トラファルガー海戦【3】
2010年7月26日 宝塚(宙)雪組&雪組ファンのみなさま、千秋楽おめでとうございます!!
……まだ全く実感が持てない(T T)なにはともあれ、当分はゆっくりとお休みくださいませ。暑い夏、消耗も激しかったことでしょうから、とにかくリフレッシュしてくださいね。
暑い暑い東京で、お待ちしております。
さて、宙組東宝劇場公演「トラファルガー」。
■第3場 ナポリ ~導火線~
銀橋のトリオ(ネルソン・ハーディー・トム)の歌が終わって暗転すると、本舞台の紗幕ごしにナポリでの華やかなパーティー風景が浮かび上がる。
下手で歌いだす妃宮さくらちゃん、豊満な美女ぶりと豊かな声が素敵。
上手側でコーラスを合わせる天輝トニカちゃん、下級生だけどさりげなく巧い♪
トニカちゃんと踊る黄色いドレスの美女(伶美うらら)の美しさは他を圧しますね。あんなに目立つポジションでありながら、全く歌わないところが微妙だけど(^ ^)。長身かつ抜群のスタイル、細面のちょっとキツめの美貌。大劇場では男役としてちょっと小柄なトニカちゃんが大変そうだなーと思いながら観ていたのですが、東宝では優しい包容力が出てきて、格好よかったです(感心)。
さくらちゃんの後を受けて歌う、花里まなちゃん。こちらは少し痩せたのかな?キレイになりましたねー♪祐飛さんが就任したこの一年で、“綺麗なお姉さん”が激増したような気がするのはファンの贔屓目でしょうか(^ ^)。娘役が可愛くてこその宝塚。みんな頑張ってね♪
ナポリ駐在イギリス大使夫妻(北翔海莉・野々すみ花)が登場。
「みなさま今宵はようこそ♪」
と歌うウィリアム(みっちゃん)の声は、ひどく柔らかくて軽やか。もっと力強い声でも歌える人なのに、今回公演は芝居もショーも柔らかい部分を担当しているんですよね(力強い唄は、基本的に悠未ひろさんが担当)。たまには違う声も聴いてみたいな、と、ちょっと我がままになってみたりする。
上手奥から、ネルソンとハーディーが登場。大使ウィリアムとのさりげない挨拶が大人です(^ ^)。
演目が発表された頃に出ていたあらすじだと、ウィリアムとネルソンの関係がかなり濃く描かれそうな雰囲気だったのに、ナポレオン=蘭寿とむ、ウィリアム=北翔海莉の配役が発表されたあたりで変っちゃったんですよねー。残念だ!!怒りと嫉妬にかられて、ネルソンを危険な戦場へ送り込むウィリアムな蘭トムさん、すっげー観たかったのに!(T T)。齋藤さんなら、ちゃんとウィリアムの嫉妬はエマに向けられたものなのか、それともネルソンなのかとゆーあたりを外さずに萌えさせてくれただろうにーーーーー!!(←こら)
二番手と三番手、という脚本的な役割以上に、キャラ的にみっちゃんでソレは無い(T T)のがざんね(←そのへんにしておきなさい)
現実の芝居では、何度かパーティーで顔を合わせたことがある上流階級同士、という程度の関係になってましたよね、ネルソンとウィリアム。改まって「5年前のツーロン戦」での支援の礼を言うところをみると、直接会うのはそれ以来なんだろうし。
ヘンリー王子の「君(ネルソン)はナポリでは人気者だ」なんて台詞があるんだから、ネルソンはナポリにしょっちゅう行ってたんじゃないの?と思うのですが、まあ、ナポリ国王夫妻(特にハプスブルク家出身の王妃マリア・カロリーナ)は反革命意識の非常に強い人なので、フランスと闘って勝利を重ねている唯一の将軍であるネルソンのファン(^ ^)だった、という設定なんでしょうか。
ただ、この時点でネルソンはハミルトン夫人エマに初対面というのが若干意外な印象を受けました。
齋藤さんの脚本的にはウィリアムがエマを買ったのはツーロン戦の後だし、戦いの最中に援軍を要請しにくることはあっても、パーティーに出たり大使館に招かれたりするような仲ではなかった、というだけのことなのでしょうか?
ところで。
初めてネルソンに出会ったエマの振舞が、なんというか、少し奇矯な感じに見えるのは、わざとなんでしょうか。
最初のうちは、コケティッシュで可愛らしい、ちょっと仇っぽい女性、というイメージで観ていたんですが、だんだん違うモノになっていったような。なんというか、妖精じみた浮世離れした存在に見えるんですよね。その非現実感は「五千ポンドのミューズ」という称号にふさわしいような気もするし、何かが違うような気もする。
ただの、婚約者に捨てられただけの若いお嬢さんが、こういう一種異様な魅力を放つようになるまでに、いったい何があったのか……と下世話な興味を抱いてしまうような、すみ花ちゃんの芝居でした。
対するネルソンは、生真面目で武骨な海の男。……あれっ?ネルソンってそういう人だったの?いろんなエピソードを積み重ねると、女好きで惚れっぽくて、戦場では優秀だけど平時は下半身に無責任なタイプかと思っていたんですが。そうでもなければ、補給のために立ち寄った植民地で未亡人(ファニー)を拾って帰ったりしないよね。いくら息子が可愛かったとはいえ。
斎藤さん、祐飛さんにいったいどんな夢をみているんですか?
このダンスシーンの目玉は、なんといっても祐飛さんたちの上手隣で踊るハーディーとちっすー(千鈴まゆ)。ハーディーは、登場してウィリアムに挨拶するとすぐに、舞台奥に立っている天風いぶきさんののところに嬉しそうに駆け寄っていって挨拶し、天風さんの連れであるちっすーや、さっつん(風羽玲亜)たちと談笑を始めるんですよね。観るたびに、ハーディーと天風さんの関係は?と思うのですが(^ ^)。とりあえず、ダンスの音楽が始まると、ちっすーはハーディーを連れて舞台前に出てきます。で、おとめの身長差20㎝(たぶん、実際はもっと違う)の二人のダンスは………もう、こればっかりは文字では説明できません(^ ^)。ぜひご覧ください。祐飛さんたちの隣ですよー。
ともちんは、その後の国王夫妻が登場した後も、王子様たち(綾瀬あきな、夢涼りあん)に遊ばれていました(^ ^)。本当に眼が離せない人だ……可愛いったらない(*^ ^*)。
一方、ダンスは何とかこなしたネルソン。こういうところで恥をかくことのないよう、士官学校ではダンスも教えるんだそうですね。きっとネルソンには、ジャービス先輩が懇切丁寧に教えてくれたに違いないわ!(それ妄想だから!)
エマの思わせぶりな会話に対応しきれず焦っているうちに、国王夫妻が登場。
瞬時に「お仕事」モードに切り替わって、膝をつくまでの動きがとても滑らかです♪
気弱な国王フェルディナンド(天羽珠紀)。一時期割と強い(悪い?)役が続いていたたまちゃんですが、こういう役も結構な嵌りようですよね。根本的に巧いというか、役柄が広い人だな、と思います。やわらかな口調がいかにもそれっぽい。
フェルディナンドについてはいろいろな説がありますが、斎藤さんは「あまり有能ではないけれども、愛情深く子煩悩な優しい男」という解釈で作っているんだろうなあ、と思いました。乱世を生き抜くには向かないけれども、平和な時代であれば名君と呼ばれたかもしれない、その柔らかさと優しさ。宝塚的には面白い造形だな、と思いました。
そして、気丈な王妃カロリーナ(鈴奈沙也)。マリア・テレジアの娘である彼女は、気弱な夫を叱咤激励して反革命運動を援助し続ける。海も陸も弱兵しかいないナポリは、しかしイタリアを代表する農業国の一つであり、金がある、という点ではフランスに似ています。彼らにとってイギリス海軍は、自分たちにはとても出来ない戦いを遂行してくれる、ありがたい傭兵のようなものだったのではないでしょうか。
フェルディナンドがナポレオンへの恐怖から、イギリスへの助力を断って逃げるように退室した後。
ぶつぶつと愚痴をこぼしながら外へ出ていくネルソンを、追いかけてくるエマ。
「国王陛下がダメなら、お妃さまにお願いすればいいじゃない?」
「…どういうことだ?」
さらっと言ってのけたエマに問い返すネルソン。と同時に、銀橋へ登場してくるマリア・カロリーナとその侍女(琴羽桜子)
「ナポリは地中海のイギリス軍に援助を約束しましょう♪」
柔らかくひろがる鈴奈さんの声がとても気持ちいい。鈴奈さん、今回はこれといい、ショーのアマテラスオオミカミといい、いい仕事をしているなあとしみじみ思います。歌姫と呼ぶには若干音域による差の大きい人ですが、この曲はすごく合ってるなあ、と感心しました。
『母親』の強さ、『国母』としての誇りと義務。
「愛するものたちのために 正義を貫く勇気を胸に♪」
さらっと歌われますが、このあたりはこの作品全体にかかるテーマなんだな、と思いました。
明日にでも物資の輸送を、と約束して立ち去る王妃さま。
いつも男前に踊っている印象しかなかった桜子が、淡いピンクのふわふわしたドレスに身を包んで、、優しい声で「お妃さま」と呼びかけたりしているのがすごく意外で、そして、大変に可愛かったです♪あんな可愛い声でも喋れたのねっ(はぁと)。
王妃たちを見送って、あらためてエマに礼を言うネルソン。
「貴女ほどの参謀は、我が海軍のどこを探してもいない!」
……堅物ネルソンにとっては最大級の褒め言葉なんだろうけど、ちょっとばかりどうかと思う……(^^;ゞ でも、エマが嬉しそうだから良いのかな、それで。
「伊語に仏語、歌に踊りに絵画まで習ったけど」
戦争だけは勉強したことがないわ、と言うエマの手を握って、ネルソンが言う。
「あなたが一緒なら、あのナポレオンにだって勝てる……!」
握られた手をきっかけに、「今まで知らなかった」あるいは「忘れていた」感情に気付くエマ。
今の自分の感情を、美しく頭の良い、蠱惑的な美女への純粋な賞賛だと思って疑わないネルソン。
義理の息子にハーディーへの伝言を頼みつつ、頭も心も完全に戦場に向かっている彼の、他意のない「息子ですよ、義理のですが」という台詞のさりげなさは、さすが祐飛さん、と思います(*^ ^*)。
二人の感情は一瞬ふれあい、けれども何事もなかったように離れていく。
「再会」を待ち遠しく思いながらも。
■第4場 パリ
とりあえず、長くなってきたので、時代背景だけ先に書きますね。
前場のナポリでのパーティーは、おそらく1798年8月末か9月頃に開催されていたはず。8月初のナイルの海戦から、イギリス経由でナポリへ直行したんだから……そんなものだと思うんですよね。
で。
このパリの場面は、バラスが失脚したブリュメールのクーデターなので、1799年11月9日ということになります。
アブキール湾の海戦で補給のベースを喪ってからも約一年間、上陸済みのフランス陸軍は遠征を継続しますが、なかなか狙ったとおりには進展しない。しかも、最大の軍事勢力がエジプトに取られている間に、各国がフランスへの攻勢を強めていく。そんな情勢の中、ナポレオンが事実上の『敵前逃亡』でエジプトを脱出したのが8月下旬。アレクサンドリアに上陸してから、1年と2ヶ月弱が過ぎていました。
しかーし!少数の精鋭だけを連れてエジプトを脱出したナポレオンは、フランスに帰るまでに2ヶ月半もかかったんですかねえ……。リュシアン(春風弥里)に「よく間に合いましたね」と言われてたけど、そんなにかかるものなの?
まあ、ろくな船も装備もなく、敵の領土を突破したんだから、そのくらいはかかるか……。
ブリュメールのクーデターの首謀者は、シェイエス(天玲美音)。ナポレオンは、シェイエスが使った剣にすぎません。
でも、ナポレオンにはナポレオンの計画があったことも事実でしょうね。とりあえずはシェイエスの話に乗るけど、とにかく力(軍隊)を握っているのは自分なのだから、という圧倒的な自信が、彼の行動原理なのだな、と思いました。
斎藤さんが、こんなに真面目に歴史的事実を積み上げるような作劇法をとるとは思いませんでした。びっくり(@ @)。
こんなところでしょうか。
ううう、こんなに書きたいことがたくさんあるなんて自分でも思いもよらず(凹)
新公前には終わりそうにないな、これは…。
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……まだ全く実感が持てない(T T)なにはともあれ、当分はゆっくりとお休みくださいませ。暑い夏、消耗も激しかったことでしょうから、とにかくリフレッシュしてくださいね。
暑い暑い東京で、お待ちしております。
さて、宙組東宝劇場公演「トラファルガー」。
■第3場 ナポリ ~導火線~
銀橋のトリオ(ネルソン・ハーディー・トム)の歌が終わって暗転すると、本舞台の紗幕ごしにナポリでの華やかなパーティー風景が浮かび上がる。
下手で歌いだす妃宮さくらちゃん、豊満な美女ぶりと豊かな声が素敵。
上手側でコーラスを合わせる天輝トニカちゃん、下級生だけどさりげなく巧い♪
トニカちゃんと踊る黄色いドレスの美女(伶美うらら)の美しさは他を圧しますね。あんなに目立つポジションでありながら、全く歌わないところが微妙だけど(^ ^)。長身かつ抜群のスタイル、細面のちょっとキツめの美貌。大劇場では男役としてちょっと小柄なトニカちゃんが大変そうだなーと思いながら観ていたのですが、東宝では優しい包容力が出てきて、格好よかったです(感心)。
さくらちゃんの後を受けて歌う、花里まなちゃん。こちらは少し痩せたのかな?キレイになりましたねー♪祐飛さんが就任したこの一年で、“綺麗なお姉さん”が激増したような気がするのはファンの贔屓目でしょうか(^ ^)。娘役が可愛くてこその宝塚。みんな頑張ってね♪
ナポリ駐在イギリス大使夫妻(北翔海莉・野々すみ花)が登場。
「みなさま今宵はようこそ♪」
と歌うウィリアム(みっちゃん)の声は、ひどく柔らかくて軽やか。もっと力強い声でも歌える人なのに、今回公演は芝居もショーも柔らかい部分を担当しているんですよね(力強い唄は、基本的に悠未ひろさんが担当)。たまには違う声も聴いてみたいな、と、ちょっと我がままになってみたりする。
上手奥から、ネルソンとハーディーが登場。大使ウィリアムとのさりげない挨拶が大人です(^ ^)。
演目が発表された頃に出ていたあらすじだと、ウィリアムとネルソンの関係がかなり濃く描かれそうな雰囲気だったのに、ナポレオン=蘭寿とむ、ウィリアム=北翔海莉の配役が発表されたあたりで変っちゃったんですよねー。残念だ!!怒りと嫉妬にかられて、ネルソンを危険な戦場へ送り込むウィリアムな蘭トムさん、すっげー観たかったのに!(T T)。齋藤さんなら、ちゃんとウィリアムの嫉妬はエマに向けられたものなのか、それともネルソンなのかとゆーあたりを外さずに萌えさせてくれただろうにーーーーー!!(←こら)
二番手と三番手、という脚本的な役割以上に、キャラ的にみっちゃんでソレは無い(T T)のがざんね(←そのへんにしておきなさい)
現実の芝居では、何度かパーティーで顔を合わせたことがある上流階級同士、という程度の関係になってましたよね、ネルソンとウィリアム。改まって「5年前のツーロン戦」での支援の礼を言うところをみると、直接会うのはそれ以来なんだろうし。
ヘンリー王子の「君(ネルソン)はナポリでは人気者だ」なんて台詞があるんだから、ネルソンはナポリにしょっちゅう行ってたんじゃないの?と思うのですが、まあ、ナポリ国王夫妻(特にハプスブルク家出身の王妃マリア・カロリーナ)は反革命意識の非常に強い人なので、フランスと闘って勝利を重ねている唯一の将軍であるネルソンのファン(^ ^)だった、という設定なんでしょうか。
ただ、この時点でネルソンはハミルトン夫人エマに初対面というのが若干意外な印象を受けました。
齋藤さんの脚本的にはウィリアムがエマを買ったのはツーロン戦の後だし、戦いの最中に援軍を要請しにくることはあっても、パーティーに出たり大使館に招かれたりするような仲ではなかった、というだけのことなのでしょうか?
ところで。
初めてネルソンに出会ったエマの振舞が、なんというか、少し奇矯な感じに見えるのは、わざとなんでしょうか。
最初のうちは、コケティッシュで可愛らしい、ちょっと仇っぽい女性、というイメージで観ていたんですが、だんだん違うモノになっていったような。なんというか、妖精じみた浮世離れした存在に見えるんですよね。その非現実感は「五千ポンドのミューズ」という称号にふさわしいような気もするし、何かが違うような気もする。
ただの、婚約者に捨てられただけの若いお嬢さんが、こういう一種異様な魅力を放つようになるまでに、いったい何があったのか……と下世話な興味を抱いてしまうような、すみ花ちゃんの芝居でした。
対するネルソンは、生真面目で武骨な海の男。……あれっ?ネルソンってそういう人だったの?いろんなエピソードを積み重ねると、女好きで惚れっぽくて、戦場では優秀だけど平時は下半身に無責任なタイプかと思っていたんですが。そうでもなければ、補給のために立ち寄った植民地で未亡人(ファニー)を拾って帰ったりしないよね。いくら息子が可愛かったとはいえ。
斎藤さん、祐飛さんにいったいどんな夢をみているんですか?
このダンスシーンの目玉は、なんといっても祐飛さんたちの上手隣で踊るハーディーとちっすー(千鈴まゆ)。ハーディーは、登場してウィリアムに挨拶するとすぐに、舞台奥に立っている天風いぶきさんののところに嬉しそうに駆け寄っていって挨拶し、天風さんの連れであるちっすーや、さっつん(風羽玲亜)たちと談笑を始めるんですよね。観るたびに、ハーディーと天風さんの関係は?と思うのですが(^ ^)。とりあえず、ダンスの音楽が始まると、ちっすーはハーディーを連れて舞台前に出てきます。で、おとめの身長差20㎝(たぶん、実際はもっと違う)の二人のダンスは………もう、こればっかりは文字では説明できません(^ ^)。ぜひご覧ください。祐飛さんたちの隣ですよー。
ともちんは、その後の国王夫妻が登場した後も、王子様たち(綾瀬あきな、夢涼りあん)に遊ばれていました(^ ^)。本当に眼が離せない人だ……可愛いったらない(*^ ^*)。
一方、ダンスは何とかこなしたネルソン。こういうところで恥をかくことのないよう、士官学校ではダンスも教えるんだそうですね。きっとネルソンには、ジャービス先輩が懇切丁寧に教えてくれたに違いないわ!(それ妄想だから!)
エマの思わせぶりな会話に対応しきれず焦っているうちに、国王夫妻が登場。
瞬時に「お仕事」モードに切り替わって、膝をつくまでの動きがとても滑らかです♪
気弱な国王フェルディナンド(天羽珠紀)。一時期割と強い(悪い?)役が続いていたたまちゃんですが、こういう役も結構な嵌りようですよね。根本的に巧いというか、役柄が広い人だな、と思います。やわらかな口調がいかにもそれっぽい。
フェルディナンドについてはいろいろな説がありますが、斎藤さんは「あまり有能ではないけれども、愛情深く子煩悩な優しい男」という解釈で作っているんだろうなあ、と思いました。乱世を生き抜くには向かないけれども、平和な時代であれば名君と呼ばれたかもしれない、その柔らかさと優しさ。宝塚的には面白い造形だな、と思いました。
そして、気丈な王妃カロリーナ(鈴奈沙也)。マリア・テレジアの娘である彼女は、気弱な夫を叱咤激励して反革命運動を援助し続ける。海も陸も弱兵しかいないナポリは、しかしイタリアを代表する農業国の一つであり、金がある、という点ではフランスに似ています。彼らにとってイギリス海軍は、自分たちにはとても出来ない戦いを遂行してくれる、ありがたい傭兵のようなものだったのではないでしょうか。
フェルディナンドがナポレオンへの恐怖から、イギリスへの助力を断って逃げるように退室した後。
ぶつぶつと愚痴をこぼしながら外へ出ていくネルソンを、追いかけてくるエマ。
「国王陛下がダメなら、お妃さまにお願いすればいいじゃない?」
「…どういうことだ?」
さらっと言ってのけたエマに問い返すネルソン。と同時に、銀橋へ登場してくるマリア・カロリーナとその侍女(琴羽桜子)
「ナポリは地中海のイギリス軍に援助を約束しましょう♪」
柔らかくひろがる鈴奈さんの声がとても気持ちいい。鈴奈さん、今回はこれといい、ショーのアマテラスオオミカミといい、いい仕事をしているなあとしみじみ思います。歌姫と呼ぶには若干音域による差の大きい人ですが、この曲はすごく合ってるなあ、と感心しました。
『母親』の強さ、『国母』としての誇りと義務。
「愛するものたちのために 正義を貫く勇気を胸に♪」
さらっと歌われますが、このあたりはこの作品全体にかかるテーマなんだな、と思いました。
明日にでも物資の輸送を、と約束して立ち去る王妃さま。
いつも男前に踊っている印象しかなかった桜子が、淡いピンクのふわふわしたドレスに身を包んで、、優しい声で「お妃さま」と呼びかけたりしているのがすごく意外で、そして、大変に可愛かったです♪あんな可愛い声でも喋れたのねっ(はぁと)。
王妃たちを見送って、あらためてエマに礼を言うネルソン。
「貴女ほどの参謀は、我が海軍のどこを探してもいない!」
……堅物ネルソンにとっては最大級の褒め言葉なんだろうけど、ちょっとばかりどうかと思う……(^^;ゞ でも、エマが嬉しそうだから良いのかな、それで。
「伊語に仏語、歌に踊りに絵画まで習ったけど」
戦争だけは勉強したことがないわ、と言うエマの手を握って、ネルソンが言う。
「あなたが一緒なら、あのナポレオンにだって勝てる……!」
握られた手をきっかけに、「今まで知らなかった」あるいは「忘れていた」感情に気付くエマ。
今の自分の感情を、美しく頭の良い、蠱惑的な美女への純粋な賞賛だと思って疑わないネルソン。
義理の息子にハーディーへの伝言を頼みつつ、頭も心も完全に戦場に向かっている彼の、他意のない「息子ですよ、義理のですが」という台詞のさりげなさは、さすが祐飛さん、と思います(*^ ^*)。
二人の感情は一瞬ふれあい、けれども何事もなかったように離れていく。
「再会」を待ち遠しく思いながらも。
■第4場 パリ
とりあえず、長くなってきたので、時代背景だけ先に書きますね。
前場のナポリでのパーティーは、おそらく1798年8月末か9月頃に開催されていたはず。8月初のナイルの海戦から、イギリス経由でナポリへ直行したんだから……そんなものだと思うんですよね。
で。
このパリの場面は、バラスが失脚したブリュメールのクーデターなので、1799年11月9日ということになります。
アブキール湾の海戦で補給のベースを喪ってからも約一年間、上陸済みのフランス陸軍は遠征を継続しますが、なかなか狙ったとおりには進展しない。しかも、最大の軍事勢力がエジプトに取られている間に、各国がフランスへの攻勢を強めていく。そんな情勢の中、ナポレオンが事実上の『敵前逃亡』でエジプトを脱出したのが8月下旬。アレクサンドリアに上陸してから、1年と2ヶ月弱が過ぎていました。
しかーし!少数の精鋭だけを連れてエジプトを脱出したナポレオンは、フランスに帰るまでに2ヶ月半もかかったんですかねえ……。リュシアン(春風弥里)に「よく間に合いましたね」と言われてたけど、そんなにかかるものなの?
まあ、ろくな船も装備もなく、敵の領土を突破したんだから、そのくらいはかかるか……。
ブリュメールのクーデターの首謀者は、シェイエス(天玲美音)。ナポレオンは、シェイエスが使った剣にすぎません。
でも、ナポレオンにはナポレオンの計画があったことも事実でしょうね。とりあえずはシェイエスの話に乗るけど、とにかく力(軍隊)を握っているのは自分なのだから、という圧倒的な自信が、彼の行動原理なのだな、と思いました。
斎藤さんが、こんなに真面目に歴史的事実を積み上げるような作劇法をとるとは思いませんでした。びっくり(@ @)。
こんなところでしょうか。
ううう、こんなに書きたいことがたくさんあるなんて自分でも思いもよらず(凹)
新公前には終わりそうにないな、これは…。
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