雪組東宝劇場公演「ソルフェリーノの夜明け/カルネヴァーレ~睡夢~」を観てまいりました♪
前回と同じく、「……どこが“生涯”?」と心の底から突っ込みつつ、愉しんでまいりました(^ ^)



しか~し、一番の突っ込みどころは「アヴェ・マリア」なんですよねぇ。
どうしてアレで皆が団結してしまうのか、二回観てもやっぱり猫にはわからなかったんですが(T T)。

そもそも、どうしてシューベルトの「アヴェ・マリア」なんですか?あれは賛美歌でもなんでもない世俗曲(もとはイギリスの叙事詩に曲をつけたもの)だし、シューベルト自身も、オーストリアの作曲家であってイタリアとは関係ない筈なのに。
なのに、どうしてイタリア兵まで『我が故郷の歌!』みたいな顔をして泣きながら歌いだすの?シューベルトってそんなにイタリアで人気のあった人なのでしょうか?


役者さんたちはすごく入り込んで演じていらして、感動的な場面にはなっていたのですが、、、
……すみません。猫は感性が違うらしく、ここはどうしても理解できなかったのでした……


ハーモニカを吹くポポリーノ(真那春人)はオーストリア軍の少年兵だけど、名前がイタリア系なので、おそらく当時オーストリア領だった北イタリアの出身、つまり、ソルフェリーノからそう遠くない地域で生まれ育った可能性が高い。
そのあたりでは、文化的にもオーストリアの影響が強いでしょうから、もしかしたらシューベルトの音楽=「故郷の歌」という認識があるのかもしれないな、などと考えてはみたのですが。
……コマちゃんが、マンドリンを弾きながら「ナポリがどうこう」って言ってるじゃん(↓)


う~ん。あえて世俗曲であるシューベルトの「アヴェ・マリア」を選んだ理由が知りたい。グノーかカッシーニならわかるんですけど。
普通に賛美歌ではダメだったのかなあ。……ポポリーノがソロの口火を切るところで盛り上がりたいから、賛美歌は厳しいのかしら。

オーストリア兵のポポリーノがカンツォーネを吹けば、それはそれでイタリア兵は盛り上がるかもしれないけど、オーストリア兵が納得しないだろうしなあ……う~む。



どうしてもあの構造でやりたいんのであれば。
カンツォーネにあわせてで楽しく歌い踊るイタリア兵たちの場面で、もう一曲、「じゃあちょっとしっとりした曲もやっとくか?」みたいなノリで「アヴェ・マリア」を弾いておく、っていう手はどうでしょう。
「にっくきオーストリアの作曲家だけど、この曲は良いよなあ」
「俺も好きだな、この曲は。前を向いてがんばろう!という気になれる」
とか、そんな会話をしておけばいいと思うんですが。

いかがでしょうか。
……って、今更提案しても遅いんですけどね(^ ^;ゞ






もとい。
作品全体についての突っ込みその他のアレコレは前回書きましたので、今回はキャストごとに。


■アンリ・デュナン(水夏希)
いや~、ホントに格好良かった(*^ ^*)。
前回の日記でも縷々書きましたが、この作品におけるデュナンの思想って、完全に「安っぽいヒューマニズム」じゃないですか(19世紀末に実際に生きていたデュナン氏の思想がいかに先進的であったかは前回も書きました。あくまでも、植田さんの描く“デュナンの思想”ね)。
でも、水さんが演じると、その“安っぽさ”さえ、“青さ”にみえてくるんですよね…。

彼女の最大の当たり役は「マリポーサの花」のネロだと思うんですが、それに匹敵する当たり役として、私は結構「星影の人」の沖田総司がお勧めなんですよね。
あの役で見せた、どんなに上級生になっても、ああいう真直ぐな若さ、青々とした伸び盛りの苗のような可能性のある若々しさを喪わないのは、常に諦めることなく『理想』を追い求める頑なさを持つ水さんの個性ならでは、と思うんです。

それでこその「ロシアンブルー」だったし、このアンリ・デュナンなのだ、と、あらためてそう思いました。
……正塚さん、水さんの男役最後の舞台に、どんなキャラクターを持ってきてくれるのでしょうか。楽しみにしていますので、よろしくお願いしますよっ!?



■アンリエット(愛原実花)
彼女については、前回かなり語ったので、今日は割愛。
リアルで等身大な女性像を不得意分野とするミナコちゃんって、とことん興味深い素材なんだな、と思いました。さすが、ボニーもアニスも幻想の世界の住人にしてのけただけのことはあるわ……。



■エクトール医師(彩吹真央)
デュナンのように声高に主張するのではなく、さりげなく、出来る範囲で、『新しい思想=ヒューマニズムを裏切らない自己』を実現しようとがんばっている人。
立派な家柄の出身で、大学で正式に医学を学んだにもかかわらず、戦地医療に身を投じた……というような説明がなされていましたが、たしかに、いいところのボンボンっぽさがありましたね♪アンリエットを心配してうろうろしているところとか、可愛かった~~(*^ ^*)。ユミコさんは、ここしばらく“可愛い”系の役を演じていなかったので、ちょっと懐かしく、また嬉しかったです♪

しか~し、不器用な愛ですよね(T T)、エクトールさん。
優しすぎちゃって、相手のコトを思いやり過ぎちゃって、強く出られない人。その不器用な生き方が、ユミコさんの一番の魅力なのかもしれないな、と思いました。

でも!マントヴァまで戦場を突っ切って患者たちを運ぼう!と決めた後のアンリエットとエクトールの場面は、植田さんの愛情の発露なんだろうとは思うのですが、劇構造的には不要な場面だな、と思っております。
まあ、90歩くらい譲って、場面はあっても良いんですけど、あんなに長々とやらなくてもいいだろうに、と。

「僕は君を愛している。だから心配で、本当は行かせたくないんだ」
「ありがとうございます。でも、今まで私は間違っていました。だから、その償いをしたいんです」
「君の代わりに、僕が行くよ」
「いいえ、先生はここで必要な方です。それに、あの人たちを助けるためには、道を知っている私でなければ。行かせてください」
「必ず戻ってくると約束してくれるかい?」
「ええ、もちろん。必ず、先生のもとに戻ってきますわ」
「帰ってきたら、『ジャン』と呼んでくれよ」
「……そ、そんな(真っ赤)」

みたいな感じではダメだったのかな。

とにかく、そこでハーベルマン先生は出てこなくていい!!と思うんですけど、ダメなんでしょうか…。せめてラヴシーンで終わらせてやってください。しみじみ。

そして、銀橋の歌も前の場面とあまり関係ないんだよな……。私は芝居は芝居として楽しみたいほうなので、ああいうのはちょっと醒めてしまったりするのですが(T T)。ううむ、そういうのが“宝塚らしさ”では無いと思うんだけどなあ……(黙)。



ついでに言うならば、(エクトール医師とは関係ありませんが)シスターたちがデュナンを止めようとする場面も本当はいらないと思うんですよね。マントヴァへの道程がキリスト教で禁じられている「自殺」に等しい行為だ、な~んてこと、いくら言い募っても無駄だと思うんですよ。
血の十字架を思いついてから出発するまで、荷車の準備やらなにやらで皆大忙しだろうに、中心となるべきデュナンとアンリエットが長々と愁嘆場を演じているのが、すごく舞台のテンポを壊している気がしました。
シスターたちの見せ場としては、この場面よりもっと前、シスターたちが一生懸命患者さんのお世話をするのを手伝うデュナン、みたいな場面がほしかったような気がします。あの教会の人々とデュナンの心の交流を、もっと丁寧に描けば、「アヴェ・マリア」の場面にも、もう少し説得力を持たせられたんじゃないか、と思うんですけどね……。



■ポポリーノ(真那春人)
こんな位置ですみません。真那くんのこの役には、本当にびっくりしました。
「パリの空よりも高く」のときのみりおくん(明日海りお)みたいな感じですよね(^ ^;ゞ。本公演初台詞くらいなんじゃないかと思うのに、この大役っぷり(汗)。すごいなあ。

ファン目線なのであまり客観的にはなれていないと思いますが、抜擢にはよく応えていたと思います。大柄な方とは言えないけど、雪組では小柄というほどでもない……みたいな半端なサイズなうえに、元々のスタイルが良すぎてあまり子供っぽくは見えませんでしたが、そこは芝居でカバーできていたと思います。たぶん。
べネディック将軍(汝鳥伶)に抱きつくところの勢いとか、怯えた仕草とか。
「凍てついた明日」でもちょっと気になった、「動きすぎ」なところは、早めに改善したほうがいいかも。今までは役も小さかったし立ち位置も後ろだったから、うろうろしていてもあまり気にならなかったけど、ああいう位置であれだけの大役になると『必要のないときは動きすぎない』というのが舞台全体のバランスを取る上では非常に重要なことなんだな、と思います。

思い切りの良い芝居をする人ですが、視界が広くなったらもっと良くなるだろうなあ、と思いました。
これからに期待してもいいのかしら……ドキドキ。


それにしても声が不安定なんですねぇ(涙)。いろんな意味での『不安定さ』が彼女の魅力でもあるのですが、それにしてもちょっと、喉が弱いのは心配な感じ。声質自体は凄く好きなんだけどなあ。
「WEST SIDE STORY」の頃までの、喉を壊す前の祐飛さんの声を思い出す……のは、たぶん私だけだと思いますが(^ ^;ゞ。でも、ドラマティックないい声だと思うんですよね。大事にしてほしいなあ。

あと、ハンデルやベルガーがあっさり治癒しつつあるのに、ポポリーノ一人悪化している、っていうのは、子供で抵抗力が弱いとか、成長期なのに食べ物が足りないとか、そういう理由なんでしょうかね。たしかに、雪組さんのあのあたりの学年は比較的がっしりした人が多いので、まなはるくんのか細さは似合っていたとは思いますが。



と、ポポリーノまででいったん切ってみたりする。
続きはまた後日。


コメント

nophoto
hanihani
2010年4月27日18:48

私も作劇的には、あの告白の場面はとってつけたようでいらないと思います。
もっと簡単でいいかと。
でも衣装も歌も作って退団に花を添えてくれたということで、許さざるを得ない?
それもねこさまの脚本のほうが100倍もいいし(笑)
ハーベルマン先生はカットだよ、カット。もうむかつく台詞言わなくていいから。

あとシスターの出番が少ないからと言って、あの場面も全然いらないよねぇ~
こちらの演出もねこさまのほうが100倍もいいです。

で、ポポリーノは破傷風で亡くなったとか生徒の中では噂だったそうですが
もうその頃からあったの?

みつきねこ
2010年4月28日1:53

>で、ポポリーノは破傷風で亡くなったとか生徒の中では噂だったそうですが

は………破傷風!?(@ @)

>もうその頃からあったの?

えっと。
病原菌が発見されたりしたのはもっと後だと思うんですけど、まあ、破傷風菌自体は紀元前から土の中に居たんでしょうから、病気そのものはあったんでしょうねぇ。ただ、破傷風の症状って有名なのは痙攣とか呼吸困難とかなので、血を吐いたりするのはあんまり関係ないと思うんですが……。

>でも衣装も歌も作って退団に花を添えてくれたということで、許さざるを得ない?

まぁ、結局のところ重要なのはそこなんでしょうねぇ(^ ^;