月組大劇場公演「バラの国の王子/ONE」について。

公演が始まった翌週に観たのに、いろいろ取り紛れて何も書かずじまいになっていたのですが、、、もうすぐ東宝の初日があいてしまうので、慌てて書かせていただきます(^ ^)。



■「バラの国の王子」

ボーモン夫人の「美女と野獣」を原作とした作品。

ディズニーミュージカル「美女と野獣」は、何度観ても本当に楽しくて、音楽もビジュアルも何もかも本当に大好きなのですが。
今回、宝塚バージョンを見て、やっぱりこれは原作がおもしろいんだなーと思いました。
異種交流譚であり、若者の成長物語であり、ファンタジックなアナザーワールドでもあり……「リア王」的なエピソードもあれば、ハムレット的な要素もある。
バラエティのあるエピソードが盛りだくさんで、面白い物語ですよね。

そんな中で、ディズニー版との一番大きな違いは、王子が野獣になった理由でしょうか。

ディズニー版では、この物語のメインテーマは王子の成長譚なんですよね。王子の性格が元々わがままで「野獣のようにいじわる」だという問題があって、野獣に姿を変えられたのも彼自身に責任がある。
そんな王子(野獣)が、ベルという少女との出会いを通じて愛と優しさを学び、人間らしい心を取り戻す=王子に戻る、という展開は、非常にシンプルで判りやすい。そして、彼の成長譚をメインに置いたうえで、愛を学んだ野獣と対立する男性優位主義者(ガストン)を登場させ、闘わせる勧善懲悪主義なところがディズニーらしさなのかな?と思ったりもするんですよね。

それに対して、宝塚(木村)版の王子(霧矢大夢)は薔薇を愛する心優しい少年で、彼には罪はありません。清廉な王子が、何の罪もないのに野獣に姿を変えられ、苦悩する。この、主人公である王子のキャラクターに瑕がない(万事において正義である)というのが、宝塚版の宝塚たるゆえんなんだろうな、と。
少なくとも、木村さんはそう考えているんだろうな、と思いました。

血縁者である(?)叔母(妹君=彩星りおん)に心を奪われた父親(龍真咲)は死によって奪われ、実の母(仙女=花瀬みずか)は遠くへ行ってしまい、、、彼はひとりぼっちで、家来たちと共に城に閉じ込められている。
とにかく、彼は無実なんですよね。だから、最初からベル(蒼乃夕妃)に愛される資格がある。なのに、ベルにはそれがわからない。
野獣(王子)が人間に戻るには、ベルの成長が必須なわけです。

精神的に成長し、愛に目覚めたベルの選択を邪魔するのはベルの家族(姉たち/憧花ゆりの、星条海斗)であり、父親(商人=越乃リュウ)である。血縁者に裏切られた野獣と、家族に邪魔をされるベル。

野獣の敵役は従兄弟である王さま(龍真咲)になるわけですが、オリジナルであるはずの彼が、かなりガストンに近いキャラクターになっていたのが勿体無いなーと思いました。そもそも王さまと野獣(王子)には対立する理由があるわけですよ。王位を争う立場である、というれっきとした理由が。なのに、それを使わないで王さまをただの我侭な恋敵にしちゃったために、物語が薄っぺらくなっちゃったな、と。


……まあ、でも、木村さんにしては、巧くまとめた方なのかなあ、という気もしますが。


木村作品って、「突出したトップスター」がいて、「その相手役」がいて、あとは「その他大勢」みたいな作品が多いんですよね。
アンサンブルの使い方が贅沢、といえば聞こえは良いんですけど、個性のない記号的なキャラクターが多い。今回でいえば、家臣団はもちろんですが、メインキャストでも、「王さま」「王子」「妹君」「商人」「長女」「次女」という固有名詞を持たない人物だらけだし、唯一名前のように呼ばれる「ベル」も、元々「美女」という意味の言葉で、原作的には名前ではないはず。こういう作品が良く似合うクリエーターだな、と。

同じような「大人数でのグループ芝居」でも、「ジプシー男爵」のジプシーたちは、それなりに割台詞からも意味を拾って、細かいキャラクター設定を考えることが可能だったと思うけど、今回の家臣団は本当にどうしようもないんですよね。
動物の種類が決まっているから、仕草的な役づくりはできる(しなくてはいけない)けど、物語における役割がまったくないから、小芝居しても意味がない。

「芝居」を動かすための小芝居に命をかけている月組っ子に、あれはいくらなんでも気の毒、というか……。せめて、新人公演を卒業した90期以上の子たちには、もう少しまともな(小)芝居をさせてあげたかった…………。



なんていろいろ文句を言ってますが、予想よりはだいぶ楽しめる作品だったと思います。何といっても霧矢さんの野獣が美しくて、パワフルで、そして、歌が素晴らしかった!!
あの名唱の数々を聴くだけで、チケット代の元はとれます♪

あと印象に残ったのは妹君のりおん。いやー、素敵でした。迫力合って怖くてきれいで。「ジプシー男爵」の勝気だけど可愛らしいお嬢さんより、100倍似合ってました!

すずなとマギーの同期コンビ姉妹も良かったです。なんというか、阿吽の呼吸、ですね。まりももいれて、三姉妹が三人とも美人なのがまた良かったです(*^ ^*)。

そして、一番気に入ったのは小鳥ちゃんたち(沢希理寿、響れおな、紫門ゆりや、煌月爽矢、珠城りょう)!いやーーー、可愛かった(デレデレ)。
5人の中で一番大きいタマキチがハチドリなのは何故なのか不思議でしかたないのですが、まあ、可愛いから良いんです、たぶん(^ ^)。


月組ファンとして、家臣団の不憫さに目をつぶるのは難しいところだったのですが。
でも、純粋に作品としては悪くなかったと思います。木村さん独特の、押しつけがましい台詞もそんなに無かったし、大人数でのコーラスは迫力あったし、家臣団のダンスはフォーメーションが綺麗で、二階席が楽しそうだなー、と思いました。



……木村作品は、贔屓組にさえ当たらなければ(組の中堅クラスにあまり思い入れがなければ)案外我慢できるのかも、と思いました。

でも、贔屓組でなかったら、わざわざ木村作品を観には行かないかも……(ごめんなさい)。



■「ONE-私の愛したものは-」

月組的には「絢爛II」以来、久々の草野ショー。

……ショーって、一回しか見ないで感想を書くのは難しいですよね……。二回目、三回目と回数を重ねるうちに印象変わるし。

まあでも、とりあえず一見の印象で。
好きな場面は、ナウオンでも話題になっていた「ユニコーン」の場面です。プログラムをみて、上島雪夫さんの振付か―と納得しました(^ ^)。

ただ。
場面と場面をつなぐところにちょこちょこ出てくる「私が愛したもの=宝塚!」みたいな、なんというか「自己愛」的なところも、最初は微笑ましく観ていたんですが、フィナーレは食傷気味になっちゃって……うーん、微妙ー、と思っちゃいました。
何回か観れば見慣れるのかも、と思いつつ。
そして、「カントリーマン」と「奇妙な世界一」は、私が観た時はまだあまり場面としてのまとまりがないというか、ごちゃごちゃした印象が強くて、あんまり……(- -;ゞ。たぶん、公演が始まったばかりだったからだと思うので、東宝では楽しみなんですけどね。


とりあえず、今の時点での感想(観劇してから一ヶ月以上過ぎてるから、結構忘れてるかも)はそんな感じです。
東宝の開幕早々に一回観る予定なので、観たらまた書きますね。……全然違う感想になりそうですが(^ ^;ゞ



コメント

nophoto
hanihani
2011年4月30日7:58

初日を観ました。

まず義捐金は花組だけで終わりで、2Fロビーに全員のサインと一緒に箱が置かれていました。
入り出待ちも復活。

公演ですが、
お芝居は…やっぱりキムシンはキムシンですね。
後ろの下級生ファンとしては、顔がみれているからいいかぁ~と(苦笑)
ただ、動物の顔が判りにくいのが残念。ああいう工夫自体は面白い!と思いましたが。
ショーはなんかONEの意味がよく判りませんでしたぁ~

初日の印象としてまりもちゃんの「娘役」スキルがすごくアップしていて
嬉しかったです。いいぞぉ~

みつきねこ
2011年4月30日22:19

東宝始まりましたね~!

> お芝居は…やっぱりキムシンはキムシンですね。

そうなんですよねー(- -♯
まあでも、唯一の長所である「とにかく下級生がずーっと舞台上にいる」っていうところは今回も発揮されているので、その点では満足です。若干パペットが邪魔ですが(汗)。

> ショーはなんかONEの意味がよく判りませんでしたぁ~

同感です~。草野さんの「ONE」は宝塚だ、ってことでいいの?「Only」でも「Top」でもなく、「One」なのが不思議。