落ち穂拾い

2011年2月2日 演劇
年末年始に観た舞台で、まだ感想を書いていないものをまとめて書かせていただきます。



■SAMURAI7
 青山劇場

巨匠・黒澤明の傑作「七人の侍」からインスパイアされたアニメーションを舞台化した『SAMURAI7』。
私は「七人の侍」もアニメも全然知らないのですが、「モーツァルト!」をパスした中川晃教くんが出ていたので、タイトルもよく確認せずに観に行ったのですが、話も面白かったし、キャラクターも活き活きしていて、とっても面白かったです。
有名だけどタイトルしか知らなかった「七人の侍」を、ちゃんと見てみよう!と思いました。
(まだ見てないけど)(←だって、まだ「誰がために鐘は鳴る」も見てないじゃん)


演出は岡村俊一、脚本はつかこうへい劇団の渡辺和徳。
舞台は架空の世界。いちおう、第三次世界大戦後の地球をイメージしているみたいでした。「未来少年コナン」とか「ナウシカ」的な世界観。


長く続いた戦争が終わった。
全身を機械化した侍たちが闘うために闘う、悲惨な戦争が。

“闘い”を喪った侍たちは暴れだし、「野伏」となって、やっと田畑が蘇りはじめたカンナ村に襲い掛かる。
カンナ村の村長は、彼らに対抗するために『サムライ』を雇うことを決断する。腹いっぱいの米を報酬に。水の巫女キララは、村長の命を享けて砂漠の向こうにある都市へ向かい、7人のサムライたちと出会う……


<7人の侍>
カツシロウ 三浦翔平
キュウゾウ 西島隆弘
シチロージ 相葉弘樹
ヘイハチ  橘大五郎
ゴロベエ  高橋広樹
キクチヨ  住谷正樹
カンベエ  加藤雅也

<カンナ村>
キララ  水野絵梨奈

<天主>
ウキョウ 中川晃教


と、ゆーことで。

加藤雅也がめっちゃ格好良くて素敵でした!

……もとい。

村を護るために、命を懸ける7人のサムライたち。
彼らは彼らで、蔑まれる存在なんですよね。戦争が終わって、『闘い』の中で自己表現をしていた者たちは居場所を喪ってしまったから。存在価値を、喪ってしまったから。
だから彼らは、キララの言葉に肯う。「腹いっぱいの米」のためではなく、「護るもの」と「居場所」を得るために。

彼らはみんな、相当に悲惨な運命を背負っているんですけど、自分自身の信念に身を捧げた彼らはとても前向きで、護ると決めたものを絶対に護ってくれる、本当に格好良い人たちでした。
みんなそれぞれに個性的で、とっても素敵(はぁと)。

ウキョウ様の中川くんは、ネタばれしてしまいますが(^ ^)いわゆるラスボスって感じで。
何曲か歌ってくれたのは嬉しかったし、なかなか斬新なキャラクターで面白かったです。ご本人も楽しそうに芝居していたし、これはこれで、新境地だったかと(^ ^)。
……個人的には、やっぱりヴォルフガングをもう一回観たかったような気もしますけどね(涙)


ま、でも、面白かったです。とっても。
キララちゃんも可愛かったし(*^ ^*)。

また原作の映画を見てからもう一回観たいなーと思ったのですが、再演してくれるといいなー。



■GODSPELL
 シアター・トラム

何度か再演されているミュージカルの佳品。私は2001年の山本耕史ジーザス版と、翌年(?)のNIROジーザス版(いずれも演出は青井陽治)を観ています。

脚本はジョン・マイケル・テベラック、作詞・作曲はスティーブン・シュワーツ。
新約聖書・マタイ伝の福音書を題材に、舞台を現代のニューヨークに置き換え、イエス・キリストの最後の7日間を描いたロック・ミュージカル。音楽も良いんですけど、何より内容というか脚本が斬新で、すごく面白かったんですよね。
「神の詞」というストレートなものを題材にしていながら、布教にも宗教論にも堕すことなく「物語」の語り部としてのジーザスという人間像を描きだしたところが凄いな、と。

今回は、山本くんが初めて演出に取り組みつつ、ジーザス役も演じる、ということで話題になっていました。
出演者は、山本ジーザス、内田朝陽ユダ、原田夏希、福田転球、明星真由美、中山眞美、上口耕平、井美紀、MY A FLOW(Song Riders)、松之木天辺、飛鳥井みや、長谷川富也。あまりよく知らない方々ばかりでしたが、みなさん実力者ぞろいで、歌も芝居も良かったと思います。
10年前からの引き続きでの出演者は中山眞美(当時はMAMI)だけ、かな?相変わらずのナイスバディにあの声、そして素敵なキャラクター。大好きだわー!!

しかーし!
個人的な感想ではありますが、非常に残念なことに、今回の演出は、あまり感心しませんでした。
いや、ちょっと違うな。「演出」は良かったんですよ。セットとか、人の配置とか、間の取り方とか、そういうアレコレは。

でも。
「演出」の仕事って、それだけじゃないですよね。
キャストの世界観を統一して、同じ方向を向かせ、一つの作品としてまとめて皿に盛り付け、観劇者に差し出すところまでが仕事だと思うんですよ。

作品のパーツを磨くことはちゃんとできていたと思うんです。山本くんは今までの舞台でも結構スタッフワークに興味があっていろいろやっているという話をよく聞いていたので、ホントにそうなんだろうなーと思いました。
でも、そのパーツを一つの作品に組み上げて、盛り付ける段階で小さな取りこぼしがいくつかあって、結果的に、客席に座った私に差し出されたものは、真っ黒に焦げて苦かった(T T)。
そんな感じ。

カンパニーが仲良くないとできない作品で、題材的にも内輪で盛り上がりやすい作品だとは思うんですが、それでも、青井さんが演出していたときは、何回観ても毎回新鮮で面白かったんですよね。
でも、今回は、内輪ウケや楽屋落ちで盛り上がり過ぎて、観客を置いて行ってしまったのが気になりました。っていうか、ぶっちゃけ、途中から不愉快になりました。

あれこれのネタを披露してくれた役者が悪いんじゃないと思うんですよ。
それを良いところでコントロールして、作品を壊さないバランスに留める、その見極めは、演出家の仕事だと思うのです。

年末に観たキャラメルボックスの「サンタクロースが歌ってくれた」も、久しぶりに共演した同期のゴールデンコンビが盛り上がり過ぎて、舞台が止まってしまう瞬間があったんですよね。
でも、そっちは不思議と不快感がなかった。不思議なんですけどね。でも多分、演出の違いなんだと思うんです。
そういう場があっても許されるように最初から演出されているかどうか。あるいは、そうなってしまっても戻れるように役者が訓練されているかどうか。


密度が濃くてコメディ色の強い芝居を上演中の小人数のカンパニーでは、役者同士が仲良くなりすぎてしまって、お互いのギャグに素で笑っていたりすることが良くあるんですが、、、そういうのって、キュンとくることもあれば、萎えてしまうこともあって、難しいなあと思うんですが。
そういう舞台にこそ、プロの演出家の眼が必要なんだと思います。
シリアスな芝居では、そういう問題が起こることはめったにないので(^ ^;


「神の詞」をタイトルにした、非常に興味深い、楽しい作品。
また近いうちに、実力派のキャストを揃えて、しっかりした演出で、再演してほしいものだと願ってやみません。



■モモ
 渋谷区文化総合センター

劇団ひまわりの「モモ」。
言わずと知れたミヒャエル・エンデの名作の舞台化でしたが、、、
いろんな意味で、あのイマジネーション豊かなファンタジックな物語をよく舞台にする気になったな、と感心しました。

モモ役は野本ほたるちゃんと元ヤングナラの田上真里奈ちゃんのダブルキャスト。
私が観た日は野本ほたるちゃんでしたが、すっごくキュートで、なんとなく惹きつけられてしまうモモ役にぴったりな子だなあと思いました。
とにかく可愛かった!!

あとは、「灰色の男たち」の長みたいな役だった郷本直也さんがめっちゃ格好良くて素敵でした。
存在感があって声も良いし、一方の主役という華やかさもあって。
逆に、ジジの馬場徹さんが、ちょっと存在感が薄かったかなあ。キャストの問題というよりも、脚本的にあまり本筋に絡まなかったので。

印象に残ったのはやっぱり、モモと郷本さんと、マイスター・ホラの伊藤克さんでしたね。
マイスター・ホラは、最初の幕開けと最後の幕引きをするので、重々しい存在感が素晴らしかったです。

……でもまあ、やっぱり本を読んだほうが面白いかな、というのが正直な感想ではありましたが……。
エンデは難しいですね、やっぱり。あまりにもイマジネーション豊かなので、どうしても、広げてしまった想像の翼がたためない感じ。
まあ、そんなことは判り切っていて観に行ったわけなので、期待値以上に楽しめたことは事実ですが。

原作を知らない方がどう思ったのか聞いてみたい気がします。

いやー、ま、なにはともあれ、ほたるちゃんは可愛かったです(←そこか!)




コメント