ロミオとジュリエット
2010年8月22日 宝塚(星)博多座にて、星組公演「ロミオとジュリエット」を観劇してまいりました。
いやー、楽しかった!!
オリジナルを観たことはありませんが、ミュージカルファンの間では話題の作品。数年前の「ウィーンミュージカルコンサート」では、ウィーン版オリジナルキャストであるマジャーン・シャキ&ルカス・ペルマンの「Liebe(Aimer)」や「Balcon」を歌ってくれたり、マヤ・ハクフォートの乳母が聴けたりして、とても幸せな時間を過ごしました。極めつけは、ルカス&マテ・カマラス&アンドレ・バウアーの「世界の覇者」!!たった三人で、あの広い梅田芸術劇場大ホールの舞台狭しと走り回ってくれた三人が、とても格好良かった(はぁと)
……と、いうわけで、私は「世界の覇者」をとても楽しみにして、暑い博多に旅立ったのでした(^ ^)。
そして。
結論から言うと、とても楽しかったです(^ ^)。
礼音くんもねねちゃんも役にぴったりで、似合いすぎて吃驚しました。
この二人のロミオとジュリエットを観ることができて、良かった!
長いこと、私にとっての「柚希礼音ベストアクト」は、(古い話で恐縮ですが)「イーハトーブ・夢」のザネリでした。(←何年前だよ)
いかにもその辺にいそうな悪ガキで、ものすごく可愛かった!! んですが。
今回やっと、ベストが上書きされてとても嬉しい。可愛くて、素直で、優しくて、一生懸命な青年。子供だけど、少年じゃなくてちゃんと青年でした♪
やっぱり礼音くんには、「ブエノスアイレスの風」のニコラスや「ハプスブルクの宝剣」のエリヤーフー、あるいは「スカーレット・ピンパーネル」のショーヴランみたいな『過去のある男』よりも、ロミオみたいな過去のない、まっさらでまっすぐな青年が良く似合うな、と思いました。
ああ、似合う役を思いっきり演じているトップスターが発するエネルギーって凄いなあ(^ ^)。
ねねちゃんは本当にジュリエットそのもの!!あの 思いきりの良さ は貴重ですね。さすが「猪突猛進」と言われたお勢ちゃんだけのことはある。バルコニーシーンでの圧倒的な輝き、ロミオを見つけた時、結婚を申し込まれたときの真っ直ぐな喜び、神父に渡された薬を飲むときの確信、そして、ナイフを胸に収めるシーンのためらいのなさ。
あのジュリエットなら、有名な「剣よ、ここがお前の鞘」という台詞はいらないな と納得しました。
マイベストねねちゃんであり、現時点でのマイベストジュリエットです♪
歌も良かったです。ただ、歌詞を台詞として聴かせようとしたときに子供っぽい歌い方(喋り方)になってしまうのが、特に、感情が激する場面(父親と言い争うところとか)で若干気になりました。ミュージカルのジュリエットは13歳(原作)ではなく16歳なので、わざと子供っぽくする必要もないし、台詞は普通なので、歌う時の癖なんじゃないかと思うんですが。あとはピッチが少し高めなので、低めに取りがちな礼音くんと合わないのが残念なくらいかな。
そして、観た人が口をそろえてほめちぎる二人。乳母役の白華れみと、愛役の礼真琴。
れみちゃんは、とにかく良かった!文句なくベストアクト!
決して歌手ではないれみちゃんですが、最近の彼女の歌には、魂が籠っているなと感心します。
「きれいはきたない」の迫力も良かったし、「あの子はあなたを愛している」は本当に素晴らしかった。胴布団を巻いているとはいえ、顔は乳姉妹にしか見えない若さなので、ちょっと危ぶんでいたんですよ。あの歌はやっぱり「乳『母』」じゃないと成立しないから。……でも、心配ご無用でした。「自分が産んだ子じゃない/でも、私の子に違いない」というフレーズに切ないほど実感が籠っていて、本当にびっくりしました。
「生みの親にもわからせたい/あの子が望む生きる道を認めてほしい」という切なる願い。この歌が、二幕のキャピュレット卿(一樹千尋)の歌う「娘よ」と対になっているところがこの作品の一つのポイントだと思っているのですが、ベテランのヒロさんと十分に対抗できるだけの重みをもって歌えていたのが凄い!
同期の大月さゆちゃんは、『宝塚娘役』という壁を壊して、やっと本来の(研1の頃の)輝きと舞台センスを取り戻しましたが、れみちゃんは組替えするたびに「新しい魅力」を手にいれて、そして今やっと、『女役』として完成されたような気がします。同期のねねちゃんが、あの背にも関わらず根っからの「娘役」、「娘役」以外のものにはなれない人だったのに対して、れみちゃんは「娘役」を卒業して、一人前の「女役」になれる人だった……んですね。
本物の「別格」になるには、もう少し歌声のヴァリエーションを手にいれないと難しいんですが、あの華やかさで若いトップ娘役を圧倒する女役トップになってほしいものだ、と心から思いました。
……ああ、柴田さん並みに良い女役を書ける作家がでてきてくれれば、れみちゃんも励みにがんばれるだろうに……
礼さんについては、男役としての彼女を全く認識できていないので何も評価できないのですが、とにかく幕あき冒頭に、たった一人でセンターセリでせり上がってきて、まったく違和感のないオーラと美しさ!仰天しました。ま、まだ研2だよね?
そして、柔らかな腕の動き、空気を動かすようなダンスに瞠目し、口よりもずっと雄弁にいろんなことを語りかける眼の芝居に、完全にもっていかれました
一度声を聴いてみたい!! ので、「愛と青春の旅立ち」の新公配役に期待しています♪
賛否両論あったティボルトのテルくん。私はかなり満足しました。
根本的なところで、私がテルくんに求めているのは「弱さ」と「優しさ」なんですよね。「凍てついた明日」のクライド、「ハプスブルクの宝剣」のフランツ、「リラの壁の囚人たち」のエドワード。本来はそういうキャラではないはずの「太王四神記」のヨン・ホゲも、「ゾロ」のオリバレス総督も、テルくんが演じるとそういう男に見えてくる。あそこまでいくと、「演技の幅が狭い」んじゃなくて、「個性が強い」と言うべきだと思う。
「太王四神記」なんて、演出自体の方向性がそうなっていたくらいで、演出家もテルくんの魅力はそこにあると考えているのではないでしょうか。
で、ティボルト。
私は、「ロミオとジュリエット」という作品は結構いろんなバージョンを観ているつもりなのですが、ティボルト(あるいは彼にあたるキャラ)があんなに心弱いのは初めてでした(汗)。
キャピュレット夫人とデキてる設定はよくあるし(私がその昔に博多座まで観に行った公演もそんな感じだったな/笑)、ジュリエットを愛しているバージョンもたまにあるんですが。ティボルトって相争う二つのグループの一方のリーダーのせいか、たくましい肉体派が演じることが多い気がするんですよね。映像で観ただけですけど、今回の作品のオリジナル版でも、かなり身体の大きな男性が演じていたし。
でも、テルくんのティボルトはそうじゃない。リーダーだけど、あれはたぶん、子分じゃなくてただの取り巻きですよね。男の子のいないキャピュレット卿の甥で、養子に入ることが決まっているティボルト。大貴族の跡継ぎだからこそ皆はちやほやしてくれているわけで、キャピュレット家の七光りがなければ、なにも出来ないタイプ。
「15歳で女を覚えて」てから、数えきれないほどの女たちと遊んだ…という台詞に説得力を持たせるだけの魅力はある。でも、それはただの代償行為なんだと思わせるだけの虚無感も、ある。彼にとって、女たちは「キャピュレット家のもの」であって自分のものではないし、自分のものにしたいと思ったこともない。自分のものにしたいと思った唯一の女がジュリエットで、彼女にだけは手が出せない。たぶん彼は、決して手に入らないからこそ安心して欲しがっているんだと思う。そういうマゾヒスティックな壊れ方が、すごくテルくんらしい、と。
その虚無感というか、「手の中には何も無い」という離人感みたいなものに、「凍てついた明日」のクライドに通じるものを感じます。
でもティボルトは、クライドと違って逃げ出そうとはしない。彼は、彼なりにがんばっているんです。「キャピュレット家の跡継ぎ」として、伯母の話相手も(違う相手も)するし、家をまもろうと努力している。
キャピュレット家の一粒の宝石、ジュリエットを護るために。
「本当の俺じゃない/俺が何をしても大人たちが仕向けたんだ」「子供の頃には戻れない/俺を変えたのは大人たち」という、実に見事な責任転嫁的述懐が、「悪いことはすべて、この街のせい」と、「ダラス」に責任を押し付けていた「凍てついた明日」とすごく被るのが興味深い。荻田さんと小池さん、方向性の全く違う二人の天才の作品に、こういう類似性を見つけると、ちょっと不思議な感じ。
……「本当の俺」はオリジナル版にもあるみたいなので、これは小池さんじゃなく、元々あったテーマなのかな?(^ ^;
歌も良かったですよ(真顔)。私の周りでテルくんの歌について色々語っていた方はみなさん梅田でご覧になっていたので、ここ一カ月のボイトレの成果が出たんだろう、と思いたい(^ ^)(たんに、猫の耳がテルくん仕様になってるのか?)
ベンヴォーリオ(涼紫央)とマキューシオ(紅ゆずる)。
このお二人もすごく良かったけど、残念ながら歌に関しては聞いていたとおりだった……かな(T T)。
というわけで、一番楽しみにしていた「世界の覇者」が……正直、さびしかったです。ソロメンバーの歌唱力だけの問題ではなく(←問題は大きいけど)、コーラスの弱さ(←宙組を聴きなれちゃったからなー)と振付の単調さ。そのために、全体のビート感が弱くなって迫力が感じられない。みんな頑張っているんですけどね。
歌唱力をいきなりアップさせるのは難しいでしょうから、せめて群衆の振付だけでも……と思っちゃいました。
でも、二人とも芝居はすごく良かったです。うん。『キレやすい若者』そのものだったマキューシオ、一歩ひいたところでまぜっかえす、『お調子者』のベンヴォーリオ。いいコンビだったなあ。
特に、ジュリエットの死を知ったベンヴォーリオの慟哭がすごかった!! 歌自体もいい歌ですが、やっぱり芝居として魂が入ると違うなあと思いました。
パリス(天寿光希)
いやー、パリスって本当に演出によっていろんなバージョンがあるんですけど、、、
すっげー可愛かった!!(真顔)
えっと、今回のパリスは「十二夜」のサー・アンドルーみたいな存在でした。
オリヴィアに横恋慕して、サー・トービーに良いように遊ばれる、間抜けな大金持ちですね。今回の場合、トービーに当たるのがキャピュレット卿か。……そういえばあの話、サー・トービーはオリヴィアの叔父だったな、たしか(^ ^)。
予想どおりの出番の少なさ(パリスとしては)でしたが、でも、大きく盛り上げたトサカ頭に、真っ白いキラキラのついた超・豪華な衣装も良く似合っていたし、表情豊かに実に可愛らしく演じていて、とても楽しそうでした♪ねねちゃん、そんなに嫌がらなくても、あんなに可愛いんだから頭くらい撫でてあげたらいいのに(←違う)
ヒロさんとの掛け合いの歌が二回あるんですが、ちゃんと対等に歌えていたと思います♪ 良い声だな、本当に♪
しかーし、ジュリエットの仮死のエピソードがあるのに霊廟での決闘がないなんて(T T)。普通、パリス的には決闘が唯一の見せ場なのにー!……だからこそ、あんな下級生がやらせてもらえたんでしょうケド(涙)。
パリスの出番以外は、「キャピュレットの男」として赤チームの隅っこで踊っているみっきぃさん。金髪の短髪がシャープなお顔によく似合い、男臭くてめっさ格好良い!!あの眼が色っぽいのよー。うん、これはたぶん、贔屓目だけではないはず(はぁと)。
長くなったので、死と愛と大人たち、そして、作品論についてはまた後日♪
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いやー、楽しかった!!
オリジナルを観たことはありませんが、ミュージカルファンの間では話題の作品。数年前の「ウィーンミュージカルコンサート」では、ウィーン版オリジナルキャストであるマジャーン・シャキ&ルカス・ペルマンの「Liebe(Aimer)」や「Balcon」を歌ってくれたり、マヤ・ハクフォートの乳母が聴けたりして、とても幸せな時間を過ごしました。極めつけは、ルカス&マテ・カマラス&アンドレ・バウアーの「世界の覇者」!!たった三人で、あの広い梅田芸術劇場大ホールの舞台狭しと走り回ってくれた三人が、とても格好良かった(はぁと)
……と、いうわけで、私は「世界の覇者」をとても楽しみにして、暑い博多に旅立ったのでした(^ ^)。
そして。
結論から言うと、とても楽しかったです(^ ^)。
礼音くんもねねちゃんも役にぴったりで、似合いすぎて吃驚しました。
この二人のロミオとジュリエットを観ることができて、良かった!
長いこと、私にとっての「柚希礼音ベストアクト」は、(古い話で恐縮ですが)「イーハトーブ・夢」のザネリでした。(←何年前だよ)
いかにもその辺にいそうな悪ガキで、ものすごく可愛かった!! んですが。
今回やっと、ベストが上書きされてとても嬉しい。可愛くて、素直で、優しくて、一生懸命な青年。子供だけど、少年じゃなくてちゃんと青年でした♪
やっぱり礼音くんには、「ブエノスアイレスの風」のニコラスや「ハプスブルクの宝剣」のエリヤーフー、あるいは「スカーレット・ピンパーネル」のショーヴランみたいな『過去のある男』よりも、ロミオみたいな過去のない、まっさらでまっすぐな青年が良く似合うな、と思いました。
ああ、似合う役を思いっきり演じているトップスターが発するエネルギーって凄いなあ(^ ^)。
ねねちゃんは本当にジュリエットそのもの!!あの 思いきりの良さ は貴重ですね。さすが「猪突猛進」と言われたお勢ちゃんだけのことはある。バルコニーシーンでの圧倒的な輝き、ロミオを見つけた時、結婚を申し込まれたときの真っ直ぐな喜び、神父に渡された薬を飲むときの確信、そして、ナイフを胸に収めるシーンのためらいのなさ。
あのジュリエットなら、有名な「剣よ、ここがお前の鞘」という台詞はいらないな と納得しました。
マイベストねねちゃんであり、現時点でのマイベストジュリエットです♪
歌も良かったです。ただ、歌詞を台詞として聴かせようとしたときに子供っぽい歌い方(喋り方)になってしまうのが、特に、感情が激する場面(父親と言い争うところとか)で若干気になりました。ミュージカルのジュリエットは13歳(原作)ではなく16歳なので、わざと子供っぽくする必要もないし、台詞は普通なので、歌う時の癖なんじゃないかと思うんですが。あとはピッチが少し高めなので、低めに取りがちな礼音くんと合わないのが残念なくらいかな。
そして、観た人が口をそろえてほめちぎる二人。乳母役の白華れみと、愛役の礼真琴。
れみちゃんは、とにかく良かった!文句なくベストアクト!
決して歌手ではないれみちゃんですが、最近の彼女の歌には、魂が籠っているなと感心します。
「きれいはきたない」の迫力も良かったし、「あの子はあなたを愛している」は本当に素晴らしかった。胴布団を巻いているとはいえ、顔は乳姉妹にしか見えない若さなので、ちょっと危ぶんでいたんですよ。あの歌はやっぱり「乳『母』」じゃないと成立しないから。……でも、心配ご無用でした。「自分が産んだ子じゃない/でも、私の子に違いない」というフレーズに切ないほど実感が籠っていて、本当にびっくりしました。
「生みの親にもわからせたい/あの子が望む生きる道を認めてほしい」という切なる願い。この歌が、二幕のキャピュレット卿(一樹千尋)の歌う「娘よ」と対になっているところがこの作品の一つのポイントだと思っているのですが、ベテランのヒロさんと十分に対抗できるだけの重みをもって歌えていたのが凄い!
同期の大月さゆちゃんは、『宝塚娘役』という壁を壊して、やっと本来の(研1の頃の)輝きと舞台センスを取り戻しましたが、れみちゃんは組替えするたびに「新しい魅力」を手にいれて、そして今やっと、『女役』として完成されたような気がします。同期のねねちゃんが、あの背にも関わらず根っからの「娘役」、「娘役」以外のものにはなれない人だったのに対して、れみちゃんは「娘役」を卒業して、一人前の「女役」になれる人だった……んですね。
本物の「別格」になるには、もう少し歌声のヴァリエーションを手にいれないと難しいんですが、あの華やかさで若いトップ娘役を圧倒する女役トップになってほしいものだ、と心から思いました。
……ああ、柴田さん並みに良い女役を書ける作家がでてきてくれれば、れみちゃんも励みにがんばれるだろうに……
礼さんについては、男役としての彼女を全く認識できていないので何も評価できないのですが、とにかく幕あき冒頭に、たった一人でセンターセリでせり上がってきて、まったく違和感のないオーラと美しさ!仰天しました。ま、まだ研2だよね?
そして、柔らかな腕の動き、空気を動かすようなダンスに瞠目し、口よりもずっと雄弁にいろんなことを語りかける眼の芝居に、完全にもっていかれました
一度声を聴いてみたい!! ので、「愛と青春の旅立ち」の新公配役に期待しています♪
賛否両論あったティボルトのテルくん。私はかなり満足しました。
根本的なところで、私がテルくんに求めているのは「弱さ」と「優しさ」なんですよね。「凍てついた明日」のクライド、「ハプスブルクの宝剣」のフランツ、「リラの壁の囚人たち」のエドワード。本来はそういうキャラではないはずの「太王四神記」のヨン・ホゲも、「ゾロ」のオリバレス総督も、テルくんが演じるとそういう男に見えてくる。あそこまでいくと、「演技の幅が狭い」んじゃなくて、「個性が強い」と言うべきだと思う。
「太王四神記」なんて、演出自体の方向性がそうなっていたくらいで、演出家もテルくんの魅力はそこにあると考えているのではないでしょうか。
で、ティボルト。
私は、「ロミオとジュリエット」という作品は結構いろんなバージョンを観ているつもりなのですが、ティボルト(あるいは彼にあたるキャラ)があんなに心弱いのは初めてでした(汗)。
キャピュレット夫人とデキてる設定はよくあるし(私がその昔に博多座まで観に行った公演もそんな感じだったな/笑)、ジュリエットを愛しているバージョンもたまにあるんですが。ティボルトって相争う二つのグループの一方のリーダーのせいか、たくましい肉体派が演じることが多い気がするんですよね。映像で観ただけですけど、今回の作品のオリジナル版でも、かなり身体の大きな男性が演じていたし。
でも、テルくんのティボルトはそうじゃない。リーダーだけど、あれはたぶん、子分じゃなくてただの取り巻きですよね。男の子のいないキャピュレット卿の甥で、養子に入ることが決まっているティボルト。大貴族の跡継ぎだからこそ皆はちやほやしてくれているわけで、キャピュレット家の七光りがなければ、なにも出来ないタイプ。
「15歳で女を覚えて」てから、数えきれないほどの女たちと遊んだ…という台詞に説得力を持たせるだけの魅力はある。でも、それはただの代償行為なんだと思わせるだけの虚無感も、ある。彼にとって、女たちは「キャピュレット家のもの」であって自分のものではないし、自分のものにしたいと思ったこともない。自分のものにしたいと思った唯一の女がジュリエットで、彼女にだけは手が出せない。たぶん彼は、決して手に入らないからこそ安心して欲しがっているんだと思う。そういうマゾヒスティックな壊れ方が、すごくテルくんらしい、と。
その虚無感というか、「手の中には何も無い」という離人感みたいなものに、「凍てついた明日」のクライドに通じるものを感じます。
でもティボルトは、クライドと違って逃げ出そうとはしない。彼は、彼なりにがんばっているんです。「キャピュレット家の跡継ぎ」として、伯母の話相手も(違う相手も)するし、家をまもろうと努力している。
キャピュレット家の一粒の宝石、ジュリエットを護るために。
「本当の俺じゃない/俺が何をしても大人たちが仕向けたんだ」「子供の頃には戻れない/俺を変えたのは大人たち」という、実に見事な責任転嫁的述懐が、「悪いことはすべて、この街のせい」と、「ダラス」に責任を押し付けていた「凍てついた明日」とすごく被るのが興味深い。荻田さんと小池さん、方向性の全く違う二人の天才の作品に、こういう類似性を見つけると、ちょっと不思議な感じ。
……「本当の俺」はオリジナル版にもあるみたいなので、これは小池さんじゃなく、元々あったテーマなのかな?(^ ^;
歌も良かったですよ(真顔)。私の周りでテルくんの歌について色々語っていた方はみなさん梅田でご覧になっていたので、ここ一カ月のボイトレの成果が出たんだろう、と思いたい(^ ^)(たんに、猫の耳がテルくん仕様になってるのか?)
ベンヴォーリオ(涼紫央)とマキューシオ(紅ゆずる)。
このお二人もすごく良かったけど、残念ながら歌に関しては聞いていたとおりだった……かな(T T)。
というわけで、一番楽しみにしていた「世界の覇者」が……正直、さびしかったです。ソロメンバーの歌唱力だけの問題ではなく(←問題は大きいけど)、コーラスの弱さ(←宙組を聴きなれちゃったからなー)と振付の単調さ。そのために、全体のビート感が弱くなって迫力が感じられない。みんな頑張っているんですけどね。
歌唱力をいきなりアップさせるのは難しいでしょうから、せめて群衆の振付だけでも……と思っちゃいました。
でも、二人とも芝居はすごく良かったです。うん。『キレやすい若者』そのものだったマキューシオ、一歩ひいたところでまぜっかえす、『お調子者』のベンヴォーリオ。いいコンビだったなあ。
特に、ジュリエットの死を知ったベンヴォーリオの慟哭がすごかった!! 歌自体もいい歌ですが、やっぱり芝居として魂が入ると違うなあと思いました。
パリス(天寿光希)
いやー、パリスって本当に演出によっていろんなバージョンがあるんですけど、、、
すっげー可愛かった!!(真顔)
えっと、今回のパリスは「十二夜」のサー・アンドルーみたいな存在でした。
オリヴィアに横恋慕して、サー・トービーに良いように遊ばれる、間抜けな大金持ちですね。今回の場合、トービーに当たるのがキャピュレット卿か。……そういえばあの話、サー・トービーはオリヴィアの叔父だったな、たしか(^ ^)。
予想どおりの出番の少なさ(パリスとしては)でしたが、でも、大きく盛り上げたトサカ頭に、真っ白いキラキラのついた超・豪華な衣装も良く似合っていたし、表情豊かに実に可愛らしく演じていて、とても楽しそうでした♪ねねちゃん、そんなに嫌がらなくても、あんなに可愛いんだから頭くらい撫でてあげたらいいのに(←違う)
ヒロさんとの掛け合いの歌が二回あるんですが、ちゃんと対等に歌えていたと思います♪ 良い声だな、本当に♪
しかーし、ジュリエットの仮死のエピソードがあるのに霊廟での決闘がないなんて(T T)。普通、パリス的には決闘が唯一の見せ場なのにー!……だからこそ、あんな下級生がやらせてもらえたんでしょうケド(涙)。
パリスの出番以外は、「キャピュレットの男」として赤チームの隅っこで踊っているみっきぃさん。金髪の短髪がシャープなお顔によく似合い、男臭くてめっさ格好良い!!あの眼が色っぽいのよー。うん、これはたぶん、贔屓目だけではないはず(はぁと)。
長くなったので、死と愛と大人たち、そして、作品論についてはまた後日♪
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