星組中日公演「愛するには短すぎる」。


何年かぶりにこの作品を観て、最初に思ったこと。

「4日間」って、最近の流行なんでしょうか?(^ ^)

「誰がために鐘はなる」も4日間だし、「ロミオとジュリエット」も4日間。
花組の「愛のプレリュード」は観ていないけど、この1月2月に宝塚で上演された4作品のうち、少なくとも3つが「4日間」というキーワードでくくられるのって珍しいような(^ ^)。



「ロミオとジュリエット」は、相争う二家に引き裂かれた二人の若い恋人たちの死という結末を迎え、
「誰がために鐘は鳴る」は、スペイン内戦という極限状況の中で、ロバートの死という別れに辿り着く。
でも、「愛するには短すぎる」は、燃え上がった恋の炎の勢いは同じでも、物理的な障害が無かった恋なんだな、と思いました。

無理やりに引き裂こうというパワーがないからこそ、逆に、お互いの立場を慮って迷ってしまう。
自分はすべてを捨ててもいいと思ったとしても、相手にすべてを捨てさせることができない。
だったらせめて、前を向いて別れよう、と。
自分のなりたい自分ではなく、相手が望む自分であるために。


でも、恋のエネルギーそのものは、たぶん、「ロミオとジュリエット」や「誰がために鐘は鳴る」に比べてもひけはとらないのだ、ということを、最後の夜の二人を見ていて思いました。

もし、タイタニック号のように、巨大な氷山にぶつかってしまったら。
もし、大きな嵐で船が沈んでしまったら。
……もし、船がニューヨークに着かなければ、二人はどうしただろうか、と。







ごく個人的な印象ですけれども。

初演のわたるさんのフレッドは、たとえバーバラが肯いてくれて二人で駆け落ちしたとしても、たぶん、どこかできっと後悔してしまうんだろうな、という気がしました。
それが判っているから、となみちゃんのバーバラは絶対に肯かない。フレッドの負担になるようなことをしたくないから。
だから無理やり笑顔をつくってみせる。
フレッドが後悔しないように、「綺麗に」別れたい。それは、バーバラのプライドでもある。
フレッドが後顧の憂いなく新しい道を歩き出せるように、背中を押してあげられる大人の女。

そんなバーバラが、尊敬するわたるさんを見送って、また新しい世界(雪組)へ飛び込もうとしているとなみちゃん自身と被ってすごく魅力的でしたし、やっぱりあの公演はわたるさんのサヨナラでしたから、「フレッドのためのバーバラ」でなくてはならなかった、という一面もあったんじゃないかな、と思います。



それに比べると、今回の礼音くんのフレッドは、たぶん、バーバラが肯いてくれたら喜んで駆け落ちしただろうし、案外と現実世界をしっかり生きていけそうな印象がありました。
だから、ねねちゃんのバーバラがフレッドの願いを叶えないのは、あくまでもバーバラ側の問題。
「フレッドのためのバーバラ」ではなく、「それぞれ個人であるフレッドとバーバラ」なんだな、と思いました。

ねねちゃんのバーバラは、となみちゃんのバーバラよりもずっと精神的に子供で、とても純粋。
「クラウディア」の心により近い存在だったと思います。
子供っぽい青臭さで船の上での出会いを「運命」と信じ、だからこそ、「一番大切なもの」は神に返すべきだと考える。フレッドのために、そして、自分自身のために。
「一番大切なものは手に入らない」……つまり、「手に入ってしまうものは、一番大切なものではなくなってしまう」と、そう思っているから。


ボロボロと泣きながら船のデッキでフレッドに笑いかけるねねちゃんのバーバラの頑固さが、可愛くて可愛くて、そして、切なくて。ああ、本当にこの子はまだ精神的に子供で、自分を許すことができないんだな、と思いました。
そして、そんなバーバラの幼い突っ張りを尊重して、本当は連れて逃げたいという気持ちを露わにしながらも、ぐっと我慢している礼音くんの青臭さも、すごく可愛かった!!


バーバラが好きだけど、欲しいけど、彼女を無理やり手に入れれば壊れてしまうことは目に見えている。そう、今回の再演のキャラクターだと、駆け落ちしたときに壊れるのはバーバラなんですよね。
初演はフレッドが先に壊れるだろうと思ったのに。
ねねちゃんの頑なな脆さと、礼音くんの不器用で青臭い優しさ。夏の博多座で観た「ロミオとジュリエット」と同じ組み合わせで、同じ熱量の恋をして、、、それでも、シチュエーションが違えば違う結末になる。それが芝居の醍醐味だなあ、と思いました。


フレッドにとって、ナンシーを憎む理由はないんですよね。
愛してはいないけれども、嫌いなわけではない。
だから、船を降りたフレッドは、明かすことのない秘密を抱えたまま、それでもナンシーと二人、穏やかな凪のような「家庭」を築くんだろうな、と思いました……初演では。
「バレンシアの熱い花」のフェルナンドとマリガリータのように、おままごとのような、幸せそうな家庭を。

でも。
礼音くんのフレッドは、もしかしたらちゃんとナンシーに話すのかもしれないな、と思いました。
僕は船の上で恋をしたんだ。
それでも君は、僕を許してくれるだろうか、と。
そして、それでもナンシーが許してくれたなら、彼はいつか、彼女をちゃんと愛するのかもしれません。そして二人で、本当に幸せな家庭を築くのかもしれない。

バーバラは、そんなセレブな家庭の幸せそうなニュースを新聞で読んで、愛するパートナーに言うんですよ、きっと。
「あたしね、この人の恋人だったのよ……4日間だけ」
幸せそうな笑顔を浮かべて。
「愛するには、4日間は短すぎはしなかったわ。……長すぎるくらいだった。忘れるには」
多分彼は、「忘れなくていいんだよ」と言ってくれるでしょう。バーバラが愛して、自分自身を委ねた人だから。



アンソニーの立ち位置の違いは先日だいぶ書いたので割愛しますが。
……テルくんのアンソニー、本当に良かった!!星組での最後にこの役に出会えて、テルくんにとっては本当に良かったな、と思います。うん。


あーー、いい公演だったなーーー。
もっと冷静な気持ちで二回目を観たかった……。


今日は最後の休演日だったんですよね。みなさん、美味しいもの食べたかな(^ ^)。
あと9日間。これ以上の休演者が出ることなく、千秋楽までがんばってくださいますように。

そして、みっきぃさん。焦らずにゆっくり養生して、大劇場では元気な笑顔を見せてくださいね(; ;)。


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