青山劇場にて、ミュージカル「絹の靴下」を観劇してまいりました。

……先週のことですけどね。東京がもう終わってしまうので、取り急ぎ書かせていただこうかな、と。


原作はグレタ・ガルボ主演の映画“ニノチカ”(1939年)。
作曲は「キス・ミー・ケイト」「エニシング・ゴーズ」「カンカン」のコール・ポーター♪……宝塚ファン的には「ナイト&デイ」の作曲家、の方が通りがいいのでしょうか?メロディラインのはっきりとした名曲の数々は、なるほどなと思わせるものがありました。
1957年にフレッド・アステアとシド・チャリシーがこの舞台版を映画化し、日本でも上演されたらしいですね。私は全く知りませんでしたが、ある年代にはネームヴァリューのある作品なのでしょうか。

演出は荻田浩一。
荻田さんの欠点の一つだと思っていた「舞台を狭く使う」という癖は封印して、広々とした舞台で、50年代のミュージカルらしい、明朗でわかりやすい、シンプルな物語でした。



作品的には、昨年上演された大野さんの「ロシアン・ブルー」と良く似た時代と展開の物語でした。

冷戦下。ロシアの作曲家ボロフ(渡部豪太)が、ソヴィエトの仕事でパリに来て、その賑わいと美しさにすっかりはまってしまう。
パリでの彼の芸術活動をアシストする代理人のキャンフィールド(今村ねずみ)は、そんな彼を懐柔して様々な活動をさせ、ついにはハリウッドの「水着の」スター・ジャニスを味方につけて彼を懐柔するように依頼する。彼女の主演の映画にボロフの音楽を使用する、と言って。

ソヴィエト当局は、偉大なロシアの魂であるボロフを帰国させ、スターリン(だっけ…?)のパーティーで新曲を披露させようと、工作員(戸井勝海、伊礼彼方、神田恭兵)を派遣するが、あっという間にキャンフィールドに懐柔されてしまう。
業をにやしたソヴィエト当局は、生真面目でおカタいニノチカ(湖月わたる)に厳命を与えてパリへ送り込む。なにがなんでも、ボロフと三人の工作員を連れて帰れ!!と。
ニノチカの登場に焦ったキャンフィールドは、彼女を懐柔しようと麗しいパリの夜に連れ出す……。



主な舞台がパリ(絹の靴下)かモスクワ(ロシアン・ブルー)かという違いがありますし、それ以前に根本的なテーマが全然違うんですけれども、表面的なイメージは良く似ていたような気がします。
どちらも、自由世界と共産世界という違う世界に生きる二人が、お互いを「同じ人間」だと理解していく物語だし、女が先に脱いでいくのも同じ。ただやっぱり「絹の靴下」は若干古い、というか、冷戦下の資本主義社会で創られたからこそ、「共産主義より資本主義の方が上である」という固定観念から抜けられなかったのが残念、でした。

現代日本でこの二つの作品を見比べると、やっぱりお互いの文化を尊重し、それぞれの革命を尊重して、別れていく「ロシアン・ブルー」の方が納得度が高いんですよねー。「絹の靴下」は、古いというか、単純明快すぎて、判りやすいんだけどちょっとだけ薄っぺらく感じてしまうんです。というか、なによりも荻田さんを荻田さんたらしめていた毒が全く感じられない舞台だったことが、ちょっと違和感を感じさせたかなー。
荻田演出だと思わないで観ていたら、もっと普通に受け入れられたのかもね。
こうなってくると、名前が売れるってのも善し悪しかもしれません。固定観念とか、先入観とか、そういうものから自由になるのって、案外と難しいものなので。




そんなわけで、脚本的には「……ふるいわ、古すぎるわっ↓↓」という感じではありましたが。
出演ははみなさんなかなかに個性的で良かったです。



わたるさんの女役は、やっぱりキュートで可愛いなあ、と。今回はロシア女なので、大柄でも違和感ないし、なによりもあの長身・超絶スタイルにあの制服はステキすぎます♪

「絹の靴下」というのは、この時代のパリで流行した挑発的な下着と同じ「パリ」の象徴として、脚を出す女たちの象徴、透明な薄物一枚で街へ出て行く、「翔んだ女」イメージの象徴として出てくるのですが。
一幕のラストで、「すべてのしがらみから解放された」わたるさんが下着姿(ボディースーツみたいなのにストッキング一枚)で踊る場面があって、とても印象的でした!!
シド・チャリシーの映画は観ていないんですが、ああいう場面があったのでしょうか?(^ ^)。



ねずみさんは、さすがにダンディで素敵でした。久しぶりにコンボイ以外でねずみさんを観ましたが、さすがだなーーーーー!!

ただ、思ったより歌が弱かった(T T)ニノチカもわたるさんなので、ヤバいもん同士でちょうどよく………はならず、この組み合わせでデュエットは厳しい!!………と、ちょっと思ってしまいました…しょぼん↓

あと、フレッド・アステアが演じたっていうから、どれだけ踊ってくれるのかととても楽しみにしていたんですが、思ったより少なかったかもね。まあ、期待しすぎなんでしょうけど(^ ^;ゞ。むしろ、ジャニスの樹里ちゃんの方が踊っていた印象だったかも。



その、樹里ちゃん。
ほんの一カ月前まで、かしちゃんと結合性双生児だったのに!!下村さんと熱い恋に身を灼いていたのに!!6月10日には、また「サイド・ショウ」のコンサートをやるっつーのに、デイジーの面影があんなにも完璧に消え去っているなんて!(@ @)役者やのう……
めっちゃ可愛くて、頭が空っぽで、そして、とてもステキでした!!ハリウッド女優はこうじゃなくっちゃ!!みたいな(^ ^)。



ジャニスに嵌って祖国を捨てそうになるボロフ。
私は彼のことはあまりよく知らないのですが、良かったですー!!いかにも「芸術家」らしい外観をちゃんと作りこんできて、いい芝居をしてくれました♪これからの活躍も楽しみにしています♪



三人組
ビビンスキー(伊礼彼方)、イワノフ(戸井勝海)、ブランコフ(神田恭平)
伊礼くんは「ビビリンスキー」みたいな感じにつくぁれていたような気がします。真面目で小心者、蚤の心臓みたいな感じ(^ ^)。でも、三人の中ではちゃんとビビンスキーがリーダー、という空気は崩れないですよね!そのあたり、チームワークの勝利な感じだったかも。

イワノフはベテラン・戸井勝海。ごく普通に、普通のコメディ役を軽やかにこなしていました。ああいう役は不得意だと思っていたんですが、コンビの相手次第なんだなあ。……もっと軽みのある人の方がもっと面白かったのかもしれませんが、今回は良かったと思います。
もう少し歌ってくれたら、もと嬉しかったのになー。どうせ踊れないんだから、歌ってくれ(^ ^;ゞ

ブランコフも、相当な当たり役だった気がします(^ ^)。うーん可愛い。三人の中でも一番ぶっ飛んでいる役ですが、よく似合ってました。彼こそ、軽やかで良かったです♪




役者はそれぞれ個性豊かにとても良かったですし、演出も無難というか、ごく普通に良かったと思います。
そうなってくると、問題なのは脚本というかテーマなわけで。
……テーマが時代にフィットしすぎていて、現代的ではないのは間違いないかな、と。



でも、ねずみさんとわたるさんのダンスは必見ですよ!! 
格好良かったーーーー!!




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