宙組東宝劇場公演「トラファルガー」。


■第2場 ロンドン帰還
銀橋に残ったエマ(野々すみ花)の独白で暗転。本舞台に光が入ると、そこはロンドン。
ナイルの海戦でフランス軍を破ったネルソン艦隊を歓呼して迎える市民たち。

壇上で大きな旗をぶんぶん振り回している二人は、下手がモンチ(星吹彩翔)、上手がえなちゃん(月映樹茉)。まずモンチが歌いだすんですが、相変わらず良い声で良い度胸だ♪
続けて上手側で花露すみかちゃん、平場で美月遥くん、花音舞さん、美影凛ちゃんと歌い継いで、その時点での世界情勢を簡単に説明する。
「市民革命の波を恐れたのだ」とかっちり締めるさっつん(風羽玲亜)がステキ♪金髪が似合うなあ(*^ ^*)。


この辺は「カサブランカ」でリックのカフェの最初の歌と同じようなメンバーが多い印象。
場面的には、下級生~中堅の歌手にワンフレーズづつ歌わせて歴史的背景を状況を手際よく説明する、非常によく出来た場面ではあるのですが。
でも!!もうちょっと人数を増やしてもいいんじゃないの?>齋藤さん。ロンドン市民が男女8人づつの16人なんて、少なすぎる(涙)。前場のメイドさんたち以外は全員出られると思うんですが。
下級生にもっと出番を~~っ!!

イギリス軍のメンバーが少ないのは、新調のお衣装の都合があるのかな、と推察しているんですが(^ ^;、市民の衣装なんていくらでもあるでしょうに!!
……と思ったところでふと気付く。この公演が大劇場で幕を開けたときって、東宝ではスカーレット・ピンパーネル絶賛上演中だったっけな、そういえば。そっちに全部取られたてたのか、民衆の衣装が……?(←まさか)



1793年秋のツーロン陥落が「スカーレット・ピンパーネル」のちょっと(半年くらい?)前の話なら、ナイルの海戦は1798年8月、ロベスピエールの失脚から4年後。ツーロン攻略戦で名をあげたナポレオンは、ウィーン攻略とイタリア遠征の勝利によって『フランスの英雄』となっていた、んですよね。


広大な国土を持った豊かな農業国フランスは、伝統的に軍隊はあまり強くなく、長らく傭兵に頼って国を守っていました。
しかし、革命によってフランスが全ヨーロッパの台風の目となったとき、傭兵たちは当然、支払い能力の高い貴族側につくわけで。
共和政府は新しい軍隊のありかたを模索し、「国民のための共和フランスなのだから、国民が守るべきだ」と、事実上の徴兵による「国民軍」を作り上げる。その中心になったのがナポレオン。
徴兵による圧倒的な兵数にものを言わせて、革命政府をぶっつぶそうと襲ってくる各国の包囲網と手当たり次第に闘ってきたのが、この10年間のフランス。
最初はただの農民兵だった彼らも、ナポレオンをはじめとる有能な指揮官に恵まれて、陸戦に関しては連戦連勝。向かうところ敵なし、だった。

そんなフランスの前に、唯一立ちふさがったのが、海運と海軍にすべてをつぎ込んだイギリス。地味の乏しい、貧しい島国に暮らす彼らには、海しか無いんです。制海権を握り、貿易による富を獲得する以外に、生きるすべがない。
そして、当時のイギリスとフランスは、今私たちが日本で想像する以上に、心情的に近い関係にあったはず。ギロチンにかけられるフランス貴族たちは、イギリス貴族たちの知り合いで、友達で、もしかしたら親戚、いや従兄弟くらいの関係だったかもしれないのですから。



ナポレオンのエジプト攻略にはいろいろな理由や目的があったのでしょうけれども、その一つに、「敵対するイギリスの国力を削ぐために、イギリスとインドの連絡を絶つ」というものがあったのは間違いない。
インドとの貿易は、イギリス経済の生命線。そこを断てばイギリスの国力は一気におちる。そうでなくても、エジプトからトルコを攻略すれば、地中海の南東部はフランスのものです。イギリス艦隊の制海権さえ奪うことができれば、フランス陸軍は補給線の心配もなく、もっと自由に動けるようになる。
最終的にはイギリス本土攻略、というところまで視野にいれて、ナポレオンはエジプト遠征に出発。アレクサンドリアに上陸してカイロへ攻めのぼり、あっという間に陥としてしまう。

しかし、ナイル河口でベース(補給基地)となっていたフランス艦隊を発見したイギリス海軍は、わずか一晩の戦闘でこれを殲滅。これが、ここで称えられる「ナイルの海戦大勝利!」
この戦いは直接ナポレオンと闘ったわけではなく、彼の補給路を断っただけだし、この戦いの後もエジプト遠征は続くので、凱旋した彼らがどのくらい歓呼されたのかは良く分かりませんが(^ ^)、フランス艦はほぼ全滅、イギリス艦はほぼ無傷という、滅多にない大勝利ではあったようですね♪


「我がイギリスの危機♪」と歌うせーこちゃん(純矢ちとせ)、朗々と響く拡がりのある美声が、すごく嬉しそうで巧いなあ、と思います。
そして「ネルソン!ネルソン!」という歓呼の歌は、この後も繰り返し出てくる印象的なフレーズ。このあたりの場面の音楽は太田健さんですが、盛り上がりのある良い曲ですね。
楽しそうに小旗を振っているみーちゃん(春風弥里)やあっきー(澄輝さやと)のアルバイトっぷりがとても可愛い。みーちゃんはその後もずーっと壇上で見物していて、とても可愛いです。今回みーちゃんの本役であるルシアンは相当邪気のある役なので、あんなに可愛い笑顔は、お芝居の中ではここでしか見られません(^ ^)。

上手奥から入ってくる兵士たち。ここのメンバーが、この後もずっとイギリス兵ですね。基本的にイギリス兵になったりフランス兵になったり、という水増しをしていないのも、全体に舞台上に居る人数が少なめになっている理由でしょうか。「虞美人」はその点凄かったもんなあ(^ ^)。


市民たちの歓呼に応えて、破顔一笑、ものすごく嬉しそうに手を振り返すハーディー(悠未ひろ)。その笑顔、可愛いからっっ!! ネルソンに「まだ戦いは終わっていない!」と窘められて、「あちゃっ」という顔をするところもめちゃめちゃ可愛いです。
それにしても。一段下に立っているはずなのに、どーしてネルソンと目線が合うの?>ハーディー

金髪ロン毛を強調した大くん(鳳翔大)と、すっきり後ろにまとめたカイちゃん(七海ひろき)の美形コンビと、眼帯をしたネルソン、そしてひたすら可愛い笑顔のともちん。このイギリス海軍、美形率が高すぎてちょっと目眩がします。ナイルの海戦大勝利!でなくても、市民は集まってきそうなメンバーだわ(真顔)。


朗らかに温かいフッド提督(寿つかさ)と、奥歯にものが挟まったような嫌味っぽいジャービス提督(珠洲春希)の掛け合いが結構好きです。なんだかんだ意地悪を言ってるけど、ジャービス提督は結局はネルソンが大好きだよね、という感じが漂っていて、男の嫉妬は醜いけど可愛いなあ、と思ってしまいます(^ ^)。
そして、後から颯爽と登場して、「Welcome home、ホレイシオ!」と場をさらってしまうヘンリー王子(十輝いりす)の格好良さにくらくらします。ええ。彼の登場と同時にスッと片膝をつくネルソン以下の士官たちの動きも素晴らしい。きれいだなあ(*^ ^*)。


「実は、再びナポリに向かってほしいのだ」
と告げるヘンリー王子の、温かな声。盟友ホレイシオを心配しつつ、国のためにはそれが必要なのだとちゃんと判らせる言い方がとてもいいです。あまり台詞術に長けた人ではないのですが、心のある芝居をする人だな、と、こういう時に強く思います。


この辺りまでは、市民たちが若干名舞台に残っているんですよね。
下手の壇上に居たのは千紗れいなちゃんと愛咲まりあちゃんかな?
舞台中央の奥に真みや涼子ちゃんとえなちゃんが並び、上手の壇上にみーちゃんと花音さんが仲良く並んでいたような。なんだか嬉しそうに将軍たちのやり取りを眺めている様子が楽しげで皆可愛い♪


ナポリへの出航を命じられたネルソンに、つと寄り沿うハーディー。
ハケていく兵士たちにネルソンが呼びかける。
「ジョサイア」
兵士たちの一人(愛月ひかる)が、つと立ち止まって振り返る。ここは、照明さんがさりげなーく良い仕事をしています♪
ネルソンがちょっと後ろめたい感じで続ける。
「手紙を。……ノーフォークの、お前の母上に」
「アイアイサー、キャプテン・ネルソン」

さりげない会話ですが、手紙を自分で書く気もなく「お前の母上に」と言うところとか、「父親」への返事ではなく、上官に対する「アイアイサー」という返事であるところに微妙な家族関係を匂わせているあたり、その直前の会話の中でハーディーに「まだ妻と娘にもあっていないのに…」と嘆かせているコトも含めて、齋藤さんもだいぶ大人になったんだな、と思ったりしました(^ ^)。


この辺りで音楽が入り、トム・アレン(凪七瑠海)が荷物を持って登場。
「目指すはナポリ♪」と歌いだします。
ここで「風向き良好!」と歌う前に、ハーディーがちゃんと指を舐めて風向きを確かめているところが笑える(^ ^)。ちなみに、アーサー・ランサムの「ツバメ号」シリーズの中で、「指を舐めたって風向きなんてわからない」という台詞があったような気がするんですが(^ ^)。

ともちんと祐飛さんの声は案外合うなあ、とこのナンバーを聴くたびに思います。
そして、カチャの声はまた一段と癖が強くなったような?ちょっと気になる感じですね。今回はトム・アレンという役で、喋り方もちょっと乱暴な感じにしているので、その流れなのかな?とも思うのですが、曲調や一緒に歌う二人に合わないのは問題だと思うので、ちょっと考えてほしいような。



……なんだか、余計なことを書いて文字数を稼いでしまったような気が(^ ^;ゞ
この調子だといつまでたっても終わらないので、次からはもう少しスピードアップしたいと思います……。



コメント