先月。
新橋演舞場にて、つかこうへい作・演出「飛龍伝 ~2010ラストプリンセス~」を観劇いたしました。
1973年、つかこうへいが早稲田のアトリエで、この作品の原型(?)を発表したときと今とでは、全く時代が違うんだろうなあ、と思います。
今となっては想像もできない学生たち。ヘルメットを被って、石を持った学生たち。
石は意思であり、火炎瓶は燃え上がる正義感だった。たとえ、どんな未来が待っていたとしても。
プログラムに書かれた、当時の「つかこうへい」像がひどく切ないです。「でも、俺は在日韓国人だから。俺がヘルメットを被って石を持つってことは、大家の喧嘩に店子が口を出すようなもんでさ、だから」
……その流れに関わらないように生きるしかなかった、と。
でも、心の裡では、彼は誰よりも熱かったのかもしれない。さまざまな悲惨な事件を経て学生運動が終息に向かい、只中にいた学生たちが運動から離れていくなかで、彼が発表した物語が「初級革命講座」というタイトルであったことは、象徴だったんだろうな、と思います。
同じ「飛龍伝」というタイトルを冠した「初級革命講座」と、今回観劇した「ラストプリンセス」とは、どんなつながりがあって同じタイトルを使っているのかわからないほど違う作品のようですが(^ ^;ゞ。
今回上演された物語は。
東大生として安保闘争に参加し、国会突入に際して死亡した樺美智子女史をモデルとする架空の『全共闘の委員長』神林美智子(黒木メイサ)と、彼女を利用する『影の委員長』桂木順一郎(東幹久)、彼女を愛する『機動隊隊長』山崎一平(徳重聡)の、愛と許容のものがたり。
……「女信長」で惚れた黒木メイサを観にいったようなものだったのですが、まさしく、その凛とした美しさがすべて、みたいな作品でした(*^ ^*)。
つかこうへいの作品は、ストーリーを追いかけても意味不明なことが多いのですが、今回は比較的ストーリー自体が面白かったと思います。美智子と順一郎の関係、美智子と一平の関係が複雑で、興味深かった。極限状態の中で、こういうこともありえたかもしれないな、と。
根本的なところで追い詰められた人々のものがたりなので、私には想像もつかないような叫びがあるかと思えば、ごく当たり前のラヴストーリーが進んでいたりして、面白いなあと思いました。
ほぼ八割まではメインの3人によって語られる物語ですが、それ以外で印象に残った役者は……
舘形比呂一 横浜国大の活動家役。舘形さんらしい、ぶっ飛んだ活動家でした(^ ^;;; が、あんなにぶっ飛んだキャラクターでもちゃんとリアリティがあるところがさすが、と思いました。
いや~、格好良かったです♪
渋谷亜希 東海村女子大の後宮リリィ役。美しい!シャープでクールな黒木さんに対して、女らしい柔らかな美しさと湿り気のあるタイプで、ストリップショーの場面の思い切った色っぽさとか、戦闘服に身を包んで活動家としてうごくときのキビキビした小気味良さとか、すごく魅力的でした。
他のみなさんも凄く格好良かったです♪
女性は黒木さんと渋谷さん二人だけで、少々むさ苦しい舞台ではありましたが(^ ^;ゞ、つかさんらしい作品でした。
彼の作品に特徴的な『自己犠牲』への憧憬、というか……なんだろう、あれは。何かのために自己を犠牲にすることに酔っぱらってしまう人が良く出てくるんですけれども、つか作品の怖いところはその犠牲を受け入れる側の苦しさまで、ちゃんと描くところだと思うんですよね。
その苦しさは、簡単には昇華できないものだから。望んだわけでもない犠牲を、その祈りを引き受けて生きていく存在。彼がゆがんだら犠牲の意味がなくなってしまうから、ただ真直ぐに生きていくしか、ない。
美智子の犠牲によって救われたのは、順一郎ではなく、一平でもなく、運動に関わったすべての人でさえ、なくて。
おそらくは、日本のすべての人々が彼女によって救われたのだ、と。
だから、私たちすべては、彼女の犠牲に黙祷しながら生きていかなくてはならないのだ、と。
……つかさんの芝居はどれもそうですけれども、その「犠牲」の重みを観客が引き受けなくてはならないのが、疲れているときには結構キツいこともありますが。
でも、私は、その苦しさが好きなのかもしれません(←危ない趣味みたいだな…)
つかさん。
願わくば、どうぞ、お元気に快復されて、また新作を作ってくださいますように……(祈)。
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新橋演舞場にて、つかこうへい作・演出「飛龍伝 ~2010ラストプリンセス~」を観劇いたしました。
1973年、つかこうへいが早稲田のアトリエで、この作品の原型(?)を発表したときと今とでは、全く時代が違うんだろうなあ、と思います。
今となっては想像もできない学生たち。ヘルメットを被って、石を持った学生たち。
石は意思であり、火炎瓶は燃え上がる正義感だった。たとえ、どんな未来が待っていたとしても。
プログラムに書かれた、当時の「つかこうへい」像がひどく切ないです。「でも、俺は在日韓国人だから。俺がヘルメットを被って石を持つってことは、大家の喧嘩に店子が口を出すようなもんでさ、だから」
……その流れに関わらないように生きるしかなかった、と。
でも、心の裡では、彼は誰よりも熱かったのかもしれない。さまざまな悲惨な事件を経て学生運動が終息に向かい、只中にいた学生たちが運動から離れていくなかで、彼が発表した物語が「初級革命講座」というタイトルであったことは、象徴だったんだろうな、と思います。
同じ「飛龍伝」というタイトルを冠した「初級革命講座」と、今回観劇した「ラストプリンセス」とは、どんなつながりがあって同じタイトルを使っているのかわからないほど違う作品のようですが(^ ^;ゞ。
今回上演された物語は。
東大生として安保闘争に参加し、国会突入に際して死亡した樺美智子女史をモデルとする架空の『全共闘の委員長』神林美智子(黒木メイサ)と、彼女を利用する『影の委員長』桂木順一郎(東幹久)、彼女を愛する『機動隊隊長』山崎一平(徳重聡)の、愛と許容のものがたり。
……「女信長」で惚れた黒木メイサを観にいったようなものだったのですが、まさしく、その凛とした美しさがすべて、みたいな作品でした(*^ ^*)。
つかこうへいの作品は、ストーリーを追いかけても意味不明なことが多いのですが、今回は比較的ストーリー自体が面白かったと思います。美智子と順一郎の関係、美智子と一平の関係が複雑で、興味深かった。極限状態の中で、こういうこともありえたかもしれないな、と。
根本的なところで追い詰められた人々のものがたりなので、私には想像もつかないような叫びがあるかと思えば、ごく当たり前のラヴストーリーが進んでいたりして、面白いなあと思いました。
ほぼ八割まではメインの3人によって語られる物語ですが、それ以外で印象に残った役者は……
舘形比呂一 横浜国大の活動家役。舘形さんらしい、ぶっ飛んだ活動家でした(^ ^;;; が、あんなにぶっ飛んだキャラクターでもちゃんとリアリティがあるところがさすが、と思いました。
いや~、格好良かったです♪
渋谷亜希 東海村女子大の後宮リリィ役。美しい!シャープでクールな黒木さんに対して、女らしい柔らかな美しさと湿り気のあるタイプで、ストリップショーの場面の思い切った色っぽさとか、戦闘服に身を包んで活動家としてうごくときのキビキビした小気味良さとか、すごく魅力的でした。
他のみなさんも凄く格好良かったです♪
女性は黒木さんと渋谷さん二人だけで、少々むさ苦しい舞台ではありましたが(^ ^;ゞ、つかさんらしい作品でした。
彼の作品に特徴的な『自己犠牲』への憧憬、というか……なんだろう、あれは。何かのために自己を犠牲にすることに酔っぱらってしまう人が良く出てくるんですけれども、つか作品の怖いところはその犠牲を受け入れる側の苦しさまで、ちゃんと描くところだと思うんですよね。
その苦しさは、簡単には昇華できないものだから。望んだわけでもない犠牲を、その祈りを引き受けて生きていく存在。彼がゆがんだら犠牲の意味がなくなってしまうから、ただ真直ぐに生きていくしか、ない。
美智子の犠牲によって救われたのは、順一郎ではなく、一平でもなく、運動に関わったすべての人でさえ、なくて。
おそらくは、日本のすべての人々が彼女によって救われたのだ、と。
だから、私たちすべては、彼女の犠牲に黙祷しながら生きていかなくてはならないのだ、と。
……つかさんの芝居はどれもそうですけれども、その「犠牲」の重みを観客が引き受けなくてはならないのが、疲れているときには結構キツいこともありますが。
でも、私は、その苦しさが好きなのかもしれません(←危ない趣味みたいだな…)
つかさん。
願わくば、どうぞ、お元気に快復されて、また新作を作ってくださいますように……(祈)。
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