昨日書こうと思っていたのにすっかり忘れていた、あの日・あの時・みつきねこ。

10年前の、2001年7月12日。
この日は、大空祐飛ディナーショー「Selfish」の二日目。
私は、確か午後半日休みを取って、新幹線に乗って新阪急ホテルに向かったのでした。

……昨日、新公を観るために新幹線に乗りながら、10年前のことをしみじみと思い出しておりました(^ ^)。
Selfishか、何もかもみな懐かしい……。




というわけで、花組新人公演「ファントム」。

他の方々について語る前に、とりあえずエリック(鳳真由)とキャリエール(真瀬はるか)について吐き出しておきたいと思います。



まずは、真由ちゃんのエリック。

今までにも何度か書いていますが、私は、真由ちゃんのお芝居が大好きなんですよね。
なんていうか、すごく嵌るんです。毎回(^ ^)。
いろんな役を演じていると思うのですが、新公でもバウでも、何をやっても真摯で純粋で生真面目で、そして、闇を表現することのできる稀有な人だな、と感心します。

技術的にはいろいろ甘い点もあったのですが、今回は本当に、第一声の「僕の叫びをきいてくれ」から引き込まれました。男役の声になったなあ……。
正直、真由ちゃんのお芝居はすごく好きだけど、凜音ちゃんと真瀬くんにはさまれてエリックを演じるのはプレッシャーだろうなと思っていたんですが。そんな、ある意味下世話な同情なんてアッサリとはね返した真由ちゃんのポテンシャルに、一番感動したのかもしれません。


本役の蘭トムさんは、どちらかといえば硬い音質で、高音域を得意とする“テノール”。それに対して、中音域の柔らかさが特徴の真由ちゃんの“テノール”。
どちらもとても良かったです。音域的には蘭トムさんの方が合ってたけど、真由ちゃんの声はとにかく好きなので、芝居歌としてはOKだと思ったし。

数あるエリックのソロの中でも、新公で一番好きだったのは「Home」ですね。絶望の中に射した一筋の光に縋りつくエリックの微笑みがとても綺麗で、目に沁みました。そして、蘭トムさんのエリックで一番好きだったのが、ビストロの後のソロ(新曲)だったので、新人公演では場面ごとカットされていたのをとても残念に思いました。

惜しかったのは、銀橋の「My Mother Bore Me」かなー。まだ歌を崩す技術がないせいか、“ちゃんと歌う”ことを意識して芝居が抑え気味になっていたような気がします。凜音ちゃんの「My True Love」から慟哭に至るまでの芝居がすごく良かっただけに、銀橋の歌のしっかりぶりがアンバランスに聴こえました。
感情に任せて歌がおろそかになってはいけないけど、やっぱりああいうのは歌を崩す技術というか、歌唱力的な余裕がないと難しいと思うので、そのあたりは課題にして東京に向けて取り組んでもらえたらいいな、と思います。



そして、歌というより芝居でぐっと来たのは、クリスティーヌに「僕の……領土を、ね」と言う迷いのない笑顔と、父子銀橋で「おとうさん、と…」と呼びかけるフレーズでふるっと震えた、切ない声。

あの「You Are My Own」を聴きながら、真由ちゃんのエリックは、キャリエールを憎んでいたのかもしれない、と思いました。
心のどこかは彼が父親だと気付いて、愛していたから。だからこそ、愛を返してくれない彼を、恨んでいたんじゃないか、と。あの瞬間までは。

最初にキャリエールが解任されたと知った時の、「僕もここを出て行くよ」という口調に籠められた自嘲。
キャリエールに対する、べたべたと甘えたような、なのにどこか距離を感じる口調。

あれやこれやと我侭放題に命じながら、エリックの中には甘えと憎しみがあったんだと思うのです。
父親であると知っていたかどうかはともかくとして、キャリエールはエリックにとって「保護者」であり、そして「先生」でもあったのだろうから。頼りたいけど、信じたいけど、母親のように無償の愛を与えてくれるわけではなく、義務として世話してくれるだけ、親切なだけ。……そんなキャリエールへの苛立ちと、母の象徴としての「天使の歌声」へ寄せる思い。そのバランスが取れなくなってしまったエリックが、最後にキャリエールを許して、クリスティーヌに許される物語だったんだな、と思ったのでした……。

……この作品も宙組、花組、大沢版と観ていますが、そんなふうに思ったのは初めてでした。
でも、ある意味すごく納得したんですけどね。
みなさんはどう思われているのかなあ、あの親子。



真由ちゃんのエリックは、闇に閉ざされた世界でしか生きられない自分を自覚している少年だったと思います。
外の世界の美しさをよく知っていながら、すべてを諦めて、キャリエールによって与えられた「闇」と、従者たちによって与えられた「森」で生きることを選んだ、少年。
その潔さと、ひどく歪んだ純粋さ。そして、少年らしい繊細な優しさと残酷さ。

美しいものを愛する彼だから、醜いものには容赦がない。
そして、彼にとってのキャリエールは、「醜いもの」だったのかもしれない、と。
……なんだかうまく表現できていませんが、そんなようなことをずっと考えています。



そして、そんな真由ちゃんのエリックに対峙する、真瀬くんのキャリエール。

この人の歌は、何を聴いても、その度に瞠目してしまいます。
歌えるってことは知ってる。巧いってことも知ってる。だから、きっとこのくらいのレベルまで行っちゃうよね!……そんな予測を、毎回毎回軽々と飛び越えていってしまうんですよね。
すっごいハードル上げてたつもりなのに、まだ飛ぶか!?みたいな。

「でも、声は良いだろう?」「ああ、とてもよい」という会話を聴きながら、いや、君の声が一番だよと思ってしまった……(←贔屓耳すぎる)
倍音の多い豊かな声。今回は年配の役ということを意識して、会話もゆったりと、声も豊かな声で話すように、すごく気をつけていたと思います。そういう細かい技術面に目を届かせる余裕があるのがすごいな、と。
相変わらず出だしの低音には苦戦していましたが、あの学年であのくらい出れば十分かなあ。
まあ、真瀬くんの最大の武器はやっぱり歌だと思うので、そこは研鑽をお願いしたいところだけど(^ ^)、でも彼女には、武器を磨く前にまず身を守る(盾を持つ)ことを優先してやってほしいので……

真瀬くんにとっての「身を守る盾」は……やっぱりビジュアル、特に今回の場合は衣装の着こなし!!ですね。特に、「Eric Story」の銀橋。パーティーに行くためにまぁくんの衣装を借りた胡青年(Bund Neon-上海-より)みたいだったよ(T T)。胡青年は可愛くて良かったけど、キャリエールが可愛くても意味ないから!!そんなキャリエールは駄目だから!!

キャリエールは有能な支配人で、大人で、団員たちにも人気と信頼を寄せられる魅力的な男。
ちょっと枯れてるくらいなら良いけど、やっぱり二枚目につくってほしいんですよね。オペラ座の支配人って、地位も知名度もとっても高い存在なんだから。
アラン・ショレ(輝良まさと)と並んだときに、「やっぱrキャリエールがいいよね」と思わせるモノが必要だと思うんですよ。小柄なのは構わないけど、可愛くなってしまうのは役的に問題かな、と。
押し出しでもいいし、着こなしでもいい。とにかく、パッと目に入るオーラがほしいんですよ。

そういう意味では、真瀬くんはやっぱり歌ってナンボなところがあって、、、芝居も良いものを持っているんですけど、ああいう役はしばらく苦労しそうだなあ、という気がしました。
一時期を考えればだいぶ痩せたし、そういう(ビジュアル)面でも努力しているんでしょうけれども、ああいう風に、衣装に完全に着られてしまうのは大きな課題かなあ、と。
骨格的に壮ちゃんの衣装を着るのは厳しいでしょうし、たかが新公のためにどこまで手を入れて貰えるのかわからないけど、たとえば、どうしても身体に合わないから違う衣装でやらせてもらえないか交渉するとか、、、?ううむ、難しいか。(玉砕)


……ま、ビジュアルにはいろいろ言いたいことがありつつも、キャリエールという役をしっかり生きていたのはさすがだな、と思いました。
やり過ぎず、引きすぎず、作品にとって、そして真由ちゃんにとって一番いい立ち位置というのをちゃんと考えたんだろうなあ、と思えた役づくりでした。


息子の声を愛して、息子を愛して、、、でも、何もしてやれず、ただ仮面と闇を与えることしかできない無力な自分を、一番憎んでいたのはキャリエールなのだと思う。
だから彼は、息子の憎しみを甘んじて受ける。名乗りもあげずに。

名乗るつもりなどなかった。エリックがそれを望まないと思っていた。
なのに、撃たれた息子を抱きしめてあげくて、たまらなくて。
銀橋の上で息子に向かって伸ばされた手に、そんなことを思いました。

大きな目に涙を浮かべて、震える声で「おとうさん」と呼びかけるエリック。
目を見開いて、そして、怯えたように逸らすジェラルド。

この場面、ずっと父親が息子に愛を告白する場面(真顔)だと思っていたのですが。
息子が父親を許す場面んだったのか、と。

許された父親が、許された腕で息子を抱きしめる。
許すことで愛を得た息子が、その手で父親を抱きしめる。

エリックは、父の愛を受け容れたことで成長し、クリスティーヌへの気持ちを再確認する。
クリスティーヌの姿を見て、自分の身体も顧みずに突っ込んで行ってしまうほどに。
そんな息子を心配する父親の、切ない「エリック、エリック……!」という悲鳴。
鎖に囚われたエリック。
息子の望みを叶えた父親。
そして、息子の愛を受け容れた、「母親」としてのクリスティーヌ。


長い沈黙の時を経て、やっと許され、その手に掻き抱いた息子。それを喪った……自らの手で壊した父親が、あっさりと壊れてしまうのが真瀬らしい解釈だな、と思いました。
“崩壊”の表現方法はもう少し違うものを考えた方がいいと思うんだけど、背中で泣くのではなく、完全に壊れるキャリエール、という視点でちゃんと最初から人物像が構築されていたのがすごいな、と思いました。

闇を抱いた真由ちゃんのエリックと、闇ごと息子を愛そうとしたジェラルド。
これから良いコンビになりそうなんだけど、な(^ ^)。



そんなわけで。
ちょっと妄想が入っているかもしれませんが、私の眼から「ファントム」という作品に関する鱗が落ちた銀橋でした。

いやー、エリックもキャリエールも可哀相だなあ。あんなに愛し合っているのに。
……なんて思ったことは内緒です。ええ!(←強調)。




最後に。

真瀬くんは、一番最初のパリの街の場面(「Melodie De Paris 」)でピエロで踊ってました。

……私、まさかキャリエールがバイトしてると思わなくてプログラムを見たときは目がスルーしてしまったんですが、舞台で観て、えっらい元気なピエロがいるなー、なんか真瀬くんにに似てるなー、と思っていて、終演後にプログラムを見たら本人だったんですよね。
あのピエロを見分けるって我ながら凄い!!と、自分で自分を褒めてみた(^ ^)。

かなりド派手に踊っていて、とっても可愛かったですよ。東宝でご覧になるみなさま、お見逃しなく♪


コメント

nophoto
通りすがり2
2011年7月14日11:00

こんにちは
前回ノバのネックレスの件でコメントした通りすがり2(だったかな?)です

新公ファントムの印象が同じようだなと嬉しく思って拝見していたら
なんですって!
いまっちがピエロだった?!!!!

ショックです、見逃した・・・・・がっくり

私も新公の感想を書いています
まだ途中ですが
よかったらのぞいてみてください
(『ヅカづか日記』で検索してくださったら出てきます)

nophoto
カナリヤ
2011年7月14日16:33

みつきねこ様、新公の感想を読ませて頂きました。
92期繋がりということで、いまっち君も気になりますが、東京新公は予定無しなんですよ。1年後のCS放送を待つのみです。
先日、宙組公演を観ましたが、もう一度観てからコメントを書かせて頂こうと考えています。

そして、上のコメントの「通りすがり2様」へ
私が「通りすがり2」と名乗っていましたので、「通りすがり様」で構わないと思います。(笑)
すみません、老婆心で出てまいりました。失礼しました。

nophoto
オバスミレ
2011年7月14日21:05

通りすがり2を詐称してしまったオバスミレです
やはり名前はいつも使っているのにしないと・・・
カナリア様、失礼いたしました
ご指摘ありがとうございます

宙公演はいかがでしたか?
私はムラでゆうひくんの牢獄でのひげ姿にまいってしまいました。
カラマーゾフの水さんの無精ひげにもときめいたので、私って無精ひげ好きかもしれません

あ、本物の男性の無精ひげはNGです、ジェンヌさん限定

みつきねこ
2011年7月15日1:16

オバスミレさま、こんにちは!コメントありがとうございます♪

> いまっちがピエロだった?!!!!

そうですよー(^ ^)。ゴムまりのように幸せそうに飛び跳ねてました♪
ニュースで少しは映るかなーと思いましたが、全然でしたね(涙)。


>(『ヅカづか日記』で検索してくださったら出てきます)

お伺いさせていただきました!
あとでコメント入れさせていただきますね♪♪


宙組は週末にまた観ます!
牢獄の髭姿、最高ですよね(*^ ^*)。男役さんの無精ひげは、とっても魅力的だと思います。
滅多に観られないから、余計に素敵ですよね!ああ、あの顔のアップの舞台写真がほしい(^ ^)。

みつきねこ
2011年7月15日1:19

カナリヤさま、お返事ありがとうございます!

> 92期繋がりということで、いまっち君も気になりますが、東京新公は予定無しなんですよ。

博多座公演直後ですものね。残念です。
真瀬くんも面白いですよ!機会があれば、ぜひチェックしてみてください(^ ^)。

> 先日、宙組公演を観ましたが、もう一度観てからコメントを書かせて頂こうと考えています。

お待ちしておりま~す!!ってか、わたしもいい加減宙組の続きを書けって感じですね(汗)。