ、と。
絶望しない、「前向き」で「ポジティヴ」なエリック。
エリックに感謝はしても「恋」はしない、現実的なクリスティーヌ。
そして、典型的なヒーロー像の一つとしての「貴族の御曹司」、フィリップ。
私が本公演を最初に観たのは、大劇場の新人公演の日の昼公演で、まぁくんのフィリップだったのですが。
その時はそんなふうには思わなかったんですよね。
フィリップがもっと可愛くて、ふわふわしてて、、、なんというか、エリックと「対等」には視えなかったから、なんでしょうか。
フィリップ単体では若々しくて美形で歌がうまくて、良いなあ…と思っても、やはりフィリップ役には「エリックと対等の存在感」がないと駄目なんだなあ……、と。
とはいいつつ、まぁくんのフィリップも決して悪くはなかったので、東宝でのBパターン観劇を楽しみにしているのですが(^ ^)。
とりあえずは、そんなところでしょうか。
蘭ちゃんは、大劇場で最後に観た時が一番良かったなーー……がんばれーっ!!蘭ちゃんはやればできる!だって大劇場で出来てたんだから!!
蘭ちゃんのクリスティーヌ、私はとても好きです。可愛くてピュアで幼くて、なのに母性がある芝居は、「クリスティーヌ」という役にとっても嵌っていると思う。
これで、歌がもうちょっとだけ安定しさえすれば!!!
……祈。
最後に、新人公演の感想としてエリックのことを書いたページにリンクさせていただきます。
案外ちゃんとエリック論(?)を展開しようとしてたんだな、私。
http://80646.diarynote.jp/201107140301062952/
で。この感想の中で、真由ちゃんの「My Mother Bore Me」について語っていることは、どうぞ忘れてください(汗)。
「演出」と「解釈」の狭間で迷子になっているだけで、技術的な問題ではなかったようですものねっ(^ ^;ゞ
.
とりあえず、Aパターン(ショレ=愛音、セルジョ=華形、シャンドン=朝夏)でした。
蘭寿さん、東京でのお披露目おめでとうございます!!の気持ちを拍手に籠めて。
大劇場でも観たんですが、東宝で、あらためて思ったこと。
蘭トムさんのエリックは、天使のようでした。
「カサブランカ」のヴィクター・ラズロについて語ったときも書いたと思うんですが。
私にとって蘭トムさんって、すっごく格好良いしダンスは素敵だし歌もちゃんと歌えるし……だけど、なんていうか、リアリティのない役者なんですよね。
湿り気がない、というか。あくまでもアメリカン・ヒーローで、すごく前向きで、いつだってポジティヴで。
現世の塵芥にまみれたことのないひと、というイメージがあるんです。
そのキャラクターで、なぜお披露目がエリックなんだろう?と思っていたのですが。
観てみて、なんとなく納得しました。
エリック=天使って、演出的にありだったんだな、と。
カーンと響く、金管楽器系の声質が、軽やかで明るいオケの音(指揮:塩田明弘)との相性も良くて。数々の演出変更がいい方向に作用して、重厚なゴシックロマンから、現代的な作品に生まれ変わった「ファントム」。
とても興味深く、面白かったです。
演出は今まで通り中村一徳さんですが、全面的な振付変更による従者たちのクローズアップといい、数々のセットの変更といい、ちょっとした人の動かし方といい、なんだか今までとは全然意がう印象を受けたところがたくさんありました。
今まで、「ファントム」という作品は音楽は大好きだけど演出がイマイチ、と思うことが多くて、あまり嵌っていなかったのですが、今回は嵌りそうです(^ ^)
中村さんも三回目の上演でいろいろお考えになった部分もあるでしょうし、演出助手さんが新しい感性で手伝った部分もあるんでしょうね、きっと。ちなみに演出助手は、新公を担当した田渕さんと、もう一人、生田大和さんのお名前が入っています。田渕さんも新公を観るかぎり才能ありそうですし、生田さんの才能については私はとってもとっても期待しているわけで(^ ^)。いや、なかなかに羨ましい布陣です。
……お披露目はやっぱり、劇団側も精一杯のスタッフを揃えてくれるんでしょうか(^ ^)。
蘭トムさんのエリックが「現実」を生きていない天使だなあと思ったところはいろいろあったんですが。
あらためて東宝で観て、一番印象に残ったのは「My Mother Bore Me」でした。
「My True Love」を歌ってくれたクリスティーヌに逃げられてしまったのに、絶望しないエリック。
新公の(鳳)真由ちゃんの「My Mother Bore Me」の歌い方がちょっと中途半端だなあと感じていたのですが、そうか!と思いました。
本公演は全く絶望していないから、ああいう歌い方になるのも当然なんですけど、新公は、エリックの解釈が全く違うのに歌い方だけ引き継いでいたから、なんか違和感あったんだな、と思いました。
蘭寿さんのエリックなら、あそこはあのくらい希望に溢れて歌うのが当然で、全く違和感はなくて。あの場面のエリックの確信が強く、そして深ければ深いほど、何もせずに地下へ戻ることができずに、クリスティーヌの姿を視た途端に飛び出してしまうエリックに納得もできて。
なるほど………。
そしてもう一つ、印象的だった変更点(というか、キャラクターの違い)。
今回のクリスティーヌは、フィリップに恋してますよね?
ビストロの後のデートシーン。
「ごめんなさいフィリップ。私はなんだか混乱しているの」
という、クリスティーヌのソロ。
……今まで、宙組版でも花組版でも、ここはクリスティーヌは別にフィリップのことはどうも思ってないのよ、今はちょっと舞い上がって混乱しているだけなの、という場面だと思っていたのですが。
今回に限っては、その次の
「優しいあなたに見守られて歌いたい」「恋に落ちた、そんな気持ち♪」
というフレーズに意味がある、ように見えました。
この場面のラストに、シャンドン伯爵の御者が来るのは以前のバージョンも同じだったのでしょうか?(←覚えてない)
そこのちょっとしたやり取りを見て、すごく二人(クリスティーヌとフィリップ)の心が近い感じがしたんですが。
そして、それと同時くらいに上手から登場するエリック。
まず、仮面を着けただけで、ふつーに花束持ってあらわれるのがとっても好きです。初演宙組の、電話ボックスみたいなセットがぐるっと回るとあらわれるのがすごく不思議だったので(^ ^;。
で。
御者を追うように、仲良く走っていくフィリップとクリスティーヌ。
それを切ない瞳で見送って、新曲「If She Loves Him」を歌うエリック。
ああ、そうなんだ。クリスティーヌは、フィリップを愛しているという設定なのか、と。
エリックに対する気持ちは、「先生」に対する感謝と信頼と、そして、「天使のような美少年」に対する憧れまじりの母性愛、それだけなのか、と。
初演の宙組版を観た時は、クリスティーヌは最初からエリックしか見えていなくて、フィリップがいくらアピールしても眼中にない!という感じでしたし、前回の花組は、そもそもエリックが愛したのはクリスティーヌの声であってクリスティーヌではない、という気がしていました。
でも、今回は違う。
クリスティーヌは、はっきりとフィリップに恋をしている。
ロイド=ウェッバー版の「オペラ座の怪人」のクリスティーヌが、ファントムに「父親」を視ていたような意味で、コーピット版のクリスティーヌがエリックに視るのは、最初は「先生」であり、そして、素顔を知った後では「ピュアな美少年」だった……のだ、と。
絶望しない、「前向き」で「ポジティヴ」なエリック。
エリックに感謝はしても「恋」はしない、現実的なクリスティーヌ。
そして、典型的なヒーロー像の一つとしての「貴族の御曹司」、フィリップ。
私が本公演を最初に観たのは、大劇場の新人公演の日の昼公演で、まぁくんのフィリップだったのですが。
その時はそんなふうには思わなかったんですよね。
フィリップがもっと可愛くて、ふわふわしてて、、、なんというか、エリックと「対等」には視えなかったから、なんでしょうか。
フィリップ単体では若々しくて美形で歌がうまくて、良いなあ…と思っても、やはりフィリップ役には「エリックと対等の存在感」がないと駄目なんだなあ……、と。
とはいいつつ、まぁくんのフィリップも決して悪くはなかったので、東宝でのBパターン観劇を楽しみにしているのですが(^ ^)。
とりあえずは、そんなところでしょうか。
蘭ちゃんは、大劇場で最後に観た時が一番良かったなーー……がんばれーっ!!蘭ちゃんはやればできる!だって大劇場で出来てたんだから!!
蘭ちゃんのクリスティーヌ、私はとても好きです。可愛くてピュアで幼くて、なのに母性がある芝居は、「クリスティーヌ」という役にとっても嵌っていると思う。
これで、歌がもうちょっとだけ安定しさえすれば!!!
……祈。
最後に、新人公演の感想としてエリックのことを書いたページにリンクさせていただきます。
案外ちゃんとエリック論(?)を展開しようとしてたんだな、私。
http://80646.diarynote.jp/201107140301062952/
で。この感想の中で、真由ちゃんの「My Mother Bore Me」について語っていることは、どうぞ忘れてください(汗)。
「演出」と「解釈」の狭間で迷子になっているだけで、技術的な問題ではなかったようですものねっ(^ ^;ゞ
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コメント
こんな1ヶ月以上経ってコメントつけてごめんなさい。
千秋楽の少し前に1回だけ観た時の目から鱗状態の感想をどこかに書きたいと思って、ここにつけてみました。
いやあ、ファントムってこんな話だったんけ?と頭の中が?でいっぱいになっちゃって、帰ってから撮ってあった花の新人公演見直ししまいました(笑)。ふみかのキャリエールとさーやのカルロッタが気に入って、残してあってよかったと思いました。このときの新公でやった役を今回本役でやっている人も多いのですね。
さて、みつきねこさんの感想を見て予習していったのですが、予想以上にまゆさんファントムは無垢な魂を持った子供でした(笑)
蘭ちゃんは本当にファントムを包み込むような慈愛に満ちていて、壮くんもナイスガイね!一花のヒールクイーンぶり、みわっちのきらきら王子様・・・私は従者チェックが忙しかったですが(笑)。
生ファントムは初めてだったのですが、今までの音楽は素敵だけど・・・という感想が一新されて初めて共感出来ました。まゆさんの解釈が私に合ってたのかもしれませんね。
時間があったらもう一回見たかったです。
それでは・・・
こんばんは。昨日コメントいただいたのに、見落としてしまって申し訳ございません。
本当は楽翌日の12日に最後に花組公演の話を書いて終わろうと思っていたのに、仕事が厳しすぎてのびのびになってしまっています……探していただいてしまってすみません(汗)
> 予想以上にまゆさんファントムは無垢な魂を持った子供でした(笑)
ですよねっっっ!!
> 私は従者チェックが忙しかったですが(笑)。
私もですー(^ ^)。
> 今までの音楽は素敵だけど・・・という感想が一新されて初めて共感出来ました。まゆさんの解釈が私に合ってたのかもしれませんね。
私も同じ気持ちです。
単純に見慣れたのかな、それとも、演出がずいぶん変わっていたせいかかな、、、、などと考えてますが、やっぱり出演者が好きっていうのは無条件にあるような気がしますね(^ ^)