ドラマシティ公演「ヴァレンチノ」。


■第3場 メトロ撮影所
メトロ映画の撮影所で、エキストラの仕事を探すルディー。

この場面は、回りのメンバーにおされて仕事がもらえないルディーのオロオロっぷりよりなにより、とにかく仕事を取ろう!!というメンバーが面白すぎで目が離せませんでした(^ ^)。


まず、配役係のまりなちゃん(七生眞希)が、下級生なのになかなか良い声で、良い芝居をしていましたねー。エキストラ希望のメンバーが濃い人ばかりの中で、ちょっととぼけた感じですいすい配役していて、微妙にヘタレた感じが可愛かったです。

「サロメの侍女!小柄な人!」と呼ばれて、アリエッティ(百千糸)やえびちゃん(綾瀬あきな)が選ばれていく中、公称164cmの彩花まりちゃんが膝を曲げて小さくなって役を取っていくのが、何度観ても笑えました(^ ^)。そして、するするっとえびちゃんより小さくなっておいて、まりなちゃんに指名された途端、再びするするっと膝を伸ばして大きくなる彼女を横目で見ながら、「えええーーーっ!?」という顔をしているメンバーにも、めっちゃ笑わせていただきました。

可愛い青いワンピで、役を取るために目立つ場所を取ろうとうろうろしたあげく、タイミングを外しまくって仕事がとれない(琴羽)桜子。
「老人!」って言われてあわてて老人になりきって役をGETしていたのは誰だったかっけ??その彼について、まるで介助者であるかのようなさりげない芝居をしながらスタジオに入っていく桜子がとても不思議(^ ^)。中に入ってどうするんだ?ギャラはもらえるのだろうか…?

なかなか仕事が取れなくて泣き崩れるのは、可愛いピンクのワンピースに身を包んだ風馬翔。背は高いけどおとなしそうな役作りで、もしかしてどっかのお嬢さんなんじゃないの?という雰囲気。
それが、殆ど終わりかけた頃に「ゴリラ役!6フィート以上!……ああ、君だ!」とまりなちゃんに言われて、本気で吃驚して戸惑っているように見えたのがツボでした。かけるくん、良い味出してるわ~~!!


でも、なんといっても、まりなちゃんが
「今日はここまで!……また、明日」
と涼やかに言ってのけて袖にはけた後、がっくりと肩を落とし、ルディーに一言ぼやいて去っていくこーまい(光海舞人)の、なんとも言えない弱々しい背中が、とても印象的でした。

「もう二日も食ってない…」と呟きながらルディーが口ずさむ歌が、とても切なく、遠くを見上げるルディーのうつろな瞳が、とても好きでした。



■第4場 ジューンのバンガロー
オレンジの樹が立ち並ぶバンガロー。脚本家のジューン(野々すみ花)が、「黙示録の四騎士」の脚本を直しながら電話をしている。
「ジュリオはアルゼンチン人なのよ!アングロ・サクソンの男には無理ね。ラテン系の新人を探して頂戴!」
プライドの高い、理知的で有能なクリエーターの貌。

すみ花ちゃんの、これは久々の当たり役だと思いました。
宛書きかと思ったくらいに嵌ってたし、なにより本当に魅力的(はぁと)。しっかりした大人の女でありながら、ハンサムなラテン男にイカれて頬を染める少女のような可愛らしさも併せ持っている二重性が、すごくすみ花ちゃんらしいな、と。

庭に忍び込んできた怪しい男にまっすぐ銃を向ける強さと、空砲を鳴らすときの悪戯っ子のようなコケティッシュな笑顔。
ああもう、すみ花ちゃんかわいーーーーーっ!!

ルディーと話しているうちにどんどん表情が柔らかくなって、どんどん気を許していくのが目に見えるのが凄い。優しくて親切な、情の深い女性。

そんなジューンに、特に興味を持った様子でもなく、「女性には優しく」というイタリア男の本能のままに笑顔を見せるルディーは、本当に可愛くて、罪な男だな、と思いますね。
祐飛さんったら、研20を目前にしてこんなに可愛くなるとは!!

「血と砂」や「The Last Party」の少年時代も可愛かったけど、あれから何年経ったんだ?ここ数年、若者役や少年時代を演じる機会もめっきり減りましたが(汗)、今回、全編を通して迸る「若さ」というエネルギーに吃驚しました。
ものすごく素朴で真っ直ぐな、シンプルなエネルギー。ジューンを巻き込み、彼女の心を攫っていくラテン・ラバー。

ラテン・ラバーっていうのは、色気で女をたらしこむ男ではなく、ジューンの歌う歌詞にあるとおりの「情熱の恋人、灼熱の恋」……計算のない、本能に生きる男、なんでしょうね、きっと。獲物を狙ったことなどなく、ただそこに立っているだけで女が惹きつけられる。意志ではなく、本能的な魅力。
ナウオンで祐飛さんが「今まで、ルディーはいつでも誰かに助けてもらってた」と言っていましたが、思わず助けたくなってしまう魅力って確かにあるんだなあ、と思いました。



ジューンの部屋に招き入れられて、手当を受けるルディー。
「いてっ!」という悲鳴が情けなくてとても良いです(^ ^;ゞ。

ジューンのタイプライターに興味をもって、断りもせずにつっつく様子は、まるで好奇心いっぱいの仔猫みたい。ジューンが持ってきてくれた夜食のソーセージを頬張る姿は、悪ガキそのもの。
それを見守るジューンの楽しげな笑顔がまた良いんですよねー。一人暮らしで、電話以外には話す相手もいない(かもしれない)女性が、元気な悪ガキを眺める優しいまなざし。
包み込むような、温かな、やわらかな視線。

ルディーの夢見るアランチャ実る丘を、ルディーと同じ夢を見る、ジューン。
「ホントにうまくいくと思う!?」
と問われて、笑顔で「ええ」と答える大人の女。勢いのまま、そんなジューンに抱きつくルディー。抱きつかれて焦るジューン……紅く染まった頬、大きく見開かれ、煌めいた瞳。どんどん、母親目線から恋する乙女になっていくジューンが、本当に魅力的でした。


軽やかにイタリア語で「おやすみ」と言って背を向ける男に、思わず「待って」と声をかけるジューン。
引き止めて何を言おうとしたのでもない、ただ、引き止めるためだけに掛けた声。
雪組さんの「ロミオとジュリエット」を観た直後だったので、余計にジュリエットとジューンの共通点を強く感じました。

かけられた声に振り向いた男の問いかけるような笑顔に、思わず何かを求めて部屋の中を見回し、机の上に置きっぱなしになっていたアランチャの枝を取り上げて、手渡す。
ジューンからルディーに渡される、「希望」の枝。
見えなくなった背中に向かってかるく手を挙げ、「チャオ!」と囁いて照れる女心。

すっかり舞い上がって、恋をした少女そのもののようなジューン。こめかみに短銃をあてても、幸せそうに笑み崩れてしまうところも本当に可愛い。
学年で13年も離れている祐飛さんとすみ花ちゃんの、新たな可能性をあらためて見せてくれた場面でした。



ちなみに。
最近で祐飛さんが演じた若者の役って、「RED HOT SEA」の「砂浜」になるのかな…?あれは若さというよりピュアさが前面に出ていた印象ですが、若さもすごく感じたしなー。
……その前って、もしかして「パリの空よりも高く」か?(- -;ゞ


そういえば。ラジオの「ただいまの曲を持ちまして、放送を終了させていただきます」という落ち着いたアナウンスは、誰の声なんでしょうか。真剣に聞いたけど、どうもよくわからない…(T T)。



■第5場 ジョージのオフィス
翌朝、メトロ映画の宣伝マン、ジョージ・ウルマン(春風弥里)のオフィス。秘書のアリス(瀬音リサ)が、勝手に入ってきた客を追ってくる。

みーちゃんのジョージも本当に当たり役ですよね!(はぁと)。
明るくて、優しくて、情が深くて、温かい。彼がジューンを愛したのは当然だし、ジューンが似すぎている彼ではなくルディーを選んだのも仕方のないことだった。
ジューンはクリエーターで、ジョージはそのクリエートを支える存在だったから。
彼女にインスピレーションを与えてくれるのはルディーだけ。そんな二人。

アリスのありさちゃんもめっちゃ可愛かった(*^ ^*)。この役、再演では純名里沙ちゃんが演じていたそうですが、道理でキレイなソプラノでした。この声で選ばれたのかな?
いかにも「新進娘役」がやりそうな可愛らしい儲け役で、みーちゃんとの並びも可愛かったです。しっかりした有能な秘書にちゃんと見えたところがツボ。

「浮浪者のような」ルディーを変身させる「魔法の鏡」。
一流映画会社の宣伝マンであるジョージが抱えるスタイリストとメーキャップアーチストが、総出でルディーを飾り立てる。舞台の上で、服装のみならず髪型からメークまで全部替える、まさに「魔法の」演出でした。

ヘアのまっぷー(松風輝)、メークの(美影)凜ちゃん、そして衣装係のえなちゃん(月映樹茉)他のメンバー。せっせと働く彼らのキビキビした動きに、「Hollywood Lover」のスタッフたちを思い出しました。プロって凄いなー。
個人的に、衣装を一枚一枚丁寧に形を整えて、脚を通しやすいように、袖を通しやすいように、と舞台上でセットしているえなちゃんの仕草がとても好きでした(^ ^)。

それにしても。僅かな時間でちゃんと髪もメークも直している祐飛さんはやっぱり凄いな……。



■第6場 黙示録の四騎士のセット
ジョージに「ルドルフ・ヴァレンチノ」という名前を与えられたルディー。
ヴァレンチノとしての初仕事に臨む。

ヒロイン役の桜子と踊る蒼羽りく。二人に次々指示を飛ばすイングラム監督のこーまい。さっぱり思うような画が撮れず、段々機嫌が悪くなっていく監督に声をかけるジューン。
……あれ?こーまいってば、さっき(第3場)まで失業者だったのに、一晩明けたら監督になってる……?(←いいから放っておきなさい)

せっかく桜子とりっくんが組んでいるのに、振付がイマイチで残念……いや、そこで格好良く踊られても困るんですが(汗)。でもでも、やっぱり残念ー。

祐飛さんのジュリオは、振付にだいぶ助けられてましたが(^ ^;ゞ、いやでも、格好良いからいいんです、よねっ!?
桜子のダンスが、パートナーが変わったとたんに凄くしなやかに色っぽくなるのが良いです(*^ ^*)。りっくんと踊ってるときは「怒ってる」っていう芝居もしているから当然なのかもしれませんが……ダンサーって凄いなあ。

ヘア・メーク・衣装はジョージの「魔法の鏡」と同じ顔ぶれ。ほほー、本撮影にも立ち会うようなメンバーがスタッフなのか。凄いなあジョージ。
メジャーを首にさげたえなちゃんの困った笑顔がやっぱり好きだー!役を降ろされたりっくんが、撮影後までしつこく文句を言うのを、「困った笑顔」で交わそうとして交わしきれないところとか、ついついじぃーっと観てしまう私は、相当にえなちゃんが好きなんだと思います(困)。


「黙示録の四騎士」の脚本家・ジューンと、イングラム監督、ヒロインのドミンゲスらは史実どおり。その後の作品の一部(「シーク」「熱砂の舞」)の脚本はジューンではなく違う人のようですが、それ以外は案外と史実に沿った設定なんだな、と思いました。(「椿姫」「血と砂」はジューン)



■第7場 ジョージのオフィス
「黙示録の四騎士」が公開された朝。
ジョージのオフィスで新聞評を読み上げるアリス。大評判!大当たり間違いなし!という各紙の記事の中で、「全米の床屋が、ヴァレンチノ・ヘアを今年のスタイルと認定!」という記事を読み上げるジョージ。
机の上に立てていた新聞を倒すと、ちりちり巻き毛のジョージが、ぺったりとオールバックに!!(@ @)。

この演出は(また次の場面では元に戻っていたことも含め)非常に印象的でしたが、一番印象的だったのは、もう公演も終盤だったにも関わらず、毎回本気にしか見えない様子で吹き出していたすみ花ちゃんの成り切りっぷりでした。
一観客の自分は、二回目までは笑えても三回目になると「みーちゃん可愛いなー」くらいなものだったのですが、すみ花ちゃんは、千秋楽まで毎回新鮮に、本当に可笑しそうに、「こらえきれずに」吹き出してくれました。

……すごいなあ。やっぱり野々すみ花は女優なんだなあ……。




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