罪なき罪の罪

2010年6月23日 演劇
ABCホールにて、リリパットアーミーIIの「罪と、罪なき罪」を観劇してまいりました。



まず、何に驚いたって、リリパットアーミーが25周年だってことに一番驚きました(^ ^)。
そんなになるんだー。私が観ていたころは、まだ中島らもがいて、「若い劇団」って感じだったのに。

……中島らもが辞めて、リリパットアーミーIIになるちょっと前くらいから、小劇場の芝居を観に行く回数がガタっと減って(←単に、祐飛さんに嵌ってたんですが)、リリパットも観なくなってしまって。
えらく久しぶりのリリパットでしたが、相変わらずの部分もあり、全然違うなーと思う部分もあり、面白かったです。
いやー、しかもリリパットを大阪で観るのが初めてだったので、余計に面白かったのかも。

客席との一体感、というか、そんな感じのものが新鮮でした。




物語の主題は、大津事件。
まずは、パンフレットにも何も書いていなかった史実を簡単に復習すると……

大津事件とは、明治24年(1891年)5月に滋賀県大津で起きた事件。

訪日中のロシア帝国皇太子ニコライが、警備の巡査に斬りかかられ、負傷した。
幸い命には別条なく、予定通り帰国されて大事には至らなかったけれども、当時はロシアの報復を怖れて大騒ぎになったようです。
下手人の巡査は現行犯逮捕され、裁判にかけられましたが、当時の法典には外国の皇族に対する犯罪に関する法律はなく、日本の皇族に対する大逆罪を適用すべしという行政側と、一般人に対する殺人未遂の初犯で死刑というのはありえないと主張して三権分立を主張した司法側が対立した裁判となった。
最終的に巡査は無期懲役となり、司法の独立が認められた最初の例として有名。国際的にも日本の司法権に対する信頼を高めたと言われる……らしい。


結構真剣な、命とプライドを懸けた『政府の要職』の人々をまっすぐに描いた、予想していたよりもずっと硬派な物語でした。


でも、リリパットはリリパットでした(はぁと)。
いやー、面白かった(^ ^)。


作品の中で「大津で起こった事件」という言葉が出てくるのは、物語も中盤を過ぎたころ。
それまで何をしているかというと、ひたすら登場人物の日常を淡々とやっているんですよね。
それがまた、ギャグ満載なのにリアルで面白くて。
しかも、関西の劇団なだけに、舞台は東京でも出身地による言葉の違いが非常に絶妙で、わかぎゑふさんの脚本は素晴らしいな、とあらためて思いました。


最初の場面は、牛鍋屋「いろは」。
オーナーの娘で、店長をつとめる木村士女(柊巴)。
らぎちゃん、可愛い(*^ ^*)
黒い着物をきっちりと隙なく着こなして、髪もきっちりアップにした美女が、一瞬誰だかわからなかった猫は、たぶんらぎちゃんのファンとしては失格なんだと思います(汗)。
でも、ホントに可愛かったなあ★
やわらかくて低めな、大好きな声は、マイクを通さない方が魅力的。ただ、やっぱりプロの小劇場役者の中にはいって台詞を言うには、声の通りも滑舌も、まだまだ訓練が必要だなあとは思いましたけどね。

着物での所作とか、さすがは「日本物の雪組」出身、きれいなものです。女役やったことなんてないはずだけど、着物を着なれているっていうのは大きいのかな。
それにしても本当に可愛いです★やっぱり舞台が似合う人だと思うので、これからもたまにでいいから舞台にも出てほしいなあ。



士女に案内されてきた客は、「北州社」に所属する弁護士たち。吉川宗明(上田宏)、関西出身の岸辺光太郎(や乃えいじ)、その弟・岸辺春輔(浅野彰一)。
貴族のぼんぼんである吉川が同僚の岸辺たちを誘い、弟もついてきた、みたいな感じだったかな。とにかくギャグ満載の大騒ぎで、うるさい連中でした(^ ^)。
そこに、切れ者の同僚・中上川棋左衛門(茂山宗彦)が加わり、話が盛り上がって大騒ぎになったところで、司法省の判事・溝ノ内智明(八代進一)が「うるさい!!」と怒鳴りこんでくる。

喧嘩になりかけた2グループの仲裁にはいる士女。
いやー、やっぱ可愛いです(はぁと)(←それだけかい)


このあと、裁判官の日下正太郎(野田晋一)の家に場面はうつり、女中の谷山ヨシ(谷川美佳)、河野トキ(福井千夏)らが紹介されて、ほぼ主要登場人物の紹介が終わります。




大津事件の裁判で、裁判長を務めるのが日下正太郎。
判事に溝ノ内がつき、弁護人として吉川宗明がたつ。

日本の運命を決めたのかもしれない重要な裁判の、関係者たち。
彼らには彼らの人生があり、大津事件は、その中のホンの小さな出来事にしかすぎない。
彼らには彼らの人生と、彼らの信念と、彼らの主張があって。
それは、日本という国のために犠牲になることはいとわないけれども、日本のためにあるもおのではないのだから。



彼らの日常を、前半に丁寧に描くことが、ひとつ間違えれば唐突感のある後半の盛り上がりを支えていたんだな、と、観終わってから思いました。
そして、わかぎゑふの脚本・演出に、今更ながら感銘を受けました。

細かいところですけれども、終盤に、一枚の手紙を読み上げる場面があります。
裁判にとって重大な意味のあるそれを、日下が岸辺に読みあげるように言うんですよ。
「(書いたのは関西出身の人間なので)関西弁で読んだ方が、気持ちが伝わるだろう」と。
手紙自体はほぼ標準語で書かれていて、読み上げるためのアクセントがちょっと違うくらいなんですよ。でも、あえてそう言わせて、「少しでも気持ちを伝えたい」という気持ちを伝えようとする。
その心づかいが素晴らしいな、と。



なんだか、お芝居らしい『お芝居』を観たのが久しぶりで、レポートの仕方を忘れました(^ ^)。

とても面白いお芝居でした!と、それくらいしか書くことがない(汗)。


とりあえず、今週末は新神戸オリエンタルで公演があるようです。
ぜひぜひ、ごらんくださいませ♪♪



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