赤坂ACTシアターにて、ミュージカル「Phantom」を観てまいりました。


コーピット&イェストンのコンビによるこの作品は、宝塚でも中村一徳さんの演出で二回上演されていますが、これは昨年上演された鈴木勝秀演出版の再演。私は初演は観られなかったので、観劇を楽しみにしておりました♪

作品としての宝塚版との一番の違いは、二幕の最初の、キャリエールがエリックの過去を語る長大なナンバーが無いことでしょうか。
ベラドーヴァもエリック少年も出てこなくて、キャリエールとエリックとの関係も、後半のデュエットの時まで観客には明かされないのが新鮮でした。

ただ、エリック少年が歌う「アヴェ マリア…」という歌が無いので、「My True Love」の後、逃げ去ったクリスティーヌを見送ったファントムの絶望の暗闇に射す一条の光(たった一つの愛=母)、という象徴性と意味性を喪って、ただの「美しい音楽」(天上の音楽?)に聴こえたのが、物語の根幹にかかわる設定変更のような気がしましたけどね。

ストーリー的に、あのファントムは「音楽」に救われるのではなく「愛」に救われるので。

あとは、当然のことながらプロローグとフィナーレががないので、幕あきがいきなりクリスティーヌの「メロディ、メロディ」だったところでしょうか。
正直、今回のクリスティーヌ役の杏さんの歌は、…………、と言う感じだったので、冒頭幕あきからいきなりテンションが下がるのはちょっと切なかったです(^ ^;ゞ


■エリック(ファントム) 大沢たかお
歌はまあ、前評判を聞いていたので、あんなものかな、と思いました。
巧くはないけど、聴けないほどではなかったと思います。
芝居は好みがわかれると思いますが、「My Mother Bore Me」は気持ちが入っていて良かったです♪

基本的に人前に出るときは半仮面をつけて顔を隠し、それ以外のときはそのまま素顔、という感じでした。特に特殊メイクをすることもなく、ふつうの顔で演じていたと思います。観客の大半は大沢さんのファンなんでしょうから、顔を隠すわけにはいかない、という宝塚と同じ事情なんでしょうけれども、、、それならそれで、顔を見せない、っていう演出にするべきなんじゃないか、と、宝塚のときも思ったことをまた思ってしまった。
海外のPhatomは、どうしているんでしょうね。A.L.ウェッバー版は、特殊メイクをする前提で、ほとんどの時間は仮面をつけているんですが……。



■クリスティーヌ 杏
根本的に、クリスティーヌって、ソプラノの歌姫なんですよね。
なので、声質自体がメゾ(?)な杏さんの起用は、彼女の努力以前に、どうなんだろう?という疑問を感じました。

花組版の桜音彩音ちゃんも、歌は大概だったけど、声質だけは可愛いソプラノだったんですよね。トップ娘役として円熟期を迎えた頃には、逆にその声が容姿やキャラクターに合わなくて苦労していましたが、クリスティーヌは声質は合っていたんだなと改めて思いました。
個人的に、「パリのメロディ」の声の可愛らしさと、「My True Love」のロングトーンを支えられる安定した呼吸法、この二つがクリスティーヌの必須条件だと思うんですが、杏さんはどっちも……(T T)。

しかも、残念ながら声質をカバーできるほど抜群に美しいわけでもなかったのが残念。元々は美人だと思うんですけど、舞台化粧が似合わないのかな?映像とはメイクのテクニックが全く違うので、難しいんでしょうか。
長身で元気、むしろ「マイ・フェア・レイディ」のイライザあたりが似合いそうなお転婆キャラだったのは、演出としてアリかなと思うのですが、姿勢が良くないせいか、ビストロのドレスが似合わなかったのはとても残念でした。アンサンブルの女性陣はみんな普通に着ていたのになあ。
まあ、彼女にあの時代のドレスが似合わないのは、デコルテが痩せすぎなせいもあるので、衣装デザインをもう少し考えてあげれば良いのに、とも思いましたが。

ただ、まあ、初日ごろに出ていたネットでの評判ほど悪いわけではなかったですよ、と、一応フォローしておきます。
辛口ですみませんm(_ _)m。



■カルロッタ 樹里咲穂
いやー、さすが樹里ちゃん。見事に予想を覆してくれました。可愛くてコケティッシュで、憎めないカルロッタ。憎めないどころか、大好きです(真顔)。
歌はさすが。いや~、あのオペラ歌唱をいつの間に身につけたんでしょうか。歌詞をきっちり聴かせながら、楽しそうに幸せそうに歌ってくれて、ホント素敵でした。
くすんだ色のドレスを着たアンサンブルの真中に、鮮やかな真っ赤と黒の組み合わせのドレス。2,3着は着替えていたと思いますが、どれも同じテイストで、「カルロッタ」というキャラクターがよく出ていたと思います。いやー、本当に素敵だった!



■キャリエール 篠井英介
こちらも素晴らしかったです。カルロッタとキャリエール、お二人が良かったから、作品としても結構楽しめました。
キャリエールさんはずっと告白しないので、なんというか、「神出鬼没な人」という感じで、篠井さんのなんともいえず不思議な存在感が役にぴったりでした。そうか、キャリエールってこういう存在感の役なのね!と目から鱗。
エリックとのデュエットは、宝塚版みたいに銀橋があるわけではないので「見せ場」としての判りやすさでは負けますが、二人の心の交流が切なくて、まんまと泣いてしまいました(T T)。
やっぱりあの場面は、ミュージカル史に残る名場面中の名場面ですね!



■フィリップ・ド・シャンドン 海宝直人
元ヤングシンバの歌唱力を、じっくりと聴かせていただきました♪さすがだなあ~~♪
ちょっと小柄なので、長身の杏さんと並ぶのは厳しかったですが、歌でカバーしていたと思います。とにかく若いのにダンディで、「Who Could Ever Have Dreamed Up You? 」のちょっとした振りもちゃんと踊っていたのが素敵でした。



■アラン・ショレ 石橋祐
死んだ(殺された)カルロッタの亡骸を抱き締めて現れた時の、茫然としたさまがとても切ないショレでした。
本当にカルロッタを愛していたショレ。彼女への想いを語るショレの背中が哀しくて、「彼女の歌を聴いているだけで、自分は幸せになれたんだ……」と語る口調が寂しくて。そうか、この二人はちゃんと愛し合っていたんだな、と思えた、いい場面でした。
宝塚版ではなかなかこういう場面は残しにくいのは判るんですが、ショレが一気に良い役になったなあ、と思いました。



他には、ルヴォー警部もすごく良い役で、面白かったです。
キャリエールとの関係、一癖も二癖もある存在感も、なにもかも。いやー、こんなにおいしい役だとは思っていませんでした(^ ^)。

アンサンブルはみなさん良かったです。
あと、特筆するべきはオーケストラ!オケの良さにはびっくりしました。指揮は御崎恵さん。へー、指揮者って劇団専任ではないんですね。外の仕事もするんだなあ。
しかし、せっかくのオケなのにメインソリストがあれでは……と思ってしまいました(^ ^;ゞ


いや、公演期間はまだまだある。きっと、梅田の頃には良くなっている二違いない!!
(もう観る機会はなさそうですが……)(T T)


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